2018年6月23日 (土)

やぶにらみ生物論107: 視覚とは

脳は何のために必要だったのでしょうか? クラゲは遊泳してエサを採り消化して何億年も暮らしてきました。そういう生活をする生物にとっては、ある程度の情報統合は必要であっても、脳と言えるような多数の神経細胞の集積は必要なかったわけです。

脳はおそらく視覚から得た情報を統合・解析し、やるべき行動を指示するために必要だったのでしょう。昆虫の微小脳でも視覚の解析は大きな部分を占めているように思われます。というわけで「昆虫の微小脳2」に行く前に、視覚がどのように進化してきたのか振り返ってみようと思います。

最近はヒトの食べ物としても注目されているミドリムシという単細胞の真核生物がいます。ミドリムシは長短2本の鞭毛を持っており、動き回って細菌を食べたりもしますが、一方で体内に葉緑体を保持していて光合成も行なうという一風変わった生き物です。この生物は眼点という赤い点の構造体を持っており、これが光感覚をになうと考えられていましたが、現在では本当の光受容体は鞭毛の基部付近にある傍鞭毛体(または副鞭毛体、図1の8)であることがわかっています(1)。

ミドリムシは光に集まる性質を持っています。それは彼らが光合成を行なうことから目的にかなった行動です。景色や生物を認識するための眼はカンブリア紀にできたと考えられていますが(2、3)、それよりずっと以前から、明るい場所に移動して光合成を行なうために、明るさを測定するための道具として眼がつくられたことは容易に想像できます。

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伊関らはミドリムシの傍鞭毛体にある光受容蛋白質をFADを含むフラビンタンパク質と同定し、このタンパク質がアデニル酸シクラーゼ活性を持つことを報告しています(1)。フラビンタンパク質を光センサーとして用いているのはミドリムシだけではなく、多くの植物で光屈性や気功の開閉などに関わっているフォトトロピンもフラビンタンパク質です(4、5)。数億年にわたる植物の進化の過程で、フラビンタンパク質は光センサーとして連綿と引き継がれてきたというわけです。

図1の右側にはミドリムシ(ユーグレナ)と似て非なるコナミドリムシ(クラミドモナス)という単細胞生物が描かれています。この生物もミドリムシと同様、エネルギーを内包する葉緑体によって作りだすことができます。一方で酢酸を栄養源として従属栄養的に生きることもできます(6)。鞭毛は片方が小さくなることなく立派に2本あります(バイコンタ)。そして傍鞭毛体はなく、光は眼点で検知します。名前は似ていますし、独立栄養でも従属栄養でもいきられるという点でも似ていますが、ミドリムシ(ユーグレナ)とコナミドリムシ(クラミドモナス)は構造的には全く異なる生物です。

ユーグレナはフラビンタンパク質を光センサーとして用いていると前述しましたが、クラミドモナスやある種の古細菌(7)は私達と同じロドプシンを持っています。ロドプシンは分子の内部に補因子として、フラビンではなくレチナールを抱え込んでいて、レチナールの構造変換を光を感知する手段として用います(8、9)。ロドプシンについては後に詳述しますが、すべての動物の光センサーはロドプシン-レチナールの構造変換が基本となっています。

ユーグレナは眼点ではなく傍鞭毛体で光を検知すると前述しましたが、ではユーグレナの眼点は何のためにあるのでしょうか? 眼点にはカロテノイドという色素があり、傍鞭毛体への光のシェードのようになっています(図2A)。これによってどの方向から光がきているのか判定しやすくなり、鞭毛がどう動けば良いのか指示を出しやすくしていると考えられます(10、11)。

このような方式は、多細胞生物であるプラナリアの眼にも受け継がれており(図2B)、色素細胞によるシェードは光の方向を判断する上で重要な役割を果たしていると思われます。また複眼の一つ一つをカメラの1画素のように用いる生物、たとえばある種の環形動物(図2C)や昆虫などは複眼と複眼の間を色素細胞のカーテンで遮断しており、解像度が高められています。

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ロドプシンはこのブログでもお馴染みの7回膜貫通タンパク質(12、13)の1種です。通常膜貫通タンパク質は細胞外に化学物質の受容部位があり、細胞外から来た情報を細胞内に伝達する役割を持っています。ロドプシンはこの種のタンパク質ですが、ちょっと変わっているのは細胞外に化学物質の受容部位はなく、そのかわり分子内部にレチナールというビタミンA(レチノール)がアルデヒド化された光感受性物質を保持しており(図3)、この分子を使って細胞が受けた光情報を細胞内に伝達する役割を持っているところです。

レチナールがロドプシン分子から離れた場合、残されたタンパク質をオプシンと呼びます。すなわち、オプシン+レチナール=ロドプシンです。

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具体的には図4のように、シス型レチナールが光照射によってオールトランス型レチナールに変換され、その結果ロドプシンの立体構造が変化して、その後の連鎖的化学変化の起点となります。

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ロドプシンには大きく分けて、タイプ1(微生物型ロドプシン):原核生物、藻類に存在、およびタイプ2(動物型ロドプシン):真核生物以上に存在 の2種類があり、クラミドモナスなどにあるのは前者、私達にあるのは後者ということになります。このほか古細菌などにも別のタイプのもの(バクテリオロドプシン)があり、動物型ロドプシンはGタンパク質を使ってイオンチャンネルを開閉することによって細胞を過分極・脱分極させてパルスを発生し、神経細胞によって視覚情報を伝達する目的で使われています。微生物型はさまざまな目的で使われており、まとめて議論するわけにはいきません。

図5左に動物網膜の桿体細胞が示してありますが、この細胞の受光側(上側)は細胞膜の面積を増加させるべく折りたたまれたような構造をとっており、そこに多数のロドプシン分子が埋め込まれています。受光の結果オールトランス型となったレチナールは結局ロドプシン分子から解離してフリーとなり、ATPを消費するレチナールイソメラーゼの酵素作用によって11-シスレチナールに変換され、11-シスレチナールはオプシンと再結合してロドプシンが再生されます(14、図5)。

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図6(ウィキペディアより)を使って、動物の場合光照射によってなぜ神経にパルスが発生するかを時系列で箇条書きすると次のようになります。

1.ロドプシンが光照射を受けると、前述のようにレチナールが解離しオプシンとオールトランスレチナールとなります。

2.オプシンは3量体G蛋白質であるトランスデューシンを活性化します。この結果トランスデューシンは結合していたGDPを失い、代わりにGTPを結合します。

3.トランスデューシンのα サブユニットにGTPが結合すると、α サブユニットはβγ サブユニットから解離し、GTPを結合したまま単独行動をとります。

4.α サブユニット-GTP複合体はフォスフォジエステラーゼを活性化し、その結果細胞内の cGMP(サイクリックGMP) はGMPに転換し、cGMPの濃度が低下します。

5.この結果 cGMP の作用で開いていたナトリウムチャンネルが閉鎖されます。

6.ナトリウムチャンネルが閉鎖されているにもかかわらず、カリウムチャンネルは開いているのでカリウム(細胞内の濃度が高い)が細胞外に放出され、細胞は過分極状態となります。その後の過程で脱分極がおこります。詳細を知りたい方は文献14~16を参照して下さい。

図はクリックすると拡大できます。

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高度好塩菌は光照射によってロドプシンが構造変化をきたすことを利用して、細胞内の水素イオンを細胞外に能動輸送するというシステムを持っています(15、図7)。これはミトコンドリアでの電子伝達系と似たメカニズムで、水素イオンが細胞内にもどるときにATPを合成することができます。すなわちロドプシンを使って、光エネルギーを化学エネルギーに変換するメカニズムです。

真核生物はミトコンドリアを取り込んだので、ロドプシンはいらなくなったかもしれないのですが、それから数十億年後私達はロドプシンでいろんな物を見て識別しています。眼ができるまでにロドプシンが何をしていたのか、それに興味をひかれます。

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ロドプシンの発見などについて脳科学辞典に記載がありました(17)。以下引用しておきます。
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「ロドプシンについて初めて報告があったのは1876〜77年頃である。ドイツのFranz Boll (1849-1879)、続いてFriedrich Wilhelm (通称Willy) Kühne(1837−1900)がカエル網膜の桿体視細胞の外節にある赤い物質の感光性を報告した。 Kühneはこの色を“Sehpurpur”と呼び(英:Visual Purple, 日:視紅)その基となる化学物質をRhodopsin と名付けた。初期の視物質研究では視物質のことをVisual Purpleと呼んでいたが、しだいにRhodopsinが多く使われるようになり現在ではRhodopsinというのが一般的である。 ウシロドプシンの一次配列は1982年に決定され、その翌年にはクローニングされている。」
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発見者のボ-ルとキュ-ネ、および一次構造を明らかにしたオヴチニコフ(18)の肖像を図8に貼っておきます。なお遺伝子構造はネイサンスとホッグネスによって1983年に発表されています(19)。

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ボ-ルはカエルを暗いところに置いておくと網膜が赤くなり、光を当てると褪色するすることから光感受性物質の存在に気が付きました(20)。彼は30歳の若さで夭逝してしまったので、キューネが仕事を引き継ぐことになりました。彼らの業績は20世紀後半の分子生物学の勃興によって、花開くことになりました。

参照

1)伊関峰生 ミドリムシにおける光センシングの分子機構 Jpn. J. Protozool. Vol. 40, No. 2. , pp. 93-98 (2007)
http://protistology.jp/journal/jjp40/093-100Iseki.pdf

2)アンドリュー・パーカー 眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く 草思社 (2006)

3)渋めのダージリンはいかが 眼の誕生とカンブリア爆発1
http://morph.way-nifty.com/grey/2007/06/post_9cc6.html

4)Masayoshi Nakasako, Kazunori Zikihara, Daisuke Matsuoka, Hitomi Katsura, Satoru Tokutomi., Structural Basis of the LOV1 Dimerization of Arabidopsis Phototropins 1 and 2., Journal of Molecular Biology 381 (3), 718-733 (2008)
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2008/080821/

5)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%88%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%94%E3%83%B3

6)高橋裕一郎、福澤秀哉 モデル生物として注目される緑藻クラミドモナス
蛋白質 核酸 酵素 vol.45, no.12, pp. 1937-1945 (2000)
http://www.molecule.lif.kyoto-u.ac.jp/pdf/pne2000.pdf

7)Bacteriorhodopsin, protein databank japan.,
https://pdb101.rcsb.org/motm/27

8)Oleg A. Sineshchekov, Kwang-Hwan Jung, and John L. Spudich., Two rhodopsins mediate phototaxis to low- and high-intensity light in Chlamydomonas reinhardtii., PNAS,  June 25, vol. 99 (13) pp. 8689-8694 (2002); https://doi.org/10.1073/pnas.122243399
http://www.pnas.org/content/99/13/8689?ijkey=9610ff22c274cb08d7b261283e27286899e851ee&keytype2=tf_ipsecsha

9)Hongxia Wang, Yuka Sugiyama, Takuya Hikima, Eriko Sugano, Hiroshi Tomita, Tetsuo Takahashi, Toru Ishizuka, and Hiromu Yawo., Molecular determinants differentiating photocurrent properties of two channelrhodopsins from Chlamydomonas. J. Biol. Chem. 284, 5685 - 5696. (2009)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19103605

10)https://en.wikipedia.org/wiki/Euglena

11)https://blog.goo.ne.jp/motosuke_t/e/9e6b34a2218709d79a2024bec3f60ebb

12)http://morph.way-nifty.com/grey/2017/05/post-38c0.html

13)http://morph.way-nifty.com/lecture/2017/05/post-e9c6.html

14)https://en.wikipedia.org/wiki/Visual_phototransduction

15)https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2012/03.html

16)Stefano Costanzi, Jeffrey Siegel, Irina G. Tikhonova,1and Kenneth A. Jacobson., Rhodopsin and the others: a historical perspective on structural studies of G protein-coupled receptors., Curr Pharm Des. vol.15 (35): pp. 3994–4002. (2009)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2801150/

17)松山 オジョス 武、七田 芳則、 ロドプシン 脳科学辞典
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%AD%E3%83%89%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3

18)Yu.A. Ovchinnikov., Rhodopsin and bacteriorhodopsin: structure—function relationships., FEBS lett., vol.148, no.2, pp. 179-191 (1982)
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1016/0014-5793%2882%2980805-3

19)Nathans J, Hogness DS., Isolation, sequence analysis, and intron-exon arrangement of the gene encoding bovine rhodopsin., Cell., vol. 34 (3): pp. 807-814. (1983)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6194890

20)http://neuroportraits.eu/portrait/franz-christian-boll

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2018年6月19日 (火)

FIFAワールドカップ: おめでとうJ代表

800pxfifa_world_cup前半3分でサンチェスがペナルティーエリア内のハンドで退場。香川が決めて1:0。これでもうコロンビアはガタガタになりました。

特にベンチが動揺して、クアドラードを引っ込めてしまったので、ハメスもバッカもなぜかスタメン落ちの中で、がっくり攻撃力が低下してしまい、もうJの思うがまま。

FKで1点取られましたが、あれは完全なミスジャッジです。あんな判定で国際審判なのかとあきれてしまいました。

相手が引き分け狙いで引いてくれたので、日本は後半には自由に回せて非常に楽なゲームになりました。そして守備でも攻撃でも大迫が凄さを見せつけました。ハメスがたった一度のチャンスで決めるところを奇跡的に止めました。

原口は非常に頑張っていましたが、パスの精度が悪くていまいちでした。本田はベンチで応援に回った方がいいと思いました。川島もキンテロにはめられたのはまずかった。他のメンバーは実力を出し切ったのではないでしょうか。

ともあれ、おめでとうJ代表。

今回はアジア枠を拡張するために重要なワールドカップなので、イラン・サウジ・オーストラリア・韓国にも是非グループリーグを勝ち残って欲しいと思います。

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2018年6月17日 (日)

都響-カエターノ: カリニンコフ交響曲第1番@サントリーホール2018・6・17

Imga今日も早朝からの長い会議を終了直前に退席して、梅雨空の中を急いでサントリーホールへ。地下道を上がるとMr.塩田が業務服でドトールに並んでいました。どうしたのかしらと思ったら、彼は後半だけの出演でした。

本日の指揮者はマエストロ・カエターニ。コンマスは四方さんでサイドはゆづき。チャイコフスキーのピアノ・コンチェルトです。休日とあってほぼ満席の盛況。前回とは大違いで、こうじゃなくっちゃね。トイレは混みますが。

ソリストは童顔の達人、藤田真央。浅田真央と一字違いとは・・・。彼の演奏はすごくプリサイスなんですが、達人風ではなくむしろ清楚な感じが持ち味なのでしょう。第2楽章など可憐なコスモスのようなイメージです。私の印象としては、彼は独奏・室内楽向きのピアニストじゃないかなと感じました。ソリストアンコールは Chopin Mazurka op.63-3
https://www.youtube.com/watch?v=EG8wX5cgKmQ

後半はカリニンコフの交響曲第1番。カエターニさんは極短指揮棒で登場。私はこの曲のCDはクチャル指揮ウクライナ国立交響楽団のを持っていますが、
https://www.youtube.com/watch?v=osOb6WjmoO8

第2楽章は今日の演奏にしびれましたね。都響の演奏も素晴らしいですが、カリニンコフは天才です。美しいメロディや合奏、掛け合いが次々とあふれ出してきます。第3楽章もそうですが、鷹栖さんのビビッドなオーボエ演奏をたっぷり聴けたのは大満足です。マエストロ・カエターニも運命交響曲に続いて、またも最初に彼女を指名して立たせていました。

第2楽章
https://www.youtube.com/watch?v=E11v2sh4PD8

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2018年6月16日 (土)

サラとミーナ201: ミーナは寒がりなのか?

ミーナは春まではふとんにもぐって眠る場合が多いのですが、梅雨の季節になるとさすがに暑苦しいのか、こんどは敷布シートの下にもぐって眠ります。布団のようにふわふわしてはいないので、もぐりにくいと思いますが、いさいかまわずこのような状態に。

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中を見ると、ぐっすりでした。

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ミーナは2007年からうちにいて、多分12才だと思いますが(ひきとるまでシェルターにいたので正確な年齢はわかりません)、精神年齢については全く来たときと変わりません。飼い主に甘えることが大好きです。サラとは10年以上かけて、だんだん親しい関係になりましたが、それでも甘えてきてるのかなと思うのは1日に数分でしょうか?

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2018年6月13日 (水)

2018 FIFAワールドカップ バルサ選手も参戦

800pxfifa_world_cupいよいよワールドカップが近づいてきました。西野朗率いる日本代表も、ようやく誰を使えば良いかわかってきたようです。

酒井高徳と乾貴士が絶好調なのは頼もしい。柴崎・岡崎・香川・酒井宏樹が出場できる状態なのも頼りになります。

緒戦のコロンビアには、普通にやっていては勝つチャンスはほぼゼロですから、引き分けるための戦術的なサッカーをやらなければいけません。是非451でやってほしいと思います。後半途中まで失点ゼロでおさえれば、スタミナ勝負に持ち込んで勝てるチャンスもあると思います。

セネガルとポーランドには、普通に4231か442で全力でぶつかるのみです。最終ラインのコントロールを、心を合わせてきっちりやってほしいと思います。

バルサ選手も、多くが各国チームから参戦します。リストを作ってみました。

Braugrana

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スペイン
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ジェラール・ピケ
セルヒオ・ブスケツ
ジョルディ・アルバ
(アンドレス・イニエスタ)
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ウルグァイ
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ルイス・スアレス
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フランス
---------------------
サミュエル・ウムティティ
ウスマヌ・デンベレ
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アルゼンチン
---------------------
リオネル・メッシ
=====================
クロアチア
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イヴァン・ラキティッチ
=====================
ブラジル
---------------------
フィリペ・コウチーニョ
パウリーニョ
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ドイツ
---------------------
テア=シュテーゲン
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ベルギー
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トーマス・フェルマーレン
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コロンビア
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ジェリー・ミナ
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註:イニエスタはヴィッセル神戸に移籍

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2018年6月12日 (火)

都響-カエターノ: ベートーヴェン交響曲第5番「運命」@東京文化会館2018・6・11

Imgコンマス矢部ちゃんの復活で胸をなでおろしましたが、さすがに雨男の面目躍如で台風接近です。とりあえず開腹手術などはしなくてすんだようで何よりですが、S席以外はスカスカという久しぶりで不入りの都響コンサートです。本日の指揮者はお馴染みのオレグ・カエターニ、サイドはマキロン。

シューベルトの交響曲第3番はアニマ・エテルナの全集を持っていて時々聴いています。この頃のシューベルトの音楽はモーツァルトの影響が強い感じで、この曲はなかなか楽しい雰囲気の音楽です。

都響はいつものように引き締まった弦楽アンサンブルと躍動する管楽器で、アニマ・エテルナに勝るとも劣らない名演奏でした。個人的には古楽器には余り興味がないので、都響に全集を出版して欲しいくらいです。

2曲目は矢代秋雄のチェロ協奏曲。ソリストはお馴染みの宮田大です。ソリストもオケ(特に久一)も演奏が立派なことはわかりますが、曲がね・・・。日本人ならこれに感動しろといわれても。眠らずにちゃんと聴いてはいましたが。

だいたい日本人だからといって、中学生のころから雅楽とか武満・矢代などの音楽に馴れ親しんでいるかというと、そんなことはありませんからね。私の中学生のころはまさしくビートルズやローリングストーンズの時代で、個人的にはサイモン&ガーファンクルやビージーズの音楽にはまっていました。だいたい子供が聴いて楽しいと思えるオリジナルの日本の音楽なんて当時はなかったんですね。

そして中学時代のクラシック入門は、チャイコフスキーの「白鳥の湖」とマーラーの「巨人」でしたから、そもそも日本の音楽なんてこれっぽっちも刷り込まれていないのです。ですから武満や矢代の音楽は、大人になってから触れたエイリアンです。そういう音楽でも遺伝子が反応する場合もありますが、そういうものでもありません。

