「渋めのダージリンはいかが」へようこそ

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(PDF版には、はしがき、ページ付きもくじ、巻末索引がついています)

すべてフリーですので、ごゆっくりどうぞ 

「生物学茶話:@渋めのダージリンはいかが」の紙本は九州大学理系図書館、京都大学理学部図書館、島根大学附属図書館、東京大学理学図書館、東京工業大学大岡山図書館、北海道大学理学部図書室、杏林大学医学部図書館、電子書籍としては国立国会図書館に収蔵されています。

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2022年10月 2日 (日)

ロングライフハイビスカス

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今日も良い天気です。夏のような日差しですが、蝉の声は全く無くやっぱり秋ですね。
これはプチオレンジというロングライフハイビスカスで、気持ちよさそうに咲いています。
エアコンの室外機にカバーを掛けて封印し、半袖のシャツもすべて押し入れに収納しました。

今年の夏は長く、世話になったタオルケット2枚をようやくしまい、3シーズン用の布団を取り出して干しました。

ベランダから下を見ると、キジバトが地面を歩いていました。

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2022年9月30日 (金)

続・生物学茶話190: 電位依存性ナトリウムチャネル

動物が電位依存性ナトリウムチャネルを持つことが明らかになったのは1980年代のことです(1、2)。ナトリウムチャネルが開くことによって脱分極が起こり、神経伝達が行われるという基本的なメカニズムを担うツールです。この遺伝子構造を解明したのは沼正作研究室の野田らですが(2)、ウィキペディアで沼正作の項目を読むと、その膨大な功績にもかかわらず、なぜこの人がノーベル賞を受賞できなかったのか不可解に思われます。この原因は彼がどうもアカハラ・パワハラ当たり前の上に同業者の不興も買っていたようで、性格が災いしたのが原因のようです(3、4)。沼研究室の全盛期は日本の科学が一番華やかだった時代です。ならばチャネルを構成するタンパク質の立体構造などもすぐに解明されたかというとそうではなく、ようやく最近数年でわかってきたのですが、それについてはあとで述べます。

21世紀になって細菌・古細菌でも電位依存性ナトリウムチャネルが発見され、これは動物の場合のようにひとつの分子で構成されるのではなく、細胞膜を6回貫通する分子のテトラマーによってできていることがわかりました(5、6、図190-1)。真核生物のものに比べて分子量が小さいのでX線結晶解析で構造を解明することができました。

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図190-1 真核生物と原核生物の電位依存性ナトリウムチャネル

電位依存性ナトリウムチャネルというのは私たちの神経伝達の基本的構成要素なのですが、では神経を持たない生物、それも細菌がどうしてそんなものを保有しているのかは難しい課題です。もちろん細菌もイオンのホメオスタシスは保つ必要があるでしょうから、さまざまなイオンチャネルが必要だというのは漠然とは理解できます。水溶性物質を膜を通過させるための穴として機能しているとペイヤンデらは主張しています(6)。

細菌のエネルギーシステムとしてプロトン駆動型エンジンはよく知られていて、私たちもミトコンドリアの装置を利用しているわけですし、Na-K-ATPase はナトリウムを細胞の外に追い出すポンプとしてこれまたよく知られています。ではナトリウムポンプは何のために出現したのでしょう。南野らは最近、細菌の運動器官である鞭毛を作るために必要なタンパク質輸送装置に、プロトン駆動型輸送エンジンに加えナトリウム駆動型エンジンや膜電位センサーが搭載されていることを発見しました(7)。どうやら電位依存性ナトリウムチャネルは鞭毛の制作に必要なツールのようです。南野らはプロトンエンジンが機能低下した場合のバックアップと考えているようです(7)。

真核生物の電位依存性ナトリウムチャネルは、ひとつのタンパク質のなかに、それぞれ6個の細胞膜貫通領域を持つ4つのドメインの立体構造が含まれます。これらがポアを取り囲むような構造であることはわかっていましたが(図190-2)、正確な立体構造の解析は難航しました。結局最近になってX線結晶解析ではなく電子顕微鏡によって解明されました(8、9、図190-3)。解明したのは Yan らのグループで、彼女らはクライオEMの技術を使って、細胞膜のさまざまなチャネルの構造を怒濤の勢いで解明しつつあります。電位依存性ナトリウムチャネルに含まれる各電位感受性ドメイン(VSD=voltage sensing domain)はそれぞれ独自のコンフォメーションをとり、イオンの選択的通路は糖鎖で強く修飾されかつSS結合で安定化された細胞外のループでガードされています。進化的に保存されたN末はVSD1の細胞内部位の近傍に位置し、C末はドメインIII-IVリンカーと結合しています(8、9)。

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図190-2 ヒトの電位依存性ナトリウムチャネル

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図190-3 ゴキブリ電位依存性ナトリウムチャネルの立体構造

電位依存性ナトリウムチャネルのαサブユニットについて述べてきましたが、なぜαサブユニットかというと、このサブユニットだけでナトリウムイオンの透過を管理するチャネルをつくることができるからです。他のサブユニットは電位依存性や細胞内局在について影響を与えるそうですが、ウィキペディアには具体的言及はありません(10)。脳科学辞典にはβサブユニットについて多少の記載がありますが、まだまだ研究途上なのでしょう(11)。

ここで西野と岡村が報告したαサブユニットの分子系統樹(12)を見てみましょう(図190-4)。( )内に隣接するHoxクラスターが示してあります。レンガ色で示した分子群はテトロドトキシンセンシティヴ(IC50が10nMあるいはそれ以下)、黒で示した分子群はインセンシティヴなグループです。Nav1.1~Nav1.3 と Nav1.6 が中枢神経系、Nav1.7~Nav1.9 が末梢神経系、Nav.1.4~Nav.1.5 が筋肉に分布しています。これらはすべて活動電位を発生する機能を持っています。また活動電位を発生した後チャネルを閉じて不活化する機能も持っています(12)。Nax の機能は他の分子とは異なっていて、活動電位を発生するためではなく、体液のナトリウム濃度のセンサーとして体液恒常性の維持に貢献しているようです(13)。

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図190-4 哺乳類の電位依存性ナトリウムチャネルアイソフォームの分子系統樹と発現部位

次にやはり西野と岡村がまとめた後生動物と襟鞭毛虫が持つ電位依存性ナトリウムチャネルの系統的関係の図を示しました(図190-5)。Nav2 というのはヒトが持っている Nav1 とは別グループの分子群で、カルシウムなどの2価イオンに対して高い透過性を示す性質があります。Nav も同様です。ここで注目したのは有櫛動物(カブトクラゲ)で、その分子の系統的位置は見事に他の後生動物の外群になっています。また襟鞭毛虫と後生動物のアミノ酸配列の類似性も、オピストコンタのまとまりという観点から注目されます。

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図190-5 オピストコンタの電位依存性ナトリウムチャネル各グループの系統関係

これらのチャネルはすべて24回膜貫通の1分子型ですが、原核生物から真核生物に進化する過程で、6回膜貫通型の遺伝子が2回の縦列重複を行ったものと推測されます(12)。西野・岡村の文献12は「全史」と銘打っているだけあって素晴らしい総説だと思いますが、細菌から真核生物への進化をたどるには、古細菌のチャネルに関するデータが現時点では足りないように思います。

電位依存性ナトリウムチャネルは神経を持っている生物にとっては、神経伝達や筋収縮の基本になる物質なので、これを阻害されると容易に死に至ります。したがってテトロドトキシンなど毒のターゲットとして好適な分子でもあります。

参照

1)Hartshorne, R.P. and Catterall, W.A., Purification of the saxitoxin receptor of the sodium channel from rat brain., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.78, pp.4620-4624 (1981) DOI: 10.1073/pnas.78.7.4620
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6270687/

2)Masaharu Noda, Shin Shimizu, Tsutomu Tanabe, Toshiyuki Takai, Toshiaki Kayano, Takayuki Ikeda, Hideo Takahashi, Hitoshi Nakayama, Yuichi Kanaoka, Naoto Minamino, Kenji Kangawa, Hisayuki Matsuo, Michael A. Raftery, Tadaaki Hirose, Seiichi Inayama, Hidenori Hayashida, Takashi Miyata & Shosaku Numa., Primary structure of Electrophorus electricus sodium channel deduced from cDNA sequence. Nature, vol.312, pp.121-127 (1984) https://doi.org/10.1038/312121a0
https://www.nature.com/articles/312121a0

3)沼研の伝説的なエピソード:沼正作(1929-92)
http://scienceandtechnology.jp/archives/9655

4)岡田泰伸 地球の裏側で感じたノーベル化学賞の余震
http://www.nips.ac.jp/rvd/Southamerica.htm

5)D Ren, B Navarro, H Xu, L Yue, Q Shi, D E Clapham, A prokaryotic voltage-gated sodium channel., Science vol.294(5550): pp.2372-2375.(2001)
doi: 10.1126/science.1065635.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11743207/

6)Jian Payandeh and Daniel L Minor Jr, Bacterial voltage-gated sodium channels (BacNa(V)s) from the soil, sea, and salt lakes enlighten molecular mechanisms of electrical signaling and pharmacology in the brain and heart., J Mol Biol, vol.427(1): pp.3-30.(2015) doi: 10.1016/j.jmb.2014.08.010.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25158094/

7)南野徹,木下実紀,森本雄祐,難波啓一、 細菌べん毛輸送装置の膜電位に依存した活性化機構 生物物理 vol.62(3),pp.165-169(2022) DOI: 10.2142/biophys.62.165
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/62/3/62_165/_pdf/-char/ja

8)Huaizong Shen, Qiang Zhou, Xiaojing Pan, Zhangqiang Li, Jianping Wu, Nieng Yan, Structure of a eukaryotic voltage-gated sodium channel at
near-atomic resolution., Science vol.355, issue 6328 (2017)
doi: 10.1126/science.aal4326
https://www.science.org/doi/10.1126/science.aal4326

9)Pan X, Li Z, Zhou Q, Shen H, Wu K, Huang X, Chen J, Zhang J, Zhu X, Lei J, Xiong W, Gong H, Xiao B, Yan N., Structure of the human voltage-gated sodium channel Nav1.4 in complex with β1., Science vol.362, issue 6412 (2018)
doi: 10.1126/science.aau2486.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30190309/

10)ウィキペディア: ナトリウムチャネル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB

11)脳科学辞典: ナトリウムチャネル
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB

12)西野敦雄,岡村康司 Nav チャネル全史 細菌からヒトまで
生化学 vol.91(2): pp.210-223 (2019) doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910210
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2019.910210/index.html

13)Takeshi Y. Hiyama, Masahide Yoshida, Masahito Matsumoto, Ryoko Suzuki, Takashi Matsuda, Eiji Watanabe, Masaharu Noda, Endothelin-3 expression in the subfornical organ enhances the sensitivity of Nax, the brain sodium-level sensor, to suppress salt intake., Cell Metabolism, vol.17, pp.507-519 (2013)
DOI: 10.1016/j.cmet.2013.02.018
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23541371/

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2022年9月26日 (月)

新型コロナやワクチンの今

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一日の感染者数が東京だけでも4万人となった新型コロナの蔓延もようやく落ち着いてきたようですが、それでもまだ本日の段階で6000人以上の新規感染者が発生しているようです(上図は本日のコロナ感染者 東京都のサイトより)。本当にしつこい感染症です。介護施設などでも緩んできているようですが、ちょっと不安になります。これで10月11日から外国人旅行者を大幅に受け入れることになったら油断はできません。北総線沿線居住者の私としては、しばらくアクセス特急の利用は見合わせるくらいのことしかできませんが、さてどうなるのでしょうか。

もうひとつの不安はmRNAワクチンについてです。9月15日にピアニストの荒井千裕氏がワクチン後遺症で亡くなられました。本人や関連サイトをリンクしておきますのでご参照ください。ご冥福をお祈りいたします。

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ご本人のサイト こちら1

他 こちら2 (ご家族) こちら3 (医師) こちら4

mRNAワクチンの安全性についてはまだわからないことが多いと思います。

脂質ナノ粒子の膜に包んでmRNAを投与するわけですが、それがすべて細胞に取り込まれるとは思えません。幾ばくかは体の片隅にへばりついたままになるのでしょう。その脂質が問題で、それ自身が抗原や有害物質として機能する可能性があります。改造mRNAはウリジンを1-メチル-シュードウリジンに転換した生体にないものですから、完全に分解されない限りやはり抗原や有害物質として機能する可能性があります。mRNAを分解する酵素はウリジンのmRNAを分解するためにあるので、別の物質に変わっているわけですから完全には分解できないでしょう。巷間よく言われるのは、スパイクタンパク質を発現した細胞は細胞性免疫によって攻撃を受ける可能性があることです。

遺伝病の患者にとってこの遺伝情報移入システムは天恵で、症状によってはある程度のリスクを冒すことを受け入れることもあり得ると思いますが、健常者に打つワクチンとしてはどうかと思います。やはり現状の医学のレベルではワクチンはタンパク質であるべきです。それより中等症のコロナ患者を収容する施設の整備に全力を尽くすべきです。政府はワクチン関連の新型コロナ対策としてはノババックスなどを支援すべきで、モデルナの工場をつくるなら遺伝子治療用にすべきだと思います。

 

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2022年9月25日 (日)

吉祥寺への旅

起きて植物と猫の世話をすませると支度をしてすぐに、といきたいところですが、腰痛が再発しているのでコルセットをきっちり装着しておもむろに出発。2時間かけてはるばる吉祥寺までの旅です。

昔武蔵野大学薬学部で少し仕事をしていたことがあるので、懐かしい街でもあります。それにしてもよくこんな遠いところまで通っていたものだと思います。ようやく到着しましたがブレックファストがまだだったので、アトレのドンクでキッシュを注文すると、パンの欠片がついてきたのには笑ってしまいました。パン屋としてのの主張なのでしょうか?

スターパインズカフェに来たらもう数十人たむろしていました。

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今回はe+やぴあにも出さず、フライヤーも作らないライブでしたがなかなかの盛況でした。私は2Fの中央に座りました。ここの2F席は面白くて、左右にシークレット的な席もあります。このライブハウスは音響が素晴らしく、言葉もきちんと聴き取れます。

登場したまきちゃんぐにびっくり。顔がシャープに変わっているではありませんか?? あとの話でこれは食塩ダイエットの効果だそうです。このブログでもいまソディウムポンプの記事を書こうと資料を集めていたところなので奇遇です。知らんけど、多分どの程度減塩していいかは、かなり加減が難しいのではないかと思います。

今回は伴奏の澤近さんがはじめてということもあってバッチリとリハをやったに違いなく、すばらしい完成度で「満海」「海月」「愛が消えないように」などを聴けたので大満足。「ハニー」や「ちぐさ」もあらためてそのよさを再認識させられました。ほんとにソウルフルですねえ。すごいと思っていたら、なんと「ジンジャエールで乾杯」で歌詞を失念。まきちゃんぐもやっぱり人間だった。

最後の曲「愛が消えないように」は写真・ビデオ撮影OKでした。というわけで下の写真を撮影しました。

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2022年9月23日 (金)

小泉-都響 「田園」「ローマの噴水&松」@サントリーホール 2022/09/23

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都響のプロムナードコンサート。サントリーホールに通うのが厳しくなってB定期は降りることにしましたが、プロムナードはまだ続けています。本日の公演はマエストロ小泉の指揮、コンマスはボス矢部、サイドはゆづきです。ボス矢部は老眼が進んだのか、見慣れないメガネで登場。

盛況なんですが、びっくりしたのは多分ローマの松のバンダによる感染を防ぐためでしょうか、バンダの前のサイド席が80席くらい空けてありました。まだまだナーバスになっています。

小泉-都響のコンビは非常に進化していて、まるで全員がシナプスでつながっているかのような一体感が感じられました。ここまで心に響くベートーヴェン「田園」交響曲は聴いた記憶がありません。ゆずきが200%出し切ったと言っているのもわかります。芸術家としても演奏アスリートとしても最高のパフォーマンスだと思います。

後半のレスピーギ「ローマの噴水」「ローマの松」も繊細かつ豪快な演奏で感銘を受けました。私が特に感動したのはカタコンバの松で、その暗く神秘的な響きは音楽の深遠な力を感じさせてくれました。松ではラチェットというコーヒーミールを手で回すような楽器が面白かったです。パイプオルガンも使用。

✨✨✨ブラボー 小泉&都響。

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2022年9月22日 (木)

サラの考察15: 私とサラの夢

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私「今日は狩りがうまくいかなかったなあ」

サラ「腹ぺこだよ」

私「明日は危険だけれど池の近くで待ち伏せするしかないか」

サラ「ミーナがいたときは、まずモン(私)が獲物を見つけ、ミーナが追いかけて私が待ち伏せするという作戦ができたのに」

私「ごめん 足が遅くて。ミーナが死んでもう半年か、よくふたりで生きてきたもんだ」

サラ「栄養にはならないけど、枯れ草を食べれば少しは空腹を忘れられるよ」

私「そうするよ」

サラ「じゃ 私は寝るから おやすみ」

私「おやすみ」

そんな会話をしていたら、おやすみと言った途端に目が覚めました。ミーナは今どうしてるのかな?

http://morph.way-nifty.com/grey/2022/03/post-6ef01d.html

 

 

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2022年9月21日 (水)

まきちゃんぐ始動

まきちゃんぐ 35th Birthday Live (ワンマン)
「だって、女に生まれたの。」
9月25日(日) 12:00open 12:30start \3,500
@吉祥寺 star pine's cafe
with 澤近泰輔 (pf.)

