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2008年7月16日 (水)

肥満と脂肪細胞の数の関係

1_2 太るとかやせるとかいうのは、脂肪細胞に脂肪がたまるかどうかによるのであって、脂肪細胞の数が増えたり減ったりするためではないというのが、これまでの常識であり、確かにそうなのです。

(図は電子顕微鏡による脂肪細胞の断面図 右半分が脂肪滴、その左の狭い領域に核やミトコンドリアが見える)

ところがスポルディング博士らスエーデン・カロリンスカ研究所のグループが、数百人の人について調査をしたところ、太った人のグループとやせた人のグループを比較すると、太った人のグループは、20才くらいまでにやせた人のグループの倍くらいの数の脂肪細胞をつくり、その数はずっと年取るまで維持されることがわかりました。

また肥満の治療で胃を小さくする手術をした人について調べてみると、手術によって体重が減少した場合も、脂肪細胞の数は減っていないことがわかりました。

つまり個々の人について言えば、太るやせるは細胞の数の増減ではないのですが、太っている人はもともと脂肪細胞の数が多いということがわかったわけです。

さらに彼らは地上で核実験していた頃に人のDNAに蓄積していた炭素の放射性同位元素14Cの量を調べました。14Cは地上での核実験が禁止されるとたちまち宇宙への拡散や海への吸収でほとんど消滅しました。もしその頃の脂肪細胞がそのまま年取っても残っていたとすれば、当時と同じ量の同位元素が検出されますし、同位元素が次第に減っていったとすると、細胞の数には変わりがないわけですから、一部の細胞が死に、一部の細胞が分裂して増えたということになります。計算すると一年で10%くらいの細胞が入れ替わっているという結果が出ました。

したがって肥満を防ぐには、子供の頃に脂肪細胞が増えるのを阻止すればいいわけです。そんなうまい方法が見つかるかどうかは疑問ですが、とりあえず大人になってからじゃ間に合わないのが残念。

研究の結果、脂肪細胞は結構しぶとく生き残っているんだなと思いました。8年経っても半分は生き残っている計算になります。さらにその数は成人になってからはかなり厳密に制御されているというのも驚きです。子供の頃には脂肪細胞はどんどん増えるので、この制御機構は成人になってはじめて機能するものです。

参照:KL Spalding et al:Dynamics of fat cell turnover in humans. Nature 453, 783-787 (2008)

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