「渋めのダージリンはいかが」へようこそ

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2021年4月18日 (日)

サラとミーナ246: 新しいソファ

サラとミーナの乱暴狼藉、といっても猫の習性なので仕方ないのですが、ソファが破壊されたので廃棄しました。これが結構大変で、普通粗大ゴミは市と契約した業者が有料(1000円くらい)で廃棄してくれるのですが、スプリングや金属フレームがはいっているものは廃棄できないということで、なんと民間の産廃業者に頼まなければいけないのです。そのためには裏返してカッターで布を切断し、内部の構造を確認しなければいけません。そうすると金属フレームがあったので、結局産廃業者に頼むことになりました。¥4000円かかりました。

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さてサラとミーナ、どちらのテリトリーになるのでしょうか?

 

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2021年4月15日 (木)

トリチウムは放射性物質であり、風評被害だけでなく実害もあります

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福島第一原発が事故処理で出たトリチウムを海に放出することが決まりました。このことが特段に危険なことかというと、そうではありません(トリチウム以外の核種がきちんと取り除ければの話ですが)。フランスのラ・アーグ核燃料再処理施設からは年間1京ベクレル以上のトリチウムが放出されており、こんな超弩級の放出に比べれば、兆レベルの福島の排出など可愛いものだという見方もできます。厚労省が制作したゆるきゃら(上図 トリチウム君?)はそういう意味かもしれません。しかし日本は青森県の六ヶ所村にラ・アーグのような再処理施設を3兆円かけてほぼ完成させており、ここが稼働するとラ・アーグと同様な超弩級のトリチウム排出が行われると思われます。圧倒的に危険なボスキャラは六ヶ所村再処理工場です。

トリチウムは外部被曝はほぼないと言われていますが、内部被曝は確実にあります。核燃料の再処理は確実に地球を汚染し、人間も含めて地球上のあらゆる生物の遺伝子に悪影響を与えます。マスコミは風評被害という言葉を連呼しますが、これはとても危険なことです。トリチウムに実害はないという誤ったイメージを国民の脳に刷り込む効果があるからです。私は信心深い方じゃないので「神への冒涜」とは言いませんが、大量の放射性物質を垂れ流して自然を汚染すれば、当然癌は増えますし、生物相にも影響が出るでしょう。

だいたい外部被曝はないということになっていますが、本当にないのでしょうか? 確かにトリチウムが出すβ線は紙1枚で遮蔽できますが、じゃあ紙1枚がなかったらどうなるの? という話です。たとえば霧が出ると、霧は鼻粘膜とか気管支や食道に吸い込んでしまうので、外部被曝もありそうです。皮膚の表層の細胞や髪の毛の細胞は、ほぼ死んでいる細胞といってもいいのですが、メラノサイトなど一部生きている細胞も表層にあるので、これらがトリチウムのβ線に反応しても不思議ではありません。

6年前に私が書いた記事は、もうソースはリンク切れになっていますが再掲しておきます。

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週刊プレイボーイ編集部と菅直人元総理らは、福島第一原発の沖 1.5kmに船を出して、原発周辺の謎の霧観察や海水のサンプリングを行い、長崎大学大学院工学研究科の小川進教授らと共に分析しました。

少し記事を引用します。
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船上取材に同行した放射線知識が豊富な「南相馬特定避難推奨地域の会」小澤洋一氏も、後日、あれは気になる現象だったと話してくれた。「私は昔から海へ出る機会が多いのですが、フクイチだけに濃い霧がかかる現象は記憶にありません。凍土遮水壁の影響で部分的に地上気温が下がっているとも考えられますが、トリチウムが出ているのは事実なので、その作用で霧が発生する可能性は大いにあると思います。だとすれば、あの船上で起きた“気になる出来事”にも関係しているかもしれません」

その出来事とは、取材班全員が短時間のうちにひどく“日焼け”したことだ。フクイチ沖を離れた後、我々は楢葉町の沖合20㎞で実験稼働している大型風力発電設備「ふくしま未来」の視察に向かった。この時は薄日は差したが、取材班数名は船酔いでずっとキャビンにこもっていたにもかかわらず、久之浜に帰港した時には、菅氏とK秘書、取材スタッフ全員の顔と腕は妙に赤黒く変わっていた。つまり、曇り状態のフクイチ沖にいた時間にも“日焼け”したとしか考えられないのだ。
--------------------------------引用終了

トリチウムのβ崩壊

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トリチウムはDNAに取り込まれたあと、上記のようにβ崩壊してヘリウムを生成するので、その部分のDNAが壊れ(水素がはいっているはずなのに、ヘリウムがはいっている分子に変わってしまう)、突然変異が誘起されます。実際はるか昔から実験的に突然変異が発生することはわかっていました。それ以外にも、分子レベルの距離ではトリチウムのβ線は分子を破壊するだけのパワーを持っています。トリチウムは水の水素にかわることができるので、体のあらゆる部分で破壊活動を行うことができます。

皮膚にβ線(電子)がぶつかることによって、紫外線(電磁波)と同様皮膚が焼けて日焼けになったのでしょう。トリチウム焼けが日焼けより始末が悪いのは、気管支や食道に霧などに含まれるトリチウムを吸い込むと、それらの臓器まで焼けてしまうことで、つまりクリームやファウンデーションでは防げないということです。気管支や食道が日焼けすると癌が発生する可能性が高まると思われます。ともかく福島第一原発には無防備では接近すべきではないでしょう。

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六ヶ所村の再処理をやめるには、原子力発電をやめなければいけないのですが(現在はラ・アーグまで運んで再処理してもらっている)、福島第一原発の事故処理水はどこかに置いておけば済むことなので、実はそんなに困難なことではありません。場所さえ見つければ良いのです。150年くらい保管すればすべて崩壊して無害になるので、プルトニウムのような気の遠くなるような話ではありません。山林を買うか、タンカーを買うかで解決することです。小出裕章氏は船で新潟まで輸送して、柏崎刈羽原発の敷地に保管すれば良いとおっしゃってました。

とめよう!六ヶ所再処理工場(原子力資料情報室)
https://cnic.jp/knowledgeidx/rokkasho

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2021年4月13日 (火)

続・生物学茶話138: GPCRの進化

これからもGPCR(G protein-coupled receptor)にはたっぷりと付き合わないといけないと思いますので、このあたりで少し整理しておます。まず代表としてウィキペディアにあった牛のロドプシンの立体構造図を表示します(1、図138-1)。ロドプシンはGPCRの中では最もシンプルなもののひとつです。なぜなら光による構造変化がその仕事なので、リガンドをキャッチする細胞外のN末部分がいらないからです。それでも細胞膜を7つのαヘリックス(1番から7番まで番号がついています)によって7回貫通する構造、3量体Gタンパク質を保持する細胞内の構造というGPCRとしての基本ははずしていません。GPCRはかならずN末を細胞外に、C末を細胞内に露出します。

ロドプシンと似た構造を持つタンパク質はすでに真核生物以前の段階で認められています。ただし古細菌のバクテリオロドプシンは7回貫通構造はあるものの、Gタンパク質を結合することはできません。なぜなら彼らのタンパク質は情報伝達を行っているのではなく、光エネルギーによってプロトンを細胞外に排出し、細胞内外のプロトンの濃度差を利用してATPを合成する目的で機能するなど情報伝達以外の多彩な機能を持つものです。詳しくは拙稿をご覧ください(2)。

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図138-1 ウシロドプシンの構造

図138-2は一般的なGPCRの分類を示しています。ヒトゲノムには約350種類のGPCR遺伝子があるそうです(3)。この中にはまだ機能が不明なものも多いようなので、研究が進展すれば分類法も変わるかもしれません。

クラスAはシンプルな構造のロドプシンに近縁のタンパク質群で、細胞外のN末部分、細胞内のC末部分共に特に長くはないグループです。クラスBは細胞外のN末部分に長いリガンド結合部位を持つタイプのグループです。リガンドがペプチドの場合、それを認識する部位のサイズが大きくなるのはやむをえません。クラスCは2量体を形成していて、さらにN末・C末部分が共に長いという特徴があります(4、5)。クラスCのN末ドメインは細菌時代の祖先タンパク質から構造が保存されているというのは驚きです。とはいっても細菌にクラスCのGPCRがあるわけではなく、アミノ酸の輸送など全く別の機能を持つタンパクだそうですが(5)。

一般的に言って図138-2の分類は細胞の外側部分の特徴によるもの、すなわちリガンドの種類に即した構造によってわけられているもので、細胞内のC末部分による機能の違いは考慮していません。したがって細胞内部分に結合するGタンパク質の違いによって、機能が正反対になることもあり得ます。

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図138-2 GPCRの分類

ここでウィキペディアの図を使ってGPCRの動作機構を復習しておきましょう。図138-3は私が日本語キャプションを追加したものです。細胞外のリガンドを受け取ったGPCRは構造変化をおこし、その結果Gαに結合していたGDPがはずれ、代わりにGTPが結合します。GTPが結合したGαはGβγと解離し、GPCRからも離れてシグナリング活動を行います。同時にGβγも独自に活動します。Gタンパク質が離れたGPCRはリガンドを解離します。Gαに結合していたGTPが加水分解されGDPになると、Gαは再びGβγを結合し、さらにGPCRと結合してスタンバイ態勢にはいります(1、図138-3)。

GβとGγは強固に結合しており、その主たる機能はGαの活動を制御することにあると思われますが、独自にフォスフォリパーゼ活性やイオンチャネル活性を制御するとも言われています(6)。

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図138-3 GPCRの動作機構

文献(5)によると、哺乳類のGタンパク質α、β、γはそれぞれ20種類、6種類、12種類前後あるとされており、同じリガンドがやってきても、細胞内ドメインに結合しているGタンパク質の種類が変わると、異なる生理作用が発動されることがあります。ですからGタンパク質の分布によって、ある臓器では促進、別の臓器では抑制という結果になることもあり得ます。

図138-4では大まかなGαタンパク質の分類とそれぞれの作用を記しています。Gsのsは stimulation を意味し、アデニル酸シクラーゼを活性化します。その結果増加したcAMPはプロテインキナーゼAを活性化することによって、細胞の代謝に広範な影響を与えます。Gi/oのi/oは inhibitory/others を意味し、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制し、フォスフォジエステラーゼを活性化することにより、Gsとは逆の効果を持ちます。Gq/11、G12/13もそれぞれ図138-4のような作用があります。それぞれの詳細な作用機構についてはここではふれませんが、詳しく知りたい方は文献(7)などをご覧ください。また後にここでも取り扱うことがあるでしょう。

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図138-4 Gαタンパク質の分類

ここでは動物(メタゾア)におけるGPCRの起源についてみていきましょう。私たちは左右相称動物の一員ですが、左右相称動物が出現する以前に地球上に存在したと考えられているのは、図138-5に代表例を示した4つのグループ、すなわち海綿動物・刺胞動物・有櫛動物・平板動物の各門に所属する動物です。

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図138-5 左右相称動物出現以前から存在していたと思われる動物

Krishnan、Schiöth らはこれらの動物のGPCRを調べました(8、9)。その結果驚くべきことに、これらの動物も、私たちと同様クラスA・B・C・DすべてのGPCRを持っていることが明らかになりました。それも1つ2つではなく、すべての門の生物が非常に多くの種類のGPCRを利用していることが明らかになりました(図138-6)。注目すべきはメタゾアに最も近いとされている単細胞生物(原生生物)の襟鞭毛虫もGPCRを持っていることです。しかし彼らのカタログからはクラスAが欠けています(図138-6)。これは多細胞生物が出現することとクラスAのGPCRが関連していることを示唆していますが、さらなる研究が待たれます。

海綿動物や平板動物のように神経系を持たない生物もGPCRを保有しているということは、メタゾアにおけるGPCRの出発点は情報伝達にあるのではなく、細胞接着などの機能によって多細胞生物としての最低限の形態を維持するなど別個の機能だったということが示唆されます。

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図138-6 左右相称動物より古くから存在する動物のGPCR

原生生物ばかりか細菌もバクテリオロドプシンという膜7回貫通タンパク質を持っていることが知られています(10)。このタンパク質はプロトンポンプであり、光エネルギーを化学エネルギーに変換する上で重要な働きを持っています。最近クロロフィルを用いた光合成機構を獲得したシアノバクテリアにもロドプシンが存在することが明らかになりました(11)。酵母には数個、植物には十数個のGPCR遺伝子が存在することが知られています(12)。de Mendoza らはGαタンパク質について大規模な調査を行い、メタゾア・真菌・アメーバ・バイコンタ一般などあらゆる真核生物にこのタンパク質が存在することを明らかにしました(13)。つまり真核生物のGPCRはGαと共同して機能してきたことが示唆されます。こうしてみると、GPCRはまさに10億年以上の生物の歴史の中で、ずっとその活動を支えてきた伝統の分子と言えます。

参照

1)Wikipedia: GPCR
https://en.wikipedia.org/wiki/G_protein-coupled_receptor

2)続・生物学茶話 112: 光を感じるタンパク質
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/09/post-453128.html

3)群馬大学 若松研究室HP
https://sites.google.com/a/gunma-u.ac.jp/wakamatsu-lab/home/research/gpcr

4)構造生物学:ついに明らかになったクラスC GPCRの構造 (2019)
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/96234

5)天野剛志・廣明秀一、領域融合レビュー, 2, e003 (2013)DOI: 10.7875/leading.author.2.e003 (2013)
https://dbarchive.biosciencedbc.jp/data/leading_authors/data/Doc/Hiroaki-2.e003-PDF.pdf

6)ウィキペディア: Gタンパク質
https://ja.wikipedia.org/wiki/G%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

7)A. Inoue et al., Illuminating G-Protein-Coupling Selectivity of GPCRs., Cell vol.177, pp.1933–1947 (2019)
https://doi.org/10.1016/j.cell.2019.04.044

8)Krishnan, A., Almén, M. S., Fredriksson, R. and Schiöth, H. B. (2012). The origin of
GPCRs: identification of mammalian like Rhodopsin, Adhesion, Glutamate and Frizzled GPCRs in fungi. PLoS ONE 7, e29817.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0029817

9)Arunkumar Krishnan and Helgi B. Schiöth, The role of G protein-coupled receptors in the early evolution of neurotransmission and the nervous system., J. Exp. Biol., vol.218., pp.562-571 (2015)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25696819/

10)ウィキペディア: バクテリオロドプシン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%89%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3

11)東大ら,シアノバクテリアにロドプシン遺伝子発見 オプトロニクスオンライン (2020)
https://optronics-media.com/news/20201104/69609/

12)諏訪牧子 ゲノム情報解析から概観するGPCR プロテオーム ファルマシア vol.50, no.9, pp.888-892 (2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/9/50_888/_pdf

13)Alex de Mendoza, Arnau Sebe-Pedros, and Inaki Ruiz-Trillo1, The Evolution of the GPCR Signaling System in Eukaryotes: Modularity, Conservation, and the Transition to Metazoan Multicellularity., Genome Biol. Evol. vol.6(3): pp.606–619 (2014)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24567306/

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2021年4月11日 (日)

リセ・ダヴィドセン 世界を席巻するであろう驚愕のソプラノ

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人に勧められて Lise Davidsen という人のCDを入手しました。アマゾンの検索ではこのCDしかヒットしませんでしたが、他にもすでに何枚か出版しているようです。

半信半疑で聴いてみましたが、これが驚愕のソプラノだったので紹介します。ノルウェー出身で、もう34才だそうですが、強靱さとやわらかさを兼ね備えた声は希有です。ビルギット・ニルソンの再来だという声もありますが、私はこの人の声量豊かでありながら繊細でフェミニンなところを買います。ワーグナーの楽劇にぴったりですね。サロネンが強力に推しているようです。

ともあれ聴いてみましょう。

#おごそかなこの広間よ Dich, teure Halle ワーグナー楽劇「タンホイザー」より
https://www.youtube.com/watch?v=U9TofuLQOuk

#君こそは春 Du bist der Lenz ワーグナー楽劇「ワルキューレ」より
https://www.youtube.com/watch?v=TmQOr32M7HA

#ジークリンデ役のリセ ワーグナー楽劇「ワルキューレ」より💥
https://www.youtube.com/watch?v=a08o1iGM1Z0

#リサのアリア チャイコフスキー歌劇「スペードの女王」より
https://www.youtube.com/watch?v=Y45BmLhLxiQ

#”Schmerzen” ワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」より
https://www.youtube.com/watch?v=MRru3QruKPQ

ホームページ:http://www.lisedavidsen.com/



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2021年4月 9日 (金)

新型コロナに思う

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🚩 飲食店に補助金・助成金を出すのをやめる。Go to eat もやめる。
政府はその代わり飲食店に抗原検査キットを配って、「入店前に外で検査してもらって陰性だったら入店」にすればいいのではないでしょうか? 時短も不要で、マスク会食なんてめんどうなこともやらなくてすみます。大規模なコンサートは無理でしょうが、数十人規模の客のライブならこれでできますよ。

🚩 団体旅行は予定が前から決まっているので、政府は旅行代理店のPCR検査代金を負担して、「あらかじめ全員PCR検査してバスで旅行してもらう」ことにすれば、非常に安全な団体旅行ができます。Go to travel など不要です。

🚩 オリンピックは無観客で、セレモニーも簡素にして行うべきだと思います。もうすでに飛び込み競技などはやらない方向で進んでいるようですが、参加ありきで予選を強行するようなことはやめて、無理なくできる競技だけでやればいいと思います。

🚩 アストラゼネカのワクチンは、独仏伊では血栓症発症の恐れがあるため使わない方向で進んでいますが、日本でもやめるべきでしょう。またmRNAワクチンもまだいわば「治験」に参加するような感じなので、進んで打ちたいとは思いませんね。このmRNAは普通のmRNAではなくてUが1メチルψUに置き換えられています。どのような形で分解処理されるのかがわかりません。すでに死者もでているようです。タンパク質のワクチンが出回るようになれば、こちらは枯れた技術の製品なのでとりあえず接種したいですね。タンパク質のワクチンで死んだらあきらめがつきます。

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2021年4月 8日 (木)

懐かしいMD

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MDは絶滅したのでしょうか? いいえ、機器はティアックがまだ製造していますし、メディアはソニーが製造しています。とはいえ絶滅危惧種であることに間違いはありません。

MDはカセットテープより小さいし、頭出しもできるし、ワカメ状に伸びたりしないので、カセットテープより優れたメディアだと思いました。ではどうして絶滅危惧種になったかというと、それは iPod の登場によります。日本の野望がアップルによって打ち砕かれた瞬間です。私も iPod classic は愛用していました。しかしそれも今や製造されていません。そのたびに内容を移し替えるのに苦労しました。

クラシック音楽のファンというのは1000枚や2000枚のCDを持っているのは普通です。この人々はポップスのように演奏者ごとにわけて棚におさめるのではなく、作曲者ごとに納めます。ところが多くのCDでは複数の作曲家の曲が混在しています。ですから多くのCDが整理不可能な状態になって、取り出しにくくなっているわけです。この問題を解決してくれる iPod classic は神でした。どうしてこの製品をアップルが製造中止にしたのか理解できません。結局私はPCに移して、PCで音楽を聴くという無粋なスタイルを強いられました。

日本の家電メーカー凋落の象徴となったMDの敗戦ですが、CDはまだ生き残っています。ならばCDをやめてすべてMDで新作曲を出版すれば良かったじゃないかと思いますが、そこまで踏み切れなかったのが日本のメーカの弱腰でした。

これは私見ですが、MDがCDに取って代われなかった理由のひとつが、タイトルを小さい字で書かないといけないということだと思っています。写真のMDでも、漢字が書きにくくてひらがなにしたり、曲目を書くのがせいいっぱいで歌手の名前まで書けないとか困っていることがうかがえます。結局家電メーカーの人々は、小ささにばかりこだわって、使い勝手が良い適切なサイズということに考えが及ばなかったんですね。カセットはこんなに小さな字で書かなくても良いので、むしろMDより堂々と生き残っています。

引き出しを整理していたら、写真のような懐かしいMDが出てきました。字が小さいのでクリックして拡大して見てください。

雪の降る夜は:後藤泰代
フレンド、心の水彩画:高橋リナ
アスファルトの上の砂、風の予感:沢田聖子
フォトグラフ、大好きなシャツ:渡辺満里奈
Avec toi maintenant、すねてごめん:裕木奈江
How are you?、風の祭日:相馬裕子
あなたが好き、Feelin'blue:浜本沙良

すべて女性ボーカリストのMDでした。

浜本沙良 Feelin' blue
ゆったりとしたバラードです

https://www.youtube.com/watch?v=nwRwXhohdQo

うちのサラの名前は沙良さんのお名前を拝借したものです。

 

 

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2021年4月 5日 (月)

続・生物学茶話137: アドレナリンとノルアドレナリン

アドレナリンはホルモンであると同時に神経伝達因子であるという物質です。ホルモンとしては副腎髄質で合成され血中に放出されて、心拍数を上げる、血圧を上げる、瞳孔を開く、血糖値を上げる、消化管の活動を抑制する、痛みを感じないようにする、など「興奮状態」あるいは「闘争に適した状態」を作り出すとされていますが、実際にはもう少し複雑です。

アドレナリンはアミノ酸のひとつであるL-チロシンから4つのステップを経て生合成されます(1、図137-1)。まずチロシンのベンゼン環にもうひとつOHをつけ、次にカルボキシル基を取り外しドーパミンとなります。この時点でアミノ酸ではなくなり、カテコールアミンというグループの化合物が形成されます。ドーパミンは中枢神経系の神経伝達物質のひとつであり、かつアドレナリン合成の中間生成物でもあります。これにさらにOHが添加され、ノルアドレナリンができます。ノルアドレナリンにS-アデノシルメチオニンから持ってきたメチル基をひとつ添加することによって、アドレナリンが合成されます。

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図137-1 アドレナリンの生合成

アドレナリンの情報を細胞の受容体がキャッチしなければいけないわけですが、アセチルコリンの場合GPCRとイオンチャネルの2つのタイプがありました(2)。アドレナリンではどうでしょうか? 1948年にジョージア大学の薬理学者アルクイスト(図137-2)が得た結論は結構複雑なものでした。正確を期すため原文を引用しておきます。

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The alpha adrenotropic receptor is associated with most of the exitatory functions
(vasoconstriction, and stimulation of the uterus, nictitating membrane, ureter and dilator pupillae) and one important inhibitory function (intestinal relaxation). The beta adrenotropic receptor is associated with most of the inhibitory functions (vasodilation, and inhibition of the uterine and bronchial musculature) and one excitatory function (myocardial stimulation).

