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2007年5月16日 (水)

血球は卵黄嚢から

Photo_155 出産を経験した女性なら、1のような写真は見たことがあると思います。エコー検査で8週目の胎児をみると1のように見えますが、胎児本体以外に卵黄嚢という器官と、両者をつなぐ卵黄管も見えます。卵黄管のなかには血管が通っていて、胎児と卵黄嚢間の細胞や物質の移動をになっています。

この卵黄嚢というのは、鳥類では大量の卵黄をためてヒナの発育に備えているエサの貯留場です。親と分離した卵の中で生育する鳥類にくらべて、親から胎盤を通して栄養を供給してもらえる哺乳類は、大量のエサを蓄積しておく必要はありません。とはいっても、胎盤がちゃんとできる4ヶ月以前のヒト胎児は、やはり卵黄嚢の助けを借りて生育します。

Photo_156 卵黄嚢のもう一つの重要な役割は赤血球の供給です。成体の赤血球には核がありませんが、胎児の赤血球(写真2 私たちが撮影)は鳥の赤血球のように、核がある細胞です。形も真ん中がへこんだ円盤のような形ではありません。話はちょっとそれますが、精子や卵子のもととなる原始生殖細胞も、卵黄嚢にあったものが、ある時期に卵黄管を通って胎児本体に移動して生殖器に住み着くのです。

胎盤ができる頃になると卵黄嚢は退縮し、卵黄管の一部はへその緒となって、今度は胎児と胎盤をつなぎます。今日の話題は、核のない[成体型の赤血球]や[白血球/リンパ球]などの血液細胞のおおもととなる細胞(すなわち血液幹細胞)の起源は胎児本体にあるのか、卵黄嚢にあるのかというお話です。おとなでは血液幹細胞は主に骨髄にありますが、もともとは別の場所にあったものが、骨髄に移動してくるということがわかっています。

ここ10年くらいは胎児本体に起源があるという説が有力だったのですが、神戸理研のグループが見事にこの説を覆す実験(文献1)を発表し注目されています。彼らは卵黄嚢の細胞に発現する人為的にデザインされた発色タンパク質の遺伝子をマウスに組み込み、発生の過程でどの部位に色がでてくるかという実験を行って、少なくとも成体型の血球の一部は卵黄嚢に起源を持つことを証明しました。おそらくさらに研究を進めれば、すべての血球細胞が卵黄嚢に起源を持つことがあきらかになるのではないでしょうか。

どうして胎児の本体でなく、別宅のような卵黄嚢に後々大仕事をすることになっている幹細胞が収納されているのかということを考えると、やはり騒々しい胎児本体より、静かな別荘で(変化へのプレッシャーが少ない)もとのままの状態で、出番が来るまでひっそりと生きている・・・ということが大切なのだと思います。

文献1:IM Samokhvalov, NI Samokhvalova, S-I Nishikawa: Cell tracing shows the contribution of the yolk sac to adult haematopoiesis. Nature 446, pp.1056-1061 (2007)

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