タランチュラ
タランチュラとはオオツチグモ科に属するクモの俗称で、800種類くらいが確認されています。あまり寒いところにはいないようですが、砂漠、草原から森林、山岳地帯まで結構幅広く生きているようです。大きく分けて、地面に穴を掘って生活するタイプと、樹上に巣を作って生活をするタイプがあります。樹上タイプのはビルの梁などで生活することも可能です。なかにはベネズエラやブラジルにいるゴライアストリクイグモのように、足を広げると30cm以上、体重90グラムなんて奴もいます。
タランチュラは猛毒(多数の成分の複合体、種類やオスメスによっても異なる)を持つことでも有名ですが、実はこの毒自体によって大人が死んだという例はないそうで、スズメバチの毒よりは弱いらしいです。ただ毒とともにいろいろなクモのタンパク質も注入されるので、アレルギー反応が起きる可能性があり、こちらの方が危険だという説もあります。
彼らは足の先に鈎状のツメを持ち、また無数の毛先がへら状になった毛が生えていて、これらを使って樹皮やツルツルした岩を登るのですが、さすがに垂直のガラス面などでは滑り落ちそうになることもあるようです。クモは一般におなかに紡績器官があり、そこから糸を出して餌をひっかけるわけですから、転落して糸を出すノズルを損傷したりすると、それは死を意味します。
最近 Gorb 博士らは、コスタリカのゼブラタランチュラは、滑りそうになったときに足にあるノズルから糸を出して、その粘着力を利用して墜落を免れることを発見しました。もちろんこのタランチュラが特異な進化をとげたのかもしれませんが、実はクモの糸というのはもともとクライミングを楽にするアイテムだったのかもしれません。足の糸とおなかの糸が同じタンパク質でできているかどうかにも興味が持たれます。違っているなら、それらのタンパク質の遺伝子を調べれば、進化の様子が見えてくるかもしれません。
世の中にはこれをペットとして飼っている人もいるから驚きです。無臭でおとなしいところがいいそうです。驚かせたりしなければ、噛みつかれることもないようです。ゴキブリ退治もしてくれるようですし。
参照: Stanislav N Gorb et al: Biomaterials: Silk-like secretion from tarantula feet. Nature 443 p.407 (28 September 2006)
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