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2010年2月11日 (木)

Y染色体

Chry

性の決定は進化の過程で各系統で固定されるという形では進化してこなかったようです。例えばヒトを含む哺乳類ではXXがメス、XYがオスで、哺乳類とははるかに遠縁の一部の植物でもこの方式は採用されていますが、一方で哺乳類ときわめて近縁の鳥類ではZWがメス、ZZがオスです。XY方式もY染色体にオス決定遺伝子があるという単純なものばかりではなく、ショウジョウバエではX染色体の数がいくつあるかが性を決定するようです(XXではXYに比べてX染色体が倍ある)。

最近チンパンジーのY染色体のオス特異領域の塩基配列を分析し、ヒトの同じ部分と比較した結果、他の染色体とくらべて異常に相違が大きいということがわかりました(1)。このことはY染色体のオス特異的な部分が不安定で変化しやすいことを意味します。そのことを裏付けるような発見が日本で行われました。北大の黒岩博士らはアマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミなどにはY染色体がないことを発見していましたが、オキナワトゲネズミにY染色体があることを確認したそうです(2)。オキナワトゲネズミは絶滅危惧種の天然記念物で、とても研究材料としての許可はおりないだろうという状況を突破したのは彼女の執念としかいいようがありません。

Y染色体はグレーブス博士らによって500~600万年後には消滅するといわれています。早くもY染色体を持たない進化の先端を走る哺乳類が現存するというのは驚きですが、同じトゲネズミの仲間であるものとないものとがあるというのは研究を進める上で大変興味深いものがあります。Y染色体を持たないトゲネズミがどのように性を決定しているのかはまだ不明です。ただY染色体がなくなるからといって、オスがいなくなって人類が消滅するというのは杞憂かもしれません。トゲネズミの研究によって、バイオテクノロジーによる解決法のヒントが得られる可能性があります。

ヒトの例ですが、Y染色体のオス決定部分が組換えでX染色体に移動した例は知られているようで、その場合XXなのにオス、XYなのにメスという場合が発生しますが、この場合両者とも残念ながら不妊となるようです(3)。Y染色体がないトゲネズミの場合も、そのような単純な機構ではなく、何か面白いトリックが隠されているような気がします。

(1) Hughes et al. Nature 463, 536-539 (2010)
(2) https://aspara.asahi.com/blog/science/entry/EWTGtJSkqc
(3) http://ja.wikipedia.org/wiki/Y%E6%9F%93%E8%89%B2%E4%BD%93

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