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2006年12月26日 (火)

ネアンデルタール人と現代人

220pxneanderthalerwoman すでに新聞などで報道されていますが、ネアンデルタール人のDNAの一部が解読されました。これについて、ウィキニュースには明らかな誤りがあり、ウィキペディアも記述が古くなっているので、あえてここでとりあげることにしました。

ネアンデルタール人の骨が最初に発見されたのは江戸時代のことで、1856年ドイツのデュッセルドルフ近郊にあるネアンデル峡谷の洞窟で発掘されました。150年を経て、今その遺伝情報が明らかにされつつあります。DNAの解析技術は最近飛躍的に進歩しましたが、化石に含まれるDNAは経年変化で切れ切れになったり、一部が脱落しているうえ、現代人を含む他の生物のDNAが混入しているおそれがあり、解析結果が正当であることを証明するのは極めて困難です。

これに取り組んだのが、ドイツのグリーン、ペーボ(マックスプランク研究所)らのグループで、クロアチアで発掘されたネアンデルタール人の骨について、ミトコンドリアDNAを現代人のものと比較するなど、慎重に予備検定を行って混在がないことを確認した後、この骨からDNAを抽出し、特殊なRCR法(DNAのコピーを大量に作る方法のひとつ)でDNAを増やし、最近開発された高速な塩基配列解析法で分析するという手法で、研究を進めました。

ただ自分たちばかりでやっているのでは、他の研究者に信用してもらうのに時間がかかると判断したのでしょうか、彼らは抽出したDNAを米国のルビンの研究室にも供与しました。ルビンらはもらったDNA断片を大腸菌のゲノムに組み込み、大腸菌を増殖させることによってDNA断片を増幅するという、グリーンらとは別の手法で研究を進めました。この結果ルビンらは65,000塩基対、グリーンらは100万塩基対以上の解析に成功しました。ネアンデルタール人と現代人のDNAの塩基配列を比較したところ99.5%が一致するという結果が得られました。

さらにグリーンらの結果によれば、現代人の祖先とネアンデルタール人の祖先との分岐は、従来言われていた20万年前よりもかなり古く、46万ー57万年前あたりのようです。ネアンデルタール人は3万年位前まで生きていたことがわかっていて、ひょっとすると現代人とも交配していたのではないかとの説もありましたが、彼らの研究ではそのような形跡は認められないそうです。彼らはあと2年のうちにネアンデルタール人ゲノムの全体像がつかめると、意気軒昂たるものです。

閑話休題: 私は写真の女性より、スピード(キアヌ・リーヴス、サンドラ・ブロックなどが出演した映画)のバス運転手の方がネアンデルタール人らしいと思うのですが・・・。

参照: RE Green et al.: Analysis of one million base pairs Neanderthal DNA. Nature 444, pp.330-336 (2006)

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