2016年12月 7日 (水)

やぶにらみ生物論50: DNAの修復2

ジャン・ジャック・ワイグル(1901~1968)はもともとはスイスでX線解析などをやっていた物理学者だったのですが、なぜか米国に渡って微生物学者になりました。彼は1953年に不思議な現象を発見しました。彼が培養していたラムダファージを紫外線で不活化し(=殺し)、それを紫外線を照射した大腸菌にとりこませると、ファージは再活性化される(=生き返る)のです(1)。

ワイグルが発見した現象は、その後数十年かけて徐々にその全貌は解明されつつあります。驚くべきことに、この現象は細菌からヒトを含む真核生物に連綿と受け継がれた「DNA乗り越え修復 translesion DNA repair = TLS DNA repair」という機構に基づくものであることがわかりました。普段は隠れていたこの機構が、紫外線を照射されるという危機的な状況で表に現れ、生命を救うのです。ですからSOSリペアなどともよばれていました。

図1に示すように、DNA複製の際にDNAに損傷が発生し、DNAポリメラーゼがその位置で停止してしまうと、そこから先のDNAは複製されず、細胞はアンダー・コンストラクションの状態で死を待つことになります。通常2本鎖DNAの片側に損傷が発生した場合、その部分を切り取って、対面のDNA配列を利用して修復することができます(http://morph.way-nifty.com/grey/2016/11/post-4728.html)。しかしDNA複製の際には複製フォーク(レプリケーションフォーク)が形成されているため、損傷部位の対面配列は離れた位置にあり利用できません(図1)。

A


この問題を解決するために、細菌は「DNA損傷乗り越え修復」という技を編み出しました。道で事故車が止まっていたときに、それをレッカー車で移動してから通過するのではなく、いったん歩道に乗り上げて事故車を通過するというような強引なやり方です。損傷部位に乗り上げたDNAポリメラーゼIIIは離脱し、RecAというタンパク質がATPを使ってRecA複合体を形成すると共に、DNAポリメラーゼVと共同して損傷部位の対面のDNAを延長します。

なぜ延長できるかというと、DNAポリメラーゼVは厳密にワトソンクリック型の対面ヌクレオチドを合成するのではなく、かなり特異性が低いという特徴をもっているからです。別の言い方ではフィデリティー(忠実度)が低いとも言います。ですから図2ー2または3にみられるようにTに対してGをもってきたりするわけです。

ですがフィデリティーの低さは逆に壊れているTも壊れていないヌクレオチドと認識することができるという利点があります。このためDNAポリメラーゼIIIが読めなくて停止するような場合でも、涼しい顔で通り過ぎることができるわけです。損傷部位を通り過ぎた段階でDNAポリメラーゼVはお役御免で、DNAポリメラーゼIIIにバトンタッチします(図2-4)。この結果間違った塩基配列が形成されたとしても、とりあえず細胞は死を逃れることができます。

A_2


DNAポリメラーゼVは忠実度の低い酵素なので、通常は使われないよう厳しく管理されています。大腸菌に紫外線を照射して数十分後にようやくこの「DNA損傷乗り越え修復」という機能が発動します。つまり他の忠実性の高いシステムで修復を試みて、どうしても修復できない場合の最後の手段として使うという意味もあるようです。DNAポリメラーゼII や DNAポリメラーゼIV もDNA乗り越え修復の機能があるようですが、詳細は不明のようです(2)。

DNAポリメラーゼVなどのTLSポリメラーゼ(乗り越え修復DNAポリメラーゼ)は、細菌・古細菌で類似しているだけでなく、真核生物においてもその遺伝子構造が引き継がれており、ヒトも例外ではありません。このような祖先生物から複数の種に機能・構造が引き継がれている遺伝子をオルソログといいます。真核生物のTLSポリメラーゼにはイオタ、エータ、ゼータ、カッパがあります。大腸菌のPolIV・PolV、古細菌のDpo4、真核生物のPolイオタ・Polエータ・PolカッパはYファミリーとよばれるオルソログ、大腸菌のPolIIと真核生物のPolゼータはBファミリーというオルソログのグループを形成しています(2)。

