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2007年12月13日 (木)

エレガントな生き方

250pxc_elegns_dic_s 線虫の仲間である Caenorhabditis elegance は生物学に関心のある者なら誰でも聞いたことある名前でしょう。ヒトの消化管に寄生するカイチュウと同じ線形動物の1種で、そのまま小さく体長1mmになったという感じです。


(写真 
http://weboflife.nasa.gov/celegans/questionsshow.htm より)。

ただし elegance は寄生虫ではなく、自分でエサをとって生きていく生物です。Caeno は最近のと言う意味。rhabditis は棒、elegance はそのままエレガンス(優雅)という意味です。Emile Maupas が最初に Rhabditis elegans と命名し、後に Gunther Osche がこの名前に修正したそうです。「最近の優雅な棒」ってことですか。

それにしてもエレガンスとはよくも命名したものです。動きは決してエレガントじゃなくてピンピンはねるような感じですが、研究するにつれてこの生物こそ、その名前にふさわしい構造を持ち、生き方を実行していることが明らかになってきました。C.elegance は多細胞生物の中で、最初にすべてのゲノムDNAの配列が解明された種です。なんとたった97メガベースのDNAに19,000個の遺伝子が含まれていました。国際ヒトゲノムシークエンシングコンソーシアムの最近の結論では、ヒトの場合、3ギガベースのDNAに22,000個の遺伝子があるそうです。あれれ、ほとんど遺伝子の数は変わらないじゃないですか。

実際調べるにつれて、ヒトの遺伝子のほとんどは、似たような遺伝子がエレガンスにもあることがわかってきました。例えばアルツハイマー病の一因であるβアミロイドを切断するタンパク質もエレガンスに存在します。デュシャンヌ型筋ジストロフィーの原因タンパク質(ジストロフィンというとても風変わりなタンパク質)の遺伝子もエレガンスは持っています。マルファン病の原因タンパク質(フィブリリン)の遺伝子もエレガンスに存在します。

ヒトには60兆個の体細胞があるとされていますが、エレガンスはたった1000個くらいしか細胞がありません。それで神経、筋肉、咽頭、消化管、皮膚などの組織をつくります。自分でエサを探して食べ、危険を察知して逃げるなどの学習行動もできます。エサが少なくなると変身して、2ヶ月くらいエサなしで生きていくことができます。普段は雌雄同体なのですが、オスの個体をつくって生殖することもできます。

この生物の全ての細胞は、ひとつの卵からどうやって生まれて、どういう運命をたどるのか明らかになっています。この研究でサルストン博士らはノーベル賞を受賞しました。彼は細胞一つ一つに色素を注入し、ひたすら顕微鏡を見続けて、細胞がどこに移動してどういう変化をするかを見届けるという途方もない研究を、驚異的な忍耐力でやりとげたわけです。すべての細胞の運命がきちんと定められているということがわかりました。

こうしてみると、ヒトに比べていかにC.エレガンスという生物がエレガントな生き方をしているかということが分かります。普段私たちが目にする動物は脊椎動物か節足動物(あとは食卓のイカとタコくらい)ですが、実は線形動物は土の中に1億種類くらいいて、目立たない生活をしているそうです。これが本当だと地球上の大部分の生物種は線形動物ということになります。なかなかあなどれませんね。

細胞系譜図:http://www.wormatlas.org/userguides.html/lineage.htm
線虫について:http://weboflife.nasa.gov/celegans/questionsshow.htm 

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