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宮益坂交差点にこんなメッセージ ↑ が出現したそうです。

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🎵 まきちゃんぐさんのメッセージ 🎵

25周年を迎えるスターパインズさんで行う、9月生まれのまきちゃんぐ誕生月ライブです。

35歳を迎える今年はデビュー当時大変お世話になった音楽家・澤近泰輔さんをゲストミュージシャンにお迎えし、上質でたおやかな音楽のお時間をお届けします。澤近さんに編曲していただいた過去の曲もふんだんに盛り込んだセットリストにもご期待ください。

cf. https://twitter.com/makichang_info



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2022年9月19日 (月)

真山仁「標的」

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真山仁「標的」 文藝春秋社 2017年刊

真山仁の「標的」はなかなか興味深い小説です。東京地検特捜部の検事たちの活躍が生き生きと描かれています。政治家への贈賄事件を扱っています。ありふれたストーリーかもしれませんが、作家の実力でしょうか、一気に読めます。

晋三は検察の人事を思い通りにやろうとして失敗しましたが、私はこのことと暗殺事件は関係があると思っています。山上は日本のオズワルドだったのではないでしょうか。山上が今後インタビューなど自由な発言の機会を与えられるかどうかに注目しています。オズワルドの尋問調書はすぐに廃棄されましたが、山上の場合はどうなるのでしょうか。改ざんや隠蔽が行われるかどうかを注視しなければいけません。

政権に都合のよい検察人事は困りますが、検察による政権の選別が行われるのも問題があります。まして政権と検察がつながっていると何でもできるでしょう(晋三はまさにそれを狙っていたわけですが)。この小説のタイトル「標的」というのはそのような危険性を暗示しています。選挙の後なら誰をターゲットにしてもよいというのは検察のポリシーのようです。真山仁がとりたてて興味をそそられそうもない贈賄というありふれた犯罪をとりあげたのも、政治家と検察の関係に注意を喚起したかったからだと思います。

海外のプライベートバンクに口座をもっている企業経営者の場合、賄賂を送るのは簡単なのでしょう。政治家にも口座をもたせてお金を移転させればいいのですから。タックスヘイブンを利用すれば秘密は守られます。あるいは関係者にプライベートバンクが融資するという形にすれば現金化も可能です。ただ現金そのものを秘密裏に海外から持ち込むのは、この小説にもでてきますがかなり困難なのでしょう。とはいっても、今の時代なら船からドローンを飛ばせば運べそうに思いますが、どうなのでしょう。最近スペインで麻薬を運んでいた水中ドローンが摘発されたという記事をみかけました(1)。犯罪組織のための密輸機器の製造販売を行っているグループがもうすでに存在していたようです。このグループは家族的な小さな規模だったようですが、もっと巨大な組織がすでにありそうな気がします。

1)https://www.bbc.com/japanese/62046939

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2022年9月17日 (土)

続・生物学茶話189: オピストコンタの系統図更新

久しぶりでウィキペディアのオピストコンタという項目を閲覧したら、オピストコンタに含まれる生物が膨張しているのに気がつきました(1)。オピストコンタとは鞭毛が後ろという意味で、鞭毛が進行方向の後ろにある生物はオピストコンタのみです。私たちの精子も鞭毛をゆらして、生えている位置と反対方向に進みます。

私たちの精子を含むオピストコンタという概念はヘルムート・ガムス(1893-1976)というオーストリアの植物学者が提唱したようです(図189-1)。この概念を様々な根拠をもってクレードとして提唱したのはトーマス・キャヴァリエ=スミス(1942-2021、図189-1)です。彼のどの論文を引用すべきかはよくわからなかったので、死後出版されたおそらく最後の論文を引用しておきます(2)。これは繊毛の根元の構造に関するレビューで、彼はこの構造の進化がオピストコンタの起源を解明する鍵だと考えていたようです。100ページ以上ある長大な文献で、引用したものの実は私も読んでおりません。

図189-1は国際原生生物学会が2018年にアップデートした分類にもとづいたものです(1、3)。これによると、オピストコンタはホロマイコータとホロゾアにわけられ、襟鞭毛虫とメタゾア(動物)はホロゾアのひとつの分類群としてコアノゾアという名前でまとめられており、共通祖先生物は9億5千万年前頃に生きていたとしています。襟鞭毛虫とメタゾアの類似性は多くの研究者によって確認されています(4-6)。

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図189-1 オピストコンタの系統図

図189-1の系統図の右下の隅に襟鞭毛虫(Choanoglagellata)と動物(Metazoa)が Choanozoa としてまとめられています。襟鞭毛虫は単細胞生物で1本の鞭毛をもっており、そのまわりを微絨毛がとりまいて襟のような構造をつくっている生物です・・・といろんなサイトに書かれていますが、実はそう簡単ではありません。細胞のサイズはヒトの細胞と同じくらいで数μm程度です。ローンドンらはロセット属の集合体を形成する襟鞭毛虫について調べたところ、その集合体(Rossete)は単なる群体ではなく、それぞれの細胞が異なる形態を持つ、まるで多細胞生物のような集合体であることを示しました(7)。

このタイプの襟鞭毛虫は同じ種であっても、単体で遊泳する者、集合体で遊泳する者、固着生活をする者などもともとバラエティに富んでいますが、特にロセット集合体を形成すると、細胞のサイズ、絨毛の長さ、食胞の容積、ERの発達などに大きな違いがある細胞に分化し、それぞれが2つの隔壁をもつ橋のような特異な構造でつながっていて、海綿動物や刺胞動物とは異なっているものの、ある種の多細胞生物のような形態をとることがわかりました(7、図189-2)。これはカビやキノコとは別経路での多細胞化であり、オピストコンタの進化を考える上で重要です。

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図189-2 始原的多細胞生物を思わせる襟鞭毛虫のロセット

ローンドンらはオピストコンタの系統図を更新し、また様々な生物が襟細胞を持っていることを示しています(7、図189-3)。それらが襟鞭毛虫と関係があるかどうかの確証はありませんが、襟鞭毛虫がメタゾアと最も近縁な生物であることは進化生物学者のコンセンサスであり(8)、様々なメタゾアの系統に襟鞭毛虫と似た襟細胞があっても不思議ではありません。また、メタゾア系統樹の根元に近いところから分岐したと考えられている海綿動物・刺胞動物・平板動物がいずれも襟細胞をもっているのに対して、有櫛動物がもっていないのは、この動物の出自の特異性を思わせます。青い点線はそのあたりの疑問を表しています。もちろん進化の過程で襟細胞を失うということは普通にあることなので、それはもちろん考慮する必要があります。私たちヒトの体にも襟細胞はありません。

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図189-3 襟細胞を受け継ぐ生物

 

参照

1)ウィキペディア:オピストコンタ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%94%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BF

2)Thomas Cavalier-Smith, Ciliary transition zone evolution and the root of the eukaryote tree: implications for opisthokont origin and classification of kingdoms Protozoa, Plantae, and Fungi, Protoplasma., vol.259(3): pp.487-593 (2022)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9010356/

3)Sina M. Adl et al., Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes., Eucalyotic microbiology Vol.66, Issue 1, pp.4-119, (2019)
https://doi.org/10.1111/jeu.12691
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jeu.12691

4)Steenkamp ET, Wright J, Baldauf SL. The protistan origins of animals and fungi. Mol Biol Evol., vol.23: pp.93-106.(2006)
https://doi.org/10.1093/molbev/msj011
https://academic.oup.com/mbe/article/23/1/93/1193358

5)Carr M, Leadbeater BSC, Hassan R, Nelson M, Baldauf SL, Robertson HM, et al. Molecular phylogeny of choanoflagellates, the sister group to Metazoa. Proc Natl Acad Sci., vol.105: pp.16641-16646 (2008)
https://doi.org/10.1073/pnas.0801667105
https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.0801667105

6)Ruiz-Trillo I, Roger AJ, Burger G, Gray MW, Lang BF. A phylogenomic investigation into the origin of metazoa. Mol Biol Evol., vol.25: pp.664-672. (2008)
https://doi.org/10.1093/molbev/msn006
https://academic.oup.com/mbe/article/25/4/664/1265710

7)Davis Laundon, Ben T. Larson, Kent McDonald, Nicole King, Pawel Burkhardt, The architecture of cell differentiation in choanoflagellates and sponge choanocytes, PLoS Biol 17(4): e3000226 (2019) DOI: 10.1371/journal.pbio.3000226
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30978201/

8)Wikipedia: Choanoflagellate
https://en.wikipedia.org/wiki/Choanoflagellate

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2022年9月15日 (木)

フォッサと再会

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上野動物園のフォッサがまだ生きていると知って、会いに行きました。平日なのにすごい人出で、特にパンダの列は先着順とあってすごいものがありました。モノレールはコロナ禍の前から運行を休止しており、どうするのかわかっていないというのは情けない行政です。私見ではエスカレーターでいいのではないかと思いますが、人寄せに使うならゴンドラもありかな・・・・まあそれならコロナ終焉待ちですね。

つがいのフォッサ、アンバーとベザは2010年にマダガスカルからやってきて、当初は動物園でも気合いが入っていましたが、そのうち♀のアンバーが展示されるのを嫌がることがわかって非展示となり、ひっそりと動物園の片隅で暮らすことになりました。♂のベザは展示されていましたが数年たっても非常にシャイな感じでした。コロナなどで数年間私は上野動物園にはご無沙汰していましたが、今日見た感じではかなり展示にもなれてきた感じではありました。

2017年にアンバーが病死したことは、動物園にとっても痛恨の出来事だったと思います。飼育例が少なく、どのように飼えばいいのか試行錯誤のうちに繁殖に失敗したことは本当に残念です。
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?link_num=24249

フォッサは猫と犬の共通祖先に極めて近い生物とされており、貴重な生きた化石生物です。ベザには是非長生きしてほしいと思います。

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フォッサと再会できて大満足で、おなかもすいたのでアメ横と平行する高架下のイタリア料理店「Tears」で食事しました。耳の遠い爺ひとりでやっている店ですが味は本格派で、とても家庭でだせるような味ではありませんでした。ただ入ってから出るまで客は私一人でした。

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2022年9月12日 (月)

あるサッカースタジアムでの出来事

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ジブラルタル海峡にほど近く、大西洋に面したカディスというスペインの町があります。日曜日にバルサがやってきてラ・リーガのサッカーの試合がありました。バルサは今週ミッドウィークにFCバイエルンとの大一番を控えて、かなりメンバーを温存したとはいえ、カディスは目一杯頑張って前半は0:0で終了。

後半レバンドフスキらを投入したバルサはようやく2点とってあと試合終了まで10分くらいのところで事件は起こりました。レフェリーが突如試合を中断してベンチに走って行きます。けんかとか暴言だとスタンドの方に走っていくはずなので一体何が起こったのか、視聴者も放送陣も呆然。しばらくするとベンチからAEDが持ち出され、スタンドに投げ込まれました。

写真(ウィキペディアより)のように、このスタジアムはスタンドの傾斜が急でやばいなとは思っていましたが、実際お客さんが転落して心肺停止になったようです。WOWOWの放送は何が何だかわからないまま試合途中で終了という前代未聞のハプニング。結局1時間ほど中断して、選手はトレーニングを行った上で再開されたそうです。ともかくくだんのお客が命をとりとめただけでも幸いでした。
https://twitter.com/Cadiz_CFJP/status/1568800346734206978

放送の段取りなどがぐちゃぐちゃになるなどの問題を乗り越えて、試合を中断した関係者の配慮も素晴らしいと思いました。スタンドで人が生死の境をさまよっているときに、サッカー観戦を楽しむことはできませんね。しかし日本で同じことが起こったらどうだっただろうと考えてしまいました。

チャビ監督談「サッカーを超える状況だった。席から落ちて、心臓発作を起こしたと聞いた。カディスとバルサ、審判三者が試合を中断することで一致した。僕らが話しているのは、一つの人間の命だ。命より大事なものはない。できる限り、早い回復を願っています」(バルサHPより)。

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2022年9月11日 (日)

サラの考察14: 肉食

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私「この頃、地球環境に配慮した食事の方法が勧められるようだね」
こちら1

サラ「ひょっとして菜食主義? それは猫には無理ね。でも私は枯れ葉なら食べられるわよ」

私「いろいろな流派があるらしいよ」

サラ「どんな?」

私:「例としては

ロカボ(low carbon):1食で摂取する糖質量を20~40gにする。1日では70~130g。タンパク質・脂質の制限はしません。
こちら2

ヴェジタリアン:肉や魚、それらの含有物を口にしない。卵や牛乳などの動物性食品は通常の食生活と同じように取り入れることができます。
こちら3

ヴィーガン(Vegan):肉や魚に加えて、卵・乳製品などの動物由来の食材を摂取しない。英国ヴィーガン協会によると、ヴィーガンの定義とは「可能な限り食べ物・衣服・その他の目的のために動物の搾取を取り入れないようにする生き方」となっているそうです。
こちら3

精進料理:本来仏教では肉食を禁止しているわけではなく、中国で僧侶に肉食を禁止した時代があって、そこから精進料理がはじまったそうです。
こちら4

などがあるようだ。」

サラ「管理人はどうなの」

私「私はヴェジタリアンじゃないけど、牛肉や豚肉はあまり食べないね。そういう人は昔からいて、ポーヨ・ベジタリアン(pollo-vegetarian)というらしい。」

サラ「じゃあ猫が生きていけるような栄養を含むヴェジ系配合飼料もできるのかしら」

私「きっとできると思うよ。でも野生の猫たちはやはり狩りをして生きてほしいね。・・・ところで私のベッドの手すりを枕にして寝るのはやめてほしいな。私の足が当たっちゃうよ」

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2022年9月 9日 (金)

私の戦友

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私の戦友である電子辞書カシオ EX-word (XD-SR8500) です。8500系の後継機種はまだ販売されているようです。負傷してこんな有様になってから2年くらい経ちましたが、まだ活躍してくれています。コンテンツはたくさん入っているようですが、使用する機会は99%はリーダーズ英和辞典。これは専門用語もかなり収録してあり便利です。残りの1%はジーニアス和英辞典で、他のコンテンツは開いたことがありません。もったいない話です。分厚い紙の辞書はほんとに使わなくなりましたが、どうしても捨てられません。困ったものです。

ふと思ったのですが、カシオとシャープ以外に電子辞書を見たことがありません。外国製品がありません。日本以外では電子辞書を使っている人はほとんどいないようです。スマートフォンで代用しているみたいですね。これは少し手間がかかって、やっぱり電子辞書の便利さには及びません。電子辞書が進化するとすれば、ペン型のスキャナーに対応してほしいと思います。キーをタイプするのはやはり面倒ですから。

辞書はもう完全に液晶画面でみる習慣がつきましたが、本はやっぱり小説などは紙の本を手に取って読みたいと思います。Kindle が意外に普及していないところをみると、同じような人は多いようです。紙本にはパラパラとページをめくって元にもどって確認するとか、赤線を引くとか、付箋をベタベタ貼るとかの楽しみがあります。PDFも便利なようで、まだまだ扱いにくい点があります。

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2022年9月 7日 (水)

円安はどこまで?

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1995年には1ドル=70円台だったレートがとんでもないことになってきました。今日は1ドル=144円です。円安がもたらすものは、もちろん寿司の値上がりだけではありません。管理人が知る科学関係では、研究試薬が外国製のものが多いので現場は困るでしょう。洋書を買ったり論文を閲覧するお金もバカにはなりません。外国の学会にでかけるのも、外国人の研究者を呼ぶのも難しくなるでしょう。留学も困難になります。ポストドクは外国にしか職がみつからなくなりそうです。さてさて国がワクチンを買うのにどれだけお金がかかるのでしょう?

音楽関係では、外国のソリストやオーケストラを呼ぶのも難しくなるでしょう。つい最近まで世界のオーケストラを聴ける(もちろん富裕階級だけの話ですが)東京でしたが、それも昔話になりそうです。どんなに円安になっても日銀は金利を上げません。なんのための日銀なのでしょう。晋三たちの白痴的経済政策のおかげで、こんなことになってしまいました。これをアホノミクスと言った浜矩子はマスコミから抹消されました。そろそろ出したらどうでしょうか?

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2022年9月 5日 (月)

続・生物学茶話188: グリシントランスポーターの進化

グリシンを用いた神経情報伝達はヒトでも重要な役割を果たしていますが、メタゾア(動物)の進化の過程で最も初期に枝分かれしたと考えられている有櫛動物も利用しているらしく、非常に古いタイプの神経情報伝達方式だと想像されています(1、2)。ナメクジウオでも日周性(ダイアーナルリズム)などに関連して利用されているようです。ナメクジウオの視覚では物の形を認識するというようなことはできませんが、明暗や光の方向は認識することができ、彼らの幼生たちは明るいうちは海底に近いところにいて、暗くなると海面に浮上するという生活をしています(3)。

脊椎動物のグリシン系神経伝達システムについては研究が進んでいて、概略は図188-1のようになります。シナプス前細胞からのグリシンの情報は、シナプス後細胞のイオンチャネル型のグリシン受容体によって受け取られ、塩素イオンを透過させることによって細胞に過分極をもたらし、脱分極を阻害する方向に働きます。全く別の様式で脱分極を促進する場合もあるにはありますが、基本的にはグリシンは抑制性の神経伝達因子です(1)。

神経伝達が完了すると、シナプス間隙周辺のグリシンはグリア細胞のグリシントランスポーター(GlyT1)により回収され、さらにシナプス前細胞のGlyT2により再回収され、シナプス前細胞にもどされます。もどされたグリシンはさらにVIAAT/VGATというシナプス小胞のトランスポーターによって小胞に取り込まれ、次の神経伝達の準備が行われます(図188-1)。

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図188-1 脊椎動物のグリシン系神経伝達システム

動物にとってベーシックな神経伝達様式であるグリシン系神経伝達システムですが、意外にも脊椎動物以外では研究が進んでおらず、図188-2のように、その存在が明確になっているのは現状では頭索動物・尾索動物・軟体動物・刺胞動物・節足動物のごく一部の種のみです。ただC.エレガンスではこの神経伝達システムが使われていないことが知られています(4)。

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図188-2 メタゾアにおけるグリシン系神経伝達の進化はどこまで調査されているか

シャパクらはグリシントランスポーターの分類と系統の研究から、グリシン系神経伝達の神経伝達システムの進化に取り組みました(5)。脊椎動物は図188-1にも示しましたが、GlyT1・GlyT2 という2種類のグリシントランスポーターを持っています。シャパクらはナメクジウオも2種類のトランスポーターを持っており、そのうちの GlyT2-like は脊椎動物の GlyT2 と同じグループに所属していてホモローガスと考えられましたが、もうひとつの方は脊椎動物のGlyT1ともGlyT2ともアウトグループではないかと指摘しました(5)。