ただソリストアンコールの荒城の月は、さすがにお馴染みなのですごいと思いましたが。

休憩後のベートーヴェン「運命」交響曲はオケの看板みたいな曲ですから、さすがに都響の演奏にぬかりはなく、矢部ちゃんも復活初演ということで、椅子からずり落ちそうなくらいに頑張っていました。マエストロ・インバルのように鉄の規律でビシビシ進むというより、マエストロ・カエターノの指揮は、思い切り歌うという方向に感じられました。

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2018年6月10日 (日)

やぶにらみ生物論106: 昆虫の微小脳 1.イントロダクション

ウィキペディアに哺乳類の体重と脳重量のグラフが出ていました(1、図1)。脳が巨大だと知能が高いという単純な比例はありませんが(だとゾウやクジラはヒトより知能が高いはず)、グラフの斜めの実線より上ということは体重当たりの脳重量が比較的高いということを意味し、霊長類やイルカが線より上ということは脳/体重比はある程度の指標にはなるのかもしれません。

脳化指数=Kx(脳の重さ/体重の2分の3乗)などという指標を考えた人もいますが(2)、それが知能を比較する上できちんとした科学的根拠になるかというとそんなことはありません。通常ネコの脳化指数を1としてKを決めます。ウィキペディアによるとネコを 1 とすると、ヒトは 7.4-7.8 となるそうです。

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図1を哺乳類以外まで拡張したのが図2です。種も指定していないので精密な図ではありませんが、魚類を標準とすると(点線で囲まれたブルーの領域)、知能の高そうなヒト・カラス・イカや無脊椎動物でもアリ・ショウジョウバエ・ミツバチなどは上にきています。体重と脳重量について詳しくデータを出しているサイトがあります(3)。

注意すべきは、鳥類などは特に空を飛ぶために体重は極力軽くするように進化した動物です。ですからスズメの脳重量は体重の4%もあり、ヒトの2.4%よりも上ですが、だからといってスズメの方がヒトより知能が上というわけではありません。

ただ鳥類の中でも、カラスは針金を曲げて道具を作ってエサをとることができますし、秋にエサをとって隠しておき冬に食べる鳥もいます(長期記憶)。これらは霊長類に匹敵する能力といえます。

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アリやハチの脳は非常に小さいですが、なかでもアザミウマタマゴバチというアザミウマに寄生するハチは世界最小のハチで(体長<200µm)、脳も極端に小さいです(4~6)。このハチの脳にはニューロンがわずかに4600個程度しかありません。ちなみにミツバチの脳には85万個のニューロンがあるのだそうです(4)。寄生蜂でも普通このハチより一桁多いニューロンを保有しています。それでも形態は普通のハチと変わらず(羽の形は特殊ですが、図3)、ちゃんと宿主をさがして卵を産み付け、成虫になったら交尾して子孫をつくることができます。

驚くべきはアザミウマタマゴバチのニューロンのうち95%が細胞核を失っているということです(6、7)。私達の体にも核の無い細胞は結構あって、表皮・毛髪・赤血球などは核を持っていません(8、9)。表皮や毛髪の核は分解によって(8)、赤血球の核は細胞質分裂によって(9)核を失います。しかしニューロンはすべて核を持っています。アザミウマタマゴバチはさなぎの時代にはニューロンが核をもっており、羽化するときに核が分解します。

核が分解することによって細胞の容積は小さくなり、小さな脳に多数のニューロン(といってもたかだか4600個ですが)を詰め込むことが可能になります。このことは重要な事実を示唆します。つまり空を飛び、えさや水を採取し、交尾し、宿主を探し、卵を産み付けるという活動にはニューロンのDNAは無用かもしれないということです。それでも5%の細胞はDNAをもっているので断言はできませんが、おそらく分解しきれなかったというだけで不要なのでしょう。むしろそこまで特殊な処理を行っても、寄生蜂としての活動を行なうためには、最低でも4600個のニューロンの確保が必要だったと思われます。

クモの1種 Anapisona simoni は体長が0.6mmほどしかなく、頭に脳が入り切りません。そこで脚や胸まで脳がはみ出しているという報告があります(10、11)。このクモは体重の5%を脳の重量が占めており、脳/体重の比率はヒトの2倍です。昆虫の脳は非常に効率の良い構造になっていることが知られていますが、アザミウマタマゴバチやこのクモの脳は、これ以上小さいと種を保存するために必要な数のニューロンを収容しきれない限界を示していると思われます。

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こうしてみると、微小脳とはいえ多くの昆虫の脳には余裕の数のニューロンが存在していることがうかがえます。これらを使って昆虫が知的活動を行うとしても不思議ではありません。

昆虫が自分の巣のまわりの景色を記憶して帰巣することを証明したのはニコラース・ティンバーゲンでした(12、1952年)。彼が実験動物として使ったジガバチ(ツチスガリ)のメスはえげつない生物です。まず地面に穴を掘っておき、巣穴が完成すると狩りに出かけます。エサとなる蝶や蛾の幼虫を毒針で刺して毒を注入し、麻痺させた状態で巣穴に持ち帰ります。獲物を巣穴に引きずり込み、その上に卵を産み付けます(13)。産み付けられた卵は孵化したあと、親が残してくれた獲物を食べて成長し「さなぎ」になり、やがて成虫になって飛び立ちます。

したがってジガバチの母親は、自分が掘った穴の位置を記憶しておかないといけません。ティンバーゲンはジガバチが巣穴で休んでいるときに、穴の周りに松かさを置きました(図4)。ジガバチは巣から出るときに数秒間巣の周りをぐるぐると飛び回り、「景色を記憶してから」飛び去りました。そのあとティンバーゲンは松かさを取り去り、それを同じ配列で少し離れた他の場所に置きました。やがてジガバチが獲物を捕らえて戻って来ると、本当の巣の入り口ではなく移動した松かさのサークル中心に着地しました。ジガバチは巣の入り口のまわりに松かさがあったことを覚えていたのです。

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ティンバーゲンはさらに、松かさの間に松のオイルを塗りつけたボードを配置しました。ひょっとするとジガバチは松かさのサークルを覚えていたのではなく、松の匂いにひかれたのかもしれません。この場合もジガバチは巣穴の近くに配置した松の匂いのするボードには戻ってこなくて、松かさのサークルの方に戻ってきました(図5)。このことからジガバチはやはり松かさの配置を記憶していたのだと考えられました。

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昆虫の形態(図6、ウィキペディアより 14)をみていると、4足歩行の哺乳類と同様、本当に素晴らしいボディプランだと感動します。彼らの唯一の弱点は肺を持たないということです。そのため今日のような酸素濃度の低い大気の中では小型の種しか生み出すことができません。

このことによって当然脳のサイズも制限されて、小型の脳=少数のニューロンで効率的に個体を制御するべく進化してきました。彼らの中枢神経の構造はプラナリアと同様、腹側に神経索(ヒトの場合は背側にあり脊髄と呼ばれる)が尾部まで伸びていて、頭部では消化管とクロスする形で背側に至る脳を形成しています(図6)。

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ここでもう一度系統樹をながめて復習してみましょう(15)。生物の中には数億年もの間、脳をもたずに生活してきた海綿動物や刺胞動物がいます。彼らの中には活発に海を泳ぎ回り積極的な摂食を行なうクラゲのような生き物もいますが、神経環のような脳に至らない統合組織で十分事足りる生活でずっと生きてきました。

プラナリア(扁形動物)は脳をもっていますが、系統樹の同じ幹の線形動物や環形動物は脳らしき臓器は持っていません。ただ彼らも感覚ニューロン・介在ニューロン・運動ニューロンは保持していて(16)、図7のように数としてはきわめて少ないニューロンによって活動を維持しています。このような生物に比べると、プラナリアは脳を発達させて革命的な進化を遂げたと言えます。

昆虫はプラナリアの幹とは別の幹に位置する節足動物のグループなのですが(15)、この幹で最初に脳を持ったのはどの門の生物なのかはよくわかりません。節足動物は素晴らしい脳を獲得して現代に至っています(図7)。

私達脊索動物の幹では脊椎動物が突出して発達した脳を持っていますが、脊索動物門の中でも頭索動物のナメクジウオは脊椎動物に比べるとわずかな数のニューロンしか持っていませんし(図7)、尾索動物は成体になる過程で中枢神経系が衰退してしまって脳を持ちません。尾索動物は進化の過程で中枢神経系が不要な生活様式を選択したため、中枢神経系が退化したといわれています(18)。

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図8はクロオオアリの脳の構造ですが、西川道子氏の図を模式化させていただきました(19)。昆虫の脳はヒトの脳と比べると随分形態が異なります。なかでも前部にキノコ体という奇妙な葉が左右に突出しています。ここでは何が行なわれているのでしょうか?

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ミツバチは脚や触覚が砂糖水に触れると、口吻を延ばして飲もうとします。そこで砂糖水を脚や触覚に触れさせる直前に特定の匂いをかがせることを繰り返すと、その匂いをかいだだけで口吻を延ばすという条件反射を行なうようになります。ところが冷却した針をキノコ体に刺してその活動を抑制すると条件反射は成立しません。このような実験を行なったメンゼルらは、キノコ体が匂いの記憶にかかわっていることを示唆しました(20、21、図9)。またショウジョウバエでもド・ベル、ハイゼンベルクらの研究によって、キノコ体を破壊すると記憶の能力を失うことがわかりました(22、図9)。

水波とシュトラウスフェルトは壁に模様をつけた小部屋にゴキブリを閉じ込め、床に熱い部分とそうでない部分をつくりました。ゴキブリは試行錯誤をくりかえして熱くない部分に集まります。何度も繰り返しているうちに、ゴキブリたちは短時間で熱くない部分にたどり着けるように学習します。ところが壁の模様を取り去ると、ゴキブリたちは目指す場所になかなかたどり着けなくなります。つまりゴキブリは壁の模様を記憶して場所を覚えていたわけです。ところがキノコ体を脳から切り離すと、いくらくりかえしても壁の模様を記憶できなくなることがわかりました。このことからキノコ体が視覚情報の記憶にかかわっていることがわかりました(23、図9)。

A_18


参照

1)https://en.wikipedia.org/wiki/Brain-to-body_mass_ratio

2)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E5%8C%96%E6%8C%87%E6%95%B0

3)http://akaitori3.web.fc2.com/nou.html

4)Dangerous Insects:
http://dangerous-insects.blog.jp/archives/7285835.html/%E3%82%A2%E3%82%B6%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%82%B4%E3%83%90%E3%83%81

5)神無久 サイエンスあれこれ
http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1581784.html

6)Megaphragma mymaripenne:
https://en.wikipedia.org/wiki/Megaphragma_mymaripenne

7)Alexey A. Polilov, The smallest insects evolve anucleate neurons., Arthropod Structure & Development., vol. 41, pp. 29-34 (2012)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1467803911000946?via%3Dihub

8)Kiyokazu Morioka et al., Extinction of organelles in differentiating epidermis. Acta Histochem Cytochem., vol.32, pp. 465-476, (1999)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ahc1968/32/6/32_6_465/_article/-char/en

9)Hiromi Takano-Ohmuro, Masahiro Mukaida, Kiyokazu Morioka., Distribution of actin, myosin, and spectrin during enucleation in erythroid cells of hamster embryo., Cell Motil & Cytoskel., vol.34, pp. 95-107 (1996)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/%28SICI%291097-0169%281996%2934%3A2%3C95%3A%3AAID-CM2%3E3.0.CO%3B2-H

10)Rosannette Quesada et al., The allometry of CNS size and consequences of miniaturization in orb-weaving and cleptoparasitic spiders., Arthropod Structure & Development., vol. 40, pp. 521-529 (2011)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1467803911000727

11)William G. Eberhard., Miniaturized orb-weaving spiders: behavioural precision is not limited by small size. Proceedings of the Royal Society B., doi:10.1098/rspb.2007.0675  Published online
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download;jsessionid=1C3A5F0462B5FD66E9153209AEE260DC?doi=10.1.1.512.3545&rep=rep1&type=pdf

12)Paul Kenyon., Interactive learning activity: Home location by digger wasps.
http://www.flyfishingdevon.co.uk/salmon/year1/psy128ethology_experiments/wasp_learning_activity.htm

13)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%AC%E3%83%90%E3%83%81

14)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%86%E8%99%AB%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0

15)http://morph.way-nifty.com/lecture/2018/05/post-fca7.html

16)http://molecular-ethology.bs.s.u-tokyo.ac.jp/labHP/J/JNematode/JNematode03_circuit.html

17)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%95%B0%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

18)有賀純 脳を捨てた動物たち 理研BSIニュース No.27 (2005)
http://www.brain.riken.jp/bsi-news/bsinews27/no27/network.html

19)https://invbrain.neuroinf.jp/modules/htmldocs/IVBPF/Ant/Ant_brain.html?ml_lang=ja

20)Menzel R., Erber J., Masuhr T., Learning and memory in the honeybee. in Experimental analysis of insect behaviour, ed Barton-Browne L. (Springer, Berlin, Germany), pp 195–217. (1974)

21)Martin Hammer and  Randolf Menzel., Multiple Sites of Associative Odor Learning as Revealed by Local Brain Microinjections of Octopamine in Honeybees. Learning Memory vol. 5, pp. 146-156 (1998)
http://learnmem.cshlp.org/content/5/1/146.full

22)Belle J.S., Heisenberg M., Associative odor learning in Drosophila abolished by chemical ablation of mushroom bodies. Science vol. 263: pp. 692–695. (1994)
http://science.sciencemag.org/content/263/5147/692?ijkey=3261ad7369a4512a5caec4d6b87f24c323039c90&keytype2=tf_ipsecsha

23)Makoto Mizunami, Josette M. Weibrecht, Nicholas Strausfeld., Mushroom Bodies of the Cockroach: Their Participation in Place Memory., The Journal of Comparative Neurology vol. 402(4): pp. 520-537  (1998)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/%28SICI%291096-9861%2819981228%29402%3A4%3C520%3A%3AAID-CNE6%3E3.0.CO%3B2-K
https://www.researchgate.net/publication/13426406_Mushroom_Bodies_of_the_Cockroach_Their_Participation_in_Place_Memory

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2018年6月 7日 (木)

JPOP名曲徒然草187: 「Room #602」 by 水越けい子

Imgz気候も身辺もなにかと憂鬱なことが多い梅雨の季節となりました。

想い出や妄想に逃避するのもいいかもしれません。

水越恵子(現 水越けいこ)
 「Room #602」 
作詞・作曲 水越恵子

taurus TATX-2314 アルバム「Sepia」に収録されている1990年の作品です。

長い間アップが1本だけだったのでためらっていたのですが、紹介してみました。

この窓から見える空の景色は、雲が厚くたれこめていなければなりません。

Today, let me be selfish please, in the room #602 of a seaside hotel.
I'd like to ruffle you, appearing always be happy.
Please aware the tenderness of the sound of sea wave now.
.........

https://www.youtube.com/watch?v=zoQwq9fCU-8

水越けいこさんのオフィシャルブログ「M size」
https://ameblo.jp/keiko-mizukoshi/

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2018年6月 5日 (火)

ルスティオーニ-都響 R・シュトラウス「イタリアより」@サントリー・ホール2018・6・5

Img森ビルの3Fは大改変で、ほとんどがエリートサラリーマンの昼食に最適の店ばかりになったようです。

私はカウンターの天ぷら屋を選びましたが、1000円と少しの価格で、目の前で野菜・エビ・魚・卵などを3度にわけて揚げてくれる定食が食べられるので感激しました。アサリの豪華な味噌汁もついてきます。他にも海鮮丼やエスニック、中華、肉食派、サラダ派用の店などがあって、主にカウンターでの昼食と弁当を提供しているようです。

毎日こんな昼食をとっていると良い仕事も出来るのでしょう。私の前をエリートキャリアウーマンのような足取りでサーッと通り過ぎていく人は、誰かと思えばエンカナでした。

ダニエーレ・ルスティオーニは欧州でもひっぱりだこの若手指揮者ですが、なぜか日本で多くのオケを指揮してくれる日本好きの方のようです。都響ともオペラやコンサートで何度も共演しています。

本日のコンマスは矢部欠場ということで神奈川フィルの崎谷さんがピンチヒッターで登場。サイドはゆづきです。フィガロの結婚序曲では、まずルスティオーニがオペラの登場人物のようなアクションでびっくり。ずっとそんな感じで激しいアクションの指揮なのですが、アドレナリンが出過ぎてオケを強引にドライブするという感じは無く、むしろ予め演出を考えて随分仕草を練習してきているなと思いました。「幻想交響曲」のとき(下のYouTube)には、そこまでは感じなかったのですが。

つまりダンス付きの音楽で聴衆を楽しませる・・・というのが彼の流儀のようです。まあダンスにきっちりつきあってくれるオケあってのパフォーマンスですが。これって悪くないです。多分欧州では批判を気にしてやってないのかも。これをやりたくて日本で指揮しているのか?? 崎谷さんはえらいモノに遭遇してしまってご苦労様。

ヴォルフ=フェラーリのVnコンチェルトには、ソリストとして奥方のデゴが目の覚めるようなグリーンの衣装で登場。曲はまあまあでしたが、彼女の楽器の音がすごい。あくまでも上品な音なのですが、素晴らしい音量で豊かに響きます。前回のスムが可哀想になるくらいです。デゴはその音に負けないようなゴージャスな美貌とテクニックで圧倒されました。ソリストアンコールはパガニーニの24のカプリースから。

コンチェルトも後半のR・シュトラウス「イタリアより」も実演を含めて初めて聴く曲だったので、堪能するには至りませんでしたが、「イタリアより」の叙情的な第3楽章や、フニクリ・フニクラをパクって作曲した第4楽章はなかなか聴き応えがありました。例によってルスティオーニのダンスパフォーマンスも全開です。

折角いい気分で深夜に帰宅したら、ポストにとんでもない書類があって、今日は朝から善後策にバタバタしてしまいました。まあ人生こんなものですかね。

Daniele Rustioni
https://www.youtube.com/watch?v=WNNVjuyS7r4
https://www.youtube.com/watch?v=8RSjp3xcZ0E

with Francesca Dego
https://www.youtube.com/watch?v=w8ZFS2Efens
https://www.youtube.com/watch?v=9Gk6-JjDrfo

Francesca Dego
https://www.youtube.com/watch?v=dTEDICv1cdU
https://www.youtube.com/watch?v=1lzAGY8ds68

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2018年6月 2日 (土)

サラダ音楽祭

1都響のスケジュールはだいたい1年前くらいには決まっていると思いますが、突然「サラダ音楽祭」というのが割り込んできました。

0歳児でも参加できるというのが新機軸のようですが、小池都知事の自己アピール用じゃないかな? なにしろご自分で指揮をなさるというのですから(もちろんすべてではない)。

2それでも都響としては、都知事が利用してくれるのは有難いことでしょう。お墨付きをいただいたようなものですからね。

矢部ちゃんが突如降板というのはびっくりしました。首が悪いという話は聞いていたので、そのためでしょうか? 