(拙訳)α型アドレナリン受容体は多くの興奮性機能(血管収縮、子宮・瞬膜・尿管・瞳孔拡張の刺激)とひとつの重要な抑制的機能(腸の弛緩)と関係があり、β型アドレナリン受容体は多くの抑制的機能(血管拡張・子宮や気管支の筋肉組織の抑制)とひとつの興奮性機能(心筋の刺激)に関係があります。

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現在ではアドレナリン受容体はα1型3種類、α2型3種類、β型3種類の計9種類が存在することが明らかになっています。図137-2にリストアップしました。機能は多岐にわたっていますが、このリストでは一部のみ記しています。もう少し詳しいリストを図137-4に掲載しています。

ノルアドレナリンはアドレナリン合成の中間生成物ですが(図137-1)、アドレナリンと同様ホルモンかつ神経伝達因子としての役割を持っています(4)。図137-2を見てもわかるように、アドレナリン・ノルアドレナリンは私たちを戦闘態勢にさせるとはいっても、実際はそれほど単純ではなく、リガンド(アドレナリン・ノルアドレナリン)および受容体の機能の多様性による調整も確保したものであることがわかります。受容体は基本的にアドレナリンとノルアドレナリンに共通ですが、アドレナリンに親和性が高いもの、ノルアドレナリンに親和性がたかいもの、両者に対して親和性が高いものに分かれており、アドレナリンとノルアドレナリンの使い分けが可能になっています(図137-2)。

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図137-2 レイモンド・アルクイストとアドレナリン作動性受容体の多様性

9種類の受容体はすべて膜7回貫通3量体Gタンパク質共役受容体(GPCR=GTP-binding protein-coupled receptor )です(図137-3)。アセチルコリンの受容体はイオンチャネルの場合もあるので、アドレナリンによる情報伝達はアセチルコリンほど迅速でなくても大丈夫だということなのでしょう。

GPCRは生物が発明したタンパク質の中でも最大級に重要なタンパク質であり、「薬のすべてがわかる!薬学まとめ」によると、「医療に用いられている薬の約半数は、直接的もしくは間接的にGPCRを標的としている。世の中にある薬の半分はGPCRが関わっているということである。」のだそうです(5)。細胞を家に例えればGPCRはポストに例えられるでしょう。注意すべきは、誰が開封して読むか(Gタンパク質)によってとる行動は異なるということです。

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図137-3 受容体が結合しているGタンパク質による機能の違い

α型には3量体Gタンパク質のαサブユニットがGqのもの(α1型)とGiのもの(α2型)があり、α1型はアセチルコリン受容体のM1、M3、M5型の場合と同様に、GqがPLC(フォスフォリパーゼC)を活性化し、PLCがイノシトール4,5-ビスリン酸をイノシトール3リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)に分解し、IP3はERからのカルシウム放出、DAGはプロテインキナーゼCを活性化します。これらの反応が筋収縮などの引き金となり、生物が活発に活動するあるいは戦闘態勢にはいるための準備を行います(図137-4)。

α2型はシナプス前細胞にも存在し、放出されたアドレナリン・ノルアドレナリンをトラップして、これらの情報伝達因子が後細胞や作動細胞にいかないように抑制する役割があります。つまり過剰な反応を調整する役割を担っています。α2型はアセチルコリン受容体のM2、M4型と同じく、共役するGタンパク質のαサブユニットはGiであり、これはアデニルシクラーゼの活性を阻害してcAMPのレベルを低下させ、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性を抑制するほか、グリコーゲンや脂肪の分解を抑制する、心筋を弛緩させる、血小板を活性化するなど、生物が休養・食事・睡眠などを行なうのに適した状態を維持するはたらきがあります(図137-4)。

β型は共役するGタンパク質のαサブユニットがGsであり、GsはGiと正反対にアデニルシクラーゼを活性化する作用を持ち、cAMPの濃度を上昇させます。したがってβ型はα2型とは正反対の生理作用をもたらします。心筋を収縮させ、異化代謝を活性化しますが、平滑筋は弛緩させます。腸を動かすのは平滑筋ですが、食事している場合じゃないということでしょうか(図137-4)。図137-4は文献6等を参考にして作成しました。

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図137-4 アドレナリン・ノルアドレナリン受容体の機能のリスト

アドレナリン・ノルアドレナリンの特徴は神経伝達物質であると同時に、副腎髄質から分泌されるホルモンでもあるということです。これはおそらく生物の進化の過程で、様々な事情で生まれてきたメカニズムであり、もし神様が生物を作ったとしたら、決してこんな混乱を生む可能性があるシステムにはしなかったでしょう。何が起こるかはアドレナリン・ノルアドレナリンが直接決めるのではなく、上記のように受容する細胞のGタンパク質の機能に依存するというワンクッション置いたメカニズムが優れていて、このようなシステムでも混乱が起こらないようになっています。

最近新型コロナウィルスワクチンによってアナフィラキシーショックが発生したときに、アドレナリンを投与するとショックが軽減されるということで、アドレナリンが話題になりました。2011年の Rosas-Ballinaらの報告によると、迷走神経の興奮によって、脾臓に投射する迷走神経から(例外的に)ノルアドレナリンが放出され、その刺激を受けてCD4+T細胞がアセチルコリンを産生し(7)、このアセチルコリンがマクロファージにおける炎症性サイトカインの産生を阻害するということがわかりました(8)。昔からストレスがたまる(交感神経系が活発に活動する)と免疫系の活動が低下して病気になりやすくなるといわれていましたが、ようやく21世紀になってそのメカニズムが明らかになりつつあります。アドレナリンを投与するとアナフィラキシーショックを軽減できるというのも、このメカニズムに関係していると思われます。

 

参照

1)脳科学辞典:アドレナリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%B3

2)続・生物学茶話135: アセチルコリンによる情報伝達
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-5df6c6.html

3)R. P. Ahlquist, A study of the adrenotropic receptors. Am. J. Physiol., vol.153, no.3, pp.586-600 (1948)
https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajplegacy.1948.153.3.586

4)Wikipedia: History of catecholamine research.
https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_catecholamine_research

5)薬のすべてがわかる!薬学まとめ  Gタンパク質共役型受容体(GPCR)
http://kusuri-yakugaku.com/pharmaceutical-field/pharmacolory/receptor/membrane-receptor/gpcr/

6)管理薬剤師.COM
https://kanri.nkdesk.com/hifuka/sinkei25.php

7)Rosas-Ballina, M., Olofsson, P. S., Ochani, M. et al.: Acetylcholine-synthesizing T cells relay neural signals in a vagus nerve circuit. Science, vol.334, pp.98-101 (2011)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21921156/

8)Andersson, U. & Tracey, K. J.: Reflex principles of immunological homeostasis. Annu. Rev. Immunol., vol.30, pp.313-335 (2012)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22224768/

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2021年4月 4日 (日)

マミラリア(サボテン)の子株

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うちのマミラリア(サボテン)ですが、昔のブログを検索すると2008年にはもううちに居ることがわかりました。小さな頃は病弱で非常に手がかかりましたが、すっかり丈夫に育ちました。

しかしすくすくと生長するというのとは少し違って、水平に伸びていくのです。そしてコブみたいな枝が上側にできてきて、これは挿し木できるということがウェブで調べるとわかりました。それでひとつやってみましたが、どうやら無事に生長しそうです。

↑ 2008年のサボテン(マミラリアは左側)とサラとミーナ

 

 

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2021年4月 1日 (木)

サラとミーナ245: クレバーな写真写り

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なにか撮影者が抗議されているみたいですが、サラはこういう顔なんですね。抗議や要求の時は声を発します。

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2~3週間前から窓際のハイビスカスが咲いています。今年の春は異常に暖かいです。3月半ばにケヤキの青葉が出始め、今はかなり樹木全体までひろがりました。これも1ヶ月早いです。

飲用水を出して、先にミーナに飲まれると、サラは「変えろ」と抗議します。新しい水に変えてあげると早速飲みます。一方トイレ砂を新しくすると、後ろでミーナが待機していて入れている途中からでも使おうとします。これは出そうなのを我慢していたのではなく、サラより先に使いたいからなのです。

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2021年3月30日 (火)

続・生物学茶話136: 副腎とアドレナリンの物語

アセチルコリンが神経伝達物質専業であるのに対して、アドレナリンはホルモンと神経伝達物質という2つの役割を果たす兼業分子です。ホルモンとしては副腎髄質で産生され、興奮状態を作り出すために必要とされています。

副腎の存在は旧約聖書に書いてあるという説がありますが、それは脂肪塊とされているだけでとても形態が確認されているとは思えません。ガレノスの記述もあいまいなものなので、おそらく最初にきちんと形態を確認したのは、1552年にバルトロメオ・エウスタキというローマの解剖学者が描いた解剖図がはじめてのようです(1、図136-1)。この解剖図は Tabulae Anatomichae Bartholomaei Eustachii というタイトルで、Nabu Press という出版社から現在も販売されていて、アマゾンなどで入手できます(2)。またフリーダウンロードも可能です(3)。私もダウンロードしました。確かに図136-1の右図に副腎とそれに繋がる血管が鮮明に描かれています。

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図136-1 バルトロメオ・エウスタキと彼が描いた副腎の図譜

リンダ・ゴーマンによると、副腎には皮質と髄質があるということを最初に見つけたのは Culver という人で18世紀のはじめのことだそうですが、 Von Kolliker によって詳しい解剖学的記載が行われたのは19世紀になってからで、その後1836年に Nagel が外側に“cortical”、内側に“medulla”という名前を与えました(4)。この頃副腎は bynieren と呼ばれており、誰が adrenal gland (ドイツ語では nebennieren)という名前をつけたのかはわかりません。Adはラテン語で「近い」、renal は「腎臓の」という意味です(5)。副腎の臓器写真と切片写真がウィキペディアに掲載されていましたので(6)、図136-2にコピペしました。

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図136-2 副腎とその組織切片

ではその副腎はどんな機能を持つ臓器なのでしょうか? その解明については、トーマス・アディソンの1855年の報告(7)が最初の糸口となりました。この報告はフリーで全文読むことができます(7)。彼は副腎の病気によって貧血や慢性疲労という症状が現れることを報告しました。この病気は現在ではアジソン病と呼ばれ、厚労省の難病指定になっています。副腎の不調は結核・自己免疫・腫瘍などが原因で発生します。ブラウン-セクァールはウサギ66匹など、様々な哺乳動物の副腎を摘出すると早期に死に至ることを、シャムオペレーションなども含めた厳密な実験によって確認し、1856年に発表しました(1、8)。彼らの研究によって、副腎は生命維持になくてはならない臓器であることが明らかになりました。

ブラウン-セクァールは自分を実験動物にするような「奇矯な」、そしてある意味「模範的な」科学者で、エピソードは枚挙に暇がありません(1)。ナポレオン3世と敵対して米国に逃れ、リッチモンドで研究していましたが、あまりに多くの動物を飼育する動物園のような研究施設に、近所の住民から苦情が絶えませんでした。また英語が下手で講義を聴くに堪えなかったので、すぐに欧州に舞い戻ることになってしまいました(9)。

アディソンやブラウンーセクァールの研究ではまだ漠然としたものでしたが、副腎の機能を明確に示したのは1894-1895年に発表されたオリバーとシェイファーの研究結果でした(10、11、図136-3)。彼らは副腎から抽出される物質が血圧上昇効果を持つことを示したのです。ジョージ・オリバーは田舎の町医者でしたが、いわば趣味で研究をやっていて、血圧測定器や動脈の直径を測る装置を自分で開発し、仔牛の副腎の抽出液を息子に注射して動脈の直径を測ると細くなっていることに気がつきました。彼は早速ロンドン大学のシェイファー教授の研究室に抽出液を持ち込んで、実験動物として使われていた猫に注射すると、その猫の血圧が急上昇したのです(11)。これがきっかけで副腎の機能がわかりました。

シェイファー研究室のムーア(図136-3)はこの血圧上昇活性をもつ物質を単離しようと試みましたが、ついにその目的は果たせませんでした。しかし彼はこの活性物質が塩化第二鉄で深緑色を呈するという重要な発見をしました(12)。この呈色反応自体は1856年にヴュルピアン(図136-3)がみつけていましたが、ムーアは血圧上昇効果を持つ活性物質がこの反応によって検出できることを示したのです。フレンケルもこのことをムーアより早く報告していましたが、活性物質の同定が間違っていたのでムーアの手柄になりました(12)。とはいえムーアも同定に成功したわけではありません。現代的見地からこの反応を説明し、新しい染色法を開発したと報告している論文があります(13、図136-3)。

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図136-3 副腎の抽出液による血圧上昇と呈色反応

ムーアによってアッセイの方法が確立してから、ロンドンのムーア本人に加えて、ストラスブルクのフュルト、ボルチモアのエイベルらが互いにたたき合う活性物質同定の激しい先陣争いが勃発しました。しかしそれを制したのは明治の日本人上中啓三と高峰譲吉(図136-4)でした。

渋谷駅の東口を出て六本木通りを六本木方向に進むと、すぐクロスタワーが見えてきます。クロスタワーの前を通り過ぎて少し歩くと長井薬学記念館というビルがあります。日本薬学会の事務所があるビルですが、この長井という名前は日本の近代薬学の創始者であり、薬学会の初代会頭である長井長義の名にちなんだものです。

長井長義は波乱に満ちたアドレナリン物語の起点となる人物でもあります。上中啓三(図136-4)は東京大学医学部薬学科に入学し、長井長義の研究室で薬学者としてのスタートを切りました(14)。長井らはエフェドリンの結晶化と構造決定に成功しており、上中もここで有機物質の抽出結晶化の技術をきっちりと身につけることができました。しかも図136-4に示すようにエフェドリンとアドレナリンの構造は似ており、ほぼ同じ方法で抽出結晶化ができたことが、上中の成功の要因でした。ちなみにエフェドリンは今でも使われている鎮咳薬で、塩酸エフェドリンやその誘導体が風邪薬によく含まれています。アドレナリンにも鎮咳作用はありますが、医薬品としては主に強心剤として使われます。最近では新型コロナワクチンによるアナフィラキシー反応を抑制する薬剤として用いられることで有名になりました。

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図136-4 上中啓三と高峰譲吉

上中は前記のように多くの科学者が副腎の血圧上昇活性物質の同定を競い合っている時期1899年に米国の高峰譲吉の研究室に留学しました。留学と行っても行った先はニューヨークのアパートの半地下の一室で、研究員は自分と高峰しかいませんでした。そんな中で上中は1900年にはアドレナリンの結晶化に成功したのです。高峰の才覚でパーク・デイヴィス社という企業を巻き込んで研究を進めたので、サンプルの供給などが順調にいって仕事はスムースに進行し、1901年には論文が出版されました(15)。この論文は私は読んでいませんが、石田によると高峰の単独名の論文ではあるものの、上中やパークデイヴィス社の貢献もきちんと記載してあるそうです(1)。そしてパーク・デイヴィス社は1903年にはアドレナリンを全世界に販売開始しました。高峰とパークデイヴィス社はフュルトにもサンプルを提供し、フュルトによって化学構造式が解明されました(16)。

ところが高峰が1922年に亡くなった後、エイベルは高峰らの業績は自分たちの成果を盗んだものだと言い放ち(17)、その後100年以上米国と米国の影響が強かった日本でもアドレナリンという名は使われず、エイベルが命名したエピネフリンが正式名となっていました。日本薬局方でアドレナリンと改正されたのは2006年で、なんと100年以上も間違った名前が使われていました(18)。

上中・高峰の名誉回復のきっかけとなったのは、上中の実験ノートが公開されたことだそうです(19、20)。元岡山大学教授で上中氏と同郷(兵庫県西宮市名塩)の僧侶中山沃(そそぐ)氏が、自坊の境内に石碑を建立されています(19、図136-5)。

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図136-5 中山沃氏によって建立された上中啓三翁顕彰碑

上中氏は1916年に帰国しましたが、決してエイベルの中傷でひどい目にあったわけではなく、高峰氏が社長だった第一三共製薬(当時は三共製薬)に入社し、監査役にまで上り詰めるというよい人生だったようです(21)。とはいっても、自動車も走っていない馬車時代に、最初に発見されたホルモンであり、神経伝達物質でもあるアドレナリンの精製純化と構造決定をなしとげた上中・高峰・フュルトが、ノーベル賞の栄誉に浴さなかったというのは残念であり、ノーベル財団の大失敗だったと言えるでしょう。

参照

1)石田三雄 ホルモンハンター~アドレナリンの発見 京都大学学術出版会 2012年刊

2)Amazon, Tabulae Anatomicae ... Bartholomaei Eustachii ISBN-10 : 1293046817
ISBN-13 : 978-1293046814
https://www.amazon.co.jp/Anatomicae-Bartholomaei-Eustachii-Bartolomeo-Eustachi/dp/1293046817

3)Historical anatomies on the web
https://www.nlm.nih.gov/exhibition/historicalanatomies/eustachi_home.html

4)Linda S. Gorman, The Adrenal Gland: Common Disease States and Suspected New Applications.,
Clinical Laboratory Science, vol.26, no.2, pp.118-125 (2013)
http://hwmaint.clsjournal.ascls.org

5)Kendra Cherry, What Are Adrenal Glands? verywellmind Psychology
https://www.verywellmind.com/what-are-the-adrenal-glands-2794816

6)Wikipedia: Adrenal gland
https://en.wikipedia.org/wiki/Adrenal_gland#History

7)Addison T., On the constitutional and local effects of disease of the supra-renal capsules., Samuel Highley London (1855)
https://wellcomecollection.org/works/xsmzqpdw

8)Wikipedia: Charles-Édouard Brown-Séquard
https://en.wikipedia.org/wiki/Charles-%C3%89douard_Brown-S%C3%A9quard

9)Sushil Dawka, Charles-Édouard Brown-Séquard: A bicentennial tribute., Internet Journal of Medical Update., January;12(1):1-3. (2017) doi:10.4314/ijmu.v12i1.1
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/156049-Article%20Text-407274-1-10-20170516.pdf

10)Oliver, G. and Schafer, E.A. The physiological action of the suprarenal capsules., J. Physiol.(Lond.), 16, lP (1894)
George Oliver and E. A. Schäfer, The Physiological Effects of Extracts of the Suprarenal Capsules., J Physiol., vol.18(3): pp.230–276 (1895) doi: 10.1113/jphysiol.1895.sp000564
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1514629/

11)H. Barcroft and J. F. Talbot, Oliver and Schafer's discovery of the cardiovascular action of suprarenal extract., Postgraduate Medical Journal
https://pmj.bmj.com/content/postgradmedj/44/507/6.full.pdf

12)Moore B., On the chromogen and on the active physiological substance of the suprarenal grand., J Physiol., vol.21, pp.382-289 (1897)
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1113/jphysiol.1897.sp000660

13)Sylwia Baluta, Karol Malecha, Agnieszka Świst and Joanna Cabaj, Fluorescence Sensing Platforms for Epinephrine Detection Based on Low Temperature Cofired Ceramics., Sensors, vol.20(5), 1429 (2020)
https://www.mdpi.com/1424-8220/20/5/1429/htm

14)上中啓三:wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E4%B8%AD%E5%95%93%E4%B8%89

15)Takamine J., Adrenaline the active principle of the adrenal glands and its mode of preparation. The American Journal of Pharmacy., vol.73, pp.523-531 (1901)

16)Furth O. von, "Zur Kenntnis des Suprarenins (Adrenalins)" . Sitzungs berichte der Mathematisch-Naturwissenschaftliche Klass der Kaiserliche Akademie der Wissenshaften, CXII. Band, Abteilung III, pp.19-48 (1903)

17)山嶋哲盛 アドレナリンの発見と高峰譲吉
https://www.slideshare.net/waii/ss-4357821

18)山野ゆきよし メルマガ 「アドレナリン」もう一つの名誉回復
https://blog.goo.ne.jp/yamano4455/e/385f8411bf242d68e525efcb2ef29a4a

19)中山沃(なかやま そそぐ) 上中啓三のアドレナリン実験ノート教行寺所蔵となった経緯
http://www.chemistry.or.jp/know/doc/isan002_article.pdf

20)山下愛子 上中啓三 : アドレナリン実験ノート Adrenaline Research Note of Uyenaka Keizo (1900)
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007577369

21)三共(株)『三共六十年史』(1960.12) 渋沢社史データベース
https://shashi.shibusawa.or.jp/details_nenpyo.php?sid=3750&query=&class=&d=all&page=14

 

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2021年3月27日 (土)

テレ朝は姿勢を正せ

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テレ朝のサタステでは毎週マウントサイナイの山田という医師を登場させて、ワクチンを安心して打ってよいというキャンペーンを繰り広げていますが、これはいかがなものか?

情報速報ドットコムによると:
https://johosokuhou.com/2021/03/27/45570/

「厚生労働省によると、新型コロナウイルスの副反応は1回目よりも2回目の接種の方が多く、37.5℃以上の発熱症状だけで35.6%となり、1回目の3.3%から10倍以上も副反応の報告が増えたとのことです。
他にも倦怠感が67.3%、頭痛が49.0%などと高い数字が並び、過去の事例だとワクチン接種直後に脳出血とくも膜下出血で死亡した女性(26歳)の報告も掲載されていました。

重いアレルギー反応であるアナフィラキシーは計181件が報告され、その内の47件が国際的な基準に該当。これまで日本国内で接種が終わった回数が約58万回となっていることから、欧米諸国と比べて桁違いにアナフィラキシー反応が多いと言えるでしょう。
副作用の症状一覧には、筋力低下や四肢麻痺、血管迷走神経反射(失神寸前の状態)、呼吸障害・呼吸不全(呼吸困難)、悪心・嘔吐(嘔吐)、顔面腫脹(顔面腫脹)、喘息発作(喘息)などと書いてあり、かなり重いケースもあったと報告されていました。

ただ、政府はこれらの報告を受けても一部の事例だとして、ワクチン接種の中止や見直しは検討せず、情報を集めながら予定通りに実施するとしています。」

となっています。報道というのはこのようにおこなうべきであって、政府がやりたいことのキャンペーンをやるだけなら中国やロシアの報道機関と同じじゃないですか。

そもそも米国でやっている接種をそのまま日本に適用するというのは、体格も体質も異なる民族なのですから無茶です。実際米国在住の日本人である大江千里氏は接種後しばらくして手が動かなくなり、最後は意識を失うという危険な目に遭っています。
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/02/post-0d4b48.html

ですから山田医師を登場させて米国では接種が順調に進んでいるから、日本でも大丈夫という折伏はフェイクです。インフルエンザのワクチンなどとは違って、あまりにも副反応が出すぎです。

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桜便り

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北総の桜も8~9分咲きました。桜を見たくてこのあたりに住むことにしたという人もいるようです。朝写真を撮影して家に帰ってくると、壁に体長約7mmのハムシが来ていました。葉っぱについてなきゃいけない虫なのに、こんなところで何をしているのでしょう。

帰宅して調べてみると、多分 ムネアカサルハムシ (Basilepta ruficollis) だと思いますが、違っていたらごめんなさい。桜の葉っぱが好物のようです。

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2021年3月25日 (木)

ブラームス交響曲第1番 下野-都響@東京文化会館

雨の中、五分咲きの桜の中を駅に。東京に着いてみると雨はやんでいて、桜は満開でした。北総はだいたい1週間東京より開花が遅れます。上野公園の桜並木は人通りも少なくさみしい感じでした。宴会をしているのはここに住んでいるホームレスの方々のみです。

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本日のマエストロは下野(シモーノ)さん、コンマスはボス矢部でサイドは四方さんです。客席は十分にソシアル・ディスタンスをとった席割りで安心です。

最初のドビュッシーの曲はとても若い頃の曲で、でもやっぱりドビュッシーなんですね。ブルックナーの曲ははじめて聴きました。とても美しいアダージョで、こんな曲があったのかとちょっとびっくりしました。都響の弦のアンサンブルが、その凄さをみせつけてくれました。

休憩後のブラームスが圧巻でした。全体的にパワフルで豪壮なブラームス。第2楽章ではボス矢部も力を尽くすソロで曲を引き立てます。第3楽章も慌てず騒がずの骨太な進行で、第4楽章の堂々たるフィナーレになだれ込みます。最後は大見得を切りましたが、こういうのもシモーノの人徳が物を言ってOK。彼は都響メンバーからアドレナリンを引き出す術を知っています。そしてアドレナリンがあふれ出したときの都響の演奏は、聴衆を天空に連れて行ってくれます。こんな激アツの演奏会はコロナがなかったらできなかったかもしれません。やったね 都響! やったね シモーノ! やったね 矢部!

向山佳絵子さんですが、N響やめたみたいだし、このまま都響メンバーになってくれませんかね。無理だろうな~。今日は乗りに乗って弾いていたように思いました。

 

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2021年3月24日 (水)

ワクチンのmRNAはどういう運命をたどるのか??

