2019年6月23日 (日)

藤田真央 チャイコフスキー国際コンクールでファイナルへ

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チャイコフスキー国際コンクールセミファイナルでの、藤田真央のパフォーマンスが見られます。
インターネットエクスプローラーで閲覧できなかったので、ファイアーフォックスで閲覧しました。

https://tch16.medici.tv/en/replay/semi-final-with-mao-fujita/

私的には、特にショパンなど情感を全く共有できないピアニストですが、すごいピアニストであることはわかります。自分で表現したいことをきっちり表現しているように思いました。

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2019年6月20日 (木)

ベートーヴェン第9交響曲 第1楽章の謎

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オリカイネンが指揮する第9を聴いているうちに、一つ気がついたことがあります。第9の第1楽章は謎の音楽といわれていますが、ベートーヴェンはここで、興奮性の刺激と抑制性の刺激を短かいサイクルで交互に聴衆の脳に与えて、これからはじまる音楽を聴くトレーニングを行っているのです。

脳トレは知覚や知識を得るというポジティヴな側面だけではなく、リラックス・休養を誘導するネガティヴな神経系のトレーニングも同じくらい必要です。脳は興奮性と抑制性の神経系が対峙してバランスを保っていてこそ機能するのです。つまりベートーヴェンは真の脳トレの方法を知っていたのです。

そして第1楽章で十分な準備運動を終え、脳を活性化した後、本番の第2楽章(興奮性)、第3楽章(抑制性)、第4楽章(脳全体が爆発的に駆動)に進むという仕掛けになっています。

YouTubeでの第9演奏時間の比較(解説などがはいるので、実際の演奏時間はここに記したより若干短い。バーンスタインのはベルリンの壁崩壊記念なので、長い解説などがあります。)

オリカイネン:1:00:51
https://www.youtube.com/watch?v=MACdY0cWqUg

パーヴォ・ヤルヴィ:1:03:32
https://www.youtube.com/watch?v=s5Ezdc4z1ZM

カラヤン:1:04:49
https://www.youtube.com/watch?v=HV7bgY626rU

ヤノフスキ:1:06:32
https://www.youtube.com/watch?v=RkeM9N0l2Jc

トスカニーニ:1:07:32
https://www.youtube.com/watch?v=DuK133dK6eQ

ドゥダメル:1:12:51
https://www.youtube.com/watch?v=reR6josvHP8

フルトヴェングラー:1:14:40
https://www.youtube.com/watch?v=dHDXdbSWu0E

ムーティ:1:21:22
https://www.youtube.com/watch?v=rOjHhS5MtvA

バーンスタイン:1:33:51
(実際の演奏時間はムーティより若干長い程度)
https://www.youtube.com/watch?v=IInG5nY_wrU

朝比奈隆(実質最長か?)1:27:14
https://www.youtube.com/watch?v=nYZkZXOHh-c

 

 

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2019年6月19日 (水)

エヴァ・オリカイネン アイスランド交響楽団のチーフコンダクター兼アーティスティックディレクターに就任

Ollikainen

6年前に都響に来演して深い感動を与えた指揮者エヴァ・オリカイネンが、2020/2021シーズンから4年契約でアイスランド交響楽団の主席指揮者兼音楽監督に就任することになりました。生き馬の目を抜くような激しい競争の欧州の指揮者業界で、このようなポジションを得たことは素晴らしい快挙です。誠におめでとうございます。

都響との演奏は堂々としたスケールの大きい、聴衆を没入させる力に満ちた快演でした。シベリウスではコントラバスをしぼったみたいですが、どうぞご遠慮なく。是非また都響に来演してくださることを期待すると共に、レコーディングなども楽しみにしております。

アイスランド交響楽団は2008年に来日してシベリウスチクルスをやる予定が没になってしまったという残念な経緯がありますが、捲土重来を目指してほしいと思います。オリカイネンが率いて来日するなら、ブラームスを演奏してほしいというのが個人的希望。図は都響に来演時のポスターです。

就任発表:
https://en.sinfonia.is/news/eva-ollikainen-appointed-as-chief-conductor-and-artistic-director

私の過去記事:
http://morph.way-nifty.com/grey/2013/07/post-b9e3.html

演奏:

ベートーヴェン第9交響曲
https://www.youtube.com/watch?v=MACdY0cWqUg

シベリウス第2交響曲
https://www.youtube.com/watch?v=dKUbuVxd4Bk

ニルソン第4交響曲
https://www.youtube.com/watch?v=DtbYG4ZM2Xg

動画:

学生オーケストラ
https://www.youtube.com/watch?v=Jv6RjFBtGCs

ウィーン交響楽団 ラヴェル「ラ・ヴァルス」など
monchan 推薦
https://en.karstenwitt.com/eva-ollikainen

 

 

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高齢者の運転について

昨今高齢者が運転する車の暴走が話題になっていますが、まず警察が発表している交通事故死者の推移をみてみましょう。

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ここにみられるように、1970年には年間1万6765人の死者がでていますが、2018年には3532人と激減しています。したがって統計的に見れば目くじらをたてるような問題ではありません。

しかし日本は高齢者がどんどん増えているので、判断スピードや運動能力が低下している高齢者による事故が増えるのも事実。日本や欧州は車に安全装置をつけるのを義務化する方向で動いています。
https://www.goo-net.com/magazine/108635.html

それはいいのですが、車の運転そのものをコンピュータまかせにするのは考えものです。以前にも述べたように、コンピュータも暴走することがあります。基本的にはアクセル、ブレーキ、ハンドルは人が操作する、少なくともコンピュータより優位に操作できるようにするべきだと思います。
http://morph.way-nifty.com/grey/2019/06/post-fa1ffe.html

免許の問題については、もともとドイツ・フランス・米国の一部の州などでは更新がない(英国は10年)ので日本のように3~5年ごとの更新は異常です。人手不足の日本で、こんな仕事に大勢が従事しているというのは無駄です。更新は高齢者だけで良いのではないかと思います。東京などの大都会では、判断スピード・運動能力・アルツハイマーのテストをして、一定の点数以下だと再検定→更新不可ということにしてはどうでしょうか。病院の通院バス運行に補助金を出すくらいは、都会ではできるのではないかと思います。

ACジャパンが免許返上を促すCMを流しているようですが、このような世論の圧力によって問題を解決しようとする姿勢は陰湿です。日本的テンペラメントの陰の部分でしょう。うがった見方をすれば、非難の矛先が自動車会社に向かないように世論誘導しているとも考えられます。

脳溢血・脳梗塞・心筋梗塞・テロは制度によっては防ぎようがないので、これらの場合は車載コンピュータの判断で車が止まるようにするしかないのでしょう。一人はねた時点で車をコンピュータが強制停止するというシステムは、すぐにでもできるのではないでしょうか?

私が乗っているパッソは急な上り坂になると、前に障害物があると勘違いしてアラームが鳴ります。急な上り坂って立体駐車場だとかならずあるのです。可愛い間違いです。

 

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2019年6月15日 (土)

まきちゃんぐライヴ@下北沢ラグーナ

私は学生時代は目黒区に住んでいて、下北沢駅も乗り換えでときどき利用していたのですが、考えてみると一度も降りた記憶がありません。

立派な地下駅から外に出ると、そこはもうちょっとした外国です。ゆるさの中にもセンスがいい街です。「どうして私は千葉ニュータウンなどというところに住んでいるんだろう? 賃貸でいいからこの街に住みたい」と思わせるものがあります。

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とりあえず今日のライヴハウス「ラグーナ」をみつけないと・・・。団体の外国人観光客に何度か遭遇したりして(観光地なんだ)、あちこち迷い込みながらもようやくみつかりました。

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ひと安心して近所のサンドウィッチバー「パネーズハウス」で夕食。

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サンドウィッチとバーとは妙なとりあわせですが、お酒の種類は豊富です。私はサンドウィッチとコーヒーを注文しましたが、コーヒーがこんなカップで出てきても、この街では違和感がないのが不思議。

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本日のライヴはツーメンで、トップバッターは中村千尋さん。
オフィシャルHP:https://nakamurachihiro.com/

HPのスチル写真を見る限りモデルさんのようなかっこいい人だと思いましたが、実像は? 吾輩は猫であるから始まる歌とか、ノーブラサンデーとか、ニューアルバムのタイトルが「スカートの中」とか、かなりコケティッシュで楽しい人物のようです。と思っていたら、なんとステージでお客に食べさせるラーメンをつくっているではありませんか?

まきちゃんぐは相変わらず、全力投球のハードな歌唱。この会場の下(B1F)もライヴハウスで、結構ボディーソニックがすごいのですが、それに負けないくらいにがんばりました。すばらしい美形シンガーソングライターなのですが、歌っているときの顔はなぜか奴凧に似ています。

セットリストはツイッターにアップされていたのでコピペしておきます。

1 不器用
2 ハニー
3 あの丘へ行こう
4 雨と傘と繋いだ手
5 風の強い日の旗は美しい
6 ジンジャエールで乾杯
7 シャドウ
8 はなのたねまき

en1 糸(cover)
en2 あの丘へ行こう(+中村千尋タンバリン)

どの曲が一番好きかと問われると「雨と傘と繋いだ手」なんですが、
https://www.youtube.com/watch?v=rQQqs4lQF0c

アンコール1の中島みゆきの「糸」は、亡くなったおばあちゃんに聴いてもらいたいということで、ノーマイクで歌ってくれました。生声は最高ですね。電気機器が情感を阻害しているということが明らかにわかります。今夜のハイライトでした。

まきちゃんぐのライヴは精神のボキバキカイロプラスティックのようです。
楽しいライヴをありがとう。

まきちゃんぐHP:http://makichang.info/

 

 

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2019年6月13日 (木)

やぶにらみ生物論128: GABA その2

GABA作動性シナプス周辺の模式図を図1に示しました(1)。シナプス前後細胞の他にアストログリア細胞が描いてありますが、これはシナプス周辺のアストログリア細胞がグルタミンをシナプス前細胞に供給するという役目を担っているからです。この細胞はさらにシナプス間隙から過剰なGABAを回収してグルタミンに変換することもできます。

アストログリア細胞からグルタミンを受け取ったシナプス前細胞は、リン酸活性化グルタミナーゼ=PAG(phosphate-activated glutaminase)という酵素を使ってグルタミンを加水分解してグルタミン酸を合成し、パート1に記したようにGABAを合成します。

その1:http://morph.way-nifty.com/grey/2019/06/post-f82bd2.html

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抑制性神経伝達物質の場合、シナプス後細胞の興奮を阻止するのが役割ですから、シナプス後細胞のGABA受容体がナトリウムイオンチャネルではなく塩素イオンのチャネルであれば話は簡単です。塩素イオンが細胞内に流入すると、通常外界(+)/細胞内(-)となっている電位差がますます大きくなるので、細胞は過分極状態となり脱分極は阻止されます(図1)。

GABA受容体あるいは同様なはたらきを持つグリシン受容体の精製は1980年初頭に英国のバーナード(図2)のグループと、ドイツのベッツ(図2)のグループで激しい先陣争いが繰り広げられました。前者は牛の脳、後者はラットの脊髄を材料としました。両者が成功したのは、GABAやグリシンというリガンドそのものではなく、より強力で特異的に結合するベンゾジアゼピンやストリキニーネという代役の化合物を放射能でラベルし、精製の際のマーカーとして用いたからと言えます(2)。両陣営がそれぞれレビューを出版しているので、興味のある方はご覧ください(3、4)。

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バーナードが精製したのは現在ではGABAと呼ばれるGABA受容体で、これは実際に塩素イオンのチャネルです。GABAが結合することによってアロステリックな構造変化を行い、塩素イオンを細胞内に取り込みます(5)。

GABA受容体タンパク質は4回膜貫通型で細胞膜に局在します。N末、C末共に細胞外に出ており、C末側露出部にSS結合が存在します(5、図3)。このようなSS結合を持つ受容体タンパク質群はCysループ受容体ファミリーと呼ばれ、ベッツが精製したグリシン受容体もこのファミリーに所属しています。

GABA受容体タンパク質はサブタイプが多くて、α1-6、β1-3、γ1-3、δ、ε、θ、π と ρ1-3 の少なくとも19種類の分子種が知られており、イオンチャネルはこれらから5分子が集合して形成されます(6、7、図3)。脳内にはα型1個-β型2個-γ型2個の5量体が多いとされています(7)。GABA受容体は実質無限のバラエティを持っているわけですが、なぜそうなっているのか、理由は不明です。

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GABAの受容体にはもうひとつのタイプ、GABAが存在します。GABAはバウリーが発見し(8、図2)、彼らによって遺伝子構造も解明されました(9)。GABAの構造についての模式図は図4に示しました(脳科学辞典10から改変)。

GABAは7回膜貫通GPCR(G protein-coupled receptor=Gタンパク質共役受容体)なのですが、R1、R2という二つの分子が協働してその役割を果たすという一風変わった構造になっています(図4)。すなわち図4のように、R1がGABAと結合する役割、R2がGタンパク質と結合するという役割を持っています。

R1とR2は細胞膜に隣接して埋め込まれていますが、細胞質内の長い両者のC末部分で複雑に絡まり合っており(図4)、ここでR2はR1の構造変化を検知して活動を開始すると思われます。またこの絡まり合った部分で、Gタンパク質だけでなくさまざまな制御因子や情報伝達因子と相互作用を行うことができます(11、12)。このことがわざわざ2分子でGPCRの仕事をやっている理由なのでしょう。

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R2に結合しているGαタンパク質はi型で、GABAのシグナルによって遊離し、アデニル酸シクラーゼを阻害してcAMP合成を妨げる働きがあります。これによってタンパク質のリン酸化が低下します。また同じく遊離したGβγタンパク質によって、カリウムチャネルが開き、カルシウムチャネルが閉じられます。K+は細胞内濃度が高いので細胞外に流出し、過分極の方向にコントロールされます。またカルシウムの流入が妨げられるのも同じ効果があります(12,図5)。

GABA受容体はGABAシグナルに対する即時(ミリ秒単位)の反応を受け持ち、GABA受容体はやや遅い反応または継続的な反応を受け持つと思われます。GABAB受容体にもさまざまなアイソタイプがあるようですが(12)、ここではパスします。

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さて図1にもどると、GABAによる情報伝達に関しては、まだいくつかの重要な因子があることがわかります。まず🌕で示されているGABAトランスポーター(GAT)です。これにはいくつかのタイプがあり、シナプス前細胞にはGAT1型、シナプス周辺アストログリア細胞にはGAT3型、脳以外の臓器の細胞にはGAT2型が概ね局在しています。

GATは膜12回貫通型の細胞膜に埋め込まれたタンパク質で、C末・N末共に細胞内に露出します(図6)。

GATがGABAを細胞内に取り込む際にGABA1分子につきナトリウムイオン2個と塩素イオン1個が移動しますが(13、図6)、ATPは使用しません。といってもナトリウムを取り込むと、ATPを使って排出することになるので、間接的にはATPのエネルギーを利用していることになります。

GABAが通過する部分はシーソーのような構造になっており、図6のように立体構造を変えることによってGABAを移動させます(13)。GABAを放出後、シナプス間隙の不要なGABA濃度が高まると、シナプス前細胞のGAT1がGABAをすみやかに回収します。アストログリア細胞のGAT3もGABAの回収に使われるようです。この両者によって約75%のGABAを回収できるとされています(13)。

アストログリア細胞が回収したGABAはグルタミン酸からグルタミンに変換され、トランスポーターを通してシナプス前細胞に受け渡されて再利用されます。シナプス前細胞は自ら回収したGABAと、アストログリア細胞から受け取ったグルタミンから合成したGABAを使用することができます。GABAが長時間シナプス間隙に残留するとまずい場合が多いので、このような回収システムがすみやかに稼働すると思われます。

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図1にもうひとつの役者VGATが●で登場しています。VGATとは小胞GABAトランスポーター(vesicular gaba transporter) の略称で、GATとは全く異なるトランスポーターです。VGATはアミノ酸配列から9回膜貫通型のトランスポーターと考えられていて、細胞質のGABAとグリシンをシナプス小胞内に取り込むことができます(14)。小胞内にため込まれた神経伝達物質は、必要時にエキソサイトーシスによってシナプス間隙に排出されます(15)。

 

参照

1) from wikipedia, original source is Nissen-Meyer LSH and Chaudhry FA., Corrigendum: Protein Kinase C Phosphorylates the System N Glutamine Transporter SN1 (Slc38a3) and Regulates Its Membrane Trafficking and Degradation. Front. Endocrinol. vol.8: p.190.(2017) doi: 10.3389/fendo.2017.00190
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2017.00190/full

2)Stephenson FA, Mukhopadhyay R.,Classics How the glycine and GABA receptors were purified., J Biol Chem. vol.287(48), pp.40835-40837.(2012) doi: 10.1074/jbc.O112.000006.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23180805

3)Barnard EA, Darlison MG,Seeburg P., Molecular biology of GABAA receptor:The receptor/channel superfamily. Trends Neurosci vol.10: pp.502-509.(1987)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0166223687901305

4)Grenningloh G, Gundelfinger ED, Schmitt B,Betz H, Darlison MG, Barnard EA, Schonfield PR, Seeburg PH.,  Glycine vs GABA receptors. Nature vol.330: pp.25-26.(1987)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2823147

5)GABAA受容体
https://ja.wikipedia.org/wiki/GABAA%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

6)脳科学辞典 GABA受容体
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/GABA%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

7)Macdonald R.L. Olsen R.W., GABAA receptor channels. Annu. Rev. Neurosci. vol.17: pp.569-602 (1994)

8)Bowery N.G., GABAB receptors and their significance in mammalian pharmacology. Trends Pharmacol. Sci., vol.10: pp.401-407 (1989)

9)Bowery, N.G. and Brown, D.A., The cloning of GABA(B) receptors. Nature vol.386, pp.223-224. (1997)

10)https://bsd.neuroinf.jp/wiki/GABA%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

11)Burmakina, S., Geng, Y., Chen, Y. and Fan, Q.R.,  Heterodimeric coiled-coil interactions of human GABAB receptor. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. vol.111, pp.6958-6963.(2014)

12)Miho Terunuma, Diversity of structure and function of GABAB receptors: a complexity of GABAB-mediated signaling., Proc. Jpn. Acad., Ser. B 94, pp.390-411 (2018)
file:///C:/Users/User/Desktop/GABAb%20terunuma%20pjab-94-390.pdf

13)Sadia Zafar and Ishrat Jabeen, Structure, Function, and Modulation of γ-Aminobutyric Acid Transporter 1 (GAT1) in Neurological Disorders: A Pharmacoinformatic Prospective. Front Chem. vol.6: article 397. pp.1-19 (2018)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6141625/

14)脳科学辞典 小胞GABAトランスポーター
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%B0%8F%E8%83%9EGABA%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC

15)脳科学辞典 シナプス小胞
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9%E5%B0%8F%E8%83%9E

 

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2019年6月10日 (月)

車載コンピュータだって故障が無いとは限らない

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私は以前10年ほどプリウスに乗ったことがあり、そのときディーラーに言われていたのは、エンジンルームに水が入るとコンピュータが誤作動する可能性があるので気をつけるようにということです。特に深い水たまりを突破するのは危険です。