また颯爽と登場される日を心待ちにしております。

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2018年5月30日 (水)

小泉-都響 ドヴォルザーク交響曲第7番@東京文化会館2018・5・28

Imgいろんなボランティア仕事で忙しく、聴いた翌日に感想文を書くというのも困難になってきました。時が経つと忘れてしまうのが悲しい。団地の中で管理組合にばかり関わっていると世の中の流行などどこかに行ってしまいますが、久しぶりで東京に出るとレディースガウチョパンツが大流行していることに気がつきました。

私的にはこれは感心しないファッションです。日本人の体型に合わないからと言うのではなく、欧米人がはいていてもノーです。このファッションが似合う人というのを全く思いつきません。

https://matome.naver.jp/odai/2143471612179433201

ところがなんと都響のマキロンがいつものボディコンパンツでなく、巨大なガウチョでコンマス(矢部)のサイドに登場。後ろの小関がスリムパンツなので余計に目立ちます。小関はなかなか切れ味の良い演奏で、都響の1Vnにとって頼もしい補強でした。男性陣は蝶ネクタイにタキシードです。集客は平日の演奏会としては、まあそこそこ埋まったかなという感じ。

マエストロ小泉は大植の代役で悲愴交響曲をやったあたりから、考え方を変えたのではないかという気がします。つまり演奏の完成度よりも、当日の聴衆へのインパクトを重視する方向に転換したのではないでしょうか。大げさに言えば爆演指揮者への進化か? 選曲もそういう方向に向いているような気がします。

ドヴォルザークの謝肉祭は爆演向きの曲で、もくろみ通り客席も大いに沸きました。イングリッシュホルンはいつもの南方ではなくエキストラの方でしたが、その方が吹いているときの顔が面白すぎて吹き出しそうになりました。勘弁して欲しい。

グラズノフのヴァイオリン協奏曲は初めて実演で聴きました。ソリストはアレクサンドラ・スム。この人の楽器にはズブいっていうか不思議な重量感があり、これを操るスムは激しいボディアクションで奮闘するタイプの演奏です。この曲はエキゾチックムードのなかなかの名曲でした。ソリストも演奏しているうちにどんどん乗ってきた感じです。終盤の盛り上がりも、現在の小泉好みのエキサイティングな曲です。スムはユーモアも解する人で、拍手に答えて最後は手ぶらでステージに登場。もちろんソリストアンコールはなし。リサイタルに来てねってことかな。

https://www.youtube.com/watch?v=HHWrWWlbUl8

そして後半はドヴォルザークの交響曲第7番。スムは1F中央の客席で聴いていました。これは非常にブラームスっぽい曲であまり私は好きじゃないのですが、マエストロ小泉は有無を言わさず強烈な押し出し。都響もそれならやってやろうじゃないかと激しさの中にも整然としたアンサンブルで盛り上がっていました。私の中でこの曲のイメージがちょっと変わった気がしました。あと第2楽章のクラリネットは滋味溢れる響きでハートフェルトな演奏でした。



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2018年5月27日 (日)

オオミズアオ 予期せぬ訪問者

Photo

オオミズアオ ( Actias aliena

長い長い会議の議長に指名されて憂鬱な朝、玄関のドアを開けると外の壁に巨大な蛾が羽を休めていました。うっとりするくらい美しい蛾です。

横幅は10cmをゆうに越えています(バーは10円玉の直径)。調べると全国に分布する普通種だそうです。ただ成虫は食事も吸水もせず、寿命が1~2週間だとは!

https://namamono-moratorium.com/oomizuao-1086

↑学名にアルテミスが使われていると書いてありますが、最近変更されて上記のようになったそうです。

会議はやはり6時間もかかって(休憩はわずか10分)、ヨレヨレになりました。

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2018年5月24日 (木)

イニエスタ ヴィッセル神戸入団決定

Img_2464バルサを退団したイニエスタ(Andrés Iniesta Luján)がヴィッセル神戸に入団することに決まりました。

イニエスタは左サイドのテクニシャンで、ドリブルで相手を交わしてゴール前にショートクロスを供給するとか、一瞬のスキをついてスルーパスやループを、フォワードの突入に合わせるとかが得意のプレーヤーです。

若い頃には同じタイプのロナウジーニョがいて、しかもロニーはシュートもうまかったので、なかなかスタメンを張れずにブー垂れていたこともありました。イニエスタはシュートは基本的に下手です。

イニエスタは走る距離が長いと鈍足なので、守備を固めてカウンターで得点を狙うチームには向きません。そして意外にもトップ下でゲームをコントロールするのは苦手です。バルサの監督も、よく「もっとゲームをコントロールしろ」と注文をつけていたようですが、なかなかうまくいきませんでした。それは彼にはチャビの様な大局観がなく、瞬間の人だからです。一瞬相手より早く動いて、抜き去ったりパスを出したりする職人なんですよ。ですから相手の一瞬のもたつきをついて球を奪うのも得意です。

私はヴィッセル神戸の試合を見ていないのでどうなるか想像できませんが、イニエスタを使うならトップ下ではなく、左サイドの攻撃的MFとして使って欲しいですね。433なら左のFWでもいいと思います。

ただ彼もバルサでコントロールタワーの役がうまくいかなかったので、なんとか晩年にはトップ下をやって成功したいという希望があるかも知れません。それがモチベーションでサッカーを続けたいというならそれもいいかな。あともういい年齢(34才)で足も故障がちなので、適宜休ませつつ使って欲しいですね。

Biglobe news
https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0524/ori_180524_7169102616.html

Livedooer news
http://news.livedoor.com/article/detail/14759345/

youtube
https://www.youtube.com/watch?v=b87INOIr6tw

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2018年5月23日 (水)

やぶにらみ生物論105: 脳のはじまり2

刺胞動物は海綿動物と違って泳いだりエサを触手で捕まえたりという、かなり多くの細胞が協調し、統合された機能を発揮しないと実現しない複雑な動きをする動物です。そのために神経細胞を発展させ、多くの細胞から情報を集めたり、筋肉組織を使って統合的な行動を行なうようになりました。

もう一度進化系統樹を眺めてみると(図1)、刺胞動物のルーツはかなり系統樹の根元の方から枝分かれしています。枝分かれしてから数億年以上経過しますが、いまだに2胚葉であることから、かなり昔の生物の状態を残したいわゆる「生きた化石」のような側面もあると想像できます。化石が残っているわけではありませんが、「刺胞をもたないヒドラ」のような生物はカンブリア紀以前から存在していたのではないでしょうか。

Photo_2

神経という観点を中心にヒドラ(図2)とはどのような生物かをおおざっぱにみると、

1.ヒドラには8種類の細胞が存在します。上皮筋細胞・消化細胞・腺細胞・神経細胞・刺胞細胞・間細胞・精子・卵がその全てです。間細胞は自己複製するほか、刺胞細胞・神経細胞・腺細胞などに分化することができます(1)。

2.ヒドラの個体は10万個位の細胞から成り立っていますが、そのうち5~15個の細胞集塊から個体を復元できます。これはプラナリアよりも強力な復元力です(2)。

3.神経細胞は感覚ニューロン・運動ニューロン・介在ニューロン(感覚ニューロンから運動ニューロンへへの情報伝達を中継)・神経分泌細胞を兼任しています(3)。

4.ヒドラの神経細胞には軸索と樹状突起の分化はありませんが、シナプスがあり、神経伝達には方向性があります(4)。

5.神経伝達物質はペプチドですが、刺胞動物特有の多数の分子からなっています。神経細胞の種類によって分泌する神経ペプチドの種類は異なっています(5)。例えば胴体にはRFamide ペプチドが認められませんが、それより下部の足盤に近い部分には多量のRFamideペプチドが認められるなどです(5)。

6.アセチルコリン・モノアミン類・アミノ酸などペプチド以外の神経伝達物質はおそらく使われていません(6)。

というところでしょうか。

ただ 1.の間細胞というのがくせ者で、藤澤千笑によると間細胞には(精子に分化)(卵に分化)(精子+刺胞・神経・腺に分化)(卵+刺胞・神経・腺に分化)の少なくとも4種類の細胞があるそうです(7)。刺胞細胞・神経細胞は失われやすく常時間細胞の分裂と分化によって補給されないとヒドラは生きていけないようです。有性生殖は温度が下がったり、飢餓状態になったときなどに行ないます。それ以外の場合、体細胞の分裂によってポリプを生じて無性生殖を行ないます。

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藤澤は間細胞の研究過程で、(精子に分化)または(卵に分化)の単能性間細胞しかもたない個体を作成することに成功しました(7)。この個体は刺胞細胞や神経細胞を補給できないため「寝たきりヒドラ」と呼ばれ、無理矢理エサを口からつっこみ、胃の清掃も人が行なうことによって、なんとか生きていくことができます。はからずもヒドラの神経細胞の主要な機能(エサを捕獲する、口で捕食する、胃を動かして消化する)が明らかになったわけです。

Charles N.David はヒドラを単細胞に解離して放射能でラベルしたあと、ラベルした1個の細胞を非ラベルの多くの細胞と再集合させて増殖・分化させる実験系を用いて、ヒドラの間細胞は自己複製する場合と「自己+分化する細胞」に不等分裂する場合があり、後者によってすべての種類の分化した細胞を作成できることを証明しました(8、9、図3)。

すなわちヒドラは体内に受精卵と同様なすべての体細胞に分化できる全能性の幹細胞を保持していると言えます。

この全能性の幹細胞は自己複製できるので、不等分裂しなくても幹細胞が枯渇することはないわけですが(分化して消失した細胞の分だけ自己複製によって補充すればよい)、それでも不等分裂するのは、おそらく特定の位置に幹細胞があることによって、特定の部域に分化した細胞を遅滞なく供給できるというメリットがあるからだと思います。

このような全能性幹細胞が存在することは、生命の存続にとって非常に有利だと思いますが、どうして多くの生物がこのようなメリットを放棄せざるを得なかったかと言えば、それは他の生物のエサにならないなどの目的があって、様々な特殊機能を発達させようという方向に向かったという事情があるためでしょう。たとえば閉鎖血管系を持つ私達のような生物は、体が切断されるとたちまち出血多量で死亡するので、全能性幹細胞を持っていても宝の持ち腐れになってしまいます。

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多くの生物が全能性幹細胞を放棄することになったのはカンプリア紀でしょう。眼と高度な移動能力を持ち、細菌やプランクトン以外の生物をも補食する肉食動物の誕生は、生命のあり方を根本的に変えました。

刺胞動物より一つ上の進化系統の分岐点から扁形動物・線形動物・輪形動物の幹が形成されます(図1)。扁形動物であるプラナリアはこの分岐点から現在まで進化してきました。

彼らはひとつの個体の中に多数の幹細胞をもっていて、体を二つに分けるという方法で何十年も無性生殖だけで生き延びられるので、その間に変異したゲノムを持つ幹細胞からバラエティに富む遺伝的背景を持った個体が生まれます(10)。そのためDNAの塩基配列から進化系統の位置を決めることがなかなか難しいグループです。ただプラナリアは数個の体細胞から1個の個体をつくることはできないので、それなりにヒドラより再生能力は低下しているとは言えます。

扁形動物は一応線形動物・輪形動物と同じ系統樹の幹にはいっていますが、後2者は原口がそのまま口になり反対側に肛門ができるので前口動物としてまとめられています。

これにたいして、扁形動物は肛門をもたない(あるいは口と肛門が同じ)ので、形態学的に見れば前口動物でも後口動物でもない原始的な生物と言えます。ただ刺胞動物・有櫛動物・海綿動物と異なり、扁形動物は左右相称性を持っています。遺伝学的研究からは扁形動物は前口動物に近いとされています。

毛顎動物と扁形動物は図1では左右の遠い位置にありますが、両者とも肛門を持たず左右相称であり、最近の遺伝学的研究によると両者の祖先は意外に進化的に近い位置にあるのかもしれません(11、図1の赤点線)。

これは私の想像ですが、現在でも大繁栄している刺胞動物のグループから、なぜ扁形動物のような特殊な生物がわかれて生まれてきたのかと言えば、おそらく彼らはなんらかの生存競争に不利な条件をもっていて、プランクトンの少ない不利な場所、たとえばわき水の近くの清流などに追いやられたグループではないでしょうか。そのような場所でえさを見つけるために、彼らは脳や発達した神経系を持つことになったのでしょう。まさに「革命は辺境から」起きたのかもしれません。

プラナリアの脳は図4Aでは腹側神経索の一部が肥大した臓器のように見えますが、実際には図4Bのように眼と脳は背側にあって、独立した神経によって腹側神経索と連絡しているにすぎません。プラナリアの脳はまず右脳と左脳に分かれており、それぞれから9対の神経束が周辺に伸びています(図4A)。それぞれの神経束が収納するニューロン群が集積してドメイン構造(葉、ローブ、コンパートメントなど呼び方はいろいろ)を作っています。

A_10

脳は前後にならんだドメインにわかれているだけでなく、表層と内部でも機能分化がみられ、図5のように外側から機械刺激受容(痛圧覚)、化学刺激受容(臭覚)、介在ニューロン、光刺激受容(視覚)の各部域となっています。これは梅園らが部域特異的に発現する遺伝子をマーカーとして色分けしたものです(12)。マーカーとして用いたのは各種ホメオボックス遺伝子の発現です。ホメオボックス遺伝子群は生物の発生における指揮者のような役割を持っており、これらの遺伝子が発現する転写因子がDNAに製造すべき構造タンパク質などの種類を指示します。

このほか井上らによれば温度を感知する神経も全身に分布していて、情報は脳に集められ行動が決定されます(13、14)。温度が低い方に、光が当たらない方に移動するというのは辺境生物らしいプラナリアの特性です。

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前稿「脳のはじまり1」で、欠損すると体全体に脳ができるという ndk遺伝子を紹介しましたが、この遺伝子は体の前後軸(したがって脳の位置)を決定する元締めではないであろうことや、さまざまな遺伝子が前後軸の決定に関与していることが最近明らかになってきました(15、16)。ヒルとピーターセン(図6)はプラナリアの体の前後軸を決定しているメカニズムの枢要が wnt と notum の相互の作用抑制によるコラボレーションであることを提唱しました(15)。

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通常notumは頭部の一部の細胞に、wnt1は尾部の一部の細胞にしか発現していません(図7)。プラナリアの体が切断されると前端に主としてnotum、後端に主としてwnt1が発現し、その後の頭部発生と尾部発生を統括するわけです。

wnt1を欠損する個体では尾部は形成されず、本来尾部が形成されるべき位置に頭部が形成されたりします。notumの作用を抑制すると逆の効果となります。なぜ断片の前端と後端でそれぞれnotumとwnt1が発現するのかは謎ですが、wnt1はβカテニンの安定化、したがってその転写因子としての役割をサポートするのに対して、notumはwnt1の作用を抑制するのでβカテニンが不安定化し分解されてしまいます。

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notumとwnt1以外にも前後軸形成に関与する因子は数多く報告されつつあり(16、図8)、急速に研究は進展しています。腹背軸の形成に関与する因子も一部明らかになりつつあるようですが、今回はパスしました。前後軸が決定された後にndkなどFGF受容体関連因子、wnt、otx、netrinなどの作用によって脳形成がおこなわれるようです。

A_14


参照

1.C N David and H MacWilliams., Regulation of the self-renewal probability in Hydra stem cell clones.,PNAS February 1, 1978. 75 (2) 886-890;
https://doi.org/10.1073/pnas.75.2.886
http://www.pnas.org/content/75/2/886

2.Ulrich Technau et al., Parameters of self-organization in Hydra aggregates., PNAS October 24, 2000. 97 (22) 12127-12131;
https://doi.org/10.1073/pnas.97.22.12127
http://www.pnas.org/content/97/22/12127

3.阿形清和・小泉修共編 「神経系の多様性 その起源と進化」第1章 p.14 培風館(2007)

4.清水裕 高等動物の消化,循環機構の進化的起源を腔腸動物ヒドラに探す 比較生理生化学 Vo1.20,No.2, pp.69-81 (2003)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika1990/20/2/20_2_69/_pdf/-char/ja

5.阿形清和・小泉修共編 「神経系の多様性 その起源と進化」第1章 pp.22-23., 培風館(2007)

6.宗岡洋二郎 神経ペプチドの比較生物学 化学と生物 Vol. 36, No. 3,  pp. 153-159 (1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/36/3/36_3_153/_pdf

7.藤澤千笑 ヒドラ性決定及び性転換における間幹細胞の役割 JAIRO
http://jairo.nii.ac.jp/0201/00000897

8.Charles N. David., Interstitial stem cells in Hydra: multipotency and decision-making., Int. J. Dev. Biol. 56: 489-497 (2012)
doi: 10.1387/ijdb.113476cd
http://www.ijdb.ehu.es/web/paper.php?doi=10.1387/ijdb.113476cd

9.http://www.cellbiology.bio.lmu.de/people/principal_investigators/charles_david/

10.西村理 京都大学学位論文 プラナリアDugesia japonicaのゲノム解析による、脳の進化および無性/有性生殖サイクルに関する考察 (2016)
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/215189/1/yrigr01554.pdf

11.https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%9B%E9%A1%8E%E5%8B%95%E7%89%A9

12.Umesono, Y., Watanabe, K. & Agata, K., Distinct structural domains in the planarian brain defined by the expression ofevolutionarily conserved homeobox genes. Dev. Genes Evol. vol. 209, pp. 31-39. (1999)

13.Takeshi Inoue, Taiga Yamashita, and Kiyokazu Agata.,  Thermosensory Signaling by TRPM Is Processed by Brain Serotonergic Neurons to Produce Planarian Thermotaxis.,  The Journal of Neuroscience,  vol. 34(47): pp. 15701-15714 (2014)
http://www.jneurosci.org/content/34/47/15701

14.温度を感じる神経系の基本的なしくみ、解明される。 京都大学HP
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/141119_1.html

15.Eric M. Hill, and Christian P. Petersen, Wnt/Notum spatial feedback inhibition controls neoblast differentiation to regulate reversible growth of the planarian brain., Development,  vol. 142:  pp. 4217-4229;  (2015)  doi: 10.1242/dev.123612
http://dev.biologists.org/content/142/24/4217
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4689217/

16.Sushira Owlarn and Kerstin Bartscherer, Go ahead, grow a head! A planarian's guide to anterior regeneration. Regeneration., vol. 3(3)., pp. 139-155, (2016)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27606065

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2018年5月20日 (日)

阪神タイガース 史上最低の打線

Photoスタメンで5人も1割台の選手が並ぶと、さすがにスコアボードを見るのが恥ずかしくなる今季の阪神タイガースです。

おそらく史上最低の打線でしょう。片岡コーチと平野コーチは、本当に彼らに責任があるかどうかは別として、辞表を書いて監督に預けるべきでしょう。近々に鳥谷は引退して、彼らに代わって打撃コーチに就任すべきです。鳥谷の打撃は片岡や平野と違って、チェンジアップやフォークに対応でき易いスタイルだと思います。

打率はタイガースのHPより

比較的スタメンの場合が多い選手
-----------

不合格

髙山 0.180
大山 0.163
西岡 0.152
江越 0.125
鳥谷 0.143
梅野 0.136

ロサリオ 0.238
福留 0.263

----------
合格

糸井 0.301
糸原 0.289
上田 0.273
上本 0.422(故障中)

----------
出場機会が少ない選手

伊藤 0.375
原口 0.310
坂本 0.400

コーチの交代以外に打つ手があるとすれば、ロサリオを解雇して新外国人選手を雇う。打率がとりあえず良い上記の出場機会の少ない3選手を起用するくらいしか思いつきませんが。陽気なキャラのコーチを採用するというのもありかな?

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2018年5月18日 (金)

JPOP名曲徒然草186: 「Deadwood」 by Predawn

51owpboqbl__ac_us200_オフィシャルサイトの記載によると「Predawn はシンガーソングライター清水美和子のソロプロジェクト。1986年新潟県生まれ、東京都郊外育ち。2008年から Predawn という名前でソロ活動を始める。」だそうです。

日本生まれの日本育ち、外国留学の経験も無いのに歌詞は英語というめずらしい人です。多分子供の頃から洋楽ばかり聴いていたからだと思います。

Keep Silence を聴いたときに、どこかで聴いたような音楽だなと思いました。それは Solitude Standing (by Suzanne Vega)。 そう、特に似ているというわけでもないけれど、もしスザンヌ・ヴェガが日本に生まれ育っていたら、Predawn みたいな音楽をやっていたかもしれません。

Keep Silence
https://www.youtube.com/watch?v=58-RRCU0OPY

(ライヴ)
https://www.youtube.com/watch?v=OIN8Hxnv2PI

Suddenly
https://www.youtube.com/watch?v=r-etQjPbzFY

(ライヴ)
https://www.youtube.com/watch?v=eZF6NgOc90E

私のお気に入り 「Deadwood」
作詞/作曲 清水美和子
https://www.youtube.com/watch?v=7w3S0tzvrgY

(なんとトヨタのCM曲でした)
https://natalie.mu/music/news/270757

歌詞:https://petitlyrics.com/lyrics/2727662
thick false lashes の意味がわかりませんでした。誰か教えて?