ボッゾらはナメクジウオなどのグリシントランスポーターについてより詳細な解析を行ない、まずナメクジウオは3種類のグリシントランスポーターを持っていることをつきとめました(5)。そのうち GlyT2.1 と GlyT2.2 は脊椎動物の GlyT2 とよく似ていて同じグループと考えられましたが、GlyT2.1 は主として神経細胞でもグリア細胞でもない他の細胞に、Gly2.2はグリア細胞に局在することがわかりました。そしてナメクジウオの GlyT は脊椎動物の GlyT1 とは少し異なる古いタイプの分子であることも判明しました(6)。GlyTは主に神経細胞に発現していました(6)。

脊椎動物では GlyT1 は主にグリア細胞に、GlyT2 は主に神経細胞に分布しているので、後者と関係が深いナメクジウオの Gly2.2 がグリア細胞に局在しているのは不思議で、進化の過程で何らかの理由で局在が逆転したと思われます。

分子進化の系譜は図188-3のようになります。ここからわかるように GlyT型のトランスポーターはベーシックな古いタイプで、棘皮動物・尾索動物。頭索動物で共有するばかりか、サンゴ(刺胞動物)の分子とも関係が深いようです。ナメクジウオの Gly2.1 と Gly2.2 の分岐は全ゲノム倍化から生じたのではなく、それ以前におきた部分的な遺伝子重複から生まれたものだとボッゾらは考えています(6)。このようなことはウニでもおこっていて(ホヤではおこりませんでした)、ウニも GlyT2.1・GlyT2.2 の2つのタイプの Gly2 を持っています(図188-3)。

GlyT1は全く脊椎動物独自のグループで、ナメクジウオを含む無脊椎動物では発見されておらず、脊椎動物が全ゲノム重複というイベントを経験した後、独自に進化させた分子群と考えられます。

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図188-3 グリシントランスポーターの分子進化

余談になりますが、グリシンは睡眠誘導物質として知られています(7)。私も眠れなかったときに買って飲んでみたのですが、気分が悪くななることがあってやめました。今もポット一杯の粉末がストックしてあります。捨てればいいのですが、なかなかできないのが私の弱点です。

参照

1)続・生物学茶話150: グリシン その1 神経伝達物質としてのグリシン
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/07/post-7d466c.html


2)続・生物学茶話151: グリシン その2 グリシン受容体のルーツ
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/07/post-93b637.html

3)Jiri Pergner and Zbynek Kozmik, Amphioxus photoreceptors - insights into the evolution of vertebrate opsins, vision and circadian rhythmicity., Int. J. Dev. Biol. vol.61: pp.665-681 (2017) doi: 10.1387/ijdb.170230zk
https://www.semanticscholar.org/paper/Amphioxus-photoreceptors-insights-into-the-of-and-Pergner-Kozm%C3%ADk/b61537cdd1ce330ea6b13a045bb120b6c1525064

4)Aubrey, K.R.; Rossi, F.M.; Ruivo, R.; Alboni, S.; Bellenchi, G.C.; Le Goff, A.; Gasnier, B.; Supplisson, S. The transporters GlyT2 and VIAAT cooperate to determine the vesicular glycinergic phenotype., J. Neurosci. vol.27, pp.6273–6281, (2007) doi: 10.1523/JNEUROSCI.1024-07.2007.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17554001/

5)Shpak, M., Gentil, L.G. & Miranda, M. The Origin and Evolution of Vertebrate Glycine Transporters. J Mol Evol vol.78, pp.188-193 (2014).
https://doi.org/10.1007/s00239-014-9615-2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24619162/

6)Matteo Bozzo, Simone Costa, Valentina Obino, Tiziana Bachetti, Emanuela Marcenaro,Mario Pestarino, Michael Schubert, and Simona Candiani,Functional Conservation and Genetic Divergence of Chordate Glycinergic Neurotransmission: Insights from Amphioxus Glycine Transporters., Cells 10, 3392.(2021)
https://doi.org/10.3390/cells10123392
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34943900/

7)眠れない人のための駆け込みサイト 睡眠サプリに含まれるグリシンの効果・副作用とは
https://www.goodsleep-nav.com/component/glycine.html


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2022年9月 3日 (土)

大野都響ーイブラギモヴァーブラームス@東京芸術劇場2022/09/03

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涼しくて出かけやすい気候になりました。今日は池袋の芸劇で大野・都響のブラームス交響曲第2番です。ソリストのイブラギモヴァは大人気のヴァイオリニストで、コンチェルトもブラームスのVnコンチェルト。広い芸劇ですが満席です。本日のコンマスはボス矢部、サイドは山本さん。

コンチェルトの序奏から、あれっ柔らかい音。ソリストを意識してのことでしょうか? ソリストのイブラギモヴァは恰幅の良いおばちゃんですが、童顔のかわいい人です(フライヤーの写真は昔すぎます)。ヴァイオリンの音もそんな感じですが、この箱にしてはやや音量が足りない感じがします。アンセルモ・ベローシィオの楽器らしいですが、サントリーホールで聴きたかったですね。ぺったんこの靴で、結構ステージを動き回りながら弾きます。指揮者の目の前で弾いたりしますが、これは指揮者は意外に合わせやすくて好ましいかも。

彼女の音楽はちょっと特別で、聴衆だけでなくオケメンにも自分の母乳を与えてリラックスさせ、会場全体ををやわらかく包むような雰囲気があります。聴く者にも弾く者にも母の愛が惜しみなく与えられます。もう技巧を超えた福音ですね(技巧もすごいのですが)。カデンツァなんてまるで胎児に話しかけているように感じました。

後半の交響曲第2番は文句のつけようがないくらい立派な演奏なんですが、なんというかライブのスリルや面白さが感じられないのがマエストロ大野の面目躍如なんだよね。2Vnの小林さんもマエストロ小泉のときのように足を踏みならしながらの演奏とはほど遠く、緊張して弾いていたみたいです。昨年のマエストロ下野のブラームスは、はみだしたケースも多くてとてもエキサイトしました。まあキャラとしてそういうのはできないんだと思いますね。

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2022年9月 1日 (木)

人名・国名・地名について

人の名前をどう呼ぶべきかの結論ははっきりしています。その人の言うとおりに呼べばよいのです。ただ実際それがそうされていない場合があるので困ります。地名をどう呼ぶべきかはずっと難しくなります。土地には占領がつきものですから、時代によって変わるのは致し方ありません。最近ではキエフがキーウになりました。これは何を正義とするかによって変わっためずらしい例です。

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写真の3人は、本人が使っている名前とは別の発音で呼ばれている人々です。チャビはFCバルセロナ(バルサ)の監督ですが、なぜか日本のマスコミは選手時代からシャビと呼んでいて、監督になった今も改めようとしません。ウィキペディアもシャビという項目になっています。エニャは日本の歌番組に出演して、自分はエニャだと自己紹介しているのを私自身聴きましたが、日本のレコード会社やマスコミはエンヤという名前で呼んでいて、頑として改めようとしません。習近平は世界でも5本の指に入るべき有名人ですが、日本のマスコミでシー・チンピンと正しく呼んでいるところはないと思います。人の名前は他の人や組織の都合で勝手に変えられてはならないものだと思います。

国名は人の名前とくらべれば、かなりルーズになるのはやむをえません。国には長い歴史があってその間に変遷もあります。日本自体も国名ははっきりしません。にほんなのかにっぽんなのかジャパンなのか、どうなのでしょう。NHKはにっぽんですが。多くの国はジャパンと呼んでいて、中国ではリーベン、韓国ではイルポンです。日本も中国をツォンクゥォ-と正しく発音しているマスコミはありませんし、韓国もハングとは発音されていません。やむをえないとはいえ、こんなにでたらめでいいのかとは思いますね。基本的にはその地の人々が呼ぶ発音で外地の人も発音すべきでしょう。国連がなんとかしてはどうでしょうか。

地名は意外に混乱は少ないと思います。北海道にはアイヌ語の地名がたくさんありますが、政府は容認しました。稚内(わっかない)は沢、新冠(にいかっぷ)はニレの木の皮という意味だそうです。ただ中国の地名は日本語読みの場合が多いですね。これは例外でしょう。

個人的には日本のマスコミは中国の最高指導者と主要都市の名前くらいは現地の発音を採用すべきだと思います。ソウルとかピョンヤンは定着しているくらいですから。中国のマスコミにも日本の総理・外務大臣や主要都市については日本語の発音を採用してくれと要求すべきでしょう。

習近平 シー・チンピン
李克強 リー・コーチャン

中国 ツォンクゥォー

北京 ペイチン
武漢 ウーハン
重慶 チョンチン
香港 シャンガン

(上海はなぜかシャンハイと正しく呼ばれています)

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Contributors of photos:
Doha Stadium Plus Qatar (left)
C. Duffy (center)
R. Kubanskiy (right)
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2022年8月29日 (月)

サラの考察13: 科学の危機

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私「おいおい サラの考察の時間だよ」

サラ「眠いんで 今日はお休み」

私「そりゃないよ 深刻な事態になっているんだ」

サラ「じゃあどうぞ 好きにやって」

私「我が国の科学引用論文の数が激減して、韓国にも抜かれたらしい」

サラ「そりゃあ晋三みたいに、勉強嫌いで科学などチンプンカンプンの人が総理をやってればそうなるわよね」

私「日本の科学雑誌もどんどん廃刊になってさみしい限りだね。今年度末には理研の研究者が大量にリストラされるという噂もあるし、だいたい政府は軍事・海外援助・ワクチンには莫大なお金を使うのに、科学・教育・医療の拡充には渋いというのがいただけない」

サラ「韓国には政権交代があるけど、日本にはないので晋三のような人が長い間仕切る無能国家になるのね」


#自然科学分野の引用論文数 日本は過去最低の12位に後退
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220828/k10013791031000.html

#理研600名リストラ危機が示す研究現場の疲弊
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20220402-00289482

 

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2022年8月27日 (土)

西島三重子(ツイキャス)

昨日は原宿ラドンナで西島三重子のライブでした。諸般の事情で私はツイキャス配信で視聴しましたが、なにしろセットリストがワーナーパイオニア時代・テイチク時代の作品が多くてびっくりしました。この頃の作品の粒ぞろいさはすごい。東芝時代のものでも、「海鳴り」というレアな曲が聴けて大満足でした。ただ最初の3曲くらいは全くエンジンの掛かりがわるくて心配しましたけどね。次回は是非生で聴きたいと思います。

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西島三重子さんとギターの平野融さん ピアノは織原洋子さん

セットリスト

1.愛に流されて

2.一瞬の夏

3.水色の季節の風

4.ジンライム

5.びしょぬれワルツ

6.セレナーデ

7.折り返し悲しみ行き

8.星屑のララバイ

ブレイク

9.おひさまのたね

10.AZAMI

11.ラブソング

12.かもめより遠くへ

13.海鳴り

14.恋遊び

15.星のタペストリー

16.かもめより白い心で

アンコール1.池上線

アンコール2.サイレントデイズ

一夜明けて今日はマウスの調子が悪くて、開けて掃除ができるタイプでもなさそうだし仕方ない買い換えるかとイライラしていたら、なんと水をキーボードにこぼして、大慌てでドライヤーで乾燥しましたがしばらく放置していた方がよいと思って、結局ドン・キホーテにマウスを買いにでかけました。このマウスはエレコムのブランドで売っているものですが、開けてみると EPRIM という made in china の製品でした。非常にポインターの走りが速かったので、コントロールパネルで速度を遅くすると快適になりました。質実剛健3ボタンのシンプルなものです。

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2022年8月26日 (金)

続・生物学茶話187: ナメクジウオ脳の部域化

動物(生物学用語では後生動物またはメタゾア)には大きく分けて前口動物と後口動物があります。前口動物の広大なバラエティーに比べて、脊椎動物以外の後口動物は比較的地味に生きています。図187-1の系統樹のような生物がいますが、まず棘皮動物は感覚・神経系・運動器官を退化させてある意味守備的な生き方を選択しました。脳はなく、鰭や足もなく、左右相称性も喪失しています。従って脊椎動物と比較研究するには、特に神経系の研究には不適切な生物といえます。半索動物は主として海底を這いずって生きる生物で、普通の人がみかけることはほとんどないでしょう。彼らも地味な生き方をしていますが、脊索動物の起源を探るには貴重な生物です。

これらとは別の幹が脊索動物門ですが、今生きている頭索動物は食事するときに頭を出す以外は海底の砂にもぐって生活するという生き方を選択しましたが、左右相称性や神経系、鰓孔、体節などの基本構造は脊椎動物のプロトタイプを思わせるものが多い、非常に貴重な生きた化石的な生物です。尾索動物は進化的には脊椎動物と非常に近いグループ(亜門)ですが、その主要なグループであるホヤは固着生活を選択し、棘皮動物と同様、脳はなく鰭や足もなく左右相称性を捨て、神経系や運動器官を退化させてしまったので、脊椎動物と比較するのは困難な生物群と言えます。こうしてみると、よくわずかな頭索動物(ナメクジウオの仲間)がカンブリア紀あるいはそれ以前から現代まで生き残っていてくれたものだと思います(1)。

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図187-1 後口動物の系統樹

ナメクジウオ成体の脳はマウスで言えば妊娠8.5日目くらいの形態に似ているそうですが、その頃のマウスの脳に発現している転写因子とホモローガスな因子がナメクジウオでも発現しているかどうかはまず見ておく必要があるでしょう。

FoxG1 はなかでも著名な因子で、ヒトのFoxG1症候群に関係しています。すなわちヒトではFoxG1遺伝子の異常によって発達障害と脳の構造異常という疾病が発生します(2)。この遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスでは、ニューロンの多極性形態期の後半においてノックアウトすることでFoxG1の増加を阻害すると,ニューロンはいつまでたっても皮質板へと移動せず直下にとどまることが明らかになっています(3)。

BF-1(FoxG1) が胎生期のマウスの他、ナメクジウオや魚類の終脳に発現することは、20世紀末にすでに報告されていますが(4、5)、Benito-Gutierrez らは最近この種の研究を大幅に拡張して報告しました(6)。FoxG1は幼生期からナメクジウオの脳胞中央部分に発現していますが、成体では主として腹側に発現していて、図187-2に示されるように背側にいくにつれてその発現域は限局され、最も背側の図(P)では最前部直下のわずかな部分にしか発現していません。

Emxファミリーはホメオボックスタンパク質の1グループで、ショウジョウバエやマウスで中枢神経系の発達に関与することが知られています(7)。ナメクジウオの脳では腹側から背側、先端部から後端部まで(フロンタルアイから内分泌器官 infundibular organ まで)EmxA が満遍なく分布しています(図187-2 色が重なっていますがパープルの部分にも発現しています)。一番背側の切片標本の緑色染色した領域にジョセフ細胞が分化します。

Lhx2/9 はやはりホメオボックスタンパク質の1グループに属しており、哺乳類では視覚領域の形成に重要な役割を果たすと考えられています(8、9)。これも EmxA と同様終脳全体に分布していますが、最背部には分布していません。このタンパク質は1ギルステージのような幼い頃から明瞭に脳部分での発現が見られます。脊髄に相当する部分にドット状に発現しているのが特徴的で、これはゼブラフィッシュでもみられることだそうです。(6、図187-2)。

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図187-2 ナメクジウオの脳に発現する因子1

引き続き重要と思われる転写因子の発現について調べた結果です。Pax4/6(脊椎動物の Pax6 のオルソログ) はペアードボックス遺伝子群のなかでクループ4に属する遺伝子の産物で、初期発生や幼生期における眼の形成に重要な役割を果たしていると考えられています(10、11)。成体ではこの因子は腹側にはドット状に発現するのみですが、背側では脳室の周辺に満遍なく発現しています(図187-3)。一番背側切片標本の水色部分にはジョセフ細胞が分化する部分が含まれています(図187-3P)。

Nkx2.1 はホメオボックスタンパク質のひとつでインターニューロンの発達などにかかわっており、この遺伝子の変異によってヒトではbrain-lung-thyroid syndrome(良性遺伝性舞踏病)を発症することが知られています(12、13)。ナメクジウオの場合腹側では脳の後ろ半分(コーダル側)に分布し、背側では前の部分(ロストラル側)に分布しています(図187-3)。Nkx2.1 の発現に FoxG1 の発現が関与しているかどうかはコーダル側(脊髄側)については関与していないようですが、ロストラル側(先端側)についてはまだ不明なようです。

Hh(ヘッジホッグ)シグナル伝達経路はショウジョウバエからヒトにいたるまで保存されている動物の発生にかかわる基本的な経路です(14)。ここではヘッジホッグリガンドの分布について調べていますが、腹側では脳胞全体に分布し、背側にいくにつれてコーダル側が薄れていくように見えます(6、図187-3)。フロンタルアイやジョセフ細胞の周辺には発現していないようです。

これらの転写因子あるいはそれらの相互作用が脳の部域化を行うと予測されますが、詳細はまだまだ不明です。

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図187-3 ナメクジウオの脳に発現する因子2


グルタミン酸作動性ニューロンは脊椎動物の中枢神経系で最もメジャーな興奮性ニューロンです(15)。これがナメクジウオではどうなっているのでしょうか? グルタミン酸作動性ニューロンは、少数ですが早くも1ギルステージという幼生の段階で中枢神経系に出現しています。いくつかはフロンタルアイ周辺にみられます。成体では脳の背側部分に検出されます(6)。

成体での各種ニューロンの出現は図187-4にまとめてあります。これは Elia Benito-Gutierrez らによる作図です。GABA作動性ニューロンは脳胞前よりに、グルタミン酸作動性、ドーパミン作動性ニューロンは後ろよりにあることがわかります。転写因子の発現についてはGABA作動性ニューロンの形成には Nkx2.1・FoxG1・Emx・Lhx2/9、グルタミン酸作動性・ドーパミン作動性ニューロンの形成には Emx・Lhx2/9・Pax4/6が関わっていることが示唆されました(図187-4)。

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図187-4 ナメクジウオ脳の部域化

これまでの研究により、ナメクジウオの脳にも部域による明確な違い(コンパートメンタリゼーション)があることがわかりました。Benito-Gutierrez らは、ナメクジウオ脳胞の最前部の背側を Pars anterodorsalis (PAD)と呼んで、PADが脊椎動物の脳のプロトタイプに近いことを示唆しています(6)。彼らはまたこのようなコンパートメンタリゼーションはナメクジウオ成体で確立されるものであり、また成体になっても脳室周辺の細胞が増殖・分化することによって脳細胞が補填されているとしています。

参照

1)ウィキペディア:後口動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E5%8F%A3%E5%8B%95%E7%89%A9

