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2009年8月16日 (日)

紅茶のうんちく-杉下右京をめざす?

Kouchafig 紅茶研究家であり、紅茶専門店「ディンブラ」の店主でもある磯淵猛氏の著書「一杯の紅茶の世界史」を読みました。紅茶についての蘊蓄が満載されていて、大いに感動しました。

ティーと言えば英国ですが、もちろんもともとは東洋に起源するものです。不思議なことに、マルコ・ポーロは13世紀に長い間中国に住んでいたわけですが、彼の「東方見聞録」には全くお茶に関する記載はないそうです。著者の磯淵さんによれば、西洋人による最初の記載は、ポルトガルの宣教師ガスペル・ダ・クルスによる16世紀になってからのものだそうです。

ポルトガル人は香辛料や財宝ほどにはお茶に関心がなく、買い付けて欧州で販売することはしなかったそうです。関心を持ったのはオランダ人で、17世紀には買い付けて売るだけではなく、インドネシアに茶園を作って栽培まではじめていました。これらがロンドンで当時流行していたコーヒーハウスで飲まれるようになったのが、英国とお茶の関係の始まりです。この頃欧州で飲まれていたのは緑茶で、紅茶ではありませんでした。

中国のお茶の研究者によると、発酵させない緑茶に対して、発酵させるタイプのお茶(ウーロン茶に近いと思われる)が発明されたのは、15世紀の福建省においてのことだそうです。さらに紅茶が発明されたのは17世紀の半ばになります。この紅茶が西洋人の嗜好に合っていたようです。18世紀になると西洋では緑茶はすたれ、圧倒的に紅茶が好まれるようになりました。そして英国ではすっかり紅茶は日常生活になくてはならないものになりました。

英国では当時気候の関係で、お茶を自国では栽培できなかったため、中国から輸入するしかありませんでした。しかし中国に輸出できる商品があまりなかったため、政府は大幅な貿易赤字に悩むことになり、中国にアヘンを売るという邪悪な政策にはしることになりました。

アールグレイという紅茶がありますが、これは生産量の少ない香りの良い「正山小種」という中国のお茶に憧れた英国人のために、トワイニング社がベルガモット・オイルを添加して作ったまがいもので、これが受けて現代まで続いているそうです。

インドのアッサムという土地は、ミャンマーや雲南省と隣接していて、中国の少数民族の移住により、お茶が栽培されていました。これに目を付けた英国はビルマ(当時)と戦争してアッサムを占領し、ここでお茶を栽培することを国策として推進しました。英国人はアッサムに自生する茶には不満で、中国から種や苗木を持ち込んで実験を重ねましたが、気候の違いかことごとく失敗し、唯一成功したのがダージリン地方でした。これが現在のダージリンの起源だそうです。しかし現在では実際にダージリンで生産されるダージリンに比べ、その数十倍、数百倍のダージリンが消費されているとのことで、要するに大半はまがいものということになります。

アッサムはもともとアッサムに自生していたもののなかから、チャールズ・ブルースという人が実験を繰り返して、栽培に成功したものだそうです。アッサムにはオレンジ色のものと焦げ茶色の2種類あり、これは製造法の違いで、葉の形を残すものと、切り裂いて顆粒状にするものとの違いだそうです。後者の方が抽出速度が速く、ティーバッグに向いているので、大部分が後者の製法で商品化されるそうです。茎や軸を除かずに製造できるのでもうけが大きいという利点もあります。インドのチャイもこの製品を利用します。

セイロン(現在のスリランカ)では19世紀の半ばまでコーヒーが栽培されていましたが、伝染病でコーヒーの木が全滅してしまい、生産農家も壊滅的な打撃をうけてしまいました。ならばということで、ジェームス・テイラーという人はアッサムから紅茶の苗木を持ち込み、研究に研究を重ねてセイロンに適した種の栽培に成功したばかりか、製造法にも独自の工夫を加えて、他にはないセイロン紅茶の製造に成功しました。磯淵氏のお店でもJ・テイラーズという紅茶を販売しています。 テイラーは変人と呼ばれながらも、公の場には一切出ないで、研究と開発に一生を捧げたセイロン紅茶の父でした。しかし栽培の労働者としてインドのタミル人を多数移住させたことが、現在も続く民族紛争の一因となっています。

「一杯の紅茶の世界史」磯淵猛著 文春新書
磯淵氏のお店のHP→ http://www.tvz.com/tea/

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