現在はパッソに乗っていますが、この車は停車するとコンピュータによってエンジンが停止します。しかし必ず停止するわけではなく、アイドリングになることもあります。この判断は人間とは関係なく、勝手にコンピュータが停止した状況から判断するのです。

航空機でも最近はコンピュータ制御になっていて、その暴走によって墜落しそうになったり、あるいは墜落したりする場合があると考えられています。

こちら1

こちら2

こちら3

最近高齢者による自動車事故が話題になっていますが、その中にはどうも車のコンピュータが暴走したのではないかと疑われる事例があるように思います。高齢ドラ-バーの免許返上を促すためのキャンペーンに事故が利用されている傾向があるので、気をつけた方がいいです。

PCを毎日使っている人は、おそらく暴走の経験があるのではないでしょうか。私の将棋ソフトは非常に強くてほとんど勝てないのですが、ある日突然奇妙な手を打ち始め、まったくわけのわからない自殺手を連発して私があっという間に勝ったことがあります。再現性はありません。ですから故障とは言えません。こんな極端な例で無くても、なんらかの不具合はよくあることです。10年も揺られていると、接触の不具合や断線などで車載コンピュータが変調を来しても不思議ではありません。

最近の私の経験では、自宅のパソコンがよく落ちるので、メモリーとソケットの接触部分をエアダスターで念入りに清掃したら、全く落ちなくなったということもあります。

「プリウス暴走事故」はなぜ多い

こちら4

こちら5

このような可能性もあるようです

こちら6

こちら7

 

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2019年6月 5日 (水)

JPOP名曲徒然草196: 「いつも何度でも」 by いのり・はなみ

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千と千尋の神隠し「いつも何度でも」(作詞 覚和歌子、作曲 木村弓)

いのり・はなみ

https://www.youtube.com/watch?v=KCyk5j8cDyM&list=PLK6YOMX14eKsNAUQG1CXWrlTToftHj0Dk

私はアニメとコミックとゲーム(Wiz8以外)には関心を持たないようにしていますが(他にさまざま趣味・関心があるので)、この曲といのり・はなみの美声と精妙なデュエットには心底驚かされました。CDは所有しておりません。アマゾン・HMVの検索で発見できなかったので、いのり・はなみ の名義ではCDは出版されていないのかもしれません。

この曲は作詞者と作曲者もそれぞれ別々に歌って、CDを出版しています。とてもめずらしいのではないでしょうか。さすがにジプリの曲で世界中からYouTubeにアップされています。

木村弓
https://www.youtube.com/watch?v=9O4SMw_8Om0
https://www.youtube.com/watch?v=gGi8wjv8I78

覚和歌子
https://www.youtube.com/watch?v=ICbBvRObmQQ
https://www.youtube.com/watch?v=D2hQhsOALLQ

Philippe Labutin & Stefan Rickli
https://www.youtube.com/watch?v=cxcyr5Az1uU

Nataliya Gudziy
https://www.youtube.com/watch?v=xQJog0rs7Eg

慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・女声合唱団
https://www.youtube.com/watch?v=uzgU3I4wNpY

マリンバ&オーケストラ
https://www.youtube.com/watch?v=7zFu1t3uXyc

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2019年6月 4日 (火)

やぶにらみ生物論127: GABA その1

  神経伝達物質をざっと概観しようとしてきましたが、これまでにアセチルコリン、各種モノアミン類を取り上げてきました。今回からアミノ酸関連因子に進みます。図1にそのなかでも重要な2つの要素が出てきますが、まず右側の γ-アミノ酪酸(GABA=γ-amino butyric acid)から見ていきましょう。

GABAはグルタミン酸からグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD=L-glutamic acid decarboxylase)によって産生されます。材料のグルタミン酸は細胞外からグルタミン酸トランスポーターを用いて取り込む場合と、細胞内でTCAサイクルの α-ケトグルタル酸から合成する場合があります(1)。

GADにはふたつのアイソフォーム(GAD65,GAD67)があり、GAD67が細胞質全体に存在するのに対してGAD65は神経終末部に豊富に存在することから、GAD65が抑制性シナプス伝達を担うGABA合成に主として関与すると考えられています(1)。

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タンパク質の構成要素となるアミノ酸はαの位置にアミノ基がありますが、GABAの場合図1のようにγの位置にアミノ基があります。したがってGABAはタンパク質の構成要素としてのアミノ酸ではありません。

GABAの発見者はアッカーマンという人で、細菌による腐敗の結果生ずるものと報告されているそうです(2、3)。現在も発行されている Zeitshrift fur Physikalische Chemie のホームページを見てみましたが、アッカーマンの論文の紙面は提供されていませんでした。

その後GABAはカビや植物からも抽出されましたが、ロバーツ(図2)はマウスの脳にGABAが存在することを発見しました(4、5)。ロバーツは自伝を書いていますので(3)、少し彼の人生をたどってみましょう。

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ユージン・ロバーツは1920年に黒海沿岸で生まれましたが、1917年にロシア革命が勃発し、いわゆるブルジョアジーだった彼の一家は1922年にラトヴィア経由で、親戚を頼って米国のデトロイトに移住しました。彼は高校時代にアンドレという女性教師に実験室を自由に使わせてもらってゾウリムシの研究を行い、それが生物学へ傾倒するきっかけとなったそうです。高校教師も科学の進歩に関係がないわけではありません。

彼はウェイン州立大学を卒業後、ミシガン大学で学位をとりましたが、太平洋戦争中ということもあって、学位取得前からニューヨークのロチェスター大学でマンハッタンプロジェクトに参加し、ウラニウムのダストをどのくらい吸い込むと危険かという研究に携わりました。

戦後の1949年になって、彼は2次元ペーパークロマトグラフィーの技術を使って、脳に大量のGABAが存在することを発見しました。これは「正常細胞とがん細胞で、フリーのアミノ酸の含量に差があるかどうか調べる」という目的の研究の副産物として発見されました。「目的指向的研究をやれ」とよく役人やその尻馬に乗る人々が言うわけですが、実際には所期の目的とは「はずれた」副産物の方が重要だったということはよくあることです。テクノロジーの進化には目的指向をはっきりさせることが大事かもしれませんが、サイエンスにとって多くの場合、当初の研究目的はきっかけに過ぎません。

脳にGABAが存在するという研究結果は、1950年に共同研究者のサム・フランケルと共に発表し論文にもまとめました。同じ年に Udenfriend(6)と、Awaparaのグループ(7)も同様な結果を発表していますが、前者はロバーツからサンプルの提供を受けて、ラジオアイソトープを使った別法で成分を確認したもの(ロバーツは Fed. Proc.の中でこのことに言及しています 参照5)。後者はプライオリティーの点でやや遅れをとったとみなされています(8)。ただアワパラ側がどう考えていたのかについては情報が得られなかったので、本当のところ真実は藪の中です。

発表後ロバーツはアッカーマンから祝福の手紙を受け取ったそうです(3)。アッカーマンがGABAを発見してから40年が経過しているので、もうリタイアしていたと思いますが、心温まるエピソードだと思います。その後ロバーツのグループは、GABAがほ乳類の脳における主要な抑制性神経伝達因子であることを示すうえで大きな貢献をしました。

現在では脳のニューロンのうち約30%がGABA性(ギャバージック)の抑制性ニューロンであることが知られていますが(9)、そもそも抑制性ニューロンなどというものがあることは誰が発見したのでしょうか?

最初にこのことに気づいたのは、ロシアの「生理学および科学的心理学の父」といわれるセチェノフでした。彼はカエルの脊髄反射は脳を除去することによって促進され、脳を刺激することによって抑制されることを報告しました(10、11、図3)。まだ19世紀のなかばの頃です。脳を科学的に考えるにはあまりに時期が早かったため、唯物論を広めキリスト者としてのモラルを低下させたかどで、迫害されたこともあったようです(12)。条件反射などの研究で1904年にノーベル生理学医学賞を受賞したパヴロフも、もともとの定義に反することであっても、後に反射に脳がかかわっていることを認めて報告しています(13)。

英国の生理学者シェリントン(図3)は膝蓋反射のように感覚神経と運動神経が単純に反応するような反射もあるが、ひっかき反射(14)などでは、感覚神経・運動神経以外の神経、すなわち複数のシナプスがかかわっていることを示しました。すなわち犬の肩をこすると、こすった側の後ろ足の屈筋が刺激されますが、同時に伸筋は抑制されるのです(15)。このことは抑制性の神経系の存在を強く示唆するものです。これらの業績によって、シェリントンは1932年にノーベル生理学医学賞を受賞しました。

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その後グルタミン脱炭酸酵素(GAD=L-glutamic acid decarboxylase)の抗体を用いて、GABAを産生する細胞を同定する試みは、ロバーツを含む多くの研究者によって、徹底的に行われました(16、17)。

文献(17)によると、GADが局在する部域は、cerebellum(小脳), spinal cord(脊髄), retina(網膜), habenula(手綱), olfactory bulb(嗅球), substantia nigra(黒質), corpus striatum(線状体), red nucleus(赤核), arcuate nucleus(視床下部弓状神経核),lateral cervical nucleus, tuberomammillary nucleus(結節乳頭体神経核), cochlear nucleus(蝸牛神経核), vestibular nuclei(前庭神経核), dorsal column nuclei(後索神経核), nucleus reticularis thalami(視床網様体神経核), globus pallidus(淡蒼球) and nucleus entopeduncularis(脚内神経核), visual cortex(視覚野), dentate gyrus(歯状回), superior colliculus(上丘), sensory-motor cortex(感覚運動皮質), septal area(中隔野), hypothalamus(視床下部), hippocampus(海馬), geniculate complex(膝状複合体), and nucleus tractus solitarii(孤束神経核)と広汎にわたっています。

それぞれの部域については、図4、図5に赤で示しました。

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これらの多くは後に学んでいくことになると思いますが、とりあえず大脳基底核周辺における GABAergic な伝達系がウィキペディアに出ていたので、図6にコピペしました(18)。GABAergic なシナプス前細胞は、シナプス後細胞を過分極させて脱分極を抑制する方向に作用します。線状体から淡蒼球や黒質に情報が投射していることが示されています。抑制性の神経細胞は、自身が抑制性の神経細胞とシナプスをつくると、シナプス後細胞による抑制作用を抑制することになり、結果的に促進細胞に変身することもあり得ます。

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参照

1)脳科学辞典 GABA
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/GABA

2)Ackermann, D. Uber ein neues, auf bakteriellem Wege gewinnbares Aporrhegma. Z. Physiol. Chem. vol.69, pp.273-281. (1910)

3)Eugene Roberts (autobiography), in "The History of Neuroscience in Autobiography" VOLUME 2, Ed.Larry R. Squire, Academic Press (1998)
file:///C:/Users/User/Desktop/GABA/Eugene%20Roberts.pdf

4)Roberts, E. and Frankel, S. γ-Aminobutyric acid in brain: Its formation from glutamic acid. Journal of Biological Chemistry vol.187: pp.55-63,(1950)
http://www.scholarpedia.org/w/images/2/29/GABA_abstract.jpg

6)Udenfriend, S. Identification of gamma-aminobutyric acid in brain by the isotope derivative method. Journal of Biological Chemistry vol.187: pp.65-69 (1950)

7)Awapara, J., Landua, A.J., Fuerst, R., and Seale, B. Free gamma-aminobutyric acid in brain. Journal of Biological Chemistry vol.187:pp.35-39,(1950)

8)Eugene Roberts, Gamma-aminobutyric acid., Scholarpedia, vol.2(10), p.3356.(2007)
http://www.scholarpedia.org/article/Gamma-aminobutyric_acid

9)小幡邦彦 GABAのはたらき、Riken BSI news vol.37, 10月号 (2007)
http://bsi.riken.jp/bsi-news/bsinews37/no37/special.html

10)"Refleksy golovnogo mozga." Meditsinsky vestnik 47-48 ("Reflexes of the brain", in Russian) (1863)

11)K.Obata, Synaptic inhibition and γ-aminobutyric acid in mammalian central nervous system. Proc.JPN.Acad., Ser.B89, No.4, pp.139-156 (2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab/89/4/89_PJA8904B-03/_article/-char/ja

12)https://en.wikipedia.org/wiki/Ivan_Sechenov

13)Pavlov,I.P., Conditioned Reflexes (translated by Anrep,G.V.). Dover Publications, Mineola, NY, pp.1-430 (1927)

14)Scratch reflex of dog
https://www.youtube.com/watch?v=VzCwXaU_tJ0

15)Sherrington, C.S., The Integrative Action of the Nervous System. Yale Univ. Press, New Haven, CT, pp.1-413 (1906)

16)E. Roberts amd Kinya Kuriyama, Biochemical-physiological correlations in studies of the γ-aminobutyric acid system. Brain Res., vol.8, pp.1-35 (1968)
file:///C:/Users/User/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/C8FQEO1U/first-page-pdf.pdf

17)17)Elling Kvamme, Glutamine and Glutamate Mammals. Vol.1, CRC Press (1988)
VI Identification and localization of L-glutamate decarboxylase.
こちら

18)https://en.wikipedia.org/wiki/Striatum

 

 

 

 

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2019年6月 2日 (日)

リットン-都響@サントリーホール2019/06/02

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久しぶりの都響プロムナードコンサート。ここ2,3日にくらべて涼しい朝でした。でも湿度の高い休日の午後は少し眠い。ともかくサントリーホールにたどりつきました。きょうも前回に引き続きリットンの指揮で、四方さんとボス矢部が入れ替わって本日のコンマスはボス矢部。

「マイ・フェア・レディ」序曲はドイツ移民のロウという人が作曲したそうでびっくりしました。お馴染みのメロディーです。次はコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。これはあまり面白い作品とは思っていなかったのですが、今日は三浦文彰君がソリストということで、この人のヴァイオリンの音は特別です。五大元素で言えば「水」系ですね。第2楽章などは美音に陶酔しました。アンコールは超絶技巧の 「Nel cor piuによる変奏曲(パガニーニ)」。村下孝蔵のひとりベンチャーズを思い出しました。

三浦文彰
https://www.youtube.com/watch?v=DaCXALmKj5g

村下孝蔵
https://www.youtube.com/watch?v=sw6TtxnyF3Q

休憩後の「新世界より」はリットンの面目躍如で、どんな部分もサラッとはやらない、徹底的にダイナミックなアーティキュレーションでハイカロリーなシンフォニーを聴かせてくれました。南方のイングリッシュホルンは聴くたびに進化していて、暖かいフレージングに感動させられます。いつものことながら都響の木管陣(エキストラの白尾さんを含めて)は素晴らしい安定感です。第4楽章は大いに盛り上がりました。まあひとことで言えば元気の出る演奏と言えます。

 

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2019年5月29日 (水)

リットンー都響@東京文化会館2019/05/29

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令和最初の都響定期演奏会です。指揮者:アンドリュー・リットン、ピアニスト:アンナ・ヴィニツカヤを招請の豪華版。コンマスは四方さんで、サイドにボス矢部が鎮座のこれまた豪華版。ですが今回の定期は非常にエキストラ演奏者が多い感じがしました。客席は大盛況で、定期会員の出席率も上々です。

冒頭のバーバーは、ヒラリー・ハーンのCDでヴァイオリン協奏曲を知って以来好きな作曲家となりました。知らない曲もありますが、エッセイ2は私的にはヴァイオリン協奏曲>弦楽のためのアダージョ>オーボエと弦楽のためのカンツォネッタの次くらいかな。楽しめる曲でした。

そしてスタインウェイのピアノを出してきて、アンナ・ヴィニツカヤの登場です。ロングドレスではっきりわかりませんでしたが、シューズは履いていたと思います。ところが演奏になるとペダルは裸足で踏んでいました。帰るときはまたシューズを履いていました。

プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番は20世紀を代表する名協奏曲ですが、素人がみてもむちゃくちゃに演奏が大変な曲であることはわかります。アンナはまるで猛獣のように鍵盤と格闘していました。演奏の精度はユジャ・ワンもうかうかしていられないような、すごいものがあります。ただ曲の本質的な部分はかなりオーケストラに依存する曲なので、指揮者やオケメンの技量にまかせていればいいという気楽さはあります。都響も実力発揮ですばらしい演奏でした。

満場の拍手喝采に答えて、アンナのアンコールはチャイコフスキーの四季から3月の「ひばりの歌」。彼女のすごいところは○○弾きというのではなく、どんな曲もそれぞれ作曲者の意図をきちんとくんで演奏できるという懐の広さです。

休憩後のチャイコフスキー交響曲第4番は、非常に変わった演奏でした。都響も欧州公演に持って行くくらいの得意な曲ですが、そういうこれまでの演奏ではなく、まるでバレエのシーンをつなぎ合わせたような独特な魅力のある演奏でした。特に弦楽器のアンサンブルは心地よいものでした。リットンの新機軸だと思いますが、こういう聴かせ方もあるんだなと思いました。

余計な話ですが、第3楽章のピチカートは及川氏が完全なパー派、横山氏が完全なグー派でコントラストを面白く拝見しました。

こんな曲です。

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番(演奏 ユジャ・ワン ダニエレ・ガティ指揮 ロイヤルコンセルトヘボウ)
https://www.youtube.com/watch?v=KDfGBmbNbMw

ひばりの歌
https://www.youtube.com/watch?v=GQOaFX-mzOo

アンナ・ヴィニツカヤの演奏
https://www.youtube.com/watch?v=8MNqrDM6jX4
https://www.youtube.com/watch?v=DmIg6Ixx1CA

 

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「昨年度まで都響のA定期で都響倶楽部でプログラム配布をお手伝いした者として書きます 今日から業者に代わりとてもスムーズスマートでした。 プログラムに込める気持ちは、お客様に演奏会を…で、 倶楽部会員が都響の客の中で特権階級にあると見下すためのものではない。 」
https://twitter.com/ohisamanotikara/status/1133374640720494592/photo/1
https://twitter.com/ohisamanotikara

???都響倶楽部で何かバトルでもあったのでしょうか???