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ファイザーやモデルナの新型コロナ用ワクチンはmRNAです。
普通mRNAは生体内では必要な時に合成され、使ったらすぐに分解されます。
でも上記ワクチンのmRNAは、ウリジン(uridine)がすべて1メチルシュードウリジン(1-methyl ψuridine)に人工的に変換されているので、酵素が分解できません。ただウリジンがもともと少ない限られたサイトは分解できるかもしれません。そうなると残された未分解部分はそのまま細胞に残されます。それがどうなるかがわかりません。

下記の文献はかなり詳しく書いてありますが、mRNAの分解については書いてありません。つまりわからないのです。困りました。

飯笹久 mRNAワクチン:新型コロナウイルス感染を抑える切り札となるか?
RNA Japan
https://www.rnaj.org/component/k2/item/855-iizasa-2

(引用)筋肉細胞でSpikeタンパク質が発現すると何が生じるのか、細かい影響はわかっていない。したがって、副作用として思わぬ症状が報告されるかもしれない。(引用終)

投与したmRNAは最終的には分解されると書いてあるが、根拠は示されていない。


1 一般社団法人日本感染症学会 ワクチン委員会 COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2102_covid_vaccine_2kasen.pdf

(引用)mRNAワクチンでは、さらに全身反応の有害事象が高頻度にみられています。とくに、倦怠感、頭痛、寒気、嘔気・嘔吐、筋肉痛などの頻度が高くなっていますが、これらの症状は対照群でもある程度みられていることに注意が必要です。発熱(38°C以上)は1回目では少ないですが、2回目の接種後に10~17%みられています。発熱は対照群ではほとんどみられていませんので、ワクチンによる副反応の可能性が高いと思われます。とくに高齢者よりも若年群で頻度が高い傾向があります。不活化インフルエンザワクチン、PPSV23、PCV13の発熱の頻度は、それぞれ1~2%17)、1.6%、4.2%18)ですので、mRNAワクチンでは注意が必要です。

重篤な(serious)有害事象は、ファイザーの臨床試験では接種群で0.6%、対照群で0.5%6)、モデルナの臨床試験でも両群で0.6%と差がありませんでした7)。アストラゼネカの髄膜炎菌ワクチンを対照群とする臨床試験でも、接種群0.7%、対照群0.8%と差がみられていません5)。

また、ワクチンによる直接的な副反応とは言えませんが、接種を受けた人が標的とした病原体による病気を発症した場合に、接種を受けていない人よりも症状が増悪するワクチン関連疾患増悪(vaccine-associated enhanced disease, VAED)という現象にも注意が必要です27)。過去には、RSウイルスワクチンや不活化麻疹ワクチン導入時に実際にみられています。またデング熱ワクチンでは、ワクチンによって誘導された抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(antibody-dependent enhancement, ADE)という現象の可能性が疑われ、9歳未満では接種が中止されています27)。COVID-19と同じコロナウイルスが原因であるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のワクチンの動物実験でも、一部にVAEDを示す結果がみられています28)。(引用終)


SARS-CoV-2 mRNA Vaccine PFIZER CONFIDENTIAL
ファイザー社によって公表されている研究結果
https://www.pmda.go.jp/drugs/2021/P20210212001/672212000_30300AMX00231_H100_1.pdf

かなり詳しい報告ですが、これにも mRNAの運命については記載がありません。

 

 

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仰天-変態でいっぱいの演奏会

原由莉子氏 談

オールブルックナープログラムのピアノコンサートを!ほんまにやります!!!
こんな演奏会は世界を見渡してもそうそうありません。5/23京都を、地球上で最もブルックナー熱がアツい地にしましょう!

全国の変態ブルックナーファンのみなさん、絶対聴きに来てね!!!!!!!!

こちら

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2021年3月23日 (火)

続・生物学茶話135: アセチルコリンによる情報伝達

神経伝達物質やホルモンの研究において、自然にはないのに同様な作用を示す試薬であるアゴニストは重要です。なぜならアゴニストは通常より強く作用するとか、長時間作用するとか、一部の受容体にだけ作用するとかさまざまな条件変更ができるので、生体分子だけを用いる実験よりも多くの情報を得ることができるからです。アセチルコリンの研究で用いられる代表的なアゴニストはムスカリンとニコチンです。

ムスカリン(英語ではマスカラン)はベニテングタケなどある種のキノコに含まれる有毒アルカロイドで、食べると副交感神経を過剰に刺激し死に至る場合もあります。構造式はアセチルコリンに類似していて、アセチルコリンの作用を模倣するアゴニストです(1、図135-1)。19世紀の半ばから抽出され性質が調べられてきましたが(2)、構造が最終的に確定されたのは1957年です(3)。ムスカリンはアセチルコリンと違って、アセチルコリンエステラーゼによって代謝されないので、効果が長引きます。

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図135-1 ムスカリン

アセチルコリンの受容体の中には、ムスカリンには反応せず、ニコチンと結合するグループもあります。ムスカリンに反応するグループをムスカリン性アセチルコリン受容体、ニコチンに反応するグループをニコチン性アセチルコリン受容体といいます。ニコチンは主にたばこの葉に含まれ、昆虫に対して強い毒性を持ち、昆虫による食害を嫌う植物によって発明された化合物と考えられています(4)。ニコチンは一見それほどアセチルコリンと構造が似ているようにはみえませんが、アゴニストとして作用します。ニコチンの構造は19世紀末には報告されていたようです(5)。ニコチンはムスカリンと違って脳血管関門を突破して脳に作用するので、依存性など様々なリスクを発生させます。

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図135-2 ニコチン

さてシナプス間隙に放出されたアセチルコリンを、シナプス後細胞や組織の細胞表層にある受容体が受け取らなければなりません。シナプス間隙はわずか20~40nmというリボソーム一つ分くらいの距離なので、分子の拡散によって短時間で受け取ることができると考えられます。アセチルコリンを受け取るための受容体には、上記のようにムスカリン性受容体グループとニコチン性受容体グループがあります(6)。

ムスカリン性アセチルコチン受容体には5つのサブタイプがあり、それぞれM1~M5と命名されています。組織によって主に存在するサブタイプに違いがあり作用が異なります(7)。図135-3に一覧を示しました。

ムスカリン性アセチルコチン受容体は、7回膜貫通型のGタンパク質共役受容体(GPCR=G protein-coupled receptor)であり(8)、主に副交感神経の活動に関与しています。リガンドを受け取ると、細胞内ドメインに結合している3量体Gタンパク質(αβγ)が解離することによってその役割を果たします。結合している3量体Gタンパク質のαサブユニットには2つのタイプがあり、その違いによってM1、M3、M5が持つG蛋白質はGq型、M2、M4が持つG蛋白質はGi型とよばれます(7、図135-3)。

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図135-3 ムスカリン性アセチルコリン受容体

アセチルコリンまたはムスカリンが受容体に結合すると、Gq型の場合受容体に結合していた3量体G蛋白質がα と β+γ に解離し、GDPと結合していた α はGDPと解離してGTPと結合します。GTPと結合したα (Gq型α-GTP)はフォスフォリパーゼCを活性化します。この酵素の作用によって、フォスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸がジアシルグリセロール(DAG)とイノシトール3リン酸(IP3)に分解され、DAGはプロテインキナーゼCを活性化し、各種のタンパク質のリン酸化が促進されます。またIP3は小胞体のIP3受容体に結合して、細胞質にカルシウムを放出させます(9、図135-4)。

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図135-4 Gq型の作用機構

Gi型の場合、αサブユニットがGTPと結合するところまでは同じですが、Gi型α-GTPはアデニルシクラーゼ活性を阻害し、ATPからサイクリックAMP(cAMP)が合成される反応を抑制します。この結果cAMPプロテインキナーゼの活性が抑制され、様々なタンパク質のリン酸化が抑制されます(9、10、図135-5)。ですから図135-3のM2、M4の場合など、筋収縮やさまざまな異化的代謝を抑制するなど、生物が休養・食事・睡眠などをとるのに適した働きをします。

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図135-5 Gi型の作用機構

ニコチン性アセチルコリン受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)ではなく、受容体そのものがイオンチャネルです。ですからムスカリン性アセチルコリン受容体とは全く異なる構造とメカニズムで動作するグループです。ニコチン性アセチルコリン受容体にも3つのサブグループがあります。それらは筋肉型(NM型) : 神経筋接合部に分布、末梢神経型(NN型):自律神経節、副腎髄質に分布、中枢神経型(CNS型):シナプスに分布です(6)。これらの3つの型は、Gq型とGi型のようにメカニズムが異なるわけではなく、すべてリガンドの結合によってチャネルが開くというメカニズムで動作します。脳科学辞典では骨格筋型(Nm型)と神経型(Nn型)の2種類に分類しています(11)。

ニコチン性アセチルコリン受容体の構造は、宮澤らによる極低温高分解能電子顕微鏡を用いた研究によって解明されました(12、13、図135-6)。この分子は(α、α、β、γ or ε、δ)の5つのサブユニットからなり、それらが環状に配置されてイオンチャネルを形成しています。それぞれのサブユニットは細胞膜を1回貫通しています。5つのサブユニットからなるといっても、中には5つともαであるとかのホモメリックな分子も存在しています(14)。

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図135-6 ニコチン性アセチルコリン受容体の立体構造

アセチルコリンまたはニコチンが受容体に結合すると、受容体のサブユニットがアロステリックな構造変化を起こしてイオンチャネルが開放されます(12、13、図135-7)。このチャネルは、カチオンでありサイズが大きすぎなければ非選択的にイオンを通過させます。したがってリガンドが結合するとチャネルが開放され、ナトリウムなどが細胞内に流入し、ただちに活動電位が発生します。

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図135-7 ニコチン性アセチルコリン受容体の開閉

ニコチン性アセチルコリン受容体は神経細胞だけではなく、グリア細胞・内皮細胞・免疫細胞・肺上皮細胞などにも存在することが知られており、細胞を脱分極させること以外にもさまざまな細胞の機能に関与していることが示唆されています(14)。

重症筋無力症はニコチン性アセチルコリン受容体に対する抗体ができる自己免疫疾患で、この病気にかかると筋収縮が起こりにくくなるなどの深刻な症状がみられます(15)。

参照

1)ウィキペディア:ムスカリン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%B3

2)Schmiedeberg, O., und Koppe, R., Das Muscarin, das giftige Alkaloid des Fliegenpilzes (Agaricus muscarius L.), seine Darstellung, chemischen Eigenschaften, physiologischen Wirkungen, toxicologische Bedeutung und sein Verhältniss zur Pilzvergiftung im allgemeinen., Leipzig: Verlag von F.C.W. Vogel., (1869)
https://books.google.co.jp/books?id=_FZVYpYGrUkC&pg=PP3&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false

3)Jellinek, F., "The structure of muscarine". Acta Crystallographica. vol.10 (4): pp.277–280. (1957) doi:10.1107/S0365110X57000845.
http://scripts.iucr.org/cgi-bin/paper?S0365110X57000845

4)ウィキペディア:ニコチン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%81%E3%83%B3

5)Pinner, A., and Wolffenstein, Ueber Nicotin., Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft., (1891)
https://chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/cber.189102401242

6)ウィキペディア:アセチルコリン受容体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

7)Brian Piper, Muscarinic agonists and antagonists. Health and Medicine, Oct 1, 2012
https://www.slideshare.net/bpiper74/muscarinic-agonists-andantagonists

8)Kubo T. et al., Cloning, sequencing and expression of complementary DNA encoding the muscarinic acetylcholine receptor. Nature vol. 323: pp. 411-416. (1986)
https://www.nature.com/articles/323411a0

9)ウィキペディア:Gタンパク質
https://ja.wikipedia.org/wiki/G%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

10)徳江辰一 Gタンパク質共役型受容体 (GPCR)シグナルの細胞内因子による活性調節機構の解明
東北大学機関リポジトリ
http://hdl.handle.net/10097/40179
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/Tokue-Shinichi-02-09-0079.pdf

11)脳科学辞典:アセチルコリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3#.E5.8F.97.E5.AE.B9.E4.BD.93

12)Miyazawa A, Fujiyoshi Y, Unwin N., Structure and gating mechanism of the acetylcholine receptor pore. Nature. 2003 Jun 26;423(6943):949-55.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12827192

13)宮澤淳夫、藤吉好則: ニコチン性アセチルコリン受容体の構造と機能 蛋白質 核酸 酵素 col.49 no.1 pp. 1-10 (2004)
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.phpyear=2004&number=4901&file=mndiLGM3FM1ZjMmfEFUUKA==

14)Michele Zoli1, Susanna Pucci, Antonietta Vilella1 and Cecilia Gotti, Neuronal and Extraneuronal Nicotinic Acetylcholine Receptors., Current Neuropharmacology, vol.16, pp.338-349 (2018)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6018187/

15)重症筋無力症 薬学用語解説
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E9%87%8D%E7%97%87%E7%AD%8B%E7%84%A1%E5%8A%9B%E7%97%87

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2021年3月22日 (月)

今シーズン(2020~2021)のバルサ

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選手は全力で戦っていますが、無観客で物寂しいスタジアム(カンプノウ)です。

私が今シーズンのバルサで一番心配していたのは、使えるCBがラングレしかいないという場面が必ず来るに違いないということでした。それはすぐにやってきましたが、なんとファームにアラウホとミンゲサというそこそこ使える選手がいたことでなんとかまかなうことができていました。それがアラウホも故障ということで、なんとデ・ヨングを3バックのセンターで使うという、シーズン前には誰も(おそらくクーマンも)頭の片隅にもなかったような布陣でなんとか戦っています。

問題は前にもあって、ゴールに近づくとみんなメッシを探すという忖度サッカーは今でもときどきあります。メッシもそれはよくわかっていてなるべく2列目でゲームメイキングをしようとしていますが、そうなるとペドリの影が薄くなるということもありますが、じゃあアンスーが長期離脱する中で、トップは誰が務めるんだということが一番の問題でした。

グリーズマンはオフサイドラインで構えて待つタイプじゃなく、ウロウロするスタイルですし、ブライスウェイトはカウンターが得意なタイプだし、デンベレはエストレーモタイプでサイドを突破してクロスという役割でしか使われてないし、ということでずっと答えがみつかりませんでした。それがサン・ジェルマンにボロ負けしてやけくそのアウェイで、デンベレをワントップで使ってみたらそこそこ良い感じで、ようやく答えがみつかったんですね。みつかってみたら、どうしてもっと早くこうしなかったんだろう・・・まあそんなもんです。

デンベレをワントップにすると、みんながメッシを探すというのではなく、メッシがシュートを打てる選手を探すという形になって、そうなるとDFが散らばるので自分でもシュートを打ちやすくなりました。しかしここまでたどり着くのが遅すぎて、アトレチコが取りこぼさないと逆転は不可能な状況です。今日もアトレチコはオブラクのスーパーセーヴで勝ったようですし、優勝はなかなか難しい状況です。

無人のスタジアムに浮かび上がる Mes que un club は「クラブ以上」という意味です。つまりFCバルセロナはカタルーニャ人のアイデンティティだという意味だと思います。

私家版イムノ

1.

声を あげよう

われら ブラウグラナ

地の涯からも 集いし友よ

掲げる旗のもと 拳(こぶし)を合わせよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

2.

嬉しい日 悲しい日

どんなときも

心ひとつに 合わせし友よ

掲げる旗のもと 勝利を信じよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

Beth Rodergas - Cant del Barça al Camp Nou
https://www.youtube.com/watch?v=nThOokeS4AY

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2021年3月20日 (土)

レイキャヴィック近郊の火山が噴火

アイスランドの首都レイキャヴィック近郊の火山が噴火したようです。

https://www.bbc.com/news/world-europe-56465393

https://www.volcanodiscovery.com/fagradalsfjall.html

YouTube の映像

https://www.youtube.com/watch?v=rwOYdWwZTbM

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(YouTube の映像より)


アイスランド交響楽団とマエストロ・オリカイネンは無事なのでしょうか?
心配です。

https://en.karstenwitt.com/artist/eva-ollikainen

https://www.facebook.com/evaollikai/

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2021年3月18日 (木)

続・生物学茶話134: 高親和性コリントランスポーター

前のセクションでも述べましたが、アセチルコリンはコリンとアセチルCoAからコリンアセチルトランスフェラーゼという酵素の作用で合成されます(図134-1)。この酵素とアセチルCoAは通常細胞内に必要量がありますが、コリンは大部分を栄養として摂取する必要があるので不足しがちです。特に神経細胞はコリンを合成する能力が低いので、図134-1の反応を進行させるためにはコリンを外界から取り入れる必要があります。つまりこの反応はコリンの濃度が律速しています(1)。

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図134-1 アセチルコリンの合成

アセチルコリンは最初に発見された神経伝達物質で、発見者であるレーヴィとデイルは、昔々の1936年にノーベル賞を受賞しているわけですが(2)、神経細胞におけるコリンの供給に関する研究は非常に難航して現在に至っています。コリンを外界から取り込むためのトランスポーターの全貌が明らかになったのは最近のことです(3)。

1990年頃に後述する様々な神経伝達物物質のトランスポーター遺伝子が次々とクローニングされる中で、コリントランスポーターの研究は屍累々の有様でした(4)。その突破口は思わぬところにありました。1998年にC.エレガンス(線虫)の全ゲノムが解明され、C.エレガンスもコリントランスポーターを持つことから、奥田等は線虫のゲノム塩基配列情報を利用してcDNAの発現クローニングを行なうことにしました。彼らは候補のcDNAをひとつづつアフリカツメガエルの卵母細胞にいれて発現させ、ついに高親和性コリントランスポーター(CHT1)の遺伝子をつきとめました(5)。

奥田らは当初高親和性コリントランスポーターは膜12回貫通蛋白質だと考えていたようですが(4)、後に13回膜貫通蛋白質として確定されました(6)。この結果、N末は細胞外にあり、C末はかなり長いペプチド鎖が細胞内に突出していることになります(図134-2)。

コリントランスポーターの構造解明が遅れたのは、これが他の神経伝達物質のトランスポーターとの類似性がなく、意外なことにグルコーストランスポーターと類似していたことに、構造が解明されるまで誰も気が付かなかったことが大きな要因でした(4)。コリンはもともと栄養物質であり、進化の過程で神経伝達物質として流用されたからこのようなことになったのでしょう。実際コリントランスポーターはグルコーストランスポーターと同様ナトリウムイオンに依存して活動し(7)、アミノ酸配列のホモロジーも20-26%認められました(8)。他の神経伝達因子とのホモロジーは認められませんでした。ラットのCHT1は580個のアミノ酸からなるタンパク質で、マウスとは98%、ヒトとは93%のホモロジーが認められました(9)。

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図134-2 高親和性コリントランスポーターの構造

ここまで述べてきた神経伝達に関与するコリントランスポーターは高親和性トランスポーター(CHT1)のことですが、コリンはフォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、S-アデノシルメチオニンの合成などにも寄与しており、中親和性トランスポーター(CTL1~CTL5)、低親和性トランスポーター(OCT1~OCT2)が知られています(10)。これらのトランスポーターは血液脳関門においても重要な役割を果たしていると思われますが、神経伝達に直接関与してはいないようなので、ここでは文章の脈絡上触れないでおきます。

さてようやくCHT1の遺伝子やタンパク質の構造がわかってきたところで、ひとつ難解な問題が発生しました。それはこのトランスポーターが細胞膜には少なく、なんと多くはシナプス小胞に局在することが判明したのです(11、12)。トランスポーターが細胞膜にあって、その開閉が化学物質で制御されているという普通のメカニズムならアプローチは簡単だったのですが、生物はこのトランスポーターについてはそのような方式はマイナーであり、メジャーにはもっとややこしい方式を採用したことになります。細胞膜にあるCHT1はクラスリン依存性または非依存性のエンドサイトーシスによって小胞にとりこまれ、同時に外界のコリンも取り込まれます。細胞内小胞膜のCHT1は向きが逆になり、小胞内のコリンを細胞質に輸送します。エンドサイトーシスによる小胞内のナトリウムイオン濃度は細胞質より高いので輸送は可能です(図134-3)。

細胞質にはアセチルCoAとコリンアセチルトランスフェラーゼが常に存在するので、コリンはアセチルコリンに代謝されます。アセチルコリンはシナプス小胞膜の小胞アセチルコリントランスポーター(VAchT)によりシナプス小胞に取り込まれ蓄積されます。脱分極が発生すると、シナプス小胞はエキソサイトーシスによってアセチルコリンをシナプス小胞に放出し、小胞膜にあったCHT1は細胞膜に引き取られて局在を変えます。シナプス間隙に放出されたアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼによってコリンと酢酸になります。コリンの一部は細胞膜に局在を変えたCHT1によって細胞に取り込まれますが、CHT1の局在から考えると、エンドサイトーシスによって取り込まれる方式がメジャーだと思われます。細胞膜のCHT1もエンドサイトーシスの結果、小胞の膜に取り込まれます(9、図134-3)。

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図134-3 コリンとアセチルコリンの往来

図134-3に描いてあるなかにも謎があります。たとえばエンドサイトーシスによって発生した小胞とアーリーエンドソームとの関係です。小胞内が酸性になるとCHT1の機能が失われるという報告もあります(13)。またCHT1がどのようなメカニズムでシナプス小胞に集められるかがわかりません。エンドサイトーシスで発生した小胞とシナプス小胞に直接の関係があるのか、すべてアーリーエンドソームを介して吸収と発生を繰り返しているのかも謎です。

参照

1)脳科学辞典: アセチルコリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3

2)続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-bb9eed.html

3)Takashi Okuda et al., Transmembrane Topology and Oligomeric Structure of the High-affinity Choline Transporter., J. Biol. Chem., vol.287, no.51., pp. 42826-42834 (2012)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3522279/

4)奥田隆志、芳賀達也: 高親和性コリントランスポーター -ゲノム情報を利用したクローニング-
蛋白質 核酸 酵素 45巻 10号 pp 1722-1727 (2000)

5)Takashi Okuda et al.,  Identification and characterization of the high-affinity choline transporter., Nature Neuroscience, vol. 3, pp. 120-125 (2000)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10649566/

6)Haga, T., Molecular properties of the high-affinity choline transporter CHT1., J. Biochem. vol. 156(4): pp. 181–194 (2014) doi:10.1093/jb/mvu047
https://www.researchgate.net/publication/264390083_Molecular_properties_of_the_high-affinity_choline_transporter_CHT1

7)Okuda T. and Haga T., Functional characterization of the human high-affinity choline transporter. FEBS Lett. 484, 92–97 (2000)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11068039/

8)Apparsundaram S., Ferguson S. M. and Blakely R. D., Molecular cloning and characterization of a murine hemicholinium-3-sensitive choline transporter. Biochem. Soc. Trans. 29, 711–716 (2001)

9)Fabiola M. Ribeiro et al., The "ins" and "outs" of the high-affinity choline transporter CHT1., Journal of Neurochemistry, vol.97, pp.1–12 (2006) doi:10.1111/j.1471-4159.2006.03695.x
https://portlandpress.com/biochemsoctrans/article-abstract/29/6/711/63047/Molecular-cloning-and-characterization-of-a-murine?redirectedFrom=fulltext

10)岩尾 紅子、稲津 正人: 血液脳関門におけるコリントランスポーターの機能発現 Functional expression of choline transporters in blood-brain barrier., 東大医誌 vo.75 (1), pp. 74-77 (2017)
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/toidaishi075010074.pdf

11)Ferguson S. M., Savchenko V., Apparsundaram S., Zwick M., Wright J., Heilman C. J., Yi H., Levey A. I. and Blakely R. D., Vesicular localization and activity-dependent trafficking of presynapticcholine transporters. J. Neurosci. vol.23, pp.9697–9709 (2003)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14585997/

12)Nakata K., Okuda T. and Misawa H., Ultrastructural localization of high-affinity choline transporter in the rat neuromuscular junction: enrichment on synaptic vesicles. Synapse vol.53, pp.53–56 (2004)
https://keio.pure.elsevier.com/ja/publications/ultrastructural-localization-of-high-affinity-choline-transporter

13)Hideki Iwamoto, Randy D Blakely, Louis J De Felice., Na+, Cl-, and pH dependence of the human choline transporter (hCHT) in Xenopus oocytes: the proton inactivation hypothesis of hCHT in synaptic vesicles., J Neurosci., vol.26(39), pp.9851-9859, (2006) doi: 10.1523/JNEUROSCI.1862-06.2006.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17005849/

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2021年3月14日 (日)

J-POP名曲徒然草211: いちご白書をもう一度 by 石川ひとみ

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「いちご白書をもう一度」というのはもともと学生運動をテーマにしたUSAの映画の題名です。これにちなんでユーミンが作詞/作曲し、バンバンが歌ったのがオリジナルです。ちょうど日本で学生運動の最盛期が終了した頃(1975年)に流行しました。今だけじゃなくて、昔にも大学で講義がストップした(もちろんリモートもない)時代があったのです。

石川ひとみ
https://www.youtube.com/watch?v=2O2ugYpEWxw

バンバン(オリジナル)
https://www.youtube.com/watch?v=Dq7kNt0DDs8

小野友葵子(ソプラノ)+ 東京大学コールアカデミー
https://www.youtube.com/watch?v=DWon3NOxq2U

中森明菜
https://www.youtube.com/watch?v=7pDmyae3NDw

森昌子
https://www.youtube.com/watch?v=zls_qNnvX-w

Someone
https://www.youtube.com/watch?v=zUOyoKWCDtw

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画像は sumally.com より

https://www.youtube.com/watch?v=FNEkO0Yu4AE

 

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2021年3月12日 (金)

欧州諸国でアストラゼネカの新型コロナワクチン接種停止

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欧州各国でアストラゼネカの新型コロナワクチンの接種を中止する動きがあります。現在中止しているのはオーストリア・イタリア・デンマーク・エストニア・ラトヴィア・リトアニア・ルクセンブルク・ノルウェーの8カ国のようです。原因は血栓塞栓症を発症するという副反応が発生したためです。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031200249