日本語 Secret Track
https://www.youtube.com/watch?v=hlHmwZtkpfc

オフィシャルHP:
http://www.predawnmusic.com/

インタビュー
https://www.cinra.net/interview/201609-predawn

スザンヌ・ヴェガ
https://www.youtube.com/watch?v=05AHPFPpHIM
https://www.youtube.com/watch?v=VZt7J0iaUD0

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2018年5月15日 (火)

岸井成格氏の死を悼む

A0027_0028192013~2016年にNEWS23の顔であった岸井成格氏が逝去されました。

国民の多数は安倍に嫌気がさしているわけですが、当時から彼は安倍政権に大きな危惧をいだいて、きっちり批判していました。

安倍は「ウソをつくこと」、「核心を隠蔽すること」によって、まともな議論を拒否します。対立する意見をたたかわせるところまで、誰もたどり着けないのです。こんな人が総理であることが良いわけがありません。

惜しい人を亡くしました。

ご冥福をお祈り申し上げます。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180515-00000094-mai-pol


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2018年5月13日 (日)

シベリウス交響曲第1番 マケラ-都響@サントリーホール2018・5・13

Imga1996年フィンランド生まれ、22才の指揮者の都響デビュー。この若さでスウェーデン放送交響楽団の首席客演指揮者だそうです。どんな天才?

多分初来日でしょう。彼が日本人だったら、いくら才能があっても22才で都響を振れることはなかったでしょうし、万一そんなチャンスがあっても、余計な気を遣って思い切り振ることなんてできなかったでしょう。

雨の日の静かな日曜日。本日のコンマスは四方さん。サイドは矢部ちゃん。7~8割くらいの入りでしょうか? 会員で聴き逃した方は失敗だと思いますよ。最初の曲はシベリウスのレンミンカイネンの帰郷ですが、早速颯爽とした若々しい音楽を展開してくれました。なによりこれだけ団員のやる気を喚起する人間力に驚きます。

2曲目はベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番ト長調。これはソリストのウカシュ・ヴォンドラチェクのピアノに驚愕。こんなに眼と鍵盤を接近させて演奏するピアニストを見たことがありません。まるで顕微鏡を覗きながら時計の修理をしているような感じです。隅々まで美を追究するパラノイアのような演奏でした。ところがアンコール(ブラームス:6つの小品 op.118より第2曲 間奏曲 イ長調)になると普通に演奏しているじゃありませんか(´え~`)。

それにしても、こんなにソリストを見ながら指揮をする指揮者はめずらしいです。ピッタリ合わせてあげようというソリストへの心遣いを感じました。

本日のメイン、シベリウスの交響曲第1番は名曲の割にはあまり演奏機会のない不思議な曲です。都響も9年ぶりの演奏。いやあ本当に若き日のシベリウスの覇気があふれ出す素晴らしい曲ですし、マケラのクリアでわかりやすい指揮、都響の大熱演とあいまって、精神が高揚する胸のすくような快演でした。大拍手です(タイミング的にはもう少しだけ待って欲しかったですが)。終了後団員が足を踏みならして指揮者を讃えるのも久しぶりかな。

シベリウスの交響曲第3番は、やはり名曲なのに演奏機会が少なく、都響もなんと40年以上演奏していないみたいで、これもやって欲しいと思います。・・・ていうか都響はマケラと契約すべきだと思いますよ。手遅れにならないよう今のうちに、是非!

帰りに駅への地下道を歩いていると、松岡と美里に追い抜かれました。30年間いろんな人に追い抜かれた経験がありますが、彼らははじめてです。引っ越したのかな?

マケラ
https://www.youtube.com/watch?v=ahplU6QfwLw
https://www.youtube.com/watch?v=5hiJiagsj30

シベリウス 交響曲第1番
https://www.youtube.com/watch?v=zTT3w1mpOpw

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2018年5月 7日 (月)

バルサ クラシコを踏ん張って無敗続行

Img_2446ホームでのクラシコ。10万人収容のスタジアムが満員で盛り上がりました。レアル・マドリーもBBCそろい踏みで役者が揃いました。お馴染みのメンバーです。イニエスタは最後のクラシコです。バルサも目立った故障者もなく、最強メンバーで迎え撃ちます。

私にとって永年レアル・マドリーとの戦いはイコール:ペペのヴァイオレンスとの戦いであり、異常に興奮したものですが、彼が居なくなってやや脱力してしまいました。

もうひとりの問題児マルセロはペペとはまた違って、彼の哲学はおそらく「サッカーとはいかに人をだますかというゲームだ」というものでしょう。ある意味でそれは真実であり、フェイントもノールックパスもそうです。ただ彼のはレフェリーに見られないようにファウルするとか、シミュレーションでレフェリーをだますとか、誰も見ていないところで足を踏みつけるとか、そういうダーティーなプレーが持ち味です。

セルジ・ロベルトもさんざんマルセロにやられていたので堪忍袋の緒が切れたのでしょうが、レッドカードをもらってしまったのではマルセロの思うつぼです。マルセロのプレーはレフェリーもよく承知しているので、ほんとにファウルを受けたときに損をすることもあります。今回もPKくさいのが取ってもらえませんでした。

1人少ない状態でがまんできたのは今シーズンのバルサの強さですね。ラキティッチ・ブスケツ・パウリ-ニョで守って失点を防ぎました。そしてスアレスとメッシが得意のプレーで点を取りました。結果はドロー。ただレフェリーの判定でツキもありました。こういうのがないとシーズン無敗なんて実現できないでしょう。


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2018年5月 6日 (日)

サラとミーナ200: 200記事メモリアル、そしてブログは13年目に

Img_2419aこのブログをはじめたのが2006年、サラとミーナがうちにきたのが2007年ですから、ブログは13才、猫たちは12才になりました。

12才になるとロイヤルカナンのエサも12+老齢猫用になるのですが、うちの猫たちはそれがあまりお好みではないようで、やむなく普通の7+のエサをやるのですが、実はそれもそれほど人気はなく、一番人気は肥満気味の猫専用のフード=ライトウェイトケアです。

https://my.royalcanin.jp/catfood/ライトウェイトケア/

ミーナ(写真の左)は幼年避妊手術をしたために、うちにきたときには病的に肥満していたので、このエサだけ食べさせるようにしていたのですが、これが功を奏して8kg台が6kg台に減少し、現在に至っています。今はアド・リビタム(いつもエサがあって自由に食べられる状態)でも6kg台を維持できています。

サラ(写真の右)もこのライトウェイトケアが好きなのですが、アド・リビタムのため中年太りで4kg台となっています。それ以上にはならないようです。

ミーナのおやつはベランダのワイヤープラントとかつおぶし、サラは市販の植物ペレットとミャウミャウスナッキーです。かなりおやつの好みは違います。サラは臭覚に問題があって、かつおぶしのにおいが開封して2日間しかわからないようです。3日目以降は全く関心を示しません。

サラは人間の食べ物には全く関心を示しませんが、ミーナはサンマの塩焼きや目刺しには関心があって、頭をかじったりします。

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2018年5月 4日 (金)

やぶにらみ生物論104: 脳のはじまり1

さまざまな動物門のなかで海綿動物だけは脳・神経系をもっていません。彼らは心臓血管系などの臓器ももっていないので最も原始的な多細胞生物のグループだと考えられています。ただ彼らもカンブリア紀あるいはそれ以前から何億年もかけて、それなりに進化しているので原始的という言葉は適切ではないかもしれません。おそらく私達には想像もつかないような生き方を創造して、現代でも繁栄しているのでしょう(1)。

現在生きている動物のグループで、最もシンプルな神経系をもっているのは刺胞動物門(ヒドラ・クラゲ・イソギンチャク)と有櫛動物門(クシクラゲ)の生物です。最もシンプルとは言っても、何度も言うように彼らもカンブリア紀あるいはそれ以前から何億年もかけて進化しているので、それなりに必要十分な神経系なのでしょう。ヒドラの触手と私達の手とどちらが器用かというと一概には言えないかもしれません。そもそも彼らの触手には毒針が装備されていて、触るだけでエサが麻痺して食べられるのを待つだけになるのです(2)。弓矢や鉄砲を使わないとエサがとれなかった私達より素晴らしいと思います。

図1はヒドラの神経を神経特異的に存在する RFamide peptide (3)の免疫染色で可視化したものです(4-6)。ヒドラの神経細胞は口の周囲に特に密集しています(図1B、C)。触手の動きと連携してエサをとることが最も神経系の重要な役割なのでしょう。おそらく周口神経環(図1B)が口と触手の動きを統合しているのでしょう。小泉らはこれを中枢神経系としています(6)。

刺胞動物や有櫛動物には、まだ脳らしき臓器は存在しません。胴体にも神経細胞は存在し、しっかり連絡もしているようですが、口の周囲に比べると数は少ないようです(図1D)。

A_7


図2はクラゲの場合ですが、これも図1と同様な方法で神経を可視化したものです(5、7)。クラゲの場合、口の周りにも神経細胞の集中はみられますが、むしろ傘と触手の境目にぐるりと集中している部分があり、神経環が形成されています(図2)。固着生物であるヒドラと違って、クラゲの場合は泳ぐことが重要であることが推測されます。神経環は内側と外側の2重構造になっています(図2B)。外側は触手、内側は傘の動きを統合する役割なのでしょうか?

A_8


刺胞動物は2胚葉動物であるにもかかわらず、立派な筋肉を持っていて触手を自在に動かしています。この筋肉は3胚葉動物の筋肉とは異なり、皮膚を兼ねた役割を果たしています。おそらく独自に進化したものなのでしょう(8)。

現存する生物の中では、プラナリアが最も最初に脳らしき臓器を獲得したと考えられています。彼らは腹部神経索と脳からなる中枢神経系をもっています(9、図3)。図3では、Proprotein convertase 2 という神経特異的に存在する蛋白質分解酵素のmRNAを染色して、神経組織を可視化したものです。ここで明らかなように、プラナリアの眼の腹側頭部に、神経細胞が集中した脳らしき構造が見えます。

A_9


理研の Cebria、小林ら(阿形研究室、図4)によって、プラナリアの脳形成に必要な遺伝子である nou-darake(ndk) が発見されています(10)。この遺伝子の発現を阻害すると、頭部だけでなく体の各所に脳ができてしまいます(図4)。遺伝学では、その遺伝子が欠損するとどのようなことが起こるかということを遺伝子名にすることが多いので、この遺伝子は「脳だらけ(ndk)」と命名されました。Cebria氏 はカタルーニャ人で、現在はバルセロナ大学生物学部の教授です(11)。小林氏は奈良県立医科大学・永渕研のスタッフをしておられるようです(12)。

A_10


普通に考えれば、ndkは脳の形成を阻害する因子なので、頭部には少なく尾部に多いはずだと思われますが、実際には頭部に多く尾部に少ないという驚くべき分布になっています(図5)。なぜでしょう? 

ndk遺伝子がコードする蛋白質は、FGF受容体ファミリーと相同性のある、2つのイムノグロブリン細胞外ドメインをもつ1回膜貫通型蛋白質ですが、細胞内ドメインにはキナーゼ活性は存在していないとされています(13)。このことからFGF受容体に結合して脳形成を促す因子が、とりあえずndk蛋白質に結合して頭部に局在することになり、その後なんらかの機構によってFGF受容体に受け渡されて脳形成が行なわれると考えられているようです(9)。

ただ図5ではndk遺伝子の発現を阻害した場合、咽頭より後部の脳形成活性は急激にゼロとなっていますが、図4のように尾部端まで脳らしきものが見られる場合もあるようで、一筋縄ではいきそうにもない感じもします。実際最近では研究が進展して、頭尾の決定にはwnt遺伝子がより決定的な役割を果たしており、様々な関連遺伝子も報告されるようになりましたが、詳細は次記事「脳のはじまり2」で述べる予定です。

A_11

プラナリアの脳というのは何をするために必要なのでしょうか? ひとつはプラナリアは眼をもっていて、光を当てるとそこから逃げて暗い安全な場所に移動しようとします。このためには眼という感覚器官からの情報を解析して、筋肉を逃避という行動に向けて統合的に動かさなければなりません(9)。もっと重要なのは、エサから出る化学物質を検知して、エサに接近する行動をとらなければなりません(14)。また体がさまざまな構造体に接触することを感知し、安全な場所に移動したり、エサの場所を記憶したりするのでしょう。この他全身の温度感知細胞の情報を脳に集めて、低温の方向に移動するという行動も知られています(15)。

それではプラナリアを頭部と尾部に切断すると、頭部はエサの場所を覚えて居るけれども、尾部は忘れてしまうということになるのでしょうか? この疑問についてショムラットとレビンは非常に洗練された実験で答えを出しました(16)。

プラナリアは光を避けて暗い方に移動する性質があり、またオープンスペースを避けて壁際など狭い場所に潜り込む傾向があります。ショムラットとレヴィンはシャーレの縁を除く大部分を削りザラザラにして、そのスペースに出て行ったらエサがあるという状況を学習させます。さらにそのエサにスポットライトを当てて、光があってもそこにエサがあることを学習させます。学習していないプラナリアはシャーレの縁ばかりをぐるぐる回ってなかなかエサにたどりつきませんが、学習したプラナリアは短時間でエサにたどりつきます(図6)。学習効果は少なくとも2週間は認められました。

驚くべきは切断した尾の方から頭を再生した個体も、切断される前の学習効果が完全に失われてはいなかったことです。これはプラナリアの神経索か末梢神経に記憶が残っていることが示唆されます。これは脳をもたないヒトデが景色を覚えているということを考えると、それほど不思議なことではないかもしれません。あるいはプラナリアは情報の統合や行動の決定は脳で行なうにしても、記憶は脳と神経索でシェアしているのかもしれません。脳で行なうことすべてを神経索も一部行なっている可能性、さらには末梢神経が記憶に関与している可能性もあります。

B


京都大学の西村はプラナリアの中枢神経系の発生に関わる82個の遺伝子を同定し、このうち91%が同じ扁形動物である住血吸虫のゲノムにも相同配列が存在することを確認し、プラナリアは住血吸虫との共通祖先から分岐する以前に中枢神経系を獲得していたことを示唆しています(17)。またこのうち3分の1は住血吸虫では発現が検出されなかったことから、寄生生活を続けるうちに住血吸虫はある意味退化したものと思われます。

プラナリアは自切によって無性生殖を繰り返すうちに、その全能性幹細胞に多数の変異が発生するそうです(17、18)。そうすると無性生殖を繰り返す中で、環境に適応した幹細胞が選択されて(細胞レベルでのクローニングと言えます)、その遺伝子が有性生殖によってまた子孫に伝達されるというシステムが存在することになり、これはわれわれのような有性生殖しか行なわない生物にくらべて、環境に適応しながら種を保存するという目的からみると、圧倒的に有利であることは明らかです。こうしてみると私達が高等生物で、プラナリアは下等生物と言うのはちょっと傲慢かなとも思います。

参照

1)世界の不思議 海綿 
https://ameblo.jp/jiyon7125/entry-10192505717.html

2)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%A9_(%E7%94%9F%E7%89%A9)

3)大杉知裕、脊椎動物の脳におけるRFamideペプチドの起源を探る—円口類からのアプローチ—、比較内分泌学 vol.36, no.136, pp. 31-38 (2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nl2008jsce/36/136/36_136_31/_pdf

4)https://invbrain.neuroinf.jp/modules/htmldocs/IVBPF/Hydra/hydra-nervous-system.html

5)小泉修 神経系の起源と進化: 散在神経系よりの考察、比較生理生化学 vol.33, no.3, pp. 116-125 (2016)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/33/3/33_116/_pdf

6)Koizumi O. et al, The nerve ring in cnidarians: its presence and structure in hydrozoan medusae., Zoology (Jena). vol.118, no.2 pp. 79-88. (2015)
doi: 10.1016/j.zool.2014.10.001. Epub 2014 Nov 8.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25498132

7)小泉修 刺胞動物の神経系 Nervous System of Cnidaria、Invertebrate Brain Platform
https://invbrain.neuroinf.jp/modules/htmldocs/IVBPF/Hydra/Cnidaria-nervous-system.html

8)Patrick R. H. Steinmetz et al., Independent evolution of striated muscles in cnidarians and bilaterians., Nature vol. 487, pp. 231–234 (2012)
doi:10.1038/nature11180

9)Umesono Y and Agata K.,  Evolution and regeneration of the planarian central nervous system. Dev Growth Differ. 2009 Apr;51(3):185-95. doi: 10.1111/j.1440-169X.2009.01099.x
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19379275

10)Francesc Cebria, Chiyoko Kobayashi (equal contribution) et al., FGFR-related gene nou-darake restricts brain tissues to the head region of planarians.Nature vol. 419, pp. 620-624 (2002)  doi:10.1038/nature01042
https://www.researchgate.net/publication/11085010_FGFR-related_gene_nou-darake_restricts_brain_tissues_to_the_head_region_of_planarians

11)http://www.ub.edu/planaria/

12)http://www.naramed-u.ac.jp/~biol/site/members.html

13)小林 千余子 et al.,  プラナリア頭部に特異的に発現する721HH遺伝子の役割
http://www2.jsdb.jp/kaisai/jsdb2002/edpex104.bcasj.or.jp/jsdb2002/abst/PD3-094.html

14)下山せいら プラナリアの摂食行動の解析; 摂食を誘起する化学物質の探索と定量的投与 つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2011) 10, 40
http://www.biol.tsukuba.ac.jp/tjb/Vol10No1/TJBvol10no1_ver20110217.pdf#search=%27%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE+%E8%84%B3%E5%86%8D%E7%9B%A4%27

15)https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2014/11/20141120_01.html

16)Tal Shomrat, Michael Levin, An automated training paradigm reveals long-term memory in planaria and its persistence through head regeneration
Journal of Experimental Biology  2013  :  jeb.087809  doi: 10.1242/jeb.087809  Published 2 July 2013
http://jeb.biologists.org/content/early/2013/06/27/jeb.087809
http://jeb.biologists.org/content/jexbio/early/2013/06/27/jeb.087809.full.pdf

17)西村理 京都大学学位論文 プラナリアDugesia japonicaのゲノム解析による、脳の進化および無性/有性生殖サイクルに関する考察 (2016)
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/215189/1/yrigr01554.pdf

18)Nishimura O.et al., Unusually Large Number of Mutations in Asexually Reproducing Clonal Planarian Dugesia japonica.
PLoS One., vol.10(11) (2015) :e0143525. doi: 10.1371/journal.pone.0143525. eCollection 2015.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4654569/

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2018年4月30日 (月)

FCバルセロナ 激闘のラ・リーガを無敗で優勝決定

1寒々しい北の港町ラ・コルーニャで、バルサがリーガ優勝を決めました。お相手のデポルは残念ながら2部に転落ということで悲喜こもごものリアソールでした。

デポルはコパ・デル・レイ優勝のバルサを花道(パシージョ)で迎えてくれるという友好的な雰囲気で試合が始まりましたが、後半の途中くらいまではとても勝てるとは思えないようなバルサ防戦一方の展開で、かなりヒヤヒヤしました。しかし結果は2:4の勝利で優勝を決めることができました。

