ハンス・ロット:マーラーになり損なった男
ハンス・ロットといっても、クラシック音楽のファンでも知らない人が多いと思います。なにしろ彼の作品が日本ではじめて演奏されたのは2004年だそうですから(《交響曲第1番ホ長調》の日本初演は、2004年11月11日および12日に沼尻竜典氏の指揮する日本フィルハーモニー交響楽団によって行われました)。
最初に彼の交響曲第一番ホ長調を聴いたときには、どこかのマーラーフェチの素人作曲家が、既発・未発のマーラーの楽譜からあれこれピックアップしてつなぎ合わせた作品か・・・と思ってしまうほど「マーラーっぽい」音楽だと思いました。しかしハンス・ロットがこの曲を作ったのは、マーラーが最初の交響曲を作ったのより前だっていうのが驚き。つまりパクったのはマーラーの方だというわけです。それもただメロディの一部をパクったというレベルのものじゃなくて、音楽の本質もオーケストレーションもまるごといただいちゃったという感じです。マーラーの交響曲第2番の最も重要な原光のモチーフも、ロットの音楽にヒントを得たものだと確信しました。
もちろん、だからといってマーラーが単なるパクリ作曲家であるはずもありません。まあゴミ箱に捨てられていた電源やハードディスク、メモリーなどをひろってきて、立派なパソコンを作ったという感じでしょうか。マーラーは夭逝した同室の友人からもらった原石を、不運だった友人のためにも、なんとか立派な作品に仕上げたいと願っていたのではないでしょうか。
CD:ハンス・ロット:交響曲第1番ホ長調 キャサリン・リュックハルト指揮 マインツ国立歌劇場管弦楽団 2004年 Acousence Records ACO-CD 20104
以下は主にウィキペディアの引用によるバイオグラフィーです:ハンス・ロット(Hans Rott, 1858年8月1日 - 1884年6月25日)はウィーンの作曲家。音楽的には、習作的な管弦楽曲を残したに過ぎず、作曲家としてはこんにちでは無名だが、生前は恩師アントン・ブルックナーや学友グスタフ・マーラーから高く賞賛されており、ブルックナーは、いつしかロットが大収穫をもたらすことを信じていた。母マリーア・ロザリナ・ルッツ(1840年 - 1872年)は、美貌で人気の女優・歌手であり、わずか17歳のとき、年長のウィーンの喜劇俳優カール・マティアス・ロット(1807年 - 1876年)と不倫の末に妊娠し、18歳で出産した。ロットの両親が結婚するのは、父親が先妻と死別した1862年になってからであり、それまでロットは認知されず、母親の私生児として育てられた。
両親を喪ってからもウィーン音楽院で学業を続け、ピアノをランツクローン、和声法をグレーデナー、対位法と作曲をフランツ・クレンに師事した。幸いにも、その技量と経済的な困窮が認められ、学費納入を免除された。在学中に、一時期ルドルフ・クシジャノフスキーやグスタフ・マーラーと同居していたことがある。1874年よりオルガン科でアントン・ブルックナーにオルガン演奏を師事、1877年に同科を修了した。
1878年、音楽院での最終年次に、ベートーヴェン作曲賞コンクールに《交響曲ホ長調》の第1楽章を提出するが、ブルックナーを除いて多くの審査員は、これを却下し、中には嘲笑する者さえいたと伝えられる。1880年に交響曲を完成させると、ロットはこれを指揮者ハンス・リヒターとブラームスの2人に見せ、演奏してもらおうとかけ合った。だがこれは失敗に終わる。ブラームスは、ブルックナーが音楽院の若者に大きく影響していることを好ましからぬ思いでおり、あまつさえロットに、どうせ才能は無いのだから、音楽を諦めるべきだとさえ言い切った。
ロットは音楽教師として自活するため、アルザスのミュールハウゼン(現ミュルーズ)の学校に赴任することになっていたが、1881年、まさに旅立とうとするその日に、汽車の中で「ブラームスが爆弾を爆発させた」などとあらぬ妄想を口走り、そのまま精神病院に収容され、何度も自殺を試みた後26才の若さで結核により死亡。20世紀を通してロットの作品はほとんど忘れられていたものの、1989年に交響曲がシンシナティ・フィルハーモニー管弦楽団により初演され、その後ただちに録音された。
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