日本はこのワクチンを大量に買い付けているようですが、ババを引いた可能性があります。

ファイザーの場合も、日本では異常に多いアナフィラキシーが発生していますが、一度でもUSAに行ったことがある人は、街ゆく人に日本では考えられないような異常な肥満者が多いことに驚いたはずです。>100kgの人にも効くようなワクチンを、同じ量小柄な女性に接種するというのは無茶です。薬の量は○○mg/体重1kgとか、体重あたりで増減するのが当たり前です。昔USAのスーパーの薬局で頭痛薬を買ったら、その1錠の巨大さにびっくりした記憶があります。薬の名前は同じなのですが、1錠のサイズが違うのです。

 

 

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続・生物学茶話133: 毒矢とアセチルコリン

16世紀になってヨーロッパ人が南米を植民地化しようとして侵入するようになり、現地住民と戦闘を行なうようになりました。その際に現地住民が使用する毒矢によって、ヨーロッパ人が麻痺をおこして死亡するということが起こりました。クラーレと呼ばれるその毒の製造法は長い間秘密で不明だったのですが、1800年にアレクサンダー・フォン・フンボルト(ペルー沿岸のフンボルト海流で知られている地理学者)が、つる植物 Chondrodendron tomentosum などの樹皮が原料であることを確認しました(1)。

19世紀の半ば、冒険家のチャールズ・ウォータートンは英国王立科学協会の助力を得て、クラーレでロバなどを麻痺させ、その後ふいごで息を吹き返させるという実験を行って、クラーレの作用が呼吸を阻害するものであることを示しました(2)。クロード・ベルナールはこれにヒントを得て、カエルにクラーレを与えると、筋肉が電気刺激に反応しなくなることを発見しました。ベルナールはさらに研究をおこなって、クラーレは神経と筋肉の接点に作用し、ここで情報伝達を遮断する毒であることを明らかにしました(3、4)。

1930年台にハロルド・キングはこの物質を抽出し、構造式(図133-1)を決定したということになっていますが(5)、最終的に決定されたのは1970年であることがウィキペディアに記載してあります(6、7)。20世紀の半ばから後半にかけては、クラーレを麻酔剤として用いた手術が世界で行われていました(6)。現在でも補助的に用いられる場合があるようです。天木の考察によると、クラーレは私たちの胃に入ると酸で無毒化されるためクラーレで倒した獲物を食べても私たちは大丈夫ですが、草食動物の場合胃が酸性でないため死んでしまうそうです。ですからクラーレを産生する植物は、自己防衛すなわち草食動物の餌にならないためにこのアルカロイドを産生しているようです(8)。

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図133-1 クラーレの毒 d-tubocurarine

ここで当初はクラーレとは全く別の話であったアセチルコリンの話題に飛びます。昔から真菌がつくる麦角の抽出液が血圧を下げる効果を持つことは知られていましたが、麦角は複数のアルカロイドを含んでいるため、その他にも様々な効果をもたらします。毒薬でもあります。1914年にユーインズは麦角に含まれる血圧降下作用を持つ化合物がアセチルコリンであることをつきとめました(図133-2)。デイルはこの物質がナノグラム単位の皮下注射でネコの血圧を下げることなどを確認し、アセチルコリンが神経伝達物質であることを示唆しました(9、図133-2)。その後のデイルやオットー・レーヴィの研究の展開は前セクションに記した通り、アセチルコリンが神経伝達物質であることを証明するものでした(10)。

デイルはクラーレ(tubocurarine)がアセチルコリンの筋肉刺激作用を抑制し、この作用はアセチルコリンが神経から分泌されるのを阻害するのではなく、アセチルコリンが筋肉に作用するのを阻害していることを証明しました(11)。図133-1と133-2を見比べると、アセチルコリンが2分子からみ合ったものがクラーレの分子構造のような感じです。これから想像される通り、クラーレはアセチルコリンが作用すべき構造に先に結合してアセチルコリンが作用できないようにしている、すなわちアンタゴニストとして機能しているわけです(12)。

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図133-2 麦角に含まれるアセチルコリン

アセチルコリンはコリンとアセチルCoAを材料として、コリンアセチルトランスフェラーゼという酵素によって合成されます(図133-3)。アセチルCoAは生物が呼吸を行なっている限りミトコンドリアが産生する物質で、通常細胞質に存在します。コリンはアセチルコリン合成の材料だけではなく、細胞膜の成分でもあり生合成も可能ですが、それでは足りないので栄養として摂取することが必要です。レバー・卵黄・大豆・赤飯用のササゲなどに豊富に含まれています(13)。

図133-3を見るとわかるように、アセチルコリンエステラーゼの活性を阻害すると、アセチルコリンは代謝されないため濃度が上昇します。オウム真理教事件で名前を知られたサリンは不可逆的にアセチルコリンエステラーゼを不活化するので、神経と筋肉の接点シナプスが機能を失い極めて危険な毒物です(14)。

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図133-3 アセチルコリンの合成と分解

神経細胞も必要な量のコリンを産生できないので、細胞膜に高親和性トランスポーターという装置を設置して、コリンを外界から取り込んでいます。コリンの取り込みに成功すれば、コリンアセチルトランスフェラーゼは常に十分な活性が存在するので、直ちにアセチルコリンを供給することが可能です(15、図133-4)。アセチルコリンは小胞アセチルコリントランスポーターによって、シナプス小胞に取り込まれます(図133-4)。驚くべき事に小胞アセチルコリントランスポーターの遺伝子は、コリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のイントロンの中に存在しており、エンハンサーやプロモーターを共有していることが報告されています(16)。

興奮が軸索末端に伝わるとカルシウムが取り込まれ、前セクションに記載したようなプロセス(17)を経て、シナプス小胞が細胞膜と融合して中身がシナプス間隙に放出されます。シナプス小胞ひとつにつき1000~50000分子のアセチルコリンが放出されるようです(15)。シナプス後細胞におけるアセチルコリンの受容体などについては次のセクションで述べます。

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図133-4 シナプスにおけるアセチルコリンの受け渡し

参照

1)ウィキペディア: クラーレ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%AC

2)Wikipedia: Charles Waterton
https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Waterton

3)Bernard, C. Lecons Sur Les Eets des Substances Toxiques et Medicamenteuses; Bailliere: Paris, France, (1857)

4)梶本哲也 矢毒から開発され たアセチルコリンのアンタゴニスト-執刀外 科 手術 に必須の筋弛緩薬-
化学と教育 vol.56, no.9, pp.512-513
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/54/9/54_KJ00007744805/_pdf

5)Charles R. Harington, Harold King. 1887-1956, Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society, vol.2, pp.157-171 (1956)
https://www.jstor.org/stable/769483?seq=1#metadata_info_tab_contents

6)Wikipedia: Tubocurarine chloride
https://en.wikipedia.org/wiki/Tubocurarine_chloride

7)Everett AJ, Lowe LA, Wilkinson S (1970). "Revision of the structures of (+)-tubocurarine chloride and (+)-chondrocurine". J. Chem. Soc. Chem. Commun. (16): 1020., pp.1020-1021 (1970) doi:10.1039/c29700001020
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/1970/C2/c29700001020#!divAbstract

8)天木嘉清 矢毒(クラーレ)のアマゾンより手術室への遥かなる旅
慈恵医大誌 vol.119, pp.221-228 (2004)
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/119-3-221.pdf

9)Wikipedia: Acethylcholine
https://en.wikipedia.org/wiki/Acetylcholine

10)続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-bb9eed.html

11)Dale,H.H.,Feldberg,W. & Vogt,M.. Release ofacetylcholine at voluntary nerve endings., J. Physiol., vol.86, pp.353–380 (1936)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1394683/

12) Wenningmann I, Dilger JP., The kinetics of inhibition of nicotinic acetylcholine receptors by (+)-tubocurarine and pancuronium., Molecular Pharmacology., vol.60 (4): pp.790–796. (2001) PMID 11562442
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11562442/

13)健康長寿ネット レシチン・コリンの効果と摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/lecithin.html

14)ウィキペディア:サリン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%83%B3

15)脳科学辞典:アセチルコリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3

16)Lee E. Eiden.,The Cholinergic Gene Locus., Journal of Neurochemistry., vo.70, no.6, pp. 2227-2240 (1998)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9603187

17)続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-bb9eed.html

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2021年3月10日 (水)

サラとミーナ244: サラが籐椅子に進出

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今までミーナが独占していた籐椅子に、ついにサラが進出しました。せっかく敷いてあげたクッションを排除し、枕にしました。

追い出されたミーナは私の膝に。

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しかしそこは眠るには不都合です。

というわけで、次善の策で床に直置きのクッションに

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2021年3月 8日 (月)

続・生物学茶話132: 化学シナプスの実在とカルシウムチャネル

シナプスといえば、通常は図132-1(1)のような化学シナプスを意味しますが、広義ではひとつ前のセクションで述べたようなギャップ結合も含まれます。この場合、ギャップ結合は電気シナプス、通常のシナプスは化学シナプスと呼ばれることになります。ギャップ結合ではイオンや電子は細胞間のトンネルを自由に往来しますが、化学シナプスでは細胞と細胞で神経伝達物質を受け渡しするという非常に複雑なプロセスを経て情報が伝わります。

どうしてこんな面倒なシステムになっているのでしょうか? 多くの細胞がまとまって同じ作業をする場合電気シナプスは効率的です。しかし細胞ごとに別の作業をやる場合や、それぞれについて制御が必要な場合などは、電気シナプスでは単純すぎて役に立ちません。複雑な作業を行なう神経系では、伝達速度を犠牲にしてでも、細かい分業や個別の制御が可能な化学シナプスが必要になります。

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図132-1 化学シナプス A:模式図 B:電子顕微鏡写真

化学シナプスの存在を予言したのはカハールで、その後数十年を経てデ・ロバーティスやパラーデの電子顕微鏡を用いた研究によって、その実在がようやく証明されました(2、3)。形態学的にシナプスが同定されたので、次はそこで用いられている情報伝達物質の化学的な同定です。その物質は細胞間を移動するのですから、水溶性でなければなりません。このことについて最初に重要な実験を行ったのはオットー・レーヴィです(図132-2)。レーヴィはストラスブルク大学の医学部を卒業後いったん臨床医になりましたが、あまりに多くの患者の死を見て自分が無力であることを思い知らされ、臨床医をやめて基礎医学を志しました(4)。

彼はユダヤ系のドイツ人ですが、1902年にオーストリアのグラーツ大学に職を得て、そこで図132-2に示した重要な実験を行ない、1921年に発表しました。彼は2匹のカエルから心臓を取り出し、片方には迷走神経をつけたまま、片方は迷走神経を取り除いた状態にしました。両者ともリンゲル液(ナトリウム、カリウム、カルシウムを含む生理食塩水)に浸し、迷走神経に電気刺激を与えると心臓の拍動が低下しました。そしてそのときに心臓をひたしていた液を吸い取り、別のリンゲル液に浸しておいた迷走神経を除去した心臓に滴下するとやはり心臓の拍動が低下することを発見しました。

レーヴィの実験結果は、迷走神経の刺激によってリンゲル液に溶け出した水溶性の化学物質に、心臓の拍動を低下させる活性があることを意味します。後にこの物質はヘンリー・デイルによってアセチルコリンであることが証明されました。神経伝達物質の発見です。これらの業績によってレーヴィとデイル(図132-2)は1936年のノーベル生理学医学賞を受賞しました(5)。

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図132-2 神経伝達物質の発見

レーヴィは運の良い人で、彼の実験は迷走神経の働きが活発な冬のカエルを用いた場合だけ再現できることがあとで分かりました(6)。夏に実験していたらこの発見はなかったことでしょう。その運の良いはずのレーヴィでしたが、その後とんでもない不運に遭遇します。ノーベル賞受賞の2年後にドイツ軍がオーストリアに侵攻し、レーヴィは逮捕されてポストや財産をすべて剥奪されることになりました。しかしなんとか収容所送りは免れ、米国に亡命して1961年に亡くなるまでニューヨークで暮らしました。

レーヴィとデイルの業績によって、アセチルコリンという水溶性物質が情報を伝達することはわかりましたが、シナプスがどのように関わっているかはまだ不明でした。これを解明したのがバーナード・カッツでした。バーナード・カッツ(図132-3)もユダヤ系のドイツ人でしたが、彼はライプチッヒ大学の医学部を1934年に卒業するといちはやく英国に実質亡命し、ロンドン大学で研究を行ないました(7)。その後オーストラリアに移住し、シドニーでエクレスとカフラーという共同研究者を得ました。カッツは彼らと共に、アセチルコリンエステラーゼの阻害剤であるエゼリンを用いた実験で、筋収縮が神経筋接合部からの電気刺激によって直接おこるのではなく、神経筋接合部(シナプス)でのアセチルコリンの作用によって間接的に活動電位が発生することを示し、レーヴィとデイルの理論を実証しました(8、9)。

エゼリンの投与によってアセチルコリンの代謝が阻害され、シナプス間隙におけるアセチルコリンの濃度が高まり、筋肉の受容体を刺激することによって筋細胞のイオンチャネルが開き、ナトリウムイオンが流入、カリウムイオンが流出することになり、このような一連の反応によって活動電位が発生し、筋収縮がおこります(8、9)。

カッツはその後オーストラリア国籍を獲得し、第二次世界大戦中はオーストラリア空軍に入隊しました。ニューギニアで航空管制部隊の将校として、日本航空部隊によるポートモレスビーやダーウィン攻撃をレーダーで監視していたようです。戦後ロンドンに戻って研究に復帰しました(9)。当時ニューギニアの日本軍は山越えの無理な移動を命じ、銃火を交えることなく10000名以上の将兵が死亡(病死・餓死)した所謂「イドレ死の行軍」を行ないました(10)。カッツはそのウィットネスのひとりだったかもしれません。

カッツの最大の業績はシナプス前細胞において、神経伝達物質が袋に包まれて保管されており、それが袋単位で膜から放出されてシナプス後細胞を興奮させる役割を持っていることを示したことです(11、12)。文献12にはシナプス前細胞に多数のシナプス小胞が存在することを示す電子顕微鏡写真が掲載されています。カッツのアイデアはその後多くの研究者によって実証され、図132-3のようなシナプスの模式図が描かれるようになりました。カッツは1970年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。

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図132-3 シナプスのスキーム

ニューロン軸索での電気的情報移動、すなわち活動電位が発生する位置の移動は主としてナトリウムチャネルの働きによるものですが、ニューロン末端での化学的情報移動においては主役がカルシウムチャネルに変わります。このメカニズムはウィキペディアで簡潔にまとめてあるので、コピペしておきます(13)。ただし若干の文章変更を行いました。

1.シナプス前細胞の軸索を活動電位が伝わり、軸索の末端にシナプスに到達する。
2.活動電位によりシナプス前細胞の膜上に位置する電位依存性カルシウムイオンチャネルが開く。
3.カルシウムイオンがシナプス内に流入し、化学反応のカスケードが起動され、最終的にシナプス小胞が細胞膜に接して神経伝達物質が細胞外に開口放出される。
4.神経伝達物質はシナプス間隙を拡散し、シナプス後細胞の細胞膜上に分布する神経伝達物質受容体に結合する。
5.シナプス後細胞のイオンチャネルが開き、シナプス後細胞は興奮する(脱分極する)。ただしシナプスが抑制性シナプスであった場合、シナプス後細胞の興奮は抑制される。

図132-3で興味深いのは、シナプス間隙に放出された神経伝達物質のうち、シナプス後細胞にトラップされなかった余剰分子は、シナプス前細胞の自己受容体や能動的再吸収で回収されるという機構の存在です。これは単にもったいないから再利用しようというだけでなく、拡散によって周囲のニューロンに影響を与えるとノイズになってしまうからだと思われます。

カルシウムは、昔から筋収縮に必要であることは知られていました。このあたりの話は江橋節郎の自伝にいろんなエピソードが書かれてあり、楽しく読ませていただきました(12)。そのなかでリンゲル液で有名なリンゲルが、早くも1883年に筋収縮にカルシウムが必要であることを示す実験をやっていたことが書いてあります。またポツラーがカルシウムキレート剤によって筋肉が弛緩することを発見したとも記されてあります。

細胞内のカルシウムイオン濃度は通常10の-8乗から-7乗モルという非常に低い濃度ですが、血清中の濃度は10の-3乗モルという高濃度であり、この著しい濃度差をカルシウムチャネルが維持しているわけです(15)。活動電位が神経末端に到達すると、カルシウムチャネルが開いて一気にカルシウムが細胞内に流入するわけです。この電位依存性カルシウムチャネル(voltage-dependent calcium channel=VDCC)の構造は、ウィリアム・キャテラルらが中心となって解明されました(16、図132-4、図132-5)。

骨格筋のカルシウムチャネル(L型)はα1、α2、β、γ、δ の5つのサブユニットからなり、α2とδはSS結合で共有結合しています(α2δサブユニット)。カルシウムの通り道となるチャネル自体は膜貫通α1サブユニットにより形成され、δ は細胞外、β は細胞内にあります。このほか膜を貫通するα2とγ がα1に隣接しています(図132-4)。複雑な構造のチャネルですが、このようなカルシウムチャネルの原型は細菌にもあるようです(17)。したがってもともとはホメオスタシスに用いられていたものがシナプスに流用されたものと思われます。

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図132-4 キャテラルらによって解明されたカルシウムチャネルの構造

α1サブユニットは6回づつ膜を貫通するドメインを4つ持つ24回膜貫通分子で、アミノ酸の数約2000で分子量190キロダルトンの巨大なサブユニットです(18、図132-5)。α1サブユニットのN末・C末はともに細胞の内側にあります。β サブユニットとγ サブユニットはどちらも4つのαヘリックス部位を持っていますが、γ が膜を4回貫通しているのに対して、β は一度も貫通せず、細胞内に存在します(図132-5)。脳神経系におけるカルシウムチャネルの構造もこれに類似していますが、γ サブユニットについてはチャネルに含まれるかどうかまだ議論があるようです(16)。

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図132-5 カルシウムチャネルタンパク質のドメイン構造

β サブユニットやα1サブユニットの細胞内領域は神経伝達物質の放出制御、シナプス小胞の移動、遺伝子発現の調節などに関与しているとされています。ここでは詳しくは述べませんが、例えばβサブユニットはRIM1という足場タンパク質と結合し、RIM1がシナプス小胞のタンパク質Rab3に結合することが報告されています(19)。このことはカルシウムチャネル複合体が、シナプス小胞を膜近傍に引き寄せる働きを持っていることを示唆しています。シナプス小胞が膜に接近すれば、エキソサイトーシス機構によって神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます(図132-6、図132-1B)。放出されている瞬間の電子顕微鏡写真を前セクションで示しました(20)。

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図132-6 カルシウムチャネルとシナプス小胞からの神経伝達物質放出

参照

1)Wikipedia: Synapse
https://en.wikipedia.org/wiki/Synapse

2)De Robertis, E.D.P., and H.S. Bennett., Some features of the submicroscopic morphology of synapses in frog and earthworm., J. Biophys. Biochem. Cytol. vol.1, pp. 47?58 (1955)
http://jcb.rupress.org/content/1/1/47?ijkey=606ed65709e41ffb73559e700fc15f6bfac2c752&keytype2=tf_ipsecsha

3)Palade, G.E., and S.L. Palay. 1954. Anat. Rec. 118:335. (1954)

4)ウィキペディア:オットー・レーヴィ
https://en.wikipedia.org/wiki/Otto_Loewi

5)Otto Loewi, Novel lecture: The Chemical Transmission of Nerve Action.
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1936/loewi/lecture/

6)Elliot S. Valenstein, The Discovery of Chemical Neurotransmitters., Brain and Cognition vol. 49, pp. 73–95 (2002)
doi:10.1006/brcg.2001.1487
https://pdfs.semanticscholar.org/f7ba/4a5c744019d8e93347a9a04991d8d729a2f7.pdf#search=%27Walter+Dixon+neurotransmitter%27

7)Sir Bernard Katz, Biographical
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1970/katz/biographical/

8)JC Eccles, B Katz, and SW Kuffler., Effect of eserine on neuromuscular transmission. J. Neurophys., vol.5, no.3, pp. 211-230 (1942)
https://www.physiology.org/doi/abs/10.1152/jn.1942.5.3.211?journalCode=jn

9)Bert Sakmann, Sir Bernard Katz: 26 March 1911 - 20 April 2003., Biogr Mem Fellows R Soc. vol. 53., pp. 185-202. (2007)
https://royalsocietypublishing.org/doi/pdf/10.1098/rsbm.2007.0013

10)ニューギニア戦線の「イドレ死の行軍」について 読書放浪記録
http://yryk.seesaa.net/article/446698846.html

11)J del Castillo and B Katz., La base ‘quantale’ de la transmission neuromusculaire. Colloques Int. C.N.R.S. vol. 67, pp. 245–256. (1957)

12)R. Birks, H. E. Huxley, and B. Katz., The fine structure of the neuromuscular junction of the frog., J Physiol., vol. 150(1), pp. 134–144. (1960)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1363152/pdf/jphysiol01288-0154.pdf

13)ウィキペディア:シナプス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9

14)江橋 節郎: カルシウムと私
http://brh.co.jp/s_library/interview/12/

15)千勝典子、松本俊夫: カルシウム代謝とその調節
http://www.nara-gyunyuya.com/contents/ca/15.htm

16)William A. Catterall、Voltage-Gated Calcium Channels., Cold Spring Harb Perspect Biol 2011;3:a003947 (2011)
doi: 10.1101/cshperspect.a003947
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3140680/pdf/cshperspect-CAL-a003947.pdf

17)Stewart R. Durell and H. Robert Guy, A putative prokaryote voltage-gated Ca2+ channel with only one 6TM Motif per subunit., Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume 281, Issue 3, pp.741-746 (2001)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006291X01944080

18)脳科学辞典:電位依存性カルシウムチャネル (このサイトからの引用ですが、α1サブユニットのN末が2つあるようなエラーがある図でしたので、管理人が若干の修正を行いました)
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%9B%BB%E4%BD%8D%E4%BE%9D%E5%AD%98%E6%80%A7%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB

19)清中茂樹,瓜生幸嗣,三木崇史,森泰生、神経伝達物質放出におけるCa2+チャネル複合体形成の生理的意義  生化学 第80巻 7号 pp.658-661 (2008) 
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/11/80-07-08.pdf

20)続・生物学茶話131: ギャップ結合が召喚したゴルジの亡霊
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/02/post-1e14bd.html

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2021年3月 6日 (土)

ミッドナイトブルー Music Bee 賛

私はもちろんLP時代を知っている世代ですが、いまでもLPはファンがいて売っているそうです。私も捨てられないLPを片手の幅くらいは所有していますが、もう2度と聴かないと思います。

だってLPを聴くには、まずニトムズのコロコロのようなクリーナーで表面のほこりを掃除して、カートリッジの針圧調整の1円玉をのせて、おもむろに針を下ろすんですよ。最初から聴くならまだいいのですが、途中の曲を聴くにはそこに命中させないといけません。

LPを光線でトレースする技術はあったにも関わらず、買い換えを期待したのかメジャーな企業は販売を放棄して、一気にCDになだれ込みました。そして最近はCDも買わないで、契約配信で音楽を楽しむ人が多くなったようです。

私はまだまだCD派ですがCDを回すのではなくて、いったんMP3かFLAC形式に落としてPCで聴くことが多くなりました。検索が簡単であることがその最大の理由ですが、ほかにも理由はあります。

私がPCで音楽を聴くときに愛用しているのは「MusicBee」というフリーソフトです。アップルの人は iTunes でいいと思いますが、ウィンドウズ派にはおすすめです。

まず 表示 → スキン → Blue → Midnight で画面のデザインを指定すると下のような画面になります。

Photo_20210306100901

この色調が落ち着いていて、さあ音楽を聴こうかなという気分になります。

ひとつ不満があるのは、ときどき曲順がいれかわってしまうことです。ここに出した画面にもそうなっている曲があります。これを手動でもどすことができません。なんとかしてほしいのですが、無料のソフトなので文句は言えません。

エミリー・シモン
http://morph.way-nifty.com/grey/2014/08/post-6dce.html

 

 

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2021年3月 4日 (木)

加藤陽子著 「戦争まで」

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それでも日本人は、「戦争」を選んだ という本が面白かったので、「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」という続編も読んでみました。
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/11/post-3525d4.html

