2017年10月22日 (日)

都響2018~2019ラインアップ

Suntory Hall 2.jpg

都響2018~2019シーズンのラインアップが11日に発表されました。
http://www.tmso.or.jp/j/topics/detail.php?id=1266

今シーズンまで首席客演だったフルシャがバンベルク・フィルとチェコ・フィルに仕事を得たので退任。後釜はアラン・ギルバートになりました。彼は母親が日本人で、ミドルネームも「たけし」です。演奏は肉食系で血湧き肉躍るという感じでしょうか。どうしてニューヨーク・フィルを退任したかは謎です。

定期演奏会は音楽監督・終身名誉・桂冠の3重鎮とアランが中心のメニュー。目玉はやはり4月9日・10日の大野指揮のマーラー交響曲第3番ニ短調でしょう(Ms リリ・パーシキヴィ)。ベルティーニやインバルの偉大な演奏と比較されるのは仕方ありません。

個人的に特に楽しみな演奏会としては:

# アラン・ギルバートのドヴォルザーク「新世界」・リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」
# オリヴァー・ナッセンのホルスト「惑星」
# 大野和士のラヴェル「ダフニスとクロエ」・ブルックナー交響曲第6番
# ミヒャエル・ザンデルリンクのショスタコーヴィチ「交響曲第6番」
# クラウス・マケラのシベリウス「交響曲第1番」
# エリアフ・インバルのブルックナー「交響曲第8番」・ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」

美貌ピアニスト カティア・スカナヴィ
https://www.youtube.com/watch?v=4yl92M5BHJU

奇才ヴァイオリニスト パトリシア・コパチンスカヤ
https://www.youtube.com/watch?v=xr9KmgDFwMc

貴公子風ヴァイオリニスト レイ・チェン
https://www.youtube.com/watch?v=I03Hs6dwj7E

なども聴けます。

ベテラン指揮者中心のプログラムなので、いかに新鮮味を出すかが課題でしたが、そこそこ頑張ったと思います。特に上記3人のソリストを呼べたのは成功でしょうね。

最後に個人的な苦情:

やったばかりの「ドン・キホーテ」をなぜまたやるのかわけわかりません
ドヴォルザークの交響曲第7番は失敗作 その証拠に第8番では方向転換した
ツェムリンスキーやルトスワフスキの音楽は退屈
「春の祭典」は生け贄が踊って死ぬという状況にどう感動すれば良いのか?
3定期とプロムナードに女性指揮者を1回も起用していませんが、これはそのうち問題になります 日本の女性指揮者はみんな外国のオケが育てることになってもいいのでしょうか? (私はフィンランド人のエヴァ・オリカイネンを押しますけどね)
あと日本人若手指揮者の起用もなしですね これはお偉方の問題だけではなくて、楽団員に指揮者を育てるというという姿勢がないのではないかと疑います。

都響は札幌・名古屋・福岡・欧州・特に西東京方面にはしばしば行くのに、隅田川より東の区部・東京東部地域にはめったに来ません。すみだトリフォニーホール・江戸川総合文化センター・青砥シンフォニーホール・西新井文化ホール・サンパール荒川・北トピアなど立派なホールがたくさんあります。これは非常に不可解です。

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2017年10月21日 (土)

やぶにらみ生物論90: 染色体の数と性

いろいろな生物で染色体の数はさまざまですが、それには意味があるのでしょうか。また性染色体の数や種類が性によってどう定まっているかについてもみてみましょう。染色体の数について論じる上で、よく話題になるのがホエジカです。

ホエジカ属(ムンチャック Muntjac) のシカは東南アジア、中国南部、インドなどに分布しています。図1左はインドホエジカ、右は中国ホエジカ(キョン)で、とても良く似た動物です。キョンは房総半島や伊豆大島で野生化し、食害が問題になっています(1)。もともと日本にはいなくて、人間が持ち込んだ動物なので、駆除というのもひどい話です。

A_9


ホエジカ(Muntiacus)属はウシ科のダイカー(https://en.wikipedia.org/wiki/Duiker)から分岐したグループです。分岐はミトコンドリアDNAから推定されました(2)。染色体の数が近縁種でも著しく異なることで有名です(図2)。図2の学名のあとについている数字は、さまざまな亜種があることを意味します。

M.reevesi は更新世初期(100万年以前)に化石がみつかっていますが、M. muntjak と M. feae は更新世中期(50~100万年前)からしか化石がみつかりません。たかだか50万年くらいの間に染色体数が変化し、新しい種が生まれたことになります。

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インドホエジカとキョンのカリオタイプを比較すると図3のようになります(3)。キョンは私達ヒトと同じ46本の染色体を持ち、そのなかにメスはXX、オスはXYという性染色体が含まれます。ところがインドホエジカはメスは6本、オスは7本の染色体を持ち、オスに余分にある1本がY染色体に相当すると思われますが、最近の文献(4)にY2などという記載があるように、一筋縄ではいかないようです。

いずれにしても染色体の数が劇的に変化しても、同じ遺伝子のセットが存在すれば、それほど生物の特徴に変化は発生しないということは結論できそうです。ただ、もしY染色体が単独の染色体であるとすると、減数分裂の際の組み換えの可能性がゼロになるので進化上不利になるのは否めません。

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前のパラグラフで「染色体の数が劇的に変化しても、同じ遺伝子のセットが存在すれば、それほど生物の特徴に変化は発生しない」と述べましたが、性に関する染色体の問題特別です。ヒトではメスはXX、オスはXYという組み合わせの染色体が性を指定しています。他の動物ではどうでしょうか? 図4のように大きく分けてXY型(オスがヘテロ)とZW型(メスがヘテロ)があります(5、図4)。

有羊膜類では哺乳類・単孔類がXY型、鳥類・ヘビ類がZW型です。おそらくペルム紀にZW型の爬虫類からXY型の哺乳類型爬虫類が分かれたと思われますが、真偽は定かではありません。XY型というのはここではXY型=メスXX&オスXY・XO型=メスXX・オスXO・XnYn型・XnO型を含む総称です。カモノハシは雄・・・X1Y1X2Y2X3Y3X4Y4X5Y5:雌・・・ X1X1X2X2X3X3X4X4X5X5 という奇妙なカリオタイプですが(XnYn型)(6)、XY型の1種とされています。

ZW型にはメスZW・オスZZというタイプと、メスZO・オスZZというタイプがあります。O(オー)というのは染色体がないという意味です。

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現在生きているヘビ以外の爬虫類は、環境の温度によってオスかメスかが決まる場合が多いようです(図5)。たとえばカミツキガメ(Chelydra serpentina) では、20°C以下の低温と30°C以上の高温の環境ではメスが産まれ、中間の22~28°Cでは主にオスが産まれます(7)。アオウミガメの場合は、28℃以下ならオス、28~29℃ならオスメス半々、30℃以上の高温だとメスとなります(7)。

一般に遺伝子にバラエティーをつくるより、ともかく種の絶滅を防ぐことを優先しなければならないときは、メスを増やすのが得策です。ただそれぞれの生物が生きている環境によって、オス・メスどちらを優先的に作成すべきかは微妙に異なるでしょう。

図5の最も古いタイプの爬虫類に似ていて生きた化石といわれるムカシトカゲが、性染色体による性決定を行うとしてありますが、ウィキペディア(8)をみると、「21℃では雌雄比は半々だが、22℃では80%がオスになる。さらに20℃では80%が、18℃でほぼ100%がメスになる。ただしムカシトカゲの性決定は環境要因(温度)だけでなく遺伝子要因も関係している複雑なものらしいという説がある」 と記載してあるので、ウィキペディアを信頼すべきだと思います。おそらくムカシトカゲも温度依存性の性決定を行なうのでしょう。

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図4に示したように、哺乳類ではXXはメス、XYはオスという染色体型によって性が決定されますが、性を決定する遺伝子はアンドリュー・シンクレア、ピーター・グッドフェローらによって解明されました(9、図6)。彼らによればY染色体上のSRY遺伝子が精巣形成を決定しているということです。クープマン、ラベル=バッジらは、さらにマウスXX胚にSRY遺伝子を導入すると、本来メスになるべきXX胚がオスになることを証明しました(10、図6)。

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性決定遺伝子の発見はめざましい業績だと思いますが、図6の4人はノーベル賞にはとどいていません。その理由はいろいろあると思いますが、ひとつはSRY遺伝子の上流に別の遺伝子があるかもしれないということです。すなわちその遺伝子がまずONになって、その遺伝子産物がSRY遺伝子を活性化するのかもしれません。性決定に関連する遺伝子も数多くあることがわかってきました(11)。もちろんSRY遺伝子の下流には、性ホルモンの産生など実際に精巣を形成するためにかかわっている遺伝子群が働いているでしょう。

驚くべき事に、トゲネズミという日本にだけ棲息する絶滅危惧種3種のうち、アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミは染色体がXO型で、Y染色体が存在しません(12)。黒岩麻里氏によると、これらのネズミはY染色体の一部に変異が生じて、減数分裂がうまくいかなくなり、性決定関連部位がX染色体に転移することによって生き延びたそうです(13)。その転移の際にSRY遺伝子は失われ、CBX2という遺伝子が機能を代替することになったようです。

図7のように、XX/XY型の一般的な哺乳類と同じ性決定様式だったオキナワトゲネズミからアマミトゲネズミやトクノシマトゲネズミが派生したと考えられます。

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ショウジョウバエは哺乳類と同じくメスはXX、オスはXYの染色体型ですが、性決定のメカニズムは全然違うことがわかっています。Y染色体にはSRYのような性決定遺伝子がなく、常染色体とX染色体の比率で性が決定されます。すなわちショウジョウバエの染色体は2n=8本ですが、Aを常染色体としますと、AAAAAAXX or AAAAAAXXY=♀(A:X=3:1)、AAAAAAXYor AAAAAAXO=♂(A:X=6:1)、のようにA:Xの比が大きい場合(ここでは6:1)は♂、小さい場合は♀となります(ここでは3:1)(14)。

哺乳類の場合原則的にY染色体が1本あればオス、鳥類の場合W染色体が1本あればメスになります。魚類は爬虫類と近いところがあって、性決定遺伝子は存在しますが(メダカでDMY遺伝子がみつかっている)、一筋縄ではいきません。たとえばヒラメはXX/XY型の性決定機構を持っているものの、XX稚魚を18°Cで飼育するとすべてメスになり、同じXX稚魚を20°Cで飼育するとすべてオスになることがわかっています(15)。

またベラは一夫多妻制ですが、その家族のなかで1匹のオスが死ぬと、一番大きなメスがオスに性転換することが知られています(15)。よくテレビなどに登場するコブダイはタイではなく、ベラ科の魚です。このように魚類では遺伝要因よりしばしば環境要因が優先されます。

ソードテイルは一度稚魚を産むと、オスに性転換するとされています(図8)。

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性は2種類というのが私達の常識ですが、繊毛虫(原生動物)のなかには10種類あるいはそれ以上の性をもつものがいるそうです(16)。こうなると交配する相手を見つけるのが大変だと思いますが、それはフェロモンで解決しているようです。原核生物にも性は存在し、たとえば大腸菌で性を担う遺伝子は、Fプラスミドという形でゲノム本体からは分離独立して存在し、接合(conjugation)の際に相手の細胞に注入されます。

 

参照

1)キョン房総で大繁殖14年で50倍5万頭 農業被害拡大
https://mainichi.jp/articles/20170413/k00/00e/040/242000c

2)Wen Wang, Hong Lan., Rapid and parallel chromosomal number reductions in muntjac deer inferred from mitochondrial DNA phylogeny., Molecular Biology and Evolution, vol.17, pp.1326-1333 (2000)
https://doi.org/10.1093/oxfordjournals.molbev.a026416

3)Doris H. Wurster, Kurt Benirschke., Indian Momtjac, Muntiacus muntiak: A Deer with a Low Diploid Chromosome Number., Science  Vol. 168, Issue 3937, pp. 1364-1366 (1970)
DOI: 10.1126/science.168.3937.1364

4)http://crancot-nature.blogspot.jp/2016/08/le-sambar-et-le-cerf-aboyeur-deux.html#!/2016/08/le-sambar-et-le-cerf-aboyeur-deux.html

5)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%A7%E6%9F%93%E8%89%B2%E4%BD%93

6)生物史から、自然の摂理を読み解く カモノハシの不思議?
http://www.seibutsushi.net/blog/2008/02/386.html

7)https://matome.naver.jp/odai/2138201788384062201

8)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AB%E3%82%B7%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%B2

9)Sinclair AH, Berta P, Palmer MS, Hawkins JR, Griffiths BL, Smith MJ, Foster JW, Frischauf AM, Lovell-Badge R, Goodfellow PN (1990). “A gene from the human sex-determining region encodes a protein with homology to a conserved DNA-binding motif”. Nature vol. 346: pp. 216-217. (1990)   doi:doi:10.1038/346240a0. PMID 1695712.

10)Koopman P, Gubbay J, Vivian N, Goodfellow P, Lovell-Badge R,  “Male development of chromosomally female mice transgenic for SRY”.,  Nature vol. 351: pp.117-121. (1991) doi:10.1038/351117a0. PMID 2030730.

11)諸橋憲一郎 性の決定に働く遺伝子たち 季刊誌「生命誌」通 巻24号
https://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/024/ss_4.html

12)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%B2%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%83%9F%E5%B1%9E

13)黒岩麻里 Y 染色体をもたない哺乳類の性決定メカニズム 生化学 第84巻 第11号 pp. 931-934 (2012)

14)啓林館 生物 I :
http://www.keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_1_kaitei/contents/bi-1/2-bu/2-3-4.htm

15)長濱嘉孝、小林亨、松田勝., 魚類の性決定と生殖腺の性分化/性転換 タンパク質・核酸・酵素 vol. 49, no. 2, pp. 116-123 (2004)

16)高木由臣著 有性生殖論 「性」と「死」は何故生まれたのか NHKブックス (2014)

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2017年10月18日 (水)

サラとミーナ191: ペアの首輪

Img_2053サラも老境に達し、かなり飼い猫らしくのんびりと過ごすようになりました。飼い主に甘える心地よさも満喫している今日この頃です。写真は頭をなでられているところ。

ミーナと一緒に首輪を買い換えてペアにしました。一時流行した脱出首輪です。このタイプに慣れているので、普通の首輪は重くて気になるのか、いやがるようです。

脱出首輪は軽いところはいいのですが、2~3年たつとよじれてきて、見栄えが悪くなるのが難点です。

サラは雨が降っていると、たいていベランダにも出てきません。

Img_2056_2久しぶりの晴天で、ミーナはベランダへ。如雨露から水を飲もうとしましたが、水が満杯にはなってなくて首をつっこめず失敗。残念でした。

ミーナは赤、サラは青ですが、まあまあ似合っていると思います。







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2017年10月16日 (月)

カルト国家としての日本

4074110943_5f49c91210「戦争は人間の霊魂進化にとって最高の宗教的行事」
これがずっと自分の生き方の根本
by 自民党 稲田朋美

この言葉は「生長の家」の谷口雅春の発言のようです。

「生長の家」はその後、日本会議と決別して独自の平和主義路線に転換したそうですが、稲田氏はその昔の発言を信奉しているようです。

https://togetter.com/li/1141069
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-650a.html

こんな人間がつい最近まで防衛大臣をやっていたわけですから、これでは日本がカルト国家と思われてもしかたありません。任命したのはもちろん晋三。

経済とか防衛とか言う前にこれは100%アウト。
ナチよりひどいね。

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2017年10月15日 (日)

2017~2018リーガ・エスパニョーラ第8節: 逆風の中でドロー

Braugranaカタルーニャ政府が独立宣言を遅らせるという決定をしたおかげで、リーガも通常通りできることになりました。

改修されてアトレチコのホームスタジアムとなったワンダ・メトロポリターノは見た目素晴らしいスタジアムです。屋根が広くて、雨天でも観客はずぶ濡れを免れそうです。

アトレチコはオーソドックスな442でコレアとグリーズマンが前線要因で、カラスコ、サウルあたりが後ろからゴールを狙ってくる形。ガビ、コケ、フィリペ=ルイス(SB)、ファンフラン(SB)、サヴィッチ(CB)、ゴディン(CB)、オブラク(GK)。

バルサはスアレスの1トップ。中盤がイニエスタ、ラキティッチ、メッシ、A・ゴメス。攻撃の観点から言えばA・ゴメスとスアレスの2トップが望ましいですが、ポゼッションを重視したのでしょう。底はブスケツ、DF:アルバ・ウムティティ・ピケ・セメド、GK:テア=シュテーゲン。私ならデウロフェウをスタメンで右エストレーモに使いたいです。彼の切れ味はみていてスリリングです。A・ゴメスはトップ下タイプなので、右エストレーモは無理。

バルベルデは前半は0:0でもいいよという考えなのでしょう。立ち上がりはバルサがポゼッションで圧倒して狙い通りでしたが、21分にサウルのミドルシュートを食って、このもくろみは崩壊しました。セメドとピケがケアしていたのですが、やられてしまいました。

メッシは代表戦でハットトリックでアルゼンチンをワールドカップに出場させるという快挙の疲労が残っていて、プレーの精度が落ちています。メッシになんとか渡してという試みはほとんど裏目。スアレスも再三の精度落ちプレーで、冬に向かってつるべ落としにならないよう選手を考えて使った方がいいとおもいます。アルダやパコを放出要因なので全く使わないというのは、せっかく保有しているわけですから間違いだと思います。

テア=シュテーゲンはグリーズマンのシュートを2発止めて、大きく貢献しました。

後半途中からイニエスタに代えてデウロフェウ、セメドに代えてセルジを投入して攻めに出たのは遅まきながら正解でした。A・ゴメスは左・中央で実力発揮。さらに34分にはラキに代えてパウリーニョを投入しました。現時点では最強の攻撃的布陣でしょう。そのとたんにセルジのロングクロスがスアレスの頭に決まってゴール。バルサ追いついて1:1。

惜しかったのはアディショナルタイムでのゴール正面のFK。壁が向かって左側に偏っていたので、スアレスが蹴ればゴールできるのではないかと思いましたが、メッシが蹴ってGK正面でした。これで万事休すでしたが、このスタジアムでエンパテならまあ良としなければでしょうか?

https://www.youtube.com/watch?v=QZuUiyM2WWE

https://www.youtube.com/watch?v=WVgLdtV-g5Q

https://www.youtube.com/watch?v=EeWf5raVS_w


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2017年10月13日 (金)

やぶにらみ生物論89: ヒトゲノム

ヒトゲノムについて語る前に、まずゲノム(英語ではジノム)とはなにか、どう定義するのでしょうか? これがなかなか一筋縄ではいきません。とりあえずウィキペディアの定義では下記のようになっています(1)。

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In modern molecular biology and genetics, a genome is the genetic material of an organism. It consists of DNA (or RNA in RNA viruses). The genome includes both the genes (the coding regions), the noncoding DNA and the genetic material of the mitochondria and chloroplasts.

拙訳:現代の分子生物学および遺伝学において、ゲノムはひとつの生命体の遺伝物質を指します。それはDNA(RNAウィルスではRNA)で構成されています。ゲノムは遺伝子(コーディング領域)、非コーディングDNA、ミトコンドリアと葉緑体の遺伝物質を含みます。
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ところが日本語版のウィキペディアでは、たとえばヒトゲノムといった場合、ヒトのミトコンドリアの遺伝物質は含まないとも解釈できる記載があるので、英語版とは若干ニュアンスの違いが感じられます(2)。日本語版の方がわかりやすい感じもするので、ここではミトコンドリアのゲノムは含まないことにします。

ここでコーディング、非コーディングという言葉が出てきました。コーディングDNAとは、その部分のDNAが転写されてmRNAとなり、さらに翻訳されてタンパク質となるDNAの領域を意味します。それ以外の部分はすべて非コーディングDNAです。非コーディングDNAには転写されてリボソームRNAやトランスファーRNAを生成するための領域、転写調節因子の結合部位、偽遺伝子、トランスポゾンなどを含みます。

ではヒトゲノムにおいて、コーディング領域、非コーディング領域はどのくらいの割合になっているのでしょうか? 図1をみてみましょう(図1は3、4などを参照して作成)。実際にその塩基配列がタンパク質と対応している、狭い意味でのコーディング領域、すなわちエクソンは全ゲノムの1.3%に過ぎません。ヒトをマシンとしてみると、非常に効率が悪いシステムです。それはもちろんヒトは誰かが設計して作った作品ではなく、進化の結果として様々な歴史をたっぷりしょって生まれてきたからです。

エクソン以外にイントロンは遺伝子の一部です。rRNA、tRNA、snRNA、miRNAなどさまざまなRNAに対応するDNAも遺伝子です。進化の過程で不要になり崩壊過程にある遺伝子は偽遺伝子です。また遺伝子を制御するために、転写因子と結合するDNAの領域もその意義が明確です。しかしこれら素性と意義が明確なDNA領域を全部たしても、ゲノムの半分にもなりません。ゲノムのそれ以外のほとんどの部分はトランスポゾンで構成されています(図1)。

A

トランスポゾンはその転移能力が活発に発揮されると、頻繁に遺伝子に割り込んだり非相補的な組み換えがおこったりしてホストが死んでしまう可能性が高いので、ある程度暴れたら転移能力を失ってホストと共存します。そうなった生き物しか生き残れません。ヒトのトランスポゾンもその原理は同様で、ほぼすべてのトランスポゾンにおいてトランスポゼースの遺伝子が壊れて不活化しているので、自発的に転移することはできません(5)。

万一転移がおこってその細胞に不具合が発生しても、体細胞では代替する他の細胞がいるので、がんが引き起こされるような特殊な場合を除いては問題はおこりません。しかし生殖細胞ではそこからうまれた細胞がすべて転移したトランスポゾンを保有することになるので、深刻な疾病を引き起こす可能性があります。

例えばAluの転移が原因とみられる疾病も数多く知られていますが(6)、それらのほとんどは遺伝病であり、遠い過去に起こったことが現在まで引き継がれていると考えられます。

Alu も含めてSine は生殖巣において転写されることが知られており、しかもホストにストレスがかかるとその転写量が膨大になるそうです(7)。このことは何か意味がありそうな気がします。

コーディング領域の遺伝子については、ウィキペディアにグラフが出ていたので転載しておきます(8)。意外に構造タンパク質や酵素の割合は高くなく、転写因子・DNA結合因子・トランスポーターなどの遺伝子が多くの領域を占めていることがわかります。

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ヒトゲノムという概念は抽象的なものですが、その実体は染色体にあります。染色体を顕微鏡で見て形態を観察する技術は19世紀から開発されており、サットンはそれによって20世紀初頭に遺伝因子=染色体という説を唱えました。しかしそれからヒトの染色体は何本あるかという結論までは50年以上の歳月を要しました。アルベルト・ルヴァンとジョー・ヒン・チョー(図3)がヒトの染色体は46本であると報告したのは、ワトソンとクリックがDNAの構造を解明してから3年も後の1956年でした(9)。

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色素による染色で分別されたヒト染色体一覧を図4に示します。点線はセントロメアの位置です。X染色体とY染色体はあまりにも形態が異なりますが、この点については次回の記事に書く予定です。

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古典的なギムザ染色法によって染色体を分別する方法をGバンド法といいます。図5にその例を示します。ATリッチな部位が濃く染まり、GCリッチな部位は薄く染まるとされています(10)。今ではFISH(Fluorescent InSitu Hybridization)法によって染色体の分別がおこなわれます。この原理は図6で説明しますが、図5の下図ではAlu 配列を標的として、緑色蛍光色素で染色しています(11)。Alu の多い場所が緑色に染色されます。Alu配列のある場所に大きな偏りがあることがわかります。21番の染色体セットは片方が染色され、片方は染色されていませんが(11)、これが実験上のエラーなのか実際にそうなのかはわかりません。

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それぞれの染色体にはそれぞれ別の遺伝子が乗っているわけですし、遺伝子以外の決まった配列もそこそこあるわけですから、その相補性配列を持つDNAを合成して標識をつければ正確かつ容易に各染色体を分別できるはずです。

図6のように相補性のDNAに例えばビオチンを結合させ、これに「アビジン+蛍光色素」を結合させると(ビオチンとアビジンは強力に結合する)、染色体をそれぞれ特異的に染色することができます。ビオチン-アビジンのセットでなくても、強力に接着する化学物質でDNAまたは蛍光色素と結合する組み合わせのセットなら使えます。

それぞれ別の色に光る蛍光色素を使えば、23対の染色体をそれぞれ色で識別することができます(図6)。100年も四苦八苦して分別していた染色体を、科学技術のちょっとした進展によって、わずかな時間で正確に分別できるようになりました。

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遺伝病の中には遺伝子のミクロな変化に起因するもの他に、染色体の本数の異常などダイナミックな染色体の変化による者があり、それらは染色体検査によって診断できます。最も有名なのはダウン症候群で、この疾患の原因が21番染色体が3本ある(トリソミー)ことによることを解明したのはジェローム・ルジューヌでした(図3、図7)。

彼は敬虔なキリスト教徒で、生涯妊娠中絶に反対し、このため女性や遺伝学者らから強い反発をうけました。胎児の染色体を検査し、異常な場合には中絶を行う-という道を拓いたことを後悔していたのかもしれません。彼の人となりは映画になっており、DVDはジェローム・ルジューヌ財団から入手できます(12)。ジェローム・ルジューヌ財団はダウン症の親子をケアするための活動を行っています。

日本では敬虔なキリスト教徒が少ないせいでしょうか、ルジューヌが恐れていたことがまさしく現出しています。ある調査では胎児のダウン症が確定した346人の妊婦のうち97%が人工妊娠中絶手術で堕胎したということです(13)

ターナー症候群は通常女性が2本持つX染色体を1本しかもたない(もちろんY染色体はない)患者で(図7)、低身長で第二次性徴を欠くなどの症状を発症します(14)。ウィリアムズ症候群は第7染色体セットの1本のエラスチン遺伝子周辺の複数の遺伝子が欠失する病気で(図7)、知能低下などの精神遅滞・心臓疾患などを発症するとされています(15)。

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遺伝子は各染色体に同じ密度で存在するのではなく、疎な染色体と密な染色体があります(16)。図8で塩基対(緑 Base pairs)の数に対して遺伝子の数(ピンク)が多い場合密ということになります。13番・18番・Y染色体が特に遺伝子がまばらにしか存在しない染色体であることがわかります。13番・18番の染色体は、図5ではAlu 配列が特に少ない染色体であることがわかります。関連性があるようにみえますが、これは偶然なのでしょうか?