このほかにも2本鎖がどちらも切断されたときとか、組み替え修復などの機構を生物は持っていますが、ここでは触れません。

いろいろなDNAポリメラーゼが話しの中に出てきて混乱するので、大腸菌と真核生物の各種DNAポリメラーゼをリストアップして、簡単な解説をつけることにしました。

===========================

E.Coli(大腸菌)

----------------------------------------------------------------
DNAポリメラーゼ I :

1956年に、アーサー・コーンバーグによって最初に発見されたDNAポリメラーゼ。この酵素が働かなくても大腸菌は生存可能なので、DNAの複製に必須ではありませんが、このような株は紫外線の感受性が高いことが知られています。またこの酵素はTSL型ではないため、主に各種除去修復の際のDNA合成に関与していると考えらています。この酵素の特徴はエキソヌクレアーゼ活性(3'→5')を持っていることで、そのことによって間違った塩基のペアができた場合、鋳型の上を逆走してそれらを分解し、DNA合成をやりなおすことができます。これは校正機能とよばれています。

また逆方向(5'→3')のエキソヌクレアーゼ活性も持っているため、おしりでDNA合成しながら頭でDNA分解を行うことができます。したがって頭の位置にあるDNAの断点(ニック)を、結果的に進行方向にずらしていくことが可能で、これをニックトランスレーションと呼びますが、この反応を行わせるときに放射性のヌクレオチドを入れておくと、DNAが放射能で標識されます。この機能を使えば手持ちのDNAをとりあえず標識できるので、研究上便利です。

この酵素がなくても大腸菌は生存可能とはいえ、あった場合はDNAの複製に関与すると言われています。ウィキペディアによるとRNAプライマーが分解されたあとのギャップを埋めるのに使われるとされています。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_I

この酵素は真核生物のミトコンドリアに存在するDNAポリメラーゼガンマとオルソログであり、Aファミリーを形成します。

DNAポリメラーゼ II :

この酵素はDNAポリメラーゼI と同様な校正機能を持っていて、しかも忠実度(フィデリティー)が非常に高いので、DNAポリメラーゼIIIが正しいペア形成に失敗したときに修正する機能があるとされています。ラギング鎖のDNA合成を行なうとも言われています。DNAにクロスリンクができてしまったときの処理に働いているという説もあります。バックアップ用の酵素かもしれませんが、まだ未解明な部分が多いと思われます。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_II

大腸菌のDNAポリメラーゼIIは古細菌から発見されたPol B1, Pol B3、真核生物の Polアルファ、Polデルタ、Polイプシロン、Polゼータなどとオルソログであり、Bファミリーを形成しています。細菌のDNA複製の主役はDNAポリメラーゼIII(Cファミリー)なのですが、古細菌や真核生物はこれを没にして、Bファミリーの酵素群を主役に抜擢しています。

DNAポリメラーゼ III :

トーマス・コーンバーグとマルコム・ゲフターによって1970年に報告されました。細胞増殖のために行われるDNAの複製を担う酵素としては、はじめて発見されたDNAポリメラーゼです。DNA合成を行うために他の多くの因子とDNAレプリソームという複合体を形成して働きます。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持っており、校正機能があります。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_III_holoenzyme

DNAポリメラーゼIIのところで述べたように、この酵素ファミリー(Cファミリー)は古細菌や真核生物では用いられていません。非常に完成度が高かったため、生物の変化に対応できなかった可能性があります。

DNAポリメラーゼIV:

DNA損傷乗り越え修復を行なう酵素です。DNA合成が途中で停止したような場合に大量に出現し、合成を完了させるための損傷乗り越え修復を行ないます。この酵素を欠損する株では、DNAの損傷をひきおこすような薬剤を投与した場合に、突然変異の確率が高まることが知られています。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_IV

DNAポリメラーゼV:

