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2007年7月27日 (金)

黄禹錫(ファン・ウソク) 転落の経緯3

多くのマスコミやネットサイトは黄禹錫を熱烈に擁護しようとしましたが、時が経過すると共に、卵子売買疑惑だけでなくあちこちからほころびが出てきました。1)論文に添付された11株の培養細胞の写真が、実は2株の写真をフォトショップなどを使って変形するなどの方法で作られた水増しであったこと(今見ると、どうしてこんな素人でもすぐわかる「見え見え」の工作に編集者が気がつかなかったか不思議です。結局どれだけインパクトのある内容かということが重要視されるあまり、通常の査読はおざなりになっているということが証明されたようなものです)。2)ES細胞は免疫機能を破壊したマウスに移植すると腫瘍をつくりますが、黄禹錫は11株のES細胞すべてについて腫瘍をつくったと言っていましたが、これはウソで2株しか作っていませんでした。3)11株のES細胞は黄禹錫が証拠隠滅のため殺したはずだったのですが、たまたま殺し損なった一株について、ドナーの患者毛根細胞とDNAが一致しないという結果が出ました。これらのことは黄禹錫の実験が架空のものであることを強く示唆しています。

そしてついに2005年12月15日になって、黄禹錫は「ES細胞はひとつもない」と告白しました。黄禹錫と共同研究者の盧聖一・文信容はサイエンス誌に論文の撤回を要請し、ようやく事件は終息に向かいました。黄禹錫を最後まで擁護していた東亜日報編集局長はこの日、30分も局長室に閉じこもって誰にも会おうとせず、ひとりで考え込んでいたそうです。

今回とりあげた著作 「国家を騙した科学者」李成柱(イ・ソンジュ)著 ペ・ヨンホン訳(2006)牧野出版刊 はこの事件を通して、韓国社会・マスコミや韓国人の病巣にせまった労作です。事件の細かい真相に関心のあった私としては、ちょっとスケールが大きすぎる本だったので、ある意味期待はずれだったのですが、李成柱氏の努力には拍手を送りたいと思います。最後に李成柱氏は純粋な学術方面でも「よくわかっている」人で、このような人が科学マスコミ界をリードしてくれると有難いと思いました。以下彼の言葉です。これは隠れた事件の本質をついています。

「ES細胞は人の体に入れたら魔法のように機能するわけではない。ES細胞の研究でもっとも重要なのは、いかにしてES細胞を、人体にある2百十もの細胞のうちの特定の細胞だけに分化させ、特定の機能を持てるように作るかにある ・・・中略・・・ ES細胞の基本メカニズムに関する基礎研究は(韓国は)先進国の足元にも及ばない。誰も語ろうとしてこなかったが、これが韓国のES細胞研究の限界であり、韓国科学の悲しい自画像だ。韓国政府は基礎研究に対する支援には冷たい。種を蒔こうともせずに実だけをとろうとする。そんな風潮の中でマスコミと大衆がなにかの結果を目の当たりにすると、砂上の楼閣にすぎない結果に歓喜してしまう」

日本も国立大学がすべて半民営化され、資本主義の海に飲み込まれようとしています。この本でも論文ねつ造の例として紹介されている東大の某教授は、特許庁で特許をくれと土下座したそうです。千円札の野口英世は、実はほとんどなんの業績もない科学者です。NHKをはじめ日本のマスコミは大衆や政府の圧力に耐えられるでしょうか??? 他国の話だと笑っていられるでしょうか?

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コメント

野口が評価されてるのは実積じゃないでしょ
障害を持ちながら科学者になった事が評価されてる訳で
彼より実積のある科学者は日本に山ほど居ますよ
この分野でノーベル賞とった中山さんでもお札にすれば満足しますか?

投稿: 通りすがり | 2014年2月10日 (月) 16:04

>通りすがり 様

野口英世は単に業績の評価が低いだけではなく、致命的な誤りのある論文を多数出版したと言う意味で、お札にするべき人ではないと思うわけです。彼の業績については下記のコメント、またはそこに紹介された書籍をご覧ください。

Science 24 April 1981: Vol. 212 no. 4493 pp. 434-435

Noguchi's claims to have cultivated the organisms of syphilis, rabies, poliomyelitis, and trachoma were not confirmed by others. His claim to have established Leptospira icteroides as the agent causing yellow fever proved to be a fiasco and led indirectly to his fatal infection with yellow fever virus.

また彼は渡米前に結婚詐欺もはたらいており、倫理的にもお札にするような人ではありません。

投稿: monchan | 2014年2月10日 (月) 18:31

>通りすがり 様

恋愛小説家の渡辺淳一氏が野口英世の伝記を出版しています(タイトル:「遠き落日」上下 講談社文庫)。

ずいぶん昔の本ですが2013年に再刊行されているようです。昔読んで面白かったので、ご一読をお勧めします。

投稿: monchan | 2014年2月11日 (火) 09:34

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