 

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2019年5月27日 (月)

WOWOWの連ドラ「悪党」

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WOWOWの連続ドラマ「悪党~加害者追跡調査」。
毎回心をかきむしられ、泣かされます。

薬丸岳の小説は読んだことがありませんが、このテレビドラマは謎解き探偵小説の範疇をはるかに超えて、犯罪者と犯罪被害者の心情を生々しくえぐり出します。

東出昌大がいい雰囲気を出していて、ドラマの世界に巻き込んでくれます。新川優愛にも好感が持てます。テレビドラマ不毛の時代にあって、WOWOWの健闘を絶賛したいと思います。

https://www.wowow.co.jp/detail/114480

 

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2019年5月25日 (土)

「空母いぶき」 まきちゃんぐサイレントナイトを歌う

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「空母いぶき」をみてきました。CGの素晴らしさには圧倒されました。よくぞここまで。秋津艦長のキャラはよくわかりませんでした。しかし実際に日本が戦争に巻き込まれたとしたら、こんな艦長が出てきても不思議ではないとは思います。

ストーリーではそこそこうまくいっていますが、ミサイルや魚雷がいぶきに次々と命中していたら(普通そうなるでしょう)、間違いなく全面戦争に突入していたでしょう。あと捕虜は私なら射殺したでしょうね。

私はコミックは読まないので意見は言えませんが、作者のかわぐちかいじ氏が「もし中国と仲のいいときに公開されたりしたら、尖閣の話をしても嘘になるな」と述べていて、それ故に架空の「東亜連邦」の話になったというのはどうかとおもいました。

日本の領土はそれが古来日本人が住んでいたかどうかなどとは関係なく、サンフランシスコ講和条約に定められていてそれに調印したわけですから、その範囲において防衛出動が可能となるわけです。尖閣諸島は条約には書かれていないので、関係国と交渉して帰属を決めなければいけません。野田総理の判断は間違っていたと思います。竹島は条約に書かれているので、当然連合国=国連は日本の領土であることを確認しなければなりません。米国の意図により他国による占領が放置されていることは、日本にとっては誠に不本意なことです。

などといっても、私がこの映画を見たのはまきちゃんぐがサイレントナイトを歌っているからです。音楽らしい音楽はこれだけなので、非常に印象的でしたね。おめでとう。

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2019年5月24日 (金)

サラとミーナ216: ソファーでくつろぐミーナ

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サラは野良でいたところをつかまってシェルターにつれてこられ、ケージ飼いされていました。一方ミーナはシェルターで生まれたらしく、幼年避妊手術をされて、施設内で放し飼いされていたようです。手術の影響でブクブクに太っており、とても引き取り手はないと思われていたらしく、サラはすぐうちにきましたが、ミーナは身体検査で2週間以上待たされました。しかもうちにきてから検査すると耳ダニが発見され、しばらく医者通いしました。

放し飼いの猫たちはえさは床にまかれ、水は溝に流されたものをなめていたようです(容器に入れるとすぐ汚れるので)。ですから13年たってもミーナは床にこぼれたえさから先に食べますし、容器の水を飲むのはとてもへたくそです。ですから私が風呂に入っているとき、洗い場に進入して床をなめるのが習慣になっています。

サラは短い間でしょうが野良猫の経験があり、今でもベランダで枯れ葉をみつけると食べます。飢えたときには枯れ葉を食べてしのいでいたのでしょう。シェルターでは雄猫2匹と同じケージで暮らしていて、猫慣れはしているようです。えさと水は容器で与えられていたのでがっつきません。ミーナはもたもたしていると他の猫に食べられてしまうので、いまでも早食いです。子供の頃の習慣は忘れがたいものなのでしょう。

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2019年5月23日 (木)

第18回東京国際音楽コンクール<指揮者>入賞デビューコンサート

第18回東京国際音楽コンクール(指揮)入賞デビューコンサートに行ってきました。
民音主催の伝統あるコンクールで、3年ごとに開催される若手指揮者の数少ない登竜門となっています。前回2位だった太田弦氏は弱冠25歳で、今年から大阪交響楽団の正指揮者に就任しました。今をときめくマエストロ川瀬賢太郎氏も2006年に2位に入賞しています。2000年の1位は下野竜也さん。

今回の応募は44の国と地域から238名。その中から厳正な映像審査を通った約18名が第一次予選のステージに立ったそうです。なんと今年は1位から3位まで日本人が独占という快挙でした。審査員には外国人も多いので、決して身びいきというわけではありません。お披露目の場所はオペラシティコンサートホール。チケットは完売です。都響もビオラトップこそ九響の細川さんにピンチヒッターをお願いしていましたが、ほぼ最強のメンバーでサポートします。

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演奏前に外山審査委員長がプレトーク。まずい演奏なら拍手しなくていいよとジョークをとばすくらい、今回の選定には自信がある雰囲気でした。コンマスは山本さん、サイドはマキロン・・・黒レースのスカート。あのボディコンパンツはもう履けなくなったのか?

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私が特に強いインパクトを受けたのが、やはり1位の沖澤さん(写真)。私は今まで聴いた「スコットランド」のなかで一番乗せられました。リズム感覚が素晴らしく、旋律の隅々までピチピチと躍動していて、実に生気あふれる演奏でした。第2楽章以降は都響もおおいに乗せられて演奏していた感じです。コスプレをやるとすればシスター・尼僧が似合っている清楚な雰囲気の方ですが、将来はみんなに愛される大指揮者になるに違いないと思いました。

帰りの電車の同じ車両にマキロンが乗車。あれれ、ステージ衣装のままじゃないですか。でもこういうざっくばらんなところが面目躍如か。彼女にはともすれば似非ハイソな専門家集団になりがちなオーケストラを、オーディエンスの目線まで引き戻す力があります。それがN響との違いを生み出す原動力です。

細川泉(力がはいるとおでこにしわがよるのがチャームポイント)
https://twitter.com/izumi_hosokawa

主催者のサイト
http://www.conductingtokyo.org/

太田弦
https://spice.eplus.jp/articles/218134

コンクール・ダイジェスト
https://www.youtube.com/watch?v=I5yYkURywtg

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2019年5月17日 (金)

やぶにらみ生物論126: ヒスタミン

ヒスタミンはイミダゾール骨格にエチルアミンの側鎖がついている構造の化学物質で、哺乳動物のほとんどすべての組織に含まれています。アミノ酸のひとつであるL-ヒスチジンから、L-ヒスチジン脱炭酸酵素による脱炭酸反応により生合成されます(1、図1)。

この反応は細菌でも行うことができるものがあることが知られています。細菌がなぜこのような反応をおこなうかについては、一般的には酸性になった細胞内環境を中性にもどす役割が想定されていますが、そのほかの役割もあるようです(2)。人の立場からいえば、細菌が産生するヒスタミンは、ヒスタミン中毒の原因物質なので困りものです。

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1907年にウィンダウス(図2)とフォークトによってヒスタミンが化学的に合成されたことが、ヒスタミン研究の出発点となりました(3)。ウィンダウスは1927年にノーベル化学賞を受賞していますが、それはコレステロールやビタミンの研究が評価されたものです。しかしノーベル財団のバイオグラフィーをみると、彼がヒスタミンを発見したことにも少しだけ触れてあります(4)。

合成ヒスタミンが使えるようになったので、デイルとレイドロー (図2)はまず10mgのヒスタミンをカエルの背中のリンパ嚢に注入したところ、カエルは大口を開けて、手足は伸びきり、明らかに中枢神経系の活動が抑制されたことが示されました。次に2mgのヒスタミンをウサギの静脈に注射すると、ウサギは平伏し、心臓の鼓動が不整で弱くなり、さらに2mg追加すると死亡するという結果を得ました。またヒスタミンがアナフィラキシーショックを引き起こすことがあるとも指摘しています(5)。

デイルはレーヴィとともに神経伝達物質(アセチルコリン)を発見したことで有名で、その業績で1936年のノーベル生理学医学賞を受賞しています。このブログでも以前にとりあげました(6)。

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ヒスタミンは特定の内分泌器官から放出されるものではないので、ホルモンの定義からは逸脱していますが、主にマスト細胞(肥満細胞)、好塩基球、マクロファージ、神経細胞などが放出し、血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進、アレルギー反応・炎症の促進などの生理作用を持っている上に、神経伝達物質でもあります(1、図3)。マクロファージの場合だけ、ヒスタミンは細胞質にある顆粒内にストックされずフリーのまま放出されます。

図3に示したマスト細胞や好塩基球ではヒスタミンを含む顆粒が染色されて、はっきり見えます。

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ヒスタミンが過剰に作用すると、じんましん・皮膚炎・鼻炎・ぜんそくなどのアレルギー反応や、ひどい場合にはアナフィラキシーショックを引き起こすこともあるので、それらを抑制するための抗ヒスタミン薬はほとんどの人がお世話になっているはずです。

ヒスタミンの受容体は、現在知られているものはすべてGPCR(細胞膜7回貫通型Gタンパク質共役受容体)です(7)。ウィキペディアに美しい説明図がありました(7)。この図の一番左をみると、Gタンパク質(青)と受容体(赤)が離れた位置にあり、ヒスタミンが結合してはじめてGタンパク質と受容体が接近して結合するような印象を受けますが、これは議論の余地があるでしょう。

ともあれ受容体の立体構造の変化を受けてGタンパク質がGDPをリリースしてGTPと結合し、Gαが解離してエフェクター(H2受容体の場合はアデニル酸シクラーゼ)に作用するわけです。これによりアデニル酸シクラーゼは活性化されてcAMPが産生されます。

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英語版のウィキペディアをみると、日本語版とは少し異なる解説図がみつかります(8、図5)。左図ではGαだけでなくGβGγもエフェクターに結合するとしています。またGタンパク質は最初から受容体と結合しています。右図では日本語版と基本的に同じ解説になります。いったん受容体から離れたGαが元の位置にもどってくるとすると、受容体と結合しないのなら、GβGγが元の位置にあって目標になる必要があるので、係留用杭(ボラード)となるGβGγは独自に行動することは許されません。

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ヒスタミンの受容体は現在4種類が知られており、それぞれの特徴をとりあえずウィキペディアからコピペしておきます(図6)。このあと述べるように、ヒスタミン受容体はヒスタミンと結合すると細胞の脱分極を誘導するはずですが、このメカニズムは私が調べた限りではよくわかりませんでした。イオンチャネル型の受容体はみつかっていないようです。

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ヒスタミンが脳神経系に存在することを最初に示したのはクフィアトコフスキで、1943年のことですが、この論文にはフリーでアクセスできます(9)。その後 Garbarg(発音不明)らはヒスタミンが脳の灰白部、特に神経末端に局在していることをつきとめました(10)。ヒトの脳ではヒスタミン系の神経伝達経路は、視床下部外側結節乳頭核から脳全体に投射していることがわかっています(11、図8)。この総説を書いたハースはヒスタミン系神経伝達経路研究の中心人物のひとりで図7に写真を貼っておきました。

ヒスタミン神経系の実在を証明する上で、大阪大学の和田博と門下の渡邉建彦(図7)、遠山正彌らは大きな貢献をしました。彼らはヒスチジン脱炭酸酵素の抗体を作成して、脳におけるヒスタミン神経系の可視化に成功しました(12)。ただヒスタミンを大量に産生するマスト細胞が脳にも存在するのでまぎらわしい点があり、最終的にはマスト細胞を持たないミュータントマウスを使って証明することができたとのことです(12)。

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ヒスタミンの作用は図6からも広汎であることがわかりますが、ひとつ注意すべきは免疫反応を促進するため、ぜんそく、じんましん、発熱などのアレルギー反応などを引き起こす悪者として扱われることもよくあります。しかしそれらはあくまでも生体防御反応の結果ですし、ヒスタミンは上記のように神経伝達物質として脳の機能に深く関わっているほか、平滑筋収縮、血小板凝集、胃酸分泌を促進するなどの重要な機能も持ち合わせています。

脳でのヒスタミンのはたらきのなかで、特に注目すべきはその覚醒維持作用です。ヒスタミン神経系は、眠らせようとするアデノシン-GABA系の神経系と拮抗しており、覚醒を維持するために重要なはたらきがあります(13、14)。三島先生の記事を引用すると「脳を最も強力に覚醒させる神経伝達物質の一つであるヒスタミンは結節乳頭核から大脳に投射されている。腹側外側視索前野はその結節乳頭核の活動を抑え込むことで眠気(睡眠)を誘発する。アデノシンは自身が産生されたクモ膜下腔のすぐ近くにある腹側外側視索前野を活性化し、結果的に眠気をもたらす(13)。」ということになります。

ですから抗ヒスタミン剤(ドリエルなど)を投与されると、当然眠くなります(15)。この薬を服用した場合は、翌日も眠くなる可能性があるので、車の運転をしないなど行動には十分注意する必要があります(16、17)。睡眠を誘導するアデノシン-GABA系神経を抑制しても目が覚めるわけですが、カフェインにはそのような効果があります。

参照

1)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3

2)小栁喬 細菌たちよ,アミノ酸をなぜ脱炭酸する? 生物工学 第 95巻 第9号(2017) 
file:///C:/Users/User/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/CFQW7HJS/9509_biomedia_3.pdf

3)Windaus A, Vogt W. Synthese des Imidazolyl-athylamins. Ber. Dtsch. Chem. Ges. vol.40, pp.3691-3695 (1907)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/cber.190704003164

4)Adolf Windaus Biographical  MLA style: Adolf Windaus Biographical. Nobe lPrize.org. Nobel Media AB 2019. Mon. 13 May 2019. 
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/1928/windaus/biographical/

5)Dale HH, Laidlaw PP. The physiological action of beta-iminazolylethylamine. J Physiol., vol.41(5):pp.318-344 (1910)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1512903/

6)http://morph.way-nifty.com/grey/2019/02/post-e2ed.html

7)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

8)https://en.wikipedia.org/wiki/G_protein-coupled_receptor

9)Kwiatkowski H. Histamine in nervous tissue. J Physiol vol.102: pp. 32-41, (1943).
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1393435/

10)Monique Garbarg, Gilles Barbin, Jean Feger, Jean-Charles Schwartz., Histaminergic Pathway in Rat Brain Evidenced by Lesions of the Medial Forebrain Bundle.
Science Vol. 186, Issue 4166, pp. 833-835 (1974)  DOI: 10.1126/science.186.4166.83307 
https://science.sciencemag.org/content/186/4166/833?ijkey=7306dedf001ced6e0be14ccae7aea614ae2907&keytype2=tf_ipsecsha

11)Helmut L. Haas, Olga A. Sergeeva, AND Oliver Selbach., Histamine in the Nervous System., Physiol Rev vol.88: pp.1183-1241 (2008);  doi:10.1152/physrev.00043.2007.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18626069

12)T.Watanabe and H.Wada (eds), Histaminergic neurons: Morphology and Fundtion. CRC Press (1991) Boca Raton, Florida

13)三島和夫 睡眠の都市伝説を斬る ナショナルジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/403964/082900048/?P=3

14)筑波大学 報道資料 睡眠と覚醒を制御する神経回路を解明 ~視床下部睡眠中枢と覚醒中枢の神経接続の解明~ (2018)
file:///C:/Users/User/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/PVA09UPG/180717sakurai-3.pdf

15)エスエス製薬 睡眠改善薬のメカニズム
https://www.ssp.co.jp/condition/insomnia/mechanism/

16)https://kotobank.jp/word/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E6%94%B9%E5%96%84%E8%96%AC-187116

17)https://www.min-iren.gr.jp/?p=5526

 

 

 

 

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2019年5月13日 (月)

日本発科学の目を覆わんばかりの凋落

151研究領域におけるTOP10%論文数の国際シェア順位の推移

https://www.jst.go.jp/osirase/2019/pdf/Top10papers_20190513.pdf

1995~1997には5位以内の領域が82あったのが、2015~2017には18に激減。

ちなみに中国は2→146、米国は151→151

反知性主義の政府が国政を支配し続けたので、こうなってしまったと思われます。

トランプがどうするかはわかりませんが、2017年までは少なくとも米国は横ばいなので、決してこれまでは反知性主義ではありませんでした。安倍政権がここまで科学を痛めつけているにもかかわらず、結構国民の支持率が高いのは驚きです。いずれ日本人はこのツケを支払わなければいけませんが、支払うのは支持者だけでなく、日本人すべてだというのが頭痛のタネです。

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2019年5月12日 (日)

JPOP名曲徒然草195: 「最後の遊び」 by Sinon

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彼女はハスキーを飼っていて、亡くなったときに追悼歌として 「I wish 」を2012年にリリースしましたが、
https://www.youtube.com/watch?v=HU48OlB_alo

この曲「最後の遊び」(作詞:広沢タダシ・Sinon 作曲:鈴木謙之)はそのハスキーからのアンサーソングだそうです。発想が素晴らしいと思います。アルバム「Mariage」(DDCZ-2230 Sibuya Television 2019) =写真に収録されています。
https://www.youtube.com/watch?v=mYnn1-SSgc4
https://www.youtube.com/watch?v=2WwQpf5bdtU

どうして「つ」が「ちゅ」になってしまうのかがよくわかりません。津軽生まれで在住だそうですが、親が外国人なのかも。

シノン(2012まで mammy sino でした。二人で出演するときは oncemores というらしい)が有名になったのは、多分カーペンターズのカバーだと思います。カレンと比べて、英語の発音は少し聴き取りにくいですが、やわらかい歌唱は独特の味があって暖かい感じがします。

Close to you
https://www.youtube.com/watch?v=ML8214s1iJM

SuperStar
https://www.youtube.com/watch?v=l_KTho7f6_M

Rainy Days And Mondays
https://www.youtube.com/watch?v=xy4lW1d_uL0

NHKの番組(高校生の頃のシノンが出演している番組が見られる)
https://www.youtube.com/watch?v=tHBjt9vjDCo

ケンリックサウンド設立10周年記念のライヴ(社長がシノンのファンらしい)。
https://www.youtube.com/watch?v=TL8ainFBJQU

オフィシャルHP:https://sinon-sings.com/

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2019年5月11日 (土)

パナソニックがやるべきこと

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パナソニックの津賀一宏社長が日経新聞のインタビューで「現在の危機感はもう200%、深海の深さだ。今のままでは次の100年どころか10年も持たない」と言ったそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190501-00060239-gendaibiz-bus_all

私はパナソニックの売り上げの3割が自動車部品だというのに驚いたのですが、パナソニックが製造すべきものは他にあるんじゃないかと思います。

それはズバリ人工臓器です。実はすでにパナソニックヘルスケアなど傘下の会社があって、血糖測定器、補聴器、バイオ機器などを製造していますが、まだまだの感じです。

そもそも人には人権があるので、環境に不適応な者にも生存権があることになり、ダーウィン的な進化ができません。したがって人は生物の定義から外れてしまっているので、いずれ生物であることをやめてサイボーグ化しても問題はなく、むしろサイボーグ化するか遺伝子をいじらなければ進化はあり得ません。また人以外の生物にとっては人がサイボーグ化して、個体数をコントロールできるようになるのは、極めて望ましいことでもあります。人の個体数が異常に増加することによって、いま地球は、地球がはじまって以来最大級の生物大絶滅時代のまっただ中にあります。

研究者が遺伝子をいじって人の進化を謀るというのは、非常に難しいことだとおもいます。生物は数万の遺伝子のバランスで生きているので、ひとつだけ遺伝子をいじるというのは、一部の遺伝病の治療を除いてはかなり危険なことだと思います。

実はすでに、人はかなりサイボーグ化しています。メガネ・コンタクト・補聴器・入れ歯・インプラント・人工関節・骨固定ボルト・人工食道・血管用コイル・ペースメーカー・人工心肺・人工肛門・マッスルスーツなど枚挙に暇がありません。

危機感200%なら、パナソニックもこのような人工臓器をつくってはどうでしょうかね。血糖値を自動で測定しつつインシュリンを放出するアイテムなどはできるんじゃないでしょうか? ついでに言えば、最も核心的な研究は、脳と人工臓器のインターフェイスの開発であり、パナソニックのような優良企業が取り組むべき課題だと思います。

(写真はウィキペディアより)

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2019年5月10日 (金)