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さまざまな遺伝子の中でもリボソームRNAの遺伝子は特別です。なにしろリボソームRNAは、細胞内全RNAの60%の重量を占めるほど大量に存在し(17)、遺伝子も400コピーが存在するほどゲノムの中でメジャーな存在なのです(18、文献19では350コピーになっています)。

リボソーム遺伝子は図9のような構造をとっています。すなわち18S、5.8S、28Sがスペーサーをはさんで連結しており、ひとつのオペロンを構成しています。このスペーサーはITSと呼ばれており、イントロンのように転写されます。オペロンとオペロンの間にはNTSという転写されないスペーサーが存在します。ヒト染色体においては13番・14番・15番・21番・22番染色体の短腕の大部分がリボソーム遺伝子領域とされています(20)。

リボソームにはもう1種5Sタイプがありますが、これは1番目の染色体に遺伝子のクラスターが存在します(21)。図9のリボソーム遺伝子群はRNAポリメラーゼ I によって転写されますが、5SRNA遺伝子はRNAポリメラーゼ III という特殊なRNAポリメラーゼによって転写されることが知られています。

A_9

トランスファーRNA遺伝子も、リボソームRNA遺伝子に次いでゲノムの大きな領域を占めていると思われます。これ以外の非コーディング領域には図10で示すようなものがあります。

細菌はゲノムのサイズが小さく、サーキュラー(円形)なので複製開始点がひとつでいいのですが、真核生物は一般にゲノムのサイズが大きく、複数の直鎖状DNAからなるので、1本のDNAについて複数の開始点があることは必須で、図10の1のような形になります。細菌でも真核生物でも、複製開始点には多くのタンパク質が結合して鎖をほどかなくてはなりません。このための塩基配列をDNAが用意しなければなりません。

遺伝子の特に上流にはプロモーターやエンハンサーが必須で、ここにも特定の塩基配列が必要です。この他染色体組み換えに必要な構造、セントロメア、テロメア、核の構造タンパク質にDNAを結合させる部位などに特定の塩基配列が必要です。

A_10

参照

1)https://en.wikipedia.org/wiki/Genome

2)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%8E%E3%83%A0

3)http://researchmap.jp/jo6z5r93q-17709/#_17709

4)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK21134/

5)西川伸一 JT生命誌研究館 ゲノムの解剖学 (2015)
https://www.brh.co.jp/communication/shinka/2015/post_000011.html

6)小林武彦編 「ゲノムを司るインターメア 非コードDNAの新たな展開」 化学同人 p. 209  (2015)

7)東京工業大学大学院 生命理工学研究科 進化・統御学講座(岡田研究室)HP:
http://www.fais.or.jp/okada/okada-past/research/keywords/m01_alu.html

8)https://en.wikipedia.org/wiki/Human_genome

9)Joe Hin Tjio and Albert Levan., The chromosome number of man. , Hereditas vol. 42:  pages 1–6, (1956)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1601-5223.1956.tb03010.x/pdf

10)http://ipsgene.com/genome/dna/band-method

11)https://en.wikipedia.org/wiki/Karyotype

12)ジェローム・ルジューヌ財団 https://lejeunefoundation.org/
または https://www.ds21.info/?p=8644

13)https://mamanoko.jp/articles/26383

14)https://en.wikipedia.org/wiki/Turner_syndrome

15)https://en.wikipedia.org/wiki/Williams_syndrome

16)https://en.wikipedia.org/wiki/Chromosome

17)小林武彦、赤松由布子 リボソームRNA 遺伝子の不安定性と生理作用-出芽酵母を中心にして 生化学 第85巻 第10号,pp. 839-844,(2013)
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2014/06/85-10-03.pdf

18)奥脇暢 リボソームRNA 遺伝子と核小体構造の調節  生化学 第85巻 第10号,pp. 845-851,(2013)
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2014/06/85-10-04.pdf

19)小林武彦編 「ゲノムを司るインターメア 非コードDNAの新たな展開」 化学同人 p. 111 (2015)

20)小林武彦編 「ゲノムを司るインターメア 非コードDNAの新たな展開」 化学同人 p. 2 (2015)

21)Timofeeva Mla et al.,  Organization of a 5S ribosomal RNA gene cluster in the human genome., Mol Biol (Mosk). vol. 27(4):  pp. 861-868. (1993)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8395649

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2017年10月 8日 (日)

山鳩の見る夢@三軒茶屋2017年10月6日

P1060725長い間CDを聴くだけだったのですが、ついに「まきちゃんぐ」のライヴに行くことができました。

場所は三軒茶屋のグレープフルーツムーン。

タイナカ彩智さんとのコラボ「山鳩の見る夢」です。イメージ的には巫女(タイナカ)と酋長の娘(まきちゃんぐ)のタイアップという感じかな。タイナカ彩智さんはピアノの名手で、著名なシンガーソングライターです。

http://morph.way-nifty.com/grey/2016/10/by-2666.html

まきちゃんぐはパンタロン形のジーンズにピンヒールという奇怪なファッションで登場。顔がまん丸に見えるように前髪をカットしているのもめずらしいヘヤースタイルです。

オープニングでタイナカさんが歌っているとき、まきちゃんぐがキーボードで伴奏していたのですが、どんどんペダルがずれて危ないなと思っていたら、突然演奏しながら靴を脱いで、はだしで引き寄せて踏み始めました。これはマジックです。

今回は河合さんという絵描きの方を呼んで、ライブドローイングをやってもらうという趣向だそうです。歌を歌っている間に、指に多分カーボンか黒い顔料の粉をつけて描いていくというのが河合さんの芸風のようです。モノクロですが、驚くべきパフォーマンスでした(写真)。是非画像をクリックして、大画像でご覧になってください。

P1060741

まきちゃんぐも30歳になったようで、若い頃のような毒素ただよう芸風からやや変化して、やわらかくなってきたみたいです。声に張りがある素晴らしいシンガーソングライターですが、激しさもやわらかさも変幻自在のボーカリストでもあります。

「鋼の心」や「赤い糸」もいいですが、「木漏れ日の中で、夏」 「NORA」なんかが私のフェイバリットかな。

ニューアルバム「ハナ」のトレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=Mg1-8pFqFoI

愛の雫
https://www.youtube.com/watch?v=ESAqbWBsPjQ

満海
https://www.youtube.com/watch?v=xUWDL1KkgZg

愛と星
https://www.youtube.com/watch?v=XI468c7Hlxk

そうじゃろ
https://www.youtube.com/watch?v=nRlPARRdqs0

岡山出身だそうで関西でのライヴが多く、東京ではなかなか機会がなかったのですが、ようやく聴けて感動しました。クリスマスイヴに南青山マンダラでワンマンをやるそうです。

私の過去記事
http://morph.way-nifty.com/grey/2014/11/by-1ab6.html

オフィシャルHP
http://makichang.info/

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2017年10月 6日 (金)

「二重らせん」 by James D. Watson

Photo基礎科学研究の危機が叫ばれるなか(参照:最後の点線下のパラグラフ)、予算配分の問題もさることながら、大学や研究所の雰囲気も大事です。

ジェームス・D・ワトソンが書いた「二重らせん」(上の図、講談社文庫)を読むと、当時の英国の大学や研究所の雰囲気がビビッドに描かれていて、その自由でフレンドリーな雰囲気こそが、革命的な科学の進歩を生み出したとわかります。

研究者の方々も、研究室の雰囲気をどのように作り上げていけば良いかを考える上で、大いに参考になると思います。アングロサクソン民族や戦後のフランス人が作り上げた自由闊達な雰囲気の中でこそ、ユダヤ人達も実力を発揮できたのだと思います。ワトソンとクリックは例外的にユダヤ人ではありませんでしたが。

ここに書いてあるのは主にキングスカレッジとキャベンディッシュ研究所という英国の状況ですが、米国ではもっと自由な雰囲気だったのでしょう。日本でも昔は大学や研究所は自由な雰囲気がありました。夕方に出勤して夜明けに帰る人、学生との議論はかならず喫茶店で行う教授、学会でも会場には決して行かず、談話室でずっと話している人、スカートを翻して夜中に塀を乗り越えて帰る女性研究者、2日遅れで配達される新聞を読みながらこたつで構想を練る人里離れた研究所の面々、など様々でした。そんななかから多くの優れた研究者が出現しました。ワトソンも朝だけ仕事をして、昼からはテニスという日々もあったようです。

Photo_2
「二重らせん」によれば近隣のレストランで議論を戦わせる場面も多くて、そういう雰囲気もいいなと思いました。パーティーなども頻繁に開かれていたようです。知り合いを増やす機会が多いというのは重要です。

他の研究者との風通しも良く、ワトソンがヌクレオチドの配位に正しい答えを得たのも、結晶学者であるジェリー・ドナヒューが、教科書に書いてあるチミンとグアニンの構造式(エノール型)が実は誤りで、両者ともケト型だと教えてくれたおかげで、それがなければワトソンとクリックは悪戦苦闘して誤った結論に達していたかもしれません(下の図)。

若手研究者に研究に打ち込める環境と雰囲気を作ってあげることは重要です。

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国立大学に所属する研究者には、毎年少額とは言え研究費が支給されてきました。そのお金で研究室の電気代や水道料を支払ったり、実験動物を維持したり、標本や資料の保存、調査費・旅費などに充当してきました。しかし、その状況が大きく変わろうとしています。

「古屋准教授(徳島大学)談:2018年度からは『重点クラスター』と呼ばれる学内の特定の研究グループにだけ配分することになった。残りの人はゼロです。重点クラスターの選択基準は端的に言って、医療技術や医薬品開発など直接役に立つかどうかです。恐れていた最悪の事態がついに来ました。」

これによって、これまで積み上げてきた貴重な実験動物の系統や標本・資料の維持ができなくなり、研究室は半廃墟と化します。人件費もなくなるため期限付き研究員や秘書を解雇しなければなりません。すべて自公政権=晋三の責任でしょう。

https://news.yahoo.co.jp/feature/766






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2017年10月 5日 (木)

資本主義社会から会員制社会へ

A0001_007972日本はここ20年くらい預金金利はほぼゼロで、これは銀行がどこにお金を貸しても利益が得られない状態に近いことを意味します。株価が上昇したのは政府の操作によるもので、トリックにすぎません。

EUや米国の金利もずっと低止まりで、すなわちほぼ資本主義は終了に近づいています。詳しくは写真の水野和夫氏の本に書いてあるので参照して下さい。

水野氏は資本主義終了後の社会を明確には示していませんが、とりあえず日本政府は 1)財政収支を均衡させること、2)税負担を高くしないこと、3)石油に依存しないエネルギー社会をつくることなどを提唱しています。

1資本主義が終了するのは、地球はひとつしかなく土地も資源も有限ですから、いつかはやってくることです。

では資本主義が終了した社会はどんな社会になるのでしょうか? 

私はそれは会員制社会だと思います。投資によって社会が膨張しなくなっても、人間は食事しなければなりませんし、食糧やエネルギーを生産することは必須ですし、家も建てたい、旅行もしたい、ゴルフもしたい、野球・サッカーも見たい、観劇や音楽会にも行きたい、病院も必要です、ということでいろいろな活動がなくなることはありません。

でもそれらを実現するには、投資がない以上別の仕組みが必要です。たとえばサッカースタジアムが老朽化して使えなくなったとします。スポンサーに頼って新スタジアムを建設することは無理ですし、銀行もリスクが大きいとみてお金を貸してくれません。ではどうしてもそのチームのサッカーを見たければ、ファンがお金を出すしかないでしょう。

安普請の小規模なスタジアムしかできないかもしれませんが、ファンがチームのスポンサー(会員)になって建設するわけですから、声援は熱狂し選手は頑張るでしょう。

旅館が施設老朽化で営業できなくなったとします。そうすると、どうしてもその旅館を廃業させたくなければ、その旅館の常連(会員)がお金を出し合って修理して、営業してもらうしかありません。そういう強い思いを抱かせる旅館だけが生き残るのが、ポスト資本主義社会です。

その兆候はすでにあります。たとえばイオンはカードを配布して、カード所有者(会員)のみに値引きをしています。カード所有者は通常の銀行に預金する代わりに、イオンにお金を預けます。つまり顧客が自社への投資のための資金を提供しているわけです。

アリアCDはこのCDが売れない時代に、会員(¥1,000/年)にしか売らないという商法で成功しています。企業が顧客を囲い込み、顧客はその企業をささえるというのが基本です。昔からお寺は檀家の喜捨によって成立していますが、それに近いかもしれません。

会員制社会の実体は会員用特典カード・会員のお金を預かる・ポイント・クーポン・優先予約・会員限定バーゲン・会員限定商品など以外に、会員の商品に対するアドバイスが採用されるとポイントをくれるとか、会員の推薦で社員を採用するとか、将来はもっと進んだ囲い込みが行われるでしょう。

私が会員である都響はすごいです。会員を7ランクにわけて、一般会員は会員券チケット値引きと先行予約のみですが、最高ランクになると下のような特典があります。

サポーターズパーティーに参加
ゲネプロに招待
チケットの最優先予約
リハーサル見学
オリジナルCD&DVDの贈呈
イベントへの招待

などなど

これは未来社会を暗示しているかもしれません。つまりどのクラスの会員であるかによってできることが異なる-ある種の身分制度のような仕組み-にならざるを得ないかもしれません。

資本主義の終了によって社会の発展は停滞しますが、悪いことばかりではないと思います。拡大しなければ成り立たない社会からの決別は、確実に戦争の確率を小さくします。

企業と顧客の距離は否応なく縮まるでしょう。またこのような社会の中でも、科学技術の発展や芸術の振興は政府の責任ではからなければなりません。それによって少しづつでも人類は進歩できるでしょう。




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2017年10月 4日 (水)

枝野幸男と欅坂46

欅坂46が出現したとき、秋元康の時代の空気を読むセンサーに驚愕しました。
晋三の盟友のようなふりをして、もうダメだとなるとさっさと見限る潔さ。
都議選で小池が圧勝するという時代がやってきたわけです。

さらに「不協和音」という曲は、枝野がカラオケで歌いたいと言っているくらい現在の状況を予測したような歌詞で脱帽です。

「仲間からも撃たれると思わなかった」
「僕には僕の正義があるんだ」
「君はYesと言うのか 軍門に下るのか」

なるほどね。

ただちょっと歌詞全体にひろがる暴力的なテーストが気になります。
小池もおおさか維新の松井=他党の候補を「カス」と呼ぶような下衆な男、と組むようではいただけませんね。

枝野が新党を立ち上げたのは当然とは言え、決断は立派だと思いますよ。
どういう政策を打ち出してくるかみてみたい。

欅坂46

「不協和音」
https://www.youtube.com/watch?v=mg--6QzubhM
https://www.youtube.com/watch?v=FbtezFFBeGg

「ふたりセゾン」
https://www.youtube.com/watch?v=nykeotY-NOM
https://www.youtube.com/watch?v=mNpPQXMgtmw

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2017年10月 3日 (火)

地元の紅葉

Magnolia_hypoleuca紅葉の季節になってきました。カエデやイチョウの紅葉は美しいですが、それなりの場所に行かなければ見られません。しかし地元にもそこそこ地味な紅葉・黄葉はみられます。

しかし残念な木が多いのも事実です、家の周りに朴の木(左)が多いのですが、この木はなんと8月から非常に惨めな感じで、ボロボロに黄葉してしまうのです。

ケヤキも全然紅葉はダメです。葉のボロボロ感が強くて、ちっとも美しくありません。

Img_2038

桜は美しい年とダメな年がありますが、今年は美しい方でしょう。桜はどうも枝の先の方から紅葉するようです。ですから枝先の方と幹の方でコントラストができます。そうなったときの方が美しいです。こういうメリハリが出来たときの方が、なしくずしに紅葉していったときより、葉がボロボロでない紅葉がみられると思います。

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2017年10月 2日 (月)

2017~2018リーガエスパニョーラ第7節: 無観客試合そして・・・

Braugranaリーガ第7節はカンプノウで無観客試合となってしまいました。バルサとしては試合を中止または延期したかったようですが、そうするとこの試合のポイントを0とする上に、ペナルティーとして-3ポイントを課すと連盟が決めたことで、無観客試合をやらざるを得なくなりました。大減収です。

ミッドウィークにリスボンで勝利したバルサですが、しだいに消耗していくのは避けられませんが、現在はまだ大丈夫です。相手のラス・パルマスはバルサと同様ポゼッション命のチームで、前半はポゼッションでバルサが下回るというラス・パルマスのペースの試合でした。

バルサはデウロフェウの疲労回復がはかばかしくないのか、右のエストレーモはビダル。スアレスとメッシが前。左エストレーモはほぼSBのアルバが代役。デニス・スアレスとパウリーニョが中盤でブスケツが底。マスチェラーノ・ピケ・セルジ・(アルバ)のBKでGKはテア=シュテーゲン。

ポゼッションで優位に立たれたのはジョナタン・ビエラとアクイラーニというラス・パルマスの中盤が有能だからです。ここからウサマ・タナンやカジェリの抜けだしをサポートするスルーパスが出てくるので危険です。ただし攻撃時にはパス回しのためにどっと選手が前に出てくるので、守備が手薄になり、一発パスが通ればいつでもメッシかスアレスが抜け出せそうな感じもあります。

しかし前半は逆に抜け出されそうになってパンツをひっぱるとか、まずいプレーが多く、なんと4人がカードをもらってしまいました。まあレフェリーのミスもあったとは思いますが・・・。とはいえ失点しなかったのは守備陣とゴールポストががんばりました。

後半は消耗のないデニス・スアレスを右のエストレーモにして、ラキティッチとイニエスタが中盤をささえるという作戦に変更し、これが成功しました。50分CKをとったバルサはまずブスケツの頭に合わせて1点。70分にデニス・スアレスのスルーパスが決まって、メッシがゴール。

76分にはラキティッチ→スアレス→メッシの高速パスが決まって、メッシが3点目をたたき込み勝負を決しました。ただ途中から出たイニエスタが、終了間際に大腿二頭筋を痛めて退場したのは痛手で、これからの数試合が難しくなりました。

スペイン政府・警察はカタルーニャの投票所を襲撃して投票箱を奪うなどの暴力的対応を行い、多数の負傷者が出たようです。これによって独立へのパッションに火を付けた感じで、もう止まらなくなってしまうのではないでしょうか。今日の感じだと、とてもクラシコなんて、できそうにはありません。カンプノウでは勿論、サンチャゴ・ベルナベウでも警察に「負けろ」と指示された昔の悪夢が再来しそうな気がします。

他人事ではありませんよ。日本もこのまま沖縄を放置すると、必ずカタルーニャのようになります。これを防ぐには周辺国家と友好関係を築き、国境を確定するか協定を締結して、日米安保条約を廃棄するしかありません。改憲はそれからでも遅くありません。

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2017年9月30日 (土)

やぶにらみ生物論88: トランスポゾン2

今回はトランスポゾンの種類や構造について述べます。細菌から私達人類まで、あらゆる生物はウィルスの脅威にさらされています。しかしウィルスは細胞に感染するとすぐに増殖して細胞を破壊するようなタイプのものばかりではなく、なかにはホストのDNAに組み込まれてプロファージの状態となり、あたかもホストのDNAの一部であるように振る舞うタイプもあります(1)。

すなわち太古の昔から、素性の知れない外界DNAをホストのDNAの中に埋め込む生化学的システムは存在したと考えられます。そのために必要な最小限のメカニズムには、ホストのDNAと親和性を持った塩基配列、ホストのDNAに切れ目を入れるエンドヌクレアーゼ活性、ホストのDNAと接続するためのDNAリガーゼ活性などが含まれているはずです。

ホストのDNAに埋め込まれたウィルスのDNAの一部に突然変異が生じて、例えば殻のタンパク質をコードする遺伝子が使えなくなってしまったらどうなるでしょう。もはやウィルスはホストの外では活動できません。ただDNAを切り出したり、埋め込んだりする活性が残っていればホストのDNAの中で移動することは可能かもしれません。

真核生物の場合は、このようなDNAを遺伝物質として持つウィルス以外に、RNAを遺伝物質として持つレトロウィルスが感染する場合があります。この場合レトロは「昔の」という意味ではなく、「逆の」という意味です。普通の生物がやっているDNAからRNAへの転写ではなく、レトロウィルスはRNAを鋳型として、逆転写酵素によりDNAを合成する(=逆転写)ことができます。

レトロウィルスとは、ヒトに感染するものではインフルエンザウィルス、HIV、はしかウィルス、ムンプス(おたふくかぜ)ウィルス、B型以外の肝炎ウィルスなどがそうです。この場合も逆転写されたDNAがホストのDNAに組み込まれてプロウィルスの状態になることがあります。

プロファージと同様、プロウィルスも細胞に感染するための遺伝子が変異して役立たなくなることはあり得ます。このように感染力を失ったファージやウィルスは、本来持っていた1)細胞に外から感染するシステム、2)遺伝子を殻内部にパッケージングするためのシステム、3)遺伝子を包む殻、4)細胞を破壊するためのシステムなどはあっても無用または有害になるので、遺伝子には全く残そうという選択圧力がかからなくなり、荒れ放題(変異放題)となります。

ただしホストの細胞内でずっと遺伝子を残す手立てはあります。たとえば細菌や一部の真核生物の場合はプラスミドとなって、ずっと細菌体内で存続することができます。細菌のDNAに組み込まれた状態でも、そのまま存続できる場合があります。他のすべての遺伝子を失っても、DNAを切り出す活性とDNAに組み込む活性が保存されていれば、ホストのDNAを移動することができますし、切り出されている間にDNAを複製して増殖することすら可能です。哺乳類の場合、プラスミドとして生き残るものは多分ないと思いますが、ホストDNAの一部としては残留することができます。

細菌のトランスポゾンはすべてDNAトランスポゾンですが、真核生物のトランスポゾンにはDNAトランスポゾンとレトロトランスポゾンが存在します。まずDNAトランスポゾンからみていきましょう(2、図1)。

DNAトランスポゾンには両端にダイレクトリピート(DR)という同方向を向いた反復配列がある場合があります。これはターゲットのDNAにトランスポゾンを挿入する際に使われると考えられます。ダイレクトリピートの内側にITR(inverted terminal repeat)、またはTIR(terminal inverted repeat)という逆向きの反復配列があります(図1)。これは図3であらためて説明しますが、トランスポゾンのDNAを切り出すときに認識する配列です。

これらの反復配列以外に、DNAトランスポゾンはDNAトランズポゼースの遺伝子をもっており、この他にこの遺伝子を転写するために必要な配列があれば、最小限の構成を確保できます(図1)。なお図1の塩基配列は1例であり、実際の配列とは関係ありません。実例についてもっと詳しく知りたい方は文献(3、4)などが参考になると思います。

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細菌のトランスポゾンはDNAトランズポゾンですし、植物の中には稲のようにゲノムの大部分がDNAトランスポゾンで構成されているものも多いと思われるので、おそらく世界で一番多い遺伝子は「DNAトランスポゼースの遺伝子」でしょう。DNAトランスポゾンには図2のように2つのタイプがあり、ひとつは二重鎖ごとカットして他の部位にペーストする移動型、いまひとつは一重鎖のみ切り出して、複製して二重鎖としてから他の部位に挿入する複製型です。複製型の場合、切り出された一重鎖の部分は残された鎖を鋳型としてホストの酵素で複製されるので、結果的にコピー&ペーストとなり、トランスポゾンが2倍に増幅されます(図2)。

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Inverted terminal repeat ( ITR 、図1) がDNAトランスポゾンの両端にあることは、DNAトランスポゼースの作用機構と密接な関連があります。図3のようにDNAトランスポゼースはダイマーとしてそれぞれがITRを認識して働く、すなわちDNAを切断するので、ITRがトランズポゾンの両端にあることは都合が良いのです。このことはトランスポゾンのエリアを2つのITRにはさまれた部分という認識を酵素が行う上でも重要です(5)。右図はプロテイン・データバンク・ジャパンのイラストです。DNAトランスポゼースとDNAの関係を3Dで表現したものです。

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DNAトランスポゾンをDNAに挿入するときに、ギャップができることがわかっており、ここがダイレクトリピート(DR)あるいはターゲット・サイト・デュプリケーション(TSD)と呼ばれるサイトと考えられています(5)。この部分は当然修復されDNAの接続(ライゲーション)が行われなければなりません。

図4にみられるように、トランスポゾンが挿入されたあと、ホストの細胞が持っている酵素によってギャップは修復されます(6)。修復された部分はトランスポゾンの両端に存在し、同じ方向を向いた同じ配列となります(ダイレクトリピート)。次にこの位置のトランスポゾンを切り出すときに、ダイレクトリピートを置いていくと、DNA上に昔トランスポゾンがあったという痕跡が残りますし、持ち出すとダイレクトリピート付きのトランスポゾンができます。

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ここまでDNAトランスポゾンについて述べてきましたが、トランスポゾンにはもうひとつレトロトランスポゾンというジャンルのものがあります。これはDNAの一部が別の位置に移転するという結果は同じなのですが、メカニズムはまったく異なります。細菌にはこのタイプのトランスポゾンはみられず、真核生物だけに存在するものです。レトロトランスポゾンの場合、普通の遺伝子のようにいったんRNAに転写され、そのRNAを鋳型として逆転写によってDNAが合成され、さらにその単鎖DNAを鋳型として二重鎖DNAが合成され、ホストのDNAに埋め込まれます(7、図5)。

