ブログと科学
ブログと科学というのは微妙な問題を内包しています。現在科学論文の出版は、紙媒体の雑誌またはオンライン雑誌に投稿し、各雑誌の審査委員の意見に基づいてあれこれ修正や追加実験なども行ったりして、編集委員や審査委員のOKが出た段階で「印刷中」というステータスになり、さらに英文修正や文書校正などを経て出版されます。
ブログよりずっと以前から微妙な問題がひとつあり、それは学会発表とその記録の出版に関するものです。現在ではほとんどの雑誌が、投稿内容をあらかじめ学会で発表しても目をつむるということになっています。あえて言えば、その代償として学会発表はしだいに、それを行ったから最初の発見者だと主張することは難しく、論文を発表しなければオリジナリティーやプライオリティーを認められない趨勢となっています。私のある友人などは、学会で発表した際にボロクソに批判されてがっかりしていたところ、しばらくして、その批判した本人が、友人の発表とほとんど同じ内容の論文を投稿・出版されてしまい、唖然としたという経験を話してくれました。もちろん友人の発見は無視され、その盗作者は今某国立大学で教授をやっています。
さてそこで本題のブログですが、科学出版社にとって、科学ブログは一歩間違えると廃業にもつながりかねない火薬庫のようなものです。Nature 誌は「It's good to blog」というタイトルで、一見ブログに寛容そうな記事を発表しました。しかし内容はやはり微妙なもので、「印刷中の状況になった論文について、間違いの修正や結果の要点を述べるのはいいが、全面的な議論は出版されてからにしろ」というものです。
このブログは専門的な科学ブログにしようとは思っていません。専門家が議論するボードというのはいろいろ問題が生じる危険性があるので、やっぱりビビリます。まあSNSならいいかも知れませんが、あまりそういう閉鎖的なサロンは私の趣味でないのでやるつもりもないし、参加するつもりもありません。もちろん科学関係で有用なブログはたくさんありますが、よほどの場合を除いてROMにとどめて、まあ何か書き込むとしてもお礼くらいでとどめておこうと思っています。
いろいろ難しい点はありますが、このブログ「渋ダジ」のなかでも科学関係の記事については、私の趣味でもあるので、定番のお遊びの記事と共に今後充実させていく予定ではあります。私の胃のポリプ達も「悪性ではなさそうなのでしばらく様子を見ましょう」ということになったので一安心。これからも精進します。まあ私は本質的にエピキュリアンなので、そんなにきちんとしたものにはなりそうもないですが、今後ともよろしくお願いします。
参考:Nature 457 p.1058 (2009)
PS:諸般の事情で、ここ数週間肉体労働があまりにも多くて全く論文を読んでいません。やれやれ orz ・・・。
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