クライマーズ・ハイ(ネタばれ多少アリ)
横山秀夫は小説家になる前、12年間上毛新聞で記者をやっていたそうです。その頃に実際に彼が遭遇した日航ジャンボ機事故を題材として、新聞記者の仕事の醍醐味や困難を描いた小説が「クライマーズ・ハイ」です。クライマーズ・ハイというのは、登攀困難な岸壁にクライマーが挑戦しているとき、気分がハイになって、自分や後方登攀者の安全を忘れてひたすらよじ登ってしまうという意味です。
この小説が映画化されまして、早速見に行ってきました。横山秀夫は「陰の季節」という本を読んでからファンになってしまいました。作品に流れるピーンとした緊張感がたまりません。それでもノンストップ娯楽作品のようなものではなく、適度にゆるむところがあるのも好きですね。この作品でも特に土合駅の階段を上るシーンなどは涙が出そうになるくらい懐かしい気分になりました。この駅の下りホームは地下深くにあり、462段+24段の階段を上らないと改札口に上れません。リュックを担いでこの階段を登るのは結構骨です。私は終列車で暗いうちに改札口に着くので、改札口外の階段で夜明けまで休んでから出発したものでした。
1985年8月12日の日航ジャンボ機は、坂本九氏やわが阪神タイガースの中埜肇社長も亡くなった大事故でした。堤真一・堺雅人・尾野真千子らが演ずる記者達が弱小会社のハンデにもめげず、取材に大奮闘する様子が描かれています。圧力隔壁の破損が事故原因だとの大スクープをものにする寸前で、堤真一演ずる悠木記者は没にしてしまいます。堺雅人が演ずる佐山記者が発する「この話は出来すぎている」という言葉が、この映画のキーポイントです。
事故原因が機体設計の欠陥によるものだと全世界のボーイング747が飛べなくなってしまうので、修理ミスによる隔壁の破損ということにして早期決着したいという会社の要望が影響したという話も根強くあります。詳しくはウィキペディアなどを参照してください。そうだとすると悠木記者(全権デスク)の判断は正しかったということになります。登山家としての自分の苦い経験をもとに、彼はクライマーズ・ハイならぬ取材記者・ハイを免れたと言うことになるのでしょう。記者達以外に、販売局長の皆川猿時の存在感もすごいものがありました。ともかく見て良かったと思う映画でした。
余談:墜落した日航ジャンボ機には多量の放射性同位元素が積まれていた上に、機体の部品として劣化ウランが使用されていたそうです。
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