21億年前の多細胞生物?
カンブリア紀(5億4千万年前)以前の古生物学はある種のモンキービジネスで、5年もたてば一流雑誌に掲載された論文にも疑いの目が向けられるというのはよくあることです。とはいってもカンブリア紀にはすでに、各現存生物門に属する生物種が(私たち人類が含まれる脊索動物門も含めて)網羅されていたと思われるので、それより遙か昔から生物が進化を続けていたことは明らかです。
そういうわけで紆余曲折を経ながらも、カンブリア紀以前の古生物学も進展させていかなければなりません。最近ちょっと信用できそうな興味深い化石がガボンの南西部から出ました(図1)。フランスビル近郊には、変成がなく素性の良い原生代の地層があり、アルバニ博士らは21億年前の地層から、数センチ平方などのサイズの、大きな生物の痕跡を多数発見しました。
CTスキャンやX線解析などにより、その形は図2のようなもののようです(筆者模写)。コケとかカビのようにも見えますが、アルバニ博士らも真核多細胞生物だと考えているようです。バクテリアのコロニーは通常丸く、このような形では成長しません。細胞がアメーバ運動するとか、ケモタキシス(化学物質に向かって動く)を行う、相互に接着性が発生するなどの性質があると、このような形態での成長が考えられます。
この化石が発見された地層には有機物が豊富で、細菌は作らないステロイドリング(図3)なども検出されており、真核生物が生息したことが強く示唆されています。なおこの頃には大気中にかなり酸素が蓄積されており、酸素を利用したエネルギー産生が可能であったことが、真核多細胞生物の活動を支持したと考えられます。
参照)
1) http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2738713/5933853
2) Albani et al. Nature 466, 100-104 (2010)
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