エッジは日本語と相性が悪いようです

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かなり格闘してみましたが、どうもマイクロソフトエッジは日本語入力との相性が悪いようです。日本語による検索を行う場合はやっぱりインターネットエクスプローラーじゃないとうまくいきません。

仕方がないのでタスクバーの検索窓からインターネットエクスプローラーを探し出し、右クリックから「ファイルの場所をひらく」クリック→internet explorer を右クリック→デスクトップにショートカットを設置 と進んで使えるようにしました。

しかしインターネットエクスプローラーも、どうもATOKを排除してマイクロソフトIMEを使わせようとしているようで、しかたなく一時的にIMEを変更しました。私は入力の効率を考えると、ATOKをVJE方式に設定して使うのが一番早いと思います。スペースバーの右隣キーで変換、左隣キーで確定というのは日本語入力にはベストです。VJEが消滅した現在でも、富士通のPCはCより右に確定キーがありますが、これはVJEのインプットシステムに便利なように設定したものがいまでも残っているのだと思います。確定用に小指でエンターキーを押すと、右手がホームポジションを離れるので、エンターキーを確定に使うのは気が進みません。

PC・スマホ関係各社の主導権争いで日本人はひどい目にあっている感じです。NECや富士通が米国政府に遠慮して、独自PCオペレーションシステム開発を断念したという歴史が、21世紀になっても尾をひいています。そしてトロンの開発者17名が日航ジャンボ機墜落で犠牲になったのも痛い(陰謀という説もある)。これでPCのオペレーションシステムはマイクロソフトとアップルという米国勢の独占となりました。

日航機墜落事故の真相!『幻のトロンOS』に対する陰謀とは?
https://sekirintaro.com/jal123/

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2019年5月 8日 (水)

パソコンが退院 古ソフトをウィンドウズ10で動かす

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秋葉原のドスパラ別館に入院していたPCを引き取りに行きました。ウィンドウズ10が無料でインストールできたので、5万円のはずが3万円ですみました。マイクロソフトもいいところあるじゃないですか。

SSDが500GBになったので、いままで非常に窮屈だった4畳半アパートから1LDKに引っ越したようなゆったりした気分です。この新品SSDが1万円とはドスパラも頑張りました。内部は清掃してもらってピカピカです。来たときと同じ荷物用キャリーにベルトで固定し、千葉まで長い道中です。

まずアンチウィルスソフト、つづいてマイクロソフトオフィスプロフェッショナル2007年版・フォトショップエレメント2010・ATOK・手裏剣・テラパッド・PDF関係などのソフトウェアをつぎつぎ悠々とインストール。みんな動きます。

メールソフト(手裏剣)の設定を行うとともにメールアドレスを手動で再入力したので、これに2時間くらいかかりました。1番困ったのはグーグル検索の窓に日本語が入力できなかったこと。しかし何度もトライしているうちに突然入力できるようになってびっくり。どこかで日本語入力の設定などをあらためてやっていないので、こういう不合理なことがおこるのは理解できません。

もうひとつ困ったのは MusicBee が外部HDDにためた曲を認識しなかったことで、あきらめて中座し、再起動するとなんと認識しているじゃありませんか。これまたキツネにつままれたような不思議。

慣れていないせいかもしれませんがエッジは使いにくい感じです。インターネットエクスプローラーはバージョンアップを繰り返して十分に涸れたソフトでした。使おうと思えば10でも使えるようですが、マイクロソフトとしてはこれからはエッジに注力するそうなので、逆らっても仕方ありません。

ウィンドウズ10は事務的な感じではなく、非常に商業的なスタイルがデフォのようです。いままでのところ10になって良かったという実感はまったくありません。知人の会社などでは、マイクロソフト以外の会社にメンテを依頼してまで7を継続するというのもわかります。

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2019年5月 5日 (日)

ブログは14才に突入

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パソコンが入院中なので、予備のマシンでアップしました。電源が振動していて不安ですが、なんとか持ちこたえています。@ニフティーがシステムをリニューアルしたのですが、1ヶ月くらい経過してもまだ落ち着きません。たとえば画像をまとめて準備ホルダーに取り込むと、シャッフルされてしまって、Aと言う画像をアップしようとしたら、Bがアップされてしまうというバグが発生します。じゃあひとつづつ取り込むという仕様にすればいいのにと思うのですが、そうもいかないようで。

退院しても、私は未経験のウィンドウズ10になっているので、なにが起こるやら?

 

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2019年5月 4日 (土)

なぜ消費税を上げなければいけないか?

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テレ朝 「池上彰のニュース解説」で、なぜ消費税を上げなければいけないかの回答として「社会保障費がふえるため」と言っていましたが、これはある種の世論操作でしょう。

この回答にはなぜ法人税や所得税を上げないで、消費税を上げるかという観点が欠落しています。消費税は累進制がないため、貧しい人にとっては厳しい税制であり、貧富の差が大きい社会では避けるべき税制です。

法人は大量に内部留保を行っているので、法人税を上げればいいじゃないかというわけですが、それがそうもいかないというのは、他国での法人税が日本より安いと、外国の方が物価が安くなり貿易が不利になりますし、企業が海外で生産をおこなうようになるかもしれません。

ですから、消費税を上げないで法人税を上げるためには、管理貿易を行って法人税の差による貿易不均衡を修正するしかありません。トランプはまさしく暴力的に自由貿易を廃止しようとしていますし、EUも域外とは自由貿易ではありません。自由貿易にすれば、発展途上国の方がはるかに安価な物品を供給できるので、貿易は発展途上国の圧勝です。実際米国は長い間中国に完敗してきました。日本もパナソニックの社長があと10年も持たないと言うくらいものづくり産業が壊滅しつつあります。

結局水野和夫の言う「閉じた帝国」(1)のなかで、管理貿易を行い域内自給自足を行えば、必要なだけ法人税を上げることができるのです。日本で言えば、可能ならばTPPに米国が加わらなかったのを奇貨として、独自の「閉じた帝国」=地域連合体を形成しなければなりません。

そうしてみると、なぜ消費税を上げなければいけないかという設問そのものが間違っていることに気がつきます。消費税を上げる必要などなく、法人税と所得税を上げれば良いことになります。もし昔の日本のように1億総中流の時代なら、いっそのこと他の税金を廃止して30%の消費税だけにしてもよかった(税務署の仕事が激減する)のですが、もうその時代には戻れません。

1)水野和夫著「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済」 (集英社新書) 2014年

 

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2019年5月 3日 (金)

馬酔木-万葉集-イオンチャネル

アセビ(=馬酔木、アシビ)はどこにでも生えているような植物です。街路に満開の桜が咲き乱れる頃、団地の片隅にひっそり咲いています。その気になってみると、結構あちこちにみられます。

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アセビ


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アケボノアセビ

万葉集にもたくさんこの植物が登場するそうです。2つだけ下記しました。薄紅色のアケボノアセビは園芸品種なので、万葉集の時代にはなかったのでしょう。

礒之於尓 生流馬酔木乎 手折目杼 令視倍吉君之 在常不言尓 (大伯皇女)

いそのえに をふるあしびを たおらめど みすべききみが あるといはなくに

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岩のほとりの馬酔木を手折ってあなたに見せたいのに、

あなたが居るとはもう誰も言ってはくれない

(謀反の疑いで処刑された大津皇子が葬られたときに、姉が詠んだ歌)

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春山之 馬酔花之 不悪 公尓波思恵也 所因友好(詠み人知らず)

はるやまの あしびのはなの あしからぬ きみにはしえや よそるともよし

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春山の馬酔木の花のように素敵なあなたとなら、ええそうよ、

噂されてもいいわ

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楽しい万葉集より
https://art-tags.net/manyo/flower/asebi.html

この植物は猛毒で、名前(馬酔木)も馬が酔うからきているようです。その有効成分はグラヤノトキシンで構造式は下記の様なものです。R1R3の構造の違いにより3種類があります。イオンチャネルに結合して神経の脱分極を継続させ、筋肉の期外収縮や麻痺をひきおこします。

Grayanotoxin

農薬に替わって、この自然の毒を殺虫剤に使おうというこころみがあるそうです。

 

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2019年5月 2日 (木)

やっとウィンドウズ10に

ドスパラでマグネイトGEを購入してからはや7年。ついこの間のことのように思われますが
http://morph.way-nifty.com/grey/2012/05/magnatege-2aa0.html

もう7年も経ってしまいました。メインストレージが128GBのSSDというのも手狭です。マシンを購入したドスパラで¥17,000でアップグレードサービス(ウィンドウス10にアップグレイドすると同時にSSDを500GBにする)をやっているというので、持ち込むことにしました。

マグネイトGEはミニタワー型ですが、これをうちで最大の海外出張用キャリーに入れようとしましたが、なんと入りません。これは誤算でした。あわてて近所のお店で荷物用簡易カートを買って、ダンボールに詰めたPCをベルトで固定し、秋葉原に出かけました。何年かぶりで秋葉原に来てみると、すっかり様子が変わっていてとまどいます。連休とあって人出もすごく、メイドさんも大量にうろついています。メイドさんといっても特に可愛いわけではなく、日本人の標準という感じです。

サイトで地図をプリントアウトして見ているのですが、お店の位置がわかりません。ウロウロしているうちにようやくたどりつくと、アップグレードは別館ですといわれて、さらに歩いてようやく別館に。ここの2Fでやってくれるようです。下はお店のサイトに出ていた写真。写真の左側(写っていない)に整理券発行機のようなものがあって、そこで番号札を出して、番号を呼ばれたらカウンターに行くというシステムです。

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カウンターの兄さんと話していると、とんでもないことがわかりました。アップグレードでクレームが続出したため、お店としては強く強くクリーンインストールをおすすめするというのです。がっかりすると同時に、マイクロソフトのしつこいメッセージに負けて無料アップグレードしなくてよかったと思いました。ソフトやドライバーが使えないとなると大変ですからね。しかしクリーンインストールすると、設定もいちからやらないといけないので、気が重いです。まあこんなこともあろうかと重要なファイルは退避しておいたので、それは大丈夫なのですが。

結局カウンター兄さんのすすめに従って、ウィンドウズ10のクリーンインストールとSSDの交換と内部清掃でしめて約5万円ということで手を打ちました。それなら新品買った方がいいんじゃないか・・・ということにはやっぱりなりません。

今回痛感したのは、パソコンを長く使おうと思ったら規格外の小型のものを買った方が良いということです。ミニタワーと言えども修理のために持ち運ぶのは骨です。以前にノートパソコンを使っていて電池が死んだのですが(他は故障箇所なし)、その電池が製造終了していて、まったく健康なパソコンが即死してしまったという苦い経験があるので、ノートパソコンは敬遠しています。私のようなキーボードを酷使するユーザーにとっては、キーボードを簡単に交換できないというのもデメリットです。

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2019年4月30日 (火)

やぶにらみ生物論125: セロトニン

セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HTという略称を用いることもあります)は生理活性アミンの1種で、トリプトファンから5-ハイドロキシトリプトファンを経て生合成されます(図1)。

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血清中に筋肉を収縮させる活性のあるホルモン様因子が存在することは20世紀初頭から知られていました。その第一候補はアドレナリンでしたが、その因子と異なりアドレナリンは腸の平滑筋は弛緩させました。オコナーはこの因子が血漿では検出できないことから、血液凝固の過程で血小板から血清中に漏れ出したと考えました(1)。

血液凝固がおこるということは負傷したということです。負傷すると血管の平滑筋が収縮して出血を防ぐというのは、生命維持のために重要なメカニズムです。

このホルモン様因子の分子的実体はなかなか解明されませんでしたが、20世紀半ばになってようやくラポルト(図2)らによって、謎の血清因子がセロトニンであることが明らかにされました(2、3)。ラポルトらは900リットルのウシ血清から2~3mgの因子結晶を得て、構造を解明することができました。そしてエルスパメル(図2)らのグループがエンテラミンと呼んでいた胃粘膜由来の平滑筋収縮因子が同じ物であることがわかりました(4)。

そして1953年にはウェルシュ(写真がみつかりません)らがセロトニンが神経伝達物質であることを示唆する論文を発表しています(5、6)。彼らは二枚貝のガングリオン(神経節)が心臓の拍動を制御するに際して、アセチルコリンが拍動抑制、セロトニンが拍動促進という役割を持っていると考えました。その後ドーパミンの記事で述べたファルク-ヒラープの方法(7)によってセロトニンも可視化され、神経細胞での存在が確認されました。

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セロトニンの受容体については、図3に示したような7種類の分子の存在が知られています。このうち6種類は7回膜貫通型3量体Gタンパク質共役型受容体(GPCR=GTP-binding protein-coupled receptor )ですが、5-HT3だけはイオンチャネル型です(8)。

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代表的なセロトニン受容体の立体構造を図4に示しました。左はGPCR型の5-HT1B(9)、右はイオンチャネル型の5-HT3(10)です。GPCR型の機能は例によって結合しているGタンパク質の種類によって異なります。図3および図5にリストアップしておきました。イオンチャネル型はセロトニンが結合することによって、受容体を持つ細胞が脱分極を起こします。

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ここではそれぞれのセロトニン受容体の詳細な局在や機能についてまだ深入りしませんが、概略は図5に示しました(11)。血管・消化管・中枢神経系がこの受容体の主な活動場所です。

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モノアミン系神経伝達因子のトランスポーターは、ドーパミンとノルアドレナリンについてはそれぞれについて特異性が低いトランスポーターがあり、セロトニンについては特異性が高い専用のトランスポーターがあります。これらのトランスポーターによって、外界のモノアミンは細胞内のシナプス小胞に取り込まれます。シナプス間隙の神経伝達因子を取り込むと、リサイクルと伝達の停止というふたつの意味を持つことになります。

キルティらによって最初にドーパミントランスポーター遺伝子のクローニングが行なわれ、その構造が研究されました(12、13)。他のトランスポーターと同様、膜12回貫通型のタンパク質で、N末・C末ともに細胞内にあります。細胞膜に埋め込まれていないループが細胞外にも細胞内にも複数あるようです(図6)。

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モノアミンはナトリウム・カリウム・塩素などのイオンと共にトランスポーターがつくる膜内の小室に取り込まれ、外界側のドアを閉めた後で細胞内へのドアを開けて細胞内に移動するようです(14、図7)。

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セロトニンの作用についてもうひとり忘れてはならないパイオニアがいます。それはベティー・トゥワログで(図8)、彼女は前記のウェルシュの研究室で学位をとったのですが、不可解なことにその研究をウェルシュとは別々の論文に書いて発表しています(15、16)。これはおそらくトゥワログの論文が投稿から発表までに2年もかかった(17)ことが関係しているのでしょう。編集部が受理する自信がなかったためにこのようなことになったと思われます(17)。

その内容は、ホンビノスガイ(もともとは北アメリカの大西洋側にしかいませんでしたが、現在は世界中に広がり東京湾にもいるそうです、図8)の神経による心臓の調節に関する物もので、この2枚貝の神経は心臓の鼓動を調節するためにアセチルコリンを放出しますが、アセチルコリンは鼓動の頻度や強度を抑制する働きがあります。しかしアセチルコリンアンタゴニストあるいはセロトニンは鼓動の頻度や強度を強める働きがあることを彼らは示しました。トゥワログとページはさらに哺乳類にもセロトニンが存在し、同様な働きを持つことを報告しました(18、19)。

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ヒトでセロトニンが欠乏するとどんなことが起こるのでしょうか? 安原こどもクリニックのサイトをみると次のような病状が発生するそうです(20)。

#すぐキレル
#摂食障害
#過食
#拒食
#パニック障害
# うつ
#睡眠障害(眠れない)
#寝覚めがはっきりしない
#筋収縮障害

ここで注意すべきは、セロトニンはメラトニンというホルモンの前駆体でもあるので(図9)、セロトニンが欠乏するとメラトニンも欠乏します。したがってセロトニン欠乏症なのかメラトニン欠乏症なのかは慎重に検討する必要があります。これらについてはおいおい調べていくことにします。

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参照

1)O’Connor JM: Uber den Adrenalingehalt des Blutes. Arch Exp Pathol Pharmakol (founding name of “Naunyn-Schmiederberg’s Arch Pharmacol”), vol.67, pp.195-232.(1912)

2)Rapport MM, Green AA, Page IH: Crystalline serotonin., Science,vol.108, pp.329-330.(1948)

3)Rapport MM: Serum vasoconstrictor (serotonin). V. The presence of creatinine in the complex: a proposed structure of the vasoconstrictor principle. J Biol Chem,
vol.180, pp.961-969.(1949)

4)Erspamer V, Asero B: Identification of enteramine, the specific hormone of the enterochromaffin cell system, as5-hydroxytryptamine. Nature, vol.169, pp.800-801. (1952)

5)Welsh JH: Excitation of the heart of Venus mercenaria.Naunyn-Schmiedebergs Arch Exp Pathol Pharmakol,vol.219, pp.23-29.(1953)

6)Welsh JH, Taub R: The action of acetylcholine antagonists on the heart of Venus mercenaria. Br J PharmacolChemother, vol.8, pp.327-333.(1953)

7)Falck B, Hillarp N. A, Thieme G, Torp A: Fluorescence of catechol amines and related compounds condensed with formaldehyde. J Histochem Cytochem,vol.10,pp.348-354.(1962)

8)Peroutka SJ, Snyder SH: Multiple serotonin receptors:differential binding of [3H]5-hydroxytryptamine, [3H]lysergic acid diethylamide and [3H]spiroperidol. Mol Pharmacol, vol.16, pp.687-699.(1979)

9)S. Jähnichen,  https://en.wikipedia.org/wiki/5-HT_receptor

10)G Hassaine et al.,  Protein Data Bank,  https://www.rcsb.org/structure/4PIR

11)日本血栓止血学会用語集 https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=263

12)Kilty JE, Lorang D, Amara SG. Cloning and expression of a cocaine-sensitive rat dopamine transporter. Science. 1991; 254(5031):578–579. [PubMed: 1948035]

13)https://en.wikipedia.org/wiki/Monoamine_transporter

14)Jacob Eriksen,  PhD thesis - Københavns Universitet  (2009)

15)Welsh JH, Taub R: The action of acetylcholine antagonists on the heart of Venus mercenaria. Br J Pharmacol Chemother, vol. 8, pp. 327–333.,  (1953)

16)Twarog BM: Responses of a molluscan smooth muscle to acetylcholine and 5-hydroxytryptamine. J Cell Physiol, vol. 44, pp. 141–163., (1954)

17)Patricia Mack Whitaker-Azmitia., The Discovery of Serotonin and its Role in Neuroscience., Neuropsychopharmacology., vol. 21, no. 2S,
(1999)
https://www.nature.com/articles/1395355

18)Twarog BM, Page IH: Serotonin content of some mammalian tissues and urine and a method for its determination., Am J Physiol, vol. 175, pp. 157–161., (1953)

19)Manfred Göthert., Serotonin discovery and stepwise disclosure of 5-HT receptor complexity over four decades. Part I. General background and discovery ofserotonin as a basis for 5-HT receptor identification., Pharmacological Reports, vol.65, pp.771-786 (2013)
http://www.if-pan.krakow.pl/pjp/pdf/2013/4_771.pdf

20)http://www.y-c-c.jp/drbear/?p=41

 

