鞭毛とヒト
昨年8月にこのブログの中で、「ヒトはカビと同じオピストコンタ(Opisthokonta) に属する生物とされている」と書きましたが(生物学・科学のカテゴリーからたどれます。オピストコンタは植物学会による分類図の一番左)、このオピストとはギリシャ語で後方、コンタとは鞭毛を意味します。
オピストコンタはいわゆる動物、カビ、一部の原生生物を含みます。どうしてこんな幅広い生物群がひとまとめにされるのか? もちろん最近の遺伝子解析の成果に基づいてはいるわけですが、このグループには大きな共通の特徴があります。代表としてヒトの精子(写真は受精するところ・・・ウィキペディアより)をみますと、鞭毛が1本生えていて、その鞭毛をくねくね動かして、鞭毛がある方と反対の方向に進みます。すなわち細胞の進行方向に対して、後方に鞭毛が生えているわけです。これがオピストコンタの語源になっています。精子というのは、私たちが遙かいにしえにどんな格好をしていたかということを暗示しているとも言えます。カビの胞子も鞭毛をもつものがあります。
真核生物(細菌・古細菌以外のすべての生物)のうち私たちオピストコンタ以外のすべての鞭毛を持つ生物は2本以上の鞭毛を持ち、鞭毛のある方向に進みます(アメーバなど鞭毛を持たない生物もいます)。あるいは非常に多数の鞭毛を持っています。例えばイチョウやソテツの精子は多数の鞭毛を持っています(下記のサイトで見ることができます)。
http://jp.youtube.com/watch?v=9OVeE-28RyA
多くの陸上植物の精子では鞭毛は失われてしまいました。哺乳動物の体毛・毛髪や鳥類の羽毛は鞭毛とは何の関係もありません。鞭毛はもともと運動器官として生物が発明した素晴らしい作品です。原生生物や精子のようなたったひとつの細胞の持ち物としては、数百種類の構成タンパク質、複雑で規則的な構造、いろいろな付属器官など、信じられないくらいゴージャスなアイテムであることに驚嘆します。
ここで述べた真核生物より古い生物である細菌や古細菌にも鞭毛を持つ者がいて、鞭毛の歴史は遙かに進化の底辺から脈々と受け継がれていることがわかります。体毛や羽毛はずっとずっと後に生まれたものです。
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