2)遺伝性疾患プラス FoxG1症候群
https://genetics.qlife.jp/diseases/foxg1

3)Goichi Miyoshi, Gord Fishell, Dynamic FoxG1 expression coordinates the integration of multipolar pyramidal neuron precursors into the cortical plate., Neuron vol.74, no.6, pp.1045-1058 (2012) doi: 10.1016/j.neuron.2012.04.025
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22726835/

4)H Toresson, J P Martinez-Barbera, A Bardsley, X Caubit, S Krauss, Conservation of BF-1 expression in amphioxus and zebrafish suggests evolutionary ancestry of anterior cell types that contribute to the vertebrate telencephalon. Dev Genes Evol., vol.208(8): pp.431-439. (1998) doi: 10.1007/s004270050200.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9799423/

5)K Shimamura and J L Rubenstein, Inductive interactions direct early regionalization of the mouse forebrain., Development. vol.124(14): pp.2709-2718. (1997) doi: 10.1242/dev.124.14.2709.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9226442/

6)Elia Benito-Gutierrez, Giacomo Gattoni, Manuel Stemmer, Silvia D. Rohr, Laura N. Schuhmacher, Jocelyn Tang, Aleksandra Marconi, Gaspar Jekely and Detlev Arendt, The dorsoanterior brain of adult amphioxus shares similarities in expression profile and neuronal composition with the vertebrate telencephalon., BMC Biology vol.19: article no:110 (2021) https://doi.org/10.1186/s12915-021-01045-w
https://bmcbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12915-021-01045-w

7)Chiara Cecchi and Edoardo Boncinelli, Emx homeogenes and mouse brain development., Trends in Neurosciences vol.23, issue 8, pp.347-352, (2000) DOI:https://doi.org/10.1016/S0166-2236(00)01608-8
https://www.cell.com/trends/neurosciences/fulltext/S0166-2236(00)01608-8?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0166223600016088%3Fshowall%3Dtrue

8)Roy A, de Melo J, Chaturvedi D, Thein T, Cabrera-Socorro A, Houart C, Meyer G, Blackshaw S, Tole S. LHX2 is necessary for the maintenance of optic identity and for the progression of optic morphogenesis. J Neurosci. 2013 Apr 17;33(16):6877-84. doi: 10.1523/JNEUROSCI.4216-12.2013.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3664457/

9)Zibetti, C., Liu, S., Wan, J. et al. Epigenomic profiling of retinal progenitors reveals LHX2 is required for developmental regulation of open chromatin. Commun Biol 2, 142 (2019). https://doi.org/10.1038/s42003-019-0375-9
https://www.nature.com/articles/s42003-019-0375-9

10)Wikipedia: Pax genes
https://en.wikipedia.org/wiki/Pax_genes

11)Glardon S,Holland LZ,Gehring WJ,Holland ND, Isolation and developmental expression of the amphioxus Pax-6gene(AmphiPax-6): insights into eye and photoreceptor evolution. Development(Cambridge,England)., vol.125: pp.2701–2710 (1998) https://doi.org/10.1242/dev.125.14.2701
https://journals.biologists.com/dev/article/125/14/2701/39880/Isolation-and-developmental-expression-of-the

12)Medline Plus: NKX2-1 gene
https://medlineplus.gov/genetics/gene/nkx2-1/#conditions

13)小島泰子, 跡部真人, 青木雄介, 鈴木基正, 糸見和也, 田中達之, 齋藤伸治 非典型的症状を示したbrain-lung-thyroid syndromeの1例 脳と発達 53巻 1号 pp.44-48 (2021) https://doi.org/10.11251/ojjscn.53.44
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/53/1/53_44/_article/-char/ja

14)ウィキペディア:ヘッジホッグシグナル伝達経路
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9B%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%AB%E4%BC%9D%E9%81%94%E7%B5%8C%E8%B7%AF

15)abcam: グルタミン酸作動性ニューロン・マーカー
https://www.abcam.co.jp/neuroscience/glutamatergic-neuron-markers-and-their-functions-2

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2022年8月25日 (木)

My favorites 12: Maureen Forrester sings Mahler

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不思議なタイトルです。さすらう若人の歌が「Song of a wayfarer」で英語、( )内にドイツ語、亡き子をしのぶ歌が「Kindertotenlieder」でドイツ語、( )内に英語というアンバランスでちょっと居心地がわるいですね。Wayfarer という言葉は聞いたことがなくて、辞書を引くと「徒歩旅行者」とありました。1958年の録音です。

歌:モーリン・フォレスター(コントラルト)、指揮シャルル・ミュンシュ ボストン交響楽団の演奏です。シャルル・ミュンシュは1891年生まれのドイツの指揮者(後にフランスに帰化)ですが、若い頃はライプチッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でコンマスをやっていて、当時の指揮者がワルターだったのでマーラーの交響曲は演奏しているはずです。しかしCDとして残されているのはこの歌曲の伴奏だけだそうです。

まあマーラーは当時は忘れられた作曲家で、復活したのは1970年代ですからこの1枚があるだけでもラッキーだったのかもしれません。SP時代はもちろん、LPになってからも曲が長すぎて1枚にはいりきらないので、レコード会社も売りにくい作曲家だったのでしょう。CD時代になってからはなぜかトップクラスの人気作曲家になりました。

モーリン・フォレスターはカナダ人で、日本人にはほぼいないコントラルト。本来歌詞の内容から言って、さすらう若人の歌は男性が歌うべき曲だと思いますが、フォレスターは全く自分の音楽として再構築し、まるでコントラルトにために書かれた曲のようです。亡き子をしのぶ歌にいたっては、まさに独壇場です。

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アルト・ラプソディーを歌っている映像が残されています。イゴール・マルケヴィッチが指揮している姿も見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=IPbcGz7I-OU

ミュンシュがフランス国立放送管弦楽団を率いて来日したときの映像も残されています。
曲目はブラームス交響曲第1番(2~4楽章)。
https://www.youtube.com/watch?v=d1u4bD6Vqhk

上記の公演は多分大阪NHKホールだと思いますが、NHKの録音に不具合があり、販売できなかったそうです。それがなんとフランス国立視聴覚研究所(INA)に残されていた音源がクリアであることがわかって、2021年にCDが発売されました。これはそのうち是非手に入れたいと思っています。
https://tower.jp/article/feature_item/2020/10/16/1115

 

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2022年8月23日 (火)

大阪 どうしたんだ  

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2022年8月21日 (日)

会心の勝利

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もちろんアプリケーションを最強に設定すると絶対に勝てませんが、中くらいに設定すると勝てることもあります。これは自分の玉は完全に裸にされて風前の灯火ですが、捨て身の攻撃で相手の玉を詰めたところ。

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2022年8月20日 (土)

堤未果 America, Inc.'s plan to dismantle Japan

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堤未果著「株式会社アメリカの日本解体計画」経営科学出版(2021)

堤未果という人はなかなか頭のいい人です。文章を読めばすぐわかります。実際日本エッセイストクラブ賞、中央公論新書大賞、日本ジャーナリスト会議新人賞など受賞しています。また学術畑の人ではなく、国連や米国野村証券に勤務していたという国際政治や資本主義のインナーサイドにいた人なので説得力があります。

内容の多くは反政府系のウェブサイトではよく知られていることですが、たいていの人はそんなサイトは見ていないので、このようなコンパクトにまとめた書籍で出版するというのは大いに有意義なことだと思います。いまや世界はGAFAやゴールドマンサックスなどの思惑通りに動かされている社会とそれに抵抗する勢力とに2分されています。日本も郵政民営化やGPIFの運用を突破口として強欲資本主義の餌となりつつあります。

個別の記述にも興味深いものがありました。米国が無理矢理イラク戦争を強行した裏に何があるのだろうと私は疑問に感じていたのですが、この本を読むと、そのひとつの理由はチグリス・ユーフラテス流域の肥沃な農業地域を米国企業の支配下に置くことだったと書いてあって、実際に流域の農家は自分たちで種をつくることができなくなっているそうです。これで腑に落ちました。そうしてみると米国がウクライナを支配下にいれようとしていたことも理解できます。21世紀は気候変動で農産物の取り合いになることを見越して、米国は食糧支配に着々と手を打っているというわけです。これには水の支配も含まれます。

堤氏はGAFAによる情報支配の危険性も指摘していますが、これについて今日興味深い情報がありました。それは旧統一教会系の建物に張り出してあった自民党国会議員のポスターが、グーグルストリートビューでモザイク処理が施されて見えなくなっているということです。

https://johosokuhou.com/2022/08/19/60860/

不都合ならポスターを剥がせばすむことなのに、それはしないでグーグルと組んで偽りのストリートビューを作成するとは驚きです。こうしてみると不都合な情報はGAFAによってすべて隠蔽され、一般市民は偽りのバーチャルな世界だけしか見られなくなる世界になりつつあるという恐怖を覚えます。

 

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2022年8月18日 (木)

My favorites 11: 一枚の絵

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統一教会が何かと話題になっていますが、この関連で私がまず思い出すのは桜田淳子のことです。当時のトップスターが合同結婚式で見知らぬ人と結婚するというのですから、ファンならずとも驚きました。彼女は実は19歳の頃から姉の影響で信者になり、ふたりの父親は被害者の会で活動するような家庭事情があったということを後で知ってさらにびっくり。

彼女の曲のなかでは「私の青い鳥」と「一枚の絵」のメロディが浮かんできます。
脳にこびりつくメロディというのは、優れた作曲家の証明だと思いますが、作曲した西島三重子のセルフカバーバージョンを中に挟んで、桜田淳子が歌っている作品が YouTube にアップされていました。

https://www.youtube.com/watch?v=d73iQZ6wCIE

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2022年8月15日 (月)

続・生物学茶話186: ナメクジウオの4種の眼

環境省のサイトにはナメクジウオには眼がないと書いてありますが(1)、それは脊椎動物のような形の眼はないという意味で、光受容器官がないという意味ではありません。それぞれ原始的な形態ではありますがナメクジウオの眼は4種類あるというのが事実です(2)。光受容細胞は全身に分散していますが、まとまって存在する部分も確かにあって、眼がないというのは言い過ぎのように思います。ウィキペディアには体の先端に眼点が存在すると書いてあります(1-3)。

ナメクジウオの眼点の構造を解析し、構成している細胞によって発現しているタンパク質に差があるという研究結果を報告したヴォパレンスキーらの功績は大です(4)。彼らの研究室はプラハにあるので、どうやってナメクジウオを手に入れたのかと気になったのですが、フロリダのタンパまで採集に行ったり、米国やドイツの研究者にもらったりと、かなり苦労して入手しているようでした(4)。

ナメクジウオの受光組織のうち、一番前方にあるものをフロンタルアイ(frontal eye)といいます。図186-1A(頭部の垂直断面)の長方形枠内の部分について、コズミク研で調べた各種転写調節因子・神経伝達物質の局在を示したのが図186-1です(2)。Aで黒く見える部分は色素細胞です。色素とはメラニンのことです。B-Fは免疫組織化学で各種転写因子を染色した図です。Bのシアン矢尻で示した細胞がその色素細胞で、隣のオレンジ矢尻で示したのが Row1光受容細胞です。Row1 細胞は Otx の抗体できれいに水色に染まっています(2)。

赤紺縞の矢尻で示された Row2 細胞は 5-HT(セロトニン)抗体で明瞭にに染まっています。セロトナージックな細胞はこれだけのようです。紺白縞・赤白縞の矢尻でそれぞれ示された Row3 および Row4 の細胞は Pax4/6 抗体で弱く染まっています。それぞれの識別はできないようです(図186-1B)。図186-1のCとFは水平横断面ですが、各列の細胞が複数染まっています。Row1 はアーチ状、Row2 は横1列、Row3&4 は分散状に分布している様子が見えます。

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図186-1 ナメクジウオ・フロンタルアイに発現する因子

図186-2に描かれているイラストは左がナメクジウオのフロンタルアイ、右は脊椎動物の網膜です。色素細胞(pigment cell)が左端にあるのは同じです。ナメクジウオではおそらく反射によるバックグラウンドを低下させる役割を担っていると思われますが、脊椎動物の網膜の場合、それとともに視細胞の活動をサポートするために様々な別の役割をこなしています(5)。ひょっとするとナメクジウオの場合もそうかもしれません。

色素細胞は光受容細胞や神経細胞とは役割がはっきり異なるので、発現する転写調節因子も異なるはずです。Mitfというのはメラニン生合成の調節などを行うこの種の細胞に特徴的な因子です(6)。色素細胞では光受容細胞に発現する Pax4/6 ではなく Pax2/5/8 が発現しています。オプシンや神経伝達物質は発現していません。これらの特徴はナメクジウオでも脊椎動物でも概略変わりません(2、7、図186-2)。

Row1 細胞は脊椎動物の桿体細胞に対応する光受容細胞と思われ、オプシンを保有していて光シグナル→化学シグナル→電気シグナルの変換を行う機能を持つと考えられます。Row2-4 はいわゆる中間ニューロンだと思われますが、Row2 は唯一セロトナージックな神経細胞と思われ、脊椎動物の謎深きアマクリン細胞の萌芽かもしれません。ただ GABA は検出されませんでした(図186-2)。Row3-4 にはグルタミン酸が検出されていますが、脊椎動物でも網膜の主要な興奮性トランスミッターはグルタミン酸です(8、図186-2)。

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図186-2 ナメクジウオ・フロンタルアイと脊椎動物網膜に発現する因子の比較

フロンタルアイのオプシンに結合するGαはGiで、脊椎動物のGtとは異なります。したがってナメクジウオのシグナル伝達はフォスフォジエステラーゼではなく、アデニル酸シクラーゼを介して行われます。ペルグナーらはGiの遺伝子が進化の過程でタンデムに2倍化してGtが形成されたと考えています。彼らによればこのタンデム2倍化は全ゲノム重複よりも前におこった現象とのこと(2)。フロンタルアイにおけるオプシン合成は、幼生が餌を食べる時期になるとはじまるので、眼と食事というのはナメクジウオにおいても直結しているようです(4)。

ナメクジウオと脊椎動物の比較しうる点について述べてきましたが、脊椎動物の中で最も原始的な特徴を残していると思われる円口類ですら、圧倒的にマッチョで活動的な生物であり、あまりに弱々しいナメクジウオの形態や活動とはかけ離れています。最近の研究によればナメクジウオの脳は萌芽的な間脳と中脳が一体となっていますが、ヤツメウナギでははっきり「終脳+間脳(prosencephalon)」と「中脳」が分かれて存在しています(9、図186-3)。そして運動神経の中枢は脳に取り込まれています。ナメクジウオの運動中枢は脳の外にあります(2、図186-3)。つまりヤツメウナギの場合は、眼で得た情報を脳ですべて処理する方向に進化していて、それは私たちにも引き継がれているわけです。ヤツメウナギは脳に情報を集中させるとともに軟骨ではありますが頭蓋骨も持つようになりました(10)。このように脳が周辺組織も含めて複雑化すると、脊索の誘導では不都合になって、脊索から離れて独自に活動する誘導性の細胞群が進化の結果生まれてきたと推測できます。

ナメクジウオの視神経は交叉していませんが、ヤツメウナギの視神経ははっきり交叉しています(10、図186-3)。一般に魚類は全交叉なので、これは圧倒的な違いで、頭索動物と脊椎動物の関係がはるかに遠いことを示すように見えますが、実は私たちヒトの場合は交叉している神経としていない神経の両者を持っていますし、オタマジャクシはカエルになるときに、それまで全交叉だったのが一部非交叉の神経ができるなど結構フレキシブルです(11)。それでもカンブリア紀にはすでに魚類(ミロクンミンギア)が存在していたので、ナメクジウオの祖先から脊椎動物が枝分かれしたのは、おそらくエディアカラ紀以前ということになります。

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図186-3 ナメクジウオとヤツメウナギの眼と脳

185で掲載していたナメクジウオ光受容器の図を図186-4として再掲します(2、13)。フロンタルアイに次いでもうひとつの繊毛型光受容器としてラメラ-ボディがありますが、ここでは層状体と訳します。これについては古くから脊椎動物の松果体と相同ではないかと指摘されてきました。例えば中尾は1964年の論文の中で、電子顕微鏡による観察からこれはカエルの松果体と似ているとしています(12)。このような見方は現在でも認められています。Bowmaker と Wagner の電子顕微鏡写真を見てもその類似性は驚くほどです(14)。興味深いのはこの光受容細胞の繊毛が9+2型で、これは運動性能を持つ繊毛に特徴的な構造です(2、15)。構造の類似性から、当然層状体は日周リズムに関係していると考えられますが、これをきちんと証明する実験はまだ行われていないようです。

あと二つの光受容器は、微絨毛性の感桿型光受容細胞からなっているジョセフ細胞(Joseph cells) とヘッセ器官(dorsal ocelli)です。ジョセフ細胞の近傍には色素を持った細胞がありませんが、ヘッセ器官の光受容細胞は必ず色素細胞とペアで存在するので、後者の場合光の方向をある程度感知できる光受容器官と思われます。またヘッセ器官ではメラノプシンを発現しています(2)。メラノプシン神経節細胞は第三の光受容体としてヒトでもみつかっているので(16)、その遺伝子は数億年以上の期間にわたって頭索動物でも脊椎動物でも保存されていることになりますが、オプシンとくらべて研究はまだ途上にあります。

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図186-4 ナメクジウオの4種の受光装置

ナメクジウオの脳は、脊索動物としては最も萌芽的な構造と機能を持っていると思われる私たちの脳のプロトタイプなので、モデル動物としてナメクジウオは重要であり、その研究には興味をそそられます。

 

参照

1)環境省 せとうちネット ナメクジウオ
https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/setonaikai/clm3.html

2)Jiri Pergner and Zbynek Kozmik, Amphioxus photoreceptors - insights into the evolution of vertebrate opsins, vision and circadian rhythmicity., Int. J. Dev. Biol. vol.61: pp.665-681 (2017) doi: 10.1387/ijdb.170230zk

3)ウィキペディア:頭索動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

4)Pavel Vopalensky, Jiri Pergnera, Michaela Liegertovaa, Elia Benito-Gutierrezb, Detlev Arendtb, and Zbynek Kozmik, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.109, no.38, pp.15383-15388 (2012)
https://www.pnas.org/doi/epdf/10.1073/pnas.1207580109