この本で一番印象的だったのは、日本に「ハル・ノート」という最後通牒を突きつけて、日本を戦争に追い込んだ元凶とされるコーデル・ハル国務長官が、実は米国政府の中でも代表的なハト派だったということです。

ローズベルト大統領も日本との戦争は避けたいと思っていましたが、モーゲンソー財務長官、スチムソン陸軍長官、アチソン国務次官などは主戦派で、さっさと日本をひねり潰そうとしていたというのが米国政府の勢力分布でした。

中国の日本軍は米国の教会・学校をはじめとする諸施設や軍事施設を再三誤爆してハルの顔をつぶしていたのですが、交渉しようとするハルにとって日本軍の仏印進駐は大打撃でした。さすがに日本に対して経済制裁を行いましたが、進駐が北部にとどまっていた頃には、かなり名目的な制裁であり、日本が実質的に窮地に陥らないように配慮されていたのです。

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当時の仏印の地図 現在のベトナム・ラオス・カンボジアなど

しかし1941年に南部仏印進駐がはじまってからは、これが英国や米国にとって致命的な脅威をもたらすものだったので、一気に事態は悪化していきました。もともと日本海軍は石油の備蓄が米国と開戦した場合には1年しかもたないことを知っていたので、米国とは戦争できないことを政府や国民に徹底すべきだったのですが、そんなことはメンツ上できなかったのが日本を壊滅に追いやることになりました。

それでも日本に対する1941年8月1日からの対日石油全面禁輸は、ハル長官やローズベルト大統領が用務や夏休みでワシントンに不在な時に、前記の主戦派が勝手にやってしまって、ハルやローズベルトが知ったのは1ヶ月後だったという話には驚きました。

ハルはその後もあの手この手で日米交渉によって戦争を回避しようとしましたが(*)、結局日米の主戦派によってぶち壊され、最後はハル・ノートの提示に至ったというわけで、この間の事情を知れば、開戦の本当の経緯を知ることができます。コーデル・ハルは1933年から1944年までの長きにわたって米国国務長官を務め、戦後は国連の創設に尽力して、1945にノーベル平和賞を受賞しています。

私はこの本の著者加藤陽子氏のように、政府がやってきたこと、国民が扇動されてきたことについて正確に検証することは大事なことだと思います。政府の重要な会議の議事録を廃棄したり改ざんしたりすることは許されません。

* 公文書に見る日米交渉
https://www.jacar.go.jp/nichibei/reference/index13.html

 

 

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2021年3月 1日 (月)

サラとミーナ243: ミーナが1日で一番緊張する瞬間

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春が近づき、そろそろジョージⅢ世君(ヒヨドリ)ともお別れする季節がやってきました。
今年はずっと配偶者を連れて来ていました。暖かくなると行動範囲を広げるせいか、食べ物が他で見つかるせいか、ベランダにはやってこなくなります。

ジョージⅢ世がベランダにやってくると、ミーナは最初の頃は興奮して窓ガラスに激突したりしていましたが、今はただ見つめるだけです。それでもミーナにとっては一番緊張する瞬間です。目がらんらんと輝いています。サラはたまにチラッと見るくらいです。

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2021年2月27日 (土)

続・生物学茶話131: ギャップ結合が召喚したゴルジの亡霊

カミッロ・ゴルジはイタリア人の医師で、神経組織の染色法を開発しました。例えば皮膚や肝臓の組織切片を色素で染色すると、組織を構成するそれぞれの細胞の形態がわかるのですが、脳神経系の場合細胞が樹状突起や軸索などを出して形態が複雑となり、それぞれが折り重なって何が何だかわかりません。ですからいくつかの細胞だけが染まって、他の細胞は染まらないという特殊な方法が求められていたのですが、ゴルジは硝酸銀で染色することによってそれが実現することを発見しました(1、2、図131-1)。

どうしてこのような染色が実現するのかは現在でも理由が解明されていないそうですが、これによって神経細胞の形態が明らかになったことは事実です。ゴルジはゴルジ体の発見でも有名な科学者です(1)。彼は神経細胞は多核細胞(シンシチウム)を形成して、全神経は分断されずに繋がっているといういわゆる「網状説」を唱えていました。一方ラモン・イ・カハール(図131-1)はニューロン説を唱え、神経細胞はそれぞれ独立しており、シナプスという接合部で連絡していると主張していました(3)。この二人は異なる主張をしたまま、1906年ノーベル生理学医学賞の受賞者となりました(4)。

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図131-1 ゴルジとラモン・イ・カハール

当時でも現在でも光学顕微鏡でシナプスの存在を証明することは解像度の限界から不可能であり、彼ら自身がどちらの学説が正しいか決着をつける観察を行うことはできませんでしたが(4)、後の電子顕微鏡を用いた研究によってシナプスの存在が明らかとなりました。シナプスはシナプス前細胞にあるシナプス小胞に蓄積された神経伝達物質が細胞間隙に放出され、それをシナプス後細胞の細胞膜にある受容体が受け取ることによって情報伝達が行われます(5-7、図131-2A)。このような機構が明らかになって、ニューロン説の正しさが証明され、神経全体がひとつの連続した細胞であるという考え方は否定されました。

しかしその後、神経細胞同士がシナプスのような20nm~30nmの間隙はなく、2~4nmという非常に狭い間隙で接近した状態で接続する場合もあることが明らかになってきました。その構造はギャップ結合(gap junction) というものです(8、9、図131-2B)。ギャップ結合部位ではピンポイントでタンパク質同士が結合していて、その部位だけは無間隙連結となっています(図131-3、4)。その後、中枢神経内には驚くほどの密度と広がりを持ってこのギャップ結合を基盤とするもうひとつのネットワークが存在していることがわかり(8)、現在ではゴルジの網状説もあながち誤りとも言えないということになりました。墓の中のゴルジもさぞ喜んでいることでしょう。

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図131-2 シナプスとギャップ結合

ギャップ結合という構造の存在は1950年代から濱清らによって報告されていましたが(10)、そう名付けられたのは1970年のようです(11)。ギャップ結合部位は通常の細胞膜と異なり、脂質が少なくタンパク質が多いことや、2枚の細胞膜が密着することなどから、密度勾配遠心などを利用した細胞分画法によって分離精製することが可能で(12)、これによって構成するタンパク質の情報などについての知識が得られて、研究は飛躍的に進展しました。

ギャップ結合はある種のチャネルではありますが、その構造と機能は極めて特殊です。図131-3および図131-4に示すように、6分子のコネキシンが集合してコネキシンヘミチャネル(コネクソン)を細胞膜に形成し、その対面の同様な構造と合体してギャップ結合チャネルを形成します。ギャップ結合チャネルは細胞外に開口することはないので、細胞間の連絡のみに用いられます。ウィキペディアの記載によると、開口した場合脊椎動物では485ダルトン、無脊椎動物のでは1100ダルトン以下の分子しか通過させないそうです(13)。当然タンパク質や核酸は通過することはできません。通過できる分子は低分子化合物、無機イオンなどです。ただコネキシンにも多くの種類があって(図131-5)、それらが構成するチャネルのコンダクタンス(電導性)は30pS(ピコジーメンス)から500pSまで様々です(14)。したがって通過できる分子にもバラエティーがあると思われます。

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図131-3 ギャップ結合を構成するコネクソンの構造

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図131-4 コネキシンの6量体が構成するコネクソンが対面結合してギャップ結合チャネルが完成する

ヒトとマウスは共に20種類のコネキシン遺伝子と対応するタンパク質を持っていて、そのうち18種はほぼ同じです(14、図131-5)。これだけアイソフォームが多いにもかかわらず、ほとんどのアイソフォームがヒトとマウスで保存されているということは、それぞれのアイソフォームの役割がきちんと決められていて、他のアイソフォームでは代替できないことが示唆されます。それだけコネキシンタンパク質群は細かく役割分担しているという意味でもあり、まだ解明しなければならない点が多いと思われます。

図131-5にもまだ混乱が見られます。たとえばほぼ同じGJA10という遺伝子の産物であるタンパク質がヒトではCX62なのに、マウスではCx57となっているなど、この図だけみてもまだ整理しなければならない点がいくつか残されています。

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図131-5 ヒトおよびマウスのギャップ結合を構成するコネキシンタンパク質群とそれぞれの遺伝子

無脊椎動にもギャップ結合がありますが、構成するタンパク質はイネキシンというコネキシンとは極めて相同性が低い別のグループです。脊椎動物はイネキシンと相同性が高いパネキシンというタンパク質も保有していて、パネキシンは哺乳類ではギャップ結合タンパク質としての性質を失い、別の機能を持っているようです(14、15)。この際外界に開口するヘミチャネルとして、むしろ通常のイオンチャネルのような形で機能しているようです(16)。イネキシンとコネキシンはアミノ酸配列が異なっていても、ほとんど同じ構造のギャップ結合をつくるという希有なタンパク質ですが、実は似ている部分もあるという報告もあります(16)。
コネキシンは図131-4に示したような4回膜貫通型のタンパク質で、N末・C末共に細胞質側にあります。コネキシンは6分子が集合してヘミチャネルであるコネクソンを形成します。コネクソンは細胞膜を自由に移動することができるので、相手となる他の細胞のコネクソンと出会ってギャップ結合を形成することができます。その出会いは偶然ではなく未知のメカニズムによってアシストされているようです(17)。

ギャップ結合を通る電流=イオンの移動によって多くの細胞を同調して動かすという方式は、心筋細胞のように多くの細胞が同調して収縮するような場合には好適です。また出産時の子宮平滑筋の収縮の際にも有用です。また脳においてはシナプスと両輪で神経細胞の制御を行っているようですし、この他細胞の極性を成立させるなど初期発生の際にも高度な役割を担っているようです(13)。

参照

1)ウィキペディア:カミッロ・ゴルジ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%82%B8

2)脳科学辞典:ゴルジ染色
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%82%B8%E6%9F%93%E8%89%B2

3)ウィキペディア:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%AB

4)福田孝一 もうひとつの神経細胞ネットワーク--ギャップ結合による大脳皮質GABAニューロン間の直接的コミュニケーション 福岡医学雑誌 97(6), 160-174, (2006)
https://ci.nii.ac.jp/naid/120002548747

5)Katharina Heupel et al., Loss of transforming growth factor-beta 2 leads to impairment of central synapse function., Neural Development 3, Article number: 25 (2008)
https://neuraldevelopment.biomedcentral.com/articles/10.1186/1749-8104-3-25

6)Taoufiq Z. & Sasaki T., シナプスとシナプス小胞の電子顕微鏡写真
https://www.oist.jp/ja/news-center/photos/35770

7)ウィキペディア:シナプス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9

8)福田孝一 ギャップ結合による神経細胞ネットワーク
顕微鏡 vol.43, no.3, pp.188-197 (2008)
http://microscopy.or.jp/archive/magazine/43_3/pdf/43-3-188.pdf

9)Bryan Jones., A Most Beautiful Gap Junction
https://prometheus.med.utah.edu/~bwjones/2018/08/a-most-beautiful-gap-junction/

10)濱清 顕微鏡下の一期一会 (JT生命誌アーカイブ)
http://brh.co.jp/s_library/interview/15/

11)Uehara Y, Burnstock G (January 1970). "Demonstration of "gap junctions" between smooth muscle cells". J. Cell Biol. vol.44 (1), pp. 215–217 (1970)
doi:10.1083/jcb.44.1.215. PMC 2107775. PMID 5409458.

12) E L Hertzberg, D J Anderson , M Friedlander , and N B Gilula., Comparative analysis of the major polypeptides from liver gap junctions and lens fiber junctions., J Cell Biol, vol.92, no.1, pp.53-59 (1982)
https://rupress.org/jcb/article/92/1/53/19578/Comparative-analysis-of-the-major-polypeptides

13)Wikipedia: Gap junction
https://en.wikipedia.org/wiki/Gap_junction

14)Eric C. Beyer and Viviana M. Berthoud, Gap junction gene and protein families: Connexins, innexins, and pannexins., Biochim Biophys Acta. vol.1860(1): pp.5–8, (2018) doi:10.1016/j.bbamem.2017.05.016.

15)創薬:明らかになった死細胞処分機構 Nature news & views vol.507, no.7492, (2014)

16)大嶋篤典 ギャップ結合チャネルの構造と機能の研究
http://www.cespi.nagoya-u.ac.jp/BasicBiol/atsu/OshimaResearch.pdf

17)ウィキペディア: コネクシン(コネキシン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%B3

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2021年2月25日 (木)

コロナ収束の鍵はPにあり

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歌手がレコーディングするときや、配信するときに使うポップガードという道具があります。メッシュのような構造で、マイクと口の間に置いて口からの風圧で雑音が発生するのを防ぐためです。ポとかプとかの発声が特に雑音を発生させやすいので、このような名前がついたのでしょう。写真はたのうたさんが YouTube で配信している様子です。

先日あるテレビ番組で飛沫を可視化する実験をやっていて、仰天したのはPからはじまる言葉を発したときに桁違いに盛大な飛沫が飛ぶという結果です。BやSがこれに次ぎますが、その差は歴然です。その他の発声では問題にならないくらい飛沫は少ないです。これは歌手や配信をされている方々は昔から知っていたことではないでしょうか。

Pから始まる言葉を辞書で調べると、パーカー、パーカッション、パーキング、パーキンソン病、パーサー、ってみんな外来語じゃありませんか。わかりました。コロナの蔓延を防ぐ決め手はPからはじまる外来語を使わないということでした。

ですが、これを実現するのは簡単ではありません。第2次世界大戦中ですら大変だったようです。例えばプレイボールは「始め」、ストライクは「1本」、ボールは「ひとつ」、三振は「それまで」とか(おかしいな 三振は日本語なのに)。

http://koushien.s100.xrea.com/senshuken/yakyurule.htm

でもそれでコロナが収束するなら、政府がPから始まる外来語の日本語訳リストを作って推奨すれば、お金もほとんどかからないし、いいんじゃないですか?

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2021年2月22日 (月)

マーラー交響曲第4番 大野-都響@東京文化会館2021 2/22

雲一つない快晴。しかも暖かい。私的には1月19日以来の都響演奏会で、上野の東京文化会館にでかけました。上野に来るのは、コロナのせいもあってほぼ1年ぶりです。雨男ボス矢部は本日の晴天で臨界点を越えて、晴れ男に相転移をしたような気がします。

天気がいいので京成上野から歩くことにしててくてく歩いていると、なぜか路上でフィッシャー店村が美女と談笑していて、その横をすり抜けて公園口へ続く坂道に。1年前に来たときにはこの道は閉鎖されていました。路上エレベーターも健在でラッキー。公園口に着くと全く別の駅に変わっていました。

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御徒町から上がってくる道は行き止まりですが、Uターンできるようになっています。ですからタクシーも可です。駅の2Fには公園口からしか行けない構造で、何軒か飲食店が入っていました。トイレもあります。

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日暮里方面からの道も駅前には出られないようになっており、浅草行きのバスはおそらくここでUターンするものと思われます。

都響スペシャル@東京文化会館は客席50%制限の公演でしたが、それでも完売にはほど遠い感じでした。私は最後方の座席だったので、周りはガラガラです。コンマスはボス矢部、サイドはマキロン、指揮はマエストロ大野です。各パートもほぼベストメンバー。

本日のメインはマーラーの交響曲第4番で、いつもながらの素晴らしい演奏でした。それまでのクラシック音楽から逸脱したような遊びとか諧謔を楽しむような感じに仕上げられていました。基本的にマエストロ大野はマーラーとはテンペラメントが合わないと思いますが、この交響曲第4番は例外的にマエストロ大野にベストフィットだと思います。

ボス矢部は大活躍ですが、鷹栖(オーボエ)さんはやはり華がありますねえ。とりたてて美形とは言えないのですが、オケを牽引するカリスマはマイスター広田を凌駕するモノがあります。木管の諸氏はこの人を大事にして欲しいと思います。

ソリストの中村恵理さんは暗めのドラマティックな声で、ヴィオレッタとかが似合いそう。こういうタイプをこの曲のソリストに選ぶのは珍しいと思いますが、第4楽章が天国のパロディだとすると、これもありかな。

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2021年2月20日 (土)

大江千里氏の災難

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大江千里さん(ピアニスト)はこんな方です。
https://www.youtube.com/watch?v=3A24G0ffclQ

彼は現在ニューヨーク在住で、モデルナのワクチンを接種して失神しました
他のワクチン接種の際にアナフィラキシー反応が出たことはなく、持病もなかったそうです。

以下コピペ 
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/02/ny-59_1.php

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さて副反応もなく1カ月が経過し、2回目のコロナワクチンは、1回目と同じ場所にて同じ要領で。しかし、会場はガラガラだった。予約を取ったのにキャンセルする人も多く、用意されたワクチンがその日に破棄される場合もある。

並び始めてからショットを打つバスケットコートまでわずか10分。ワクチンを打つ担当のアイラスは「どんな気分? この1カ月どうだった?」など僕との会話を急くことなく進める。ワクチン接種の前にはリラックスすることが最も必要なのだ。

「今度のワクチンは打った腕が腫れたり痛くなったりすることも多く、体全体が痛んだり熱を出したりする症例も報告されているの」。

じゃあ、打った後にワインは?「それはOK。飲んでリラックスでしょ?ただ、3日間は家にいてゆっくりしてね」。そんなに?「そう、何が急変するかわからないの」。了解。

目の前に僕用のモデルナワクチンの瓶がある。「緊張してる?」。はい。「私もよ。でもお互い気楽にしたほうがいい」。30番くらいまである接種テーブルで僕は23番。10カ所以上のテーブルで看護師たちが手持ち無沙汰にしている。1回目を初日に打ちに来た時のにぎわいが嘘のようだ。

「じゃ、行くわよ」。一瞬だ。1回目と違うのは、その痛みは尾を引いた。流線型のドーンと奥へ向かう鈍い痛みがあった。終わったあと、拳骨ハグしてスタッフ数人から「15分よ。絶対に動いちゃダメよ」なんて言われ、わかってる!と交わし合い講堂へ。

「あなたは1回目? 2回目?」「2回目です」。「じゃああっちへ。」1回目の人は、時間がないと接種後の15分を待たずにそのまま帰っちゃう人もいる。しかし2回目の場合はスタッフがしっかり監視していて15分は絶対にその場から動かないように見張られる。僕はリラックスして15分その場にいた。

全てが終わりスタッフたちに「ありがとう」を言うと、彼らも口々に「ありがとう」と言う。そんなふうに感謝とリスペクトを交わし合い外へ出る。この日の光はとにかく眩しかった。

だがその日の夜、体調が急変した。2月10日夜、自宅でピアノを弾いているとワクチンを打った左手が激痛で上がらなくなり、そのうちに打っていない方の右手も上がらなくなった。

だんだん全身が痛くなり息が苦しくなった。なので、ベッドへ。ショットを打ったのが午前11時35分ごろ。この症状が始まったのが午後6時ごろ。きつくなったのが午後8時ごろ。そしてベッドで9時半ごろ、急激に調子が悪化。

全身が痛み、ゾクゾクするのになぜか熱い。心臓をわしづかみにされるようで、呼吸もさっきよりも苦しくなる。知らない何かに身体を乗っ取られた感覚がして、僕は直感でやばいと思いマネージャーにメールをするが、彼女からの返事が来るまでの数秒の間に自分の黒目が動かせなくなる。

今まで一度も経験したことのない症状だ。心じゃひたすら「絶対に生きる」と唱えて、そのまま気を失った。

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2021年2月18日 (木)

続・生物学茶話130: クシクラゲ(有櫛動物)の衝撃

数年前に「クシクラゲには実は肛門があってうんちをする」という報告があって、生物学者が衝撃を受けるというちょっとした事件がありました(1、2)。どうしてこんな初歩的とも思われることがそれまでわかっていなかったかというと、クシクラゲを飼育する際に、あまり彼らが好む、あるいは適したエサを与えていなかったので口から吐き出したのを排泄したと勘違いしていたそうです。プレスネルらはエサの小魚のDNAに赤い色素の遺伝子を導入し、肛門から赤い排泄物が排出されるのを確認しました(1)。

クシクラゲはクラゲという名前がついていますが、いわゆる刺胞動物のクラゲ(ミズクラゲやカツオノエボシなど普通のクラゲ)とは全く異なるグループの生物であることは前から知られていました。ただそれまで口があって、消化管があって、肛門があるという一方通行の消化器系システムは、左右相称動物が誕生してからできたものだといわれてきましたが、プレスネルらの実験でクシクラゲはそのシステムをすでに装備していたということになりました。クシクラゲは有櫛動物門(ゆうしつどうぶつもん)というグループに分類されていて、この門に所属する生物はほとんどが海洋を浮遊して生活しています。刺胞を持たないので刺されることはありません。Wikipedia に代表的な種の形態が示してありましたので、図130-1にコピペしました(3)。

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図130-1 さまざまなクシクラゲ  a) ウリクラゲ b) コマクラゲ c) ネフェロクテナ d) チョウクラゲモドキ e) カブトクラゲ  f) チョウクラゲ

クシクラゲの名前は繊毛の集合体である櫛板を持っていることから名付けられたのでしょう。これを動かして遊泳します。ウリクラゲ以外のグループはテンタクル(触手)を持っていて、こちらは泳ぐためではなく、周囲の状況を認識したり餌を捕獲するために使います。刺胞動物門のクラゲのような刺胞はもっていません(3、図130-2)。排泄口=肛門の近傍に平衡胞(スタトシスト)があり、体を定位させることができます(3、図130-2)。体の大部分はほとんど水に近い間充ゲル(ハイドロスタティック・スケルトン)という非常に柔らかい構造になっています。これが生物学者にとっては大変困ることで、網ですくうと壊れてしまう脆弱な構造なのでサンプリングも大変です。マウスの組織に使うような固定液で固定しようとしても水分が多すぎてなかなかうまくいきません。組織標本を制作して観察するのもなかなか困難な生物です。

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図130-2 クシクラゲの構造

有櫛動物はつかめばすぐ壊れるような脆弱な生物なので、水に流されるままのおとなしい受動的な生物かというとそうでもなく、口や肛門周囲だけでなく、表皮直下には「のど側」にも「外界側」にもびっしり筋細胞が分布するほか(皮下筋細胞)、間充ゲル内部にも3次元的に筋肉が存在します(4、図130-3)。彼らは総じて肉食で、なかには同じクシクラゲの仲間を丸呑みしたり、体全体を使って高速で泳ぐ種類もあります。

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図130-3 クシクラゲの筋細胞(橙)と皮下の神経細胞

有櫛動物のひとつ Eoandromeda octobrachiata のエディアカラ紀の化石が2011年に報告され(5)、このグループは普通に動物と呼ばれるグループ(メタゾア)のルーツではないかという意味で一気に注目を集めることになりました。復元図も上記 Tang らの論文(5)に掲載されています(5、図130-4)。ルーツという意味は、ここからメタゾアが進化したという意味ではなく、このグループ(Ctenophora=有櫛動物)がメタゾアの系統の生物の中で最も早期に分岐し、有櫛動物とそれ以外のすべての動物という2つの系統の生物が生まれたという意味です。これはまだ確定したわけではなく、海綿動物(Porifera)が先に分岐したという可能性もまだ残されているようです(6)。

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図130-4 エディアカラ紀のクシクラゲの復元図

有櫛動物門の分類学的位置を決めるために、フロリダの Leonid L. Moroz(図130-6) を中心に世界各国の研究者が参加するコンソーシアムが結成され、研究成果が2014年に報告されました(7)。この結果、有櫛動物門の生物には他の動物の形態形成の基盤となっている Hox遺伝子がみつからない、免疫補体の種類が少ない、miRNAがみつからない、神経やシナプスがあるにもかかわらず(海綿動物や平板動物には神経細胞はありません)セロトニン・アセチルコリン・ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリン・オクトパミン・ヒスタミン・グリシンなど他の生物が使用している神経伝達物質を使っていないなど、様々な観点から有櫛動物門は他のすべてのメタゾアの門から乖離しているという結論が得られました。

この結果推測される系統樹を Moroz が描いていますが(8)、それを私が簡略化したものが図130-5です。おそらくメタゾアの中で有櫛動物が最初に神経系(Neuron 2)を獲得し、そのほかの動物は海綿動物や平板動物を分岐した後、私たちの神経と同系統の神経(Neuron 1)を獲得したものと思われます。