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大変複雑なように見えますが、実はありふれたウィルスであるインフルエンザウィルス、HIV、B型以外の肝炎ウィルス、おたふく風邪ウィルス、はしかウィルスなどはみんな遺伝子はRNAの形でホストに感染し、ホストの細胞の中で逆転写によって相補的なDNAを合成してホストDNAにプロウィルスという形で埋め込まれた状態で潜伏し、転写によって遺伝子RNAと必要なタンパク質を合成してウィルス粒子を作り、ホストを破壊して外に出るという生活史を繰り返します。

細菌のプロファージの場合と同様、ホストのDNAに必要な遺伝子のセットを埋め込んだまではいいものの、その一部が壊れてしまったらどうなるでしょう。ウィルス粒子を作って他の細胞に感染することができなくなるので、プロウィルスのままホストのDNAにとどまるしかありません。いったんとどまってしまったら、プロウィルスとして存在するための遺伝子を除いて、他の遺伝子は壊れ放題になってしまいます。そうなるとプロウィルスは原型をとどめないトランスポゾンとなってしまいます。これをレトロトランスポゾンといいます。

レトロトランスポゾンの中で、一番ウィルスの原型をとどめているのはLTR型レトロトランスポゾンで、図6に示すように、両端にLTR(long terminal repeat)という構造を持っています。ロングと言っても数百から数千塩基対というバラエティーがあって、その機能は十分には解明されていませんが、レトロウィルスはこの部位を利用してホストDNAに逆転写したDNAを組み込んでいることは間違いなさそうです(8)。

そのレトロウィルスの機能を使ってトランスポゾンをホスト内部で移動させようというのが、LTR型レトロトランスポゾンです。このトランスポゾンは内部にエンドヌクレアーゼ(DNAを切断する酵素)と逆転写酵素(リバーストランスクリプターゼ)の有効な遺伝子を保存していますが、他の構造タンパク質などの遺伝子(gag、env など)は変異して無効になっています(図6)。

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そのウィルスの遺産であるLTRを失った長鎖トランスポゾンをLine(long interspersed nuclear elements)といいます。LTRのかわりにやや長いTSDがあり、さらに長い非翻訳領域が3’と5’の両端にTSDに続いて存在し、何らかの形でLTRのかわりにトランスポゾンのDNA組み込みのメカニズムにかかわっていると思われます。LineはLTR型と同様内部にエンドヌクレアーゼとリバーストランスクリプターゼの遺伝子を持っており、それゆえに短くはなれません。だいたい4,000~10,000塩基対(bp)となっています。

これに対してSine(short interspersed nuclear elements)はLTRのみならず、内部のエンドヌクレアーゼとリバーストランスクリプターゼの遺伝子も失っており、そもそもレトロウィルスを起源とするものかどうかも定かではありません。内部にtRNA、5SrRNA、7SL-RNAなどの機能RNAの一部に類似した塩基配列を持っており、3’末にはLine相同な配列とポリAテイルがあります。おそらくレトロウィルスとは関係なく二次的に発生したものなのでしょう。転移するための酵素がないので、Lineなどが持っている酵素の支援がなければ転移することができません。構造に大きなバラエティーがあるのも特徴です(9)。

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霊長類は霊長類にしかないAluエレメントというSineの1種を持っています。Aluエレメントという名は、Aluという制限酵素で切断される部位があることから名付けられました(図8)。ヒトの場合、全ゲノムの11%がAluエレメントだとされています(10)。なぜこんなに大量の特殊なトランスポゾンがヒトのゲノムにあるのかは謎です。このトランスポゾンは7SL-RNAという、タンパク質を細胞外に分泌するためのメカニズムの一翼をになうRNAの遺伝子と共通な配列の断片を数多く持っています(図8)。

図8に両者のフルシーケンスを示しましたので、目をこらして比較してみて下さい。Aluエレメントを発見したのは、カール・シュミット(Carl W. Schmid )とプレスコット・ダイニンジャー(Prescott Deininger) (11、図8)ですが、こんな特殊なトランスポゾンがヒトのゲノムに大量にあるとわかって、さぞかしびっくりしたことでしょう。

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さまざまな生物のなかには、DNAトランスポゾンを多く持つグループとレトロトランスポゾンを多く持つグループがあります(12、図9)。この中で注目したいのは、Entamoeba histolytica という哺乳類に感染する赤痢アメーバはレトロトランスポゾンを圧倒的に多く持っている一方で、Entamoeba invadense という爬虫類に感染する赤痢アメーバはDNAトランスポゾンが圧倒的に多いという研究結果です。

つまりトランスポゾンが蔓延するために要する期間は、進化のスケールで考えるとかなり短いのではないかということが示唆されています。

実際ショウジョウバエのPエレメントというDNAトランスポゾンは、ほとんどの自然界のハエが持っているにもかかわらず、古くから飼い継がれている実験用のハエにはどれにも全くみられないということが知られており、この場合数十年の内にPエレメントが自然界で蔓延したと思われます(13)。

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参照

1)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%B8

2)Transposons: Mobile DNA
http://grupo.us.es/gfnl/dna/genetic_ingeniering/transposons.htm

3)  Kosuke Yusa, piggyBac Transposon., Microbiolspec, vol. 3 no. 2  (2015) doi:10.1128/microbiolspec.MDNA3-0028-2014
http://www.asmscience.org/content/journal/microbiolspec/10.1128/microbiolspec.MDNA3-0028-2014

4)Narayanavari SA, Chilkunda SS, Ivics Z, Izsvák Z., Sleeping Beauty transposition: from biology to applications., Crit Rev Biochem Mol Biol.  vol.52, no.1, pp. 18-44. (2017) doi: 10.1080/10409238.2016.1237935. Epub 2016 Oct 4.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27696897

5)JD Watson, Molecular Biology of the Gene., 6th edn., pp.334-370, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2008)

6)Jennifer McDowall, Transposase.
http://www.ebi.ac.uk/interpro/potm/2006_12/Page1.htm

7)https://en.wikipedia.org/wiki/Retrotransposon

8)http://what-when-how.com/molecular-biology/long-terminal-repeats-molecular-biology/

9)http://sines.eimb.ru/Help.html

10)Prescott Deininger, Alu elements: know the SINEs.,  Genome Biol. 2011; vo. 12(12): pp. 236-248. Published online 2011 Dec 28.  doi:  10.1186/gb-2011-12-12-236

11)Schmid CW, Deininger PL  "Sequence organization of the human genome". Cell. 6: 345–358. (1975)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3334610/

12)Leslie A. Pray, Transposons: The Jumping Genes, Nature Education vol.1(1), p. 204 (2008)
https://www.nature.com/scitable/nated/article?action=showContentInPopup&contentPK=518

13)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%82%BE%E3%83%B3 (具体例のセクションを参照)

 

 

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2017年9月29日 (金)

総選挙 まずいことになりそう

A0002_000877今回の総選挙を控えての大騒動は、あまりに晋三政権が詐欺的で強引すぎる政治をやったための副作用だと思います。

副作用ですから、まずい結果は目に見えています。どういう政策を選択するのかではなく、政策とは関係なく誰がやるかという選挙になりそうです。それは困りますよね。

まあ政権がひっくり返ったとして、1年くらいはいろんな考え方の議員がみんな我慢するとして、それ以降は分裂するのは目に見えています。

安保法制をどうするのか? 柏崎原発をどうするのか? 辺野古をどうするのか? 憲法九条をどうするのか? 日銀に株や国債を買わせる異常な政策を継続するのか? 年金で株を買い続けるのか? 郵便局を外国に売るのか? 消費税を上げるのか? 上げた消費税を何に使うのか? 財政再建をするのか、それとも棚上げするのか? 地雷原は山ほどあります。

私は前から言っているように「科学技術の推進」(=研究の自由と予算の拡大)と「移民政策の推進」(=島国からインターナショナルな国家に生まれ変わる。英語教育の推進などは、より米国の下僕化が推進されるだけです)が日本が生き残るためのキーだと思っていますが、それを第一に掲げている政党はありません。

ならば最低でも、米国と少し距離をおいて、中ソ韓の方を向いた外交を進めてくれそうな政党ができて欲しいと思うわけです。そうしなければ、いつまでたっても日本は国境も定まらない、ふわふわの国家のままです。米軍基地も永遠になくなりません。そういう意味では好きなタイプの政治家ではありませんが、鳩山由紀夫にもう一度立ち上がってもらうしかないかもしれません。

それにしても枝野はどうするんでしょうね。前原に一杯食わされてしぼむのでは、あまりにも情けない話です。「護憲」を旗印に新党を立ち上げるくらいの心意気が彼にはないのでしょうか?

考えてみれば、民進党は自由党・社民党・共産党との連携で数が増える感じだったのに、なぜここで小池にすり寄ったかと言えば、護憲派を議会で圧倒的少数派にしようというからくりじゃないのかという疑いがのこります。現時点で国民の改憲派は少数なので、議会で二大政党が改憲というのはおかしな話です。これは一種のトリックです。

(写真は「足なり」からダウンロードしました)

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クレア・フアンチ ピアノリサイタル@白寿ホール2017年9月28日

Img1クレア・フアンチはウィキペディアによると、両親が科学者だそうで、ニューヨークのロチェスター生まれ(1990年)の中国系米国人だそうです。

白寿ホールははじめてでしたが、千代田線「代々木公園」に程近いビルの7Fにある素晴らしいホールです。ピアノ演奏を聴くのに非常に適していると思います。シートがまた素晴らしく、特にランバーサポートがしっかりしていて疲れません。

フアンチはショパンのノクターン集のCDを持っていて、すごいピアニストであることは知っていましたが、実演ではもっとエモーショナルで、生演奏らしいエキサイティングな音楽を楽しめました。

さてフアンチはリサイタルなのにドレスは着用せず、地味なパンツに普段着に毛の生えたような衣装で登場。ヤマハのピアノは「月光」ソナタに向いています。第一楽章の、暗い地底からとめどなく湧き上がってくる泉のような3連符にはぞくぞくしました。

休憩後のショパンのプレリュードはエルフルン・ガブリエルのCDがあればいいと思っていましたが、今夜の演奏には完全にやられました。2曲目の暗さがたまりません。「雨だれ」もしとしとの雨ではなく、物凄い暴風雨です。終盤はやや落ち着きがなかったような気もしましたが、実演で聴いた「プレリュード」ではベストであることに間違いありません。

Img2アンコールも拍手が鳴り止まず、スカルラッティを3曲、グリーグを1曲やって、ここまで暗譜でしたが、ついに5曲目「美女と野獣より」には、タブレットを譜面台においての演奏でした。このアンコールも驚異的な名演でした。朝まで聴いていたいという感じでしたね。

私は特に彼女のショパンが好きです。感性的にフィットする演奏なので・・・。よくまあ日本でリサイタルをやってくれたと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=xziZgGfZk7g

https://www.youtube.com/watch?v=C-4H_57BW_o

https://www.youtube.com/watch?v=8oIc3A19MAc

https://www.youtube.com/watch?v=Oji289l6fQE

https://www.youtube.com/watch?v=4z5bJUtJivI

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2017年9月26日 (火)

サラとミーナ190: マミタスより長生きのサラとミーナ

Img_aすっかり定年退職で、毎日の探索作業をリタイアしたサラ。おやつの鰹節も食べなくなって、これはいよいよ寿命かと心配しましたが、ペットショップでフリーズドライのかつおを買ってきて与えると、ばくばく食べました。

ベランダに出すと、どてっと寝転んでウルトラリラックス。なかなか家の中にもどらないので困ります。しかたなく扉を開けておいたら、大ゴキブリが侵入、部屋の中をブンブン飛び回って大騒ぎしましたが逮捕できず。

ところが一晩経過すると、全く生きている兆候がみえませんしきこえません。これはサラが始末したのかと、安心と不安がよぎる今日この頃です。

しょこたん飼育のマミタスが亡くなったそうで、ご愁傷様です。

https://twitter.com/shoko55mmts

http://www.shokotan.jp/

しょこたんも @nifty ブログでアクセスがトップだったこともあるのに、アメーバに乗り換えたのは残念至極。

Img_bミーナは特に変わりなし。長い時間を私のベッドの上で過ごします、あとはキャットタワー、プリンターの上。冬になるとベッドの上の毛布の中。このあたりを探すとたいていみつかります。

写真は急に明るくしたので、「まぶしいから、はやく電気消して」と言ってるのかな?

サラはよくカーテンの裏など思わぬ場所に潜伏することがあるので、なかなかみつからないことがあります。

イベントは1.朝トイレ掃除と給餌(ad libitum)、2.朝ベランダ開放、3.夕おやつの時間、4.深夜猫会議の4回/Dayで、このときはかならず2匹+私が集結します。

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2017年9月24日 (日)

2017~2018 リーガ・エスパニョーラ第6節 オウンゴール2発でドタバタの勝利

Braugranaミッドウィークの第5節エイバル戦は、録画しようとしていたらスカパーが停止していて空振り。大失敗の巻でした。第6節のジローナ戦は、バルセロナから車で1時間~1時間半くらいらしい(WOWOW情報)エスタディ・モンティリビでのゲームです。13286人収容のスタジアムでローカルな雰囲気です。

1949年にコパで当たって以来の2戦目だそうです。オルンガというケニアの選手が1トップ気味のフォーメーションですが、マンCからレンタルのドウグラスという選手が良いセンスで攻めてくるチームです。中盤のマフェオは今時珍しいメッシのマンマーク担当。GKのイライソスはビルバオ時代におなじみの選手。

バルサは毎週2回づつ試合がある厳しい日程で、バルベルデの腕のみせどころです。第5節でのデウロフェウは明らかに疲労がみられたので、ジローナ出身ではありますが招集外。代役はアレイシ・ビダルです。トップはスアレス。MFはイニエスタ・メッシ・パウリーニョ、中盤底はラキティッチ。ブスケツを休ませるのですが、パウリーニョでなくラキが代役。DF:アルバ・ウムティティ・マスチェラーノ・セルジ。ピケとセメドはお休みです。GKはテア=シュテーゲン。

12分ドウグラスにミドルシュートを打たれ、テア=シュテーゲンがギリギリではじく。はねかえりも打たれますがなんとか体に当ててセーフ。メッシはマンマークで動きとれず、非常にまずい展開です。FKもイライソスに止められて得点できません。17分アルバのセンタリングをアダイがクリアミスしてオウンゴール。なんともあっけないゴールで、バルサついています。

しかもこのあとマフェオがカードをもらってハードマークが難しくなるという幸運もありました。ラキティッチの惜しいミドルがありましたが、イライソスにセーブされて、前半は0:1で終了。

後半3分、ビダルが右に突入してヒールの股抜きでスアレスにパスを出しますが、なんともらったスアレスが股抜きスルーして、予想外のGKがオウンゴール。爆笑でジローナ自滅しました。26分にはスアレスがフリーで独走してダメ押しのゴール。バルサ0:3の勝利です。

https://www.youtube.com/watch?v=nVg5VBk_L3w

https://www.youtube.com/watch?v=1tRMmiNZBHQ

https://www.youtube.com/watch?v=xOMglk08GVQ



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2017年9月23日 (土)

梅田-都響のエルガー「創作主題による変奏曲(エニグマ)」@サントリーホール 2017年9月23日

Imgajpgサントリーホールは改装後はじめてでした。2Fのトイレの位置が変更されていて、従来の男子トイレと女子トイレがくっついて女子トイレとなり、男子トイレは別の位置に移動しました。ところが女子トイレに進入禁止マークがついていて???と思ったら、なんと出口と入口を分けたので出口に進入禁止マークをつけたのだそうです。

出口・入口と書けばわかるだろうに馬鹿なことをするものです。

シートの背もたれが良くなった感じがしました。背骨に問題がある私のような人間には有難いことです。

本日の指揮者は梅田さん、コンマスは矢部ちゃん(札幌まで台風を連れて行ったようですが、今日は朝は雨でしたがぎりぎりセーフ)。

サイドのマキロンは札幌で暴飲暴食かと思いきや意外にすっきり。客席は地味なプログラムの割には結構埋まっていました。

ハイドンの主題による変奏曲は、マエストロ梅田が優美な演奏をめざしていたと思われますが、そのせいか若干締まりが悪かったように思いました。

本日のソリストはチェリストのユリア・ハーゲン。まだ22歳の若手ですが、なかなか豊満なルノアール風の容姿で、なぜか音楽も豊満。リッチな音と繊細な演奏で「ロココの主題による変奏曲」を聴かせてくれました。これはなかなかの掘り出し物です。チェリストの演奏台の裏には、ここで演奏した多くのチェリストのサインがありますが、彼女もサインしたのでしょう。

都響のサポートも万全で、大変素晴らしい演奏だったと思います。拍手に応えてアンコール(バッハ)もやってくれました。後半は客席で都響の演奏を聴いていました。

休憩後のエルガー「創作主題による変奏曲(エニグマ)」は、はじめて実演に接しました。店村というVlaの名手がいる都響向きの曲で、マエストロ梅田も得意の曲なのでしょうか、都響をきっちりコントロールして、かつ生気に満ちた躍動感のある音楽を聴かせてくれました。とはいえエルガーという人も、ここぞというところでキャッチーなメロディーを投入できない、あと一歩の「残念な作曲家」だなあという思いがつのる演奏会でした。

ロココ風の主題による変奏曲 チャイコフスキー
https://www.youtube.com/watch?v=wsWnOgv6RG8

創作主題による変奏曲 エルガー
https://www.youtube.com/watch?v=QB8cE0B11lE

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2017年9月21日 (木)

やぶにらみ生物論87: トランスポゾン1

トランスポゾンとは染色体上での位置を変えることができるDNA断片のことですが、発見したのはバーバラ・マクリントックという女性科学者です(図1)。

彼女が辿った道をまず見ていきましょう。彼女は1902年の生まれで日本では明治の末期ですが、当時は米国でも女性が科学者になるのはまれなことでした。実際コーネル大学の農学部に進学したのですが、希望した植物育種学科は女人禁制で、大学院も遺伝学は女性は専攻できなかったので、やむなく植物学を専攻することになりました。

マクリントックが最初に目指したのは、当時モーガン研のスターティヴァントがショウジョウバエの4つの染色体を識別し、それぞれにおける遺伝子の場所を記した染色体地図を発表していたので、彼女が研究材料としていたトウモロコシでも染色体地図を作成するということでした。彼女はまず染色体を識別する上で助けになる酢酸カーミン染色法を開発しました。これは図1のカルミン酸を酢酸に溶かして鉄イオンなどを加えた染色液を用いる方法で、現在でも使われています。カルミン酸はある種のカイガラムシが合成する色素で、1991年まで人工合成はできませんでした。

A_8


彼女はまず自らの染色法を駆使して、トウモロコシの染色体が10組20本であることを確定し、各染色体に1~10番の番号を付けました(1)。この論文を発表した年(1929)に、ハリエット・クレイトン(図2)という大学院生がやってきて、マクリントックの指導で研究をはじめました。彼女たちが興味を寄せたのは奇妙な形の染色体を持つトウモロコシの変異体でした。当時としては、組み換えという現象があることはわかっていましたが、これが線路のポイント切り替えのようなダイナミックな染色体の物理的切断と結合の結果なのか、それとも遺伝子ごとの交換のようなミクロな現象なのかよくわかっていませんでした。

クレイトンとマクリントックは、染色体の両端にそれぞれ特徴的な構造、すなわちノブとしっぽ(非染色体DNA)を持つ変異体をみつけて、ノブとしっぽが組み換えによっていれかわることを示しました。これによって組み換えが可視化され、誰もが染色体の切断と再結合(交叉)によって組み換えが行われることを納得しました(2)。図2をみると、CとWという2つの遺伝子の間で組み換えがおこると、Cはノブ、Wはしっぽと行動を共にしており、物理的な染色体の切断・結合と、形質から判断される遺伝子の組み換えが同時に起こっていることがわかります。

A_9


私はこの文章を書くに当たって、マクリントックが後にトランスポゾンの理論をうちたてるきっかけとなった論文のことを調べるために文献(参照3)にあたりました。その中には 「1931年の秋、彼女はカリフォルニア大学バークレイ校の研究者から送られてきた別刷りを受け取った。そこに彼女がミズーリで見たものと同じ種類の斑入りが載っていた。バークレイの研究者たちもまた、染色体の切断あるいは欠落で生じた小さな染色体について触れていた」 という記述があります。ところがこのバークレイの研究者が誰なのかは書かれていません。

不満を感じながら調べたところ、マクリントックの論文(4)に引用文献がありました。この論文には引用文献が2つしかなく、そのひとつでした。Nawashin M. という人物の論文なのですが、さらに調べると、どうもこの引用文献のスペルが間違っているらしくて、Navashin M. という人物なら当時バークレイ校で植物の遺伝学をやっていたようなのですが、Nawashin M. という人物は見当たりませんでした。伝記を書いて出版するのなら、ちゃんとカリフォルニア大学バークレイ校に行くなり、文献を取り寄せるなりして調べて確認してから書いてほしいと思いますね。これからは全く私の想像ですが、Navasin さんはドイツ語でも論文を書いているのでドイツ人で、本来は Nawashin だったわけですが、米国では名前の発音が違って呼ばれるのが嫌で Navashin にスペルを代えたのではないでしょうか?マクリントックへの手紙には Nawashin と書いたのかもしれません。

マクリントックは斑入りの原因が、環状染色体(5、図3)内における染色分体間での姉妹鎖交換によって、セントロメアを2個含む染色体と全く含まない染色体が形成され、セントロメアを含まない染色体は細胞分裂によって娘細胞に分配されないため、色に関する遺伝子が無効になった細胞集団ができることによって斑入りが発生することを示しました(4)。

A_10


マクリントックは米国学術研究会議から奨学金をもらって、コーネル大学、ミシガン大学、カルテックなどを渡り歩いて研究をしていましたが、それが切れてしまって、ドイツで研究を続けることにしました(6)。1933年~1934年はドイツで核小体と染色体の関係について研究していましたが、ナチスドイツの台頭もあって、コーネル大学に戻ることになりました。

そして1936年に、30才代半ばでようやくミズーリ大学での定職(assistant professor)を得ることができました。Assistant professor といえば日本では助教のようなポストでしたが、その状態で彼女は米国遺伝学会の会長になりました。マクリントックは全く協調性がなく、喧嘩っ早い人間だったので、業績は大いに評価されてもポストは与えられず、女性の地位が低かった時代とは言え、あとからきた女性に先に准教授(associate professor)のポストが与えられるという有様でした(3)。

マクリントックが幸運だったのは、このような状況の中で旧友のマーカス・ローズがコールド・スプリング・ハーバー研究所に誘ってくれたことでした。ここは生物学のジャンルでは最も有名なシンポジウムが開催される場所として業界で知らない人はいません。夏期休暇を利用して多くの研究者が集まる施設ですが、冬は静かな環境で思う存分研究ができる場所でした(図4)。

この研究所のたたずまいはちょっと変わっていて、図4のように普通のビルディングではなく、敷地に散在する個人の住宅のような建物がひとつの研究室になっています。右はマクリントックの研究室で、彼女が亡くなったあともそのまま保存されていました。

このような施設をみると、日本人は科学を利用しようとするだけで、愛してはいないということを痛感させられます。ちなみに2009年にはコールド・スプリング・ハーバー・アジアが中国の蘇州に開設され、活動を開始しました。これからの科学は中国によって牽引されることが予感させられます。

A_11


これからの話を理解するためにアントシアニジンという色素について説明しなければなりません。この色素は多くの植物で花や実の色に関与しており、複雑な過程を経て合成され、しかも図5のように側鎖の種類によって様々な発色が可能です。実際にはこの色素に糖が結合した配糖体の形で花や実に存在しています。

A_12

マクリントックは1941年12月から、ほとんどの残りの人生をコールド・スプリング・ハーバーで過ごしました。1941年12月といえば、8日の真珠湾攻撃から太平洋戦争が勃発した時期でした。彼女が「動く遺伝子」の研究を始めたのは1944年ですから、日本軍が太平洋の島々で玉砕を重ねていた時期です。「動く遺伝子」に関する仕事は非常に困難だったので、数年間は論文が書けませんでしたが、戦争中にもかかわらずカーネギー財団はずっと援助を続けました。

この間にマクリントックは、Ac と Ds というDNA上の因子が、DNA上で他の部位にジャンプして遺伝子発現の調節を行っていることをつきとめました。例えば図6で言えば、通常は紫色の実が、Dsがアントシアニジン合成遺伝子の位置に移動してくると、その合成遺伝子の発現が抑制されて実の色が白くなり、Dsがそこから抜けて移動すると、ふたたび色素が合成されるようになります。どの程度元に戻れるかによって発色の状況が違っていきます。これが斑入りの原因になります。

A_13

マクリントックは1951年にコールド・スプリング・ハーバー研究所のシンポジウムで「動く遺伝子」に関する永年の研究成果を発表しました。しかし予想に反して全く反響はなく、誰も彼女が何を言っているのか理解できませんでした。ジャコブとモノーのオペロン仮説よりも前、ワトソンとクリックの二重らせんよりも前だったので、当時としては想像もできないようなお話だったようです。DNAの一部が遺伝子の活動を制御するなどと言う概念すらなかった時代だったということもありますが、当時は遺伝学者の興味がファージや大腸菌に大きく傾いていた時代だったので、トウモロコシの話題などみんなあまり興味がなかったのでしょう。

その後も分子生物学的な裏付けがなかったので、「動く遺伝子(トランスポゾン)」はなかなか業界で認められませんでしたが、1982年にスプラドリングとルビン(図7)がショウジョウバエにPエレメントが存在することを証明し(8、9)、ついに1983年にフェドロフ(図7)がトウモロコシのAcとDsの分子的実体とその動きを解明した(10)ことで、間髪を入れずマクリントックはノーベル生理学医学賞を授けられることになりました。

授賞時マクリントックは80才を越えていましたが、メンデルと違って生きているうちにきちんと再評価されたのはよかったと思います。ただ私の意見としては、ニーナ・フェドロフと共に授賞すべきだったのではないか、そのほうがマクリントックも嬉しかったのではないかと思いますね。天才だけでなく、実験的証明を行った人々についても、きちんと評価されて然るべきです。

A_14

現在ではトランスポゾンは細菌からヒトに至るまでユニバーサルに存在することが知られていますし、種類も様々です。少し長くなりそうなので、続きは次回に述べることにします。


参照

1) B. McClintock.,  Chromosome Morphology in Zea mays. Science 69: 629 (1929)
http://science.sciencemag.org/content/69/1798/629.long

2)Creighton, H., and McClintock, B. 1931 A correlation of cytological and genetical crossing-over in Zea mays. PNAS vol. 17: pp. 492–497 (1931)
http://www.esp.org/foundations/genetics/classical/holdings/m/hc-bm-31.pdf

3)Ray Spangenberg  and  Diane Kit Moser  著,  大坪 久子 (翻訳)  「ノーベル賞学者バーバラ・マクリントックの生涯 動く遺伝子の発見」  養賢堂 2016年刊

4)B. McClintock., A correlation of ring-shaped chromosomes with variegation in zea mays., Natl. Acad. Sci. USA, vol.18, no.12, pp. 677-681 (1932)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1076312/pdf/pnas01740-0003.pdf

5)Lillian V. Morgan., Correlation between shape and behavior of archromosome., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 12., pp.180-181 (1926)
http://www.pnas.org/content/12/3/180

6)Famous scientists. Barbara McClintock.,
https://www.famousscientists.org/barbara-mcclintock/

7)Barbara McClintock, The origin and behavior of mutable loci in maize., Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol. 36,  pp. 344-355 (1950)

8)Spradling AC, Rubin GM,  "Transposition of cloned P elements into Drosophila germ line chromosomes". Science. vol. 218 (4570): pp. 341–347. (1982)
Bibcode:1982Sci...218..341S. PMID 6289435. doi:10.1126/science.6289435.