5)Medipedia: 網膜色素上皮
http://medipedia.jp/article/%E7%B6%B2%E8%86%9C%E8%89%B2%E7%B4%A0%E4%B8%8A%E7%9A%AE

6)JCGA(Japanese version of the Cancer Genome Atlas):MITF
https://www.jcga-scc.jp/ja/gene/MITF

7)脳科学辞典:PAX遺伝子群
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/PAX%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E7%BE%A4

8)Connaughton, V., Glutamate and Glutamate Receptors in the Vertebrate
Retina. Kolb H, Fernandez E, Nelson R, editors. Webvision: The Organization of
the Retina and Visual System [Internet]. Salt Lake City (UT): University of Utah Health Sciences Center (2005, updated 2007)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK11526/

9)Albuixech-Crespo B, López-Blanch L, Burguera D, Maeso I, Sánchez-Arrones L, Moreno-Bravo JA, et al. (2017) Molecular regionalization of the developing amphioxus neural tube challenges major partitions of the vertebrate brain. PLoS Biol 15(4): e2001573. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.2001573
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.2001573

10)Tadashi Isa, Emmanuel Marquez-Legorreta, Sten Grillner and Ethan K. Scott (2021). The tectum/superior colliculus as the vertebrate solution for spatial sensory integration and action. Current Bilology, volume 31, issue 11, DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.04.001
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(21)00479-6?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982221004796%3Fshowall%3Dtrue

11)今井眼科医院:視交叉
http://www5b.biglobe.ne.jp/~i-ganka/2006-5.htm

12)T.Nakao, On the Fine Structure of the Amphioxus Photoreceptor., Tohoku J. Exp.Med., vol.82, pp.349-369 (1964) https://doi.org/10.1620/tjem.82.349
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjem1920/82/4/82_4_349/_article

13)Trevor D Lamb, Evolution of Phototransduction, Vertebrate Photoreceptors and Retina. Chapter I. Origin of Vertebrates and the Diversity of Extant Chordate Eyes
http://retina.umh.es/webvision/Evolution.%20PART%20I.html

14)James K. Bowmaker and Hans-Joachim Wagner, Pineal organs of deep-sea fish: photopigments and structure., J Exp Biol, vol.207 (14): pp.2379–2387. (2004) https://doi.org/10.1242/jeb.01033
https://journals.biologists.com/jeb/article/207/14/2379/14738/Pineal-organs-of-deep-sea-fish-photopigments-and

15)RUIZ, S. and ANADON, R., The fine structure of lamellate cells in the brain of amphioxus (Branchiostoma lanceolatum, Cephalochordata). Cell Tiss Res vol.263: pp.597-600. (1991) DOI: 10.1007/BF00327295
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1878939/

16)辻村誠一 第三の光受容体メラノプシン神経節細胞と明るさの知覚 光学 43巻12号 pp.556-562 (2014)
file:///C:/Users/Owner/Desktop/43-12-kaisetsu4.pdf

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2022年8月13日 (土)

サラの考察12: 小さな風景

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サラ「私はテレビはわからないから見ないけど、何か面白い番組はあるの? みるだけ無駄なような気もするけど、人間はテレビが好きね」

私「最近は阪神タイガースは弱すぎて見ないようにしているけど、バルサの試合はさすがに見たいね。あとドラマは「遺留捜査」とWOWOWの日曜午後10時のオリジナルドラマが面白いね」

サラ「ふーん」

私「それに遺留捜査はテーマソングがいいよね」

サラ「それは私も同感。小田さんはもう74才なのに才能が枯渇しないのもすごいわね」

「小さな風景」 作詞・作曲 小田和正
https://www.youtube.com/watch?v=61NyvN2uHCU

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2022年8月11日 (木)

唐辛子とセミ

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セミも種類によって好きな木・嫌いな木はあるようですが、このアブラゼミはなんと小一時間もベランダの唐辛子にしがみついていました。確保していたケヤキの場所を追い出されたのかもしれません。

萩生田光一も経産大臣という役職にしがみつきたかったようですが、「こんな難しい仕事、俺以外の誰にできるんだ💢」などという愚者の証明みたいな言葉を残して解任されました。西村康稔にはできないのか見てみようじゃないの・・・と思ったら、こんなナルシストが次は自民党の政策をとりまとめる要職につくというのですから驚き。

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2022年8月 9日 (火)

2022 バルサ 行く人来る人

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2022~2023シーズンの開幕がすぐそこまで迫ってきました。
さて今シーズンのバルサはどうでしょう?

行く人

リキ・プッチ(MF)
→ロサンジェルス・ギャラクシー
無双のテクニシャンですが、スピード感のないところがね。

オスカル・ミンゲサ(DF)
→セルタ・デ・ビーゴ
私の好きな選手でした。ファイター系のディフェンダー。
新天地で頑張ってほしい。

フランシスコ・トリンコン(FW)
→スポルティング・リスボン(レンタル)
バルサではデンベレの陰で活躍できず。

ノルベルト・ネト(GK)
→アソシエーション・FCボーンマス
テア・シュテーゲンの陰で第2キーパーでした。
素晴らしい選手なので、レギュラーで活躍できる
チームに移籍できておめでとうと言いたい。

来る人

ジュール・クンデ(DF)
←セビージャ
ドリブルと密着守備が得意。

アンドレアス・クリステンセン(DF)
←ボルシアMG(チェルシーからのレンタル)
位置どりが素晴らしいディフェンダー。

ロベルト・レヴァンドフスキ(FW)
←バイエルン・ミュンヘン
FCB(エフツェーベー)を世界一のチームに押し上げた人。

ハフィーニャ(FW)
←リーズ・ユナイテッド
テクニシャンのストライカー。

フランク・ケシエ(MF)
←ACミラン
つぶし屋っぽいがテクニシャンでもある。

豪華な補強と言えますが、これでオーバメヤン、ファティ、デンベレはともかく、メンフィスやブレイスウェイトに出番があるとは思えません。フェランもいるしどうみてもFWは過剰で無茶です。まるで一昔前のレアル・マドリーのようです。放映権を売ったり相当無理をしているようですが、まあそれもバルサか・・・。

このメンツだとビッグイヤーはともかく、ラ・リーガの優勝はマストでしょう。
これでタイトルを逸するようなことがあれば、ラポルタもアレマニもチャビも辞表を書かなければなりませんね。

Himne del Barca

1.
声を あげよう
われら ブラウグラナ
地の涯からも 集いし友よ
掲げる旗のもと 拳(こぶし)を合わせよう
ブラウグラナは 嵐を呼ぶ
叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

2.
嬉しい日 悲しい日
どんなときも
心ひとつに 合わせし友よ
掲げる旗のもと 勝利を信じよう
ブラウグラナは 嵐を呼ぶ
叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

歌 ベト
https://www.youtube.com/watch?v=Vm_CP7L1UxY

バルサ体操
https://www.youtube.com/watch?v=Gshc1pNF-c0

 

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2022年8月 8日 (月)

暑中お見舞い申し上げます

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読者の皆様

暑中お見舞い申し上げます

皆様それぞれの夏を快適に過ごされていることと存じます。

北総の今日は外は猛暑ですが、窓を全開にした部屋の中は風があって、ボーッと過ごすにはよい雰囲気です。
団地のケヤキには数十匹のアブラゼミが上ってきて鳴き声を競っています。
今年の夏は雨も多くて、湿気が好きなアブラゼミにとっては絶好の環境です。
こんなに賑やかにしていると、たちまち鳥に見つかって食べられそうですが、そうでもないのが自然の不思議。みつかりにくいようになっているんですね。

夏蝉 熊木杏里
https://www.youtube.com/watch?v=INu-PqINm6U

 

 

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2022年8月 4日 (木)

2022夏

Beach-boys

夏になると思い出す
ビーチボーイズの「サーファーガール」

夏の海の雰囲気にすべてが溶解し
自然と人間が一体化するひととき
https://www.youtube.com/watch?v=hu-bXvuPm7c

若い頃の演奏もアップされていますが 個人的には ↑ 押し
https://www.youtube.com/watch?v=oL25lgUvPgs

ナレロ(na Relo)のカバー(歌詞付き)
日本人の若い女性が歌う 
ずいぶん古い曲ですが、名曲は異国でも伝承されるんですね
日本語なまりの歌がさわやかな感じ(意図してるね)
https://www.youtube.com/watch?v=fpOz2EiAMAU

サーファーガールじゃありませんが、私の好きなビーチボーイズ
のカバー(グループの名前は The Surf Girl)
https://www.youtube.com/watch?v=Lq1Ip1PxJIE

 

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2022年8月 3日 (水)

続・生物学茶話185: 頭索動物の光受容 その1

私が若い頃のPCは動画を扱うのが非常に苦手で、当時の先進的PCだったNECの9801でも、トールキンの指輪物語のロールプレイイングゲームが重すぎて全く動かなかったことを思い出します。それが現在ではCPUの発達によって、精細な動画を自在に扱うことができるようになりました。なぜ脳が発達したかというのも、やはり動画を取り扱えた方が生存に有利(捕食にしても逃亡にしても)だったからと思われます。もちろん初期には走光性、昼夜の識別、生殖の同調のためなどという理由もあったでしょう。さらに遡れば光エネルギーを化学エネルギーに変えて生きるための道具にするという目的があったのでしょう。

動物に限って言えば、光エネルギー利用の中心はなんと言ってもロドプシン、そしてそのタンパク質部分であるオプシンです。ウィキペディアの Opsin の項目を見ると、その記述は非常に難解で type I と type II の関係からして行ったり来たりで混乱します(1)。そこで「渋めのダージリンはいかが」に以前に書いた記事をたどって少し復習しました。オプシンは細胞膜を7回貫通する上にレチナールを結合する活性を持つ複雑なタンパク質ですが、真核生物が地球に出現する以前から細菌や古細菌が保有していたと考えられています。もともとは光を感じるためではなく、プロトンポンプとして機能し、エネルギー(ATP)を作り出すために利用されていたようです(2)。真核の単細胞生物では、主として光合成を行なう生物が光のある場所に移動するためのセンサーとして利用していたと思われます(3)。多細胞生物もさまざまな行動のために、光センサーとしてオプシンを利用してきました。

代表的なオプシンの形態を図185-1に示しました。オプシンはN末を細胞外にC末を細胞内に配置する細胞膜7回貫通GPCR(Gタンパク質共役受容体)のひとつです。結合しているレチナールが受光することによって構造変化を起こし、それを契機として結合しているGタンパク質が構造変化を起こして、細胞内での生化学反応のカスケードが起動され、細胞膜のイオンポンプの開閉が行われることになります。

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図185-1 オプシンの基本形態

動物(メタゾア)の場合、オプシンが集結する場所として繊毛の膜の場合と微絨毛の膜の場合があります。繊毛は鞭毛と同様9+2構造と呼ばれる微小管配置に加えてダイニンやネキシンが規則的な構造を作る運動器官ですが(4、5)、微絨毛は顕微鏡で観察できる繊毛と違って、電子顕微鏡レベルの小さな突起で、内部には特に規則的な構造のないアクチン繊維が通っています(6)。細胞膜にこのような突起を多くつくることによって細胞の表面積を増やし、そこにオプシンを配置することによって効率よく受光することができます。微絨毛に配置される光受容細胞を感桿型、繊毛に配置される光受容細胞を繊毛型と呼びます(図185-2)。

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図185-2 微絨毛と繊毛(光受容細胞がある場所)

後口動物では繊毛、前口動物では微絨毛がオプシンの主たる集結場所になります。どちらが優秀な視覚をサポートできるかは一概には言えません。後口動物では特に鳥類などは解像力に優れた眼を持っていますし、前口動物でも昆虫やイカ・タコなどは大変優れた視覚を持っています。そんな中で後口動物のルーツに近いと思われるナメクジウオの視覚は、進化の観点から興味深く思われます。

ナメクジウオはいずれも4種類の眼を持っています、といってもほぼ光受容細胞が集まっているだけの構造です(7、図185-3)。角膜、レンズ、虹彩などの組織はありません。重要なのはそのうちのふたつ、ジョセフ細胞(Joseph cells) とヘッセ器官(dorsal ocelli) が微絨毛性の感桿型光受容細胞からなることです(7、8、図185-3)。このことはナメクジウオが前口動物的な特徴を色濃く残していることを意味し、後口動物が分岐して間もない頃の形態を残したまさしく生きた化石であることが示唆されます。

驚かされるのは、彼らが神経胚の頃からヘッセ器官のルーツである光受容細胞を持っていることです(7)。これにはどういう理由があるのでしょうか?。この記事の終わりの方で少しふれます。ヘッセ器官は成体では図183-3のように砂に埋まる位置にあるので、視覚として無用なのかというとそうではありません。そうです、砂に潜ったことを確認するために必要なのです。ジョセフ細胞が光を感知し、ヘッセ器官が感知していない状態が食事の姿勢として適切なのでしょう。明か暗かを判断するだけでよいので、進化のプレッシャーなく古いままの光受容細胞が温存されたのかもしれません。ネクトン(自由遊泳生物)として生活していた頭索動物は絶滅し、ベントス(底生生物)としての生き方を見いだしたナメクジウオだけが、このグループの中で数億年もの期間命をつないだことに、これらの光受容細胞は貢献したに違いありません。

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図185-3 ナメクジウオの光受容細胞

ナメクジウオ(Branchiostoma belcheri)がどんなオプシンを持っているかについては小柳らが中心となって研究が進み、2008年の段階で7種類の遺伝子があることが判明しました(8)。Pantzartziらは別種 Branchiostoma floridae について調査し、21種類の遺伝子の存在を2017年に報告しています(9)。論文9のリストをみると、小柳らのオプシン4&5と同タイプが5種(C型と言っています)、小柳らが報告していないニューロプシン型が2種、小柳らの1&2型(Goオプシン)が6種、ペロプシンとメラノプシンはそれぞれひとつで小柳らと一致、小柳らの6型のグループとしては7種の遺伝子が記載してあります。

ここでは簡略化して、ナメクジウオオプシンのリストとして図185-4を示しておきます。ニューロプシン型のナメクジウオオプシンも後にみつかっている(9)ことから、脊椎動物が持つオプシンはGq型、Gt型、Go型、ニューロプシン、ペロプシン、など多くがすでに頭索動物との共通祖先が獲得していた遺伝子の産物であることが示唆されます。遺伝子重複によって脊椎動物が獲得したオプシンは、おそらく形や色を識別するためのGt型とRGR型に限られているようです。

図185-4で微妙に興味深いのは前口動物のGq型オプシンがナメクジウオの同型より新しかったり、蚊のGt型がナメクジウオのとよく似ていていること、ホタテガイのGo型がやなりナメクジウオのとよく似ていることなどです。このような知見が進化における新たな展開をもたらすことになるかもしれません。

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図185-4 ナメクジウオオプシンのリスト * 蚊のGPRop11&12, ** 環形動物の c-opsin, *** ホタテガイの scop2, **** 脊椎動物のニューロプシン 小柳光正 オプシンファミリーの分子進化と機能多様性 比較生理生化学 vol.25, no.2, pp.50-57 (2008) などに基づいて作画

ナメクジウオは確かに砂に潜ったことを確認するために光を感知することが必要だとは容易に想像できますが、それだけではないでしょう。では他にこのような多彩な光感受性分子をどのような目的で利用しているのでしょうか?

ナメクジウオは夜行性の生物であり、成体は負の走光性を示すことは昔から知られていました(10)。パーカーはこの100年以上前の論文の中で次のように述べています・・・If, into the middle of a large vessel so placed that the sunlight falls obliquely into it through one side, living lancelets are dropped one by one, they fall to the bottom as a rule without response, wherupon they often begin swimming, and in practically every trial come to rest near the side of the glass away from the sun・・・このことはナメクジウオが明暗だけでなく、光の方向も認知できることを示しています。そのほかいわゆる眼(frontal eye)を取り去っても光を感知できるなどとも書いてあります。

文献7によると、ナメクジウオの幼生はプランクトン的な生活をしていますが、昼間は海底に近いところにいて、日没とともに水面に近いところに上がってくるそうです。成体はほとんど海底の砂の中で生活していて、餌をとるときには半身を出すようです(図184-4)。ナメクジウオは神経胚の時代から光受容細胞を持っていることを前記しましたが、神経胚はなんと正の走光性を示すそうです(11)。

昔は日本にもナメクジウオはたくさんいたようですが、最近は水質汚染などで減少し絶滅危惧種となっています。そのひとつであるヒガシナメクジウオの学名が Branchiostoma belcheri から Branchiostoma japonicum に変わりました。その事情はやや複雑ですが、西川輝昭氏が詳しく説明しています(12)。この貴重な実験動物が実験室で飼育できるというのは、関係者の特段の尽力の賜でしょう(13)。

参照

1)Wikipedia: Opsin
https://en.wikipedia.org/wiki/Opsin

2)続・生物学茶話 112: 光を感じるタンパク質
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/09/post-453128.html

3)続・生物学茶話 113: 単細胞真核生物の眼点
http://morph.way-nifty.com/grey/2020/10/post-f702c4.html

4)ウィキペディア:鞭毛
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9E%AD%E6%AF%9B

5)鞭毛/繊毛のはたらきと構造 Kikkawa lab
https://structure.m.u-tokyo.ac.jp/summary-j/flagella/flagella.html

6)コトバンク:微絨毛
https://kotobank.jp/word/%E5%BE%AE%E7%B5%A8%E6%AF%9B-609999

7)Jiri Pergner and Zbynek Kozmik, Amphioxus photoreceptors - insights into the evolution of vertebrate opsins, vision and circadian rhythmicity., Int. J. Dev. Biol. vol.61: pp.665-681 (2017) doi: 10.1387/ijdb.170230zk
https://www.researchgate.net/publication/322360330_Amphioxus_photoreceptors_-_Insights_into_the_evolution_of_vertebrate_opsins_vision_and_circadian_rhythmicity

8)小柳光正 オプシンファミリーの分子進化と機能多様性 比較生理生化学 vol.25, no.2, pp.50-57 (2008)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/25/2/25_2_50/_article/-char/ja/

9)Chrysouka N. Pantzartzi, Jiri Pregner, Iryna Kozmikova and Zbynek Kozmik, The opsin repertoire of the European lancelet: a window into light detection in a basal chordate., Int. J. Dev. Biol. vol.61: pp.763-772 (2017) doi: 10.1387/ijdb.170139zk
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29319122/