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図130-5 有櫛動物門の分類学的位置 

クシクラゲの皮下神経細胞はまさしくニューラルネットと呼ばれるにふさわしいかご状神経系を形成しており、間充ゲルのものも含めると5000~7000個のニューロンが接続されています(9)。また2ダース以上の種類の筋細胞と少なくとも9タイプのニューロンが、この生物の食餌、遊泳などさまざまな活動をサポートしています。神経や筋肉以外にもさまざまな細胞があり、少なくとも80種類は識別できるそうです(9)。神経細胞は特に口の周りと肛門の周りに集積していて、いわば体の両極に脳があるとも考えられます。実際肛門の周りの神経系は櫛板の動きを調節しているそうです(8)。平衡胞による計測に応じて、姿勢の制御も担当しているのでしょう。Moroz らが明らかにした口の周りの神経を図130-6に示しました(8)。緑が神経ネットワーク、赤が筋線維を示します(図130-6)。テンタクル(触手)用には、ネットワークとは桁違いに太い軸索が用意されています(8)。

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図130-6 クシクラゲのかご状神経ネットワークとモロズ博士

シナプスについても研究されていて、私たちと同様にシナプス小胞を使って神経伝達が行われているようです(8)。またグルタミン酸は神経伝達物質として使われているようです(9、10)。パラレルエボリューションでそんな類似したメカニズムができるのだろうかという疑問がわいてきますが、それは今後の宿題です。

最近クシクラゲが生物発光の基質に使われるセレンテラジンを生合成できることが発見されました(11)。発光する海洋生物は多くはセレンテラジンを使っているようなのですが、実は餌からもらっていて、自力で合成できる生物は希なのだそうです。クシクラゲの発光は外からの光を反射しているだけだという通説は間違いで、自力で発光できるとはおみそれしましたと言わなければいけません。

参照

1)Jason S. Presnell, Lauren E. Vandepas, Kaitlyn J. Warren, Billie J. Swalla, Chris T. Amemiya, William E. Browne.,The Presence of a Functionally Tripartite Through-Gut in Ctenophora Has Implications for Metazoan Character Trait Evolution
Curr. Biol., Volume 26, Issue 20, p2814–2820, 24 October 2016
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982216309319

2)やぶにらみ生物論97: 体軸形成
http://morph.way-nifty.com/grey/2017/12/post-7bba.html

3)Wikipedia: Ctenophora
https://en.wikipedia.org/wiki/Ctenophora

4)M-L. Hernandez-Nicaise, G.O. Machie, and P.W. Meech., Giant Smooth Muscle Cells of Beroe
Ultrastructure, Innervation, and Electrical Properties., J. Gen. Physiol., vol.75, pp.79-105 (1980)

5)Feng Tang, Stefan Bengtson, Yue Wang, Xun‐lian Wang, and Chong‐yu Yin., Eoandromeda and the origin of Ctenophora., Evol.Develop., vol.13, issue 5, pp.408-414 (2011)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1525-142X.2011.00499.x

6)Claus Nielsen, Early animal evolution:a morphologist’s view., Royal Sciety Open Science., vol.6, no.190638 (2019) http://dx.doi.org/10.1098/rsos.190638
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6689584/pdf/rsos190638.pdf

7)Leonid L. Moroz et al., The Ctenophore Genome and the Evolutionary Origins of Neural Systems., Nature, vol.510(7503) pp.109–114. (2014) doi:10.1038/nature13400
https://www.nature.com/articles/nature13400

8)Leonid L. Moroz, Convergent evolution of neural systems in ctenophores., The Journal of Experimental Biology vol.218, pp.598-611 (2015) doi:10.1242/jeb.110692
https://jeb.biologists.org/content/218/4/598

9)Tigran P. Norekian Leonid L., Moroz, Neuromuscular organization of the Ctenophore Pleurobrachia bachei., J. Comp. Biol., vol.527, pp. 406-436 (2019)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30446994/

10)ナショナルジオグラフィック 有櫛動物ゲノム、進化史の書換え迫る?
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9263/

11)名古屋大学公開資料 暗い海に光をもたらす発光生物 クシクラゲが深海性発光物質の生産者であることを発見 
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20201211_iar1%20.pdf

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2021年2月15日 (月)

サラとミーナ242: ミーナのいる生物系統樹

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ミーナも私もオピストコンタであり、メタゾアであり、左右相称動物であり、後口動物なのです。

最近の動物学のトピックスのひとつは、クシクラゲ(有櫛動物)の神経系は他の生物の神経系とは独立に生まれて、独立に進化したらしいことがわかってきたことです。クシクラゲはクラゲという名前がついていますが、クラゲ(刺胞動物)とは全く異なる系統の生物で、6億年くらい前からずっと生きてきて、現在でも赤道から極地までの海に分布しています。

多分 "えのすい" にいます。
https://www.enosui.com/

写真はウィキペディアより借用しました

 

 

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2021年2月13日 (土)

オリンピックは無観客でやるべし

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オリンピックは中止という意見が大勢になってきています。
もうどうやってもオリンピックは日本経済にプラスにならないからでしょう。
でも私はどんなしょぼい大会になったとしてもやるべきだと思います。
なにしろ世界的な伝統行事なのですから。

無観客で、選手はPCR検査・隔離をして大会に臨めばオリンピックで感染が爆発することはあり得ません。観客がいなければセキュリティーの負担は大きく下がるでしょう。リーガ・エスパニョーラは無観客で完全に全試合を遂行しています。それで特に問題はありません。無観客だからと言って、選手が手を抜くことはありません。みんな全力で頑張っています。世界中の人々がテレビやスマホで見ているんですよ。当たり前でしょう。

「無観客だとやる意味が無い」などと言っている人もいますが、オリンピック精神にもとるというのは昔の話で、今はアフリカの田舎でもスマホで競技をみることができる時代です。やる意味が無いなどと言うのは競技への情熱が小さいからに過ぎません。

組織委員会会長の選考は定款通りにやるべきで、理事でもない御手洗某などという人が選考委員会を招集して候補を定めるなどというのはあり得ません。副会長・専務理事・常務理事で選考委員会を招集し、候補を選んで理事会にかけるのが当たり前でしょう。菅義偉という人はなんでも介入したがる本当に困った人です。

定款

第21条 理事及び監事並びに会計監査人は、評議員会の決議によって選任する。2 会長、副会長、専務理事及び常務理事は、理事会の決議によって理事の中から選定する。

第29条 理事会は、毎年6月と3月に招集する。ただし、会長が必要と認めた場合又は理事から会議に付議すべき事項を示して理事会の招集を請求されたときは、会長は、その請求のあった日から2週間以内に臨時理事会を招集する。2理事会の議長は、会長とする。3会長に事故あるとき、又は欠けたときは、会長があらかじめ指名した理事が理事会を招集し、議長を務める。4毎事業年度に4ヵ月を超える間隔で2回以上その報告をしなければならない。

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2021年2月12日 (金)

続・生物学茶話129: ミエリン鞘(髄鞘)

FCバルセロナからヴィッセル神戸に来たイニエスタという選手がいます。彼は体格・筋力・走力などの身体能力はサッカー選手としてはごく普通なのですが、マルセイユ・ルーレットの技術と他の選手より一瞬早く行動できるという特技で頂点を極めました。生物にとって神経の伝達速度を上げるということは、敏捷性(アジリティー)を高め、他の生命体より早く知覚し早く行動することができるので、生存にとって明らかに有利です。

周囲からの干渉を遮断・絶縁することによって漏電を防ぐことも正確な伝達には必要なことでしょう。脊椎動物はそのためにミエリン鞘(髄鞘)という神経を被覆する組織を獲得しました(1、図129-1)。ミエリン鞘はここでのテーマである跳躍伝導という特殊なメカニズムをサポートしていて、神経伝達速度を上げることにも貢献しています。電流の流れやすさ、すなわちコンダクタンス=σA/L(σ:定数、A:断面積、L:長さ)なので、ミエリン鞘をつくる以外にも、神経の断面積Aを大きくしたり、体を小さくしてLを短くするという方法も生物にとってアジリティーを上昇させるための有効な方法です。

実際イカは直径1mmという破格に太い神経(ジャイアントアクソン)を持っています。これはヒトの太めの神経の10倍以上の太さです。このくらい太いと伝達速度は30m/秒という高速を実現できます。イカのジャイアントアクソンにはミエリン鞘はありません。不思議なことに、ミエリン鞘を使って伝達速度を上げるという方式はある特定系統の生物が進化の過程で育ててきたと言うより、さまざまな系統の生物が進化の過程で断続的に獲得してきたというめずらしい組織なのです。たとえばエビは持っているのにロブスターやカニは持っていないとか、ミミズは持っているのにヒルは持っていないなどという例があります(1)。

ほとんどの脊椎動物はミエリン鞘を持っています。ただし末梢神経にはミエリン鞘を持っていない神経(無髄神経)も多いことが知られています(2)。無髄神経では、たとえば皮膚の痛覚神経では伝達速度は1m/秒とかなり遅くなります。同じ皮膚でも有髄神経の触覚神経では50m/秒と著しくアドバンテージがあります。ではどうしてすべて有髄神経ではないのでしょうか? それはまあ有髄神経がラグジュアリーなものということもあるのでしょうが、どうも直径1μmというような細い神経線維の場合、ミエリン鞘があると却って伝達速度が遅くなるらしいのです(3)。詳しい研究が行われていないらしく私にはよくわかりません。

ミエリン鞘は軸索を完全に被っているわけではなく切れ目があって、その部分をランヴィエ絞輪とよびます(図129-1)。ミエリン鞘とランヴィエ絞輪はそれぞれルドルフ・フィルヒョウ(4)とルイ・ランヴィエ(5)によって19世紀に発見されました(図129-1)。

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図129-1 ミエリン鞘とランヴィエ絞輪

ミエリン鞘の実体は末梢神経系ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトです。シュワン細胞は外胚葉の神経堤に由来する毛布のような細胞で、軸索に巻き付いています(図129-2)。オリゴデンドロサイトについては後述します。これらの細胞が何重にもぐるぐる巻き付くことによってミエリン鞘が形成され、有髄神経ができあがります。ミエリン鞘の一番外側の部分を神経鞘ともいいます。断面をみればミエリン鞘の多層構造がよくわかりますが、これらの層はすべて同じ細胞で連続しています(図129-2)。

毛布がきちんとたたまれてはがれないようにするためには、高度に硫酸化された糖鎖を持つP0(ピーゼロ)というタンパク質が必要だとされています(6)。ミエリン鞘は単に電源コードのシールドのようなものではなく、神経細胞とさまざまな相互作用を行なって、神経細胞を健全に保つためにも有用であるようです(7)

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図129-2 シュワン細胞にぐるぐる巻きにされる軸索

さて跳躍伝導を理解するためにはコンデンサというものを理解する必要があるようです。村田製作所のサイトによると、コンデンサは 1)電圧を安定させる、2)ノイズを取り除く、3)信号を取り出すなどの用途に用いられます(8)。セクション128の図128-2で解説しました。要するに充電式電池のようなものですが、電池が化学式で書けるような化学変化すなわち分子の変化を基盤としているのに対して、コンデンサは分子の整列や分子内での構造変化を基盤とするものです。生物はみずから体内にコンデンサの役割を果たす組織を制作・設置し、神経伝達に使っているようです。

神経細胞の軸索はミエリン鞘で被われており、その切れ目にランヴィエ絞輪があります。このどの部分がコンデンサかというと、それはミエリン鞘と軸索の細胞膜がそれに当たります(図129-3)。ランヴィエ絞輪には多数のナトリウムチャネルが集中していて、これが電池のような役割を果たしているわけです。ここに刺激がきて一時的にチャネルが解放されると、ナトリウムイオンが軸索に流れ込み、アクションポテンシャルが発生します。一方チャネルの外側はナトリウムイオンが減少するので、ミエリン鞘の外側からランヴィエ絞輪の方向に電流が流れます。神経標本の周囲の電解液が導線の役割を果たします(図129-3)。

アクションポテンシャルの裾野が次のランヴィエ絞輪に届くとその刺激でチャネルが解放され、次のアクションポテンシャルが発生します(3)。ランヴィエ絞輪につつまれた部分の軸索には、ほとんどナトリウムチャネルはありません。つまり、ランヴィエ絞輪単位でステップワイズに(飛び飛びに)神経伝達が行なわれます。これが跳躍伝導です。このシステムによって、有髄神経は前述のような桁違いの高速伝達を可能にしました。

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図129-3 跳躍伝導

慶應義塾大学の田崎一二らは第二次世界大戦前に、図129-4に記したような方法などで、実際にミエリン鞘というコンデンサから発生する電流を測定し、跳躍伝導を証明しました。杉晴夫によると(9)、第二次世界大戦中に彼らが論文をドイツの雑誌に投稿したところ、ベルリンが廃墟になっているにもかかわらず、ちゃんと雑誌に印刷発表されたそうです(10、11)。日本ではほとんどの学術雑誌は戦争で休刊せざるを得なくなりました。図129-4は簡略化したものなので、詳細を知りたい方は文献10、11をあたってください。田崎一二は戦後まもなく渡米し、米国に帰化して97才までNIHで働いていました。これはNIHの高齢レコードだそうです(12)。奥様も研究室に来て実験のお手伝いをなさっていたようです。

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図129-3 田崎一二夫妻と彼らの実験

ところが最近跳躍伝導について、新しい発見がありました。チャールズ・コーエンらによるとミエリン鞘と軸索の間に12.3nmの間隙(もうひとつの導線)があり、ここをイオンが移動し電流が流れているというのです(13、図129-5)。そうするとイオン(電流)はミエリン鞘の外をまわらなくても、このもうひとつの導線を流れればいいのでショートカットできます。しかしそうなるとミエリン鞘と軸索の細胞膜が一体となってコンデンサの役割を果たしているという考え方はとれなくなります。すなわちミエリン鞘は軸索を保護することと、軸索の周りにある円筒形のセカンドケーブルをつくるために存在することになります。これは注目すべき発見で、今後の進展を見守りたいと思います。

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図129-5 ミエリン鞘と細胞膜には広めの間隙が存在する

イカなどは巨大神経線維をつくって神経伝導の速度をはやめましたが、脊椎動物は有髄神経による跳躍伝導のシステムをつくることによって、細い神経線維でも高速な伝達速度を確保することに成功しました。このことは脳を発達させる上で非常に重要なエポックだったと思われます。なぜなら脳にそんな太い神経が鎮座すると、脳に多くの情報を詰め込むための容量が損なわれてしまいます。かといって神経を細くすれば伝達速度が遅くなります。タコやイカはイヌと同じくらいの数のニューロンを持っているにもかかわらず、そんなに知能が高くないのはそういう理由じゃないかと思われます。

脳ではシュワン細胞に代わって、神経管由来のオリゴデンドロサイトというグループのグリア細胞がミエリン鞘を形成します(1、14、図129-6)。ひとつのオリゴデンドロサイトがいくつもの軸索のミエリン鞘をかけもちするところが、末梢でのシュワン細胞とは違うところです。

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図129-6 脳のミエリン鞘

参照

1)脳科学辞典: 髄鞘
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%AB%84%E9%9E%98

2)ウィキペディア: 神経線維
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B9%8A%E7%B6%AD

3)酒井正樹 講義実況中継 その3:興奮はいかにして伝わるか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/29/3/29_135/_pdf

4)Wikipedia: Rudolf Virchow
https://en.wikipedia.org/wiki/Rudolf_Virchow

5)Wikipedia: Louis-Antoine Ranvier
https://en.wikipedia.org/wiki/Louis-Antoine_Ranvier

6)T. Yoshimura et al., GlcNAc6ST-1 regulates sulfation of N-glycans and myelination in the peripheral nervous system., Scientific Reports vol. 7, Article number: 42257 (2017)
https://www.nature.com/articles/srep42257

7)ウィキペディア: シャルコー・マリー・トゥース病
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E7%97%85

8)続・生物学茶話128: パッチクランプ法
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/02/post-9ad3a9.html

9)杉晴夫 「生体電気信号とはなにか」 講談社ブルーバックス (2006)

10)Ichiji Tasaki und Taiji Takeuchi, Der am Ranvierschen Knoten entstehende hktionsstrom und seine Bedeutung fiir die Erregungsleitung., Pflügers Archive vol.244, pp. 696- (1941)
https://link.springer.com/article/10.1007%2FBF01755414

11)Ichiji Tasaki und Taiji Takeuchi, Weitere Studien über den Aktionsstrom der markhaltigen Nervenfaser und über die elektrosaltatorisehe Übertragung des Nervenimpulses., Pflügers

12)NIH record - mile stones - Biophysicist Tasaki Leaves Extraordinary Scientific Legacy
https://nihrecord.nih.gov/newsletters/2009/02_20_2009/milestones.htm

13)Charles C.H. Cohen, Marko A. Popovic,Jan Klooster, Marie-Theres Weil,Wiebke Mo ̈bius, Klaus-Armin Nave,Maarten H.P. Kole., Saltatory conduction along myelinated axons involves a periaxonal nanocircuit., Cell vol.180, pp.311-322, (2020)
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S0092-8674%2819%2931324-8

14)Wikipedia: Oligodendrocyte
https://en.wikipedia.org/wiki/Oligodendrocyte

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2021年2月 9日 (火)

新型コロナウィルス 最近のワクチン事情

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管理人が危惧するのはmRNAワクチンにしてもDNAワクチンにしても、できる抗原の量をコントロールできないことです。タンパク質である抗原を注射すれば、最初に決めた量しか体の中にはいらないわけですが、mRNAやDNAは翻訳または転写・翻訳によって抗原がどのくらいの量できるのかは、接種した人の細胞次第です。ドカンと大量に合成されたら、強すぎるアレルギー反応がおきるでしょうし、少なすぎれば効かないでしょう。

もともと生体内にある遺伝子の転写や翻訳はさまざまなメカニズムによってきちんと調節されています。ですから筋肉では当然骨を作るのに必要な転写や翻訳は行われません。ところがmRNA・DNAワクチンは、未経験のウィルスのスパイクタンパク質をヒトの細胞で転写・翻訳をさせようというのです。これまでに様々な実施例があって安全が確かめられていればいいのですが、mRNAは全くはじめて、DNAも実施例は少ないのが現実です。つまりこれは全人類をモルモットにした壮大な実験にほかなりません。

一方で米国ノババックス社のワクチンは組換えタンパク質で私的には期待しています。このタイプのワクチンは抗原タンパク質を投与するという意味では伝統的な手法であり、きちんと量を決めて投与されるので科学的なデータがたやすく集められます。このワクチンについては武田薬品が日本での製造を請け負っており、厚労省も300億円以上の補助金を出しています。これは厚労省を賞賛したいと思います。塩野義製薬は地道に厚労省のサポートを得て、地道に自社で組換えタンパク質のワクチンを製造しているそうで、時間はかかってもあたって欲しいと思います。

よく日本でワクチンができないのは感染者が少なくて治験が難しいという話になりますが、中国だって治験は南米でやっているんですよ。そんな言い訳は成立しません。

厚労省のワクチン関連サイトがあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000680222.pdf

このサイトには海外開発の新型コロナワクチンのリストがありますが、なんと中国・ロシア・インドのワクチンについては何も掲載されていません。サボっていて調査していないのか、欧米以外の製品は馬鹿にして掲載していないのか、あきれてしまいました。中国とインドのワクチンはおそらく世界で最も多くの人々に接種されるでしょうし、東欧諸国ではいつまで待ってもファイザーの製品が来ないので、ロシア製に乗り換えているところも出てきています。

ひょっとすると厚労省も本当に調査能力が落ちてきたのかと疑念を持ちました。公務員の人数が少なすぎるのかも知れません。2016年の調査では旧共産圏や欧米諸国はもちろん、フィリピン・メキシコ・韓国・インドネシア・エジプトよりも数が少なくなっています。
http://honkawa2.sakura.ne.jp/5190.html

以下の朗報がありました↓。

武田薬品が2月20日にも治験開始 米ノババックス開発のコロナワクチン
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020400938&g=eco

 

 




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2021年2月 8日 (月)

J-POP名曲徒然草210: 猫になりたい by momo

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猫になりたいかと問われれば、そりゃシチュエーションがノラと飼い猫じゃ地獄と天国なので即答はできません。良い飼い主に当たった飼い猫は最も幸福な生き物だとは思いますが、それは自然じゃないからつまらないという人もいるでしょう。

「猫になりたい」作詞/作曲 草野正宗
アルバム 花鳥風月(ポリドールPOCH-1776)に収録

これだけ脳にこびりつくメロディ-を書けるというのは、やはりマサムネは天才なのでしょう。でもあえてカバーを選択

momo:
https://www.youtube.com/watch?v=AsKiI4PS3Oo

ギター1本だけど楽しく聴けます

spitz or die:
https://www.youtube.com/watch?v=0xIDXYGML9M

ボーカルの声がやさしい感じ。バンド演奏も手慣れててお上手。

本家本元(野外ライヴ)
https://www.youtube.com/watch?v=YZnR_W_Q7Hw

本家本元(ベトナム語キャプション)
https://www.youtube.com/watch?v=YErSgFpGMuk

ウクレレキャッツアイ:
https://www.youtube.com/watch?v=dy5r4TWHrKw

猫たちの映像と共に

つじあやの
https://www.youtube.com/watch?v=76ZrvlF6I1M

たのうた
https://www.youtube.com/watch?v=9Qfx3JstksU

シロホンが可愛い

カラオケだけど聴き惚れる
https://www.youtube.com/watch?v=M5wcNX7gHaQ

 

 

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2021年2月 5日 (金)

「今日の人生」 益田ミリ

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以前にまきちゃんぐの推薦で「腐女子のつづ井さん」という本を読んでみて、あまりに無感動だったので驚いた経験があるのですが、そんな希有な経験があったので、もう一度だけ彼女の推薦にのってみることにしました。

「腐女子のつづ井さん」
http://morph.way-nifty.com/grey/2019/09/post-1e3c2f.html

2度目の挑戦、それが「今日の人生」益田ミリ(2017 ミシマ社刊)。
あらまあ 意外や意外、面白いじゃないですか!

