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2010年2月 3日 (水)

サラとミーナ75: 臭腺のはなし

猫の行動で人間にはわからないことのひとつに、他の猫とすれちがうときに、どうしてもおしりの臭いをかぎたくなるということがあります。うちのサラとミーナのようにずっといっしょにいても、どうしてもかぎたくなってしまうようです。これは猫がおしりに臭腺をもっているからでしょう。臭腺(scent gland)はフェロモンなどを分泌するといわれています。臭腺は体の他の部分にも何ヶ所かあるようですが、意図してかごうとする箇所はおしりの臭腺の場合が圧倒的に多いように思います。

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臭腺のにおいは個体によって異なります。このにおいはいろいろな化学物質が混ざり合ったもので、たとえば・・・吉草酸、イソ吉草酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、乳酸エチル 酪酸、カプロン酸、カプリル酸、アンモニア、揮発性ステロイド・・・などが知られています。吉草酸とイソ吉草酸は図に化学構造を示しました。昔それらを使用して実験をやっていたことがあるので知っているのですが、これ以上臭いものが世の中にあるのかと言うくらい臭いです。吉草酸とクロマトグラフィーなどに使うピリジンは、私が知っている限り悪臭の双璧です。あとは硫黄化合物系ですかね。

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猫の頬にある臭腺から分泌される物質はいろいろな商品名(フェリウェイ・フェリフレンドなど)で各社から発売されており、猫を落ち着かせる効用があるとされています。うちのミーナはサラのおしりの臭腺のにおいをかぐと落ち着くみたいで、よくサラのおしりに顔をくっつけて眠っています(写真)。

ただイソ吉草酸はワキガや使用済み靴下の臭さのもとでもあるので、人によってはこの臭いが好きで、靴下を脱ぐとかがずにはいられないという場合もあるので、こういう行動がみられる人は原始的な要素を保持しているのかもしれません。

臭腺というのは動物がもっている一種の化学工場とも考えられます。猫と同じ目に属するジャコウネコ(ハクビシンなど)科の動物は麝香という高雅な香り物質を合成しますし、スカンクは超臭い物質を合成します(化学構造を図に示す)。

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