10)G. H. Parker, The sensory reactions of amphioxus., Proceedings of the American Academy of Arts and Sciences., Vol.43, No.16, pp. 415-455 (1908)
https://www.jstor.org/stable/20022358?seq=1#metadata_info_tab_contents

11)HOLLAND, L.Z. and YU, J.K., Cephalochordate (amphioxus) embryos: procurement, culture, and basic methods. Methods Cell Biol vol.74: pp.195-215, (2004) DOI: 10.1016/s0091-679x(04)74009-1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15575608/

12)東邦大学広報資料 西川輝昭 ヒガシナメクジウオの氏素性
https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/019768.html

13)Makoto Urata, Nobuo Yamaguchi, Yasuhisa Henmi and Kinya Yasui, Larval Development of the Oriental Lancelet, Branchiostoma belcheri, in Laboratory Mass Cultur., ZOOLOGICAL SCIENCE vol.24: pp.787–797 (2007)
doi:10.2108/zsj.24.787

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2022年7月30日 (土)

サラの考察11: 検査難民

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サラ「どうやら人間は新型コロナウィルスに完敗しそうだね」

私「残念ながら」

サラ「人間はもう少し頭がいいとおもったのだけど、どうしたのかな?」

私「腕組んで話すとは、お前も考察が板についてきたのかな。それはそうと、2日続けてPCR陰性だと4日目には出勤できるなんて制度にしたら、みんなPCR検査に殺到するのは目に見えているのに、政治家はそんなことにも気がつかないんだからね」

グレチコ「そう、これは政治家が勝手に決めたと思うね。厚労省の官僚や、医師のアドバイザリーボードに相談していれば、こんなことにはならなかっただろう。彼らはどのくらいの検査が可能かは知っているから」

サラ「もう打つ手はないのかな?」

グレチコ「ワクチンワクチンと馬鹿の一つ覚えだが、そろそろ危ないね。5回も射つと、だんだん体がスパイクタンパク質を異物と認識しなくなってくる人がでてきそうだ。なにしろmRNAなんだから、抗原の量はコントロールできていないというのが大問題。花粉症の場合などは花粉を認識しなくなれば万々歳なんだけど、ウィルスを認識できなくなるとイチコロになってしまう」

私「吉村知事の老人は出歩くなというのもおかしな話。最初の頃は老人のカラオケがクラスターになることもあったけど、今老人関係でクラスターになっているのは介護施設だからね。職員から感染させられているのが真相。あとは家で家族に移されるという経路が主流だね。吉村はそんなことは知っているにもかかわらず、何もやっていないという批判をかわすためにこんなことを思いついたに違いないね」

サラ「思いつきでやってしまってコケるというのは、猫でもレベル低いよ」

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2022年7月29日 (金)

アンドレ・ジョリヴェの音楽 シュテファン・シーリと彼のお友達による演奏

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アンドレ・ジョリヴェ(1905-1974) は生きている頃はフランス音楽界の重鎮であり日本でも有名で、多分演奏会でも取り上げられることが多かったと思われますが、現在は演奏機会が少なくなりました。

私は現音はたいてい理解できないのですが、ジョリヴェは私が理解できる数少ない作曲家のひとりです。シュテファン・シーリ氏はオーボエとコーラングレの演奏家ですが、今回ジョリヴェの作品を取り上げ、人を集めて室内楽のアルバムを作りました。コーラングレは私が一番好きな楽器でもあり聴いてみました。

「典礼組曲」(Suite liturgique pour voix, cor anglais prenantle haubois, violoncelle et harpe) はソプラノが歌う宗教音楽ですが、ジョリヴェの音楽の心地よさをたっぷりと体験できます。特にマニフィカートは美しい音楽です。

Suite liturgique: IV. Magnificat
https://www.youtube.com/watch?v=x6SalJdL1xM

小品ですが「オリノコ川の丸木舟を操る人の歌」もいいですね。ピアノが川の流れで、オーボエが船を操る人です。船を操るのは毎日のルーティンでもあり人生でもあります。途中で一休みしてまたこぎ出し、最後は静かに消えていきます。不完全な収録のうえに演奏が?ですがYouTubeにもありました。

Canto del Piraguero del Orinoco, Andre Jolivet
https://www.youtube.com/watch?v=ELe0ZD4bGXI
https://www.youtube.com/watch?v=Bb4LMjwc1lI

セレナーデなど他の収録曲も名曲ぞろいです

Serenade for oboe and piano. I. Cantilene
https://www.youtube.com/watch?v=X72xuaLSJKI

 

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2022年7月26日 (火)

続・生物学茶話184: 頭索動物の脊索

ヒトの脳はかなり特殊で、チンパンジーと比べても、進化のスケールで言えば極めて短い期間に激しく変化した(巨大化した)といえます(1)。そんな特殊化した脳への関心はもちろんありますが、その前に脊椎動物一般の中枢神経系の発生様式や特徴について考えておくのは王道でしょう。

まずヒト胎児の脳の模式図を見てみましょう(2、図184-1)。3~4週の胎児の場合脳は三つの膨らみからなり、前(rostral)から順に前脳胞・中脳胞・菱脳胞という名前がつけられています。5週には前脳胞から終脳胞と間脳胞が分化し、菱脳胞から後脳胞と髄脳胞が分化します。その後、終脳胞は大脳となり、間脳胞は眼と視床、後脳胞は脳橋と小脳、髄脳胞は延髄に分化します(図184-1)。

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図184-1 ヒト胎児の脳形成

次に脊椎動物のなかでも進化上基底的な位置にある魚類についてみてみましょう(3、図184-2)。図184-2で、T+D:前脳胞・MB:中脳胞・HB:菱脳胞と考えると、基本はヒトと変わらないように見えます。前脳胞が終脳胞と間脳胞に分かれていくのもヒトと同じです。ひとつ異なるのは、魚類では中脳胞が視覚情報を処理する部位として分化していくのに対して、ヒトなどの哺乳類は視覚情報処理は主に前脳胞から分化する大脳が行ない、中脳は中継点となっているという点です(4)。文献3の著者たちは終脳の背側を除いて脊椎動物の脳はよく似ていると述べています。終脳の背側は哺乳類が特別に進化させました(5)。

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図184-2 ゼブラフィッシュ脳の発育

生物の進化に関して、大野乾(おおのすすむ)は全ゲノム重複という全遺伝子の倍化によって進化が劇的に進行するという説を発表しました(6)。この学説はその後さまざまな生物で遺伝子構造が解明されるにつれて信憑性が高まり、現在では定説となりました(7-9)。図184-3のように、脊椎動物は硬骨魚類が生まれるまでに3回の遺伝子重複を経験したと考えられています。1回目(1R)で広義の魚類が生まれ、2回目(2R)で有顎魚類が生まれ、3回目(3R)で条鰭類が生まれました。フナや金魚は4回目の遺伝子重複を経験したともされています(10)。

このような遺伝子重複による進化から取り残されたグループとして、尾索動物と頭索動物があります(図184-3)。尾索動物は幼生期には脊索動物としての特徴を保っていますが、成体になると中枢神経系を発達させないとか、泳がないとか、本来の脊索動物としての特徴を消失し、全く別方向への進化へと舵を切りました。頭索動物(ナメクジウオ)は尾索動物に比べると保守的で、ピカイヤのようなカンブリア時代の頭索動物と大差ないような形態を保存していて、古い時代のゲノムがかなり保存されていると考えられます。

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図184-3 脊索動物が進化する過程で発生した3度の遺伝子重複

図184-4は科学雑誌の表紙になったナメクジウオの上半身です。ナメクジウオは普通のガラス水槽で飼っても生きているそうですが、砂を入れるとたちまち潜り込むそうで、通常は砂の中で生活していて餌(珪藻)を食べるときに上半身を出して口から餌を吸い込むようです。好きな種類の珪藻を選り好んで食べるようです(11)。

ナメクジウオはホヤのような固着生活をするのではなく泳げるのですが、それでもカンブリア紀のピカイアのように泳ぎながら採餌するわけではありません。ですからカンブリア紀の頭索動物のままのゲノムや生態が保存されているのではなく、砂の中に隠れるという術を獲得したことによって捕食を逃れ現代まで生き延びたグループの子孫です。

カンブリア紀にはすでに脊椎動物と思われるミロクンミンギア(ハイコウイクティス)が生きていたので、ナメクジウオがそのまま脊椎動物の祖先というわけではありません。ただミロクンミンギアもピカイアも絶滅した動物なので、魚類と頭索類の共通祖先に近く、遺伝子重複も経験していないナメクジウオは貴重な研究材料です。

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図184-4 科学雑誌の表紙に採用されたナメクジウオ

リンダ・ホランドらは FoxD という転写因子に注目しました(12-14)。この因子はナメクジウオでは脊索・前脳胞・体節中胚葉に発現します(図184-5)。普通遺伝子重複が起こると同じ遺伝子が複数になるので、過剰となった遺伝子はしばらくすると変異を重ねて無意味なシーケンスになると思われるのですが、この FoxD はなんと4つの重複遺伝子すべてが生き残り、しかも突然変異によってその数が増えて、脊椎動物では5種類になりました(図184-5)。そして脊索、前脳胞、体節中胚葉でそれぞれ別のパターンで発現し、さらにナメクジウオにはない神経堤で FoxD3 が発現しているという大変興味深い実験結果が得られています(12-14、図184-5)。

神経堤は頭蓋骨・眼・歯・心臓・色素細胞・神経細胞・シュワン細胞などを形成する細胞を製造するという発生途上に出現する大事な場所で、頭索動物には存在せず、脊椎動物に存在します。頭索動物と類似した祖先生物から脊椎動物が分岐する上でのエポックメーキングなキーといえます(14)。

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図184-5 脊椎動物と頭索動物におけるFoxD発現の比較

フェランらは脊椎動物では頭部に脊索がなく、頭索動物では逆に頭部より前まで脊索があることに着目し、脊索およびその延長線上で発現する分化誘導因子を調べました(15)。脊椎動物の場合、脊索が頭部まで伸びていない代わりにプレコーダルプレートがあり、さらにその前部にはプレコ-ダル細胞があります(図184-6)。これらの部分では脊索でつくられるブラキウリやNogは合成されませんが、FoxA2やShhは脊索同様につくられます。このプレコ-ダル領域に特異的に発現する Six3 という因子もあります(図184-6)。

そして驚くべきことに、この Six3 と同様な因子が頭索動物の脊索前端部でつくられているのです(Six3/Six6 図184-6)。ただし前端部でもブラキウリが合成されていたり、Shhが合成されていなかったりという脊椎動物との違いもあります。ひとつの臓器のようにみえる脊索が部域によって異なる働きをしていることを示唆する研究結果です(15)。

確かに頭索動物の神経策は頭部の膨らみが小さく、見た目脳の部分がないように見えますが、実際には脊椎動物の脳のプロトタイプが存在するということが認められるようになってきました(16)。

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図184-6 脊椎動物と頭索動物の脊索およびその関連組織における遺伝子発現の比較

ナメクジウオ(頭索動物)で脊索の前端部が頭部より前まで出ているということは、脊椎動物との共通祖先の時代にはより立派な脳があったのに、半固着生活をするようになってから脳が退化して小さくなってしまったからということは当然考えられますが、さてどうなのでしょう。

参照

1)京都大学広報資料 世界で初めてチンパンジー胎児の脳成長が明らかに:ヒトの脳の巨大化はすでに胎児期からスタート
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2012/120925_1

2)Wikimedia commons: File:1302 Brain Vesicle DevN.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:1302_Brain_Vesicle_DevN.jpg

3)Martin Sebastijan Sestak and Tomislav Domazet-Loso, Phylostratigraphic Profiles in Zebrafish Uncover Chordate Origins of the Vertebrate Brain., Mol. Biol. Evol. vol.32(2): pp.299–312 (2014) doi:10.1093/molbev/msu319
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4298178/

4)脳科学辞典:中脳
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E4%B8%AD%E8%84%B3

5)脳科学辞典:終脳
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%B5%82%E8%84%B3

6)Susumu Ohno “Evolution by Gene Duplication”Springer (1970)
https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-642-86659-3

7)P W Holland, J Garcia-Fernàndez, N A Williams, A Sidow, Gene duplications and the origins of vertebrate development., Dev Suppl.(1994) pp.125-133. PMID: 7579513.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7579513/

8)Oleg Simakov et al., Deeply conserved synteny resolves early events in vertebrate evolution., Nat Ecol Evol vol.4, pp.820–830 (2020). https://doi.org/10.1038/s41559-020-1156-z
https://www.nature.com/articles/s41559-020-1156-z

9)沖縄科学技術大学院大学 公開資料 古生代における種間交雑:脊椎動物における全ゲノム重複の真実が明らかに (2020)
https://www.oist.jp/ja/news-center/press-releases/35053

10)Science Portal: キンギョの祖先は1400万年前に遺伝子が倍になり進化の原動力になった 阪大グループがゲノム解読 (2019)
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20190628_01/

11)小林真吾・村上明男 ナメクジウオの長期飼育及び生体展示に関する技術報告
愛媛県総合科学博物館研究報告,No.11,pp.77-84(2006)
file:///C:/Users/Owner/Downloads/kagaku12.pdf

12)Yu JK, Holland ND, Holland LZ. 2002 An amphioxus
winged helix/forkhead gene, AmphiFoxD: insights
into vertebrate neural crest evolution. Dev. Dyn.
225, 289–297. (doi:10.1002/dvdy.10173)

13)Yu JK, Holland ND, Holland LZ. 2004 Tissue-specific
expression of FoxD reporter constructs in amphioxus
embryos. Dev. Biol. 274, 452 –461. (doi:10.1016/j.
ydbio.2004.07.010)

14)Linda Z. Holland, The origin and evolution of chordate nervous systems., Phil.Trans.R.Soc.B370:20150048. (2015)
http://dx.doi.org/10.1098/rstb.2015.0048

15)José Luis Ferran, Manuel Irimia, Luis Puelles, Is There a Prechordal Region and an Acroterminal Domain in Amphioxus ? Brain Behav Evol vol.96: pp.334–352 (2021) DOI: 10.1159/000521966
https://www.karger.com/Article/FullText/521966

16) Beatriz Albuixech-Crespo, Laura López-Blanch,Demian Burguera et al., Molecular regionalization of the developing amphioxus neural tube challengesmajor partitions of the vertebrate brain.  PLoS Biol. vol.15(4): e2001573. (2017) http: //dx.doi.org/10.1371/journal.pbio.2001573
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.2001573

 

 

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2022年7月24日 (日)

アラン・ギルバート-都響 モーツァルト3大交響曲@池袋芸術劇場2022/07/24

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炎天下ですが意外に風が熱くないので、すぐに汗だくにはならないのが助かります。サラは置いてけぼりですが、エアコンつけっぱなしにしておいたので、まあ大丈夫でしょう。

東京はコロナ爆発など誰も気にしてない感じで、池袋の地下道も人でいっぱいです。芸術劇場も1Fはほぼ満席。私がいた2Fはまあまあの入りでした。私は電車や雑踏では、100円の水ボトルを買ってときどき喉のウィルスを水で胃に流し込むという防疫法をやっています。

今日はモーツァルトということで、都響としては珍しい小さな編成でステージが広く見えます。しかもVn1&2が対向配置で指揮台もありません。アランは指揮棒も持たず、指揮者と言うより、むしろパントマイムをやっている感じです。本日のコンマスはボス矢部、サイドは四方さんです。

都響は爽やかで品がよい音を出すのは苦手で、それをやろうとするとわざとらしい感じになります。なので39番は何かいまいちの感じでしたが、40番になると一気に本領発揮で、この曲が持っている雰囲気をうまく表現できていたと思います。聴いていてすっかり引き込まれました。41番は指揮者のやりたいことがズバズバ決まっている感じで、これもなかなか楽しめました。ただティンパニの真紅のマレットは気になりましたね。

帰宅すると、サラがエアコンつけてない部屋から出てきました。やれやれ。

 

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2022年7月22日 (金)

都響のラジオ体操第一

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ラジオ体操第1 都響の演奏
https://www.youtube.com/watch?v=az_109-rMAo

<図解>ラジオ体操第一・立位
https://www.jp-life.japanpost.jp/radio/instruction/radio_first.html

指揮者 和田一樹 この人だけが笑いをこらえてやっていますが、オケメンは皆さんいたってまじめ。素晴らしい音楽です。柳原氏・鷹栖氏・南方氏らはちゃんと指揮者を見ながら演奏しているのがすごい。こんなところでも性格は出ます。ちなみに古川氏はよそ見しながら弾いているように見えます。長氏はイケメンらしく、チラッとカメラ目線になるときがあります。ラジオ体操する人も指揮者に合わせてやりたいのですが、映っているのは演奏者なんだよね。

 

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2022年7月21日 (木)

My favorites 10: セミヨン・ビチュコフのボックス

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どんな指揮者が優れた指揮者かというのはいろいろ議論があるところだと思いますが、実演ではやはりオケメンをやる気にさせる能力でしょう。レコーディングではあまり指揮者の恣意を感じさせずに、曲に浸れる自然な流れをつくることができる人を好ましく思います

セミヨン・ビチュコフ(ビシュコフ、ビチョコフなどとも)はまさしくそういう能力を持った指揮者で、かつ細部にまで血液が生き生きと脈動している演奏で安心して聴けます。このボックスセットは2016年に出版されたものですが、そろそろ商品の数が減って買いにくくなりつつあるようです。ブラームスやベートーヴェンの交響曲ははいっていなくて、写真のようなロシアとフランスの代表的な交響曲や管弦楽曲を中心に、パリ管弦楽団やベルリンフィルなどと収録しています。

奥様がマリエル・ラベックというラベック姉妹で活動するピアニストなので、ピアノ2台とオーケストラのためのめったに演奏されない作品が4曲も収録されています。契約の関係か彼が長く指揮者を務めたケルンWDR交響楽団との演奏は収録されていません。WDRと制作したボックスセットはオペラを中心とした特殊なものです。ただYouTubeには多くの映像付きの演奏が残されています。

彼は現在はチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めていますが、そちらはそろそろ若手のチェコ人にまかせて、最後は都響に来てくれないかなあ・・・とかすかな期待を抱いています。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調
https://www.youtube.com/watch?v=YWwssdM6BVY