9)Rubin GM, Spradling AC, "Genetic transformation of Drosophila with transposable element vectors". Science. vol. 218 (4570): pp. 348–353. (1982)
Bibcode:1982Sci...218..348R. PMID 6289436. doi:10.1126/science.6289436.

10)N. Fedoroff, S. Wessler, and M. Shure, Isolation of the transposable maize controlling elements Ac and Ds., Cell vol. 35, pp. 235-242 (1983)

 

 

 

 

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2017年9月18日 (月)

「バーバラ・マクリントックの生涯-動く遺伝子の発見-」

1「バーバラ・マクリントックの生涯-動く遺伝子の発見-」 Ray Spangenburg and Diane Kit Moser 著、大坪久子他訳 養賢堂 (2016)

読んで損したわけではなく、ほぼ私の目的は果たしたのですが、内容に非常に気になったところがあったので、ひと言述べたくなりました。

この本ではマクリントックの仕事の前奏曲として、メンデルやモーガンの仕事は詳しく解説しているのですが、メンデルの法則の裏付けをとったウォルター・サットンの仕事が全く無視されていて、ひと言も触れられていません。

サットンが遺伝の物理的実体が染色体であるという「染色体説」を発表した重要な論文を最初に出版したのは1902年で、これはマクリントックの生年でもありましが、巻末の年表にすらサットンの名前はありません。彼こそ方法論的にもマクリントックの研究の先駆者として記載すべきではないでしょうか?

こんなアンフェアーな本を書いた著者達がどんな人物なのか見てみようと思ったら、どこにも略歴すらありません。養賢堂はメールのひとつでも出して、本人に問い合わせる努力もしていないのでしょうか。あきれます。さらに訳者の大坪氏は5ページもの長文の訳者後書きを書いていますが、著者については何も書いていません。1987年に出版された「動く遺伝子-トウモロコシとノーベル賞」 エヴリン・フォックス・ケラー著 石館三枝子他訳(1987年)との関連についても言及していません。

理由は違いますが、科学の本でこんなに読んでいて不愉快な気分になったのは、アンドリュー・パーカーの「眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く」(草思社 2006)以来でした。

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2017年9月17日 (日)

リーガ・エスパニョーラ2017~2018 第4節: 岳のゴラッソをデニスとパウリーニョがひっくり返す

Braugranaコリセウム・アルフォンソ・ペレスでヘタフェとの対戦。ここは1万7千人しかはいらない、こじんまりとしたスタジアムです。岳が所属しています。

バルサはミッドウィークにユベントスとゲームがあって(3:0で勝利)お疲れムード。WOWOWではローテーションはないと言っていましたが、私はデウロフェウ→デンベレ、セメド→セルジはローテションだと思います。私ならイニエスタとラキティッチも休ませて、デニス・スアレスとパウリーニョを出したいところですが、バルベルデはそこまではやりませんでした。スアレス・メッシ・ブスケツ・アルバの4人は、バテバテになるまで基本的にローテーションはしないのかな? CBはウムティティとピケです。

ヘタフェは1トップのホルヘ・モリーナ中心のチーム。岳はなんとシャドーストライカー役で出場。左アマト・右ファジル、マルケルとアランバリのダブルボランチにDFはアントゥネス・カラ・ジェネ・ダミアン、GK:グアイタ。

バルサは全体的に動きが悪く、ヘタフェペースのスタートでした。10分にはピケがエリアぎりぎりでダイビングして相手をつかむという情けないプレー。16分には左からの岳のクロスをピケが手ではじいて、レフェリーによっては一発レッドもあるかという危険なプレーで肝を冷やしました。イエローでもすでにひとつもらっていたのでもらったら退場のところでした。手が体に完全にはついていなかったので、バルサにとってはラッキーでした。

27分にはデンベレが誰もバルサ選手がいないところにヒールキックして故障発生。お休みのはずだったデウロフェウに交代です。バルサが惜しかったのは32分、イニエスタの浮き球をウムティティが頭で合わせましたが、グアイタの正面でした。39分には岳がエリア外から美しいボレーを決めて、バルサ大ピンチのまま前半終了。柴崎岳は歴史に名を残すことになりました。クールな岳らしいゴールでした。

後半イニエスタをデニス・スアレスに代えると、デニスは非常に元気で動きが良く、バルサを牽引してくれました。しかも岳は足痛でピッチに倒れ込み交代です。

17分バルサは右サイドでデウロフェウとセルジが頑張って、デニスにラストパスが供給されゴール。やっと追いつきました。37分にはあわやセルジのオウンゴールかというピンチがありましたが、カウンター攻撃でメッシからラキティッチと交代して出ていたパウリーニョにパスが通って、パウリーニョがジェネをフィジカルで突破して決勝ゴール。なんとか1:2で勝利。この勝利はバルサの動きが重い試合だっただけに拾いものでした。バルベルデの好采配と言われていますが、私に言わせれば「最初からデニスとパウリーニョを出しとけよと」ですね。

中2日でエイバル戦がありますが、バルベルデがどんな選手をスタメンで起用するのか興味津々です。

https://www.youtube.com/watch?v=waevuR1pIfc
https://www.youtube.com/watch?v=tUGnRmDdS5g
https://www.youtube.com/watch?v=QGEt1UctaO4

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2017年9月14日 (木)

ある文民警察官の死

1024pxgraf_pol_pot文化庁芸術祭賞の昨年度の審査過程の興味深い記事が東京新聞のサイト(2017年9月9日)に出ていました。

引用
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昨年十二月上旬、全作品を見た各審査委員が受賞作を決めるため、文化庁内で「ある文民警察官の死」の評価を話し合っていた際、事務局の文化庁芸術文化課の職員が「国からの賞なのに、国を批判するような番組を賞に選ぶのはいかがなものか」との趣旨の発言をした。

職員に審査権限はない。複数の審査委員から「それは違う」とその場で異議が上がり、最終的に優秀賞の一つに選ばれた。

作品はNHK大阪放送局の「NHKスペシャル ある文民警察官の死~カンボジアPKO23年目の告白」。一九九三年、岡山県警の高田晴行さん=当時(33)=が武装ゲリラに襲撃され死亡した事件を、隊員らの証言や手記などから丹念に検証した。
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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017090990070732.html

このドキュメンタリーは私も見ました。カンボジアの国連PKOに狩り出された警察官が現地があまりにも危険なため、個人でマシンガンを購入して移動中にゲリラと撃ち合いになり死亡したという話です。これは日本政府が武器を携帯させなかったという問題もありますが、現地の国連関係者の認識が甘すぎたこともあります。私も彼らの立場なら、武器を購入したと思います。

生死に関わることなので、国連や政府がどう言おうが臨機応変に対応すれば良いことだと思いますが、そうして複数の人間がマシンガンを保有していても、襲撃で被害が出たわけですから、それだけ危険な場所だったということなのでしょう。このような場所でPKOを行うのは尚早だったと思いますし、やるなら完全武装で行うべきだったでしょう。PKOは国連の予算で行なう国連の活動であり、責任は基本的に国連にあります。

多くの人は知らないと思いますが、ホー・チミン勢力がカンボジアに浸透するのを恐れて、米国はプノンペン周辺をB52で無差別爆撃し、数万人の市民が殺害されました。1965年から1973年の間に米国がカンボジアに投下した爆弾は270万トン以上で、これは連合国が第二次世界大戦で投下した総量より多かったそうです(1)。

しかしようやくできた反米ポル・ポト政権はたちまち堕落していき、反対派を虐殺するようになっていきました。その後ポル・ポト派は辺縁に追いやられ、国連が現地を平定するためにPKOを発動していたわけです。そのような背景で起きた事件でした。

みんなが忘れた頃に、このような番組で問題提起してくれたNHKに目を見張りました。確かにこれは、日本の部隊が戦後初めて撃ち合いの実戦を経験した機会だったのでしょう。

1)舟越美夏 「人はなぜ人を殺したのか ポル・ポト派、語る」 毎日新聞社 (2013)

(写真はポル・ポトの墓 ウィキペディアより)

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2017年9月12日 (火)

愚かな国

A1380_000522太平洋戦争前にも日本には優秀なシンクタンク「総力戦研究所」があって、米国と開戦すれば日本は4年で戦闘能力を失って無条件降伏せざるを得なくなり、満州はロシアに占領されるだろうというシミュレーションを天皇・陸海軍に上奏していたそうです。

結果はシミュレーションの通りになりました。

私達戦争を知らない世代が戦争を語るには、下記の映像は見ておく必要があると思います。

なぜならば、私達日本人のDNAは戦前も戦後も同じなので、本能的に判断するなら昔と同じことをやってしまう可能性が高いからです。

【太平洋戦争】なぜ、負けた? 

① ガタルカナルの戦い
https://www.youtube.com/watch?v=YbTL74D5UlI

② インパール・コヒマの戦い
https://www.youtube.com/watch?v=XjJ8onQqHa8

③ レイテ・ルソンの戦い
https://www.youtube.com/watch?v=nXZ0QZFa7IE

絶対に勝てなかった大東亞戦争

① ゼロ戦の構造的な欠陥とは?
https://www.youtube.com/watch?v=mmSa7oS_i-Y

② 総力戦とは? 大日本帝国の弱点「海上輸送網」とは?
https://www.youtube.com/watch?v=zgD05ICdA54

③ マリアナの七面鳥撃ち「あ号作戦(マリアナ沖海戦)」とは?
https://www.youtube.com/watch?v=TFfp4P7C41k

【第二次世界大戦】なぜ、始めた?

①「国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)ヒトラー総統の誤算」
https://www.youtube.com/watch?v=fpanf_MJvZ8

②「アメリカ合衆国の参戦」 ~日本は嵌められたのか?~ 
https://www.youtube.com/watch?v=Wy2W8OyTfww

③「日本帝国の参戦」~真珠湾への奇襲はアメリカの罠だったのか?~
https://www.youtube.com/watch?v=XqWZ_1b7kvo

東條陸軍大臣がシンクタンクのシミュレーションに対して述べた意見(ウィキペディアより)

「諸君の研究の勞を多とするが、これはあくまでも机上の演習でありまして、實際の戰争といふものは、君達が考へているやうな物では無いのであります。日露戰争で、わが大日本帝國は勝てるとは思はなかつた。然し勝つたのであります。あの當時も列强による三國干渉で、やむにやまれず帝國は立ち上がつたのでありまして、勝てる戰争だからと思つてやつたのではなかつた。戰といふものは、計畫通りにいかない。意外裡な事が勝利に繋がつていく。したがつて、諸君の考へている事は机上の空論とまでは言はないとしても、あくまでも、その意外裡の要素といふものをば、考慮したものではないのであります。なほ、この机上演習の經緯を、諸君は輕はずみに口外してはならぬといふことであります。」

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2017年9月11日 (月)

リーガ・エスパニョーラ2017~2018第3節: マニータでエスパニョールを木端微塵

Braugranaカタルーニャ州議会は独立を問う住民投票を実施するための法案を可決し、10月1日に投票が決まりました。スペイン政府はもちろん認めていないので、衝突は避けられません。カタルーニャは風雲急を告げています。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017090701000846.html

そんな騒然たる世情の中でのバルセロナダービー@カンプノウです。アラベス戦ではFWが左デウロフェウ、右ビダルという首をかしげるようなスタメンのバルサでしたが、今回はスアレスが戻ってきたこともあって、スアレス左、デウロフェウ右の納得のFWです。左イニエスタ・中央メッシ・右ラキチッチのMF。中盤底はブスケツ、DF:アルバ・ウムティティ・ピケ・セメド、GK:テア=シュテーゲン。

右SBのセメドがなかなかいいので、セルジはどうみても第一の選択肢ではないと思います(今日は負傷欠場)。セルジはMFとしてパウリーニョ、アンドレ=ゴメスあたりと競争した方がよいのではないでしょうか。メッシ引退後はトップ下はセルジかな。セメドは突破してクロス狙いではなく、たいていデウロフェウをサポートする感じで攻撃参加してくるのが好ましい。この2人はセットで考えたいですね。

エスパニョールはモレノ、ピアッティ中心の攻撃陣で、レオ・バチストン、ダルデールあたりがからんできます。

26分、実はオフサイドのメッシにラキティッチから縦パスが決まってゴール。この試合はどうもバルサに有利な判定が多く、カタルーニャのムードを反映しているような印象を受けました。エスパニョールはレアルを冠しているので(Reial Club Deportiu Espanyol de Barcelona )、独立派には受けが良くありません。

どうもこの試合からバルサはひとつの変更を決断したようです。それは左からのFKはメッシではなくスアレスが蹴ることになったみたいです。今日はすべて失敗しましたが、これは歓迎できます。35分アルバが左に突入してうまく折り返し、メッシがゴール。2:0です。エスパニョールは43分ピアッティがミドルを打ちましたがポストに跳ね返されました。

ハーフタイムの後、6分にアルバがトラップミスをして、またピアッティがシュートしましたがはずれました。12分にはカタールから帰還したセルヒオ・ガルシアに代えられてしまいました。

後半21分にはスアレス→アルバ→メッシと正3角形のパスが決まって、メッシがハットトリック達成です。さらに42分にはCKからピケが頭で合わせて4点目。45分にはイニエスタに代わって出ていたアンドレ・ゴメスから、初登場のデンベレにスルーパスが通り、デンベレからのグラウンダークロスにスアレスが合わせてマニータ達成です。

デンベレはドルトムントに足許を見られて巨額のトレードマネーで獲得した選手。どれほどの者かと思いましたが、まあ使えそうです。ただし右はデウロフェウがいるので、今日のように右FWなら完全に控え。スタメンで使うならネイマールのポジションだと思います。このポジションで活躍できるかどうかが鍵です。

https://www.youtube.com/watch?v=y8djMuI8wnk
https://www.youtube.com/watch?v=s2L3bW26zKE
https://www.youtube.com/watch?v=U1cIFzhCdOA

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2017年9月10日 (日)

大野-都響のハイドン「天地創造」@東京芸術劇場2017年9月10日

Imga池袋芸劇でハイドンの「天地創造」です。ずいぶん雨天が続いた今年の夏でしたが、なんと矢部ちゃんがコンマスで晴れ。サイドは四方さん。都響としてはめずらしく、1Vnの隣がVla、2Vnは対面です。

スクリーンがないのでどうするのか心配していたら、なんと正面のリフレクションボードに歌詞を直接投射とは(幻灯か!)。これは見にくかった人もいたのではないでしょうか? まあ手抜きでしょう。客席はほぼ満席の盛況でした。

オケも合唱(スウェーデン放送合唱団)も良い感じではじまりました。ラファエルのヘンシェルはちょっと迫力不足かな。ソプラノ(林正子)とテノール(吉田浩之)は快調です。

後ろの列の子供がうるさくて誰かが注意したら、母親におこられて泣き出してしまいました。後半は親子の姿が見えませんでした。誰かがクレームをつけたのか、周辺の聴衆に対して、係員が音をたてないよう休憩時に注意に来ましたが、事情を知っていたらそんなことしませんよね。

大野-都響-スウェーデン放送合唱団は完成度の高い演奏、特にシーン4第4場(月と星の創造)が繊細な美しさで素晴らしいと思いましたが、休憩前の拍手が思いの外まばらで、合唱団が帰りかけたところで指揮者・ソリストが出てくるというチグハグもありました。

神による天地創造がテーマなわけですが、鳥や獣はいろいろでてくるのですが、昆虫は昆虫という集合名詞でひとくくり、魚類の代表はリヴァイアサンというらしいですが、これはどうも鯨らしくて哺乳類という奇妙。両生類は無視ですか? 19曲目で休憩になりました。

後半は元気の良い音楽で、アダムとイブの場面はもう完全にオペラ風。大野の美学で彫琢・整理された盛り上がりという感じでしょうか。でも何か立派すぎて・美しすぎて、聴衆の燃焼度は80%というのが大野-都響の限界のように思われます。

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2017年9月 8日 (金)

やぶにらみ生物論86: PCR

PCRとはポリメラーゼ・チェイン・リアクションの略称で、「科捜研の女」などでもお馴染みですが、痕跡的なDNAを大量に増やす方法です。本題に入る前に、少し歴史的経緯をみてみましょう。

ところで一般には大腸菌くらい簡単に培養できるのだろうと思われがちですが、昭和時代にはそういうわけにはいきませんでした。私が学生時代、同じ建物に微生物学教室がありましたが、そこには宇宙船のハッチのようなものがあって、中に入ると数人が作業できるような部屋があり、各種実験器具、培地、シャーレ、Lブロス、ピペットなどが大量に積み重ねられていました。これは高温高圧で滅菌作業をするボイラー室でした。

空気中には雑菌が浮遊しているので、これらを芽胞を含めて完全に死滅させるには高温高圧(たとえば121℃、20分)で処理しなければいけません。そのためにはボイラー室を用意して、資格を持った技術員を雇用しなければなりません(1)。実験は普通の実験台ではできず、クリーンベンチという、外から雑菌が流入しないよう空気の流れをコントロールした、巨大な無菌ボックスの中に手を突っ込んで行わなければなりません。現在では実験器具はすでに企業で滅菌した使い捨て製品を買って使う場合が多く、このてのプラスチック製品は使った後棄てるだけなので、よほど特殊な実験でなければボイラー室を使うことはなく、廊下の隅にでも置けるようなオートクレーヴ装置で事足ります(2)。

ですから当時の生命科学研究者にとって、大腸菌にプラスミドを入れて遺伝子を増幅させるという作業は、微生物学の研究室以外ではじめるには大きな壁がありました。増幅させたいのはDNAという化学物質なので、なんとか試験管で酵素を使ってやりたいと思うのは当然です。そこに登場したのがマリス(図1、Kary Banks Mullis)でした。

マリスはカリフォルニア大学バークレイ校で学位を取った後、カンザス大学の小児心臓病研究室のポストドクになり(1972年)、1975年までに2度離婚して仕事も辞めバークレーに舞い戻りました。バークレーでは最初の妻が経営するコーヒーショップで店長をやっていたそうです(3)。そんなある日、バークレー校時代の友人であるトーマス・ホワイト(図1)と再会し、ホワイトの紹介でカリフォルニア大学サンフランシスコ校のポストドクになり、脳研究をはじめました。しかしそこも結局すぐにやめてしまい、困ったホワイトは自分が幹部社員であるシ-タス社に、技術員としてもぐりこませることにしました(3、4)。

A_9


マリスは著しく協調性を欠く性格で、会社でまわりと衝突をくりかえすやっかいものでしたが、ホワイトはあえてDNA合成室長に抜擢しました。ここでマリスはDNA合成自動化装置の製品化で貢献して、ようやく会社での自分の立場を確立しました。そうして1983年、有名な出来事が起こります。文献4の記述を引用します。

In 1983, while driving along the Pacific Coast Highway 128 of California in his Honda Civic from San Francisco to his home in La Jolla, California, USA, Kary Mullis was thinking about a simple method of determining a specific nucleotide from along a stretch of DNA. He then, like many great scientists, claimed having a sudden flash of inspirational vision. He had conceived a way to start and stop DNA polymerase action and repeating numerously, a way of exponentially amplifying a DNA sequence in a test tube(4).

ドライブ中に突然あるアイデアが浮かんだというわけです。それはPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)法の根幹となるすばらしいアイデアだったのですが、マリスは相変わらず喧嘩をくりかえし、アイデアが採用されるどころか「早くクビにしろ」という多くの研究員からの要請がホワイトのもとに届く有様でした。

ホワイトはそのアイデアを評価しましたが、実験が下手くそな上に室員との折り合いも最悪なマリスにまかせておいてはどうにもならないと考え、マリスを棚上げして、彼のアイデアを実現するプロジェクトを別の研究室で立ち上げました。そうしてからはランディ・サイキとスティーヴン・シャーフという優秀な研究者達が中心となって、順調に仕事は完成しました。

論文のファースト・オーサーはマリスで、マリスがまとめる予定だったのですが、さっぱり論文を書かないので、結局1985年にサイキ(5)、1986年にシャーフ(6)が論文を書くことになりました。マリスがやっとこさ論文を書いたのはオリジナルペーパーというより実験技術の本で、1987年になってしましました(7)。そこまで待っていたらシータス社は特許をとれなかったでしょう。それでもマリスは1993年にノーベル化学賞を単独で受賞しました。

ここでPCR法の基盤となるDNAの性質を簡単に述べます。DNAの二重鎖は高温(図2では94℃)で解離し一重鎖となります。ゆっくり低温にもどすとアニーリングがおこって、再び二重鎖が形成されますが、急速に温度を下げると長いDNA鎖はアニーリングをおこしにくく、短いプライマーを投入すると優先的にDNA鎖に結合することができます。

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そこで50℃~60℃に急冷した後、プライマーを大過剰に投入してDNAと結合させます(図3)。

A_11


次に72℃に温度を上げて高分子DNAのアニーリングを阻止しながら、DNAポリメラーゼと基質を投入してDNA合成を行わせます(図4)。この温度でDNA合成を行わせるには、後述のTaqポリメラーゼという特殊な耐熱性のDNAポリメラーゼが必要です。

A_12


もともと生物が出現しはじめた頃の地球は高温で、当然その頃の細菌・古細菌は好熱性だったわけです(8)。そして現在でも一部の真正細菌や多くの古細菌は温泉などの高温環境で生活しています。しかしはるか昔の地質時代とはことなり、現在は芽胞という熱に強い特殊な仮死状態で生きている生物も多く、そのような生物では酵素がすべて耐熱性とは限りません。

トーマス・ブロックとハドソン・フリーズ(図5)はそんななかから、Thermus aquaticus という至適増殖温度が70℃~72℃の真正細菌を分離しました(9)。これは当時としては驚異的な高温で生育する生物でした。しかもこの温度はPCR法を実行する上で都合の良い温度でした。

アリス・チエン(図5、現アリス・チエン・チャン)は Thermus aquaticus からDNAポリメラーゼを抽出・精製し、これは後に学名の頭文字から Taqポリメラーゼと名付けられました(10)。ブロック、フリーズ、チエンらはこんな面白いめずらしいものがあるよというような感覚で研究していたと思いますが、これが20世紀でも指折りのイノベーションになるとは、全く予想していなかったでしょう。科学の進展は思わぬところからやってくるというのは、このブログでも繰り返し述べているところです。

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通常のDNAポリメラーゼを使ってPCR法をやろうとすると、37℃でDNA合成を行わなければならず、この間にもとの巨大分子であるDNAのアニーリングで効率が下がり、さらにまずいことに94℃に温度をあげるとDNAポリメラーゼは失活します。そうすると1サイクルごとに酵素を新たに添加することが必要で、かつだんだん効率が悪くなるわけです。こんなところが誰もPCRなどということを考えなかった理由なのでしょう。

しかしTaqポリメラーゼを使うと状況は一変します。72℃で絶好調、94℃でも失活しないので酵素の添加は不要ですし、72℃の反応では長鎖DNAのアニーリングはおこらないので、効率も落ちません。つまり温度をたとえば 96℃→56℃→72℃→96℃→56℃→72℃→ というように繰り返し変化させるだけで、魔法のようにDNAが増幅されていきます(11)。このようなことを考えると、マリスが単独でノーベル賞を受賞したことには疑問が感じられます。

図6をみていただくと2サイクル目で、目的のDNAが1本鎖だけですが(緑)生成されていることがわかります。図7の3サイクル目では8本生成される二重鎖DNAのうち、2本が目的DNAの二重鎖です(緑x2)。いったん二重鎖目的DNAが生成されると次のサイクルではその二重鎖DNAが複製されます。こうして4サイクル目には16本生成される二重鎖DNAのうち8本が目的の二重鎖DNAとなり、サイクルが進むにつれて目的DNAの純度は上がって、最終的にはそれ以外のDNAは無視できるくらいの%になります。

図6、図7をじっくりとよく眺めてください。最初は様々なDNAが合成されますが、同じことを繰り返しているうちに目的のDNAが自動的にメインになっていく。そう、まるで魔法のようなギミックに茫然とします。

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先輩からはこのPCRの作業をやるために、何時間トイレを我慢したというような話を聞かされました。3つのウォーターバスを用意して、それぞれ96℃、56℃、72℃に設定し、やることと言えば、時間が来ると試験管をあっちからこっちのバス移動させるだけの作業を延々と繰り返すだけなのです。お疲れ様。

しかし当然2~3年もすれば自動的に移動させる装置が発売され(図8A)、さらに同じ試験管の液体を極めて短い時間で温度変化させる新機軸の開発もあって、やがて水槽は不要となり、極めて小型の装置で作業を行えるようになりました(図8B)。現在では生成したDNAをモニターできるような光学系を装備したリアルタイムPCR装置が主流となっています(図8C)。

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PCRが普及することによって、バイオテクノロジーの研究室や工場のみならず、科学捜査や感染微生物の同定など社会の様々な場面で、この技術が利用されるようになりました。本物のジュラシック・パークも開園できるかもしれません。

ひとつ気をつけなければならないのは、もとのサンプルに微量のDNAが混在していた場合、それも増幅されてしまうということです。生成物を電気泳動法などで解析すれば、何種類のDNAが生成されたかわかります。エラーで実験失敗程度なら笑えますが、科学捜査の失敗や、思わぬ病原遺伝子の増幅などということがおこればしゃれになりません。

参照

1)https://www.sat-co.info/boiler-engineer

2)http://www.zetadental.jp/category-1888-b0-%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%96.html?_ad=1&gclid=EAIaIQobChMIx5K-37OK1gIVywcqCh11wg9bEAAYASAAEgKsi_D_BwE

3)野島博著 「分子生物学の軌跡」 化学同人 (2007)

4)Ma Hongbao, Development Application of Polymerase Chain Reaction (PCR), The Journal of American Science vol. 1, no. 3, pp.1-47 (2005)

5)Randall K. Saiki, Stephen Scharf, Fred Faloona, Kary B. Mullis, Glenn T. Horn, Henry A. Erlich, Norman Arnheim. "Enzymatic Amplification of β-globin Genomic Sequences and Restriction Site Analysis for Diagnosis of Sickle Cell Anemia" Science vol. 230 pp. 1350-1354 (1985).
http://www.sciencemag.org/site/feature/data/genomes/230-4732-1350.pdf

6)SJ Scharf, GT Horn, HA Erlich "Direct Cloning and Sequence Analysis of Enzymatically Amplified Genomic Sequences" Science vol. 233, pp.1076-1078 (1986).