ここまでは無敗なので、なんとかクラシコを乗り切って、シーズン無敗で歴史に名を残したいものです。マドリーもチャンピオンズリーグで、世界最強と言われるFCバイエルンを負かして意気上がる状況なので、激烈な戦いとなるでしょう。

試合終了後輪になって喜ぶバルサの選手とスタッフ。黄色はGKテア・シュテーゲン

Photo


試合後のインタビューに答えるブスケツ。彼がバルサの肝です。最近でこそダブルボランチのひとりですが、長い間シングルボランチでバルサの守備の砦として活躍してきました。

Photo_2


バルベルデ監督。彼の選手起用は、選手のコンディションを重視したやり方で、これが新しいバルサスタイルなのかと納得させられました。

Photo_3


1_2選手リストはブラウグラーナのサイトからお借りしました。赤黄のボーダーはカタルーニャ出身の選手です。

GKテア・シュテーゲンはYouTubeに珍プレー集がアップされていたりして、ポカが多い選手なのかなと思っていましたが、とんでもない。すごい掘り出し物でした。メッシが表のMVPとすれば、裏のMVPは彼ですね。

CBは生え抜きでベテランのピケが中心ですが、ウンティティも入団してすぐになじんで活躍してくれました。生真面目な男だと思っていたのですが、オウンゴールなのに自分のゴールのようにはしゃぐなどはったりかます奴でした。

新人ミナには非常に期待しています。守備だけではなく、CKを頭でたたき込んで欲しいものです。

SBのアルバは超攻撃的なプレイスタイルでバルサの左サイドをささえています。ものすごく長い距離を走っているように見えて、アンドレ・ゴメスやラキティッチほどではないということは、ここというタイミングをはかるのが上手なのでしょう。

右サイドはセメドが定着しそうで安心しました。セルジはやっぱりMFでしょう。デンベレはドリブル突破の迫力はすごいですが、まだまだバルサスタイルにとけこんでいるとは言えませんし、ひっかかるまで突進してしまうのは困りものです。

2_2バルサの場合、SBが異常なほど攻撃参加するので、ラキティッチとブスケツは守備の要です。同時に攻撃の起点でもあります。パウリ-ニョがここに加わったので、やや余裕ができました。バルサの優勝はここが強化されて、守備が底上げされたことが大きな要因だと思います。

イニエスタは今シーズンを最後にバルサを退団します。長い間バルサスタイルの象徴でした。お疲れ様。また指導者として戻ってきてくれるよう期待しています。

イニエスタが去った後、バルサスタイルの中心はコウチーニョです。今のところバルサの司令塔はコウチーニョ以外にいないでしょう。

フォワードのスアレスとメッシはご存じの通り。今日もスアレスがタイムを計ったようなフローティングパスに、メッシがぴったり走り込んでゴールしました。

パコ・アルカセルはスアレスかメッシがいないときに、しっかり代役という損な役割を全うしてくれました。コパで活躍した控えGKのシレセンと共に感謝します。






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2018年4月28日 (土)

西島三重子ライヴ@南青山マンダラ 2018/04/28

Img連休初日は晴れ渡った好天に恵まれました。

私は西島三重子のライヴで南青山マンダラへ。チケットは完売で当日券はありません。なにしろ開場12:15、開演13:00ですから、朝から準備しないと演奏する方はもちろん(みーちゃんは御殿場なので5時起き)、遠方からのお客も大変です。

セットリスト:

1.飛鳥坂(作詞:みろく、作曲:西島三重子)
今日は作詞家のみろくさんもいらっしゃってました。
https://www.youtube.com/watch?v=bzBHPiv9x9U

2.千登勢橋(下を向いたまま歩いてくるところが初々しくてナイス)
https://www.youtube.com/watch?v=0TYECCELT6c

3.池上線(ご本人が推薦していたのはこれかな↓)
https://www.youtube.com/watch?v=A3RRbxgh1ZU

4.池上線ふたたび(タイトルは芸がないが、意外にも名曲)
https://www.youtube.com/watch?v=NsJgqd68qeM

5.仮縫い(なつかしい名曲)
https://www.youtube.com/watch?v=KxBCTfvdamY

6.青春のシュプレヒコール
7.時の扉をノックして(目黒川のカップリング曲)
8.目黒川(新曲)

(ブレイク)

9.C'est si bon (シャンソンの名曲をみーちゃんの訳詞で)
https://www.youtube.com/watch?v=8O9Xew7NdDA

10.桜(森山直太朗のカバー)
11.もくれんの涙(スターダストレビューのカバー)
12.凄春いろは草紙
13.水色の季節の風
14.永遠の少年達
15.サイレントデイズ

アンコール

1.おひさまのたね
2.地球よ廻れ(作詞:崎南海子、作曲:西島三重子)
今日は作詞の崎南海子さんがいらっしゃるということで、急遽用意したそうです。

この曲が収録されているアルバムは隠れた名作で、ダイレクトカットの45回転LPです。制作した第一家庭電気も、製造した東芝EMIも今はなしということで、大変貴重となっています。アオイスタジオがこのLPをCD化してくれると嬉しいのですけどね。
http://www.superanalogue-dam45.net/index-dam/dor0161.htm

次回のライヴは8月17日 ラドンナ原宿 19:00開演だそうです。

個人的感想:やっぱりライヴにはピアニストの助力を得た方が良いと思います。ギターの弾き語りは、やむを得ない場合を除けば避けるべし。

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2018年4月25日 (水)

やぶにらみ生物論103: プラナリアの再生

神経系の進化を見ていく前に、生物の分類と進化を復習しておきましょう。動物門と進化について図1を示しますが、この図のオリジナルは調べましたがわかりませんでした。多分米国の大学で教育用に作成したものだと思います。私が若干改変して、日本語訳もつけました。この様にパネルにしてあると、いかにもこれで確定というようにみえますが、実は現在でもあいまいな部分もあるので、これからの科学の進歩に応じてこのパネルも進化するべきものです。字が細かいですが、クリックすると拡大できます。

このパネルをみると非常にインテリジェントで高等な生物と、原始的な生活をずっと続けている生物があるようにみえます。しかし今生きている生物はすべて数十億年の進化を経て生き残っている生物なので、一見単純で原始的と思われる生物であっても、それなりに幾度もの大絶滅時代を生き抜き、環境に適応しながら子孫を残してきた強者ばかりなので、どれが高等生物でどれが下等生物などとは言えません。

むしろホモ属などは最近地球に現われた新参者なので、地球環境の変化には弱いグループかもしれません。実際ホモ属で生き残っているのはサピエンスだけで1属1種という情けない状況です。ただ遺伝子も生活も比較的保守的に維持してきたグループと、大幅に変更してきたグループは存在します。

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多細胞動物は大きく分けて無胚葉・2胚葉(内胚葉と外胚葉)・3胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)の3つのグループに分類できます。無胚葉の生物ではそれぞれの細胞の役割分担はありますが、組織らしいものはありません。神経も形成されません。2胚葉の生物は体の内側(内胚葉)と外側(外胚葉)に別の細胞群を配置し、内側は主に消化管で栄養をとるために存在し、外側は皮膚と感覚器官、そして神経を形成します。3胚葉になるとこれに中胚葉が加わり、骨・筋肉・血管などを形成します。

神経が形成されるためには2胚葉が分化して、その外胚葉が必須ですが、無胚葉の生物であるカイメンも「くしゃみ」ができるという報告があります(1、2)。これは神経らしい組織が形成される以前から電気信号による情報伝達が行なわれ、組織的な反応がみられたということを示唆しており、興味深い知見です。さらにカイメンどころか単細胞生物であるゾウリムシも、物体に衝突して方向転換したり、捕食者から逃げようとするときに膜電位変化を利用しているという報告があり、神経の萌芽はすでに単細胞生物でもみられるようです(3)。

まあそれはさておき、図1の2胚葉性の生物である刺胞動物と有櫛動物は散在神経系という中枢の無い神経系を持つとされています。刺胞動物のひとつであるヒドラの神経系の図(コトバンクより)を図2に示しました。「ヒドラの神経系は、どこかを触るとその刺激は全方向に広がり体が縮む。この神経系にはシナプスによる方向性の規定がない。」などと現在でも記載されることがありますが、アンダーソンとスペンサーははやくも1989年に、そんなことはなく、ヒドラやハチクラゲの神経系にもちゃんと方向性を規定するシナプスが存在することを証明しています(4)。小泉修によると、「刺胞動物の散在神経系は、神経系の要素の全てを持ち合わせている」そうです(5)。

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神経系のシステムは発達した中枢神経系をもつ脊椎動物、小さくても優秀な中枢神経系をもつ節足動物、中枢神経系をもたない刺胞動物などすべての生物で、基本的に同じルールで作動しているので、ルーツはひとつと思われていましたが、ひとつ例外があることが報告されています。それは刺胞動物と近縁とされている有櫛動物(クシクラゲ類)で、このグループのニューロンは他の生物で発現しているニューロン特異的な遺伝子が発現されていなくて、かつ神経伝達物質も他の生物とは全く異なるということです(6)。おそらくこのグループは刺胞動物とはかなり離れた進化的位置にある生物なのでしょう。

図2をみると、扁形動物のプラナリアは明らかに散在神経系を逸脱して、規則的な神経系をもっていることがわかります。見た目いわゆるはしご型神経系をもつとされる環形動物や節足動物よりはしごらしくみえますが、体節をもたない生物なのではしご型とはいわず、かご状神経系とよびます(5)。プラナリアにも脳があり、これはカエルの発生初期に一過性に現われる神経系の分布パターンに似ているそうです(7)。

プラナリアの主要な神経系は腹側にあり、このタイプの神経系は扁形動物・線形動物・環形動物・節足動物・軟体動物などに共通しています。一方主要な神経系を背側にもつのは尾索動物・頭索動物・脊椎動物です。後者の神経系は管状神経系と呼ばれています(図2、カエル)。前者のなかでも、イカの神経系などはとてもはしご状という言葉とはかけはなれた構造で、むしろ脊椎動物に近いような構造になっています(図2、イカ)。

脊椎動物に近縁な門である棘皮動物の神経系は、なんと中枢神経系・脳をもっていないので散在神経系とされています(図2、ヒトデ)。しかしヒトデは腕の先端に眼をもっていて、周りの景色を認識しているそうなので、脳らしきものがないからといって、極めて機能が低いとはいえないようです。珊瑚礁から1メートル離しておいても景色を見て直線的に帰ることができるので、当然記憶もあるのでしょう(8)。見た目ショボくても、周口神経環が脳の代わりをしているのかもしれません(図2)。

さて脳の研究を行なうにあたって、最もベーシックな材料としてプラナリアは適切そうに見えます。神経系の構造も「かご状」と名付けられているとはいえ、実際にははじご状でガングリオンもなく、シンプルで解析しやすい素材と思われます。プラナリアという生き物は水槽で熱帯魚を飼育している人にはお馴染みらしく、特に有害でも無いと思うのですが、水槽に妙な虫が張り付いているのは美観を損ねるので、様々な駆除剤や道具が発売されています(9)。

プラナリアは扁形動物門のウズムシ綱に属していますが、他の綱の扁形動物はほとんどが寄生虫です(図3)。そもそも硬い皮膚もなく、攻撃手段も毒もない生物なので、普通に自然の中で生きていくのは困難だったのでしょう。そのような仲間の中で、どうしてウズムシ綱の生物、たとえばコウガイビルやプラナリア(図3)の仲間だけが他の生物に寄生しないで生き延びられたのでしょう? それは彼らが驚異的な再生能力を持っていることが大きな要因だったと思われます。

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すなわちコウガイビルやプラナリアは、たとえば捕食者に半分に食いちぎられても、その部分が食べられているうちに残りの半分が逃げ延び、再度フルの体を再生できる能力によって生き延びてきたと考えられるわけです。

プラナリアの再生能力について、最初に詳しい研究を行なったのは John Graham Dalyell という人物で、1814年に研究結果をまとめて本:「Observations on some interesting phenomena in animal physiology, exhibited by several species of Planariae」 にしており、現在フリーで読むことができます(10)。さすがに200年前の古めかしい英語なので、辞書をひきながらでないと読めませんでした。

彼は"the Society of Arts for Scotland" のプレジデントを務めたほどの人で、むしろ文学者であり(11)、この本の序文でも自分は自然科学者ではないし、自然科学者の手も借りていないが、記述はありのまま観察したことであり、不十分であっても真実であると述べています。プラナリアの再生について彼が記載していることの一部を図4にコピペしました。肖像画を探しましたが見つかりませんでした。

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その後、プラナリア再生研究者として意外な人物が登場します。それは以前にこのサイトでも取り上げた(12)遺伝学者のトーマス・ハント・モーガン(図5)で、彼はショウジョウバエの遺伝学にのめりこむ以前の若い頃、プラナリアの再生実験をやっていて、論文を少なくとも11遍は書いているそうです。The node が忘れられた古典論文のひとつとして取り上げています(13)。

モーガンとチャイルドは再生に必要な物質の勾配という概念を提出し(14)、それは一世紀以上の年月を経て、Reddien, Almuedo-Castillo、梅園、阿形(図5)、その他多くの研究者達の努力によって証明されました(15-17)。プラナリア切断と再生の様子は理研のサイトから借用しました(図5)。プラナリアの再生の様子をアップしているサイトがあります(18)。

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そのメカニズムの概要は、図6のようにERK蛋白質とβ-カテニン蛋白質は体の前後軸に沿って相反する活性勾配を形成し、その結果、体の異なる領域(頭、首、腹と尾)が再生できるということだそうです。ERK蛋白質(細胞外シグナル調節キナーゼまたは古典型マップキナーゼ)は蛋白質中のセリンまたはスレオニンをリン酸化する酵素ですが、活性化されることにより、細胞質から核に移行して遺伝子発現に影響を及ぼします。

梅園のサイトの記載をコピペすると「プラナリアの幹細胞はERK蛋白質の活性化によって, もともと頭部の細胞に分化するように指令されますが, nou-darake 遺伝子や Wnt/ß-カテニン経路が ERK蛋白質の活性化レベルを抑制することによって, その指令を首や腹や尾部の細胞へとそれぞれ運命転換させていると結論づけました」だそうです(19) 。Nou-darake 遺伝子については次の記事でとりあげる予定です。そのほかにも頭部・尾部の再生を制御する因子はありそうですが、そう遠くない時期に全容が解明されるのではないでしょうか。

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ヒトの場合臓器を作成するには、通常さまざまな人為的操作を行なってES細胞とかiPS細胞を作成しなければなりません。しかしプラナリアは体内に多数の自動的に機能を発揮する多能性幹細胞をもっていて(20)、体が切断されるとそれらが活性化して増殖・分化を繰り返し、新しい個体をつくりだすことができます。幹細胞がどのような種類の細胞に分化するかは図6のような因子の濃度勾配などによって決定されるというわけです。

ヒトも体中に多能性幹細胞を埋め込んでおけば、切られても再生できるかというと、それは無理です。血液循環で細胞に栄養供給を行なっている生物は、ヒトに限らず再生する前に出血多量で死亡します。

 

参照

1)Danielle A Ludeman, Nathan Farrar, Ana Riesgo, Jordi Paps and Sally P Leys., Evolutionary origins of sensation in metazoans: functional evidence for a new sensory organ in sponges. BMC Evolutionary Biology vol. 14., no. 3., (2014)
https://bmcevolbiol.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/1471-2148-14-3
https://doi.org/10.1186/1471-2148-14-3

2)脳のない海綿動物も“くしゃみ”をする national geographic
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8741/

3)Eckert, R. and Naitoh, Y. (1972) Bioelectric control of locomotion in the ciliates. J. Protozool. 19:237-243.

4)Peter A. V. Anderson, Andrew N. Spencer., The importance of cnidarian synapses for neurobiology., Developmental Neurobiology vol.20., no.5, pp. 435-457 (1989)

5)小泉修 神経系の起源と進化:散在神経系よりの考察 比較生理生化学 vol. 33, no.3, pp.116-125 (2016)

6)Leonid L. Moroz et al., The ctenophore genome and the evolutionary origins of neural systems., Nature vol. 510, pp. 109–114 (2014) doi:10.1038/nature13400
http://www.nature.com/articles/nature13400

7)阿形清和 プラナリアの脳は何を語るのか 生命誌24号
https://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/024/ex_2.html

8)ヒトデの目はみえていた National geographic (2014)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8726/

9)プラナリア駆除
https://www.amazon.co.jp/gp/search/ref=sr_gnr_fkmr0?rh=i%3Apets%2Ck%3A%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%A2&keywords=%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%A2&ie=UTF8&qid=1524371589

10)John Graham Dalyell, Observations on some interesting phenomena in animal physiology, exhibited by several species of planariae.  Archibald Constable & Co. Edinburgh (1814)
https://www.biodiversitylibrary.org/item/40487#page/11/mode/1up
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=uc2.ark:/13960/t3hx16x5z;view=1up;seq=9

11)Online Books by John Graham Dalyell
http://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupname?key=Dalyell%2C%20John%20Graham%2C%201775%2D1851

12)http://morph.way-nifty.com/grey/2016/10/post-152f.html
http://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=86091564&blog_id=204154

13)Morgan, T.H. (1898) Experimental studies of the regeneration of Planaria maculata. Archiv fur Entwicklungsmechanik der Organismen 7, 364-397
http://thenode.biologists.com/forgotten-classics-t-h-morgan-planarian-regeneration/research/

14)Meinhardth, H (2009) Beta-catenin and axis formation in planarians. Bioessays 31: 5-9.

15)Umezono et al. The molecular logic for planarian regeneration along the anterior-posterior axis.  Nature vol. 500, pp. 73-76 (2013)
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013/130725_1.htm

16)Almuedo-Castillo M, Salo E, Adell T.,  Dishevelled is essential for neural connectivity and planar cell polarity in planarians. Proc Natl Acad Sci USA vol. 108: pp. 2813-2818 (2011)

17)Petersen C.P., Reddien P.W.  Wnt signaling and the polarity of the primary body axis. Cell vol. 139: pp. 1231-1241. (2009)

18)プラナリアの再生  https://youtu.be/vXN_5SPBPtM

19)http://www.sci.u-hyogo.ac.jp/life/regeneration/LRB/research_yu.html

20)Rink J.C., Stem cell systems and regeneration in planaria., Dev Genes Evol., vol. 223(1-2): pp. 67-84. (2013) doi: 10.1007/s00427-012-0426-4. Epub 2012 Nov 9.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23138344

 

 

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2018年4月23日 (月)

バルサ 神がかり的なゴール連発でコパを制す

Braugrana

スタメンはTop:スアレス、2列目:コウチーニョ、メッシ、イニエスタ、Dボランチ:ラキティッチ、ブスケツ、SB:アルバ、セルジ、CB:ウムティティ、ピケ、GK:シレセン

なんとセルタ・デ・ビーゴ戦と同じメンバーはコウチーニョだけ。空前絶後のローテーションで戦うコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)です。レギュラーメンバーはこのタイトルをとることがいかに大事かを目一杯認識したことでしょう。マドリーおよび周辺のチームを駆逐して、アンダルシアのチームと争うというのも素晴らしい。

バルサのレギュラーメンバー達は、特別休暇明けにふさわしい物凄いゲームを遂行しました。先取点は作戦だったのでしょう。2本めの動画で見るとよくわかります。シレセン(GK)がロングキックを蹴ると同時に、ハーフラインにいたスアレスとコウチーニョが走り出し、これにセヴィージャのDFははめられてしまいました。GK→コウチーニョ→スアレスとパス2回でゴール。ぶっとびです。

2点目もアルバのノールック・ヒール(全然見ていない あてずっぽう)がウソのようにぴったりとメッシの前に来てゴール。3点目はスアレス→メッシ→スアレスの1発ワンツーで3人のディフェンサを置き去りにするという、これも目を疑うようなゴール。

4点目はあれだけ打っても打ってもはいらないイニエスタのシュートが、この試合に限ってはいってしまうなんて目点です。解説者もフェアリーテールゴールと言っていました。イニエスタは今シーズンでチームを去るので、よい記念になりました。5点目はコウチーニョ→スアレス→コウチーニョのワンツーがゴール前で決まったかと思いましたが、DFのハンドでPK。コウチーニョが決めました。

こんなバルサショーみたいな試合を、コパ決勝でやっていいのでしょうか? あまりにひどかったチャンピオンズリーグ@ローマでの敗戦を取り返す快勝でした。

https://www.youtube.com/watch?v=QkcGwy8Ldxk

https://www.youtube.com/watch?v=2WGWZ6BF0SY

https://www.youtube.com/watch?v=HhAzNpaLYp8

https://www.youtube.com/watch?v=xaoytLfnUOc

https://www.youtube.com/watch?v=xQ4Wa5aplZI



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2018年4月21日 (土)

なでしこ おめでとう!