 

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2019年4月28日 (日)

バルサ 2018~2019シーズンのリーガを制覇

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5月を待たずにバルサはリーガ優勝を確定しました。

金賞: リオネル・メッシ 文句なし

銀賞: マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン スーパセーヴはバルサを救いました

特別賞: クリスチャーノ・ロナウド 彼が去り、レアル・マドリーは死んだ

次のターゲットはもちろんリバポー

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2019年4月27日 (土)

大野-都響 ラフマニノフ「交響的舞曲」@サントリーホール2019・4・26

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冬に逆戻りしたような寒々とした霧雨の日。今日の都響プログラムに合わせたような天気です。
指揮者は大野さん、コンマスは四方さん、サイドはマキロンです。7割くらいの入りです。後半は8~9割になったかな。平日はまあこんなもんでしょう。

シベリウスの「交響曲第6番」は意外にもリハ不足でうまくいってない部分がありましたし、どんな演奏がしたいのかよくわからない部分もありました。幻想交響曲で燃え尽きたのかなと思いましたが、後半の交響的舞曲(ラフマニノフ)で一気に盛り返しました。

R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、ラフマニノフの「交響的舞曲」などはいずれも世界大戦の残虐と破壊を背景に、作曲者本来の芸風を離れた特異でシリアスな音楽です。これらは戦争経験者でなければ深く理解することはできない作品群だと思いますが、私は私なりに彼らの世界に没入します。

交響的舞曲は聴き進むにつれて、軍の行進、人々のうめきと叫び、爆弾の炸裂、恐怖と嘆き、死と破壊、鎮魂と祈りで埋め尽くされてくる、暗く激しい異様な音楽で、ラフマニノフらしい甘美なメロディーなどどこにもありません。大野-都響は全力で爆演です。この演奏会に参加した楽団員・エキストラ全員が力を出し切った感がありました。このような演奏をしてくれると、都響は本当に生きていくよすがになります。大野-都響に感謝。

こんな音楽です。
https://www.youtube.com/watch?v=aejZf3Y75JM

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2019年4月24日 (水)

Big Question: つるうちはな「一緒にいようよ」

つるうちはな「一緒にいようよ」
https://www.youtube.com/watch?v=HSA_AxEK3CQ

これはただプライベートを自撮りして YouTube に出したものではなく、オフィシャルMVです。ですからもちろんCDは販売されています。
こちら

出演しているのは本物のご主人だそうで、そこから想像されるのは、歌の内容が完全にプライベートと一致しているということです。

こんなのアリ???  ちょっと怖い。

つるうちはなさんが天才であることは認めますが・・・・・。

私小説を書いている小説家は、ペンネームを使って、サイン会などをやらなければ読者と接触がないわけですから、その小説の世界そのものが架空を装うことすらできますが、ライヴを主要な活動とするミュージシャンはそうはいかないでしょう。私小説シンガーソングライターがいないのは当然ですが、それをやりきったとすればすごいことです。私は作品の中にプライベートが垣間見えるというくらいが芸術のあるべき姿だと思いますし、多くの人はそう思っているのではないでしょうか。

熊木杏里のように旦那のことはかけらも話題にしないというのも、それはそれで物議を醸すかもしれませんが。

つるうちはな
オフィシャルウェブサイト:https://tsuruuchihana.hanatopops.com/

 

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2019年4月21日 (日)

大野-都響 ベルリオーズ「幻想交響曲」@東京芸術劇場2019/4/20

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気持ちの良い晴天の土曜日。今シーズン最初の都響定期で池袋にでかけました。マエストロ大野の指揮でコンマスは矢部ちゃん。雨男なのによく晴れにしてくれました。サイドはゆづき。昨年入団したばかりのヴィオラの西さんが、2列目で弾いているのが目立ちました。

ソリストはルガンスキーで、今シーズン最初の曲はグリーグのピアノコンチェルト。ルガンスキーは適度にやわらかい音色で、人間味の濃いロマンティックな演奏です。都響のさわやかなサポートもすばらしく、ハートフェルトなコンチェルトでした。満場の喝采に答えてのアンコールはメンデルスゾーンの無言歌からop.85-4 「悲歌」。

休憩後の幻想交響曲はおそらくマエストロ大野の18番らしく、冒頭から怖いくらい整頓された弦楽アンサンブルで背筋がゾクゾクしました。大植イングリッシュホルンと広田オーボエ(バンダ)の応答は聴き所です。私は見てなかったのですが、公開リハーサルではドアの開け方をいろいろトライしていたそうです。そうした細かい努力もあってか、「野の風景」はとてもいい雰囲気でした。「断頭台への行進」も迫力満点。そして圧巻は「ワルプルギスの夜の夢」。まるで蝙蝠の大群が押し寄せるような冒頭から、ホラーと狂乱の宴を満喫しました。

今日の演奏はロリン・マゼール指揮、バイエルン放送交響楽団の名演(1)にも匹敵する超絶の演奏だったと思います。マイクが林立していたので録音していたのでしょう。今シーズンもやってくれますね 都響!

1) https://www.youtube.com/watch?v=dhwfOeJNBlM

 

 

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2019年4月19日 (金)

クリスパー/キャス9 遺伝子編集への道

遺伝子編集が最近巷で話題になっているようなので、2年半ほど前に書いた記事を再掲することにしました。

遺伝病は遺伝子のたった一組の塩基対の異常によっても発生し、それが原因で落命するということもあり得ます。有名なのは鎌形赤血球貧血症で、一対の塩基対の異常によってヘモグロビンベータのグルタミン酸がバリンに代わり、ヘモグロビンの機能が低下して貧血になります。どの遺伝子のどの塩基対が変異をきたしても病気になる可能性があるので、遺伝病のバラエティは無数にあります。

これらの遺伝子を正常にもどして病気を治療するというのは、分子生物学者にとってのひとつの夢でした。当初考えられたのは、レトロウィルスベクターを使って正常な遺伝子を細胞に注入するというやり方でした。

しかしそこで予想もしなかった事態が発生しました。まず1999年にゲルシンガー事件というのがおこりました。患者のゲルシンガー氏の免疫系がベクターに異常に強い反応を起こして、患者が死亡してしまったのです。2000年代のはじめには、X連鎖重症複合型免疫不全症(SCID-X1)と呼ばれる疾患に対して、20人の小児患者が遺伝子治療を受けましたが、そのうちの5人が白血病を発症し、1人が死亡するという事件が起きました。この原因は患者のゲノムに挿入された治療用遺伝子が「がん遺伝子」を活性化したためと考えられています(1、2)。現在ではレトロウィルスベクターのかわりに、より安全性を担保されたレンチウィルスベクターが用いられ、ウィルスベクターによる遺伝子治療が再出発しています(3)

しかしこのようなウィルスベクターによる治療にはいつくか問題点があります。ひとつは遺伝子が挿入される場所を指定できないので、何が起こるか判らないという怖さがあること。いまひとつはハンチントン病のように、変異遺伝子が生成する異常タンパク質が、正常なタンパク質の作用を妨害するような場合には無効であることです(4)。したがって、そのようなウィルスベクターによる治療に危惧を抱いていたグループの中では、前稿でとりあげたカペッキやスミティーズの相同遺伝子組み換え技術によって、異常遺伝子を正常遺伝子に組み換えるという可能性を追求しようという機運がひろがっていました。

そもそも相同遺伝子組み換えというのは、真核生物では主に減数分裂の時におこる現象ですが、どのようなメカニズムで行なわれるのでしょうか? このそもそも論に取り組んだのがジャック・ショスタクです。彼はテロメア・テロメラーゼ関連でノーベル賞を受賞しましたが、それ以外の仕事でもその天才ぶりを遺憾なく発揮しました。

DNAは常に放射線・紫外線・化学物質などにさらされており、日常的に損傷を受けています。損傷のタイプは大きく分けて二つあり、ひとつは1本鎖の切断で、これは修復機構が数多く知られています(5、6、図1)。いまひとつは2本鎖の切断で、1本鎖の切断の場合と異なり、断点でDNAが生き別れてしまうおそれがあるという生命にとって極めて危険な状況が発生します(図1)。しかし生命はあえて損傷時以外にも、減数分裂時には染色体の組み換えを行なって、遺伝子のシャフリングを行なっています。そのためには2本鎖の切断と修復が必要です(図1)。

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ショスタクらは1983年に、2本鎖切断を修復する機構のモデル(仮説)を発表しました(7、図2)。今見てみると非常に味わい深いモデルだと思いますが、発表された当時はあまりに都合の良いことを単純につなぎ合わせたような気がして、信じ難い感じがしました。多くの研究者が当時はそう思っていたのではないでしょうか。しかし現在では着々とその正しさが証明されつつあります(8)。2本鎖の断点から、まず1本鎖が断点の5’側からエクソヌクレアーゼによってかじられ(タンパク質がとりつくスペースを空けるためでしょう)、かじられなかったもう1本の鎖にRAD51(図2の赤丸)というタンパク質がとりつきます。これとRAD54(図2のオレンジ楕円)などが協力して相同染色体の対応部位をさがしてとりつきます。ここで相同染色体にある塩基配列を利用して図2のような修復を行ないます。結果的に染色体の組み換えが行なわれていることに注意して下さい。修復に利用された相同染色体側から見れば、染色体の一部が切り取られて移動しただけですが、2本鎖切断を受けた側の染色体では、極めて複雑なプロセスがあることがわかります。このプロセスの全貌はまだ解明されていません。

重要なのは、生物が本来持っている遺伝子組み換え機構を発動するには、DNA2本鎖切断、相同染色体、DNA加工酵素、相同部位を探すために必要なタンパク質、の4者が必要だということです。

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DNAの2本鎖修復が、切断を受けたDNA以外のDNAを利用して行なわれることの証拠をはじめて示したのはマリア・ジャシンらでした。彼女らは18塩基配列を認識して2本鎖DNAを切断する特殊なエンドヌクレアーゼをマウスに導入し(マウスにはこの18塩基配列がないため、ずっと発現していても何もおこらない)、18塩基配列をマウスゲノムに埋め込むとともに、この配列に相補的なDNA断片を供給すると、約10%の細胞が相同組み換えによってDNAを修復することができました(9)。

この記事の主役であるジェニファー・ダウドナはショスタクの研究室で博士号を得ているので、当然相同遺伝子組み換えには関心を持っていたはずですが、ポストドクはコロラド大学のトム・チェックの研究室でリボザイムの研究を行なっていました。しかし彼女が就職してから最初に取り組んだのは、「細菌の免疫機構」というテーマでした。

参照(4)によると、2006年のある日会ったこともないジリアン・バンフィールド(ジル)という研究者から電話がかかってきて、共同研究のオファーがあったそうです。よくわけがわからなかったそうですが、ダウドナはその熱意にほだされて会って話を聴くことにしました。ジルはあらゆる細菌DNAが規則的にとびとびに並んだクラスター状の回文反復配列を持っており、その反復配列の間に異なる配列がはさまれているという話をしました(図3、灰色部が反復配列、赤・青・緑がそれぞれ異なる配列)。

この回文反復配列は、もともと別の大腸菌遺伝子の研究をしていた石野良純がその隣接領域に発見して報告していたものです(10、図3の赤枠の中)。当時はこの配列の重要性に誰も気づきませんでしたが、かなり後になって、この配列が多くの細菌・古細菌にみられるということをフランシスコ・モヒカらが報告しました(11)。ウィキペディアによれば、配列決定された原核生物のうち真正細菌の4割と古細菌の9割に見出されているそうです。この配列は2002年にルート・ヤンセンらによってCRISPR(クリスパー=Clustered Regularly Interspersed Short Palindromic Repeats)と命名され、この近傍にはCAS遺伝子群(CRISPR-associated genes)が存在することも明らかになりました(12)。

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ダウドナがジルに会う少し前に、アレグザンダー・ボロティンらが、反復配列にはさまれた赤・青・緑の領域がウィルスの塩基配列とホモロジーがあることを発表していました(13)。さらにジルはダウドナにマカロヴァらの最新の論文を見せ、そこにはクリスパーが細菌の免疫機構のひとつであることが示唆されていました(14)。 ダウドナは自分がそれまで研究していたRNA干渉(mRNAの相補配列をもつRNAが転写を制御する機構)が、原核生物の免疫に関与しているという話に驚愕し、ただちに食いつきました(4)。ダウドナの本には、海中の細菌の40%が毎日ウィルス感染によって死んでいると書いてあります。細菌にはすごい増殖能力があるのでウィルス感染なんて「へ」でもないというわけにはいかないようです。

ちょうどその頃、ロドルフ・バランガウらはウィルス抵抗性を獲得した細菌のクリスパーを調べて、新規にそのウィルスのゲノム配列がスペーサー部にコピーされていることを発見し、クリスパーが細菌の獲得免疫をになう機構であることを証明しました(15)。この免疫機構が素晴らしいのは、いったん獲得するとそれが子孫にも受け継がれるという点です。

2008年になりスタン・ブロウンズらは、まずクリスパー全体が転写され、次に転写されたRNAがリピート部分でRNA分解酵素によって切断されて、各スペーサー部分と相補的なRNA分子が生成されることを示しました(図4、16)。この短いRNAはウィルスゲノムと相補的な構造をもっているため、ウィルスを不活化することができると考えられます。しかしそのメカニズムはそのようなものなのでしょうか。最近の研究ではこのメカニズムは大きくわけて大腸菌などに適用される I 型と レンサ球菌などに適用される II型があることがわかっています。

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ダウドナの研究室では2011年頃までは主に特異性の低いクリスパー I 型について研究していたのですが、プエルトリコのカフェで偶然エマニュエル・シャルパンティエと出会って共同研究を始めた頃から、特異性の高い II 型の研究に重心を移しました(4)。エマニュエルは II 型クリスパーシステムを持つレンサ球菌のCAS9を研究していて、この遺伝子の突然変異によって免疫機構が失われることをみつけていました。ダウドナ研ではエマニュエルの研究室の他各地から人材を集めてCAS9の機能分析を行ないました。中心となったのはダウドナ研のマーティン・イーネック(Martin Jinek) とシャルパンディエ研の クシシュトフ・チリンスキ(Krzysztof Chylinski)です(図5)。二人ともポーランド語を話せたので意思疎通はうまくいったようです。

当初はクリスパーRNAとCAS9でファージDNAを切断できると思っていたわけですが、実はそれ以外に tracrRNA(trans-activated RNA)というもうひとつの役者が必要であることがわかりました。このRNAはクリスパーRNAと相補配列をもち、ハイブリッドを形成してCAS9を分解すべきDNAの特定部位に導きます。PAM配列という生物種や関連分子種によって異なる特異配列が誘導に介在しています。CAS9がDNAの2本鎖をこじ開けると、クリスパーRNAがその片側と結合します。その状態でCAS9のふたつのヌクレアーゼサイトを同時に使って2本鎖の両方を同時に切断します(17、図5)。

ダウドナ研で tracrRNAとクリスパーRNA(crRNA)を人工RNAで接続し1分子(キメラ分子)に統合してもCAS9を切断部位に誘導できることが示され、図5のようにクリスパーをツールとして用いるときは、このようなキメラ分子を使うのが便利ということになりました(図5)。この人工キメラ分子はsgRNA(シングルガイドRNA)と名付けられました。

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図6はクリスパーの基礎研究を主導した3人の女性研究者です。彼女たちは研究者としてのみならずマネージャーとしても一流で、多額の研究費を得て大規模な研究室を維持し切り盛りしています。ちょっとバークレイのダウドナ研のサイトをのぞいてみましたが(18)、主要メンバーはほとんど中国系で驚かされます。まもなくノーベル賞を受賞しようかという研究室にもかかわらず、ポストドク、学生のなかに日本人がみあたらないのは残念です。CAS-クリスパーシステムのもう少し専門的または詳しい日本語解説をみたい方は(19)などを参照されるとよいでしょう。

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CAS-クリスパーシステム(sgRNA+Cas)と挿入用のDNAを使えば、正確な位置にDNAを挿入することができます(図7)。といっても遺伝子をまるごと挿入できるわけではありません。ダウドナはその著書のなかで「CRISPRは私たちに生命の分子そのものを思うままに書き換える手段を与え」と述べていますが、それはちょっと大げさです。たとえば2種類のsgRNAを用いてひとつの遺伝子を両端で切断してとりはずし、別の遺伝子と入れ換えるなどということはできません。ただ遺伝子に突然変異を導入する効率は飛躍的に進歩しました。

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CAS-クリスパーシステム(sgRNA+Cas)を使ってDNAを切断すると、2本鎖切断がおきるので、鋳型に依存しない通常不正確な修復機構によってDNAがつながります。この結果しばしば遺伝情報のフレームシフト(横ずれ)によってコードが意味をなさなくなり、遺伝子の機能が失われます(図8)。

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マウスの受精卵にCAS-クリスパーシステム(sgRNA+Cas)を注入し、胚盤胞まで培養して仮親に育てさせると(図9)、狙った遺伝子が図8のような機構で無効化し、ノックアウトマウスを作成できます。また同時にオリゴDNAを注入すると、そのオリゴDNAをゲノムDNAにとりこんだ動物ができます。たとえば突然変異を持つ動物を作成できます(20、図7)。

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ある遺伝子に変異を導入して病原菌のターゲットにならないように遺伝子を改変するというのは、CAS-クリスパーシステムの得意とするところです。うどんこ病に抵抗性のコムギなどは大きな成功でしょう(21)。このシステムでは狙った特定の位置に正確に変異を導入できるので、X線・ガンマ線・化学物質などを使ってランダムに導入された変異などとはわけが違う、素性のはっきりした品種改良であり、これは私達が慎重さを確保した上で受け入れるべきものでしょう。

ダウドナの本(4)は非常によくまとめられていて、著者の頭の良さをうかがわせますが、同時にクリスパーのプロパガンダの本でもあります。クリスパー/キャス9はもともとウィルスのDNAを破壊するためのシステムであり、特定の配列を認識してDNAを切断することはできますが、これを遺伝子編集というのはかなりおおげさな表現だと思います。編集と言うからには削除、追加、入れ替えが自在にできなければいけませんが、クリスパー/キャス9は遺伝子を無効化するのは得意ですが、追加や入れ替えはDMA2本鎖切断修復という極めて不完全なシステムに依存するため、まだまだ「編集」というにはほど遠い状況です。

クリスパーシステムが制限酵素のシステムと違うのは、ひとつはウィルスのDNA配列を記憶しておけるということ。もうひとつは制限酵素よりはるかに長い配列(20塩基)を認識できるので、自分のDNAを間違って切断する心配はない(したがってメチル化による保護は不要)ということです。

クリスパーシステムを用いた遺伝子治療を行なうには、プラスミドかウィルスにCAS-クリスパーを潜入させて、標的になる細胞にとりこませなければなりません。受精卵は大きいのでマイクロインジェクションで注入できますが、体細胞にはこのやり方は向いていません。このあたりがなかなか難しいところです。

参照

1)免疫不全症の遺伝子治療 AASJ
http://aasj.jp/news/watch/2281

2)遺伝子治療の現状と課題 PMDA科学委員会
https://www.pmda.go.jp/files/000156275.pdf

3)遺伝子治療の再来 北青山Dクリニック がん遺伝子治療センター
https://cancergenetherapy-dclinic.info/knowledge/treatment/457/