7)Mullis KB and Faloona FA  "Specific Synthesis of DNA in vitro via a Polymerase-Catalyzed Chain Reaction."  Methods in Enzymology vol. 155(F) pp. 335-350 (1987).

8)http://morph.way-nifty.com/lecture/2016/09/post-1be1.html

9)Brock, Thomas D.; Hudson Freeze (August 1969). "Thermus aquaticus gen. n. and sp. n., a nonsporulating extreme thermophile". Journal of Bacteriology. American Society for Microbiology. 98 (1): 289–297. PMC 249935 Freely accessible. PMID 5781580.

10)A Chien, D B Edgar, and J M Trela., Deoxyribonucleic acid polymerase from the extreme thermophile Thermus aquaticus. J Bacteriol. 1976 Sep; 127(3): 1550–1557.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC232952/

11)RK Saiki, DH Gelfand, S Stoffel, SJ Scharf, R Higuchi, GT Horn, KB Mullis, HA Erlich.,  Primer-directed enzymatic amplification of DNA with a thermostable DNA polymerase.,  Science  29 Jan 1988: Vol. 239, Issue 4839, pp. 487-491DOI: 10.1126/science.2448875

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2017年9月 7日 (木)

大学ランキングで日本の大学は低迷

A0001_001832恒例の大学ランキングが発表されました。

The World University Rankings 2018
(Times Higher Education こちら)

私は前から日本が生きる道は、「移民」と「科学技術のイノベーション」しかないと言ってきましたが、どちらも進展していません。

日本の大学でランキング100位内にはいっているのは東大と京大だけで、完全に中国に抜き去られました。このまま安倍政権が続くと、日本の大学は窒息し、さらなる沈没は避けられません。これが大学法人化をはじめとする「政権と文部科学省」がすすめてきた政策の結果です。

=====
27位 北京大学
31位 清華大学
44位 香港科技大学
46位 東京大学
58位 香港中文大学
74位 京都大学
=====

参考

1.佐和隆光(滋賀大学学長)国立大学法人化の功罪を問う 
http://www.jbaudit.go.jp/koryu/study/mag/pdf/j44d01.pdf

2.国立大学がいま大変なことになっている
http://tanshin.cocolog-nifty.com/tanshin/2014/05/index.html
http://tanshin.cocolog-nifty.com/tanshin/2014/10/post-db3f.html

3.全国の国立大学をこのまま国(文科省)の奴隷にしていいのか!
http://tanshin.cocolog-nifty.com/tanshin/2016/01/post-2122.html

Notes:

#経産省が推進した産業政策が失敗し、主要産業が中国・韓国・台湾に吸い取られてしまった。おまけに原発が耐えがたい重荷になってしまった。

#外務省は国境問題を何一つ解決できず、拉致問題も解決できない。米国にべったりくっつく以外にやることがない。

#財務省はアベノミクスのいかさま政策をやるしか能がない。国民の資産は企業にどんどん吸い取られている。

#文部科学省は大学の国家支配を進めて、大学を無力化している。

いいかげんにしてほしい。


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2017年9月 6日 (水)

北朝鮮の核兵器

1北朝鮮の核兵器がダメというなら、インド・パキスタン・イスラエルも含めてすべての核保有国は核兵器を廃棄すべきでしょう。

核兵器禁止条約に参加している国は120カ国以上ありますが(図の青で彩色されている国)、日本は参加していませんし、NATO加盟国も参加していません。

核兵器を廃止する方策はひとつだけあります。それは核兵器に反対する国家が非核コンソーシアムを結成して、核保有国と貿易を行なわないと宣言することです。

日本やNATO加盟国も当然コンソーシアムに参加すべきです。そうすれば核保有国は相当追い詰められるでしょう。おそらく英仏はその宣言が発せられる前に核兵器を廃棄するのではないでしょうか。

右翼的発想というのは、敵より強力な軍事力を持つという考え方が中心になっています。しかしそうなったら、敵は当然こちらより強力な軍事力をめざし、行き着くところはどこまでいっても終わらない核軍拡競争になることはサルでもわかるわけで、それをやろうとする人々は人類の敵であり、あらゆる地球上の生物の敵です。

核兵器禁止条約全文(日本語訳)

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-07-09/2017070905_01_0.html

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インクカートリッジ

プリンターのインクはすぐなくなるので、苦労するところです。

私のプリンターはキャノンMP980ですが、さまざまなメーカーのカートリッジを使ってきました。もちろん純正品が印刷の出来映えはベストですが、サードパーティーのものも「まあ使えるな」と言うものはあります。

たとえばトナーキングダムの製品 こちら

Imga

欠点は少しにじみが感じられるところですが、内々の業務連絡や個人の保管用としては問題ないと思います。何しろグレイまではいった6色セットで¥1,180というのは魅力です。これより安い製品もありますが、なんらかのトラブルが出る可能性が大きいと思います。

このToner Kingdom の製品の場合プリンターが止まったり、インク切れが表示されなかったことは今のところありません。

トナーキングダムはその名前のように、レーザープリンターのトナーが主力製品のようです。このインクは中国で製造しているようですが、そこそこ使えます。

他のユーザーの感想:

https://toaruhetare.net/3750

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2017年9月 2日 (土)

やぶにらみ生物論85: ベクター

ベクターというのはラテン語で運搬者という意味だそうです。分子生物学では主に遺伝子の運搬者という意味で使います。

これまでの話で明らかなように、制限酵素で切断したDNAは断点の周辺に相補的な構造ができるので、別々のソースから得た2本鎖DNAを同じ制限酵素で切った場合に、別々のDNAであっても自在に接続できることがわかりました。ここですぐに思いつくのは遺伝子を細胞に導入したいということです。それによって人工的な「進化」が可能になります。ところがDNAは簡単には細胞に入り込めません。これは当たり前で、DNAがどんどん細胞に入ってくれば代謝のバランスが崩壊して生命を維持することができなくなると思われますし、例え崩壊しなくても種という概念が成立せず、生物のあり方が地球上の生物とは全く異なることになるからです。

ひとつの遺伝子を細胞に導入するということは、未知遺伝子の機能をさぐるのはもちろん、「ある遺伝子を欠損した細胞に、もとのあるべき遺伝子を導入すると失われた機能が回復する」ということがわかれば、その遺伝子の機能を確認できるという目的も果たせますし、生物に新しい機能を付加するとか、細菌に有用なタンパク質を合成させるとか、遺伝子治療を行なうとかの野心的な目標も当然めざしたいわけです。

そこでスタンレー・コーエン、ポール・バーグ、ハーバート・ボイヤーらが目を付けたのがプラスミドというDNAです(図1)。これは生物が本来持っているゲノム以外に、独立に増殖する機能を持って住み着いているDNAで、原核生物には一般的に存在するものですが、酵母にも存在することが知られています。プラスミドは宿を借りているといっても、寄生虫のようなわるさはしませんし、むしろホストにとって有用な役割を果たしています。ですからホストによってメチル化されて保護されており、ファージのように分解されることがありません。この意味では真核生物における共生に近い関係だと思われます。

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例えばコリシンというプラスミドはホストには無害で他の細菌を殺す物質の遺伝子ですし、R因子プラスミドは薬剤抵抗性をホストに付与します。F因子プラスミドは線毛を作り出す遺伝子を持っており、線毛でF因子をもたない細菌をひきよせて接合状態をつくり、複製したF因子や他のプラスミドを送り込むことができます(図1)。

接合は線毛が作られなくてもおこり、R因子なども複数の方法で他の細胞に送り込むことができます。F因子が細菌本来のゲノムに組み込まれると、ゲノム自体が他の細胞に送り込まれることもあるので、これが細菌の有性生殖だとも言えますが、これは性をどのように定義するかによって考え方が変わります(1)。

ベクターに送り込みたい遺伝子を含むDNAを、その遺伝子の両側で制限酵素 EcoRI を使って切断すると、図2のように AATT---TTAA フラグメントができます。同じ酵素でベクターとして用いるプラスミドを切断して---TTAA  AATT---という断端を作成すれば、そこにアニーリングによってフラグメントを挿入することができます。

アニーリングというのは、もともと二重鎖を構成していたDNAが100°Cで変性して一重鎖になったとしても、60°Cくらいの温度を保つことによって、相補的な配列が水素結合をつくってもとの二重鎖にもどるという現象です。相補的付着末端一本鎖を持つ二本鎖DNA同士も、条件を最適化すれば同じメカニズムで付着末端同士で結合して、結果的に環状DNAをつくり、最後にDNAリガーゼで3’OHと5’Pをつないであげると、切れ目のない新しい環状二重鎖DNAを形成することができます(図2)。

この方法で、遺伝子をプラスミドに組み込むことができます。プラスミドは独自に複製を行うための複製開始領域を持っていますが、それ以外に抗生物質耐性のゲノムを持たせておきます。こうするとプラスミドを増やしたときにその抗生物質の存在下で細菌を培養すると、抗生物質耐性の遺伝子を持つプラスミドを取り込んだ細菌だけが抗生物質の影響を受けずに増殖するので、プラスミドを取り込んだ細菌を見つけやすくなります。図2ではテトラサイクリン耐性のプラスミドが用いられています。

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初期の組み換え実験に頻繁に用いられたベクターは、図3のようなものです。pBR322と名付けられましたが、pはプラスミド、BRは写真のボイヤーの研究室で働いていたポストドクの Bolivar と Rodriguez の頭文字をとったものです。さまざまな制限酵素でそれぞれ1ヶ所で切断されるように設計されています。抗生物質耐性領域に断点があると、そこが切断された場合耐性が失われるので、2ヶ所に抗生物質耐性領域があります。図3の場合アンピシリン(amp)とテトラサイクリン(tet)に耐性の領域左右にがあります。Eco RI またはNde I を用いた場合には、断点がこれらの領域の外なので、両方の抗生物質耐性領域が生きていることになります。

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遺伝子操作においては、しばしばDNAリガーゼという言葉が登場します。この酵素についてはこのブログでも何度か取り上げていますが(4、5)、基本的に図4Aの様に付着末端どうしがくっついた状態で、最終的に3’OHと5’Pを結合させて断点のないDNAを完成させる役割をもっています。図4Bのような平滑末端同士を結合させるのは苦手です。ところがヴィットリオ・スガラメッラ(6、図4)らは、T4ファージのDNAリガーゼはある条件で平滑末端を結合させることを発見したのです(7、図4B)。

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細胞内では、しばしばDNAの損傷や修復、ウィルスによるDNA合成などに伴って、不要なDNA断片が発生します。これらはすみやかにDNA分解酵素で分解してしまわなければいけません。このような浮遊するジャンクDNAを、非特異的に結合して巨大DNAにしてしまうような酵素はあってはならないものです。実際に細菌や真核生物はこのような酵素を保持しませんが、ファージの中になぜかこのような酵素を持つ者がいたわけです。平滑末端同士を結合できる酵素がみつかったことは、遺伝子組み換えの作業には福音でした。

例えば図5のように Eco RI による切断部位を1ヶ所持つ短い鎖長のリンカーDNA(青灰色)を作成しておき、この断片を研究したいDNA(黄緑色)の両端にT4リガーゼで接続して、その後 Eco RI で切断し、同様に Eco RI で切断したベクターとくっつけると組み換えDNAが完成します(図5)。こうして作成された環状組み換えDNAは、基本的にプラスミドと同じなので、大腸菌に挿入して大腸菌を培養すると、自然にベクターも倍々ゲームで増殖し、したがって目的のDNAを爆発的に増やすことができます。

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もうひとつ、奇妙な酵素について言及しなければなりません。それはターミナルヌクレオチジルトランスフェラーゼ(terminal deoxynucleotidyl transferase)という酵素で、名前が長いのでよく TdT という略称が使われます。この酵素は鋳型(テンプレート)非依存的にDNAを3’OHから延長するというユニークな機能を持っています。図6に示したように、1本鎖または2本鎖でも3’OHが突出したDNAを延長するのが得意ですが、平滑末端を持つ2本鎖の末端3’OHからの延長も可能です。5’Pが突出した2本鎖DNAの3’OHから延長するのは得意ではありませんが、不可能ではないようです。

この酵素はAGCTをランダムに付加していくので、DNAを合成することはできても複製することはできません。しかし実験室では基質としてdATPだけを与えることもできるので、こうするとTdTはAAAAAnのように、DNAの末端にホモポリマーを付加していくような形での反応を行わせることができます(図6)。そもそもなぜこんな奇妙な酵素が存在するのかということですが、哺乳類では抗体やT細胞抗原受容体の多様性を確保するために重要な役割を果たしているようです(8)。本来役に立たないはずの、障害を持った酵素が思わぬ用途で使われる・・・・・まさしく進化は「ケガの功名」を積み上げたものであることを教えてくれる酵素です。

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ポリAとポリTなど相補的ホモポリマーの親和性は高いので、これを利用して図7のように組み換えDNAをつくることができます。両端が平滑のDNAにまずポリAを結合させ、ベクターにはポリTを結合させてアニールすると、組み換えDNAが作成できます。ただAおよびTの数は同じにできないので、あとで調整が必要になります。予め塩基数が決まったホモポリマーを用意して、T4リガーゼで結合しても同様な実験ができます。制限酵素による切断部位からポリAとポリTを延ばすようにすれば、あとで制限酵素によって目的部位を切り出すこともできます。

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ここまで述べてきた組み換えDNA作成技術の前提となる大腸菌にファージやプラスミドを導入する技術は、1970年にハワイ大学のモートン・マンデルと比嘉昭子によって開発されました。彼らは制限能(免疫能)のない大腸菌を、低温下で塩化カルシウム処理すると、外界のDNA断片を菌体内に取り込ませることができることを証明しました(9、10、図8)。

外界DNAを取り込めるようになった細胞をコンピテントセルといいます。コンピテントセルに組み換え型プラスミドを取り込ませ培養すれば増殖させることができます。取り込まなかった細胞を排除するには、たとえばアンピシリン耐性の遺伝子を持つプラスミドを取り込ませた場合、アンピシリンを培地に入れるとプラスミドを取り込まなかった細胞は死滅するので、取り込んだ細胞を選択することができます。

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モートン・マンデルと比嘉昭子の写真は、ウェブサイトを探しましたが残念ながらみつかりませんでした。彼らが先鞭を付けたトランスフェクション(遺伝子導入)の技術は現在にもひきつがれ、さらに哺乳動物細胞や個体への遺伝子導入の方法が盛んに研究されています。

プラスミドを使わずバクテリオファージやウィルスを用いた遺伝子導入の手法があります(11)。ラムダファージが最も有名です。ラムダファージのDNAはファージの殻の中では線状なのですが、両端にCOSという相補的な部位があり、大腸菌に感染すると環状化します(図9)。このDNAをベクター(コスミドベクター)として使いやすいように改変して使用します。

プラスミドと比べてファージ(ウィルス)ペクターの欠点は、ファージ(ウィルス)の殻の中は狭いので、長いDNAを組み込むとはいりきらなくなることです。このため増殖に必要がないファージの遺伝子の一部を切り取って短いベクターをつくり、ある程度長めの遺伝子でも組み込めるようにしてあります(図9)。ファージ(ウィルス)ベクターの利点は、トランスフェクションで苦労しなくても自動的にホストの細胞に侵入してくれることです。

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哺乳動物細胞への遺伝子導入については、未知遺伝子なら導入した遺伝子を発現させて機能を研究する、遺伝子発現を制御する機構について研究する、実験動物に変異遺伝子を発現させて遺伝病を発症させる、遺伝病の動物に正常遺伝子などを移入して治療するなどの研究が行われています。

遺伝子導入の方法はいろいろあって、タカラバイオのサイトから図10にコピペしておきます(12)。いろいろあるといっても、それは試験管の中での実験についての話であって、患者の遺伝子治療に使えそうなのは今のところウィルスベクターを使う方法しかありません。

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ウィルスの場合、ウィルスの中に目的の遺伝子を入れさえすれば感染によって自動的に細胞にはいるので、遺伝子移入は容易なのですが、問題は安全性です。ウィルスもどきが体内で増殖したり、炎症を引き起こしたり、遺伝子発現に影響を与えて病気になるのではお話になりません。

実際1990年代にはすぐにでも臨床に使えるような雰囲気でしたが、どうなったかというと、1999年にペンシルベニア大学で治療中の患者で、注入したアデノウィルスベクターによって全身性の炎症反応がおきて、患者が死亡するという事故が発生し(ゲルジンジャー事件)、さらに2002年にはフランスで2名の患者が白血病を発症するなどの問題がおきて(13)、一気に研究は停滞しました。フランスの事故の場合、レトロウィルスベクターが癌遺伝子の上流に導入されたために、癌遺伝子が活性化して発病したようです(14)。医師・研究者が前のめりになりすぎた結果だと思います。

とはいえ、最近再び遺伝子治療(疾病の治療を目的として遺伝子または遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与すること)の機運が盛り上がっており、2018年には遺伝子治療薬がはじめて認可されるようです(15)。まあ過大な期待はしないで見守りましょう(16)。

参考

1)プラスミドってなに? 
http://www.seibutsushi.net/blog/2008/07/513.html

2)Bolivar F, Rodriguez RL, Betlach MC, Boyer HW (1977). "Construction and characterization of new cloning vehicles. I. Ampicillin-resistant derivatives of the plasmid pMB9". Gene. 2 (2): 75–93. PMID 344136. doi:10.1016/0378-1119(77)90074-9.

3)Bolivar F, Rodriguez RL, Greene PJ, Betlach MC, Heyneker HL, Boyer HW, Crosa JH, Falkow S (1977). "Construction and characterization of new cloning vehicles. II. A multipurpose cloning system". Gene. 2 (2): 95–113. PMID 344137. doi:10.1016/0378-1119(77)90000-2.

4)ワイス博士の不遇 
http://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=17207703&blog_id=203765

5)岡崎フラグメント
http://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=86368774&blog_id=203765

6)Vittorio Sgaramella
http://www.scienzainrete.it/documenti/autori/vittorio-sgaramella

7)Sgaramella V, Van de Sande JH, Khorana HG., Studies on polynucleotides, C. A novel joining reaction catalyzed by the T4-polynucleotide ligase. Proc Natl Acad Sci U S A. 1970 Nov;67(3):1468-75. (1970)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/5274471

8)Edward A. Motea and Anthony J. Berdis, Terminal Deoxynucleotidyl Transferase: The Story of a Misguided DNA Polymerase.,  Biochim Biophys Acta. vol.1804(5):  pp. 1151–1166. (2010)  doi:  10.1016/j.bbapap.2009.06.030
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2846215/

9)Mandel, M. and Higa, A. (1970). “Calcium-dependent bacteriophage DNA infection”. Journal of Molecular Biology 53 (1): 159-162. PMID 4922220.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0022283670900513

10)Akiko Higa,  Morton Mandel, Factors Influencing Competence of Escherichia coli for Lambda-Phage Deoxyribonucleic Acid Infection., Japanese Journal of Microbiology, Vol. 16, No. 4,  pp. 251-257 (1972)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mandi1957/16/4/16_4_251/_article/-char/ja/

11)R. W. オールド、S.B. プリムローズ著 「遺伝子操作の原理」第5版 倍風館 (2000)

12)タカラバイオ 遺伝子導入実験ハンドブック
http://catalog.takara-bio.co.jp/PDFS/transgenesis_experiment.pdf

13)小澤敬也 遺伝子治療テクノロジーの開発とその応用 ウィルス vol.54, no.1, pp. 49-57 (2004)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv/54/1/54_1_49/_pdf

14)島田隆 日本の遺伝子治療の課題 (2013)
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=146735&name=2r98520000033pt6.pdf

15)市場調査レポート 2017年版 遺伝子治療薬の将来展望 Seed Planning
http://store.seedplanning.co.jp/item/9516.html

16)CAR-T療法 リンパ球バンク株式会社 (2016)
https://www.lymphocyte-bank.co.jp/blog/medicine/%EF%BD%83%EF%BD%81%EF%BD%92%EF%BC%8D%EF%BD%94%E7%99%82%E6%B3%95/

 

 

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2017年8月31日 (木)

W杯出場決定おめでとう

すばらしい日本代表の試合でした。守備でオーストラリアを圧倒していました。中盤を分厚くして、攻撃的なサッカーをしかけてきた相手に対して、常に囲んで自由にさせないという驚異的な守備は賞賛に値します。オーストラリアの攻撃は2つの口で吸い取られてしまいました。

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数年前にガンバの遠藤が、「チームの中心でボランチのあなたがいなくなったら、ガンバはどうするんですか?」 とインタビュアーに訊かれたときに、「大丈夫だよ、ユースに井手口というすごい選手がいるから」 と答えていたのを思い出しました。

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  >日本代表

  おめでとう そして

 merci beaucoup !

