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2006年9月28日 (木)

色黒のススメ

Img_301388_35443641_0 すでにフロンはモントリオール議定書によって規制されており、日本もこれを批准して規制を進めています。しかしすでに排出されたものを回収することはできないので、当分の間フロンによるオゾン層の破壊を止める手だてはありません。オゾン層の破壊によって、UVBという短波長の紫外線が大量に地上に降り注ぐようになり、これは日焼けや、シミ、そばかす、肌荒れのもとになるばかりでなく、皮膚細胞のDNAを破壊することによって皮膚ガンの発生を増加させる原因となります。特に光線過敏症の人(私も軽い症状ですがその一人です)にとっては深刻な問題です。

生物、特に陸地で生きる生物は昔から紫外線に対抗する手段を開発してきました。皮膚にメラニン色素を集積して紫外線を吸収する、というのもその方法のひとつです。皮膚が大量の紫外線を浴びると、皮膚の細胞がMSHというホルモンを出し、このホルモンの指令をメラノサイト(色素細胞)はMC1Rというセンサーで受け取り、メラニン色素を大量に作り出して皮膚にばらまき、褐色の肌を作って紫外線に対抗するという方式です。もちろん黒人はもともと大量のメラニン色素が肌にあるので、紫外線には強い抵抗力をもっています。一方光過敏症の人の中には、このセンサーが機能不全をおこしている場合が多いと言われています。このような人は紫外線を浴びても褐色の肌にはならず、ダメージだけが残ることになります。

ところで哺乳類は普通体が毛で覆われていますので、紫外線は皮膚を直撃しません。ですから、マウスなどは黒いマウスでも毛が黒いだけで、皮膚へのメラニン蓄積はありませんし、日焼けもしません。ただし耳は毛が少ないので、人と同じように日焼けして黒くなります。ところがマウスにもヒトと同じように、MSHセンサー(レセプター)の機能不全で、光線過敏症になっているミュータントがいます。このようなマウスは紫外線を耳に浴びても、メラニン蓄積はおこらず、ダメージのみが残ります。 D'Orazio 博士らは、このようなミュータントマウスを用いて、光に当たらなくても色黒になれる薬はないかと調べてみました。

そうすると、インドやネパールに自生するシソ科植物のコレウス・フォルスコリなどが含むフォルスコリンというテルペンの1種が、色黒誘導物質であることがわかったと彼らは報告しています。この物質は、脂肪減少に有効ということで、市販のダイエット用タブレットなどにもかなりの量が含まれており(例えば、ハレオ イグナイトなど)、ダイエットしようと思ったら思い切り色黒になってしまったというような人がいるかもしれません。しかし皮膚ガンを防ごうと思ったら色黒にならなきゃいけないわけですから、怪我の功名ともいえるでしょう。ただし色黒目的なら飲むんじゃなくて、肌に塗ったほうがもちろん有効でしょう。

参照: Topical drug rescue strategy and skin protection based on the role of Mc1r in UV-induced tanning. JA D'Orazio et al. Nature 443, pp.340-344 (2006)

写真はルネバンドール佐田野さんの作品です

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