DNAポリメラーゼIVと同様、DNA損傷乗り越え修復を行ないます。IVと共にYファミリーを形成し、古細菌や真核生物にも多くのオルソログが存在する大ファミリーです。Yファミリーの酵素は、忠実度を低くすることによって、鋳型(テンプレート)が損傷を受けてもDNA合成を継続させるのが仕事なのですが、それでも損傷を受けた鋳型に対して、正しい対面ヌクレオチドを選択するに超したことはありません。従って受けた損傷の形に応じて使う酵素を変えて、より正確な複製を行うために種類が増えたのかもしれません。
https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_V

----------------------------------------------------------------

真核生物:

DNAポリメラーゼアルファ(α):

プライメースと複合体を形成して、DNA合成をスタートさせる役割を担っています。プライマーの末端3'OHからDNA鎖を延長していきますが、20ヌクレオチドあるいはそれ以内の鎖を合成したところで、デルタやイプシロンと交代します(3)。エキソヌクレアーゼ活性を持っておらず、校正機能が無いため、デルタやイプシロンほど正確な複製ができません。BファミリーのDNAポリメラーゼです。

DNAポリメラーゼベータ(β):

塩基除去修復に必要とされている酵素です。DNAポリメラーゼラムダやDNAポリメラーゼミューと同じXファミリーに所属します(4)。しかしラムダやミューはベータとは別の役割を果たしているようです(4)。細菌のDNAポリメラーゼXは研究が進んでいないようです。

DNAポリメラーゼガンマ(γ):

ミトコンドリアに存在し、ミトコンドリアのDNA複製に関与すると考えられています(5)。大腸菌のDNAポリメラーゼ I と同じAファミリーに所属しています。ミトコンドリアは活性酸素が多い環境なので、DNAはダメージを受けやすく、この酵素が校正機能を持っていることには大きなメリットがあります。

DNAポリメラーゼデルタ(δ):

DNAを複製および修復するときに用いられます。以前はラギング鎖のみ複製すると考えられていましたが、リーディング鎖の複製も行っているようです(6)。Bファミリーに所属し、校正機能を持っています。

DNAポリメラーゼイプシロン(ε):

DNAを複製および修復するときに用いられます。主にリーディング鎖の複製を行っていると考えられますが、これはデルタで代用できるようです。しかしそれ以外に、2重鎖になっているDNAをほどいてルーズな状態に変化させるヘリケースを活性化する機能があり、これによって複製フォークが形成されるようで、こちらの機能は代替不可だそうです(7)。Bファミリーに所属し、校正機能を持っています。

DNAポリメラーゼ ラムダ(λ)&ミュー(μ):

DNAの2本鎖が両方とも切れたときの修復(非相同末端結合)に使われるようです。また相同組み換えにも使われるようですが、まだ詳しく研究されていないようです(4)。いずれもXファミリーに所属しています。

DNAポリメラーゼ イオタ(ι)、エータ(η)、ゼータ(ζ)、& カッパ(κ)

いずれもこの記事で取り上げたDNA乗り越え修復に関与する酵素です。エータのようにチミンダイマーの対面をきちんとAAに修復できるエラーレスの酵素もあれば、エラーの確率が高い酵素もあります。ゼータはBファミリーですが、他の3つはYファミリーに所属します。

他にも特殊な酵素がいくつかありますが、ここでは述べません。文献(8、9)などを参照してください。

===========================

参照:

1. J. J. WEIGLE, INDUCTION OF MUTATIONS IN A BACTERIAL VIRUS, Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol.39, pp.628-636
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1063835/pdf/pnas01592-0060.pdf

2. M.F. Goodman and R. Woodgate, Translesion DNA polymerases., Cold Spring Harbor Perspectives in Biology, No.29, pp.1~20 (2016)
http://cshperspectives.cshlp.org/content/early/2013/07/08/cshperspect.a010363

3. L. Pellegrini, The Pol alpha -primase complex. Subcell Biochem. vol.62, pp. 157-169 (2012)

4. J. Yamtich and J.B. Sweasy, DNA polymerase family X: function, structure, and cellular roles., Biochim Biophys Acta. vol.1804, pp.1136-1150 (2010)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19631767