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2017年8月29日 (火)

ICBM (Intercontinental ballistic missile)

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北朝鮮から米国に向けて発射された ICBM が故障落下で日本に落ちてくることはないと思いますが、トランプが斬首作戦を実行しようとすれば、日米安保条約がある限りノドン・テポドン・ムスダンが日本に飛んでくる可能性は大です。

図のように、北朝鮮から米国に飛んでいくICBMを、日本の上空で打ち落とすことはできません。日本上空は通過しないので。今回はわざと日本の上空を通って、日本に打ち落とす能力があるかどうかを試したみたいですが、見事に撃ち漏らしました。

かといってイージス・アショアを導入すると、ポーランドの場合8億2千万ドルかかったそうで(1)、日本だともっともっとぼられそうです。日本の財政は破綻します。そんなことなら日米安保条約を廃棄したほうがよほど日本の安全保障には有効だと思いますがねえ。日米安保条約がなければ、少なくとも北朝鮮のミサイルは飛んできません。

1) http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50788821.html

テポドン音頭
https://www.youtube.com/watch?v=5jrYEzH9wD0

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2017年8月27日 (日)

リーガ・エスパニョーラ2017~2018: ツキのあるバルサ ともかく連勝

12017~2018シーズンのリーガ・エスパニョーラはかなり特殊です。左の地図をみてわかるように、特定の州にチームが偏っています。これ以外にカナリア諸島のラス・パルマスが参加します。

首都周辺に4チーム。バスクに4チーム。カタルーニャも3チームです。日本でこんなことがおこったら談合で拡大しそうですが、スペインは意外にガチンコな運営でいくようです。

今週のバルサはそのバスクのチーム、デポルティーボ・アラベスとの対戦。スタジアムはエスタディオ・デ ・ メンディソローサという収容人数が2万人に満たない小型の造り。しかし試合はと言うと、鋭いカウンターで攻撃してくる侮れないチームです。エンゾというジダンの息子がいて、今日も後半に出てきましたが、顔がそんなに似ていないのに、走り方がとても似ていて思わず笑ってしまいました。突破力のある選手だと思いました。

バルサは首をややかしげるようなスタメンです。FWは左デウロフェウ、右ビダル。まあこれはあり得ると思いましたが、右SBはセメドじゃなくてセルジ。緒戦ではセルジはMFで起用していたので、これは混乱しているとしか思えません。デウロフェウも左では実力の半分くらいにレベルダウンします。

MFはイニエスタ、メッシ、ラキティッチ、底はブスケツ。DFはアルバ・ウムティティ・ピケ・セルジ。SBが上がりすぎで、何度もカウンターでなだれ込まれて失点の危機となり、なんとかアラベス攻撃陣の失敗で0:0で前半終了。バルサのチャンスはメッシのPKでしたが、GKパチェコに止められました。

後半も早速カウンターでイバイに左を突破されて、ゴール前にクロスを上げられましたがマヌが間に合わずラッキーでした。11分に左のアルバからゴール前のメッシにパスが出て、とりあえずメッシがシュートしましたが、これがCBに当たって、GKがはじききれずゴール。

バルサはビダルを下げてパコを投入しましたが、パコが頑張りました。パコがカウンターで走って結局相手に球をとられたのですが、CBのクリア(するはず)ボールがパコの頭にふわりときて、直ちにメッシに落としてゴール。パコはツキを呼ぶ男となりました。

結果は0:2で勝利しましたが、バルサはまだまだコンビネーションがズレズレで、ネイマール、スアレス、メッシの個人技とコンビネーションに頼った(3人がいる以上そうするべきですが)サッカーが崩壊して慌てふためいている状態です。

最後にちょっとだけパウリーニョが出ましたが、やはりブスケツではなくイニエスタと交代しました。そうするんじゃないかと危惧していましたが、イニエスタの代わりに出るのなら、またまたコンビネーションを確立するのに時間がかかってしまうなあと思いました。都並の解説によると、パウリーニョの守備はブスケツとやり方が違うので、そう簡単にブスケツと交代で出場させるわけにはいかないそうです。やれやれ。

https://www.youtube.com/watch?v=Hg5rI7XWA6I

https://www.youtube.com/watch?v=OrJlqQW2Kis

https://www.youtube.com/watch?v=mRhbU4Dpcx4

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2017年8月25日 (金)

やぶにらみ生物論84: DNA塩基配列

フレデリック・サンガーという人(図1)の偉大さは驚異的です。なにしろ生物の主成分である核酸とタンパク質の構成単位(ヌクレオチドとアミノ酸)がどのように配列しているか解析する原理的に全く異なる方法を、両方とも開発したわけですから。彼はまずタンパク質を構成するアミノ酸の配列を解析する手法を開発し、1953年にインシュリンの全一次構造を明らかにして、1958年度のノーベル化学賞を受賞しています。

さらに彼の研究グループは、1977年にジデオキシ法によるDNAの塩基配列解析に成功し(1)、この業績によってサンガーは1980年に2度目のノーベル化学賞を受賞しました。同じ分野のノーベル賞を2回受賞した人は彼以外にはジョン・バーディーン(トランジスタの発明と超伝導理論で2回物理学賞を受賞)しかいませんし、他にノーベル賞を2回受賞した人はマリ・キュリー(物理学賞と化学賞)とライナス・ポーリング(化学賞と平和賞)のみです。

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ジデオキシ法のミソは、通常デオキシリボース5員環の2の位置はHで、3の位置はOHのデオキシヌクレオチジル3リン酸(dNTP)・・・・・の3の位置のOHをHに置換したジデオキシヌクレオチジル3リン酸(ddNTP、図2)を、DNA合成の基質に紛れ込ませることにあります。これまでにも何度も述べているように3の位置にOHがないと、DNAポリメラーゼは鎖を延長できません。したがって運悪くddNTPを取り込んだ場合、DNA合成はそこで停止します。

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ここでdATPにddATPを紛れ込ませたとしましょう。他の3種のデオキシヌクレオチドdTTP、dGTP、dCTPは純粋品でdd型を含みません。そうすると運悪くddATPを取り込んだ場合にだけDNA合成が停止します。従って停止した位置の鋳型の塩基はTということになります。図3の場合、3、9、15番目の位置で停止するのでその位置の鋳型DNAの塩基がTであることがわかります。反応を途中で停止した3種の短いDNA(左端が3’H)は、電気泳動法などによってサイズで識別します。

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新生DNAのサイズを識別するには、鋳型DNAと新生DNAを分離しなければなりません。これにはいくつか方法がありますが、図4のように尿素などを添加して2本鎖のDNAを結びつけている水素結合を引きはがすのが一般的な方法です。尿素は塩基と塩基同士より強力な水素結合をつくることによって、塩基同士の水素結合形成を妨害します。


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高濃度の尿素の存在下で図5のように通電して、DNA断片をポリアクリルアミドゲルの中に誘導すると、ポリアクリルアミドの架橋した立体構造の中で動きにくい高分子のDNA断片は遅く、動きやすい低分子の断片は早く移動し、図3の右図のように分離することができ、かつレファレンスと同時に泳動することによって分子量(鎖長)も決定できます(2、3)。DNAは酸性(マイナスチャージ)なので、電流とは逆方向に移動することになります。

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塩基配列決定を効率的に行うための技術開発は現在に至るまで活発に行われていますが、そのきっかけになったのはジデオキしヌクレオチドを蛍光物質で標識しておくという技術です。この技術を開発したのは誰なのかということに興味を持って少し調べましたが、ちょっと複雑な経緯があるので最後に述べます。実際にはサーモフィッシャーという会社で売っているBig Dye (4)などを使ってシーケンシングは実行されています。

4種のddNTPをそれぞれ別の蛍光色素で標識しておくと、同時にひとつの試験管で反応させても、色つきの生成物を分析すれば一挙に塩基配列が可能となります。さらに図6のようなオートメーションを使えば、簡単に塩基配列のチャートが入手できます。

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サンガー法ではDNAポリメラーゼという酵素を使うので、それなりの不安定性やエラーがあります。マクサム・ギルバート法では化学的に特定の塩基の部分でDNAを切断します。この方が安定性は高いのですが、たとえばギ酸を使用した場合、GとAの両方の塩基で切断されるなど特異性に問題がある(図7)ほか、使用する試薬はすべてDNAを切断する作用を持つ危険な化合物なので、現在ではほとんど使用されていません。

しかしこの方法を開発したウォルター・ギルバートは、フレデリック・サンガーと共に1980にノーベル化学賞を受賞しています。テクノロジーで授賞すると、それより便利なテクノロジーが出現した途端に使われなくなり忘れ去られるというリスクがありますが、ギルバートの場合もそれに近いような状況です。アラン・マクサムに至っては写真もみつかりませんでした。

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ジア・グオはサンガー法をさらに発展させました。彼はddNTPにとりはずしのできる蛍光色素を結合させ、さらに3’OHも付け外しができるようなシステムを開発しました(5、図8)。反応開始後最初に結合したddNTPを同定し、色を確認してから蛍光色素をとりはずして、さらに3’Hを3’OHにして次の反応を行うというプロセスを繰り返すことによって、理論的には無限の長さのDNAシーケンシングをオートメーションで行うことが可能となりました。

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もうすこし具体的に書けば

1)DNAの断片を作成し、断片末端にアダプターを結合させる。

2)PCR法(次回か次々回で述べる予定)で大量にDNA断片を複製したのち精製する。

3)DNA断片のアダプターを相補的配列を持つオリゴDNAで補足し、補足したDNAを増幅してクローンを作成する。

4)可変型蛍光標識ターミネータ(それぞれddNTPに代替する)4種を入れてフローセルでDNA合成を行わせる。

5)フローセル内でDNAクローンにとりこまれた最初のターミネータを蛍光励起法で同定する。

6)いったんDNA断片端の蛍光をはずし、3’OHを付けてDNA鎖を伸長させる。

7)4、5、6のステップを n回繰り返して、長さ n の断片のシーケンシングを実行する。

8)数百万個の断片を大量並列的に解析するので、高速でシーケンシングすることが可能になった。

9)各断片の塩基配列を、コンピュータを用いてアライメント(図9、後述)を行い、断片化する前の全DNAの配列を決定する。

10)DNAライブラリーごとに、別のアダプターを結合させておけば、3のステップでクローンごとにどのライブラリーのDNAか識別できるので、一気に複数のライブラリーのDNAを解析することが可能です。

ここでアライメントという言葉が出てきましたが、これはDNAシーケンシングで得られたDNA断片のデータをもとに、より長いDNAの塩基配列を決めるプロセスのことで、図9で説明しますと、5つのDNA断片セットをそれぞれサンガー法で解析して、より長い青色のDNAの全塩基配列が明らかになって、それをコンティグ1としますと、同様にコンティグ5までのデータを得て、それぞれの末端の配列を比較することによって各コンティグの並び方を決め、さらに長いDNAの配列を確定します。このような作業をアラインメントといいます。

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シーケンシングの技術は日進月歩で、イルミナ社の「次世代シーケンステクノロジーのご紹介」というパンフレットをみると、図10のような進歩の歴史が書いてありました(6)。

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新しい情報はオミックスクラブ(7)などで知ることができます。私が少し興味をひかれたのは、電子顕微鏡を用いたDNAシーケンシングで、この場合dNTPは重金属でラベルしておき、1本鎖DNAを視野にきれいに並べて、視野の広さ分の塩基配列を一気に読み取るというやり方です(8)。しかしサンプルを重ならないようきれいに並べるというのは、電子顕微鏡レベルでは非常に難しい技術で、成功寸前まで行きながら資金ショートで倒産した会社もあるようです。

ところでddNTPに4種の蛍光物質を結合させてシーケンシングを効率的に行うというアイデアはもともと伏見譲のアイデアで、1982年10月の第20回日本生物物理学会で発表されたそうです(9)。1983年に研究を実際に担当していた土屋政幸は修士論文を発表しました(9)。当然ネイチャーかサイエンスに発表すべき研究結果でしたが、伏見は十分な自信を持てないという理由でそれをしませんでした。それでも1983年に特許は申請しました。ところが1984年になって、当時の科学技術庁が「国から研究資金をもらっておいて、特許はないんじゃないですか」という横やりが入って、伏見は特許申請を取り下げるということになりました。結局カリフォルニア工科大学のグループ(Mike Hunkapiller, Tim Hunkapillar, and Applied Biosystems)が1984年に申請した特許が結局最終的に有効となって、伏見は完敗となりました(10)。

この話はこれで終わりではなく、このアイデアは Hunkapillar 兄弟のものではなく自分のものだという同じ研究室にいた人物が現れたのです。それは Henry Huang という人で、裁判をおこしましたが敗北しました(10)。そういうわけで、4種の蛍光物質でddNTPをラベルしてシーケンシングするというアイデアは誰のものなのかは霧の中で、特許だけが厳然と残るという結果になりました。

私は基礎研究に多額の公的資金が投入されているのは事実なので、当時の科学技術庁の横やりはもっともだと思います。特許争いに大きなエネルギーをそそぐくらいなら、さっさと公表して誰でも使えるようにしたほうがよいと思いますし、国際社会が基礎科学の分野では特許至上主義から抜け出すべきだとも思います。研究者は研究資金とポストで処遇されるべきでしょう。

これに対する反論は、研究者といえども前に特許というニンジンをつるしたほうが、一生懸命走るという考え方に基づいています。それはそうかもしれませんが、上記の理由の他、特許獲得には大きなエネルギ-が必要ですし、ダークな側面がつきまとうということも事実です。最後に伏見譲先生はこのような方です(11)。

参照

1)F. Sanger, S. Nicklen, and A. R. Coulson, DNA sequencing with chain-terminating inhibitors., Proc. Nati. Acad. Sci. USAVol.74, No.12, pp.5463-5467,(1977)
http://www.pnas.org/content/74/12/5463.full.pdf

2)Heike Summer, René Grämer, and Peter Dröge, Denaturing Urea Polyacrylamide Gel Electrophoresis (Urea PAGE).,  J Vis Exp.,  vol. 32., p. 1485. (2009)
doi:  10.3791/1485
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3329804/

3)Denaturing Polyacrylamide/Urea Gel Electrophoresis
https://tools.thermofisher.com/content/sfs/manuals/MAN0011970_Denaturing_PolyacrylamideUrea_Gel_Electrophoresis_UG.pdf

4)https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/4337455

5)Jia Guo et al, Four-color DNA sequencing with 3′-O-modified nucleotide reversible terminators and chemically cleavable fluorescent dideoxynucleotides, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,  vol. 105 (27), pp.9145-9150 (2008)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18591653

6)jp.illumina.com/technology/next-generation-sequencing.html

7)http://omics-club.blogspot.jp/

8)http://omics-club.blogspot.jp/2013/08/20130820.html

9)岸宣仁著 「ゲノム敗北 知財立国日本が危ない!」 ダイヤモンド社 (2004)
https://books.google.co.jp/books?id=IVRKAAAAQBAJ&pg=PT36&lpg=PT36&dq=%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E6%B3%95&source=bl&ots=c7UnsDbmjl&sig=3ssOCV3KUo0X6Hk0RbxgfyWqNdY&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjWkbvHtezVAhXKp5QKHXrIBc04ChDoAQhIMAc#v=onepage&q=%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E6%B3%95&f=false

10)https://plaza.rakuten.co.jp/cozycoach/diary/200412260000/

11)伏見譲 http://cpis.soken.ac.jp/Lab_note/Hushimi.html

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2017年8月23日 (水)

グルテンフリー

Photoグルテンはもともと自然に存在するものではなく、小麦などの穀物を水で練ると生成します。練ることによって、小麦胚芽の主成分であるグルテニンとグリアジンというタンパク質が結合して、人工的生成物であるグルテンが出来るわけです。

このグルテニンというタンパク質が難物で、その存在は19世紀から知られていますが、現在でも研究が難しいそうなのです。それは分子同士が適当に共有結合や非共有結合でくっつき、これがグルテニンという特定の構造を持たないタンパク質をつくるので、アバウトな研究しかできません。

しかもグリアジンもいくつか種類があるので、これとグルテニンが適当に結合するとなると、その組み合わせは無限に近い種類があることになります。

ですからグルテンアレルギーといっても、何が抗原になっているのかよくわかりません。おそらくいろいろなグレードがあって、弱い場合にグルテン過敏症といわれているのでしょう。特有の遺伝子をもった人がグルテンを摂取することによって病気が発症するといわれるセリアック病という難病も知られています。

グルテン関連病はグルテンを食べなければ症状はでません。そこで米の出番です。ビジネスチャンスは人の不幸にあります。医師も弁護士も例外ではありません。これが日本の農業復興の絶好のチャンスと米作農家が活気づいているそうです。テニスのジョボビッチも「グルテンフリーの食事」を実行しているようです。

米粉のパンもあるので、小麦を食べないからと言って異常な食事をする必要はありません(写真はその米粉パン-ウィキペディアより)。

山形大学の西岡研究室では、米粉100%のパンを製造することに成功したそうです。頼もしいお話ですね。しかもこの研究室は農業ではなく、プラスチックの研究室だということが驚きです。まさしく新発明というのは、どこから生まれるのかわかりません。

https://nishioka-lab.yz.yamagata-u.ac.jp/resarch/komepan.html

http://www.kami-shoku.com/kami_column/12302/

それにしても、ローマ法王庁がカトリック教会が聖体拝領で使用するパンとしてグルテンフリーのパンを認めない・・・というのはおかしな話です。その昔にはグルテンがパンにはいっているかどうかなんてわからなかったわけですから。

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2017年8月22日 (火)

リーガ・エスパニョーラ2017~2018シーズン開幕: デウロフェウらの活躍でベティスに勝利

Braugranaリーガ2017~2018シーズンが開幕しました。バルサとレアル・マドリーのプレシーズマッチでアクシデントがあり、スアレスが負傷。これはバルベルデ新監督にとっても大きな誤算で、予定していたフォーメーションがご破算になり頭が痛かったことと思います。

マドリーもCロナウドがレッドカードで退場になったのはまあいいとして、そのあとレフェリーに暴力をふるったということで、5日間の退場というのは大誤算だったでしょう。それにこの処分は、ただ背中を軽くたたいただけで悪意は全く感じない行為だったので、重すぎると思いました。レフェリーに触れるなという、ある種見せしめのような処分のようです。

カンプノウでの緒戦の相手はベティス。開始前にテロで亡くなった方々に黙祷が捧げられました。胸のマークが楽天ではなく、RAKUTENだったのはちょっと良かったかな。欧州の有力サッカーチームも中東や中国の企業家の支配下におかれるケースが増えましたが、彼らの伝統を破壊するようなことは謹んで欲しいと思います。

バルサの2トップはパコと出戻りデウロフェウになりましたが、デウロフェウが気の利いたプレーをしていたのに対して、パコはピントがずれている感じで、まだまだバルサに溶け込んでいるとは言えません。とてもネイマールの穴を埋めているとは言えません。

1点目はオウンゴールですが、デウロフェウのシュートが相手SB(トシュカ)をかすめたものです。2点目もデウロフェウから左MFで出場のセルジへのパスが決まって、セルジが流し込んだものです。

メッシはトップ下で右MFはラキティッチ。底はブスケツ。DFはアルバ・マスチェラーノ・ウムティティ・セメド。GKはテア=シュテーゲンです。新加入のセメドは動きが鋭く、行動範囲も広い感じで、攻撃参加も十分でした。ただしそれは前半の話で、後半はまあ2点リードしたということもあるでしょうが、消えている時間が長い感じがしました。

マスチェラーノはいったんセルヒオ・レオンに抜き去られてから、追いついて神セーヴというプレーがありました。これがバルサの勝因かもしれません。メッシは動きはよかったのですが、シュートをはずしまくりました。またパコやデウロフェウとのコンビネーションはよくありません。セルジはイニエスタの代わりとして十分な働きでした。メッシを通り過ぎるパスでデウロフェウにシュートを打たせるなど、時代の変遷を感じさせるプレーもありました。

ブスケツは好調で彼らしいプレーですが、でずっぱりになりがちで、交代要員がいなければ後半には必ずバテます。彼をどう大事に使うかがバルベルデの課題です。新加入のパウリーニョがどんな選手かよく知りませんが、ブスケツの交代要員として使えればベスト。

ベティスは攻撃陣を総入れ替えして臨みました。レオン・ナウエル・カラマサそれぞれ身体能力が高くていいところがありましたが、得点には至りませんでした。ホアキンも年なので、年間通してのトップ下は厳しいと思います。このチームも難しい課題がありそうです。

2:0でバルサが勝利しましたが、相手関係という感じは否めません。スアレスが帰ってくるまで、好調ならアルダとデウロフェウの2トップという手もあるかなと思いました。ちょっと面白かったのは、バルベルデが後半アレイシ・ビダルをFWで使ってきたことで、そういう手もあるのかと意表をつかれました。

https://www.youtube.com/watch?v=zt0DBmcJ_xE

https://www.youtube.com/watch?v=yC8pRcD4AVM

https://www.youtube.com/watch?v=QPKGKe4mqLE


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2017年8月20日 (日)

サラとミーナ189: 新タワーに定着

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ようやくサラが新タワーに定着し、居場所にしたようです。 前と同様最上段です。猫はビビリタイプほど上に行くようです。タワーの臭いもほぼ抜けました。

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ミーナは私のベッドで大あくび。ここがミーナの居場所で、夜は私と交代。



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2017年8月18日 (金)

西島三重子バースデイライヴ@原宿ラ・ドンナ2017年8月17日

Imga_2012_2原宿は別世界で、日本の街とは思えないくらい、街並みがインターナショナルで、外国人も大勢闊歩しています。

それにいつきても若い人が大勢歩いていて、こんな街がまだ日本に存在することに少し安心します。

街角に鷹がいました。鷹匠さんと良いコミュニケーションがとれているようです。最近またバーバー博士の「もの思う鳥たち」が話題になっていますが

http://www.02.246.ne.jp/~kasahara/psycho/Barber_Human_Nature_of_Birds.html

この写真など見ると、犬猫だけでなく、鳥ともその気になればかなり良い関係が築けるのではないかと思いました。ところでこの鷹匠さんが右手に持っているのは何でしょうか。その答えは下の写真にあります。

Imga2

鷹匠さんは霧吹きで水をかけてあげていました。鷹は気持ちよさそうに水浴びをしています。でも鷹匠体験って何をするのでしょうか? 時間があったらやってみたかったです。

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ラ・ドンナに行くとまだクローズドの札でしたが、もう十数人が階段を降りて並んでいました。今回のライヴは前売りで満席売り切れです。

このライヴハウスはとても聴きやすい理想的なフロア構造で、音響設備も万全です。ただ最初に食事を注文したのに、持ってきたのがライヴがはじまってから、つまり1時間経過というのは、いまどきあり得ないレストランではないのかと、ひと言苦言を呈しておきます。

サポートは織原洋子(pf)、平野融(g)です。織原さんのピアノがボーカルに寄り添って素晴らしく、平野さんも今回はリラックスして楽しみながら演奏している感じでした。

セットリストはメモをとっていなかったので、うろ覚えです。ご容赦ください。

星のTapestry
孔雀の海
夢の足跡
池上線
池上線ふたたび
愛に流されて
少年の風
天体望遠鏡
おひさまのたね

わたしはどこへ行くの?
渚を走るDolphin
シャドウ
河はながれる
泣きたいほどの海
永遠の少年たち
星屑のララバイ
サイレントデイズ

(Happy birthday to Mieko)

そうよ smile again

特になつかしい「泣きたいほどの海」を聴けたのには感激です。https://www.youtube.com/watch?v=sEyOtFWiqow

「そうよ smile again」
https://www.youtube.com/watch?v=YvzFbk7R60c

ポスターです↓

Imgb


最近みどりむしとヨーグルトで肥満したそうですが、写真写りはそのせいでかえって良くなった感じがします。還暦過ぎてもライヴをやってくれていることに感謝します。以前に石井好子さんが80歳記念ライヴをマンダラでやったそうですが、是非それをめざしましょう。少しエンジンのかかりが遅くなりましたが、声はまだまだ大丈夫という感じがしました。

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2017年8月14日 (月)

やぶにらみ生物論83: 制限酵素

細菌にとって最大の天敵はバクテリオファージ(ウィルス)です。この寄生体はホスト細菌の細胞壁にとりついて、注射器のようなツールでDNAを注入し、細菌のDNAにまぎれこませたり、あるいは直ちに細菌の中にある栄養物質を使って増殖し、殻もつくってホストを殺して外に出たりするわけです。

ベルタ-ニとワイグルはこの現象を研究しているうちに不思議な現象を発見しました(1)。それは、ある系統の大腸菌で生育させたファージを別系統の大腸菌に感染させると、そこで生育したファージは感染能を失っている場合があるということです(図1、赤で示した!は感染能の喪失を示します)。すなわち大腸菌はP2やλファージの感染性を制御する能力を持っているということを意味します。彼らはこの現象が遺伝子の突然変異によるものではないことを示しましたが、そのメカニズムは解明できませんでした。他にもこの現象に気がついていた研究者もいましたが、誰もメカニズムを解明できませんでした(2)。

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アルバー(図2)はジュネーヴ大学を卒業して、電子顕微鏡のオペレーターの仕事をしていましたが、そこからファージの研究に転身して、λファージを大腸菌に感染させる仕事をしていました。そしてλファージが大腸菌の中で、うまく増殖してくれないことに関心を持って研究を進めるうちに、λファージDNAを放射性のP(32P)でラベルして感染させると、大腸菌のなかでDNAが分解され、32Pは可溶性分画に出てくることがわかりました(3)。まさしく大腸菌の免疫機構が発動して、ファージを分解していたのです。

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1960年代には、この免疫機構にS-アデノシルメチオニンが必要なことや、DNAのメチル化がかかわっていることがわかってきました。すなわち修飾がないとファージと同様に分解酵素でアタックされるはずの大腸菌DNAの切断部位が、メチル化されることによって切断を免れることが判明しました(4)。

ファージのDNAを分解する酵素を制限酵素 (ファージの増殖を制限するという意味 英語では restriction endonuclease) といい、DNAを保護するDNAメチラーゼとあわせて制限修飾系(R-Mシステム)ともいいます。

制限酵素を大腸菌から最初に精製したのはメセルソンとユアンでした(5)。この酵素はその後 I 型制限酵素と呼ばれ、DNA鎖上の特異的な塩基配列を認識しますが、DNAを切断する部位は認識部位から400~7000塩基(bp)も離れたところにあるので、遺伝子工学の研究者からは「使えない」酵素として忘れ去られました。大腸菌にしてみれば、自分のゲノムは切断されず、進入してきたファージDNAを切断してくれるわけですから、I 型でも十分用は足りているわけです。

I 型制限酵素はDNAを切断するRサブユニット2個、DNAをメチル化するMサブユニット2個、DNAの塩基配列を認識するSサブユニット1個の計5つのサブユニットからなり、同じ塩基配列を認識しても、ホストのDNAはメチル化し、ファージのDNAは切断するという複数の役割をひとつの分子が行なうことができます(6、図3)。Sサブユニットもふたつのドメインが逆向きに重なったような構造で、2本の αヘリックスからなるバーの両端に塩基配列認識部位があるので、離れた2ヶ所で塩基配列を認識します。I 型制限酵素は認識した塩基配列から離れた位置でDNAを切断する点、そしてメチラーゼ活性を持っているという点で遺伝子工学のツールとしては基本的に不適切でした。

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ハミルトン・スミス(図2)は大学では数学を専攻していました。その後カリフォルニア大学、ジョンズ・ホプキンス大学と渡り歩いて医師になりました(7、8)。ところが彼はアルバーが制限酵素を発見したことに興味を持ち、ちょうど自分の研究室を持てることになったので、せっかく資格を得た医師の仕事を棄てて研究者になりました。アルバーが使った大腸菌とは異なるインフルエンザ菌(昔この菌がインフルエンザの病原体と考えられていた時期があり、その名残で名前が残っている)の制限酵素を調べてみました(8)。

実験材料だけ換えて追試するというのはバカにされがちですが、これも必要な研究ですし、ときには思いがけない重要な発見もあるのです。まさにハミルトン・スミスは彼の最初の学生だったケント・ウィルコックスと共に驚きの実験結果を得ました。

インフルエンザ菌の制限酵素はなんと認識した塩基配列を、その位置で切断したのです(9、図4)。この酵素は現在Hinc II(またはHind II) とよばれています。図4にみられるように Hinc II は1種類の塩基配列だけ認識するわけではなく、若干の幅があって、4種類の塩基配列を認識し、その中央でDNAを切断します。

II 型制限酵素は、I 型のようにATPやS-アデノシルメチオニンを必要とせず、マグネシウムイオンのみを要求する酵素反応を行います。またほとんどはDNAメチラーゼの活性をもっておらず、制限修飾系は別の分子であるDNAメチラーゼと協力して成立します。

