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2009年5月25日 (月)

自己貪食(オートファジー)と脂肪

Autophagy貪食(ファゴサイトーシス)というとモーゼの十戒を思い出しますが、医学・生物学的には血液中などに存在するマクロファージや好中球という細胞が、細菌などの病原体や異物が侵入したときに、それらを食べて細胞内で消化し、無害化するという機能を意味します。これらの細胞は体の中を常時パトロールしています。

これに対して自己貪食(オートファジー、写真)というのは、このような特殊な細胞だけでなく、一般の細胞が持っている機能です。具体的には細胞の一部を膜で囲い込んで、その内容物を分解します。何のためにこのような機能があるのかをみつけたのは大隅良典博士らで、酵母では餌が少なくなったときに、自らの細胞質にあるタンパク質を脂質の膜のなかに取り込んでアミノ酸に分解し、こうしてできたアミノ酸を栄養源として生き延びることがわかったのです。この機能を担う遺伝子を欠損する変異体は飢餓に耐えられない弱い細胞になります(1)。

その後このような機能は多くの生物が共有してるばかりでなく、そのほかにも様々なバリエーションがあることが明らかになってきつつあります(2)。ヒトの場合も、飢えると肝臓などでオートファジーが増加して、エネルギーと栄養源としてのアミノ酸を供給することが知られています。ウィキペディアのオートファジーの項目をみても、いらないタンパク質の分解が特に強調されています。

ところが最近、自己貪食(オートファジー)によって脂肪滴が分解されて、エネルギーと脂肪酸が供給されることがわかりました。つまりオートファジーを薬で止めると、脂肪の蓄積が増えます(3)。というわけで、オートファジーを促進すれば、どんどん脂肪が分解されて効果的なダイエットができる・・・という可能性が示されたわけです。

1) Tsukada M, Ohsumi Y.:Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cerevisiae., Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cerevisiae. FEBS Lett. 1993, 333, 169-74
2) Nishikori K, Morioka K, Kubo T, Morioka M.: Age- and morph-dependent activation of the lysosomal system and Buchnera degradation in aphid endosymbiosis., J Insect Physiol, 2009, 55, 351-357
3) Singh et al.: Autophagy regulates lipid metabolism., Nature, 2009, 458, 1131-1135

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