4)ジェニファー・ダウドナ、サミュエル・スターンバーグ著 櫻井裕子訳 「クリスパー 究極の遺伝子編集技術の発見」文藝春秋社(2017)

5)http://morph.way-nifty.com/grey/2016/11/post-4728.html

6)http://morph.way-nifty.com/grey/2016/12/post-1ebc.html

7)Jack W. Szostak , Terry L. Orr-Weaver , Rodney J. Rothstein , Franklin W.
Stahl., The double-strand-break repair model for recombination., Cell Vol. 33,
Issue 1,  pp. 25-35 (1983)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0092867483903318

8)黒沢綾、足立典隆 ヒト細胞における DNA 二本鎖切断の修復 Isotope News  2014 年 5 月号 No.721、 pp.
8-14
https://www.jrias.or.jp/books/pdf/201405_TENBO_KUROSAWA_ADACHI.pdf#search=%27%E9%BB%92%E6%B2%A2%E7%B6%BE%E3%80%81%E8%B6%B3%E7%AB%8B%E5%85%B8%E9%9A%86%27

9)Philippe Rouet, Fatima Smih and Maria Jasin., Expression of a Site-Specific
Endonuclease Stimulates Homologous Recombination in Mammalian Cells., Proc.
NAS., Vol. 91, No. 13, pp. 6064-6068 (1994)
https://www.jstor.org/stable/2365114

10)Ishino, Y., Shinagawa, H., Makino, K., Amemura, M., and Nakata, A. (1987)
Nucleotide sequence of the iap gene, responsible for alkaline phosphatase
isozyme conversion in Escherichia coli, and identification of the gene product.
J. Bacteriol. 169, 5429-5433.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC213968/pdf/jbacter00202-0107.pdf

11)Francisco J. M. Mojica, Cesar Díez-Villaseñor, Elena Soria, Guadalupe
Juez., Biological significance of a family of regularly spaced repeats in the
genomes of Archaea, Bacteria and mitochondria., Molec. Microbiol., vol. 36,
Issue 1, pp. 244–246 (2000)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1365-2958.2000.01838.x/full

12)Jansen R, Embden JD, Gaastra W, Schouls LM.,  “Identification of genes
that are associated with DNA repeats in prokaryotes”. Mol Microbiol vol. 43 (6):
pp. 1565–1575. (2002) doi:10.1046/j.1365-2958.2002.02839.x. PMID 11952905

13)Bolotin A, Quinquis B, Sorokin A, Ehrlich SD., Clustered regularly
interspaced short palindrome repeats (CRISPRs) have spacers of extrachromosomal
origin., Microbiology. vol. 151(Pt 8): pp. 2551-2261. (2005)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16079334

14)Makarova KS, Grishin NV, Shabalina SA, Wolf YI, Koonin EV., A putative
RNA-interference-based immune system in prokaryotes: computational analysis of
the predicted enzymatic machinery, functional analogies with eukaryotic RNAi,
and hypothetical mechanisms of action.,  Biology Direct, 1:7, (2006) 
doi:10.1186/1745-6150-1-7
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16545108

15)Rodolphe Barrangou et al., CRISPR Provides Acquired Resistance Against
Viruses in Prokaryotes., Science vol. 315, Issue 5819, pp. 1709-1712
(2007)
DOI: 10.1126/science.1138140
http://science.sciencemag.org/content/315/5819/1709.long

16)Brouns SJ et al., Small CRISPR RNAs guide antiviral defense in
prokaryotes., Science. vol. 321 (5891): pp. 960-964. (2008)  doi:
10.1126/science.1159689.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18703739

17)Jinek M, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E., A
programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity.,

Science vol. 337(6096):  pp. 816-821. (2012)  doi: 10.1126/science.1225829.
Epub 2012 Jun 28.

18)http://rna.berkeley.edu/people.html

19)新海暁男  CRISPR-Casシステムの構造と機能 生物物理 vol. 54(5),pp. 247-252(2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/54/5/54_247/_pdf

20)H Wang et al., One step generation of mice carrying mutations in multiple
genes by CRISPR/Cas-mediated genome engineering., Cell vol. 153 pp. 910-918
(2013)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3969854/

21)Yanpeng Wang et al., Simultaneous editing of three homoeoalleles in
hexaploid bread wheat confers heritable resistance  to powdery mildew., Nature
Biotechnology, vol. 32, pp. 947-952  (2014 ) DOI:
10.1038/nbt.2969

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2019年4月17日 (水)

プリンターの死

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Canon PIXUS MP980 というプリンター(写真)を10年以上使ってきましたが、ついに6C10という死の宣告が出て、動かなくなってしまいました。純正インクを全部セットしたばかりで、昨日まで元気だったのにショックです。

https://kidukilife.net/pc/canon6c10/

世の中には執念深い人がいて、このメッセージ「6C10」を消去して、機械はまだ正常だと誤解させるプログラムを考えた人もいるようで試してみましたが、それでも6C10は消えず。諦めました。

修理には1万円以上かかるようなので、買い換えざるを得ないかもしれません。ここ何年かのプリンター製品は進化しているというより、使い勝手が悪くなって退化しているような気配もあるので困ります。

https://hiroshi10010269.com/4768/

https://review.kakaku.com/review/K0000941959/ReviewCD=1210720/

プリンターの葬儀には、市役所に電話して廃棄の日程を決める、コンビニで粗大ゴミチケット(500円)を購入して貼り付ける、指定のゴミ置き場に指定日・指定時間に出すなどの作業が必要で、やるしかありません。

パソコンもそろそろウィンドウズ10に移行しないといけませんし、ときどき落ちるようになったので心配の種はつきません。

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2019年4月14日 (日)

バルサ 新戦力でウェスカとドロー

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ミッドウィークはオールドトラッフォードで、世界での人気をバルサと争うマンUと死闘。前半にスアレスのヘディングがショーの肩に当たってゴール。この有難い1点を守り切って、バルサはアウェイでの貴重な勝利を勝ち取りました。

テア・シュテーゲン、ピケ、ラングレのGK・CBは絶賛に値します。

https://www.youtube.com/watch?v=Sbxw5MqSdYw

そして土曜日のリーガは、カタルーニャのお隣のアラゴンでウェスカと対戦。マンUとの激戦で疲弊したバルサは控え選手総出場のシフトです。

試合は見るべきものもなく0:0のエンパテで終わりましたが、若い選手の顔とプレイが見られたのは新鮮でした。このなかから次世代のバルサを背負う選手が出てくることを期待します。

顔を覚えるための写真を貼っておきます。ムリージョはコロンビア、ヴィダルはチリ、ワゲはセネガルの選手です。その他スペイン・ドイツ・フランス・ブラジルの選手もいて国際色豊かでした。

アレニャーもこのメンバーでやるのははじめてとあって、全くまとめられません。個々の判断と技術で局面をつくっていくという原始的なサッカーでは、さすがに勝てませんでした。ただバルサにはめずらしい3バックを、初めてのメンバー(ウムティティ・ムリージョ・トディボ)で組んで0点に抑えたのはよかったかな。

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トディボはとてもスポーツ選手とは思えない柔和な顔です。リキ・プッチは素晴らしいイケメンで、活躍すれば人気が出そう。デンベレはどうみてもコメディアンの顔。

 

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2019年4月11日 (木)

アグーチ (agouti) 遺伝子の機能

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猫の縞模様を発現する遺伝子はいろいろ知られています。いわゆる縞模様を形成するマックレル遺伝子、アメショーのようなクラシックタビーの形成に関与する遺伝子、スポット(斑点)をつくる遺伝子、アビシニアンやソマリのような縞模様を部分化するティックド遺伝子、そして様々な縞模様に関与するアグーチ遺伝子などがあります。

アグーチの語源はアグーチという天竺ネズミの種の名前で、写真のようにフェオメラニン(橙)とユーメラニン(黒)のまだら模様の生物です。この動物の体毛は写真の右下の挿入図のように、1本の毛の一部ではフェオメラニン優勢、一部はユーメラニン優勢となっており、1本の毛がまだら模様になっています。猫を含む他の動物でも、アグーチ遺伝子型がAAまたはAaとなっている個体はこのような毛を持っています。うちのサラとミーナも持っています。

ところがこの写真の動物を見ても、ヒゲ(Vibrissa)はアグーチになっておらず黒一色です。これが不思議です。私はヒゲがアグーチになっている生物をみたことがありません。サラとミーナもヒゲは白一色でアグーチにはなっていません。猫はすべて白ヒゲかというとそんなことはなくて、私はペットショップで黒ヒゲの猫を見たことがあります。

確かにヒゲの毛根は、ヒトのようにその感覚毛としての機能を失っている種を除いて、すべて血液のプールのような個室に収納されていて、そこに神経が伸びてきて動きを感知するようにできているので、普通の毛根とは異なります。しかしその構造の違いとアグーチになるかならないかはさっぱり結びつきません。

アグーチ遺伝子は毛と脳で発現していることが知られていて、毛ではアグーチカラーを誘導する作用があることがわかっていますが、脳では何をしているのでしょうか? ヒトでは体毛ではアグーチ遺伝子の発現がなく、したがって縞模様のヒトは存在しませんが、脳では発現しているようで遺伝子がないわけではありません。

最近理研では野生に近いマウスを使って、クリスパー/キャス9という技術でアグーチ遺伝子を無効化すると、性格がおとなしくなり、まるで実験用マウスのようにヒトを避けないようになったという研究結果を得たそうです。さらに調べると、このマウスの中脳でドーパミントランスポーター遺伝子の発現が上昇していることがわかりました。これが性格の変化に関係しているようです。

http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170214_3/

ただ猫の場合、アグーチ遺伝子が発現していない(aa)黒猫などが特に人なつこいという結果は得られていません。

https://sippo.asahi.com/article/11928822

アグーチ遺伝子がつくるタンパク質は研究用に販売されています。脳に注入すると食欲が増進するようです。

https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/339-43661.html

 

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2019年4月 8日 (月)

北総の桜 2019

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北総の桜もようやく満開となりました。今年は1週間以上東京より遅い満開です。私達にとっては毎年のことですが、知らない人を案内すると歓声を上げたりするので、それなりに立派な並木道だと思います。上野の桜などに比べると、木が若いので勢いがあります。

ただあまり配慮なく、近接した位置に街灯を配置したため、桜で街灯が隠されるうえにライトアップ効果もゼロです。

私のフェイバリットである熊木杏里も自作の Love letter~桜~ という名曲をリリースしていますが、コブクロの「桜」のカバーも素晴らしいと思います。

熊木杏里 - 「桜」(コブクロ 「桜」 のカバー)
https://www.youtube.com/watch?v=NAnBxv8hJU0

熊木杏里 - Love letter ~桜~
https://www.youtube.com/watch?v=KNmNITPIJYE

あいみょんも底知れぬパワーで、「ハルノヒ」というバラードを歌う
https://www.youtube.com/watch?v=pfGI91CFtRg

昔北千住で草野球をやったことがあります。草野球といってもちゃんとユニフォームにスパイクで、めちゃくちゃに気合いを込めて。ただ荒川の河川敷がぐちゃぐちゃに湿っていて守りにくいのなんの。

 

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2019年4月 4日 (木)

やぶにらみ生物論124: ドーパミン

ドーパミンは前記事「アドレナリンとノルアドレナリン」でも示したように、生体内ではチロシンからドーパ(L-ドーパ)を経て合成されますが(1、図1)、これ以外のマイナーな別経路も発見されています(2)。いずれにしてもアドレナリン生合成のための中間生成物という位置づけであって、ドーパミン自体が生理的に重要な作用をもっているとは、20世紀半ばまでは考えられていませんでした。

 

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モンタギュー(図2)は人を含む数種の生物の脳などの組織にドーパミンが存在し、これはアドレナリンやノルアドレナリンのように季節によって変動することはないと報告しました(3)。この1957年の論文がドーパミン自体の意義に関する最初の報告とされています(4)。カールソン(図2)らもモンタギューに遅れて報告していますが、彼らの報告にはモンタギューの論文は引用されていません(5、6)。データもきちんと示されておらず、おそらく慌てふためいて学会アブストラクトのような論文を書いたものと思われます。これはフェアーな態度ではありませんが、その後カールソンはドーパミンなど神経伝達物質の機能に関して詳細な研究を行ない、2000年にノーベル生理学医学賞を受賞しました(7)。彼が1994年に日本国際賞を受賞した際の講演要旨が日本語で読めます(8)。

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ファルクとヒラープはファルク・ヒラープ蛍光法というモノアミンを高精度で検出する方法を開発し(9、図2)、モノアミンが神経伝達物質であることの証明に絶大な貢献をしました。ノーベル委員会もカールソンにノーベル賞を授与する際に「It was not Arvid Carlsson who had discovered that dopamine is a signal substance in the central nervous system」と述べているそうです(10)。ファルク・ヒラープ法による研究の実例をひとつ引用しておきます。この論文では、ジュウシマツの膵臓に3種のモノアミン含有細胞が存在することが示されています(11)。

ホーニケヴィツはパーキンソン病の原因が、脳におけるドーパミンの欠乏によるものであることを証明しました(12、13、図2)。またL-ドーパの投与によって症状が改善されることを示しました(14)。ドーパミンは脳-血液関門を通過できませんが、L-ドーパは通過できるので、脳にドーパミンを与えたいときには前駆体であるL-ドーパを投与します。

ドーパミンもアドレナリンやノルアドレナリンと同様、その受容体は7回膜貫通型3量体Gタンパク質共役型受容体(GPCR=GTP-binding protein-coupled receptor )です(15、16、図3)。なので何が起こるかという引き金はGタンパク質のαサブユニットで、ドーパミン受容体の場合、αサブユニットがs型の場合アデニル酸シクラーゼの活性を上昇しさせることによってcAMP 濃度が上昇し、i型の場合アデニル酸シクラーゼの活性を抑制し、フォスフォジエステラーゼの活性を上昇させることなどによって cAMPが分解されるなどの反応で、その濃度は低下します。

なおドーパミンのトランスポーターは特異性の低いモノアミントランスポーターとされているので、これについては別項で取り扱うことにします。

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ドーパミンの受容体にはD1型~D5型があり、このうちD1・D5型にはGαsが結合しており、D2~D4型にはGαiが結合しています。ドーパミンが受容体に結合することによって、これらのGタンパク質が細胞質にリリースされて機能を発揮します。すなわちドーパミン自体がどのような生化学反応のカスケードがおこるべきかを指定するわけではなく、受容体が指定するのです。ですからどの部域の細胞がどんなGPCRを持っているかというタイプの分布の問題が大きな意味をもつことになります(図4、図5)。

これはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの合成経路が直接繋がっていることを考えれば当然とも言えます。つまりアドレナリンを大量に合成すると、必然的にドーパミンとノルアドレナリンも大量に合成することになってしまうからです。

Gαsは受容体タンパク質のC末に、Gαiは5番目と6番目の膜貫通部位の間で細胞質に露出しているループの部分に結合していることがわかっています(図4)。ドーパミンが受容体に結合するとGαは結合しているGDPをGTPに変換し、Gβ・Gγから遊離してフリーとなり、細胞質内を移動して機能を行使します。

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GPCRはヒトゲノムのなかに800種類以上の遺伝子が存在し、中には機能がまだわかっていないものもあります(16)。Gタンパク質の中でGαだけが機能を果たしているのではなく、Gβ・Gγもそれぞれ機能を果たしていると思われますが、αタイプと比べるとまだ未知の部分が多いようです。

脳のドーパミン受容体がそれぞれどんな役割を果たしているかのリストを Anmol Bhatia と Abdolreza Saadabadi が表にまとめているので(17)、そのまま図5に示しますが、どんな手順で、どんな経路を経てこのような機能に繋がっているのかは脳科学の中心課題のひとつでしょう。

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Gαsの機能として最もよく知られているのは、アデニル酸シクラーゼを活性化してcAMPの濃度を上昇させることです(図6)。cAMPが細胞外からの情報伝達物質のメッセージによって細胞内の生化学的プロセスを変動させる、いわゆるセカンドメッセンジャーの役割を果たしていることを明らかにしたエール・サザランドは1971年にノーベル生理学医学賞を受賞しました。彼は貧しい農家の出身で出身大学も無名ですが、運良くセントルイスのワシントン大学の大学院でカール・コリ教授の薫陶をうけることによって未来が開けました(18)。第二次世界大戦では軍医を務めましたが、終戦後も医師にはならず研究の道に進み、cAMPの発見と機能の解明に成功しました。彼はノーベル賞受賞講演の中で「Cori convinced me, not so much by anything he said so much as by his example, that research was the right direction for me to take」と述べています(18)。

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アデニル酸シクラーゼ(またはアデニリルシクラーゼ)は12回膜貫通タンパク質で、N末・C末ともに細胞質側に出ています。アデニル酸シクラーゼには多くのアイソフォームがあり、それぞれGαsで活性化されたり、Gαiで抑制されたりするようです(19)。

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cAMPの作用で最もよく知られているのはプロテインキナーゼAの活性化です。Gタンパク質の影響でアデニル酸シクラーゼの活性が高まり、cAMPの濃度が上昇すると、不活性複合体を形成しているプロテインキナーゼAの制御タンパク質にcAMPが結合して、活性化されたプロテインキナーゼAが複合体から分離してさまざまなタンパク質のリン酸化をおこないます(20、図8)。ただ複合体が解体されるほどcAMPの濃度が高くない場合でも、ある程度の濃度に達すると複合体を形成したまま活性を発揮するとされています(21)。

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さて私達はドーパミンという部屋の扉を開いたばかりですが、ドーパミン研究の歴史とは切っても切れない関係にあるパーキンソン病について、最後にもう少し触れておきます。パーキンソン病は19世紀の初頭にジェームズ・パーキンソンによって報告された病気で、ふるえ、動作や姿勢の異常、筋固縮などがその症状です。20世紀の半ば以降になって、前記したホーニケヴィッツやその他の研究者の努力により、その原因が中脳黒質のドーパミン産生細胞の減少によることが明らかとなってきました(22)。実際L-ドーパの投与により症状は改善されます(23)。ただ長期にわたって投与すると、効かなくなったり逆に悪化する恐れもあります(23)。ドーパミンD1受容体を介する情報伝達の消失が、パーキンソン病の症状の一つである「無動」を引き起すという報告があります(24)。

パーキンソン病の存在によって、ドーパミンの機能が明らかになったという側面はあります。ただそれは入口と出口がわかったというだけで、途中のメカニズムはまだまだわからない点が多いと思います。判明した部分についてはこのあとまた取り上げる機会があると思います。このほか昔からドーパミンが統合失調症にかかわっているという説(ドーパミン仮説)がありますが、この関係についてもまだまだわからない点が多く残されています(25)。このブログでも宿題として残しておきましょう。

参照

1)やぶにらみ生物論123: アドレナリンとノルアドレナリン
http://morph.way-nifty.com/grey/2019/03/post-3143.html

2)ドーパミン:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%9F%E3%83%B3

3)K.A. Montagu, Catechol Compounds in Rat Tissues and in Brains of Different Animals. Nature vol.180, pp.244-245 (1957) 
https://www.nature.com/articles/180244a0

4)Kathleen Montagu: 
https://en.wikipedia.org/wiki/Kathleen_Montagu

5)A. Carlsson, M. Lindqvist, T. Magnusson., 3,4-Dihydroxyphenylalanine and 5-Hydroxytryptophan as Reserpine Antagonists., Nature, vol. 180, p.1200 (1957)

6)A. Carlsson et al., On the presence of 3-hydroxytyramine in brain. Science vol. 127, p. 471 (1958)
http://science.sciencemag.org/content/127/3296/471.1.long

7)The novel prize. Avid Carlsson Biographical. 
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2000/carlsson/biographical/

8)1994年 日本国際賞受賞記念講演会 脳におけるドパミンの研究: 過去、現在及び将来
アーヴィド・カールソン博士
http://www.japanprize.jp/data/prize/summary/1994_j.pdf

9)Falck B, Hillarp N-Å, Thieme G, Torp A.,  "Fluorescence of catechol amines and related compounds condensed with formaldehyde" .   J. Histochem. Cytochem. vol. 10 (3): pp. 348–354. doi:10.1177/10.3.348 (1962)

10)Nils-Åke Hillarp
https://en.wikipedia.org/wiki/Nils-%C3%85ke_Hillarp

11)Katsuko KATAOKA, Keisuke SHIMIZU and Junzo OCHI., Fluorescence Histochemical Demonstration of Monoamine-Containing Cells in the Pancreas of the Finch, Uroloncha striatavar. domestica. A Preliminary Study., Arch. histol. jap., Vol. 40, No. 5, pp. 431-433 (1977)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aohc1950/40/5/40_5_431/_pdf

12)Hornykiewicz O. Topography and behaviour of noradrenaline and dopamine (3-hydroxytyramine) in the substantia nigra of normal and Parkinsonian patients.(In German) Wien Klin Wochenschr 1963;75:309-312.