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ハミルトン・スミスの研究結果は燎原の火のように広がり、われもわれもと新しい制限酵素の発見競争がはじまりました。そのなかのひとりがダニエル・ネイサンズ(図2)でした。

彼はSV40というヒトやサルに感染するウィルスを研究していましたが、このウィルスのDNAをハミルトン・スミスの酵素で処理すると最大11個の断片に切断することができました(10)。これはDNAの塩基配列の研究に非常に有用であり、かつ塩基配列レベルでの遺伝子地図の作成が可能であることを示唆しました(図5)。

例えば図5で、あるDNAを制限酵素赤で切断して3つの断片A,B,Cが得られたとします。それだけでは各断片の塩基配列を解析してもABCの順番はわかりません。

しかし同じDNAを制限酵素青で切断して4つの断片が得られ、そのうちひとつの断片の左側(2’)が断片Aの右側(2)と一致し、右側(3’)が断片Bの左側(3)と一致すれば、断片Aは断片Bの左隣であることがわかります。同様に断片B、Cについても調べれば、BがCの左隣であることがわかり、制限酵素赤で切断した結果の3断片はABCの順に並んでいることがわかります。

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アルバー、スミス、ネイサンズの3人(図2)は1978年にノーベル生理学医学賞を受賞しました(11)。その受賞理由は「for the discovery of restriction enzymes and their application to problems of molecular genetics」となっています。生理学医学賞で application to という言葉が使われたのははじめてです。すなわち生理学医学の領域においてもサイエンスのみならず、テクノロジーの分野における貢献もノーベル賞の対象になるということを、彼らは示しました。

さて、次々とみつかった II 型制限酵素を統一的に命名し整理することが必要になりました。スミスとネイサンズは1978年に命名法の基準を提案しましたが(12)、現在でもほぼ彼らの考え方に沿った形で命名が行われています。

1.当該制限酵素を産生する生物の属名の先頭の1文字、種名の先頭の2文字を記す。例えば大腸菌なら学名は Escherichia Coli ですから Eco、インフルエンザ菌なら Haemophilus influenzae ですから Hin となります。

2.制限酵素の由来がその生物のゲノムではなく、潜在ウィルスやプラスミドに由来する場合はそれらの頭文字(大文字)を記す。例えば EcoR。

3.生物の株によって産生する酵素が異なる場合、株名を記す。例えばHaemophilus influenzae のd 株(小文字)なら Hind となる。

4.同じ株が複数の制限酵素を産生する場合は、それぞれローマ数字をつける。例えばHaemophilus influenzae のd 株は3種の制限酵素を産生するので、それぞれ Hind I, Hind II, Hind III となります。

制限酵素によるDNA切断の様式を大きく分類すると、図6のような3種類になります。平滑末端を作るタイプの制限酵素は、リボンをハサミで切断するように、突出部位の無い平滑な末端(blunt end)をつくります。

5’ が突出するタイプの末端をつくる酵素は、DNAの両鎖ともに5’ が突出した末端が形成されます。Hind III の場合TCGAとAGCTという相補的な末端ができるので、これらは再びくっつき易いという特徴をもっています(cohesive end)。また3’-OH があって鋳型もあるわけですから、DNAポリメラーゼのよい標的になります。3’ が突出するタイプの末端を作る酵素は5’突出型と同様な特徴がありますが、DNAポリメラーゼの標的にはなりません。

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現在4000種類の制限酵素がみつかっており、そのうち600種類は市販されているそうです(13)。

ところで図6の塩基配列をみればわかりますが、制限酵素が認識する部位は塩基配列が回文構造になっています。回文とはアニマルマニアのように前から読んでも後ろから読んでも同じ文のことですが、たとえばHind IIIが認識する配列は、AAGCTTであり、これ自体は回文ではありませんが、対面するDNAの塩基配列はTTCGAAであり、180度回転対称となっているので、この意味で回文構造と称しているわけです。

どうしてこのような構造になったのかの説明ですが、図7に示したように、回文配列はDNAの裏から酵素がアプローチしても塩基配列を認識できることから、2倍の効率のためという説がありますが、どうでしょう? 2倍の効率というのはちょっと低すぎると思います。実際には回文配列の部分が特異な構造なので、熱力学的に切断に要する化学エネルギーが少なくて済むからという可能性もあると思います。またII型制限酵素はホモダイマーあるいはテトラマーであり、同時にDNAの表裏を認識していると思われ、このような認識様式を利用して切断するというやり方が進化の初期に定まったというのがひとつの理由なのかもしれません(14)。

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II 型制限酵素を使うと、自在にDNAを切断して再連結することができるので、例えば図8のように別種のDNA(AとB)をそれぞれHind III で処理し混合すると、それぞれAGCT、TCGAという相補的な突出部位を持っているので、再連結させることができます(アニーリング)。そしてDNAリガーゼで3’OHと5’Pを接続すると、AとBを連結したハイブリッドDNAができあがります(15)。

これはAという菌とBという別種の菌を融合した新種の菌ができる可能性を示唆しており、まさしく科学が神の領域にまで進出したということで騒ぎになりました。しかし誰も科学技術の進歩は止められず、20世紀末にDNAの加工に関連したテクノロジーは大発展をとげることになります。

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細菌は I、II 型とは異なるタイプの制限酵素ももっていて、むしろ III 型はより一般的なのかもしれません。III 型制限酵素はエンドヌクレアーゼのサブユニット2+DNAメチラーゼのサブユニット2で構成されていて、I型のように塩基配列認識のためのサブユニットがないので、それぞれの酵素活性をもつサブユニットが認識していると思われます(16)。

例えばサルモネラ菌の StyL TI は5’-CAGAG-3’ という塩基配列を認識します。III 型はこの認識部位でDNAを切断するのではなく、25-27bp下流(3’側)で切断します。DNA切断にはマグネシウムイオンとATP、メチル化にはマグネシウムイオンとS-アデノシルメチオニンが必要です。細菌とファージの戦いは熾烈で永遠です。このほかにも IV型、V型などの制限酵素がみつかっているようです(17)。


参照

1)G. Bertani and J. J. Weigle., HOST CONTROLLED VARIATION IN BACTERIAL VIRUSES, J Bacteriol., vol. 65(2), pp.113-121. (1953)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC169650/

2)Luria SE. Host-induced modifications of viruses, Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol., vol.18, pp.237-244 (1953)

3)Daisy Dussoix,Werner Arber., Host specificity of DNA produced by Escherichia coli: II. Control over acceptance of DNA from infecting phage λ., Journal of Molecular Biology, Vol.5, Issue 1, pp.37-49 (1962)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S002228366280059X?via%3Dihub

4)Werner Arber and Stuart Linn., DNA modification and restriction.,  Annual Review of Biochemistry., Vol.38, pp.467-500 (1969)

5)Matthew Meselson and Robert Yuan., DNA restriction enzyme from E.Coli., Nature 217, 1110-1114 (1968). doi:10.1038/2171110a0
https://www.nature.com/scitable/content/DNA-Restriction-Enzyme-from-E-coli-12388

6)Wil A. M. Loenen, David T. F. Dryden, Elisabeth A. Raleigh and Geoffrey G. Wilson., SURVEY AND SUMMARY  Type I restriction enzymes and their relatives.,  Nucleic Acids Research, Vol. 42, No. 1, pp. 20-44 (2014)
doi:10.1093/nar/gkt847

7)https://en.wikipedia.org/wiki/Hamilton_O._Smith

8)Jane Gitschier, A Half-Century of Inspiration: An Interview with Hamilton Smith. PLoS Genetics vol. 8, pp. 1-5 (2012)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3257296/pdf/pgen.1002466.pdf

9)Hamilton O. Smith and Kent W. Welcox., A Restriction enzyme from Hemophilus influenzae: I. Purification and general properties., Journal of Molecular Biology
Vol. 51, Issue 2,  pp. 379-391 (1970)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/002228367090149X?via%3Dihub

10)The Daniel Nathans Papers.  Restriction Enzymes and the "New Genetics," 1970-1980. US National Library of Medicine., NIH
https://profiles.nlm.nih.gov/ps/retrieve/Narrative/PD/p-nid/325

11)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1978
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1978/

12)Smith HO, Nathans D., A suggested nomenclature for bacterial host modification and restriction systems and their enzymes., J Mol Biol.. vol. 81(3), pp. 419-23. (1973)

13)https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cloning/cloning-learning-center/invitrogen-school-of-molecular-biology/molecular-cloning/restriction-enzymes/restriction-enzyme-basics.html

14)Pingoud A, Fuxreiter M, Pingoud V, Wende W., Type II restriction endonucleases: structure and mechanism., Cell Mol Life Sci., vol. 62(6), pp. 685-707. (2005)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15770420

15)R.W.オールド、S.B.プリムローズ 「遺伝子操作の原理」 第5版 関口睦夫監訳 培風館 (2000)

16)Desirazu N. Rao, David T. F. Dryden and Shivakumara Bheemanaik., SURVEY AND SUMMARY Type III restriction-modification enzymes: a historical perspective., Nucleic Acids Research, Vol. 42, No. 1 pp. 45–55 (2014)  doi:10.1093/nar/gkt616

17)https://en.wikipedia.org/wiki/Restriction_enzyme

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2017年8月11日 (金)

墓参り2017

神戸に墓参りに行ってきました。今年の北総は梅雨の延長のようで、ずっと夜はエアコン無しで就寝しているくらいです。しかし今年の関西の暑さは格別です。梅雨の延長のような関東とは全然違います。お寺の本堂は全開です。

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お布施を納めに行ったら、いつもどおりハナちゃんがいました。黒猫は写真撮影が困難ですが、敢えてワンショット。

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境内を歩いているとハンミョウがいました。子供の頃には普通に見かけたのですが、北総ではほとんどみかけたことがありません。気温が高いせいか、セミが大発生していて、境内を歩いているうちに、何匹か私に衝突しました。

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お寺から駅まで歩いて降りてくると、あまりの暑さで気分が悪くなってしまいました。体温が上昇したような気がしました。駅のカフェテリアで普段は食べない氷系のデザートで体を冷やすと、ようやく動けるようになりました。

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2017年8月 8日 (火)

麻枝准 x 熊木杏里 「long long love song」

Imgbアマゾンから分厚い封筒が届く。あれだな。
麻枝准x熊木杏里の「long long love song」だろう。

開けると、奇妙な分厚いブックレットがとびだしてきた。
「Long Long Love Song」 制作日誌、時々入院 麻枝准 ・・・ というタイトルだ。なんじゃこりゃ。

とりあえず読み始める。終われない。
1時間くらいかけて、ようやく読了。

凄い内容だった。プロデューサー(兼作詞・作曲)の闘病と仕事の死闘の記録に圧倒される。

翌日ようやくCDにたどりつく。

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僕らだけの星:曲のスピード感にボーカルがついていくのに必死感あり

Bus Stop:地味だけど、深みのある良い曲だと思う 麻枝のファンも絶賛

小説家とパイロットの物語:クマッキーの声が映える曲 ただメロディーの印象が薄い

Rain Dance:ボーカルが浮かび上がるアレンジが秀逸

約束の歌:メロディーの印象が薄く、はいっていけない

きみだけがいてくれた街:クマッキーのキャラに合わない感じだが、しみじみした曲 麻枝は人生の空虚さを表現したかったらしい

tale of the tree:メロディーが複雑すぎてついていけない 2オクターブ!? 変拍子!?

光の行方:エネルギーを与えてくれる曲

銀色世界:イントロがいい 地味だけど落ち着いてひたれるバラード CDの尺の限界でアウトロが断腸のオミットだったそうで残念

End of the World:アニメの主題歌らしい曲 それだけ

汐のための子守歌:素晴らしいバラード クマッキーの大事なレパートリーになりそう

Supernova:これはちょっと・・・

Love Song のつくり方:この曲だけは麻枝准の詩曲と熊木杏里のボーカルがきっちりシンクロした雰囲気がある。コラボの甲斐があった名曲。

私ははっきり言って現代の若い世代の音楽について行けてない。もちろん熊木杏里・まきちゃんぐ・The fin・洸美など、時代と無関係に音楽をつくっている人たちにはついていっているつもり。麻枝准は現代風の音楽の中心に居る人。だから私にとって、このCDはそのついて行けてない世界を垣間見るきっかけになったように思う。

クマッキーも自分の世界だけにひたって音楽をやっていればいいように思うが、周辺がそれをゆるさなかったり、自分でも壁を感じたりしたのでこのようなコラボを断行したのだろう。

麻枝准はクマッキーのような天才作曲家ではない。なぜなら脳にこびりつくようなメロディをつくることができないからだ。しかし病気を乗り越え、破格の努力を重ねてここまでたどりついたことに拍手とエールを送りたい。クマッキーも麻枝准のプライベートな情念が横溢する詩曲を歌いこなすのは難行苦行だった思う。お疲れ様でした。

きみだけがいてくれた街
https://www.youtube.com/watch?v=lXY6tefsuFw

全曲試聴ムービー
https://www.youtube.com/watch?v=wkkT6503KLc

麻枝准とは? (熊木杏里との対談)
2時間くらいかかりますが、非常に興味深い対談。曲も満載。
https://www.youtube.com/watch?v=0C38LL-61l0

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2017年8月 5日 (土)

やぶにらみ生物論82: 染色体3

減数分裂がおこるときには、体細胞分裂ではおこらない不思議な染色体の行動が観察されます。それは相同染色体を探してペアを形成することです。それぞれの染色体は2nですから、このペアは4nの遺伝情報を持っていることになります(図1)。このペアリングのことを日本語では相同染色体対合、英語では homologous chromosome pairing といいます。

この後2回の細胞分裂が起こって、4個の細胞(遺伝情報はそれぞれn)が生まれ、精子あるいは卵子となります。図1はこの1回目の細胞分裂と、通常の体細胞分裂を比較して示したものです。減数分裂の最初のステップで、染色体はどうやって相同染色体を探してペアリング(対合)するのでしょうか? 私はこの現象に関連する研究はやったことがありませんが、このことは学生時代からとても不思議で、いつも頭の片隅にひっかかっていました。

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ペアリングがおこると染色分体同士がキアズマを形成して一部の遺伝情報を交換し、いわゆる染色体の組み換えを行うことが容易になるという利点があります(1、図2)。ただこのためだけにペアリングが行われるのかどうかはわかりません。その後の減数分裂の進行に必要なのかもしれません。

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減数分裂時の相同染色体ペアリングは、マウス・ショウジョウバエ・酵母・シロイヌナズナ・小麦・コメ・たまねぎなどさまざまな生物で確認されています(3)。不可解なのは、相同染色体のペアリングの前に非特異的な染色体のペアリングがみられることです。Obeso らはこれをペアリングと呼ぶのはおかしいということで、カップリングと呼んでいます(3)。カップリングの意味は全くわかっていません。

Obeso らはカップリングからペアリングへの切り替えは、セントロメア近辺でおこるプログラムされたDNA損傷修復が引き金となっておこると述べています(3)。このことはカップルとなっている染色体を切り離すと言う意味があるかもしれません。しかしペアリングそのもののプロセスや染色体ペアの安定化はDNA損傷修復とは関係がないというのがコンセンサスになっています(4-5)。

現在問題となっているのは、ペアリングがセントロメア主導なのか、短腕・長腕での相互作用が機能しているのかという非常にプリミティヴなことで、まだまだ解決にはほど遠い感じがします。ただZip1というタンパク質が関係していると言うことは昔から言われています(6、7)。Zip1を欠く突然変異体では、ペアリングは成功しません(8、9)。Obeso らのモデルを図3に示しますが、これが正しいかどうかはわかりませんし、これはあくまでもペアリングした結果であって、どのような機構で染色体が正しいペアリングの相手をみつけたかはわかりません。

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染色体というセクションの中で、もうひとつ述べておかなければならないことがあります。細菌や古細菌のDNAは環状であるのに対して、真核生物のDNA(クロマチン)は線状です。おそらく古細菌の中に線状のDNAを持つグループがいて、そのなかから真核生物が生まれたのではないでしょうか。現在ではその真核生物のルーツとおぼしきグループは絶滅したために、古細菌と真核生物のつながりがたどれなくなったと思われます。

線状DNAのメリットあるいはアドバンテージが何であるかということはよくわかりません。ただ原核生物にも真核生物にも線状のプラスミドを持つ生物がいることが知られています(10)。おそらく最初に線状化したのはプラスミドで、そのメカニズムを利用して、本家のDNAを線状化することに成功したのでしょう。線状DNAは環状DNAと違って、積み木のパーツとして使うことができるというメリットがあるかもしれません。例えば(本家DNA)-(プラスミド)-(別個体のDNA)という風につなげば、2n分のDNAを1分子としてまとめることができます。

メリットはともかくとして、線状DNAには大きなデメリットがあります。それは複製したDNAが短くなってしまうからです。どうしてそんなバカなことになるのでしょうか? それはやはり生物が歴史の産物だからです。何億年もDNAはプライマーRNAの3’OHを起点として複製されてきたので(11)、図4のように複製された新DNAの端にあるRNAプライマー(赤の点線)を除去したときに、線状DNAだと5’Pが露出するDNA末端をどうしようもないのです。地球上のどんなDNAポリメラーゼも5’P側からDNA鎖を延長することはできません。もしこれが環状DNAならば、ぐるっと一周した反対側に3’OHがあるので、そこからDNAを伸ばして連結できるのですが、線状だと何もないのでプライマーRNAの分だけDNA鎖が短くなってしまいます。

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それともうひとつの問題は、DNAに端が存在するとそこから核酸分解酵素(エクソヌクレアーゼ)にDNAがかじられて、さらに鎖長が短くなってしまうおそれがあるということです。メッセンジャーRNAのように一時的にしか存在しない核酸分子でも、端はキャップとポリAでブロックされています。

この問題に最初に言及したのはハーマン・マラー(12)でした。マラーはX線によって生物に突然変異が発生することを発見し、それによって1946年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。マラーはテロメアという言葉を発明し、染色体の逆位の研究などから染色体の末端が特別な構造になっていると予測しました。また動く遺伝子で後にノーベル賞を受賞したバーバラ・マクリントックも、染色体の端にはなんらかの先端キャップのような構造があることを指摘しました(13)。

しかしテロメアの構造と合成酵素が解明されたのは1970年代後半からで、エリザベス・ブラックバーン、キャロライン(キャロル)・グライダー、ジャック・ショスタクの3人が、この功績で2009年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。彼らは鋳型RNAをかかえこんでいる酵素テロメラーゼによって、その鋳型を使用して線状DNAの末端に特殊な繰り返し構造が作られることを解明しました(14、15、図5)。

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なおテロメアの塩基配列は生物によって異なっています(図6)。初期はテトラヒメナ(繊毛虫)を用いた研究が多かったので、図5ではTTGGGGという塩基配列が採用されています。かなり異なる塩基配列を用いている生物もいますが、ヒト・アカパンカビ(Neurospora crassa)・モジホコリ(Physarum polycephalum)・トリパノソーマで共通(TTAGGG)、昆虫(TTAGG)や植物の一部(TTTAGGG)とも1塩基違いというのは、強く保存された塩基配列と言えます。

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テロメア形成の方法は図5では簡単すぎるので、別に図7(ウィキペディアより、16)を示して説明します。

1.複製終了後のDNA末端は5’末端のプライマーRNAが分解されて、その後を埋められず片鎖が短い状態です。
2.DNA末端にはテロメアに特異的な塩基配列があり、テロメラーゼは保有するRNAの相補的配列を利用してテロメアの末端に結合します。
3.テロメラーゼはテロメアDNA末端の3’OHと、自分が保有する鋳型RNAを使って、RNA-directed DNA polymerase 活性でテロメアを延長することができます。
4.2と3を繰り返すことによって、どんどんテロメアを延長します。したがってテロメアの塩基配列は同じ塩基配列がリピートした構造になります。
5.2~4の反応とは別に、テロメラーゼが保有するRNAの3’OH末端から、ギャップを埋め戻す反応をDNAポリメラーゼ(これはテロメラーゼではなく、DNA-directed DNA polymerase) を用いて行うことができます。この場合テロメラーゼのRNAはプライマーとして用いられます。

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おそらく最初にDNA末端と結合したテロメラーゼはテロメアを自分保有の鋳型分延長すると、鋳型だけ残してDNAから離れるのではないでしょうか。このときに逆方向のDNA埋め戻しが行われ、鋳型RNAが分解されてから再びテロメラーゼが結合すると考えると説明しやすく感じます。

いずれにしても、このようにテロメラーゼがテロメアに結合することによって、テロメアの延長と短くなったDNAの修復が同時にできるので、これは素晴らしいメカニズムです。古細菌から真核生物に進化する過程で獲得された、このエンジニアが設計図を描いて制作したような巧妙な仕掛けに、私は茫然とするしかありません。

テロメアはテロメラーゼの活性が強いか弱いかなどの影響で、長い細胞と短い細胞があります。生物種によっても違います。一般的に通常の体細胞は培養していると、50~70回細胞分裂を繰り返すと、分裂を停止します。図8(ウィキペディアより)には分裂回数が省略して書いてありますが(実際には50~70回)、テロメラーゼの活性が無いか低くてテロメアが短くなってくると、安全装置のようなものが働いて細胞分裂が停止すると考えられています。一方生殖細胞・がん細胞などではテロメラーゼ活性が強く、細胞分裂を行ってもテロメアは短縮されにくいようです。

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明らかにテロメアは細胞の寿命に関係していますが、テロメアを延長さえすれば細胞寿命が長くなると考えるのは早計です。実験用のマウスはヒトの数倍の長いテロメアを持っている上に、体細胞にもテロメラーゼの発現があることが知られています。しかしマウスの体細胞を培養すると、ヒトより早く分裂を停止しますし、そのときのテロメアは長いままです。だいたいマウスの寿命はヒトより30倍も短いので、テロメアが長ければ長生きできるというわけではありません。しかしテロメラーゼを欠損するマウスを作成すると、寿命が短縮されるというのもまた事実です。そしてこのようなマウスでテロメアを復活させると、若返りが実現します(17)。

しかし生きるために必要な遺伝子の変異や欠損は寿命の短縮を招く可能性があるわけで、テロメラーゼの変異だけが寿命を短縮させるわけではありません。さらにテロメアの短縮以外にも老化の理由は存在するということで、それらを解明しない限り不老不死は実現できません。たとえばDNAの修復に欠陥があれば、老化は進むでしょう。

ただテロメラーゼを活性化すれば、肌の若返りくらいは可能かもしれません。ビル・アンドリュースなど大まじめに取り組んでいる人々もいます(18)。このクリームを塗ったら皮膚癌が増えたなんてことにならないよう祈りたいです。アマゾンで売っているかどうか調べたらありました。50gのビンが194400円です。

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参照

1)Bruce Alberts et al., Essential Cell Biology 4th edn., pp.645-657, Garland Science (2014)

2)染色体とその組み換え 遺伝子博物館
https://www.nig.ac.jp/museum/history/06_d.html

3)David Obeso, Roberto J Pezza, and Dean Dawson, Couples, Pairs, and Clusters: Mechanisms and Implications of Centromere Associations in Meiosis., Chromosoma., vol.123, pp.43-55. (2014) doi:10.1007/s00412-013-0439-4.

4)Clarke L, Carbon J. Genomic substitutions of centromeres in Saccharomyces cerevisiae. Nature, vol.305, pp.23-28.(1983)

5)Bisig C.G.et al., Synaptonemal complex components persist at centromeres and are required for homologous centromere pairing in mouse spermatocytes. PLoS genetics. Published: June 28, 2012
http://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1002701

6)Sym M, Roeder GS. Zip1-induced changes in synaptonemal complex structure and polycomplexassembly. J Cell Biol., vol.128, pp.455-466.(1995) PMID: 7860625

7)Xiangyu Chen et al., Phosphorylation of the Synaptonemal Complex Protein Zip1 Regulates the Crossover/Noncrossover Decision during Yeast Meiosis. PLoS Biol 13(12): e1002329. doi:10.1371/journal.pbio.1002329

8)Gladstone MN, Obeso D, Chuong H, Dawson DS. The synaptonemal complex protein Zip1 promotes bi-orientation of centromeres at meiosis I. PLoS genetics. 2009; 5:e1000771.