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日本のサッカー・ナショナルチームが国際試合を戦うときに問題となるのは、欧米のチームに当たるとほとんどの場合フィジカルで劣ることです。これは永遠の問題なのですが、わがバルサも昔から同じ問題を抱えていて、これをどう解決したかというと、もちろんポゼッション=すなわち「自らが長い時間ボールを保持して、相手の攻撃時間を短くする」という作戦を徹底して、それに対応したチーム作りを行ってきました。

これはチャビ、デコ、イニエスタ、ロナウジーニョの時代で頂点に達しました。現在はやや折衷的になりましたが、その伝統は引き継がれています。この方法を日本のナショナルチームでできるかというと、卓越したテクニックを持つ選手が中盤に4人は必要なので、選出されたメンバーによります。佐々木監督はバルサ方式でチーム作りをしましたが、高倉監督は今回のメンバーでは無理と考えたのでしょう。

今回アジアカップでなでしこジャパンが選択したのはもうひとつのやり方、すなわちある程度フィジカルが強い選手を守備陣にそろえて、徹底的に組織的な守備をやるという方式でした。GK山下、CB熊谷・市瀬を中心に全員が走りに走ってつきまとうのが執念。鮫島なんて高齢にもかかわらず昔より元気な感じでした。高倉監督が偉大なのは、もうカテナチオしかないと決断して、その線で選手を集め育てたというところでしょう。

高倉監督がついていたのは、フィジカルの強い選手はそこそこいたこと、熊谷という優秀なキャプテンがいたこと、山下という有能なGKがいたこと、横山という強烈なストライカーがいたことなどですが、それらに適した作戦を遂行したことは英断でした。守備的なサッカーをすると批判されるのが日本の常ですから。

オーストラリアと互角以上に戦えたということは、おそらくドイツや米国などとも戦えるということでしょう。あとはスタミナ切れしないようにトレーニングし、体調をととのえてワールドカップに臨んで欲しいと思います。

(集合写真はウィキペディアより 2013年のなでしこジャパン)

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2018年4月18日 (水)

バルサ 驚異のメンバーで無敗を続行

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土曜日にセヴィージャとのコパ決勝戦を控えたバルサは、主力を休ませ驚異のメンバーでガリシアでの遠征戦を戦いました。このメンバーではもちろん戦ったことなどありません。キャプテンはなんと25才のドイツ人、テア・シュテーゲンです。2度とないスタメンだと思うので記念写真を貼っておきます。

パコの1トップ、2列目はコウチーニョ、パウリーニョ、デンベレ、デニス・スアレスとアンドレ・ゴメスがDボランチの感じです。

バライードスでのセルタ・デ・ビーゴ戦はここ3年で2敗1分けですから、はたして戦えるのでしょうか? 無理でした。

ワンツーすら失敗がちで、すぐにボールを奪われるので行ったり来たりのサッカーで、とてもバルサのサッカーとは思えません。再三シュートを打たれますが、セルタの決め手のなさに救われて助かっているうちに、デンベレがリーガ初ゴールを決めて先取点はバルサ。

しかしジョニーにすごいパスカットを食らって失点。後半もセメド→パウリーニョ→パコとつながって1点取りましたが、途中出場のセルジがイアゴ・アスパスを後ろから抱きしめて1発レッド。これは致命的なピンチだったので正解だったと思いますが、防戦一方となり、結局イアゴ・アスパスのヒジでゴールを決められ(レフェリーには見えず)2:2のエンパテに持ち込まれました。

バンバンシュートを打たれる最悪の試合だったので、ハンドでのゴールで失点とはいえ、このメンバーでエンパテはラッキーでした。というよりセルタの攻撃陣のあまりにもまずいシュート連発に救われましたね。バルベルデの度胸の良さに乾杯。

これでバルサ無敗の行進は続きます。本当に無敗で優勝したらすごいことです。5月のクラシコが最大の山場になりそうです。

https://www.youtube.com/watch?v=ObhJgPr08Y4

https://www.youtube.com/watch?v=v27Uq_cTJ3U

https://www.youtube.com/watch?v=AjQzoznYMPM


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2018年4月16日 (月)

JPOP名曲徒然草185: 中島みゆき「歌姫」 by ぷりん

1「ぷりん」さんはかなり前からYOUTUBEでお馴染みなんですが、まだ一度もライヴに行く機会がありませんでした。大変活発に活動されているのですが、主に横浜方面ということで、たまに東の方は九十九里とか稲毛ということで、なかなか私としては困難ですが、今年は是非お邪魔したいと思っております。

最近は主に「naru&ぷりん」というユニットで活動なさっているようです。
naru&ぷりん オフィシャルウェブサイト:
https://narupuri.jimdo.com/

いつもはギターの弾き語りですが、この映像は大変珍しくピアノ(なかやま・らいでん)のサポートで、手ぶらで歌っています。右手を負傷されたようで、まさに怪我の功名といいますか、この「歌姫」(作詞・作曲 中島みゆき)が素晴らしい。体調も十分じゃないのか、声がややハスキーになっていますが、それがまたいいんですね。
https://www.youtube.com/watch?v=SRxYotOoWAU

やっぱりどうしても無理してもギターを持ちたくなるのでしょうか? 「タクシードライバー」はいつもの弾き語りで。中島みゆきは社会的弱者・負者の視線から音楽を作っている人だと思いますが、ぷりんさんは決してドロドロにならないよう、いつも明るいトーンで演奏しようとしているように思います。
https://www.youtube.com/watch?v=sNNiW6zcp94

「命の別名」
https://www.youtube.com/watch?v=b2XDXjdAytw

「糸」
https://www.youtube.com/watch?v=zL0ouFoDesM

「ホームにて」
https://www.youtube.com/watch?v=gSo4CfOItA4

naru&ぷりん バージョンの「歌姫」
https://www.youtube.com/watch?v=Y4ZGzYz4Ytk

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2018年4月13日 (金)

ごあいさつ

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2018年4月11日 (水)

やぶにらみ生物論102: ニューロン

脳神経組織の主役はニューロンという細胞(神経細胞)です。どんな細胞なのでしょうか? この細胞は電気的および化学的に情報を伝達する能力に長けていることが特徴であり、典型的なものを図1に示します。とりあえずここではニューロンの細かい分類などは避けて、おおざっぱにどういうものかをみていきましょう。

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細胞核周辺の神経細胞体と呼ばれる部分から樹状突起や軸索という細長い枝がでたような構造の細胞です。これらの枝には数マイクロメーター以下の樹状突起から、脊髄にある1メートルに及ぶ軸索突起まで、10の6乗のバラエティーで様々な長さのものがあります。

軸索はシュワン細胞による鞘のような構造(ミエリン鞘=髄鞘)で被われていますが、皮膚の痛覚神経のようにこのような被覆組織で被われていない軸索もあります。鞘が途切れている部分をランヴィエ絞輪(こうりん)と呼びます。これは発見者であるルイ=アントワーヌ・ランヴィエ(1、図8)にちなんで命名されました。

ニューロンはみんな図1のような形態かというとそうではなくて、たとえば軸索が枝分かれしているとか、複数の軸索があるとか、樹状突起がないとか、様々なバラエティーがあります(2、3)。ニューロンの構造を精細に記載し、その機能について正しく指摘したのはスペインの神経科学者カハールでした(図2)。

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それまで中枢神経は多核の細胞が切れ目の無い網のような構造とっていると考えられていたのですが、カハールは図1のようなニューロンが多数集合した、非連続的な細胞の集合体であるという・・・いわゆる「ニューロン説」・・・を唱えました。さらにニューロン同士はシナプスという特殊な接合部で連絡すると考えました(図5)。

カハールは1906年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。ニューロン説は後にシナプスの構造が電子顕微鏡で明らかにされることによって、正しい学説であることが証明されました(図6)。

さて、ではニューロンはどのような方法で情報を伝達するのでしょうか? それは軸索とシナプスで大きく異なります。軸索での情報伝達に主役として関わるのは NaK-ATPase という細胞膜にはめ込まれた酵素です。この酵素を発見したのはロバート・ポストとイェンス・スコウです。

イェンス・スコウは麻酔薬の作用機構を研究していて、麻酔薬がナトリウムチャンネルを解放することによって神経細胞内のイオン濃度を変化させ、麻酔の効果が現われると考えていました。チャンネルというのは水路という意味ですが、細胞にはさまざまなチャンネルがあり、それぞれ水門を持っていて開けたり閉じたりすることができます。ただし水位(濃度)が低いところから高いところへは水(イオンなど)を移動させることはできません。そのためにはポンプが必要です。

イェンス・スコウは1958年にウィーンの学会でロバート・ポストに会い、ポストが赤血球で2分子のカリウムイオンが細胞内に汲み入れられると同時に3分子のナトリウムイオンが細胞外に汲み出されることを発見していたことを知りました。ポストはそのポンプの阻害剤としてウアバインを使っていましたが、スコウが研究していた神経細胞のナトリウムポンプ酵素もウアバインで阻害されることがわかり、スコウの酵素NaK-ATPaseがNaKポンプの実体であること判明しました(4、図3)。

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イェンス・スコウはNa+K+-ATPaseの発見の功績によって、1997年のノーベル化学賞を受賞していますが、この発見にはロバート・ポストも大きく貢献したことは間違いありません。これを端緒として、軸索における情報伝達は何らかの刺激によってNa+チャンネルが解放されて、Naイオンが細胞内に流入することによって活動電位が発生し、それが軸索に沿って伝播することによって情報が伝達されることがわかりました(図4)。

ニューロンは通常はNa+を細胞外に排出するために(ナトリウムポンプを動かすために)、生成したATPの70%を消費しています(5)。カリウムはNa+K+-ATPaseのはたらきで細胞内にとりこまれますが、実はカリウムイオン漏洩チャンネルという常時開放している穴を通って外に出てしまうため、イオンの密度勾配にはあまり貢献せず、実質ナトリウムの濃度勾配が電位を決めています(6)。ナトリウムイオンのチャンネルは通常は閉じていて、活動電位を発生させるときに開きます(6、図4)。

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活動電位は両側に伝播しますが、神経細胞体が刺激を受けた場合、軸索が1本の細胞では軸索と反対側は行き止まりで、実質軸索内を軸索末端の方向に伝播します(図4)。軸索まで到達したシグナルは、さらに軸索末端からシナプスを通じて隣接する細胞に受け渡されます(図5)。シナプスでの信号伝達は後記するように一方通行なので、活動電位が両側性であっても、神経系における信号の流れは結果的に一方通行になります。

シナプスはカハールのニューロン説の基盤になっていたわけですが、その名付け親はカハールではなくシェリントン(Charles Scott Sherrington 1857-1952)です。シェリントンは筋が収縮すると、その逆側の筋(拮抗筋)が弛緩するという「シェリントンの法則」を発見したことで有名ですが、「脳は多数の反射を有機的に統合して複雑な運動を作り上げる作用をもっている」という学説を提唱して、近代神経生理学の基礎を築いた人です(7)。1932年にアクションポテンシャルの研究で有名なエドガー・エイドリアンとともにノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

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ニューロン説やシナプスが19世紀から唱えられ、また発見されていたにもかかわらず、20世紀の半ば以降にシナプスが電子顕微鏡で観察されるようになるまで、それらは一般に認知されませんでした。このあたりの事情は齋藤基一郎と佐々木薫の総説などに詳述されています(8、9)。カハールのニューロン説を勝利に導いたのは、エドゥアルド・デ・ロバーティス、ジョージ・パラーデらによる電子顕微鏡観察の研究結果でした(10、11、図6)。

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文献8によると、デ・ロバーティス、パラーデ達の研究結果から「これによるとシナプス前膜とシナプス後膜は二枚の離れた厚さ7nmの膜であり,両者はシナプス溝(幅約20nm)の間隙によって隔てられており,シナプス前膜側にある神経伝達物質を含むシナプス小胞は直径50nmのサイズであることが明らかにされた」とあります。

前膜・後膜という名前からわかるように、シナプスにおける情報伝達には方向性があり、シナプス小胞が存在する側から存在しない側に情報が伝達されます。シナプス小胞には神経伝達物質が含まれており、エキソサイトーシスまたは輸送体によってシナプス間隙に放出され、シナプス後膜の受容体によって受け取られます(12、図5)。

神経伝達物質としては 1.アミノ酸(グルタミン酸、γ-アミノ酪酸、アスパラギン酸、グリシンなど)、2.ペプチド類(バソプレシン、ソマトスタチン、ニューロテンシンなど)、3.モノアミン類(ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン)とアセチルコリンなどが知られています(13)。神経伝達物質の種類によってその受容体が異なるので、その後に起こることも違ってきますが、典型的には受容体がイオンチャンネルであり、伝達物質の結合によってナトリウムが通過して活動電位が発生します。これによって電気シグナル(軸索)→化学シグナル(シナプス)→電気シグナル(樹状突起)→電気シグナル(軸索)という形でシグナル伝達が行なわれることになります(図5)。

シナプスにおける化学情報伝達の典型例は次のように考えられています(14)。

1.前シナプス細胞の軸索を活動電位が伝わり、軸索末端に達する。

2.活動電位によ軸索末端膜上に位置する電位依存性カルシウムイオンチャネルが開く。

3.するとカルシウムイオンがシナプス内に流入し、シナプス小胞がエクソサイト-シスにより細胞外に放出される。

4.神経伝達物質はシナプス間隙を拡散し、後シナプス細胞の細胞膜上に分布する神経伝達物質受容体に結合する。

5.後シナプス細胞のイオンチャネルが開き、細胞膜内外の電位差が変化する。

シナプスは軸索末端と樹状突起をつなぐような典型例以外に、図7のようにさまざまな場合が存在し、それぞれ異なる意義を持つと考えられます。

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軸索はミエリン鞘(髄鞘)で被われていると前に述べましたが、このミエリン鞘はルドルフ・フィルヒョウ(図8-脳科学辞典 髄鞘より)によって1858年に発見され記載されたグリア細胞がその実体です(15)。このグリア細胞は中枢ではオリゴデンドロサイト、末梢ではシュワン細胞と呼ばれています。オリゴデンドロサイトやシュワン細胞はニューロンの軸索を毛布でぐるぐる巻きにするように被覆し(図8)、軸索を絶縁することによって軸索の電気伝導速度を高めています。また軸索の物理的保護や栄養供給などさまざまなサポートを行なっていると考えられています(16-18)。

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ミエリン鞘が軸索から脱落する病気は脱髄疾患と呼ばれており、大原麗子が罹患していたといわれるギラン・バレー症候群はその例として有名になりました。多発性硬化症や白質ジストロフィーも含まれます(18)。ミエリン鞘は脊椎動物だけでなく、エビやミミズにも存在するそうです(18)。

このミエリン鞘に切れ目があることを発見したのがルイ・ランヴィエです(図8)。彼の名前をとってランヴィエ紋輪と呼ばれています(図1、図9)。ランヴィエの絞輪は単に細胞の切れ目ではなありません。ミエリン鞘を持つ軸索は活動電位(脱分極)を連続的に移動させるのではなく、ランヴィエ絞輪の部分だけでとびとびにイオンの出し入れを行なって、高速に伝導をおこなっている(跳躍伝導)ことがわかっています(図9)。

このメカニズムを発見したのは戦後ロックフェラー財団の援助で渡米し、そのまま米国籍を取得した日系アメリカ人の生理学者田崎一二(たさき・いちじ)です(19、図9)。彼は97才までNIHで働いていたそうで、これはNIHのレコードだそうです(20)。奥様も一緒に写真に写っていますが、奥様(Nobuko氏)は70年近くにわたって彼のアシスタントを勤めてこられたそうで、そのことはNIHのマイルストーンにも記載されています(20)。

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活動電位(アクション・ポテンデャル)という言葉がこの記事にもしばしば登場しましたが、この測定に成功したのがホジキンとハクスレイで、彼らはイカの神経軸索に金属製の電極を用いて膜電位とその変化を記録して解析した功績によって、1963年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています(21、図10、図11)。それ以来イカは神経の研究にとって大事な素材となっており、脳神経科学の進歩に大きな貢献をしました。

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イカの人工飼育は1970年代まで非常に困難でしたが、物理学者だった松本元はその原因が水槽のアンモニア濃度にあることを喝破し、アンモニアを分解するバクテリアのバイオフィルターで水を浄化することによって飼育に成功しました(22)。これは神経科学の進歩におおいに役立ちました。彼は「愛は脳を活性化する」(23)という本を執筆しており、「情がマスターで、知はスレイヴ」と述べているそうです(私は未読)。

参照

1)https://en.wikipedia.org/wiki/Louis-Antoine_Ranvier

2)http://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/10-1/index-10-1.html

3)https://en.wikipedia.org/wiki/Neuron

4)https://en.wikipedia.org/wiki/Jens_Christian_Skou

5)https://ja.wikipedia.org/wiki/Na%2B/K%2B-ATP%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BC

6)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%86%9C%E9%9B%BB%E4%BD%8D

7)サイエンスジャーナル 第32回ノーベル生理学・医学賞 シェリントン・エイドリアン「All or none low」 (2012)
http://sciencejournal.livedoor.biz/archives/3778846.html

8)齋藤基一郎、佐々木薫.電子顕微鏡によるシナプス研究の歩み その超微構造と働き、茨城県立医療大学紀要第6巻 pp.23-36(2001)
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110000487031.pdf?id=ART0000878702

9)William A. Wells.From the archive., The discovery of synaptic vesicles. 
Published Online: 3 January, 2005 | Supp Info: http://doi.org/10.1083/jcb1681fta4
http://jcb.rupress.org/content/jcb/168/1/13.2.full.pdf

10)De Robertis, E.D.P., and H.S. Bennett., Some features of the submicroscopic morphology of synapses in frog and earthworm.,  J. Biophys. Biochem. Cytol. vol.1, pp. 47–58
http://jcb.rupress.org/content/1/1/47?ijkey=606ed65709e41ffb73559e700fc15f6bfac2c752&keytype2=tf_ipsecsha

11)Palade, G.E., and S.L. Palay. 1954. Anat. Rec. 118:335. (1954)

12)脳科学辞典 シナプス小胞
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9%E5%B0%8F%E8%83%9E

13)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E4%BC%9D%E9%81%94%E7%89%A9%E8%B3%AA

14)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9

15)脳科学辞典 グリア細胞
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%A2%E7%B4%B0%E8%83%9E

16)Nave KA, Trapp BD., Axon-glial signaling and the glial support of axon function., Annu Rev Neurosci. vol. 31, pp. 535-561. doi: 10.1146/annurev.neuro.30.051606.094309. (2008)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18558866

17)Nave K., Myelination and the trophic support of long axons., Nat Rev Neurosci., vol. 11(4), pp. 275-283., doi: 10.1038/nrn2797. (2010)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20216548

18)脳科学辞典 髄鞘
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%AB%84%E9%9E%98

19)Tasaki, I., The electro-saltatory transmission of the nerve impulse and the effect of narcosis upon the nerve fiber. Am. J. Physiol. vol. 127, pp. 211-227 (1939)

20)NIH record - mile stones - Biophysicist Tasaki Leaves Extraordinary Scientific Legacy
https://nihrecord.nih.gov/newsletters/2009/02_20_2009/milestones.htm

21)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1963. Award Ceremony Speech.
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1963/press.html

22)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E5%85%83

23)松本元 「愛は脳を活性化する 」 岩波科学ライブラリー (1996)

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2018年4月 9日 (月)

大野-都響 マーラー交響曲第3番@東京文化会館2018・4・9

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今日は超名曲マーラー交響曲第3番です。朝早く起きてマエストロ大野の解説を聞いて予習もバッチリ。
http://www.tmso.or.jp/j/movie/special/2018/

コンマスは矢部ちゃん。サイドはゆずき。はじまる前に長谷部(Vc)が手ぶらで出てきて何をするのかと思ったら、入念に椅子の高さを調節。気合いが入っているのか?

