カギムシという生き方
カギムシというナメクジに足が生えたような生物がいます(上図)。大きさは♀で数センチ(♂はより小型)くらいのものが多いようです。生物学的には有爪動物(ゆうそうどうぶつ)門に所属する唯一のグループで、趣味で飼っている人もいるらしく、オークションなどでベルベットワームという名前で売られていることもあります。日本にはいませんが、全く目立たない生物で、世界各地で落ち葉の下などにひっそりと生きているようです。
ところで今から5億年以上前のカンブリア時代に生きていたアイシュアイアという有爪動物らしき生物(下図)と、このカギムシがそっくりなのです。カンブリア時代というのは、目を持った肉食動物が出現し、弱い生物は強力な鎧とかトゲを生やすとか早く泳ぐとか、いろいろな手段で捕食者から逃れていたわけですが、アイシュアイアという生物は特にそのような特徴を持っていません。現代に生きるカギムシも同様です。
彼らはおそらく目立たないようひっそりと生きるという手段で、5億年という気の遠くなるような長い時代を、ほとんど形を変えずに生き抜いてきたのでしょう。生きた化石の代表格であるシーラカンスですら、カンブリア時代には影も形もなかったのですから、最長不倒の生きた化石と言えるかもしれません。
ただカギムシは餌の採り方にひとつの巧みな方法を持っています。粘液を昆虫などに噴射して動けない状態にして、その後ゆっくり捕食するのです。俊敏な動きはできないし、餌を捕らえる特殊な手足や顎などもないので、これは巧みな方法です。
カギムシの生き方をみていると、1)強いものにみつからないよう、姿を隠してひっそりと生きる、2)何かひとつ捕食の得意技を持つ、3)ありふれた餌を食べる、というのが彼らの勝利の秘密なのでしょう。さて我々はどのように生きてみましょうか?
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