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2022年7月16日 (土)

続・生物学茶話183: 脊索の出自と役割り

私たち人類は分類学上は脊索動物門というグループに所属していて、頭索動物(ナメクジウオ)・尾索動物(ホヤ)・脊椎動物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など)という亜門がその下に置かれています。人類はもちろん脊椎動物亜門に所属しています。脊索動物は形態学的には、一生あるいは発生のある時期に脊索(ノトコード)を持つことが特徴とされています。しかし近年この構造はウルバイラテリア(始原的左右相称動物)の時代から存在し、それが形を変えて様々な左右相称動物に残っているという見方も有力になりつつあります(1、2)。

脊索についての研究はそこそこ多いのですが、その発生のプロセスについては意外に研究が少ないのは不思議です。ジュランは光学顕微鏡を用いたマウス胚の形態観察によって、将来脊索に分化する細胞群がまず胎生8日目に腹側の内胚葉上皮に現れ、これが10.5日目に体内に陥入して脊索を構成することを1974年に報告しましたが(3)、これが最初の報告のようです。20年後にスリクらはSEMを用いた詳細な研究によって、ほぼジュランの記載が正しいことを再確認しました(4)。

脊索の原基(中胚葉と言われていた)がまず内胚葉または内胚葉上皮と接続した組織として出現するというのは、ちょっとした驚きだったでしょう。この原基を構成する細胞は元はといえばノード(ヘンゼン結節)に由来します。つまり背側から腹側まで移動し、いったん間葉→上皮転換をおこなって内胚葉上皮の一部となった後に、また背側方向に落ち込んでチューブ状の脊索を形成するというわけです(3-5、図183-1)

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図183-1 脊索は内胚葉上皮から形成される

脊索はもともとは左右相称動物が歩行とか遊泳を行うために、左右の筋肉の内端を脊索とくっつけて左右交互に収縮させる目的で存在していた構造だと思われますが(1)、脊椎動物では胚期に前後軸を作って形態形成の座標にすることや、さまざまな臓器の発生分化を調節するためのシグナリングハブとなることを目的としているようです。大人になると椎間板の一部となるため、連続した構造は失われます。

脊索がその本来の役割を果たすためには、体の前後軸の正中に存在しなければいけません。原条は正中位置にありますが、この場所では細胞の動きが激しく、少し離れた位置に居なければまきこまれて体内に陥入してしまいます。それ以外で正中にある構造は消化管だけでしょう。実際脊索原基になるはずの細胞はもともと中胚葉細胞とされていますが、中胚葉で分散して存在していると脊索はできません。脊索の原基を構成する細胞が正中のマーカーとなる消化管に集まるのは必然です。ただこのとき完全な間葉→上皮転換を行って腸管上皮と区別できない組織になるはずはありません。なぜならいずれ消化管の上皮から独立して脊索を形成しなければならないからです。前回「3胚葉説の崩壊」というタイトルで記事を書きましたが、脊索はまさしく独自の運命をたどる例といえるでしょう。

脊索が中枢神経系を誘導することはよく知られていますが、実はこの原稿を書くために調べているうちに、脊索が膵臓を誘導することを知ってびっくりしました。25年くらい前の論文ですが、報告したのはハーバード大学のキムらです(6)。図183-2はその概要で、この図はクリーバーとクリーグの総説(7)の図をもとに作成しました。実際ヒトの場合も先天性背側膵欠損症という病気があるそうです(8、9)。最近この脊索の分化誘導因子がBmpアンタゴニストのひとつnog2だと報告されました(10)。アモリムらによると、側板中胚葉からのBmpの情報を脊索から分泌されたnog2が遮断することによって膵臓が分化するとのことです(10)。

脊索はこのほか内胚葉から形成される様々な臓器、すなわち肺・肝臓・小腸などの発生分化にもかかわっているそうで(7)、これは発生生物学研究のエアーポケットのような領域だと思いました。

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図183-2 脊索は膵臓原基を誘導する

脊索による内胚葉性臓器の誘導についてはまだまだ研究は緒に就いたばかりの段階ですが、神経索(Neural tube)の誘導は昔から研究されていて、このブログでも以前に取り上げたことがあります(11)。簡単にまとめれば、Shh(Sonic hedgehog)、Noggin、Chordal、Nosal などのノトコードおよびフロアプレートの因子が、そのままだとBmpの影響で表皮になるはずの外胚葉組織を神経組織に誘導するという話ですが、最近ではさらに詳細な解析が行われ、フロアプレートの主要な因子は Shh とされています(12)。一方ルーフプレート側はBmp、Wnt系の複数因子を使っているようです(12)。

これらの因子の働きにより、神経管の中央部の幹細胞が増殖・分化して、誘導因子の濃度や種類に応じて、背側では少なくとも6種類の細胞群が形成され、それぞれ様々な感覚に対応した感覚神経系や介在神経を構成します(12、図183-3)。一方腹側では運動神経系をつくる細胞群(MN)のほか、4つの調節・介在神経系をつくる細胞群(V0~V3)が形成されます(図183-3)。これらの細胞群が形成されるにはルーフプレート・フロアプレート・脊索由来の因子のほかに、側板中胚葉から放出されるレチノイン酸のアシストも必要なようです(12)。

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図183-3 神経索内部の分化

図183-3はアンドリュースらの文献に従ってやや単純化されたメカニズムを表示しましたが、神経管の増殖と分化には上記の Noggin、Chordal、Nosalの関与(11)のほか、FGF系の因子が重要な役割を果たしているという報告もあります(13)。

参照

1)続・生物学茶話165:脊索の起源をめぐって
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/11/post-ce318d.html

2)Giovanni Annona, Nicholas D. Holland and Salvatore D'Aniello, Evolution of the notochord., EvoDevo vol.6, 30 (2015) DOI 10.1186/s13227-015-0025-3

3)Jurand A. Some aspects of the development of the notochord in mouse embryos. J.Embryol.Exp.Morphol., vol.32, pp.1-33 (1974)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/4141719/

4)Sulik K, Dehart DB, Iangaki T, Carson JL, Vrablic T, Gesteland K, Schoenwolf GC. Morphogenesis of the murine node and notochordal plate. Dev. Dyn., vol.201, pp.260–278 (1994) DOI: 10.1002/aja.1002010309
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7881129/

5)Sophie Balmer, Sonja Nowotschin, and Anna-Katerina Hadjantonakis, Notochord Morphogenesis in Mice: Current Understanding & Open Questions., Dev Dyn., vol.245(5): pp.547-557. (2016) doi:10.1002/dvdy.24392

6)Kim, S. K., Hebrok, M., and Melton, D. A., Notochord to endoderm signaling is required for pancreas development. Development vol.124, pp.4243– 4252 (1997)
https://www.semanticscholar.org/paper/Notochord-to-endoderm-signaling-is-required-for-Kim-Hebrok/7539affdf5a1e5126a35e487eef607e191ba4981

7)Ondine Cleaver and Paul A Krieg, Notochord Patterning of the Endoderm., Developmental Biology vol.234, pp.1–12 (2001) doi:10.1006/dbio.2001.021
file:///C:/Users/Owner/Desktop/Notochord%20in%20the%20endoderm.pdf

8)沖裕昌 et al., 先天性背側膵欠損症に合併した膵癌の1例 日本消化器病学会雑誌 第110巻 第6号 (2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/110/6/110_1044/_pdf

9)コトバンク 膵奇形
https://kotobank.jp/word/%E8%86%B5%E5%A5%87%E5%BD%A2-2098627

10)Jo~ao Pedro Amorim et al., A Conserved Notochord Enhancer Controls
Pancreas Development in Vertebrates., Cell Reports vol.32, 107862, (2020)
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2020.107862
https://reader.elsevier.com/reader/sd/pii/S2211124720308433?token=351AC88E11645BF6098F95CBEC13F4B94ED924A346F3C1DB3F558C1DF99057E7AD9E412D847D6FA3D67CBE13967C4BC1&originRegion=us-east-1&originCreation=20220712072246

11)続・生物学茶話164:脊索(ノトコード)
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/11/post-c842c4.html

12)Madeline G. Andrews, Jennifer Kong, Bennett G. Novitch, Samantha J. Butler, New perspectives on the mechanisms establishing the dorsal­
ventral axis of the spinal cord., Curr Top Dev Biol., vol.132: pp.417–450. (2019) doi:10.1016/bs.ctdb.2018.12.010
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30797516/

13)Ruth Diez del Corral and Aixa V. Morales, The Multiple Roles of FGF Signaling in the Developing Spinal Cord., Front. Cell Dev. Biol. vol.5, 58. (2017) doi: 10.3389/fcell.2017.00058
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell2017.00058/full

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2022年7月15日 (金)

サラの考察10: 願い事メーカー2022

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私「これはまたサラらしい願い事だね」

サラ「そう?」

私「誰のこと?」

サラ「当ててみれば」

私「まさかあの国葬されようとしている人のこと?」

サラ「ふふ」

願い事メーカー2022
https://irotsuku.com/a/bwxyust8

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2022年7月12日 (火)

これはまずい コロナ再爆発か!?

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陽性率79.8%ということは、風邪の症状が出たらまずコロナってことですね。今年の夏もまた墓参りに行けそうもありません。

 

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2022年7月 9日 (土)

高関-東京シティフィル ブラームス交響曲第3番@ティアラ江東2022/07/09

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少し暑さが和らいだ感じの土曜日です。今日は猿江のティアラ江東のマチネにでかけました。住吉駅で降りてA4の出口から道路の向こう側に珈琲館が見えたのではいりました。中はまるで昭和の喫茶店で懐かしい感じです。ホットケーキ(パンケーキ)とか缶詰のチェリーがはいったレモンスカッシュとかがメニューにあります。何よりウェイトレスが注文取りに来るのがいいですね。

ティアラ江東は大盛況で空席はほぼありません。才色兼備の竹山さんのフルートは上品で軽やか。やっぱりフルートはこうじゃなくちゃね。オケはちょっとその品の良さについていけてない感じでしたが、大変楽しめるモーツァルトでした。

メインのブラームスはゆったりとしたテンポで、にもかかわらずのりはいいという演奏。特にヴィオラのパートに今まで感じたことがないような心情のゆらぎを感じさせられて、これは素晴らしいと思いました、マエストロ高関がこの曲「ブラームス交響曲第3番」をとても深く愛しておられることがひしひしと感じられました。オケも真摯にタクトに反応して全力で演奏していると思います。このコンビはきっとこれからも、次々と名演奏を紡ぎ出していくことと思います。

ひとつ注文をつけるならば、やはり管楽器は20cmくらいでも高い位置で演奏してほしいですね。弦楽器奏者に隠れているようなフラットな状態だと、音響的にも好ましくないと思います。このホールはかなり傾斜はあって、私は最後列でかなり高い位置で聴いたのですが、それでも違和感がありました。

 

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2022年7月 8日 (金)

サラの考察9: ウクライナ

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私「もうすぐ参議院選挙だね」

サラ「私には関係ないけどね。政治家というのは所詮犬族なのよね。犬族じゃないと政治家を職業にしようなんて思いつくはずもないから」

私「たしかに同胞愛をセールスポイントにしている人は受け入れられやすい、ということはあるね」

サラ「だから私たち猫族はなんとか自分の居場所をみつけて、犬族から隠れて生きていくしかないのよ」

私「プーチンもゼレンスキーも典型的な犬族のようだね」

グレチコ「今回のロシアによるウクライナの侵攻も、その背景はウクライナ政府が義務教育でのロシア語の使用を禁止したことにありそうだね」

私「ドンバスやルガンスクというロシア語を話す住民が多数いるところでロシア語が迫害されるというのは、住民にとっては耐えがたいことだっただろうね」

グレチコ「スターリンの時代にはウクライナ語を禁止していたこともあるので、ウクライナ語派とロシア語派の対立は根深いものがある。クリミア半島はよく軍事拠点として重要だからロシアが占領したと言われているが、実はソ連時代からここはロシアの領土で、なぜかフルシチョフがウクライナに気前よくプレゼントしたという歴史があるんだよ。だからここはロシア語の話者が非常に多い地域であることは知っておく必要があるね。」

ウクライナ政府 義務教育でのロシア語使用を2020年に完全廃止
こちら1

ウクライナ、ロシア語広告禁止 影響力排除狙いか
こちら2

今トロツキーの自伝(トロツキー「わが生涯」岩波文庫)を読んでいます。19世紀末のウクライナの農村の生活が大変詳しく書かれています。その頃からウクライナは小麦・大麦・燕麦などを輸出する世界の穀倉だったようです。

トロツキーはレーニンとともにロシアの10月革命を成し遂げた人物ですが、実はウクライナのど真ん中で生まれ育ったウクライナ人です。彼は人種的にはユダヤ系で父親はユダヤ人居留地に住んでいたそうですが、努力してお金を貯めてロシア人からエリザベートグラード(現キロヴォフラード)近郊の土地を買い、農業経営者として成功しました。そんな父親ですがユダヤ語(イディッシュ)は苦手で、ウクライナ語とロシア語のちゃんぽんで会話していたそうです。トロツキーも小学校はユダヤ系の学校にいれられたのですが、イディッシュがわからずやめています。私の印象ですが、彼は猫族だったように感じます。だからというわけじゃないでしょうが、最後は亡命先のメキシコでスターリンのエージェントに暗殺されました。

どうも言語の違いと人種差別というのは「人間 Homo sapiens という種」のアキレス腱のように思います。この問題を解決しないと、いくら軍拡競争をやっても平和はもたらされません。

写真は私と二人で猫会議中のサラ。

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2022年7月 5日 (火)

続・生物学茶話182: 3胚葉説の崩壊

本題に入る前に2つの因子についての知識が必要です。まずブラキウリ(Brachyury)ですが、これは様々な臓器・器官の発生に関与するTボックスファミリーに属する転写因子の一つで、ウィキペディアによると、これまで調べられたすべての左右相称動物でみつかっているそうです(1、2)。この因子は中胚葉形成に必要であることから、特に脊索動物の gastrulation における中胚葉細胞のマーカーとして用いられます(2)。もうひとつのSOX2はSRYボックス転写因子のひとつで、胚性幹細胞(ES細胞)や胎盤幹細胞(TS細胞)の維持に必須であることが知られていますが、脊索動物の発生の過程で神経前駆細胞のマーカーとしても使われます(3、4)。

これらのマーカーを用いて、ギヨーらはニワトリ胚原条形成期における中胚葉形成細胞と神経幹細胞の追跡を行いました(5、6、図182-1)。ギヨーは最近独立して自分の研究室を動かしているようですが、ウェブサイトの表紙デザインが私のお気に入りです(図182-1)。しかも彼女の研究室のサイトには自分と子供たちの家族写真まで貼ってあります(7)。

まず神経幹細胞のマーカーであるSOX2の発現ですが、原条ができた頃(4HH、18hr)にはエピブラストの前方領域の一部にしかみられなかったのですが、5HHになると胚の前半部全域に広がり、ヘンゼン結節より後部ではダラ下がりとなります(図182-1a)。一方T(ブラキウリ)はヘンゼン結節周辺からはじまって後方にかけて漸増していくような発現パターンになります(図182-1b)。

ここで注目すべきは、ヘンゼン結節周辺から原条の最前部周辺に両マーカーのダブルポジティブな細胞(図182-1で黄色の細胞 一番右側の図ではっきりと見える)がみられることです。これはすでにその存在が指摘されていた Neuro-Mesodermal Progenitors かもしれません(8、9)。

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図182-1 SOX2/Tダブルポジティブな細胞

次にこれらダブルポジティブな細胞がどのような運命をたどるかを検証する必要がありますが、この種の研究を進めるために好適なマーカーがあります。それはレトロウィルスの増殖に必要な部分を削除し、GFPの発現に必要なパートと抗生物質抵抗性を発現するパートを組み込んだベクターです(図182-2)。最近の進歩は、これにさらにバーコードシーケンスと呼ばれるひとつひとつのベクターに特異的な配列を組み込んだ製品です。これを使えば、GFPを発現した細胞の遺伝子をPCRで増幅し、細胞をクローンごとに識別することが可能です(10、11、図182-2)。

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図182-2 バーコードシーケンスを含むGFP発現ベクター

ギヨーらはステージ5HHでこのレトロウィルスベクターを原条前部周辺の細胞に感染させ、36時間後に神経管と側板中胚葉の細胞をひとつづつ分離してバーコード分析を行いました。このとき第27体節より前と後に分けて分析しました。図182-3は調査した7つのクローンについての結果をテーブルにまとめたものです。この結果4つのクローンが同じバーコードを持つ神経管細胞と中胚葉細胞を含んでいました。これは神経管・中胚葉の両者に実際分化する幹細胞が存在することを示しています。

特に興味深いのはクローン2で、このクローンをつくった幹細胞は囊胚期には分化増殖しないで後部に移動し、そのあと分化増殖して後部のみの神経管と中胚葉の一部を構成したことを示しています。彼女らはレトロウィルスベクターだけでなく、ブレインボウ法(12)でも同様な結果を得て、バイポテントな幹細胞が存在することを確認しています(5、6)。

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図182-3 SOX2/Tダブルポジティブ幹細胞の分化

Neuro-Mesodermal Progenitors を様々な方法で追跡していくと、原条(Primitive streak)の縮退に伴って体の後方に移動し、最終的には最後方の尾芽(Tail bud)まで移動することがわかりました(5、6、図182-4)。移動しても神経管と中胚葉を形成する能力は失われず、この場所で体の伸長に伴う脊髄や筋肉などのプロバイダーとして活動します。Neuro-Mesodermal Progenitors は Primitive streak の近傍の細胞であるにもかかわらず溝に落ち込みにくく、その多くが表層で増殖(自己複製を含む)しながら Primitive streak の縮退とともに後部に移動していくというイメージのようです(5、6)。

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図182-4 Neuro-Mesodermal Progenitors の移動

ここでは簡単に紹介しましたが、ギヨーらは様々な方法を用いて Neuro-Mesodermal Progenitors の存在とその運命を検証・追跡することに成功しています。これによってツザナクーらが穴を開けた3胚葉説の壁の破壊を、さらにパワフルに進展させました。この考え方が鳥類以外の脊索動物でも正しいと証明できるかどうか興味深いところです。

 