マキロンの席にペットボトルが置かれていました。私は糖尿なので会議で水が無いと不安になりますが、彼女も同病なのでしょうかね? 新入りの1Vn奏者も3列目で演奏。たいしたものです。

マーラー交響曲第3番は都響でもベルティーニの頃から何度か聴いていて、すべて素晴らしい演奏だったので期待は大です。

第一部

  • 序奏 「牧神(パン)が目覚める」
  • 第1楽章 「夏が行進してくる(バッカスの行進)」 

第二部

  • 第2楽章 「野原の花々が私に語ること」
  • 第3楽章 「森の動物たちが私に語ること」
  • 第4楽章 「夜が私に語ること」
  • 第5楽章 「天使たちが私に語ること」
  • 第6楽章 「愛が私に語ること」

冒頭ちょっともたついた感じでしたが、すぐに快調なペースに。白眉は第2楽章と第3楽章でした。この音楽の完璧な美は鳥肌が立つほど。あまりに繊細な美しさで、ただ眺めるだけでとても中には入っていけない感じでした。これもまた芸術なんですね。

ソリストはパーシキヴィ(Ms)さんで、彼女はフィンランド国立歌劇場の芸術監督をやっているお偉方だそうですが、声も深く柔らかく、ハートフェルトな歌を聴かせてくれました。あとバンダのトランペットが同じくハートフェルトな演奏で、バンダの演奏に感動したのはめずらしい経験でした。

新国合唱団も児童合唱団も素晴らしかったのですが、第6楽章の前に児童を座らせている途中で、マエストロ大野が演奏をはじめてしまったのは短気だったと思います。一息入れてからはじめても違和感はないと思いますね。

第6楽章の弦、特にチェロの美しさは素晴らしい。田中さんの18番かも。都響の皆さんとエキストラ奏者の皆さんの頑張りに感謝です。

こんな曲です
https://www.youtube.com/watch?v=Xplx64LVENg

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2018年4月 6日 (金)

西島三重子久しぶりのライヴ 新曲「目黒川」

Imgみーちゃんが新曲「目黒川」発売記念のライヴをやります(4月28日@南青山マンダラ)。詳細は下のパネルを参照してください。演歌のようで演歌でないというところがミソ。

私は学生時代に祐天寺の学生寮にいたので、目黒川は近所だったのですが、なにしろ代官山にも近い高級住宅街だったので、散歩に出かけるような気分にはなれない場所でした。

それでも桜の季節には一度でかけたことがあり、なかなかの絶景でした。

カップリングは「時の扉をノックして」という昭和の和ジャズという感じの曲です。

いずれの曲も、作詞:みろく(サイドバーの美人作詞家)、作曲:西島三重子の名コンビの作品です。

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http://nishijima-mieko.com/news.html

みーちゃんとも、ファンの方々とも、またお会いできるのを楽しみにしています。

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2018年4月 4日 (水)

やぶにらみ生物論101: 脳科学の世界を初訪問

「やぶにやみ生物論」も記事が100になって、ほぼ生物学の基礎的な分野は網羅したように思います。まとめて読みたい方は、ほぼ同じ記事が「生物学茶話@渋めのダージリンはいかが」にまとめて掲載してありますので、そちらでお読みいただければ幸いです。
http://morph.way-nifty.com/lecture/

一度に全部は表示できないので、右にあるサイドバーの「バックナンバー」というタイトルをクリックしていただくと、全ての記事を閲覧できます。

101からはさてどうしょうかということですが、私にとっては未知分野である脳科学に挑戦してみようかなと思っています。といっても試験管とピペットを持って何かやるわけではなく、駄文をアップするだけです。それでもウソは書きたくないので、遅遅とした歩みでも慎重にやりたいとは思っています。

脳というのは独立した臓器ではなく、脊髄・末梢神経ひいては感覚器官や運動器官と繋がっているので、体全体に広がっている漠然とした臓器あるいはシステムの一部と考えることも可能です。ですから脳科学(ブレインサイエンス)というのはどちらかといえば一般用語であり、専門的にはニューロサイエンスと言うのが普通でしょう。中枢も末梢もその構成中心となるのは神経細胞(ニューロン)であり、これをサポートする様々な細胞達と協力して組織を構成しています。

ではまず科学の眼で脳について考察した古代の人々をみていきましょう。医学の父と呼ばれるヒポクラテスは、古代ギリシャで紀元前5世紀から4世紀を生きた人物であるとされています。彼が実在の人物であることは、同じ時代に生きていたプラトンやアリストテレスの著書などで紹介されていることから明らかです(1)。

ヒポクラテスはトルコに近いコス島の出身で、経験に基づいたまともな医療を行なう医者のグループを結成し、ギリシャ全土にその名を知られるようになりました。図1のようにコス島はギリシャ本土から離れた辺境の地で、このような場所であったからこそ、既得権益から離れた革命的な医療集団を結成することができたのかもしれません。現代でも手かざしで病気が治るというようないかがわしい施術をやっている集団はいくらでもあります。

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彼がその木の下で講義したという「すずかけの木」がいまでもコス島の広場にあります(図2)。後の時代に植え替えられた物だとは思いますが、多分場所は同じだったのでしょう。彼の技術や思想は、死後に刊行された「ヒポクラテス全集」によって知ることができます。彼のグループや弟子達の知識は西洋医学に大きな影響を与えました(2)。

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アリストテレスはニワトリが首を切られた後も走り回るとか、死者の心臓は温かいのに脳は冷たいなどの知見から脳を重視しませんでしたが(3)、ヒポクラテスはてんかんの原因が脳にあることを指摘していました。

「脳科学メディア」というサイトの記事を引用すると「ヒポクラテスは自身の著書『神聖病論』の中で、大脳は知性を解釈するものであるとして“我々は、とりわけ脳によって思考したり理解したり見聞きしたりし、醜いものや美しいもの、悪いものや良いもの、さらには快・不快を知るのである”と述べた。心が脳にあるというヒポクラテスの考えは、脳の働きに関する真理としての初めての発見であるといわれている。今日に至る脳研究の歴史は、この時代から始まったといえる。」と述べられています(4)。

さらに古代ギリシャ・アレキサンドリアの解剖学者ヘロフィロス(B.C.235-B.C.280)は脳と脊髄に神経が集中していることや、脳の中に脳室が4つあることを発見し、4つの脳室の内第4の脳室に心の座があると考えていたそうです(4、図3)。彼はヒトの屍体をはじめて組織的かつ科学的に解剖した人物としても知られています(5)。彼の主な業績はハインリッヒ・フォン・シュターデンによって翻訳され、英語で出版されています(6)。

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紀元前1世紀以降医学の発展が滞ってしまったのは、当時から勃興してきたキリスト教では「死者たちは生きていた時の肉体をともなって最後の審判で神の前に呼ばれる」と考えていたため、人体の解剖が禁止されてしまったことが一つの要因とされています(4、7)。この間ヒポクラテス医学のエヴァンゲリオンとして、ローマ帝国時代の2世紀に活躍したガレノスが有名ですが、彼は解剖学を革命的に進展させることはできませんでした。

中世において滞っていた解剖学をルネサンスの時代に復活させたのは、16世紀のベルギー人解剖学者アンドレアス・ヴェサリウス(1514-1564)でした。彼はガレノスの教科書がヒトではなく動物の解剖に基づいていることを指摘し、自分で人体を解剖して正しい知識を教科書にまとめました。それが通称ファブリカと呼ばれる大著「 “De humani corporis fabrica” (人体の構造)」で、ここに掲載されている人体解剖図は現代でも通用する正確さで描かれています。

図4左はヴェサリウスの肖像画、図4右はDe humani corporis fabrica の表紙で、屍体の左側に居るのがヴェサリウス、上には死神が見えます(8)。

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図5はDe humani corporis fabrica に記載されている脳底部の解剖図で、視神経交叉、嗅球、小脳などが精細に描かれています。当時は屍体がなかなか入手できませんし、防腐処置や冷蔵が上手くできない時代だったので、正確な解剖図を描くには途方もない努力が必要だったと思われます。私は未読ですが、ヴェサリウスについて詳しく知りたい方は日本語の書物も出版されています(9)。推理小説もあります(10)。一部は電子書籍として安価に入手できます(11)。

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ここからは現在の知見ですが、とりあえずおおざっぱにヒトの脳の構造をみてみましょう。ヒトの脳を外側からみると大脳・小脳・脳幹の3つの部域からなりたっていることがわかります(図6)。大脳は4つの深い溝、すなわち中心溝・外側溝・頭頂後頭溝・後頭前切痕によって、図6のように前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉に分かれています。脳幹は中脳・橋・延髄からなり、延髄は下方で脊髄と繋がっています(12、図6右図)。脊椎動物では脳と脊髄を合わせて中枢神経と呼び、それ以外は末梢神経ということになります。

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図7は前後軸で切った(サジタルセクション)ヒト脳の断面です。正中線で切ると海馬はみえないはずですが、重要な部分なので重ね書きしてあります。実際には手前と奥に存在することになります。大脳はウィキペディアによれば「知覚、知覚情報の分析、統合、運動随意性統御、記憶、試行」を司っています(13)。これに加えて臭覚は大脳で情報処理されています。

視床と視床下部はあわせて間脳と呼ばれますが、視床は臭覚以外のあらゆる感覚の中枢であり、視床下部は自律神経の中枢です。脳下垂体はさまざまなホルモンを分泌する器官です。

小脳はウィキペディアによれば「小脳の主要な機能は知覚と運動機能の統合であり、平衡・筋緊張・随意筋運動の調節などを司る」ということになっています(14)。海馬は記憶と密接な関係があるとされています(15)。

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脳や脊髄は内側から軟膜・くも膜・硬膜という3種の膜(髄膜)によって被われています(図8)。最も内側の軟膜は毛細血管に富んだ組織であり、それは軟膜の細胞ではなく脳細胞に栄養を供給するためとされています(16)。軟膜とくも膜は密着していなくて、間に脳脊髄液が満たされており、小柱という線維の束で軟膜とところどころで結合しています。この小柱の構造が蜘蛛の巣に似ていることからくも膜と呼ばれています。くも膜は硬膜を貫通して、血洞に突出するパッキオーニ小体(図8)を形成しており、脳脊髄液内の物質循環に有効な役割を果たしていると思われます(17)。 

硬膜はいわば脳のパーティションであり、大脳鎌などによって柔らかい脳組織を小室に分けて壁構造で強度を与えていると考えられます。また内部に静脈血胴をかかえており、血液循環に寄与しています(18)。 

硬膜の外側には頭蓋骨があり、脳を保護しています。頭蓋骨と密着して外側に骨膜があり、その外側に結合組織(帽状腱膜)があり、その外側に皮下組織と皮膚があります。ここに毛根を持って頭髪が生えています(図8)。

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参照

1)二宮睦雄 「医学史探訪 知られざるヒポクラテス ーギリシャ医学の潮流ー」 篠原出版(1983)

2)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%9D%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%86%E3%82%B9

3)http://sora-shinonome.jp/brain/post_35.html

4)脳科学メディア 紀元前4世紀から21世紀まで、脳研究2500年の歴史を辿る。
http://japan-brain-science.com/archives/59

5)https://en.wikipedia.org/wiki/Herophilos

6)Heinrich von Staden, Herophilus: The Art of Medicine in Early Alexandria: Edition, Translation and Essays., Cambridge University Press (1989)
https://books.google.co.jp/books?id=rGhlIfJZkVoC&redir_esc=y

7)akihitosuzuki's diary ルネサンスの解剖学とその発展 はじめに 古代・中世の解剖学と近代解剖学の連続と断絶
http://akihitosuzuki.hatenadiary.jp/entry/2015/07/29/185102

8)https://en.wikipedia.org/wiki/De_humani_corporis_fabrica

9)坂井建雄 「謎の解剖学者ヴェサリウス」 ちくまプリマ-ブックス (1999)

10)ジョルディ・ヨブレギャット 「ヴェサリウスの秘密」 集英社 (2016)

11)ヴェサリウス解剖図: De corporis humani fabrica libri septem  Kindle版
こちら

12)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3

13)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%84%B3

14)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E8%84%B3

15)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E9%A6%AC_(%E8%84%B3)

16)https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%BB%9F%E8%86%9C

17)https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%81%8F%E3%82%82%E8%86%9C

18)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%AC%E8%86%9C

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2018年4月 1日 (日)

お寺の猫たち

Imga

墓参りに行ってきました。お彼岸とあって、本堂が開放されています。住職の奥さんが猫好きなのはいいのですが、お寺で猫を飼うのは結構困難です。

というのは檀家の人々が頻繁に訪れるので、住居に鍵を掛けておくわけにはいかないのです。ですから野良猫の住処としてはいいのですが、内ネコとして飼育するためには下のような状況になってしまうのもやむを得ないのかもしれません。

Imgb

というわけでヒモつきのハナちゃんです。内ネコはハナちゃんだけで、他に外ネコがたくさんあたりをうろついています。

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こんな感じで境内を徘徊しています。

お墓参りの歌

「この丘」 辻香織   
https://www.youtube.com/watch?v=Mws_HYleGXI

「わたしが残していくもの」   西島三重子
https://www.youtube.com/watch?v=hw0A1gNoR3E

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2018年3月31日 (土)

山本貴則は自分のシナリオで試合を進めて楽しいのだろうか?

Photo山本貴則 ウィキペディアの記述

「山本 貴則(やまもと たかのり、1981年9月29日 - )はプロ野球審判員。日本野球機構審判部関西支局所属。審判員袖番号は『41』。大阪府柏原市出身。ジャンパイア」

やっぱりな・・・。 こういう輩がいるから、ストライク&ボールをマシンで判定しろと私は昔から主張しているのです。


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2018年3月30日 (金)

インバル-都響 チャイコフスキ-交響曲第6番@東京芸術劇場2018・3・30

Imga春らしい好天に恵まれた平日昼のコンサートです。インバル登場とあって池袋東京芸術劇場はほぼ満席の大盛況。

コンマスは矢部ちゃん、サイドは四方さんの最強シフト。矢部ちゃんはこれで雨男返上か!

前半はシューベルトの「未完成交響曲」でした。慎重で丁寧な演奏だったと思います。広田氏のオーボエが大活躍ですが、音がこの曲にはまっている感じがしました。

しかし今日はなんと言っても後半のチャイコフスキー「交響曲第6番」。都響はこの「崩壊への暗黒の行進」を見事に表現してみせました。弦のぞくぞくするような仄暗いアンサンブルが素晴らしい。管も万全の演奏で盛り上げてくれました。都響の歴史に残る演奏会だったと思います。

ロシアのオーケストラならまた別のやり方もあるのかもしれませんが、日本のオケとしては恐ろしいまでに整理されたアンサンブルなのに音楽に没入し、爆発する激情、崩壊への転落を表現し得て文句なし。

都響ベストテンを投票するシーズンです。ちょっと迷っていた私ですが、今日の演奏を聴いてこれは間違いなく第1位です。

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2018年3月28日 (水)

2018 北総の桜

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北総でも桜が咲いて春がやってきました。枝野が政権をとるようなことがあれば、もう日の丸はやめて桜を国旗に使うべきだと思うくらいです。

右翼系の人々と話すと、よく日本文化の継承というような話題になりますが、ではその残すべき日本文化とはなんだろうと思います。まさか籠池さんのように教育勅語じゃないでしょう。結局規則に従ったゴミ出しや整列乗車というようなことが彼らの本音なのかもしれません。それって日本人の中で暮らしていれば、「慣れ」で解決されると思いますけどね。

優れた文化というのはたとえ日本が消滅しても残ります。日本中どこでもピアノ教室やヴァイオリン教室はありますが、笙・篳篥の教室はありませんよね。でも和食のお店は世界中にあります。アニメや漫画も世界中で認められています。

でも本当に凄い日本文化は1970年代以来のJPOPだと思いますね。ユーミン、みゆき、織田哲郎たちのオリジナリティーはもっと世界に知られてもいいと思います。若い人でもオリジナリティーを持った作品を作っている人が大勢います。クマッキーが中国に驚異的に受け入れられたのも良い例ですが、もう少し世界に向けてウェブにプロモーションビデオやミュージックビデオ(外国語のキャプション付き)を流し、きちんとプロモーションしたらどうでしょうか。

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2018年3月25日 (日)

An's meeting 熊木杏里@東京国際フォーラム ホールC2018・3・24

はじめて熊木杏里の実演に出かけたのが2011年の東京国際フォーラム・ホールC。それ以来この会場には来たことがなかったので、ちょっと懐かしい感じです。

当時のルポ↓
http://morph.way-nifty.com/grey/2011/01/post-d0aa.html

長丁場になりそうな予感がしたので、地下のカフェでチョコレートケーキをいただいてから参戦。

今回も2011年と同様に収容1500人のホールはほぼ満席です。通常のライヴでよくあるドリンク購入必須というような搾取もなく、グッズやCDの販売のみです。ただ私的には飲み物がなくてちょっと困りました。

もう一つの違いは、セットリストが事前に入手可能だったことです(希望者に配布)。私はクラシックのコンサートに行く機会が多いので、曲目が事前にわかっていることに全く違和感がなく、むしろ落ち着きました。

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普通の意味でのベストではなくて、かなりマニアックな感じもします。クマッキーの思い入れのベストかも知れません。このホールは2F・3Fの音響は素晴らしいです。

ダブルアンコールの曲目は「新しい私になって」と「シグナル」

新しい私になって:https://www.youtube.com/watch?v=BLufYWFc2jM

とてもラグジュアリーなコンサートでした。ギター、キーボード、ベース、ドラムスに加えて女性のサイドボーカルもサポートメンバーに参加。さらに途中で「3姉妹」という別のメンバーに入れ替わるというというサプライズもありました。

「朝日の誓い」を中国語で演唱したのにはびっくり。今回のコンサートの大成功の裏には、中国で人気が出たことが大きく寄与していることは明らかです。意外にクマッキーの曲が中国語の抑揚にはまっていることがわかりました。

アンコール5曲とは大サービスで、最後の「シグナル」はオールスタンディングで盛り上がりました。アンコールでは、私は「汐のための子守歌」をやるのではないかと予想していたので、見事にハズレました。

次回のコンサートはクリスマスに三井日本橋ホールで開催されるそうです。

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2018年3月23日 (金)

やぶにらみ生物論100: 初期発生と情報伝達2

遺伝子発現と初期発生現象のかかわりを研究する上で、遺伝学の研究でよく使われるショウジョウバエやマウスには若干不都合な事情があります。

ショウジョウバエの場合、初期発生は表割という特殊な様式で行なわれるので(1)、両生類・魚類・爬虫類・鳥類・哺乳類で構成されるグループとの関連性がつかみにくいという問題があります。マウスのような哺乳類の場合、発生は母親の用意した環境(子宮)で行なわれるので、初期発生が物質の濃度勾配による影響などを含めて母体環境に依存したメカニズムで進展する可能性があります。ショウジョウバエの場合も、発生はナース細胞によってサポートされています。