13)Hornykiewicz O. Dopamine (3-hydroxytyramine) and brain function. Pharmacol Rev vol. 18: pp. 925-964. (1966)

14)Oleh Hornykiewicz., Some Thoughts on Memories., The History of Neuroscience in Autobiography. Vol. 4, Ed. L. R. Squire, Academic Press (2004)

15)Missale C, Nash SR, Robinson SW,  Jaber M, Caron MG., Dopamine receptors: from structure to function., Physiol Rev. vol. 78(1): pp. 189-225. (1998)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9457173

16)足立 直子、齋藤 尚亮:  脳科学辞典 Gタンパク質共役型受容体
こちら

17)https://www.statpearls.com/kb/viewarticle/20660/

18)Earl W. Sutherland., Hormon Action (Nobel Lecture), December 11, 1971
https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/sutherland-lecture.pdf

19)https://en.wikipedia.org/wiki/Adenylyl_cyclase

20)https://courses.washington.edu/conj/gprotein/cyclicamp.htm

21)https://en.wikipedia.org/wiki/Protein_kinase_A

22)こちら

23)Neuroinfo Japan  脳神経外科疾患情報ページ
https://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/502.html

24)南部篤、知見聡美: ドーパミン神経伝達は、大脳基底核における運動情報伝達と、運動発現に不可欠
-ドーパミンD1受容体を介する情報伝達の消失が、パーキンソン病の「無動」を引き起す-
https://www.nips.ac.jp/release/2015/10/_d1.html

25)有波忠雄 脳科学辞典 ドーパミン仮説(統合失調症)
こちら

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2019年4月 2日 (火)

サラとミーナ215: パソコン画面を見るミーナ

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ミーナもサラたまに膝を欲しがることがあります。

何か一体感があっていいですね。

下町の飲食店に行くと、たまにお客さんの膝に座るのが好きなネコがいます。たとえそれがはじめてのお客さんであってもです。私の膝で眠ってしまったネコもいました。食べにくくて困ります。

ここしばらく@ニフティーはココログの編集システムの変更に伴うバグフィックスを行っているようですが、それが遅々として進みません。まあどこかに頼んでやってもらっているのでしょうが、日本のIT関連会社のレベルの低さにもあきれるものがあります。

中国に抜かれたなどと言う前に、自滅している感が強いです。なんとかかんとかつじつま合わせてブログを編集していますが、綱渡り感がなくなりません。

早くなんとかしてくれえ🏥🏥🏥


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2019年4月 1日 (月)

新元号「令和」にはスターリニズムの臭気がする

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「令」というのは国語辞典によれば  命令 布告 法令、いいつけ。 などという意味のようです。だとすれば、令和というのは政府の命令によって国家の平和がたもたれるという意味に解釈できます。これにはスターリニズムの臭気が感じられます。安倍政権らしいといえば「らしい」。赤松広隆はこれに抵抗しなかったのでしょうかね?

ほほう 石破茂も「令」という字に違和感を感じるそうな!
https://johosokuhou.com/2019/04/02/13481/

外国のマスメディアでは、日本の右傾化を示す表現だとされています
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190401-00000018-jct-soci

しかるに日本のマスメディアは語感がいいとか、万葉集からの引用は望ましいなどと諸手を挙げての賛成とは驚きです。

 

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2019年3月29日 (金)

西島三重子 on web


ワーナー・パイオニア時代

池上線
https://www.youtube.com/watch?v=9GmXJdPz2QM

池上線(水森かおり)
https://www.youtube.com/watch?v=a8YjXlcU7eU

ラヴソング
https://www.youtube.com/watch?v=qYawdk_m0cA

口笛を吹かないで
https://www.youtube.com/watch?v=Ock2wY2XbTM

かげろう坂
https://www.youtube.com/watch?v=9lXoV9dILio

水色の季節の風
https://www.youtube.com/watch?v=e7elduTJot8

リルケの詩集
https://www.youtube.com/watch?v=fPtQMS7BIbE

泣きたいほどの海(堀江美都子・selfcover 西島三重子)
https://www.youtube.com/watch?v=KVcJYyrysf4
https://www.youtube.com/watch?v=sEyOtFWiqow

仮縫い(高見知佳・selfcover 西島三重子)
https://www.youtube.com/watch?v=KxBCTfvdamY

流されて(園まり)
https://www.youtube.com/watch?v=3XbCmlg3tHM

星めぐり
https://www.youtube.com/watch?v=34t_VTW07Zc

いそしぎ
https://www.youtube.com/watch?v=0FTtMYSpZF4

目白通り
https://www.youtube.com/watch?v=Cb3KqZ8mIUk

千登勢橋
https://www.youtube.com/watch?v=0TYECCELT6c

メランコリー・イエスタデイ
https://www.youtube.com/watch?v=hRMxnpJFzj8

かもめより白い心で
https://www.youtube.com/watch?v=8UbQ7wT9uN8

セザンヌの絵
https://www.youtube.com/watch?v=vfCtCp6Krn8

----------------------
提供曲:

冬のかもめ(石川ひとみ)
https://www.youtube.com/watch?v=S-tHcIOH9D0

アスファルトの上の砂(沢田聖子)
https://www.youtube.com/watch?v=1uxz7f2hDmM

星空の恋人(沢田聖子・selfcover 西島三重子)
https://www.youtube.com/watch?v=tJQw6_WASYk

うぬぼれワルツ(木の実ナナ)
https://www.youtube.com/watch?v=xk9B_0L5hPM

あいつのハンググライダー(かおりくみこ)
https://www.youtube.com/watch?v=3lqhUcmYauI

折り返し悲しみ行き (小柳ルミ子)
https://www.youtube.com/watch?v=bQhTAunXyZU

----------------------
テイチク時代

Imagination canvas
https://www.youtube.com/watch?v=7cdNRmqB4zU

ロンリーガール
https://www.youtube.com/watch?v=i7L6ix0DuMQ

天体望遠鏡
https://www.youtube.com/watch?v=fjMzTGreNiE

五年目の夏
https://www.youtube.com/watch?v=jME73_dMbR0

Jealousy
https://www.youtube.com/watch?v=SH_sn__dCq0

----------------------
東芝EMI時代

愛は限りなく (cover)
https://www.youtube.com/watch?v=sfkdQ1RhOA8

Amar Amando (cover)
https://www.youtube.com/watch?v=30Nda5UtqLU

冬なぎ
https://www.youtube.com/watch?v=H60uso4xpDA

ラストワルツ
https://www.youtube.com/watch?v=qY6mCEA8yXc

そうよ smile again
https://www.youtube.com/watch?v=YvzFbk7R60c

SEQUENCE OF MEMORIES~思い出のページ 
https://www.youtube.com/watch?v=kaAtY_Bjdc8

泣かないわ
https://www.youtube.com/watch?v=fDgnIbRpiXk

冬のカルナバル
https://www.youtube.com/watch?v=KI0GbDxfYU0

夜間非行
https://www.youtube.com/watch?v=Fh3UWa6DdPs

エピローグ
https://www.youtube.com/watch?v=C5qa2OE4hpk

----------------------
~現在に至る

わたしが残していくもの
https://www.youtube.com/watch?v=hw0A1gNoR3E

おひさまのたね
https://www.youtube.com/watch?v=VM8fTFxHkFk

飛鳥坂(水森かおり)
https://www.youtube.com/watch?v=nTQrmjps39k
https://www.youtube.com/watch?v=siPeaVIWkeg

池上線ふたたび~New Version~
https://www.youtube.com/watch?v=NsJgqd68qeM

目黒川 こちら
https://www.youtube.com/watch?v=IRzfd7E4Y9U


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2019年3月27日 (水)

インバル-都響 ショスタコーヴィチ交響曲第5番@東京文化会館2019・3・26

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お花見シーズン真っ盛り(といっても北総ではまだほとんど咲いていませんが)の上野で都響の演奏会です。指揮者はインバル、コンマスは矢部ちゃん、サイドは山本さんの豪華メンバーです。


私はショスタコーヴィチ交響曲第5番にはスターリンに対する怨念が込められていると思っています。政治家に作品に対していろいろケチをつけられたら、作曲家として頭にくるのは当たり前です。それでも器楽曲には歌詞がないので、反逆の証拠はありません。私は下のNHKの番組を見て、スターリンはそれを百も承知でショスタコーヴィチの音楽を利用しようとしていたと確信しました。


死の街を照らしたショスタコーヴィチ交響曲第7番
http://morph.way-nifty.com/grey/2019/01/post-5f66.html


ブラームスの悲劇的序曲は「悲劇」を感じさせないくらい、堂々たる押し出しで終了。シェロモはブロッホの作品ですが、ヴァイオリンコンチェルトのようなエンターテインメントではなく、ユダヤ人の歴史を語る非常にシリアスな内容で、襟を正して聴きました。


ソリストのリプキンはとてつもないチェロの名手で、今まで聴いたチェリストの中でも最も強いインパクトがありました。名古屋ではお客さんが少なくてご機嫌ななめだったようですが、今日はほぼ満席で上機嫌のようでした。最後など「うまくいった、どんなもんだい」という感じなのか、笑いながら弾いていました。


後半のショスタコーヴィチは、さすがに都響の金看板かつショスタコ博士のインバルの指揮ということで、ここでやらなくてどうするという全力演奏でした。冒頭から一気に引き込まれます。ショスタコーヴィチという人は、革命や戦争の血みどろの世界の中でも、人間はユーモアやエンターテインメントを忘れてはならないという考えで、このシリアスな交響曲第5番でも第2楽章は優雅なバレエを鑑賞しているような楽しい音楽を提供してくれます。


インバル-都響入魂の第3楽章の磨き抜かれたスピリチュアルな音楽は白眉でした。そして爆裂する第4楽章へなだれ込みます。強烈なトゥッティを聴いているうちに体温が上昇してきて血管が崩壊しそうでした。


開始前に少し上野公園を散歩しました。しだれ桜は満開でした。
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都響も提灯をだしていました。
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桜並木はかなり桜が老朽化して強めの剪定を行なったらしく、しょぼい感じでした。
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花見で大行列の並木道など知らぬ顔で、ハシブトガラスがえさをさがしていました。
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2019年3月26日 (火)

JPOP名曲徒然草194: 「もっとje-vous-aime」 by 石川秀美

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「もっとje-vous-aime」 歌:石川秀美、作詞:兼松正人、作曲:中崎英也、編曲:矢賀部竜成 BMG VICTOR R32H-1084 (1989)
石川秀美さんは言わずと知れた薬丸裕英氏の奥様。有名芸能人同士のできちゃった結婚ということで、当時はかなり騒がれました。彼女は結婚後芸能界をリタイアしたので、このプレシャスというアルバムは石川秀美最後のアルバムとなりました。「もっとje-vous-aime」 はシングルカットもされましたが、このアルバムに収録されています。個人的には彼女の最高傑作だと思います。この曲を歌っている映像が YouTube にアップされているとはびっくりしました。  LoMN Annex さん有難う。
https://www.youtube.com/watch?v=4RDVgV7hVlA


当時23才だったそうですが、彼女の女性としての魅力がよく表現されいると思います。直立不動なのは妊娠していたからなのかな? アルバム(中古品)はまだアマゾンなどで入手できます。


 


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2019年3月24日 (日)

ゲノム編集という言葉は不適切

そもそも編集と言うからには、削除・修正・追加という3つの作業ができなければいけません。ところがゲノム編集では削除しかできないのですから、編集という言葉を使うことは不適切です。
この技術は人間が発明したのではなく、細菌がそのDNAに侵入してくるウィルス(バクテリオファージ)を排除するために発明したものであり、人間はそれを利用させてもらっただけです。もともと進入してくる敵対遺伝子を無効にするためのメカニズムですから、それで特定の好ましくない遺伝子を好ましい遺伝子に改善したり、好ましい遺伝子と入れ替えたりすることはできません。ですからゲノム編集というのは間違った表現で、正しくは遺伝子無効化と言うべきでしょう。
そんなことは百も承知であえてゲノム編集という言葉を使っているのは、こ分野の研究者のいかがわしい臭気を感じさせます。このような連中ですから、科学的真実を隠蔽しても、大衆受けや商業利用の推進を優先するということはあり得ることでしょう。孔子の言葉を思い出します。
-------------------------------
孔子はある小さな国の政治をやってくれないかと頼まれました。しかしその国には予算は少なく、軍隊も弱い状態でした。弟子である子路は心配して、孔子に「そんなところで、先生は何をなさるのですか」とききました。すると孔子は
必也正名乎。名不正則言不順、 言不順則事不成。
(かならずや名をたださんか。名正しからざれば則(すなわ)ち言(げん)順(したが)わず、言順わざれば則ち事成らず)
という有名な言葉で答えました。この意味は「私はまず言葉を正しく定義する。もし言葉の定義が正しくなければ、何を言っているか意味がわからない。何を言っているかわからなければ、何事もできなくなってしまう」 
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http://morph.way-nifty.com/lecture/2017/12/post-7e2f.html
http://morph.way-nifty.com/lecture/2017/12/post-7b78.htm

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2019年3月23日 (土)

報道特集:ゲノム編集

本日TBS報道特集でゲノム編集の特集をやっていました。
もちろんゲノム編集は遺伝子組み換えとは異なり、品種改良と基本的には同じです。
しかしそのスピードが非常に速いので、一気に多数の製品がつぎつぎと出現するため、品種改良のようにのんびりと評価できないという問題があります。
狙った遺伝子がつぶれるだけなのかどうかというのも保障はありません。
最も危険なのは自然の突然変異と区別できないから野放しにするしかないと言っている学者で、それは警察が発売した企業を調査すればわかることであり、ごまかされてはいけません。ですから当然ゲノム編集でつくられたものであるという表示は意味があり、検証も可能です。番組によると、現在政府は表示しなくてよいという方向に向かっているらしく、これは問題です。
私は食料品に関しては、医薬品ほど厳密ではなくて良いので、メーカーが動物実験で安全性を確認したあと、試食を希望する一定のユーザーに無料でサンプルを提供し、安全性に関するテストを厚労省あるいは傘下の独立行政法人の管理のもとに実施すべきであると思います。
http://morph.way-nifty.com/lecture/2017/12/post-7e2f.html
http://morph.way-nifty.com/lecture/2017/12/post-7b78.html
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ココログの管理プログラムの変更に伴って、ブログの一部の写真が消えるという事故が発生しています。はやく何とかして欲しいと思います。

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2019年3月21日 (木)

ココログが工事中のようです

ココログの工事が長引いているようで、うまく管理ができていません。
しばらく開店休業になりそうです。

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ノイシュバンシュタイン城
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2019年3月17日 (日)

インバル-都響 ブルックナー交響曲第8番@サントリーホール 2019/03/17

Img今日の都響は1曲だけのコンサートです。その曲はブルックナーの交響曲第8番(第2稿ノヴァーク版)。指揮インバル、コンマスは山本さんで(なので? 天気は快晴)サイドはマキロン。

チケットは完売です。席に着くとうしろで怒声が・・・? 盲導犬連れのおじさんがスタッフに罵声をあびせています。どうも案内する席を間違えたらしいです。都響ファンはたいてい年間指定席(圧倒的に安い)を購入するので、いつも同じ席なのですが、今日は都響スペシャルで別売となり、いつも通りには行きません。彼の盲導犬はいったんステージ前のスペースに出て、そこから上にあがって席に着くように訓練されているので、いつもと違った道順で案内されると訳がわからなくなってしまいます。

向かって右からチェロ~ヴィオラ~2Vn~1Vnの並びです。マーラーと違って、ブルックナーの時はインバル翁は、あまり策を弄しません。リズムが垂れないようにあおるくらいでしょうか。ずっとうなりながらの指揮です。彼も団員も非常に乗っている感じです。私は1Vnの前の席でしたが、前の4人は非常に張り切ってビシバシ弾いている感じですが、3列目のふみちゃんと美里は第3楽章などでは非常にやわらかく情感豊かな演奏で、柔軟な都響のサウンドには絶対に欠かせない2人だということを再認識しました。

実に爽快な演奏でした。80才をとっくに越えているのに、ずっと立って指揮していました。終了すると絶大なる拍手で、照明点灯後も2回のオールスタンディングカーテンコール。2回目は山本さんをつれて出てきました。

こんな曲です
https://www.youtube.com/watch?v=0ytSj6mSgJg

インバル
https://www.youtube.com/watch?v=oszDPk7Ksgg

インバル都響
https://www.youtube.com/watch?v=dLdPoW-ItwU

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2019年3月14日 (木)

サラとミーナ214: 春の陽光のなかで 

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前の日にはそれこそ殴り合いの大げんかをしていたサラとミーナですが、1日経つともうこんなに仲良しになっているという不思議。ずっと猫を飼っている私にもその心の動きがわかりません。春の陽光につつまれて、窮屈そうではあってもゆったりと過ごすサラとミーナです。

こうなるには2つのパターンがあって、サラが休んでいるときにミーナがくるのは、サラを舐めたくなるというのが理由なのですが、ミーナがいるときにサラが押しかけてくるのは、ややテリトリーをおかされたという気分があるようです。たいていミーナを追い出そうとします。ときにはミーナが居座ってそのまま2匹になることもありますが、喧嘩になったり、ミーナがいったん去る場合が多いと思います。しかしミーナはすぐに戻ってきて、最初のパターンになります。

