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2008年12月 9日 (火)

メラノーマと癌幹細胞説

800pxwb032021 2008年12月4日号の「Nature」誌の表紙は、癌研究者にとって衝撃的なものだったでしょう。

http://www.nature.com/nature/journal/v456/n7222/

一枚のシャーレ中の顕微鏡一視野のなかにあるメラノーマ(悪性黒色腫)細胞のいくつかがつくった癌の写真が掲載されています。メラノーマというのはほくろの癌といわれる通常黒い色の皮膚癌で、転移しやすい悪性の性質をもつとされています。写真はウィキペディアからひろってきました。

癌を作る能力がある細胞かどうかは、いままでその細胞を免疫力をほとんど失った特殊なマウスに移植して、癌が出来るかどうかで判定していました。それによれば、メラノーマも含めてマウスに癌をつくることが出来る細胞は人の癌組織の細胞のうち 0.1-0.0001% にすぎないとされていました。このことから癌組織の中に特殊な癌幹細胞というものがあり、この細胞が癌を大きくしたり、転移した場所で増殖する上で必須であるという考え方が流行していました。この考え方に基づけば、癌幹細胞さえやっつければ癌を退治できるということになります。

Quintana 博士らは、癌細胞の判定に用いるマウスをより完全に免疫能を失ったものに替えると、ヒトの癌細胞をマウスに移植した場合に癌ができる確率が飛躍的に増加し、メラノーマの場合だと25%の細胞が癌をつくる能力を持っていることを証明しました。したがって上記の表紙のように、顕微鏡一視野内の細胞の多くが癌をつくるということになりました。

これで癌幹細胞説は大きなダメージを受けました。ただ注意しないといけないのは、実際にヒト生体内にある癌組織の25%の細胞が、癌の拡大や転移に関係しているわけではあり得ません。患者の癌細胞は、免疫力のないマウスの環境とは全く異なる環境におかれているからです。このような制限された環境では、一部の選別された細胞のみが増殖や転移可能であるということは当然考えられ、この論文の著者もそれは認めています。それにしても、このような細胞を、正常組織の幹細胞とのアナロジーでとらえるというのはおかしな話だと思います。

参照: E. Quintana et al., Efficient tumor formation by single human melanoma cells. Nature 456, 593-598 (2008)

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コメント

最近になって初めて日本の癌学会でも、癌組織体の根源細胞である癌の幹細胞に関する論文が発表され始めました。癌の幹細胞に関する研究が進展すれば、将来の癌研究や癌治療に重大な転機を齎すものと期待されます。小生は1992年以来、癌の幹細胞に対処する治療概念、しなわち、今までにない全く新しい治療概念を記載した論文17編を国際的な医学雑誌に発表しています。それらの論文資料にご関心のある方には、個人的に無料で郵送致しますので、郵送できる宛先をお知らせ下さい。
780-0870 高知市 本町 5-4-23 平田病院 平田陽三
電話:088-875-6221 Fax: 088-871-3801
E-mail: hphirata@mb.inforyoma.or.jp

投稿: 平田陽三 平田病院 | 2009年1月 7日 (水) 11:41

コメント有難うございます。
お仕事のご発展をお祈りしております。

投稿: monchan | 2009年1月 8日 (木) 22:35

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