参照

1)HandWiki: Biology: Brachyury
https://handwiki.org/wiki/Biology:Brachyury

2)Sylvain Marcellini, Ulrich Technau, J.C.Smith, Patrick Lemaire, Evolution of Brachyury proteins: identification of a novel regulatory domain conserved within Bilateria., Develop. Biol., vol.260, pp.352-361 (2003)
https://doi.org/10.1016/S0012-1606(03)00244-6
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012160603002446?via%3Dihub

3)Scott R.HuttonLarysa H.Pevny, SOX2 expression levels distinguish between neural progenitor populations of the developing dorsal telencephalon., Develop. Biol., vol.352, pp.40-47, (2011) https://doi.org/10.1016/j.ydbio.2011.01.015
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S001216061100039X

4)Alejandro Amador-Arjona, Flavio Cimadamore, Chun-Teng Huang, Rebecca Wright, Susan Lewis, Fred H. Gage, and Alexey V. Terskikh, SOX2 primes the epigenetic landscape in neural precursors enabling proper gene activation during hippocampal neurogenesis., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.112, no.15, E1936-E1945,
https://doi.org/10.1073/pnas.1421480112
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1421480112

5)Charlene Guillot, Arthur Michaut, Brian Rabe, & Olivier Pourquie, Dynamics of primitive streak regression controls the fate of neuro-mesodermal progenitors in the chicken embryo., bioRxiv (2020),
https://doi.org/10.1101/2020.05.04.077586doi:

6)Charlene Guillot, Yannis Djeffal, Arthur Michaut, Brian Rabe, Olivier Pourquie, Dynamics of primitive streak regression controls the fate of neuromesodermal progenitors in the chicken embryo., eLife 10:e64819, (2021)
DOI: https://doi.org/10.7554/eLife.64819
file:///C:/Users/Owner/Desktop/182/%E2%97%8F%E2%97%8FGiullot%202021%20elife.pdf

7)Guillot Lab
https://scholar.harvard.edu/charlene_guillot/home

8)Elena Tzouanacou, Amelie Wegener, Filip J. Wymeersch, Valerie Wilson and Jean-Francois Nicolas, Redefining the Progression of Lineage Segregations
during Mammalian Embryogenesis by Clonal Analysis., Developmental Cell vol.17, pp.365-376, (2009) DOI 10.1016/j.devcel.2009.08.002
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19758561/

9)Filip J Wymeersch et al., Position-dependent plasticity of distinct progenitor types in the primitive streak.,
Elife. e10042 (2016)
doi: 10.7554/eLife.10042
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26780186/

10)addgene: Retroviral Barcoding Library
https://www.addgene.org/kits/winslow-retroviral-barcoding/#kit-details

11) Grüner BM, Schulze CJ, Yang D, Ogasawara D, Dix MM, Rogers ZN, Chuang CH, McFarland CD, Chiou SH, Brown JM, Cravatt BF, Bogyo M, Winslow MM., An in vivo multiplexed small-molecule screening platform Nat Methods., vol.13, pp.883–889 (2016) doi: 10.1038/nmeth.3992.
https://www.nature.com/articles/nmeth.3992

12)Wikipedia: Brainbow
https://en.wikipedia.org/wiki/Brainbow

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2022年7月 3日 (日)

地熱発電を進めなかったのは政権の大きな失敗

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私たちは地球を卵とすると殻に相当する薄い地殻の上に住んでいます。その下の白身や黄身の部分はマグマやマントルという灼熱地獄であり、これを利用できれば人類はエネルギー不足に悩まされることはありません。

まして日本は世界でも有数の火山国。マグマがすぐ地表の近くまで上がってきているので地熱発電には圧倒的に有利な状況にあります。実際20世紀には非常に盛り上がった時期もあったのですが(研究開発もかなり進展しました)、原発に執心する勢力やお手軽な太陽光発電や風力発電が優先され、しょぼくなってしまいました。しかし地熱発電は気象に影響されませんし、スケールも大きいので、やっとこさ少し見直されているようです。日本の上層部でも一部の人々はようやく原発をあきらめたのかもしれません。

今日のサンデーステーションでは火山がほとんどないドイツでも積極的に地熱発電に取り組んでいると報道していて、ちょっと驚きました。

マグマだまりがどこにあるのかをつきとめる、高熱に耐える配管シールドをつかってなるべくマグマだまりの近くに配管を設置する、国立公園内に発電所の設置を認めるなどを行えば、効率の良い発電が行えます。そんなことまでやらなくても、穴を掘れば高温の土にぶつかる場所は北総も含めていくらでもあります。温泉は必要ありません。原発や火力発電所よりずっとメンテが簡単ですし、資源の枯渇はありません、二酸化炭素もだしません、配管はいくらでも増設できます。富士電機など世界を代表するメーカーも存在します。

このブログでも10年以上前から何度も地熱発電の重要性を指摘してきました。もう電気代で生活が危うくなるのは勘弁してほしい。

日本は世界3位の地熱資源大国なのに発電所建設が進まなかった3つの理由
https://diamond.jp/articles/-/200086

地熱発電を支持しよう
http://morph.way-nifty.com/grey/2015/06/post-dbb6.html

マグマ発電の実現は近い
http://morph.way-nifty.com/grey/2012/09/post-95e9.html

期待される地熱発電
http://morph.way-nifty.com/grey/2009/01/post-a251.html

富士電機
https://www.fujielectric.co.jp/products/geothermal_power_generation/

 

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2022年7月 2日 (土)

マケラ-都響 マーラー交響曲第6番@サントリーホール 2022/07/01

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最近は夜の公演に出かけると疲労が激しいので、なるべくマチネに行くようにしていますが、マケラがマーラーを振るというのでは出かけざるを得ないでしょう。今年は異常に暑いということで、2時間に1本しかないコミュニティーバスを捕まえて駅まで行きました。それでもさすがに35℃はきつくて、数分しか歩いてないのに汗だくです

ようやくアークヒルズに到着し、以前は2Fにあった蕎麦屋の水内庵(みのちあん)がいったん閉店した後、3Fに再開店していたので行ってみました。2Fにあったときには昔ながらの蕎麦屋って感じだったのですが(都響の団員もよくたむろしていました)、3Fの新店は明るくてモダンな感じに変わっていました。私は親子丼を注文したのですが、鶏肉が少し大きい塊になっていたように感じました。これはどちらかというと好みじゃないんですが、味は相変わらず最高です。

本日のコンミスは四方さん、サイドはボス矢部の豪華版です。コントラバスなどあと5cmで転落しそうなくらい楽器満載のステージ。もちろんハンマーでたたかれる板もあります。

マーラーの交響曲第6番は、今日はアンダンテ→スケルツォの順で、ハンマーは2回でした。マケラの演奏はマーラーの音楽に特有な百鬼夜行、韜晦、気まぐれ、愛と死、天使と悪魔などの雑多な要素を排し、実に若々しくピチピチと音がするような元気百倍のすっきりとした音楽でまとめていました。マーラーはこの曲では特に自分の中の分散しがちな要素を捨てて、ベートーヴェンの運命交響曲のような古典的ルールにきちんとはまった音楽を作りたいと思っていたようなので、マケラのような解釈がかえってはまる感じがしました。

1回目のハンマーは演奏者(エキストラ)が異常に緊張していて心配になりましたが、なんとか無事にお役目を果たしていました。2回目はなんなく完了。都響の皆さんは普段にもまして髪を振り乱して頑張っている印象を受けました。本当に素晴らしい演奏だったと思います。個人的には四方さんのソロがお気に入り。マケラはこれから毎年忙しくなって、都響を振りには来てくれないかもしれませんが、今日の演奏は忘れません。聴衆の皆さんも照明がついた後2度も指揮者をステージに呼び出してスタンディングオベーションで迎えていました。

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2022年6月29日 (水)

サラの考察8: ひも

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サラはシェルターに来る前に野良猫だったことがあるようです。まあ17年も前の話ではありますが。でも三つ子の魂百までと言うことわざがあるように、子供の頃に強く心に焼き付いたことは死ぬまで忘れることはないようです。

そのひとつが細長いものにたいする執着です。写真はカメラのストラップにかみつこうとする様子で、うちに来た当初からネズミのおもちゃには全く興味を示さないのに、ただの紐には強い関心を示していました。

「どうして?」
「むかしヘビを食べたら美味しかったのよ」
「なるほどね、ほかにはどんなものを食べていたんだい?」
「あとは枯葉ね。生きている植物は私たちには毒のものが多くて食べられないんだけど、枯葉は大丈夫なのよ」
「猫草は大丈夫なんだよ」
「わかっていても枯れてから食べるのが好きなのよ」
「まあ一度しみついた習慣からはなかなか逃れられないもんだね」

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2022年6月26日 (日)

マケラ-都響 ショスタコーヴィチ交響曲第7番@サントリーホール2022/06/26

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今をときめく若手のスター指揮者クラウス・マケラの登場とあって、久々のチケット完売。サントリーホールはこの炎暑の中大変な賑わいです。最近見かけなかった最前列の○○氏も早々と登場。いつもは閉場ぎりぎりなのでびっくりです。

最初の曲は多分マケラのお友達のジノヴィエフが作曲した「バッテリア」。本邦初演です。ジノヴィエフは会場に来ていて、演奏終了後登壇し満場の拍手を浴びました。私としてはなんだかよくわからない曲なので、感想文の書きようもありません。休憩なしと言っても、かなりの時間をかけて楽器などのセットアップを行ない、いよいよ本日のメイン「ショスタコーヴィチ 交響曲第7番」です。これなら休憩入れてもよかったと思います。

都響が演奏するこの曲を聴くのは多分3回目で、前の2回の感想文は下記です。

都響-カエターノのショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」@サントリーホール2013年9月25日
http://morph.way-nifty.com/grey/2013/09/post-84e8.html

インバル-都響:ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」@東京文化会館2018・3・20
http://morph.way-nifty.com/grey/2018/03/post-ac67.html

死の街を照らしたショスタコーヴィチ交響曲第7番
http://morph.way-nifty.com/grey/2019/01/post-5f66.html

マケラという人は天才のおもむくままという人ではありません。よく曲を勉強して、演奏者に細かく指示を出して繊細に細部から全体を構築する人という印象をうけました。むしろ考えすぎて少し不自然になる部分があるような気もします。第1楽章のファゴットのソロなども少し違和感がありました。ただあまりにも暴力的全合奏の迫力がすごくて、これには度肝を抜かれました。そしてこう演奏するのがきっとベストなんだろうと納得しました。第3楽章の沈潜美、第4楽章の苦い勝利も味わい深いものがありました。

いまの世の中は多くが軍縮という言葉を忘れ、敵国への憎悪をあおり立てて軍拡競争に明け暮れています。これがどのような結果を招くかは想像できるでしょう。この曲はそれを暗示しています。

 

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2022年6月23日 (木)

続・生物学茶話181: 神経系細胞と中胚葉系細胞に分化できる幹細胞

2009年にそれまでの発生生物学の常識である「嚢胚形成時にすべての細胞は、外胚葉・中胚葉・内胚葉の3つのそれぞれ役割分化が限定された細胞系列に分岐する」というパラダイムをひっくり返す論文が出版されました(1)。著者はパスツール研究所のツザナクーやニコラスらを中心としたグループです(図180-1)。

彼らはROSA26サイトにLaacZを組み込んだマウスを作成し、これがランダムに起こる相同組み換えでLacZとなることを利用して、β-galによる呈色で細胞のクローンを可視化するという方法で研究を行いました。ひとつの個体で2回組み替えが起こるという可能性は排除できませんが、その確率は非常に低いのでとりあえず無視します。実験の1例を図180-1に示します。青い細胞集団はそれぞれひとつの細胞から増殖したクローンと考えられます(1)。文献1にはこのほか多数の実例が示されています。

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図181-1 神経管と体節の細胞を生み出す幹細胞

妊娠6.5日目に約660個だった胚細胞は7.5日目は15,000個、8.5日目には170万個と対数的に増加し、この間ひとつのクローン内の細胞数が少ないクローンの数が対数グラフで直線的に増加します(1)。このことから著者は増殖に同調性があると指摘しています。

図180-1に示した呈色細胞は図180-2のET74.2というクローンで、これは嚢胚形成終了期から臓器形成期初期にかけて形成されたものです。したがって、この時期に神経外胚葉性の細胞と体節中胚葉の細胞がひとつの親細胞から分化したことが示されています。図180-2をみると、胎生10日目以降すなわち嚢胚形成(gastrulation)がとっくの昔に終わった後でも外胚葉と中胚葉の両者のポテンシャルを持った幹細胞が存在し、ひとつのクローンが2つのラインの細胞群を生み出していることが明らかです。そしてそのような複数の分化可能性を持つ幹細胞の位置は、発生が進むとともに体の後部に移行していることが示唆されています(1、図180-2)。

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図181-2 発生過程でのクローン追跡

ツザナクーらは胎生8.5日目の胚でみつかった1017の呈色クローンについて解析し、このうちわずか49のクローンが内胚葉に分布していることがわかりました。このことは内胚葉が非常に限られた祖先細胞から作られるということを意味します(1)。これらの祖先細胞は囊胚形成前はエピブラストに存在し、胚体外中胚葉の祖先細胞とともに原条をトラバースして移動するようです(2)。

中胚葉と外胚葉のバイポテンシャルな幹細胞が頭部形成後にも尾部に分布して活動することは、脊索・脊髄・筋節などがセットになって生物が成長していくことを考えると、目的にかなった配置であると思われます。このバイポテンシャルな幹細胞は胎生8.5日目には神経前駆細胞と中胚葉前駆細胞という新しい細胞群を生み出すようになります(3、図180-3)。

エピブラストから神経方向への分化は、まずBMPによる分化抑制を阻害することによってスイッチが入ることからはじまりますが(4)、これはあくまでも脳を最終到達点にした過程であり、脊髄形成は脳形成とは全く別のプロセスによるという考え方は、すでに19世紀にケリカーによって発表されていたそうです(5)。ツザナクー、オリヴェラ-マルティネス、ツァキリディスらはそれに実験的根拠を与えました(1、6、7)。

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図181-3 神経・中胚葉に分化する幹細胞は囊胚形成終期からは尾部で活動する

現在は神経誘導と底板や脊索に発現するソニックヘッジホッグとの関係が焦眉の的になっているようです(8、9)。

考えてみれば幹細胞の重要性は1970年代から言われていたわけですが、ようやく最近になって発生生物学の領域でも、幹細胞の性質、その変化、増殖の方式などを中心に考えていかなければならないというパラダイムシフトが起こってきたような気がします。3胚葉を中心とした説明が遙か遠い昔の遺物のように感じられます。

参照

1)Elena Tzouanacou, Amelie Wegener, Filip J. Wymeersch, Valerie Wilson and Jean-Francois Nicolas, Redefining the Progression of Lineage Segregations
during Mammalian Embryogenesis by Clonal Analysis., Developmental Cell vol.17, pp.365-376, (2009) DOI 10.1016/j.devcel.2009.08.002
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19758561/

2)Lawson,K.A.,Meneses,J.J.,andPedersen,R.A., Clonal analysis of epiblast fate during germ layer formation in the mouse embryo., Development vol.113, pp.891–911 (1991) DOI: 10.1242/dev.113.3.891
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1821858/

3)Domingos Henrique, Elsa Abranches, Laure Verrier, and Kate G. Storey, Neuromesodermal progenitors and the making of the spinal cord., Development. vol.142(17): pp.2864–2875 (2015) doi:10.1242/dev.119768
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26329597/

4)Di-Gregorio A, Sancho M, Stuckey DW, Crompton LA, Godwin J, Mishina Y, Rodriguez TA., BMP signalling inhibits premature neural differentiation in the mouse embryo. Development., vol.134, pp.3359–3369 (2007)
doi: 10.1242/dev.005967.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17699604/

5)Kölliker A. Die embryonalen Keimblätter und die Gewebe. Z Wiss Zool., vol.40, pp.179–213 (1884)

6)Olivera-Martinez I, Harada H, Halley PA, Storey KG., Loss of FGF-dependent mesoderm identity and rise of endogenous retinoid signalling determine cessation of body axis elongation. PLoS Biol., 10:e1001415. (2012)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23118616/

7)Tsakiridis A, Wilson V. Assessing the bipotency of in vitro-derived neuromesodermal progenitors.
F1000 Res. 2015; 4:100.  DOI: 10.12688/f1000research.6345.2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26401264/

8)脳科学辞典:ソニック・ヘッジホッグ
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9B%E3%83%83%E3%82%B0

9)Nitza Kahane and Chaya Kalcheim, From Bipotent Neuromesodermal Progenitors to Neural-Mesodermal Interactions during Embryonic Development., Int. J. Mol. Sci. vol.22, 9141. (2021) https://doi.org/10.3390/ijms2217914
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8431582/

 

 

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2022年6月22日 (水)

My favorites 9: 愛から遠く離れて by 伽藍琳

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愛から遠く離れて(中島みゆき) by 伽藍琳
https://www.youtube.com/watch?v=OwmEBrrF-6U

20世紀がユーミンの時代だったとすると、21世紀は中島みゆきの時代でしょう。みゆきは生まれてくるのが早すぎましたね。21世紀になって本当にカバーする人が増えました。この曲は夜会 vol.10で歌われているそうですが、私は夜会はおろか、彼女のコンサートには一度も行ったことはありません。私はユーミンにしても中島みゆきにしてもあまりに圧倒的で、私が存在する余地がないような世界なので、多分コンサートには行かなかったのだと思います。しかし今の時代が中島みゆきの時代だということは認めざるを得ません。カバーだとその強大な圧力が緩和されるので、結構カバーは聴きます。私的にはバラードが好きなので、この曲などは特にお気に入り。りん・がらんさんの本業はプロデューサーだそうです。美しい日本語。

Naru&ぷりん 誕生
https://www.youtube.com/watch?v=cHMfZPAlzYs

Naru&ぷりん   地上の星
https://www.youtube.com/watch?v=OnjL-zaj3EE

YO-EN   ホームにて
https://www.youtube.com/watch?v=UY87XmwggsA

iNO 夏土産
https://www.youtube.com/watch?v=ZR6Iq70k1N4

まきちゃんぐ   空と君とのあいだに
https://www.youtube.com/watch?v=kZ4-AOQwilE

本家本元『誕生』中島みゆき
https://www.youtube.com/watch?v=iGh3zA4DPVs

 

 

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