最近団地に1本だけアセビの灌木があることに気が付きました。いま花を付けています。

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アセビはグラヤノトキシンという毒を持っている毒草です。グラヤノトキシンは、最近私が関心を持っている神経の活動に影響を持つ物質です。グラヤノトキシンは神経細胞の細胞膜に埋め込まれているナトリウムチャネルの活動を阻害します。ナトリウムチャネルが働かないと脱分極が起こらず、神経細胞は機能を果たすことができません。

高山にシカが増えると、シカが食べない毒草のバイケイソウばかりになるのは八ヶ岳で実感しましたが、奈良にはやはりシカが食べないアセビが多いという話を聞いたことがあります。それにしてもシカや他の野生動物はどうして毒草を識別できるのでしょうか? ヒトは進化の過程で、重要な能力を失っています。

https://en.wikipedia.org/wiki/Grayanotoxin

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2019年3月11日 (月)

3月11日のマーラー ダニエル・ハーディング

Harding

ダニエル・ハーディングがマーラーの交響曲第5番のライヴ・レコーディングをやって、ハルモニア・ムンディから発売しました。これがすこぶる評判いいそうで、アマゾンのカスタマーレビューやアリアCDの松本社長も絶賛しています。これはスウェーデン放送交響楽団との演奏ですが、ウィーンフィルとの演奏がYouTubeで聴けます。肩肘張らない自然体の演奏で、全てのフレーズでマーラーと対話できるような感じです。ならばということで私も発注しました。到着するのが楽しみです。

Mahler - Symphony No. 5 - Daniel Harding - Wiener Philharmoniker
https://www.youtube.com/watch?v=HZjFSUYZSlI

この曲とダニエル・ハーディングには深い因縁があります。私が2012年3月13日にこのブログに書いた記事を再掲します↓。

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2012年3月11日(土)NHK総合テレビで「3月11日のマーラー」という番組をやっていました。すでにいろいろなウェブサイトで紹介されていますが、私も一言。番組の主役である新日本フィルは新たにダニエル・ハーディングを指揮者に迎えて、これから都響の最大のライバルになるかも知れません。ハーディングは30代半ばですが、すでに欧米でもわが国でもかなり有名な人気指揮者です。

3月11日彼は都心のホテルから、就任した新日本フィルではじめてのコンサートを行うため、楽団の本拠地すみだトリフォニーホールまでタクシーで向かっていました。その途中にあの地震に遭遇するとは、彼は日本とよほど深い縁があるのでしょう。電車で向かっていたらたどりつけなかったでしょうから、タクシーに乗っていたというのも不思議な因縁です。

ともかくたどりついたら、待っていたのは動揺する団員でした。リハーサルは延期され、コンサートをやるかどうか、楽団は難しい決断を迫られていました。しかし楽団は建物をチェックして無事を確認し、お客さんが一人でも来てくれればコンサートを断行するという方針を決めました。

集まったお客さんは105人。何時間も歩いて来た人もいたそうです。そして団員の中にも電車で地震に遭遇し、新橋から40歩走っては40歩あるくという方法でホールにたどりついた人もいたそうです。本来は1800人定員のホールだそうで、寂しい客席だったと思います。

曲目はマーラーの交響曲第5番。この曲はトランペットのソロではじまりますが、テレビでその演奏を聴いていて、こんなに深い憂愁の響きを聴いたことがあっただろうかと震えました。指揮者は全くタクトを振らず、じっと佇んでいます。全曲聴きたかったのですが、番組の時間の関係で一部しか放映されませんでした。それでも、その一期一会の演奏には胸を打たれました。

終了後、事務局員・団員・指揮者・聴衆、家に帰れなかった多くの人がホールで一夜を過ごしたそうです。その記念写真に顔をぼかした人が何人かみられました。「こんな時にホールで音楽を聴いているなんて不謹慎な」という非難が怖かったのでしょう。しかし私は地球が滅亡する時には、この曲をホールで聴いていたいなと思いました。

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On the afternoon of March 11 I was in a car driving across Tokyo for a general rehearsal of Mahler's 5th Symphony with the New Japan Philharmonic. What happened that afternoon, and in the subsequent days, will colour the way I think of this music for ever.

That evening we played a concert together in Sumida Triphony Hall for a tiny audience of those who had made their way to the concert hall, as bewildered and shocked by the events of the day as we were. This was my first concert as Music Partner of NJP. A concert we had all been looking forward to for a long time, a moment for celebration. However, as it turned out, it was a moment touched by unimaginable tragedy and sadness. None of us who were in Japan on that day, and in the following week, will ever forget what we experienced and the horrendous news and images coming to us from the Tohoku region.

I have had the privilege of spending much time in Japan over the last 13 years. Yours is a country I have come to love very deeply and I feel an enormous respect and warmth for the Japanese people. For me to be in Tokyo on March the 11th, and to experience the dignity and bravery of those so deeply affected by the earthquake and tsunami, was a humbling and touching experience. It was with a heavy heart that I left for Europe 5 days later. In the past I have often missed Japan after departing, this time the feeling was more intense.

Our planet is alive. Without the geological activity that causes such tragedy and suffering there would be no life on Earth. This is a mind-numbing paradox and can bring no comfort to those whose lives have been ripped apart. Maybe music, amongst the many great achievements of mankind, can help us to try to comprehend the magnitude and the context of such suffering. Maybe music can also help us, in the smallest way, to begin to heal.

This has been a disaster of unprecedented scale. All over the world now people look to Japan and the extraordinary, almost superhuman, dedication and effort of the Japanese people to rebuild. We are all moved and inspired by this devotion and sacrifice. There is no doubt in any of our minds that Japan will recover even stronger and even greater than before.
As musicians we can try to provide those in need with happiness, emotion, vitality and courage through beautiful and thought-provoking music.

It seems absolutely appropriate to me to play Mahler's 5th on the occasion of this charity concert. It is a great discourse and meditation on Love, Tragedy, Life and Death. In this concert, and indeed every time I again have the privilege of conducting this symphony, I would like to dedicate it to those who lost their lives, their loved ones, their homes or their livelihoods during those days in March.

I would also like to express my deep thanks and gratitude to the organisers of this charity concert and also to the NJP for all of their understanding and gracious cooperation, without which this concert would not have been possible.

Daniel Harding

(ハーディングさんのコメントは新日本フィルHPから引用しました)
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ベニスに死す
(映画を全部みたい人はYouTube ムービーで¥400で見られるようです)
https://www.youtube.com/watch?v=TyflXLYlNRE&t=349s

私も阪神淡路大震災では実家を失ってしまいました。ダニエル・ハーディングも、ある意味生き残った人々との共感もあったのではないかと思います。また震災の日に新日本フィルとマーラーを演奏したことが、その後の彼の人生と仕事に何らかの影響を与えたのではないかと思います。

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2019年3月 9日 (土)

クレア・フアンチ ピアノリサイタル@ブルーローズ2019・3・8

Imgサントリーホールのブルーローズに行ってきました。クレア・フアンチのピアノリサイタル。

なぜか全席自由席とあって、開場前から長蛇の列です。本来なら大ホールでマレイ・ペライアのピアノリサイタルがある予定だったそうですが、体調不良で中止ということで演奏者もファンも誠にお気の毒です。

そのせいで、ブルーローズの列以外はカラヤン広場も閑散としていて、風も吹いているし、よけいにもどってきた寒気が身にしみます。

客席は7~8割くらいの入りでしょうか。やはり手が見える、ステージに向かって左側が人気です。

フアンチはポスター通りの赤のコスチュームで登場。いつも右手にブレスレットをつけていますが、あれはバランスをとるためにつけているのでしょうか?

スカルラッティのソナタは彼女の18番と思われますが、これを巨大なスタインウェイのフルコンサートで演奏されると、やっぱり倍音がうるさくて聴きづらい感じがします。

本来チェンバロのための曲なので、響きの少ないピアノの方が聴きやすいと思います。

ショパンの夜想曲と、特にバラード第1番は圧巻でした。卓越したテクニック・激しいパッション・隅々まで浸透する歌謡性で聴衆を惹きつけるパワーには圧倒されました。これはアリですね。YouTube でも聴けます(注意:最初の演奏は広告)↓
https://www.youtube.com/watch?v=xziZgGfZk7g

ピアノソナタも聴けます
https://www.youtube.com/watch?v=BEpb2m43nh0

休憩後のラフマニノフの前奏曲は、彼女の芸風から言えばショパンよりさらに向いている感じでした。CDを発売したとのことで、トレイラーも公開されています↓。https://www.youtube.com/watch?v=_kvPnipWFm4

作品23の1
https://www.youtube.com/watch?v=vPkjUh_FQAU

アンコールを4曲もやってくれて、大満足のコンサートでした。終了後サイン会もやっていました。ファンサービスも怠りない人です。

Img_20190308_205107

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2019年3月 7日 (木)

やぶにらみ生物論123: アドレナリンとノルアドレナリン

神経伝達物質のうち、まずアセチルコリンについて前稿で述べましたが(1)、生体内にはその他にも多くの神経伝達物質があります。おおざっぱに分類するとアセチルコリン、モノアミン、アミノ酸、ペプチド、その他ということになりますが(図1)、これから順次みていきましょう。

種類は多くても、これらの神経伝達物質はシナプス小胞に蓄えられ、必要な場合にシナプス間隙に放出され、シナプス後細胞の受容体にトラップされることによって情報伝達を行なうというメカニズムに変わりはありません(図1)。

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まずモノアミン類ですが、主要な分子はノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミンの5つです。アセチルコリンがコリンの酢酸エステルであるのに対して、これらは水酸基のついているベンゼン環またはインドール環をもつ芳香族で、ローンペアのある窒素を含むアミンです。アセチルコリンの窒素原子は電子を供与できません。ヒスタミンについては後に記すことにします。

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渋谷駅の東口を出て六本木通りを六本木方向に進むと、すぐクロスタワーが見えてきます。クロスタワーの前を通り過ぎて少し歩くと長井薬学記念館というビルがあります。日本薬学会の事務所があるビルですが、この長井という名前は日本の近代薬学の創始者であり、薬学会の初代会頭である長井長義の名にちなんだものです。

長井長義は波乱に満ちたアドレナリン物語の起点となる人物でもあります。上中啓三(図3)は東京大学医学部薬学科に入学し、長井長義の研究室で薬学者としてのスタートを切りました(2)。長井らはエフェドリンの結晶化と構造決定に成功しており、上中もここで有機物質の抽出結晶化の技術をきっちりと身につけることができました。しかも図3に示すようにエフェドリンとアドレナリンの構造は似ており、ほぼ同じ方法で抽出結晶化ができたことが、上中の成功の要因でした。

ちなみにエフェドリンは今でも使われている鎮咳薬で、塩酸エフェドリンやその誘導体が風邪薬によく含まれています。アドレナリンにも鎮咳作用はありますが、医薬品としては主に強心剤として使われます。

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アドレナリンは上中がかかわるよりかなり前にその存在が確認されていましたし(3、4)。1895年にはムーアが血圧上昇作用を持つ副腎抽出物が塩化第二鉄と反応して緑色になるというヴルピアン反応を示すことを確認していました。アルフレッド・ヴルピアン(図3)は19世紀半ばに、副腎が塩化第二鉄で緑色、ヨードで桃色もしくはバラ色を呈することを発見していました。これはカテコール関連物質に特異的な反応で、アドレナリンの同定にも有用でした。

しかし上中が米国の高峰譲吉研究室に留学した頃(1899年)になっても、その構造は明らかになっていませんでした。

当時高峰はタカジアスターゼの製造でパーク・デービス社という大企業とコラボしていて財力があり、9kgという大量の副腎を集めることができたので、上中としては非常に良い条件で仕事を始めることができました(5)。高峰はもともと研究者というよりビジネスマンであり、大学をでたあとしばらく役人をやって、その後現日産化学を設立したりしていました。

アドレナリンの構造決定は世界的な大競争となり、上中-高峰もそこに参入したわけです。米国生化学会の重鎮エイベルもそのひとりで、1899年にはその副腎由来活性因子の名をエピネフリンと命名し、精製と構造決定を試みていましたが、その方法がまずかったので、結局成果は得られませんでした。上中はエイベルのサンプルがヴルパイン反応を示さないことから、それはアドレナリンではないことを確認しました。

上中は渡米翌年の1900年に、はやくも長井研で鍛えた腕で見事にアドレナリンの結晶化に成功し、高峰は世界中の学会で発表を行ないました。そして高峰のスポンサーだったパーク・デービス社は1903年にはアドレナリンを全世界に販売開始しました(5)。

ところが高峰が1922年に亡くなった後、エイベルは高峰らの業績は自分たちの成果を盗んだものだと言い放ち(5、6)、その後100年以上米国と米国の影響が強かった日本ではアドレナリンという名は使われず、エピネフリンが正式名となっていました。日本薬局方でアドレナリンと改正されたのは2006年で、なんと100年以上も間違った名前が使われていました(7)。

上中・高峰の名誉回復のきっかけとなったのは、上中の実験ノートが公開されたことだそうです(8、9)。元岡山大学教授で上中氏と同郷(兵庫県西宮市名塩)の僧侶中山沃氏が、自坊の境内に石碑を建立されています(8、図4)。

上中氏は1916年に帰国しましたが、決してエイベルの中傷でひどい目にあったわけではなく、高峰氏が社長だった第一三共製薬(当時は三共製薬)に入社し、監査役にまで上り詰めるというよい人生だったようです(10)。とはいっても、自動車も走っていない馬車時代に、ホルモンであり神経伝達物質でもあるアドレナリンの精製純化と構造決定をなしとげた上中・高峰が、ノーベル賞の栄誉に浴さなかったというのは残念であり、ノーベル財団の大失敗だったのでしょう。

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アドレナリン(高峰は adrenalin というスペルを用いましたが、現在では adrenaline というスペルが一般的です)はアミノ酸のひとつであるチロシンから合成されます(図5)。ドーパミンやノルアドレナリンは中間生成物ですが、単なる中間生成物ではなく、それぞれ別個の神経細胞で神経伝達物質としての機能を発揮します。

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アドレナリンとノルアドレナリンは細胞ごとに棲み分けている場合も多いですが、機能的には類似しており受容体は共通です。その受容体とはもうこのブログでも何度も登場してお馴染みの、7回膜貫通型3量体Gタンパク質共役型受容体(GPCR=GTP-binding protein-coupled receptor )です(1、11、図6)。アドレナリン・ノルアドレナリンをトラップするGPCRには、α型とβ型の2つのタイプがあり、それぞれがさらにいくつかのサブタイプに分かれています。

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GPCRは生物が発明したタンパク質の中でも最大級に重要なタンパク質であり、「薬のすべてがわかる!薬学まとめ」によると、「医療に用いられている薬の約半数は、直接的もしくは間接的にGPCRを標的としている。世の中にある薬の半分はGPCRが関わっているということである。」・・・だそうです(11)。細胞を家に例えればGPCRはポストに例えられるでしょう。注意すべきは、同じ手紙が投函されても家に住んでいる人(Gタンパク質)によってとる行動は異なるということです。

α型には3量体Gタンパク質のαサブユニットがGqのもの(α1型)とGiのもの(α2型)があり、α1型はアセチルコリン受容体のM1、M3、M5型の場合と同様に、GqがPLC(フォスフォリパーゼC)を活性化し、PLCがイノシトール4,5-ビスリン酸をイノシトール3リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)に分解し、IP3はERからのカルシウム放出、DAGはプロテインキナーゼCを活性化します。これらの反応が筋収縮などの引き金となり、下記のリストのような反応を引き起こします(12)。これらは生物が活発に活動するあるいは戦闘態勢にはいるための準備といえます。

眼: 瞳孔散大筋 収縮
血管平滑筋: 収縮
肝臓: グリコーゲン分解 血糖上昇
膵臓: β細胞 分泌抑制
膀胱: 括約筋 収縮
唾液腺: 粘稠性増加、少量分泌
脂肪細胞:脂肪分解促進

α2型はシナプス前細胞にも存在し、放出されたアドレナリン・ノルアドレナリンをトラップして、これらの情報伝達因子が後細胞や作動細胞にいかないように抑制する役割があります。α2型はアセチルコリン受容体のM2、M4型と同じく、共役するGタンパク質のαサブユニットはGiであり、これはアデニルシクラーゼの活性を阻害してcAMPのレベルを低下させ、cAMP依存性プロテインキナーゼの活性を抑制するほか、グリコーゲンや脂肪の分解を抑制する、心筋を弛緩させる、血小板を活性化するなど、生物が休養・食事・睡眠などを行なうのに適した状態を維持するはたらきがあります(6、12)。

β型は共役するGタンパク質のαサブユニットがGsであり、GsはGiと正反対にアデニルシクラーゼを活性化する作用を持ち、cAMPの濃度を上昇させます。したがってβ型はα2型とは正反対の生理作用をもたらします。心筋を収縮させ、異化代謝を活性化しますが、平滑筋は弛緩させます。腸を動かすのは平滑筋ですが、食事している場合じゃないということでしょうか。β型にもサブタイプがありますが、ここでは述べないことにします。

アドレナリンの特徴は神経伝達物質であると同時に、副腎髄質から分泌されるホルモンでもあるということです。これはあまり好ましいこととは思えませんが、何が起こるかは受容する細胞のGタンパク質によるというメカニズムが優れていて、特に問題は発生しません。

参照

1)やぶにらみ生物論122: アセチルコリンによる神経伝達
http://morph.way-nifty.com/grey/2019/02/post-5a95.html

2)上中啓三:wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E4%B8%AD%E5%95%93%E4%B8%89

3)Vulpian, E.F.A., Note sur quelques reactions propres a la substance des capsules surrenales. Comptes rendus hebsomadarires des seances de

l'academie des sciences, vol.43., pp. 663-665 (1856)

4)Napoleon Cybulski: wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Napoleon_Cybulski

5)山嶋哲盛 アドレナリンの発見と高峰譲吉
https://www.slideshare.net/waii/ss-4357821

6)アドレナリン(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%B3

7)山野ゆきよし メルマガ 「アドレナリン」もう一つの名誉回復
https://blog.goo.ne.jp/yamano4455/e/385f8411bf242d68e525efcb2ef29a4a

8)中山 沃(なかやま そそぐ) 上中啓三のアドレナリン実験ノート
教行寺所蔵となった経緯
http://www.chemistry.or.jp/know/doc/isan002_article.pdf

9)山下愛子 上中啓三 : アドレナリン実験ノート Adrenaline Research Note of Uyenaka Keizo (1900)
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007577369

10)三共(株)『三共六十年史』(1960.12) 渋沢社史データベース
https://shashi.shibusawa.or.jp/details_nenpyo.php?sid=3750&query=&class=&d=all&page=14

11)薬のすべてがわかる!薬学まとめ  Gタンパク質共役型受容体(GPCR)
http://kusuri-yakugaku.com/pharmaceutical-field/pharmacolory/receptor/membrane-receptor/gpcr/

12)管理薬剤師.COM
https://kanri.nkdesk.com/hifuka/sinkei25.php

 

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