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2009年7月10日 (金)

シャーレのなかで生殖細胞をつくる

生命の誕生期は別として、細胞は細胞からしか生まれません。私たちの体を構成する細胞も、元をたどれば数十億年前の細菌の細胞にさかのぼることができるはずです。そういう意味では生命体というのは不死であるとも言えます。

そして何億年か前から私たちの先祖は、二つの細胞(精子と卵子)→一つの細胞(受精卵)→多くの細胞(個体)というサイクルをくりかえして命をつないでいます。精子と卵子をまとめて生殖細胞といいます。生殖細胞以外の細胞(体細胞といいます)はすべて個体の死とともに死滅します。

生殖細胞だけが何億年も前から生きていて、命をつないでいるとよく言われますが、実はそうではありません。精子と卵子が融合してできた受精卵は、生殖細胞でもないし、体細胞でもありません。受精卵は細胞分裂を繰り返し、そのうちいろいろな種類の細胞・組織・臓器ができてきます。生殖細胞もそのときにできる一種の細胞に過ぎません。このときに生殖細胞になれとの指令を受け、生殖細胞になった細胞だけが次の世代まで命を受け継ぐことができます。

ではその「生殖細胞になれ」という指令の実体は何なのでしょうか? 最近理研神戸研究所の大日方博士らは、それが Bmp4 というタンパク質であることを証明しました。Bmp4 は哺乳類ならみんな持っているタンパク質です。

受精後6日目のマウス胚の一部を培養し、Bmp4 を添加するとシャーレの中に生殖細胞になるべく運命を定められた細胞が出現し、この細胞(マークされている)をマウスの精巣に植え込むと、その細胞の子孫の細胞が精子となり、さらに受精をおこなって次世代の個体になることがわかったのです。

この研究により、生命の永続性の秘密を理解するための扉が開かれたといえるでしょう。生殖細胞をシャーレの中で培養し、その分化・成熟を研究することが可能になったわけです。ただこの研究をヒトに適用し、細胞を不妊治療や再生医療に利用するとなれば、技術的な問題以外に、生命の定義を含めて、いろいろと倫理的・法律的な問題が出てくるのは避けられません。

文献:A signaling principle for the specification of the germ cell lineage in mice. Obinata et al., Cell 137, 571-584 (2009)

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