この点両生類は卵割で形成された割球のすべてがその個体の細胞になること、外界に産み落とされるので分化はすべて自前のプログラムで行なわれること、シュペーマンが使った材料であり、オーガナイザーの分子生物学による説明の素材として適していることなど、実験動物として適している点が多いと思われます。特にアフリカツメガエルは肺を持ちながら陸上では生活しない、すなわち水槽だけで飼育できるという利点があるので良く用いられます(図1)。

1c_2


すでに 97:体軸形成で述べたように、カエルの原腸陥入の位置にはβ-カテニンが局在し、Wntシグナルの標準型経路(キャノニカル・パスウェイ)が関与していると思われます(2、図1)。最近の研究ではキャノニカル・パスウェイとノンキャノニカル・パスウェイ(3)は、細胞膜における第2受容体の違いでは識別できるものの、細胞内の錯綜した生化学経路のなかでお互いに干渉し合っており、簡単には分離できないことが判明しています(4、図2)。

2c_2


そういう複雑さは前提となりますが、Wnt経路と発生との関連についてはKuとMeltonがツメガエルの成熟した卵母細胞において、Wnt11のmRNAが植物極側のコーテックス(細胞膜のすぐ内側の細胞質)に局在していることを、すでに20世紀に発見していました(5)。Wnt11のmRNAはその後陥入が起こる背側帯域(dorsal marginal zone) に高濃度で局在します(5)。 彼らはWnt11はノンキャノニカル・パスウェイを介して発生を制御していると考えていました。

しかしヒースマン研のコフロンらは2001年に、β-カテニン分解複合体の構成因子である母親由来のアキシンを欠く胚では、β-カテニンが安定化されて胚の過剰の背側化( dorsalization )がおこり、過大な脊索や頭部の構造、縮退した尾や腹部が形成されることを明らかにしました(6、図3)。このことは腹背の決定にキャノニカル・パスウェイが関与していることを意味します。

3c_2

ツメガエルWnt11についての研究は、その後ヒースマンの研究室で大きく進展しました。中心となって研究を進めたのはタオとヨコタです(7、図4)。彼らは成熟した卵母細胞にWnt11のアンチセンスオリゴマーを投与して、Wnt  mRNAのレベルを20%まで下げ、このような胚は腹側に偏った発生を行ない、神経褶が形成されないことを証明しました。このような胚に Wnt11  mRNA を注入すると背側化が部分的に再促進されることもわかりました。

彼らはさらにWnt過剰発現は 背側化転写因子である siamoisや Xnr3 の発現をβ-カテニンに依存して促進することや、卵割の途中で細胞膜直下のコーテックスに局在していたWnt11のmRNAが細胞質に広がっていくことを確認しました(7)。


4c_22016年にようやくアフリカツメガエルの全ゲノム解析結果が発表されました(8)。これによってトランスクリプト-ム解析が可能となり、シュペーマンオーガナイザーの分子的実体についての全容が明らかになる日も近いと思われます。

初期胚は形態形成という1点をめざした細胞集合体とも考えられるので、母親由来のmRNAのプロファイリングと共に、特にトランスクリプト-ム解析を綿密に行なうことがメカニズム解明のために有効だと思われます。

トランスクリプト-ム解析などによって de Robertis のチームが明らかにしたことの一部を図5に示します。彼らの図式によれば、シュペーマンオーガナイザーを構成する多くの因子は、母親Wntシグナル→β-カテニン→Siamois(シャム)の下流にあることになっています。詳しくは文献(9)を参照して下さい。もちろんこの仕事によってシュペーマンオーガナイザーのすべてが明らかになったわけではなく、今後の進展に期待したいところです。

5c_2


STAP細胞の件で自殺した笹井芳樹氏は、de Robertis の研究室でアフリカツメガエルを使って、シュペーマンオーガナイザーの構成分子のひとつである chordin の研究をしていました(10)。ご冥福をお祈りします。

先日平良眞規先生の退官記念シンポジウムに行ってきました。三井氏らもWntシグナルは重視しているようでしたが、ノンキャノニカルシグナルに重点を置いて研究されているように思いました。Wntが N-sulfo-rich へパラン硫酸に結合しているという知見は斬新です(11)。

哺乳類においてもWntシグナル、特にキャノニカルパスウェイが初期発生において重要な役割を果たしていることは証明されています(12)。

参照

1.卵割 自宅で学ぶ高校生物
http://manabu-biology.com/archives/42123775.html

2.生物学茶話@渋めのダージリンはいかが97: 体軸形成
http://morph.way-nifty.com/lecture/2017/12/post-1408.html

3.生物学茶話@渋めのダージリンはいかが99: 初期発生と情報伝達1
http://morph.way-nifty.com/lecture/2018/01/post-8af9.html

4.F.Fagotto, Wnt signaling during early Xenopus development. in "Xenopus development" ed., M. Kloc and J.Z.Kubiak., John Wiley & Sons Inc., (2014)

5.Ku M and Melton DA, Xwnt-11: a maternally expressed Xenopus wnt gene., Development.  vol.119 (4): pp. 1161-1173 (1993).
http://www.xenbase.org/literature/article.do?method=display&articleId=21903

6.Kofron M1, Klein P, Zhang F, Houston DW, Schaible K, Wylie C, Heasman J., The role of maternal axin in patterning the Xenopus embryo., Dev Biol. vol. 237(1):  pp. 183-201 (2001)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11518515

7.Qinghua Tao, Chika Yokota (same contribution) et al., Maternal Wnt11 Activates the Canonical Wnt Signaling Pathway Required for Axis Formation in Xenopus Embryos., Cell, Vol. 120, pp. 857–871, (2005)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15797385

8.Adam M. Session et al., Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis., Nature volume 538, pages 336–343 (2016) doi:10.1038/nature19840
https://www.nature.com/articles/nature19840

9.Yi Ding, Diego Ploper (same contribution), Eric A. Sosa, Gabriele Colozza, Yuki Moriyama, Maria D. J. Benitez,
Kelvin Zhang, Daria Merkurjevc, and Edward M. De Robertis, Spemann organizer transcriptome induction by earlybeta-catenin, Wnt, Nodal, and Siamois signals in Xenopus laevis., PNAS April 11, 2017. 114 (15) E3081-E3090 (2017)
http://www.pnas.org/content/114/15/E3081.long

10.Yoshiki Sasai, Bin Lu, Herbert Steinbeisser, Douglas Geissert, Linda K. Gont, and Eddy M. De Robertis., Xenopus chordin: A Novel Dorsalizing Factor Activated by Organizer-Specific Homeobox Genes.,
Cell. vol. 79 (5): pp. 779–790 (1994)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3082463/

11.Mii Y, Yamamoto T, Takada R, Mizumoto S, Matsuyama M, Yamada S, Takada S, Taira M. Roles of two types of heparan sulfate clusters in Wnt distribution and signaling in Xenopus. 
Nat Commun. vol. 8(1):1973. doi: 10.1038/s41467-017-02076-0. (2017)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5719454/

12.Jianbo Wang, Tanvi Sinha, and Anthony Wynshaw-Boris, Wnt Signaling in Mammalian Development:
Lessons from Mouse Genetics., Cold Spring Harb Perspect Biol vol.4, no.5 :a007963 (2012)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3331704/

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2018年3月20日 (火)

インバル-都響:ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」@東京文化会館2018・3・20

Imga寒の戻りで異常な寒さの中、東京文化会館に出かけました。ここは駅から1分なので助かります。本日のコンマスは山本さんで、そのせいか上野に雨は降りませんでした。サイドはマキロン。

ショスタコーヴィチほど戦争やファシズムに深い影響を受けた作曲家はいないのではないでしょうか? 本日の交響曲第7番ハ長調「レニングラード」も、一部がヒトラーのドイツ軍に包囲されたレニングラード(現サンクトペテルブルク)で作曲されたという、まさに戦争と切っても切れない関係にあります。

交響曲第5番は友人・親戚が次々に粛正されていく中で、体制を礼賛するという形をとって、スターリンに対する怨念を爆発させたものだと思いますが、第7番は祖国やレニングラードへの愛とファシズムへの敵愾心がバックグラウンドにあると、私は解釈しています。

メロディの質は第5番の方が上だと思いますが、曲に対する作曲者の思い入れは第7番の方が深いように感じます。本日の指揮者は久しぶりのマエストロ・インバル。80を越えているとは思えないエネルギッシュな指揮は驚異です。冒頭から都響の素晴らしいアンサンブルに引き込まれます。第1楽章の中心は、ラヴェルのボレロのように、西川さんの小太鼓の主導で進行していきます。大勢のエキストラ奏者も含めて、強烈なクライマックスの金管の迫力はさすが。

私が1番感動したのは第2楽章での鷹栖さん(オーボエ)のソロです。このしみじみとした情感には、本当に今日ここに来て良かったなと思いました。

終演後照明が明るくなった後でマエストロ・インバルが登場し、残って帰り支度をしていた西川さんをステージ正面に連れてきて共に拍手をもらっていたのには感動しました。

今や習近平、ウラジミル・プーチン、ドナルド・トランプなど大国の指導者がファシズムに親和性があるような政策を進めていますし、わが国でも晋三政権になってから、前記事で定義したファシズムに相当するような政策を進めています。

「It's dark days」

最後に赤羽常務理事への抗議: 来年の3月ですが、いくら元気だといっても、80才を越えた老人であるマエストロ・インバルのスケジュールがタイトすぎませんか? 3月23日福岡、24日名古屋、26日東京というのはいくらなんでも問題でしょう。

こんな曲です(パーヴォ・ヤルヴィ NHK交響楽団)
https://www.youtube.com/watch?v=YBM8xPxgpoo

↑これは名演だと思いますが、今日の都響はさらに上をいってました・・・と思います。

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2018年3月19日 (月)

ファシズムの定義

1

ローレンス・ブリットによるファシズムの定義
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia_talk:WikiProject_Fascism/Archive_2

1.国粋主義を強力かつ継続的に標榜する
2.人権を重要視することを蔑視する
3.国家の目標をひとつにするために、敵国と生贄を定める
4.軍隊と熱烈な軍国主義を至上とする
5.性差別主義を蔓延させる
6.マスメディアを統制する
7.国家安全保障に妄執する
8.宗教と支配層エリートを結合させる
9.保護された企業が力を持つ
10.労働者の力を抑圧または排除する
11.知性と芸術を蔑視する
12.犯罪取り締まりと刑罰を重くすることに執着する
13.縁故主義と汚職が蔓延する
14.不正選挙を行なう

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2018年3月17日 (土)

サラとミーナ199: ネコ同士

Img_2345

うちのネコが何を考えているかは、長いつきあいなのでだいたいわかっているつもり。どう感じているかもだいたいわかっているつもり。

でも1番わからないのが、ネコ同士がお互いをどう感じているかということです。まあそれは人間同士にも言えることではありますが。ただちょっと違うと思うのは、ネコ同士は分単位で好意と敵意が入れ替わることもあるような感じがします。さらに遊びと本気が入れ替わることもあるように思います。

まあ人だって、プロレスごっこで本気で殴られたら、こっちも本気になって殴り返すかもしれません。その程度のことなのでしょうか? 写真はちょっと緊張気味の表情に見えますが、それはカメラを意識しているからで、サラとミーナの感情は互いに強く好意に振れている状況です。

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2018年3月15日 (木)

二人目の犠牲者

A0002_000877佐川前理財局長と関係が深かった財務省職員が”自殺??”していたことが明らかになりました。

https://dot.asahi.com/wa/2018031500078.html?page=1

自分の意思で犯罪を行って、罪の意識で自殺というのならわからないでもないですが、他人に強要された行為がもとで自殺するというのは、簡単に納得できる話ではありません。

しかも1月29日の話なのに、財務省はこれまで箝口令をしいて隠蔽していたそうです。森友事件はますます深い森の中に埋もれてしまいそうですが、野党はどこまでがんばれるか。

そして国民はいつまでこんな政府を支持するのでしょうか。

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2018年3月14日 (水)

やはり暗殺だったのか?

A0002_000877近畿財務局職員の死はやはり暗殺だったのでしょうか? 2002年に民主党の国会議員・石井紘基氏が暗殺されたことを忘れてはなりません。

http://johosokuhou.com/2018/03/12/2029/

情報速報ドットコムより引用↓

>通常、救急車は死んだ者を病院に運ばない。病院で死亡したことにすれば警察は司法解剖できない。首を吊って生きられるのはたった15分。病院で死亡と報道されたら大抵は他殺だ。

>自殺した財務局職員は奥さんと離婚協議中で別居中、子どももいなかったらしいが、兵庫県警は第一発見者を「家人」と発表。勿論これは奥さんのことではない。遺族に遺書の引き渡しも行わず。やっぱり不可解な点が多すぎるな。

>警察→遺書を見て自殺と判断。
遺族→遺書は見てない あるのかも分からない。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/2018

>通報者が存在せず、兵庫県警が発見?
礼状なく通報もない状態で、不法に侵入したのでしょうか。

>第一次安倍内閣では、談合事件の捜査の手が安倍まで及びそうになった時に松岡農水相が謎の首吊り自殺、事情を知ると思われる松岡氏の地元秘書も自殺でうやむやに。

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森友学園問題で公明党が沈黙する理由
http://www.johoyatai.com/1055

こうなると谷査恵子氏と佐川宣寿氏が消されないように、野党は注意する必要があります。ただ彼らを喚問しても、もう十分に暗殺プラフがかかっているので、まともな証言が得られるかどうかは疑問ですけどね。

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2018年3月11日 (日)

LPGハイブリッドタクシー

1024pxtoyota_jpn_taxi_tms2017_001今日旧友との食事会があったのですが、帰りにタクシーに乗りました。

それがこのジャパンタクシーのLPGハイブリッド車。LPGハイブリッドなどというものがあるとは知らなかったので、ちょっと感動しました。

スライドドアで大変乗りやすく、特に荷物があるときはいいですね。車体は小さいのに後部座席スペースは非常に広いので、トランクは狭くても、足の前に荷物をおけちゃいます。

久しぶりで日本の科学技術のアドバンテージを実感しました。そのうちタクシーはすべてLPGハイブリッドになるのではないでしょうか。

参照 こちら

(写真はウィキペディアより)

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2018年3月 9日 (金)

私だったら

A0002_000877私だったら自殺なんてしないし、するとしても証拠文書は新聞社に送っておきますね。

でも、おそらくプロの仕業だと思いますよ。

官邸や財務省の関係者は、こんなことがおこっても平然と仕事を続けられる冷血ばかりなのでしょうかね。

http://tanakaryusaku.jp/2018/03/00017711

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2018年3月 7日 (水)

狂熱のヴィヴァルディ ミドリ・ザイラー

Img今にも飛び出しそうな目玉、深く刻まれた眉間のしわ、時にむき出しとなる歯。弓の奇怪なホールド。長い髪を振り乱しつつ、猛獣のように音楽にいどみかかるヴァイオリニスト、これがミドリ・ザイラーか!

そしてサイドで、まるで狂乱の女王につきそう忠実な侍女のようなトモエ・バディオラヴァ、そしてブレマー・バロックオーケストラ。すごい絵です。アヴァンギャルドなヴィヴァルディの音楽が凄い。ときに羽毛が飛び交うように軽やかに、ときに暴風が吹きすさぶように荒々しく。これがヴィヴァルディなのか!?

https://www.youtube.com/watch?v=b42vwZmG6k0

https://www.youtube.com/watch?v=s0ov_w8wD-E

写真は2010年にハルモニア・ムンディから出版されたCDです。これも腰を抜かしそうな「四季」。


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2018年3月 6日 (火)

サラとミーナ198: 管理マニュアルと共に

Imga

ミーナはともかくいつでもどこでもサラと仲良くなりたいのですが、サラはたいてい迷惑そうにしています。なめ回されるのがうざいのでしょう。ただ時になすがままになっている時もあります。そんな瞬間のツーショット。眠いときはいじられても比較的大丈夫なようです。

Imgb

ミーナは誰に飼われても、売れ残ってシェルターにいてもそれなりにハッピーな人生を送ることができたと思います。サラはちょっと違っていて、ミーナと私との微妙な三角関係の中で、特殊な人生を送っています。

サラはシェルターにいたら決して幸福ではなかったと思います。とても野生猫らしいローンウルフ的な猫なので、ごちゃごちゃ他の猫が居る中では居心地が悪かったと思います。

ミーナが居なくて、私とサラだけの関係だともう少し飼い猫らしく変身して生きることになったでしょうが、ミーナが居るので野性がやや残って、控えめな愛情、控えめな甘え、日々の探索、私とミーナの観察、多少の緊張、猫会議・ブラッシング・おやつの楽しみ、等の中で生きています。

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2018年3月 4日 (日)

東京シティ・バレエ団&都響-白鳥の湖@東京文化会館2018/03/04

Imgうららかな春の日。上野駅公園口は大混雑です。「パンダの整理券は売り切れ」のパネルを持った動物園の係員が立っていました。

都響がピットに入らなければ一生バレエを見る事なんてなかったと思いますが、ともかく初めてのバレエはチャイコフスキーの「白鳥の湖」。

指揮は大野和士氏、コンマスは四方さん、サイドはピットに隠れて見えませんでした。東京シティ・バレエ団50周年記念公演のお手伝いで出演するとのこと。

都響の演奏会とは全く客層が違います。8割方が女性客。しかも小学生の女の子が異常に多い感じがします。男の子はほとんどいません。文化会館の対応も違っていて、遅れた客を入れて階段に座らせていました。これはめずらしいですね。S席・A席は満席ですが、5Fはガラガラというのも珍しい。

バレエのことは全くわかりませんが、白鳥のダンスのシンクロはすごくて、物凄く練習したのだろうと思いました。主役の2人(中森理恵/キム・セジョン)はとても格好良かったと思います。道化の岡田さんの身体能力にはたまげました。

都響の演奏では、第2幕の四方さんのソロにノックアウトです。これは矢部ちゃんや山本さん(ゆづきやマキロンも)がやると気持ち悪いレベルの超耽美的な爆演でした。しびれますねえ。

舞台美術は昭和21年に東京バレエ団が「白鳥の湖」日本初演のために藤田嗣治が制作したものだそうで、特に第4幕の湖の場面が素晴らしいと思いました。佐野勝也という人(故人)がコピーを発見したおかげで、この公演が可能になったそうです。

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2018年3月 3日 (土)

小関郁氏が都響1Vnに

20160511_1ca5b5またもや動物好きの奏者、小関郁(こせきふみ)氏が都響に加入!

http://www.tmso.or.jp/j/topics/detail.php?id=1327

小関郁(こせきふみ)
出身地:千葉県浦安市、東京芸術大学附属高校、同大学を経て同大大学院を修了。 第13回日本クラシック音楽コンクール全国大会第4位。第7回東京音楽コンクール入選。本年3月1日付で東京交響楽団より都響(第1Vn)に移籍。

双子の姉妹である小関妙氏はミュンヘン室内管弦楽団のヴァイオリン奏者だそうです(ポスター)。髪型やメイクで印象を変えていますが、おそらく一卵性でしょう。それにしても美しいツーショットです。

演奏:https://www.youtube.com/watch?v=SUdKshCofFY
(向かって左側)

勢いがある演奏で、今の都響に若干欠けているバイタリティーを吹き込んでくれそうです。

まめに情報発信もなさっている方のようです。

ブログ:https://ameblo.jp/fumi-note-vn/
Twitter: https://twitter.com/fumikoseki_vn
Wikiedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%96%A2%E9%83%81

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