ひとつ紹介しますと、作者が映画館で映画を見た後売店でプログラムを買ったそうです。そのとき販売員の人が「当館ではこれが最後の一冊です」と言って売ってくれたことに感動するというエピソードなんですが、ミリさんはそれが販売員の人の生き方を表していると言うんですね。

それはひとつはミリさんが言っているように「お客さんのことを考えて、こう言えばきっと喜んでもらえる」という、相手のことをいつも考えながら生きている人であることと、もうひとつ人生にはプラスアルファ、美しい生け花とか鳥のさえずりとか寝そべる猫とかが必要で、不要不急ではないひとことだって、それらと同様に大事なんだと言うことなんですね。なんでも要件だけ事務的に済ませて進む人生であってはいけません。

前者はまきちゃんぐのような音楽制作者にも重い問題を投げかけています。自分をそのまま表現することと、それを社会が自分が生活できるくらいは受け入れてくれるかどうか、もっと多くの人にエンターテインメントとして認めてもらえる必要があるのではないか・・・と誰もが迷うところでしょう。ベートーヴェンだって悩んだに違いありません。

わたしがこのことで思い出したのは、スウェーデンのアラン・ペッテションという作曲家です。彼は中年になるまで自分の想念の中を「ぐるぐる周り」する、恐怖と怨念で埋め尽くされた音楽を書いていたのですが、7つめの交響曲で自分の音楽には聴衆がいるということをはじめて意識して曲を書いたのです。それで一部の人々が彼が天才であることに気づくことができました。

そして1973年になってスウェーデン最古のウプサラ大学創立500周年記念式典(1977年)のための音楽を委嘱されました。そうしてできたのが名作の交響曲第12番「広場にて死す」で、これはパブロ・ネルーダの詩に音楽をつけたもので、彼の作品の中で一番自分から離れた作品だったのですが、素晴らしい感動的な作品に仕上がりました。彼の交響曲第7番は、今年都響がアラン・ギルバートの指揮で演奏します。ペッテションが自分という貝殻の中で一生堂々巡りをしていたら、どんなにその音楽が一部の人々にとって感動的なものであっても、それを知ることすらできなかったと思います。

まきちゃんぐの音楽 「赤い糸」
https://www.youtube.com/watch?v=X9F7Qgr9QE4

 

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2021年2月 3日 (水)

続・生物学茶話128: パッチクランプ法

生体電気信号を勉強するためにオームの法則を復習しておきましょう。オームの法則によれば、ある物質の中を流れる電流I(単位:アンペア)は、電位差V(単位:ボルト)とその物質の電気伝導度G=コンダクタンス(単位:ジーメンス)の積になります。Gは物質の種類と温度などの環境条件で決まる定数なので、「ある物質の中を流れる電流は負荷された電位差に比例する」としてもいいわけです。これを数式で表現すると、I=GV ということになります。電気伝導度Gは電気抵抗R(単位:オーム)の逆数なので、この式はI=V/Rとも書けます。

ここで直列回路(1、図129-1A)の場合、回路上に置かれた2つの物質の電気抵抗をR1およびR2とすると、全抵抗はR1+R2です。すなわち Rtotal=R1+R2ということになります。したがってここに流れる電流は I=V/(R1+R2) です。

数値を代入すると、I=9V/(500Ω+500Ω)=9÷1000=9mA

一方並列回路(1、図129-1B)の場合、全体を流れる電流は個々の回路を流れる電流の和になります。
I=V/R1+V/R2 すなわち I=V(1/R1+1/R2)です。電気抵抗の逆数は電気伝導度なので I=V(G1+G2)とも書けます。

数値を代入すると I=9Vx(1/500Ω+1/500Ω)=9x 0.004=36mA

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図128-1 直列回路と並列回路

生体電気信号を理解するためにはもうひとつ、コンデンサについての知識が必要です。コンデンサは絶縁体の両側を2枚の金属板ではさんだような構造になっています(2、3、図128-2A)。ここに電池を使って電圧をかけると、2枚の金属板にはそれぞれ+および-の荷電が蓄積します(図128-2A、充電)。このとき絶縁体内部でも非通電時にはランダムだった分子の並びが整列した状態になり、各分子の内部でも電子密度が偏った状態になります(4、図128-2、絶縁体内部での構造変化)。この状態は電池をはずしても変わりません(図128-2B、蓄電)。ところが導線を電球につなぐと、ここに電流が発生し、電球は点灯します(図128-2、放電)。

電球が点灯してエネルギーが消費されると、コンデンサにおける金属板の帯電と絶縁体での分子の状態がもとのランダムな状態にもどります(図128-2A)。ここでまた電池をつなぐと再び充電されます(図128-2A、充電)。図128-2をよく見ていただくと、絶縁体があるにもかかわらず、あたかも充電時には電池プラス極→導線→金属板→絶縁体→金属板→導線→電池マイナス極、放電時には電球→導線→金属板→絶縁体→金属板→導線→電球と逆回りに電流が流れているような状況が生まれます。

細胞膜はある種のコンデンサのような役割も果たしています。では細胞内の電池とは何でしょうか? それはイオンチャネルやイオンポンプによるイオンの出し入れが相当します。これらによって電池の役割が実現されています。そのためのエネルギーは細胞内のATPによって供給されます。たとえばひとつの細胞に1000個のイオンチャネルがあるとすると、それらは並列に並べられた電池のようなものであり、その穴が解放されると電池1000個分の放電が起きます。またイオンポンプは常にコンデンサを充電するような働きを行っていることになります。

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図128-2 コンデンサのメカニズム

イオンチャネルの機能についての研究は、ネーアーとザクマンのパッチクランプ法(5、6)の開発によって著しく進展しました。電極が入った細くて精密に制作されたガラスピペットをマイクロマニピュレーター(7、8)で操作し、細胞に徐々に近づけていって細胞膜に接したところで少し吸い上げます(図128-3)。そうすると細胞膜が少しピペット内に引き込まれ、ピペットと膜の間から電流が漏れ出すことがない所謂ギガシールドの状態が確保できます。この方法ができる前は、細胞に電極を刺していたのでどうしても漏れがありましたし、小さな細胞ではそもそも実験が不可能でした(4)。図128-4はピペットを神経細胞につけてパッチクランプを実行しているところです(6)。

ピペットでトラップされたイオンチャネルが1個であれば、活動電位にともなうそのチャネルの電位変動が観察できますし、ピペット内の電極液の組成を変えることによって様々な実験もできます(9)。また膜の一部だけをピペットで吸い上げたり、膜に人為的な穴を開けて細胞質液を電極液に交換してしまうというようなことも可能です(6)。

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図128-3 パッチクランプ法

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図128-4 パッチクランプ法を実施している写真

ネーアーはミュンヘンのホッホシューレの出身で、これはウニベルジテートと違って技術実習を重視した大学だそうです。彼自身このことが後の自分の研究に大きな影響を与えたと述べています(9)。ネーアーは米国留学中に生物物理学者になることを決意し、帰国後マックスプランク研究所でザクマンと1967年に共同研究をはじめました。ザクマンはその後英国に留学しますが、帰国後またネーアーとの共同研究を再開します。その目的は1個のイオンチャネルの電位変化を測定することでした。幸いにして彼ら2人のための研究室を得て所期の目的を達成することができました。これによってホジキン-ハクスレイのイオンチャネル説、すなわちナトリウムおよびカリウムチャネルが実在することが証明されました(10、11)。

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図128-5 パッチクランプ法を開発したネーアーとザクマン

彼らの技術はさまざまな改良が行われ、現在でも神経生理学者にとっては米の飯のように大事な技術となっています。ネーアーとザクマンはこの功績によって1991年のノーベル生理学医学賞を受賞しました(9)。

参照

1)ウィキペディア: 直列回路と並列回路
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B4%E5%88%97%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E3%81%A8%E4%B8%A6%E5%88%97%E5%9B%9E%E8%B7%AF

2)ウィキペディア: コンデンサ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B5

3)村田製作所 コンデンサとは?
https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-capacitor

4)杉晴夫「生体電気信号とはなにか」 講談社ブルーバックス (2006)

5)ウィキペディア: パッチクランプ法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E6%B3%95

6)Wikipedia: Patch clamp
https://en.wikipedia.org/wiki/Patch_clamp

7)ナリシゲ マイクロマニピュレーター
https://www.narishige.co.jp/japanese/products/application/patch_clamp.html

8)室町機械
https://muromachi.com/index.php/archives/item_cat/06-05

9)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1991: Erwin Neher and Bert Sakmann
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1991/press-release/

10)Neher, E., & Sakmann, B.
Single-channel currents recorded from membrane of denervated frog muscle fibres. Nature, vol.260(5554), pp.799-802, (1976).
https://www.nature.com/articles/260799a0

11)Erwin Neher, Ion channels for communication between and within cells. Nobel lecture, December 9, 1991
https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/neher-lecture.pdf

 

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2021年2月 1日 (月)

日本はいつ建国されたのか?

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菅義偉にパージされなければ加藤陽子氏の名前も知らなかったわけですが、パージのおかげでこの本「戦争まで」(朝日出版社 2016年刊)も読んでみました。おかげでいろんなことを知ることができました。

誰もこの日に日本が建国されたとは信じちゃいない「建国記念の日」がもうすぐやってきます。別に神話に基づく記念日が悪いとは思いませんが、神話ではないちゃんとした歴史書にはじめて日本(倭)という国家が記述されたのは3世紀に書かれた魏志倭人伝でしょう。この歴史書には日本の最初の王として、神武天皇ではなく卑弥呼であることが書かれています。

加藤氏の記述によると、最近の学会では「なぜ卑弥呼を王とした統一国家が生まれたか」ということに関して、魏の脅威という理由が有力になっているそうです。63ページに掲載されている3世紀東アジアの地図を見て驚いたのですが、現在の平壌周辺は魏の版図になっています。北九州の諸国にとって南朝鮮は小国分立(辰韓、弁韓、馬韓など)だったので脅威ではありませんでしたが、巨大な軍事国家である「魏」の朝鮮半島への進出は脅威であり、統一国家を形成せざるを得なくなったのでしょう。ですから卑弥呼を統一国家「倭」の王と定めた日がわかったとすれば、それが正しい建国記念の日です。

当時の北九州の指導者達は、とりあえず諸国の争いをやめて統一国家を造り、王を立てて「魏」に自分たちの統一国家「倭」を臣下の国として認めてもらおう・・・という安全保障上の知恵を働かせたのでしょう。実際魏は金印紫綬を与えて、卑弥呼を親魏倭王に任命しています。

しかしその後中国は混乱し北九州の安全保障も崩壊して(中国に使節を派遣したら、その国はもうなかったというようなこともあったようです)、中国の侵攻にビビリまくっていた豪族達はそれぞれ城を造営せざるを得なくなり、北九州諸国は衰弱してしまいました。その結果近畿地方の王によって倭国は統治されることになりました。実は中国に強力な国家が出現しない限り、日本は(内部抗争は別として)平和です。北九州豪族達の心配は杞憂でした。その後300年くらい倭国は国際的な脅威とは無縁の時代が続きました。

7世紀になって、しばらく弱体化していた中国に強力な「唐」という統一国家が出現し、またもや朝鮮半島に勢力を伸ばしてきました。645年には唐と高句麗との戦争が勃発しました。この頃「倭」国は蘇我・物部の権力闘争でガタガタになっていて、とても唐に対抗できる状況ではなく、それを憂慮した中大兄皇子らは暗殺などによって蘇我家を滅ぼし、天皇主導の中央集権国家を樹立しました。この頃朝鮮半島では高句麗は頑強に唐に抵抗していましたが、百済は660年に滅ぼされてしまいました。これに脅威を感じた中大兄皇子は九州まで出向いて陣頭指揮の下に朝鮮に出兵し、白村江で唐と戦争を行いました。

朝鮮半島まで海軍を送って世界一の大国となった唐と戦うとは、当時の大和朝廷の勢いはすごかったと思いますが、戦争は倭国の完敗に終わりました。668年になって高句麗もついに滅亡し、朝鮮半島は唐の属国である新羅によって統一されました。これをみて、大和朝廷はもう唐と戦っても無駄だと思ったに違いありません。で大和朝廷はどうしたかというと、加藤氏の著書によれば702年に粟田真人を唐に派遣し、「倭」国を廃止し「日本」という新しい国家を樹立して唐に朝貢することで和平を実現したわけです。ですから日本という国家ができたのは702年です。この意味では建国記念の日は、粟田真人が則天武后に会って「日本」という国家名を国際的に宣言した日が正しいのかもしれません。

国 熊木杏里

https://www.youtube.com/watch?v=52PyD80-ESc

 

 

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2021年1月29日 (金)

続・生物学茶話 127: 活動電位

すべての細胞はある意味電池であるとも言えますが、図127-1に示されるような活動電位を発生する細胞は、神経細胞や筋細胞などの限られた細胞です。これは通常は細胞外が高濃度で細胞内が低濃度に保たれているナトリウムイオンが、なんらかの刺激で細胞外から細胞内に流入するために起こります。

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図127-1 活動電位(一過性膜電位変化)


アラン・ホジキンはケンブリッジ大学のトリニティーカレッジ出身ですが、米国に留学してイカの巨大軸索の利用法などを学んで1938年に帰国し、アンドリュー・ハクスレイと共に活動電位の研究に取り組みました。しかし運悪く第二次世界大戦が勃発し、5年間も海軍でレーダーの研究に従事することになりました(1)。ハクスレイは開戦時医学生でしたが爆撃で学業を続けられなくなり、防空部隊や海軍で砲撃技術の研究をやっていたようです(2)。1946年になってようやくホジキンとハクスレイはトリニティーカレッジで共同研究を行うことになりました。

彼らはイカの巨大軸索の活動電位を測定し、図127-1のような電位の変動を数式で表現することに成功しました(3)。彼らが成功した要因として、ケネス・コールらが開発したボルテージクランプ法(4)を用いてコンダクタンスの測定を正確に行ったことがあげられています。またホジキンとハクスレイはナトリウムやカリウムの細胞への出入りに関してイオンチャネル仮説を提唱し、後にそれが正しいことがわかりました。彼らの肖像写真を図127-2として示しておきます。ホジキンとハクスレイは1963年のノーベル生理学医学賞を受賞しました。

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図127-2 活動電位研究のパイオニア達

 

活動電位について考察する前に、浸透圧・選択的半透膜とイオンの移動などについての基本的な知識を整理しておきたいと思います。まず塩素イオンは通過できないが、カリウムイオンは通過できる選択的半透膜を仮定しましょう。細胞には塩素イオンやカリウムイオンが通過する開閉可能な穴(チャネル)があり、このような状態を実現することは可能です。

図127-3の膜より左側にはカリウムイオンがあり、右側にはないわけですから拡散(浸透圧)によってカリウムイオンは右側に流入します。そうすると左側に単独の塩素イオンが発生し、そのマイナスチャージによって膜の右側に流入したカリウムイオンは膜の右側表層に引きつけられます。膜の左側には塩素イオンが整列します。これはまさしくセクション126で示した電池の一種であり、導線で左右をつなぐと電流が発生します。導線がない場合、カリウムイオンを膜の右側に流入させようとする浸透圧と、カリウムイオンを膜の左側に引き込もうとする電圧がつりあったところで平衡状態となります(図127-3)。

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図127-3 選択的半透膜の近傍で発生する電池のような現象

 

では私たちの細胞の外と内はどのようなイオン組成になっているのでしょうか? 日本緩和医療学会などの資料によると図127-4のようになっています(5、6)。mEq の単位は mmol に直してあります。それぞれのイオンによって、著しく細胞内外の濃度に差があることがわかります。細胞膜がただの半透膜ならこのようなことは起こりません。まさしく細胞膜を通過するイオンは図127-3で仮定した選択的半透膜のように選別されています。

カリウムイオンとナトリウムイオンに関して言えば、細胞膜にATP分解酵素活性を持つナトリウム・カリウムポンプが存在し、ATP分解のエネルギーを利用してナトリウムイオンを細胞外に排出し、カリウムイオンを細胞内にとりこむ作業を行っていることが、この濃度差の大きな要因になっています。他のイオンも生体内で重要な役割を果たしていますが、活動電位に関して言えば主役はナトリウムイオンとカリウムイオンです(7)。

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図127-4 細胞内外のイオン濃度

 

ナトリウム・カリウムポンプ(Na+・K+ポンプ)はエネルギーを消費してイオンを輸送する、いわゆる能動的イオン輸送を行っていますが、これとは別にナトリウムとカリウムはそれぞれ濃度差によってイオンを透過するチャネル(開閉可能な穴)を細胞膜に持っています。

Na+・K+ポンプは Na+/K+-ATPase の酵素活性を持ち、次式のような反応を行います。

3 N a + (細胞内) + 2 K + (細胞外) + A T P + H 2 O ⇄ 3 N a + (細胞外) + 2 K + (細胞内) + A D P + P i

したがって通常は細胞内ナトリウムイオンの濃度が低く(Na+・K+ポンプによって細胞外に排出されている)、カリウムイオンの濃度は高く(Na+・K+ポンプによって細胞内にとりこまれている)なっています。したがって細胞膜の外側はナトリウムイオンで覆われ、細胞内の塩素などのマイナスイオンは細胞膜のすぐ内側に引き寄せられて整列します(図127-5平常時)。このとき細胞膜の内外で電位差が発生します。細胞外の電位を0とすると細胞内の電位はマイナス70~80mVで、これがいわゆる静止電位です(図127-1)。注意すべきは、この電位は細胞内と細胞外のトータルなイオン濃度の差によって発生するのではなく、細胞膜内外の局部的なイオンの集積によって発生するということです。

細胞が刺激を受けるとナトリウムチャネルおよびカリウムチャネルが開き、細胞内外の濃度差に応じて、細胞外からナトリウムイオンが流入し、細胞内からカリウムイオンが流出します。流入と流出が同じになったところが図127-1の閾値 (threshold) です。これより少しでもナトリウムの流入が勝ると正のフィードバック機構が働いて一気に脱分極が進みます(4、図127-1)。

ナトリウムイオンが大量に流入すると、細胞膜の内壁にトラップされていたマイナスイオンはナトリウムイオンにひかれて散らばり、細胞膜の外側ではナトリウムイオンを失った塩素イオンにひかれてプラスイオンの集積も解消されます。この結果活動電位が発生します(図127-4)。これは細胞膜の近傍で形成されていた電池が一気に放電したとも解釈できます。活動電位は一過性のもので、ピークに達すると電位依存性のカリウムチャネルが開いてカリウムイオンを放出し、電位は静止電位にもどります(8)。とりこまれたナトリウムはNa+・K+ポンプによって細胞外に放出され、カリウムもとりこまれてもとの濃度に戻ります。

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図127-5 活動電位発生にともなうイオンの動向


参照

1)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1963  Alan Hodgikin Biographical
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1963/hodgkin/biographical/

2)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1963 Andrew Huxley
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1963/huxley/facts/

3)脳科学辞典: Hodgkin-Huxley方程式
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/Hodgkin-Huxley%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F

4)A Biographical Memoir by Sir Andrew Huxley. Kenneth Stewart Cole., Biographical Memoir, National Academy of Sciences., National Academies Press (1996)
http://www.nasonline.org/publications/biographical-memoirs/memoir-pdfs/cole-kenneth-s.pdf

5)日本緩和医療学会 輸液の生理作用
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/glhyd/2013/pdf/02_03.pdf

6)大塚製薬 輸液の基礎知識
https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/knowledge/

7)ウィキペディア: 活動電位
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%BB%E5%8B%95%E9%9B%BB%E4%BD%8D

8)酒井正樹 講義実況中継 その2:細胞はいかにして興奮するか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/29/2/29_76/_article/-char/ja/

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2021年1月27日 (水)

新型コロナウイルス感染症の抗体治療薬がいよいよ登場

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ワクチンは人間に抗体を作らせるために抗原またはツールを投与するわけですが、手っ取り早く抗体を直接投与するという手もあります。イーライリリーとリジェネロン(どちらも米国の製薬会社)はそれぞれモノクローナル抗体のカクテルによる新型コロナウイルス感染症予防治療薬を開発し、現在審査中です。

https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-lilly-idJPKBN29V23D

通常の抗体と違って、モノクローナル抗体は常に同じモノを製造できるので再現性があるというアドバンテージがあります。ただ抗原分子のごく一部しか認識できないので、カクテルで使うとより有効です。

イーライリリーの方は「バムラニビマブ」と「エテセビマブ」という舌をかみそうな名前のカクテルだそうです。リジェネロンも2種のモノクローナル抗体の組み合わせです。これらはおそらくウィルスが臓器を侵食した後に投与したのでは手遅れで、濃厚接触者にあらかじめ投与するとか、まだ症状が軽いうちに投与するとかするときわめて有効なのではないかと思われます。クラスターが発生している地域の住民に投与するのもいいでしょう。

ですから日本の保健所がクラスター・濃厚接触者の調査を縮小したというのは非常にまずいです。もう流行がはじまってから1年経つのですから、政府は保健所の機能を強化する手立てを講じなくてはいけないのに、なぜ後退を続けるのかわけわかりません。新規感染者数の正確さが失われ、国際的な信用も失墜します。

日本の製薬会社も動きが遅くて失望させられます。おそらく研究部門をリストラしてしまって機能不全に陥っているのではないでしょうか。

 

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2021年1月26日 (火)

続・生物学茶話 126: 電池の起源 

皆さんは海綿という動物をご覧になったことがあるでしょうか? 海底に固着し臓器らしい臓器もなくてまるで植物のようですが、実は立派な従属栄養の動物です。あらゆる多細胞生物のなかで最も「下等」なグループと思われていますが、カンブリア紀より前から現在に至るまで大繁栄している生物です。

2014年に、 Danielle Ludeman らがその海綿が化学物質や物理刺激に反応してくしゃみをするメカニズムについて報告したときには、ちょっとしたセンセーションを巻き起こしました。海綿には神経細胞がないのに、まるでそれが存在するかのような電気信号による情報伝達が起こったからです(1)。でもそれは驚くべきことではなく、細菌も電気信号によって連絡を取り合っていることが知られています(2)。単細胞の真核生物も電気信号を利用して行動することが報告されています(3)。ここで引用した文献はごく一部にすぎません。すなわち神経細胞が出現する以前から、生物は電気信号を利用して生きていたわけです。私たちの脳は電気信号を伝達する回路の巨大な集積体であり、電気信号について考察することは生物を理解する上で避けては通れません。

元素の水溶液中におけるイオン化しやすさ(イオン化傾向)は、元素の酸化されやすさの指標でもあり(4)、化学の一丁目一番地です。私は「金借るな、間借りあてにすな、水餡食い過ぎ銀ブラ禁」とおぼえましたが、最近では「リッチに貸そうかな まああてにすんな ひどすぎる借金」という語呂合わせが流布しているようです(5)。後者の方が正確かもしれません(図126-1)。最も酸化されやすい元素の一つであるリチウムは、海水中だけでも2300億トンあるそうですが(6)、人間が製造した物を除いてはすべて化合物となっており、単体では地球上に存在しません。意外なことに金も海水中に50億トンも存在するそうです(7)。金はほとんど単体で存在します。ともあれ私達生物も化学の法則に則って生きているので、このイオン化傾向のリスト(図126-1)は重要な意味を持っています。

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図126-1 元素のイオン化傾向

ここで少し電池の話に寄り道してみましょう。後述するように、私達の体を構成するひとつひとつの細胞もある種の電池です。電池は金属によってイオン化傾向が異なるということがその原理と深く関わっています。電池の発明によって、私達は電気を人工的に製造し使用することが可能になったのですが、ではその電池を発明したのは誰なのでしょうか? 一般的にはアレッサンドロ・ボルタが1800年に発表したボルタ電堆が最初と言われていますが、それはおそらく違います。

1936年にイラクの首都バグダッドの近郊で、鉄道の敷設を行なっていた作業員が奇妙な容器を発見しました(8)。調べてみるとそれは図126-2のような電池で、パルティア国またはサーサーン朝ペルシャで製造された物であることがわかりました(8、9)。パルティア国とは紀元前約250年から紀元後224年まで現在のイラン・イラクおよび周辺を支配していた国家で(10、図126-2)、サーサーン王朝はその領地を引き継ぎ、紀元後650年位まで続きました(11)。

この電池は1~2ボルトくらいのパワーがあり、おそらく金または銀メッキを行なうために使われたのではないかといわれています(8、9)。さらにもっと以前の時代の古代エジプトでも金メッキは行なわれており、おそらく電池が使われたのではないかと考えられています(12、13)。

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図126-2 古代イランの版図とそこで使用されていた電池

近代になってからは、ボルタの電堆(voltaic pile)が最初に発明された電池として有名です(14、図126-3)。これは[銅板-電解液(希硫酸または食塩水)に浸した紙-亜鉛板]のセットを1ユニットとして、多数このユニットを積み上げた物です。希硫酸電解液の中では、Zn → Zn2+ plus 2e- および 2H+ plus 2e- → H2 という反応が起きて、亜鉛イオン(Zn2+)は隣接する上方の銅板の方に、電子(2e-)は隣接する下方の電解液の方に流れるので、電流は下から上に流れることになります。

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図126ー3 アレッサンドロ・ボルタと彼が発明したボルタ電堆

ボルタが電堆を発表したのは1800年頃ですが、江戸時代の蘭学者宇田川榕菴は、1830年代から40年代にかけて出版されたその著書「舎密開宗(せいみかいそう」の中で、ボルタ電堆を紹介しています(図126-4)。これは電気分解を行なっているところの図のようです。

宇田川榕菴は岡山県最北部の津山藩に所属していましたが、そのような辺境の地にありながら、世界でも先進的な研究の勉強や実験をよくやっていたものだと驚かされます。このウィキペディアに掲載されていた肖像画に記してある名前は榕菴とはなっていないので、信じていいのかどうか私にはわかりません。

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図126-4 宇田川榕菴と彼が江戸時代に制作したと思われる電堆

希硫酸の中に銅板と亜鉛板を入れると、銅には何の変化もありませんが、亜鉛はイオン化してZn++の形で溶解し、亜鉛板には電子が取り残されます。両者は静電気で引きつけ合うので、亜鉛イオンは板の外側、電子は板の内側に集合して自由に動けない状態となります(図126-5)。これを電気的二重層といいます。

この状態は細胞と似ています。細胞は表層のイオンポンプで常にナトリウムをくみ出しているので、外側にNa+が集合し、内側に電子が集合するという状況になっています(図126-5)。このような状況では電流は流れませんが、電池の場合は導線などで銅板と亜鉛板をつなぐ、細胞の場合はイオンチャンネルの穴を開放するなどの操作によって、電気的二重層は崩壊し電流が発生します。

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図126-5 銅板・亜鉛板で形成される電気的二重層と細胞膜

ボルタ電池の銅板と亜鉛板を導線でつなぐと、亜鉛板の電子は陽極(銅板)に移動し、亜鉛イオンは電解質溶液中に解放されて、そこで硫酸と反応して硫酸亜鉛と水素イオンを生成します(図126-6)。水素イオンは陽極に集積した電子と反応して水素分子を形成し、泡となって空中に放出されます。これがボルタ電池の原理です。なのですが、ボルタ電池で起こっていることを科学的に正確に説明するのはなかなか困難なことらしく、歴史的に重要ではあっても、あまり教科書に使うのにはふさわしくないという考え方もあります(15)。