9)Newnham L, Jordan P, Rockmill B, Roeder GS, Hoffmann E. The synaptonemal complex protein Zip1, promotes the segregation of nonexchange chromosomes at meiosis I. Proc Natl Acad Sci USA., vol.107, pp.781-785. (2010)

10)郡家徳郎, 徳永正雄 酵母線状DNAプラスミドとキラーシステム ウイルスとの接点 化学と生物 vol. 41, pp. 832-841 (2003)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/41/12/41_12_832/_pdf

11)http://morph.way-nifty.com/grey/2016/11/post-7f79.html

12)Muller, H.J. The remaking of chromosomes. Collect. Net, vol. 13, pp. 181–195. (1938)

13)McClintock, B. The Association of Mutants with Homozygous Deficiencies in Zea Mays. Genetics, vol. 26, pp. 542–571. (1941)

14)http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2009/press.html or http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2009/bild_press_eng.pdf

15)中山潤一 解説 2009年ノーベル賞を読み解く 生理学医学賞 細胞のがん化・老化にかかわるテロメアとは? 
http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~jnakayam/_src/sc734/pubj12.pdf

16)https://en.wikipedia.org/wiki/Telomerase

17)Mariela Jaskelioff et al., Telomerase reactivation reverses tissue degeneration in aged telomerase deficient mice., Nature, vol. 469(7328): pp. 102–106 (2011)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3057569/
http://www.med.keio.ac.jp/gcoe-stemcell/treatise/2011/20110725_02.html

18)http://テロメア.com/

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2017年8月 2日 (水)

サラとミーナ188: タワーを新調

Imgbキャットタワーを新調しました。中国製ですが、非常にしっかりしたつくりで価格は低廉。

というところはいいのですが、ひとつ問題があって、変な臭いがあるのです。説明書にも臭いに耐えられない人の場合、返品を認めると書いてありました。

ところでうちでは人の方は問題ないのですが、猫たちは気になるようで、長居はしたくないみたいです。ただ短時間ならこのように、展望台として利用しています。

夏はベランダに鳥、蝶、セミ、カナブンなどいろいろな訪問者があります。なかにはスズメバチとかゴキブリとか歓迎されざるお客さんもいますが。そうそう今話題の外来種、クビアカツヤカミキリもやってきました。

カミキリムシはクビアカツヤカミキリに限らず、幼虫は木の中にもぐりこんで過ごすので、クビアカだけを悪者にするのはどうかと思いますが。カミキリムシの幼虫はだいたい老木や倒木を好むので、強力な害虫というわけでもありません。

マツノマダラカミキリは害虫として有名ですが、これも寄生しているマツノザイセンチュウという寄生虫が松を枯らすのであって、マツノマダラカミキリとしては迷惑な話なのです。それに昔は枯れ木は燃料として有用だったので、むしろ益虫でした。人間の生活様式が変わると、害虫と益虫も入れ替わるというわけです。

ところでキャットタワーにもどりますが、臭いはだんだん揮発するので、いつの日か猫たちが居場所にしてくれることを期待しています。

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2017年8月 1日 (火)

クラシコ@マイアミ

BraugranaICC(インターナショナル・チャンピオンズカップ)2017は中国・米国・シンガポールで開催ですが、バルサはマイアミでレアル・マドリーと対戦です。ハードロックスタジアムは、アメフトのマイアミ・ドルフィンズのホームですが、観客との距離が近くて、サッカースタジアムとしても良い雰囲気です。バルサ選手の胸にはRAKUTENの文字がくっきり。あまり良い感じはしませんが、チームの選択なので良としましょう。

バルベルデのサッカーは特に目立った戦術の変化はありません。相手がマドリーということもあって、スタメンはほぼベストメンバーでチンタラもなし。マドリーはCロナウド、バルサはネイマールが移籍問題で騒がれていますが、Cロナウドがお休みに対して、ネイマールは出場です。ただコンディションはあまりいいようには感じられませんでした。

新加入選手のセメドに注目していましたが、なかなかフィジカルに優れた選手であることはわかりました。反射神経も優秀。アルバ・ビダル・セメドのSBで、無茶なフォーメーションをとらなければ、「バルサの守備はザル」などとは言わせないですみそうです。バルサのSBはエストレーモを兼ねるなどという雑音にまどわされず、自分らしいプレイをするべきでしょう。サイドからのカウンター阻止を是非お願いします。

あとシレセンの反射神経も素晴らしい。2度ほど「やられた」と思ったところを、スーパーゼーヴで失点を阻止しました。ラキティッチとブスケツは好調で活躍してくれそうです。メッシとスアレスも問題なし。マドリーではマルセロとカゼミーロが目立ちました。仕上がりが早いです。

ネイマールはストライカーとしての期待が大きいですが、私としてはロナウジーニョのようなパサーとして成長して欲しいと思いますね。今日もスアレスへのパス、ピケとのサインプレーが得点につながりました。サンジェルマンに移籍という悪夢は見たくありません。

相変わらずマドリーのミドルシュートは脅威で、コバチッチにやられましたが、ベイルやアセンシオも要警戒です。それにしてもペペが移籍したので、バルサとしては敵意半減です。上品なマドリーというのはどうなんでしょうか?

試合は3:2でバルサの勝利。ICC優勝です。


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2017年7月30日 (日)

玉木宏 音楽サスペンス紀行~亡命オーケストラの謎~

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7月29日(土)の20~22時に、NHK-BSプレミアムで「玉木宏 音楽サスペンス紀行~亡命オーケストラの謎~」という番組をやっていました。

亡命オーケストラとはいったい何だろうと興味を覚えて視聴しました。
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/trailer.html?i=11005

これが引き込まれる驚くべき番組でした。太平洋戦争の最高責任者の1人であり自殺した近衛文麿の実弟で、日本のクラシック音楽の創始者の1人である近衛秀麿が、実はフランスでレジスタンス運動をやっていたというお話なのです。

彼は若い頃からドイツに留学し、ナチスドイツでもハーケンクロイツをバックにオーケストラを指揮していたのですが、それに嫌気がさしてゲッペルスの不興を買い、ドイツ国内での演奏会を禁止されてしまいました。

秀麿は1943年頃にはポーランド国境付近の村に蟄居することになり、そこで近所に住んでいたパウル・パーゲルという反ナチ地下組織の活動家と知り合い、以降レジスタンスとして活動することになったようです。

どんな方法でレジスタンス活動を行ったかというと、1944年にパリで私的なオーケストラ「グラーフ・コノエ」を立ち上げ、そこにユダヤ人の音楽家を参加させて、機を見て逃亡させたというものです。秀麿のオーケストラにはピエール・ピエルロ(オーボエ)やジャック・ランスロ(クラリネット)のような、戦後著名な演奏家になった人がいましたが、特に重要なのはやはりこのオケのメンバーで、戦後パレナン四重奏団を立ち上げて活躍したジャック・パレナンです。

NHKはパレナンの娘から、このオケがユダヤ人を亡命させるための隠れ蓑であった(と父が語っていた)という証言を得ました。秀麿の残した記録のなかにも、車のトランクに人を隠して国境まで自分の車で運んだという記載があるそうです。オケのメンバーは50人くらいだったそうですが、演奏会の記念にと残された署名は30人分くらいしかなく、その他は署名が危険なユダヤ人だったのではないかと推測されます。

秀麿はゲッペルスの不興を買ったものの、完全決裂とまでは行っていなかったので、困難ながらも細々とドイツ占領地(ポーランド・オランダ・フランスなど)で演奏活動ができたようです。ゲッペルスに演奏会をやらせてもらえるよう手紙を書いたという記録が残っています。おそらく秀麿が同盟国日本の総理の弟ということで、そう簡単には処断できなかったという事情もあったのでしょう。

当時の「グラーフ・コノエ」のメンバーの話では、ユダヤ人を助けるだけでなく、仕事場がなく強制労働をやらざるを得ないと覚悟していたフランスの若い演奏家にとっても、強制労働を免れる上にキャリアを続けられるという2重の意味で、大変有り難い存在であったそうです。

レジスタンス活動というのは密告や暗殺の応酬などダークな側面を持つので、秀麿を含めて参加した人は戦後は口を閉ざして語らない場合が多いのですが、NHKはよくここまで調査したと思います。

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2017年7月28日 (金)

やぶにらみ生物論81: 染色体2

一般的に真核生物のDNAは核内においてタンパク質との複合体である「クロマチン(Chromatin)」の状態で存在します。その構成単位はヌクレオソーム(Nucleosome)と呼ばれ、4種類のヒストン(Histone)、すなわちヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4それぞれ2つずつのタンパク質分子から成る8量体のコア・ヒストンに、DNA が巻きついた構造を取ります。ヒストンH1はコア・ヒストンには含まれず、リンカー・ヒストンと呼ばれ、ヌクレオソーム内のDNAを安定化する役割があります。

細胞が分裂するM期においては、クロマチンは極端に凝縮した染色体という構造をとります(図1A)。このような状態では転写やDNA複製のための複合体はDNAにアクセスできないため、DNAの情報の読み取りという観点から言えば、染色体は極めて不活性な状態にあります。一方未分化な状態の細胞、たとえば卵割期の細胞や幹細胞などでは、様々なDNAの情報が読み取り可能で、ヌクレオソームとヌクレオソームの間に広い間隙が存在します(図1C)。

そして最も一般的な核の状態は、図1Bのように一部はヘテロクロマチンを形成して核膜の裏側に結合して不活性な状態にあり、一部は核内で流動的な状態で、図1Cと同様ヌクレオソーム間に広い間隙が存在するユークロマチンとなっている状況です。この状態では一部のクロマチンでのみ転写が可能になっています。分化というのは特定の遺伝子しか転写されないというのとほぼ同義なので、図1Bの状態は合理的です。分化した細胞は通常細胞分裂しないか、しても長い間隔をおいて分裂するという状態なので、DNAの複製についてはあまり考慮する必要はありません。どのようなメカニズムでヘテロクロマチンが核膜の内側に結合するかは現在活発に研究が行われています(1)。

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ヌクレオソームを構成する4種のヒストンは、そのポリペプチド鎖がC末からN末まできっちりヌクレオソーム内に収納されているわけではなく、一部は「しっぽ」のようにヌクレオソーム外にはみ出しています(図2)。ヌクレオソームはポリペプチド鎖が折りたたまれた上に、まわりにDNAが巻き付いているので、アミノ酸を修飾する酵素が非常にアクセスしにくい状態であるのに比べ、ヌクレオソーム外にはみ出している部分は修飾酵素が容易にアプローチできそうです。実際図2に示すような、様々な修飾が行われていることがわかっています。

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このヒストンの「しっぽ」がどのように修飾されるかによって、クロマチンの存在状態、DNA複製のタイミング、アクセスできる転写複合体などが選別されます。つまりDNAやクロマチンにアクセスしたいタンパク質群は、ヒストンの状況によって許可・却下が決まることから、そのヒストンの修飾状況を「ヒストンコード」と呼ぶことがあります(2)。提唱者の定義によると 「We propose that distinct histone modifications, on one or more tails, act sequentially or in combination to form a 'histone code' that is, read by other proteins to bring about distinct downstream events」 とのことです。

ではそれぞれの修飾について個別に見ていきましょう。まずメチル化ですが、メチル化されるアミノ酸残基はリジンとアルギニンで、それぞれ mono, di, tri と3種類の修飾が存在します(図3)。メチル基を供給するのはSアデノシルメチオニンで、転移酵素によってヒストンに転移します(図3)。ヒストンからメチル基をはずす酵素(ヒストンデメチラーゼ)も知られています(3)。ヒストンのメチル化はクロマチンの凝集や転写の活性化および不活性化を制御します。DNAの修復と複製の制御も行います(4)。また性決定にも関与しています(3)。X染色体の不活化の際には、DNAだけではなくヒストンH3がメチル化されていることが知られています(5)。

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アルギニンの脱イミノ化反応(シトルリン化)は尿素回路などでもおなじみですが、ヒストンのアルギニン残基の脱イミノ化は核移行シグナルを持つPAD4(Peptidylarginine deiminase 4)によって実行されます。この化学修飾はヒストンのメチル化と転写制御に関して拮抗的に働くことがあるようです(6、7)。またこの修飾が著しく進むと、クロマチンの脱凝縮が行われることが示唆されています(8)。自己免疫疾患が持つ患者の抗体が、脱イミノ化されたタンパク質を攻撃することが知られています(6、9)。

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ヒストンのアセチル化は、ヒストンの修飾のなかでもメジャーなものです。図2にみられるように、コアヒストン(H2A、H2B、H3、H4)のしっぽにはいずれも多くのリジン残基が存在しますが、ほとんどは側鎖のアセチル化(図5)が可能です。アセチル基を供給するのはアセチルCoAです(図5)。ヒストンアセチル化酵素(HAT)の作用によって、アセチル化が進行するとヒストンの塩基性が失われ、一般にDNAのリン酸との結合が弱くなってヒストンとDNAが解離し、転写が活性化されます。逆にヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の作用によって、ユークロマチンはヘテロクロマチンに移行し、転写は抑制されます(10、11、図5、図6)。

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ヒストンのリン酸化は、セリン・スレオニン・チロシン残基の側鎖OHがヒストンキナーゼでリン酸化されることによって行われます(図7)。ヒストンH3のN末から10番目のセリンのリン酸化がM期における染色体凝縮にかかわっていることが知られています(12、13)。またDNAがダメージを受けた際にヒストンH2Aなどのリン酸化がおこり、このことがDNA修復開始のシグナルになると言われています(13)。単純に考えるとヒストンのリン酸化はヒストンの塩基性を消滅させる方向の変化なので、ヒストンとDNAの結合を弱めるので、例えばDNAの修復システムがアクセスするには有効かもしれませんが、染色体凝縮にどのようにかかわっているかは謎です。

最近ではヒストンのリン酸化が転写の制御に関わっているとか、ヒストンアセチル化・メチル化などのカスケードの起点になっているとかの報告もあるようです(13)。またH2AのバリアントであるH2AXのリン酸化がアポトーシスに関与しているとの報告もあります(14)。

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最近注目されているヒストンの修飾反応にポリADPリボシル化があります。シャンボンらによって1966年に発見されましたが、その後京都大学の上田国寛のグループと国立がんセンターの三輪正直のグループを中心に、わが国において反応の全体像が明らかにされました(図8)。

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この反応はNAD+を基質としてタンパク質のグルタミン酸あるいはアスパラギン酸側鎖のカルボキシル基に、NAD+からニコチン酸アミドを切り離してADP-リボースを結合し、さらに次々とADPリボースを添加してポリマーを形成するものです(15、図9)。ヒストンもその主要なターゲットになります(16、17)。反応はポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)によって行われますが、別に分解酵素も存在するので、他のヒストン修飾と同様結果的に反応は可逆です。

他の修飾と異なりマイナスチャージのADP-リボースがポリマーとして添加される上に、鎖のブランチングまでおきるので、その影響は桁違いに大きいはずで、緊急のDNA修復や遺伝子発現に大きな影響を及ぼすと考えられます(18)。

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このほかにもヒストンの修飾にはユビキチン化(19)などがありますが、その意義は不明なのでここまでにしておきます。

 

参照

1)Jennifer C Harr, Adriana Gonzalez-Sandoval, & Susan M Gasser, Histones and histone modifications in perinuclear chromatin anchoring: from yeast to man.
EMBO Reports, vol. 17, pp. 139–155,  (2016)   DOI 10.15252/embr.201541809
http://embor.embopress.org/content/early/2016/01/20/embr.201541809

2)Strahl BD1, Allis CD., The language of covalent histone modifications., Nature., vol. 403 (6765), pp. 41-45., (2000)
http://www.gs.washington.edu/academics/courses/braun/55105/readings/strahl.pdf

3)S Kuroki, S Matoba, M Akiyoshi, Y Matsumura, H Miyachi, et al., Epigenetic Regulation of Mouse Sex Determination by the Histone Demethylase Jmjd1a., Science vol. 341 (6150): pp. 1106-1109. doi:10.1126/science.1239864. (2013)

4)Black JC, Van Rechem C, Whetstine JR.,  Histone lysine methylation dynamics: establishment, regulation, and biological impact. Mol. Cell vol. 48(4), pp. 491–507. (2012)

5)https://ja.wikipedia.org/wiki/X%E6%9F%93%E8%89%B2%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%B8%8D%E6%B4%BB%E6%80%A7%E5%8C%96

6)有田恭平他 ヒストン修飾酵素 Peptidylarginine deiminase 4 (PAD4) の活性化とヒストン認識 PF NEWS vol. 42, no.2, pp. 16-22 (2006)

7)Wang Y. et al.,  Human PAD4 regulates histone arginine methylation levels via demethylimination. Science. vol. 306, pp. 279–283 (2004)

8)Yanming Wang et al., Histone hypercitrullination mediates chromatin decondensation and neutrophil extracellular trap formation.,  J Cell Biol., vol. 184(2): pp. 205–213. (2009)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2654299/

9)https://en.wikipedia.org/wiki/Citrullination

10)Tony Kouzarides, Chromatin modifications and their function., Cell. vol.128, pp. 693-705., (2007)
http://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(07)00184-5?_returnURL=http%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867407001845%3Fshowall%3Dtrue

11)Min-Hao Kuo, C. David Allis., Roles of histone acetyltransferases and deacetylases in gene regulation., BioEssays Vol. 20,  pp. 615–626 (1998)

12)中山潤一 ヒストン修飾酵素 http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~jnakayam/_src/sc744/pubj03.pdf#search=%27%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC%27

13)Dorine Rossetto, Nikita Avvakumov, Jacques Cote., Histone phosphorylation. A chromatin modification involved in diverse nuclear events. Epigenetics vol. 7, no.10, pp. 1098-1108 (2012)
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.4161/epi.21975

14)Peter J. Cook et al., Tyrosine dephosphorylation of H2AX modulates apoptosis and survival decisions., Nature vol. 458, pp. 591–596 (2009) | doi:10.1038/nature07849
http://www.nature.com/nature/journal/v458/n7238/abs/nature07849_ja.html?lang=ja&foxtrotcallback=true

15)https://en.wikipedia.org/wiki/Poly_(ADP-ribose)_polymerase

16)Morioka K., Tanaka K., Ono T., Poly(ADP-ribose) and differentiation of Friend leukemia cells.,  J. Biochem., vol. 88, pp. 517-524 (1980)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biochemistry1922/88/2/88_2_517/_pdf

17)Morioka K., Tanaka K., Ono T., Acceptors of poly(ADP-ribosylation) in differentiation inducer-treated and untreated Friend erythroleukemia cells., Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Gene Structure and Expression, Vol. 699, Issue 3, pp. 255-263 (1982)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0167478182901154

18)Rebecca Gupte, Ziying Liu, and W. Lee Kraus., PARPs and ADP-ribosylation: recentadvances linking molecular functionsto biological outcomes., GENES & DEVELOPMENT vol. 3, pp. 101–126 (2017)
http://genesdev.cshlp.org/content/31/2/101

19)伊藤敬 ヒストンH2A のユビキチン化と遺伝子転写抑制 生化学 第82巻第3号,pp.232-236,(2010)
http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/10/82-03-08.pdf#search=%27%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%A6%E3%83%93%E3%82%AD%E3%83%81%E3%83%B3%E5%8C%96%27

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2017年7月27日 (木)

スメタナ「わが祖国」 by フルシャ都響@2017年7月26日ミューザ川崎

Imgaフェスタサマーミューザでの都響の演奏は毎年名演続きで、しかも破格の低料金。これは聴き逃せません。

ミューザ川崎は大変素晴らしいホールで、音響だけでなくオケと聴衆の一体感が音楽を盛り上げてくれます。まるで巨大なカタツムリの殻の中で聴いているような感じです。

1Fフロアはわずか11列で、会場全体が非対称の設計です(https://www.kawasaki-sym-hall.jp/seat/)。

永田音響設計事務所(http://www.nagata.co.jp/)のHPに出ていますが、実際に設計したのは松田平田設計事務所のようです。しかし後者のHPにはでてきません。これは震災で天井が落ちたことと関係があるではないかと思いますが、真相は知りません。いずれにしても世界の音楽家が激賞するホールで、天才建築家の作品だと思います。

本日はスメタナの「わが祖国」全曲で、指揮はヤクブ・フルシャ、コンマスは雨男矢部ちゃん、サイドはゆづきです。雨模様ですが傘はいらない程度。ほぼ満席の大盛況です。

めずらしく2台のハープがステージの左右に分かれていて、「高い城」はその2台のハープがからみあって始まります。いやあ素晴らしい音楽です。都響もフルシャも絶好調の感じです。ただ矢部ちゃんのアクションがおかしい。両足を揃えて床の上をスライディングするなど、いつもと違う非常に気持ちの悪い動きで、いったいどうしたのだろうと思いました。なぜか後半はおとなしくなりましたが、さすがにゆづきかマキロンが「気持ち悪いからやめてくれ」とでも注意したのではないでしょうか。

前半は精緻な感じでしたが、後半(「ボヘミアの森と草原から」以降)はほとんどお祭り状態で、奏者の名人芸の饗宴でした。フルシャも何度もジャンプするなど乗りに乗っていました。この演奏会は都響主催じゃないので恒例のベストテンの枠外だと思いますが、含まれていれば間違いなく上位を占める演奏会だったと思います。ただ曲の凄さや感動という観点で言えば、同じチェコの作曲家ですが日曜日のマーラー「復活」には足許にも及ばないとも言えます。

こんな曲です↓

ブラニーク:https://www.youtube.com/watch?v=TAZYVwIykEw

モルダウ:https://www.youtube.com/watch?v=2Sp4JyDNNr8

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2017年7月25日 (火)

サラとミーナ187: サラとクマキッチンカレー

Imga


Imgb


サラも年を重ね、あれほど探索好きだったのが最近サボることが多くなりました。ベランダでも座り込んでのんびりしています。ただ眼光は相変わらず鋭いものがあります。

Imgc熊木杏里の料理を再現したという「クマキッチンカレー」が発売になりました。

カレーライスという曲の歌詞に「とびきり辛い」というフレーズがあるので、ファンは辛口を志向のようですが、私はあえて本人推薦の甘口を購入。

歌詞:
http://www.uta-net.com/movie/231870/

驚くべき価格だったのでやや迷いましたが、結構美味しかったので許す。料理なんてまじめに取り組む感じの人ではないと思っていたので、これは意外や意外!!

買いたい方は↓(要スクロール)

http://kumakianri.jp/news.html


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2017年7月23日 (日)

マーラー交響曲第2番「復活」 by チョン・ミョンフン-東フィル@オーチャードホール2017年7月23日

Imga久しぶりの渋谷。昨年のNHKホール以来でしょうか。スクランブル交差点では2Fのスタバに外国人が鈴なりで、交差点の写真を撮っています。何が面白いのかさっぱりわかりません。

地下にある東急のれん街の総菜店をみてまわると、どれも美味の名作料理のように思われます。東横線や井の頭線沿線に住んでいる人はこのようなものを食べているのかと、ちょっとうらやましく思いました。オーダーYシャツの店があって、1着2万円だそうです。

都響がマーラーのシンフォニーをほとんど取り上げなくなったので、ではということで東フィルの「復活」を聴きに行くことにしたわけですが、オーチャードホールは20年ぶりくらいでしょうか。 日本最悪の音楽ホールという意見もあるようですが、「復活」をやるにはちょうど良いサイズかもしれません。指揮者はチョン・ミョンフン(鄭明勳)さん。チケット完売で、この巨大なホールが超満員の大盛況でした。

Imgb_3ソリストではメゾの山下牧子氏の歌声が素晴らしく、大いに感動しました。さらに新国立劇場合唱団はppでも空気の振動が感じられるような素晴らしいハーモニーで、こんなコーラスは聴いたことがありません。チョン・ミョンフンの指揮は折り目正しく、格調高い雰囲気でした。

オケで感じたのは、金管が粘り気が強い感じのパフォーマンスで(多分指揮者の指示)、アンサンブルの正確さより迫力を重視していたようです。都響とはやや異なるやり方でしょう。バンダのミスなどありましたが、2Fの最後列で聴いていても十分な音量と迫力の演奏で非常に盛り上がりました。

「復活」についてはマーラーは第1楽章を28歳の時に作って、その数年後に全曲を完成させたわけですが、その間に様々な作曲の技法を編み出したようで、変化に富んだ楽章の構成、ソリストや合唱を組み込むなど、やはり素晴らしい名曲です。

いつも思うのですが、終楽章の最後の鐘がどうして鐘じゃなくて板をたたくのかというのがよくわかりません。オケを圧倒するような鐘の音をここで聴いてみたいと思うのは私だけなのでしょうか?

Youtube ではウィグルスワース指揮オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏が好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=SNEmcB8cBug

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2017年7月21日 (金)

JPOP名曲徒然草181: 「風吹く丘で」 by 青山ミチ

Imgこの記事を書こうとして調べていたところ、青山ミチさんが今年の1月に亡くなっていたことを知り驚きました。まだ67才でした。ご冥福をお祈りします。

持ち前の歌唱力を生かして、ジャズクラブやライヴハウスで活動していたら普通に生活できたと思うのですが、覚醒剤で逮捕されるという人生の失敗が尾を引いて、この「風吹く丘で」も発売中止となり、最後は生活保護をうけるという生活になっていたようです。

https://www.youtube.com/watch?v=dP7GDGcJDSk
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E5%B1%B1%E3%83%9F%E3%83%81

「風吹く丘で」(作詞:橋本淳、作曲:すぎやまこういち)はヴィレッジ・シンガーズが代わりに起用されて発売され、大ヒットとなりました。タイトルも「亜麻色の髪の乙女」に変更になりました。2002年に島谷ひとみがカバーして、半世紀歌い継がれている名曲です。

写真の 青山ミチGOLDEN★BEST USMジャパン UPCY9320  に収録されています。

「風吹く丘で」 青山ミチ

https://www.youtube.com/watch?v=FsaMApnuRMM

「亜麻色の髪の乙女」

ヴィレッジ・シンガーズ
https://www.youtube.com/watch?v=8yArRBwnl6k
https://www.youtube.com/watch?v=MfC5nkPQL9c

島谷ひとみ:
https://www.youtube.com/watch?v=1nOIWI4OzD0
https://www.youtube.com/watch?v=BdmuwLrkHM8
https://www.youtube.com/watch?v=0i31mObROv0

サンディー (ヒットパレーダーズ)
https://www.youtube.com/watch?v=ceUZIrZAia4
https://www.youtube.com/watch?v=nNOyDkn3Q84
https://www.youtube.com/watch?v=FTv2EU05J3I

王心凌(エイベックス台湾)
https://www.youtube.com/watch?v=t0wQ6TueX54
https://www.youtube.com/watch?v=TmILQKRt7uM

池田夢見(ウクレレ伴奏)
https://www.youtube.com/watch?v=aZ3zRxB7c_0

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青山ミチ

カモナダンス
https://www.youtube.com/watch?v=nm3V77sbSdA
https://www.youtube.com/watch?v=RERc37CF7Z8

Love
https://www.youtube.com/watch?v=UIrFwNZypw0

Let Kiss
https://www.youtube.com/watch?v=hGFGcM_lvlM

Vacation
https://www.youtube.com/watch?v=gjgzAQJ19Qk

恋はスバヤク
https://www.youtube.com/watch?v=YKS8n7W5Q-k
https://www.youtube.com/watch?v=g3exHNkjU4s

ミッチー音頭
https://www.youtube.com/watch?v=y8dDcG2zJjw

恋のゴーカート
https://www.youtube.com/watch?v=MMM8mWaCdEI

恋のブルース
https://www.youtube.com/watch?v=tHCb7bqzK1M

叱らないで
https://www.youtube.com/watch?v=-p7h8H93rOE

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