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図126-6 ボルタ電池の原理

確かにダニエル電池の場合、時間による反応の変動が少ないので実用的であるだけでなく、説明も容易でしょう(図126-7)。図の陽極・陰極で起こっている反応を足し合わせると Zn+Cu(2+)→Zn(2+)+Cuとなります。これは陽極では銅が析出し、陰極では亜鉛イオンが溶出するということを意味しています。図126-1に示したように、亜鉛はイオン化しやすい金属、銅はイオン化しにくい金属という性質を利用して電池がつくられているということがわかります。この電池を発明したジョン・フレデリック・ダニエルの本職は気象学者で、湿度計や温度計の開発にも大きな業績を残しました(16)。

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図126ー7 ジョン・ダニエルと彼が発明した電池(ダニエル電池)

 

参照

1)Danielle A Ludeman, Nathan Farrar, Ana Riesgo, Jordi Paps and Sally P Leys, Evolutionary origins of sensation in metazoans:functional evidence for a new
senosory organ in sponges., BMC Evol. Biol., vol.14(3), (2014)
http://www.biomedcentral.com/1471-2148/14/3
https://bmcecolevol.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2148-14-3

2)細菌も電気通信で“会話” ~日経サイエンス2016年5月号より
https://www.nikkei-science.com/?p=49662

3)P Brehm, R Eckert., An electrophysiological study of the regulation of ciliary beating frequency in Paramecium., J Physiol, vol.283, pp.557-68, (1978)
doi: 10.1113/jphysiol.1978.sp012519.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/102769/

4)ウィキペディア: イオン化傾向
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%8C%96%E5%82%BE%E5%90%91

5)受験の味方 イオン化傾向とは?
https://juken-mikata.net/how-to/chemistry/ionization-tendency.html

6)ウィキペディア: リチウム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0

7)金のこれまでの採掘量と地球に残された埋蔵量
https://nanboya.com/gold-kaitori/post/amountof-gold-extraction/

8)Battery University: When Was the Battery Invented?
https://batteryuniversity.com/learn/article/when_was_the_battery_invented

9)バグダッド電池
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%B0%E3%83%80%E3%83%83%E3%83%89%E9%9B%BB%E6%B1%A0

10)ウィキペディア: パルティア国
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2

11)ウィキペディア: サーサーン朝
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%9C%9D

12)Xanado: オーパーツ!?電気はエジプトに存在した!?ハトホル神殿の電球レリーフ!バグダッドで発見されたパルティア壺電池・避雷針?画像付
http://xanadu.xyz/850/

13)金属加工の歴史
https://shizuokatekko.jp/metalworking-history/

14)Giuliano Pancaldi: Volta, Science and culture in the age of enlightment. Princeton Univ. Press. ISBN 978-0-691-12226-7 (2003)
https://books.google.co.jp/books?id=hGoYB1Twx4sC&pg=PA73&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false

15)坪村宏: ボルタ電池はもうやめよう 一 問題の多い電気化学分野の記述 化学と教育 vol.46, no.10, pp. 632-635 (1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/46/10/46_KJ00003520589/_pdf

16)ブリタニカ百科事典: John Frederic Daniell
https://www.britannica.com/biography/John-Frederic-Daniell

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2021年1月24日 (日)

サラとミーナ 241: 籐椅子

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こう普通に使ってくれればいいのですが


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ミーナはもぐるのが好きなので大抵こうなってしまう


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思い切りのびをするミーナ


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サラは決して籐椅子を使いません。理由は不明です。

でも新しい場所をみつけて満足 🎵

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2021年1月23日 (土)

ご結婚おめでとうございます

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2021年1月22日 (金)

続・生物学茶話 125: 背と腹 よみがえったジョフロワの亡霊

左右相称動物のなかで、私達もその一員である脊椎動物などの後口動物(deuterostome)では中枢神経系が背側にあるのに対して、昆虫などの前口動物(protostome)では中枢神経系が腹側にあります(図125-1)。始原的左右相称動物であるウルバイラテリアが生まれる前から地球上に存在した、たとえばクラゲ型の刺胞動物にも口はあったと思われるので、口のある方を腹側とすれば始原的左右相称動物であるウルバイラテリアにも背と腹は存在したはずです。当時の刺胞動物の神経系については、主なものは口を動かすための口周囲のリング状のものと、そこから放射状に伸びる触手(テンタクル)を動かすためのものがあったことが現在のクラゲなどから推測されます。

ウルバイラテリアは基本的に海底を前に進んで餌を探すという生物ですから、ここで前後という概念が生まれました。海綿動物や刺胞動物には前後の概念はありません。ウルバイラテリアでは後方より前方の情報(触覚・視覚・嗅覚)が圧倒的に重要であるというアンバランスが発生しました。ですから神経の中心が腹の中心付近にあった口の周辺から前方に移動し、脳は前方に誕生しました。もうひとつウルバイラテリアにとって重要なことは、腹側の筋肉を動かして前方に進むということです。このためには神経系は腹側にあるべきでしょう。実際、前口動物の神経は腹側にあります(図125-1)。

ところが後口動物では神経は背側にあります。前口動物の場合主要な神経索が消化管とクロスしているのが不自然な感じなので、後口動物のように消化管と主要神経索が平衡な生物が始原的な左右相称動物であり、前口動物はその基本形から派生的に生まれたと考えられがちで、図125-1の上段図で黒で描いた主要神経索が背側に描いてあります。しかし私は青で描いた腹側の主要神経索がもともとの形態だったと思います。口が下方にある上に、腹側の左右の筋肉を協調して動かし前進するというのは、ウルバイラテリアにとって本質的に重要なことであり、まず腹側の神経系が発達することは自然の理と考えます(図125-1上段図の青い神経索)。

口が下にある段階で腹背が逆転したら、ウルバイラテリアは生きていけません。消化管が貫通してからもしばらくはこの形態(図125-1上段図の青い神経索を持つ生物)は引き継がれたと思われます。ただ口が下方から前方に移動し、泳いで生活するようになったならば、主要な神経系が腹側にあるというメリットがなくなり、背側にある生物が出現するのも自然な感じではあります。前後の逆転については、より難しい問題で、また勉強不足のためここではコメントを控えます。

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図125-1 中枢神経が背側にあるか腹側にあるか

主要神経索が背側にあるか腹側にあるかという生物を2分する相違については、早くも19世紀からフランスでジョルジュ・キュヴィエとエティェンヌ・ジョフロワ・サンティレール(図125-2)の大論争があったそうです。キュヴィエは前口動物と後口動物のボディプランが根本的に異なると考えましたが、ジョフロワは裏返っただけで両者は同じボディープランだと主張しました。この論争は西欧ではかなり有名らしく、私は未読ですが本まで出版されています(1)。キュヴィエが優勢だったようですが、ゲーテは持論の「Urform=原型」からすべての動物が生まれたという思想からジョフロワを支持したそうです(2)。図125-1の上段の図はある種のUrformです。

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図125-2 キュビエとジョフロワ

長い空白期間の後に、キュビエ・ジョフロワ論争にとりあえずの決着をつけたのは、あのSTAP細胞の件で自殺した理研の笹井芳樹らでした(3)。デ・ロバーティスと笹井(図125-3)はマウスとショウジョウバエという系統的にかけ離れた種において、ボディープランを決定する遺伝子、特に前後軸を決定するHox遺伝子クラスターや背腹軸を決定するSog/Dpp遺伝子に共通点が多いことから、これらは進化的に保存されたものであるとし、後口動物と前口動物の共通祖先としてウルバイラテリア(urbilateria)を想定しました(3-5、図125-1上段図-左右相称動物の基本型)。キュヴィエ-ジョフロワ論争から言えば、彼らはジョフロワの亡霊をよみがえらせたというわけです。

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図125-3 背腹問題の手がかりをみつけた研究者たち

Hox遺伝子クラスターは左右相称動物の最も基本的なボディープランを規定する遺伝子群と思われ、マウス(後口動物)とショウジョウバエ(前口動物)という系統的にかけはなれた生物同士でも共通点が多く、ジョフロアの正しさを示しています。ゴーンの総説(5)から図125-4を引用しておきます。

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図125-4 前口動物(Drosophila)と後口動物(Mouse)におけるHox遺伝子クラスター とそこから類推されるウルバイラテリアの場合

Sog/Dppについてはショウジョウバエ(前口動物)とアフリカツメガエル(後口動物)のmRNAに互換性があることが証明されています(6)。動物が初期発生の頃、基本的な形態形成を行なうための場を形成する分子群は数百以上あるでしょうが、なかでも重要な役割を果たしているのはBMPとその関連因子です。Sog、chordin、Dpp、BMP4などもその中に含まれています。

BMPを最初に見つけたのはカリフォルニア大学の整形外科医だった Marshall R. Urist (7、図125-3)で1965年のことでした。もともとは骨の増殖促進因子として発見されたので、bone morphogenetic protein などという名前がつけられましたが、実はこの因子は生理的には骨形成と直接の関係はなく、もっと広汎な作用を持つ因子だということが後に判明しました(8)。

節足動物のSOGと脊椎動物の chordin はホモログであり、いずれも中枢神経を誘導する機能に互換性があることが証明されています(6)。ただ初期発生の頃に、節足動物のSOGは腹部に発現し、脊椎動物の chordin は背部に発現するという違いがあります。この発現位置を決める遺伝子の変異によって、位置が逆転したと思われます。このほかに腹背の特徴を制御するDPPとそのホモログBMP4の発現位置も節足動物と脊椎動物では逆転しています(図125-5)。

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図125-5 中枢神経系の配置逆転

Chordin はシュペーマンとマンゴルトのオーガナイザーの分子的実体だと注目されましたが(9)、それが本当かどうかは微妙です。初期発生における3軸(前後・腹背・左右)の決定には3次元的に多数の因子が関わっており、人間の知能ではごくおおざっぱにしか把握できなのではないかと思われます。おそらくスーパーコンピュータに数値を入れると、答えが返ってくるというような課題ではないでしょうか。 それはそれとして、chordin の作用機構についてはかなり解明されているようです。Chordin は分子量約12万ダルトンのかなり大きめのタンパク質で、分子内に4つのシステインリッチドメインを持っていることが特徴です(10、図125-6)。

Chordin はTsgというタンパク質と結合しているBMPをトラップし、本来細胞膜のBMP受容体に結合すべきBMPを隔離するという作用を持っています。つまり chordin 自体が背側誘導のカスケードを起動するのではなく、BMPが起動する腹側誘導カスケードを阻害することによって、結果的に背側を誘導するということです(11)。

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図125-6 コーディンと関連タンパク質

BMPは様々な形態形成過程で重要な役割を果たすので、いつまでもトラップされたままでは困ります。BMPを Chordin から解放するために、tolloid というメタロプロテアーゼが用意されています。このタンパク質分解酵素は chordin を切断してBMPを解放します(図125-6、図125-7)。

ここで crossveinless 2 というタンパク質が興味深い役割を果たします。これがないとショウジョウバエの翅脈がうまくできないというのが名前の由来です。このタンパク質は細胞膜から突き出した糖鎖に結合しており、システインリッチドメインを介して chordin-BMP-Tsg複合体に結合します(12、図125-7 のピンクで記してある cystein rich domein と CR1)。したがってCrossveinless2を特定領域に密集させておけば、Chordinが分解されたときに高濃度のBMPが放出されて、効率よくBMPカスケード(BMP→BMP受容体→Smad複合体→転写)を起動できることになります(12)。

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図125-7 Crossveinless 2 の役割

前にも述べたように、腹背軸の決定などの初期発生における3軸決定には多くの因子がからんでいるので、上記のような単純な理論はひとつの切り口に過ぎず、他の側面からも見る必要があります。たとえば三品はBMPシグナルとFGFシグナルが競合的に働くことで中胚葉誘導時の中胚葉の背腹パターンを制御しているというモデルを提唱しています(8)。

参照

1)Tobey A. Appel, The Cuvier-Geoffroy Debate. French Biology in the Decades Before Darwin., Oxford University Press (1987)
https://global.oup.com/academic/product/the-cuvier-geoffroy-debate-9780195041385?cc=jp&lang=en&

2)倉谷滋 「形づくりにみる動物進化のシナリオ」 丸善(2015)

3)De Robertis EM, Sasai Y., A common plan for dorsoventral patterning in Bilateria. Nature 380: 37–40. (1996)
https://www.nature.com/articles/380037a0

4)秋山(小田)康子、小田広樹: なぜ今、クモなのか?胚発生が描く進化の道すじ、生命誌ジャーナル 2004年秋号
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/042/research_21.html

5)Stephen J. Gaunt, The significance of Hox gene collinearity. Int. J. Dev. Biol. 59: 159-170 (2015) doi: 10.1387/ijdb.150223sg
http://www.ijdb.ehu.es/web/paper/150223sg/the-significance-of-hox-gene-collinearity

6)Scott A. Holley, P. David Jackson, Yoshiki Sasai, Bin Lu, Eddy M. De Robertis, F. Michael Hoffman, Edwin L. Ferguson., A conserved system for dorsal-ventral patterning in insects and vertebrates involving sog and chordin. Nature volume 376, pages 249–253 (1995)
http://www.nature.com/articles/376249a0

7)Marshall R. Urist, Bone: Formation by Autoinduction., Science, Vol. 150, Issue 3698, pp. 893-899 (1965) DOI: 10.1126/science.150.3698.893
http://science.sciencemag.org/content/150/3698/893

8)三品 裕司 BMPシグナルの多彩な機能——初期発生から骨格形成まで Journal of Japanese Biochemical Society vol. 89(3): pp. 400-413 (2017) doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890400
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890400/data/index.html

9)Edward M. De Robertis, Spemann's organizer and self-regulation in amphibian embryos., Nat Rev Mol Cell Biol., vol.7(4), pp.296–302. (2006)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2464568/

10)Juan Larraín, Daniel Bachiller, Bin Lu, Eric Agius, Stefano Piccolo, and E. M. De Robertis., BMP-binding modules in chordin: a model for signalling regulation in the extracellular space., Development. vol. 127(4): pp. 821–830 (2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2280033/

11)The chordin page.
http://www.hhmi.ucla.edu/derobertis/EDR_MS/chd_page/chordin.html

12)Catharine A. Conley, Ross Silburn, Matthew A. Singer, Amy Ralston, Dan Rohwer-Nutter, David J. Olson, William Gelbart and Seth S. Blair1, Crossveinless 2 contains cysteine-rich domains and is required for high levels of BMP-like activity during the formation of the cross veins in Drosophila., Development, vol. 127, pp. 3947-3959 (2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10952893

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2021年1月21日 (木)

自民党の5大失政

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1.年齢人口構成比の異常を放置し修正できなかった: 時間はたっぷりあって、移民導入によって徐々にでも解決すべきでしたが、自民党コア支持者の国粋主義のため実現できませんでした。このために農業は労働力不足で壊滅の危機に瀕しています。年金・医療は財政を圧迫しています。コロナで医療崩壊しているのも、公的病院や保健所の充実を怠り、むしろリストラしたのが最大の要因です。

2.グローバル貿易主義のために、国内産業の没落を招いた: コロナで明らかになったように一般用マスクはもちろん、N95や防護服も作れないという情けない国になりました。私の下着からオーバーコートまでほとんど外国製です。工業部品メーカーもどんどん消滅し、中国が生産の中心になりました。

3.エネルギーを原発に頼ったために、危うく関東に人が住めないような事態: あの時、使用済み核燃料プールに偶然水が流入してなかったら、関東には人が住めなくなっていました。これは当時の民主党も原発を推進していたので同罪です。ただ自民党はまだ原発に頼ろうとしています。日本はもっと地熱発電に真剣に取り組むべきです。発電所が景観を損ねるなどという考えは、原発の危険にくらべれば無視すべきです。

4.国会の無意味化: 野党の質問にまじめに答えず、ロボットのような答弁を繰り返して国会を無意味化し、ついには忖度のために役人が議事録改ざんや重要な公文書を瞬時に廃棄という末期的な状況を生み出しました。これは民主主義の危機です。

5.反知性主義: 大学に人文科学など不要という驚くべき思想で、科学アカデミーからも歴史をきちんと検証しようという人々をパージしました。自然科学もすっかり衰退し、日本はどんどん科学後進国に転落しつつあります。だいたい国家の最高指導者が官僚の作文を読んでいるだけというのは情けないにもほどがあります。これじゃ頭悪いから知性が嫌いだと思われても仕方ありません。

 

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2021年1月19日 (火)

都響 2021年度楽季プログラム

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都響が2021年度楽季プログラムを発表しました(都響HP)。コロナの折から4~7月の演奏会については、会員券を発売せず単発になるそうです。臨時の措置のようですが、それにしてはアラン・ギルバートやダニエル・ハーディングらの大物の来日を前提としているのがやや不安です。

そのアランが7月に持ってくるプログラムをみて仰天しました。なんとアラン・ペッテションの交響曲第7番というのです。私はいままで数多くの音楽評論に接してきましたが、ある方がウェブにアップしているこのペッテションに関する文章↓が一番印象に残っています。

http://kukikei.sakura.ne.jp/sym-eastnoth-pettersson.htm

あまりに面白いので交響曲第7番についての記述を引用させてもらいます。

「(引用はじめ)それが5分ほどもすると……また戻る……吹雪に戻る。まさに雪の女王登場。ここは泣き節全開で、きゅーっとくる。不安と前へ向かわんとする意志とのせめぎ合い。希望が少しずつではあるが、見えてくる。弦楽の伴奏による、スネアドラムのソロ……。(←どんな現代奏法でもふつうは逆である。)

そしてまたも静謐で、純粋なる祈りが聴こえてくる。このまま安息の中に消えて行くのなら、彼は1流半のちょい叙情系ブラック作曲家として、一般マニア受けしていただろう。

帰ってくる。
 
暗黒が返って来る。

お帰りなさい死の河。

彼は行くべき道を見いだしたと書いたが、そんな道は本当にあるのだろうか?
彼は我々には見えない世界の、黒色の遥かな道へ行こうとしているのではないのか?

危ない! 彼に着いて逝ってはいかん!!(引用おわり)」

とは言っても、私は2番から聴いていって6番まではすべて最後までもちませんでした。なんというかホラー映画のBGMみたいな感じで延々と続くので耐えがたいのです。はじめて全部聴けたのが7番でした。これは6番までと違って聴きやすいです。

まだ聴いていない曲もありますが、私的に一番感動したのは12番のオラトリオのような合唱付きのシンフォニーでした。アランの曲は非常に内省的で、彼の感情や心象風景を楽譜にした場合が多いのですが、12番は叙事的な詩があって、それに曲をつけたので普通の音楽(20世紀の人ですがいわゆる現代音楽ではありません)として聴けます。交響曲第7番もやや聴衆を意識して仕上げたようなところがあり、これは自分の中でだけ循環していた音楽を外に連れ出したような感じもします。驚くほど独特な音楽ですが、名曲だと思います。

これ以外ではマエストロ小泉の「オネゲル交響曲第3番」もいいですね。マデトヤとアイヴズの交響曲は聴いたことがありません。

まあほかにもいろいろありますが、すべてはコロナ次第とはなさけないご時世です。夏以降のプログラムについてはまた後に。

アラン・ペッテション 交響曲第7番
https://www.youtube.com/watch?v=mNSQTgZq87A
https://www.youtube.com/watch?v=KMG-QHu5QFs

 

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都響スペシャル2021 インバル-都響@東京芸術劇場 2021/01/19

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しばらくコロナで自粛していましたが、インバル-都響でベートーヴェンの6&7交響曲をやるというので、芸劇にでかけました。コンマスの雨男=ボス矢部も雨雲を呼べないくらいの雲一つ無い快晴で、寒さ格別の日です。サイドは山本さん。わりとレアなコンビです(昔は皆無でした)。楽団員の入場を聴衆が拍手で迎えます。

田園交響曲は素っ気なく始める指揮者が多い中で、マエストロ・インバルは絶妙なテンポで丁寧にスタートして聴衆を曲に引き込みます。第2楽章は特にニュアンス豊かで、弦の各パートがささやき合うような、繊細かつ和やかな進行がなんとも言えず素晴らしい。嵐は久一さんのティンパニが強烈で、コントラバスのうなりとも相まって怖いくらいの演奏でした。

そして最高に素晴らしかったのが終楽章。これだけ楽しそうな乗り乗りの演奏もなかなか無いのでは! インバル-都響ならではの解放感がホールを満たしました。大野さんや小泉さんがこれをやるとわざとらしくなるんだよね。まあやらないし。

7番もCD録音時のような軍隊的規律のアンサンブルではなく、リラックスしてみんな思い切り演奏していたと思います。インバル-都響もインバル80台半ばにしてさらに進化していますね。

楽団員が退出した後も、マエストロ・インバルのソロカーテンコールにスタンディングオベーションでした。

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2021年1月16日 (土)

アンチ新型コロナ ワクチンのいろいろ

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シノヴァク・バイオテク(中国)
伝統的手法による不活化ワクチン 製品名コロナヴァク
冷蔵保存でよい
治験の結果(有効性): トルコ91.25%、インドネシア65.3%、ブラジル:50.4%
重篤な副作用は報告されていません。

中国生物技術(中国 シノファームの子会社)
伝統的手法による不活化ワクチン 製品名BBIBP-CorV
冷蔵保存でよい
治験の結果(有効性): 会社発表79.34%、UAE86%
非常に多彩な副作用があるが、重篤なものではないようです。

ファイザー・ビオンテック(米・独)
mRNA 製品名:BNT162b2
要冷凍保存 -70℃で保管・輸送する必要あり 2回接種
治験の結果(有効性): 会社発表95%
安全性:下の続報欄を参照

モデルナ(米)
mRNA 
要冷凍保存 -20℃で保管・輸送する必要あり 2回接種
治験の結果(有効性): 学術誌:94.1%
重篤な副作用は報告されていません。
日本では武田薬品が請け負って製造する予定

アストラゼネカ(英)
DNA(ベクター経由) 製品名:AZD1222
冷蔵保存でよい
治験の結果(有効性): 会社発表90%、学術誌:70%
重篤な副作用は報告されていません。
日本ではKMバイオロジクスが製剤化予定

ノババックス(米)
組み替えタンパク質 製品名:NVX-CoV2373
冷蔵保存でよい
治験:まだ第3相の結果が出ていない
日本では武田薬品が請け負って製造する予定


ワクチン開発競争は、勝てば億本単位で売れるので熾烈をきわめています。ファイザーとモデルナ(特にファイザーは-70℃)は冷凍保存なので、よほど有効性・安全性でアドバンテージがないと勝つのは困難でしょう・・・・・と言いたいところですが、mRNAやDNAは変株が発生してもすぐに塩基配列の変更で対応できるので、毎年新ワクチンが販売できて笑いが止まらなくなる可能性があります。

ノババックスの製品には注目しています。中国の製品も成績が良ければ当然導入すべきだと思いますが、政府の姿勢が問われるところでしょう。私的にはDNAだけは体に入れたくないですね。アストラゼネカのはワクチンというより、遺伝子治療に近いと思います。

ワクチンは100%有効ではありませんし、突然変異に対応できるかどうかは時の運。致命的な副反応が出るかどうかも時の運です。いずれにしてもアビガンを各家庭の常備薬として保管し、風邪ひいたと思ったら妊産婦・幼児以外はすぐ服用するようにすれば、ワクチンに頼らなくても新型コロナの蔓延を防げると思うのですが。

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続報:ブルームバーグによると「ノルウェーでは ファイザーとビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチン接種を受けた後に死亡した高齢者の数が推計29人に増え、基礎疾患のある高齢者にとっての安全性について懸念が高まっている。」とのことです。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-17/QN1V23T1UM0W01?srnd=cojp-v2

 

参照サイト

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55657280
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-race/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%A0
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2020/2020_12_11.html
https://www.chemicaldaily.co.jp/%E6%AD%A6%E7%94%B0%E8%96%AC%E5%93%81%E3%80%81%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%EF%BC%92%E5%89%A4%E3%82%92%E5%90%8C%E6%99%82%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%80%81/
https://crisp-bio.blog.jp/archives/22059084.html
https://www.afpbb.com/articles/-/3320308
https://www.kmbiologics.com/sustainability/covid-19/

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