5. R. Krasich1, W.C. Copeland, DNA polymerases in the mitochondria: A critical review of the evidence. Frontiers in Bioscience, Landmark, 22, pp.692-709 (2017)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27814640

6. R.E. Johnson, R. Klassen, L. Prakash, and S. Prakash, A Major Role of DNA Polymerase δ in Replication of Both the Leading and Lagging DNA Strands., Mol. Cell. vol. 59, pp.163–175. doi:10.1016/j.molcel.2015.05.038. PMC 4517859Freely accessible. PMID 26145172

7. T. Handa et al., DNA polymerization-independent functions of DNA polymerase epsilon in assembly and progression of the replisome in fission yeast., Mol Biol Cell, vol.23, pp.3240-3253 (2012), doi: 10.1091/mbc.E12-05-0339
https://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/newinfo/info72.html

8. 道津貫太郎、横井雅幸、花岡文雄、立体構造解析から見えてきた損傷乗り越えDNA複製の分子メカニズム. 放射線生物研究 vol. 46,pp. 1~14 (2011)
こちら

9. S. Doublie and K.E. Zahn, Structural insights into eukaryotic DNA replication. Frontiers in Microbiology. vol.5, pp.1~34 (2014)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月 4日 (日)

2016~2017 リーガエスパニョーラ第14節: 後半45分ラモスの頭でエンパテに沈む 

デイゲームのクラシコです。10万人収容のカンプノウははち切れんばかりの満員。バックスタンドにはフォルサ・バルサ(ばるさがんばれ)の人文字がみえます。

Img_a

カタルーニャ国旗のディスプレイで盛り上がるスタンドです。

Img_b


バルサはFW:ネイマール・スアレス・メッシ、MF:Aゴメス・ラキティッチ・ブスケツ、DF:アルバ・マスチェラーノ・ピケ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。イニエスタは間に合いましたがベンチ。イニエスタはドリブル突破の際に奪われてカウンターを食う確率が高いので、前半は守備重視でAゴメス起用になったのでしょう。

レアルマドリーはFW:ベンゼマ・Cロナウド・ヴァスケス、MF:コバチッチ・モドリッチ・イスコ、DF:マルセロ・Sラモス・ヴァラン・カルバハル、GK:Kナヴァス。ベイルがいないのはバルサにとってラッキーでした。

マドリーはモドリッチ中心に非常に厳しい中盤の守備でバルサペースを阻止する構え。バルサもここ数試合の低調なパフォーマンスとは見違える集中力と活気のあるプレーで戦います。21分バルサはカウンターから、スアレスにシュートチャンスがありましたが、ヴァランのおしりに当てて得点ならず。逆に37分マドリーのカウンター攻撃でCロナウドに左からニアに打たれますが、テア=シュテーゲンが冷静にはじきました。さらに38分にも中央から打たれますが、これは当たり損ないでテア=シュテーゲンがキャッチ。

バルサにとって残念だったのは、41分左に侵入したアルバが中央にパスを出したところ、カルバハルがハンドで止めたのですが、レフェリーの角度が悪くてPKとりませんでした。そのあとピケの危うくオウンゴールなどもありましたが0:0で前半終了。

後半8分、ネイマールのFKをスアレスが頭で合わせてバルサ先制。15分にはラキティッチがイニエスタに交代です。この頃になるとマドリーの守備が目に見えてゆるくなってきて、バルサの勝利が見えてきました。23分ネイマールがうまくカルバハルを交わして1:1でシュートしたのですが、わずかに高くゴールならず。これが死を招くことになりました。

終了直前の45分、モドリッチのFKをSラモスに頭で合わされて痛恨の失点。このときのバルサ選手の位置が高すぎて、Sラモス以外にも3人くらいフリーになっていました。完全にバルサの守備ミスです。試合はそのままエンパテで終了。6ポイント差は縮まらないまま、マドリーは33戦無敗となりました。バルサにとっては非常に苦しいシーズンとなりました。

https://www.youtube.com/watch?v=JGYbfKT4_dg
https://www.youtube.com/watch?v=jiL7nv450zw
https://www.youtube.com/watch?v=sVnpET78l7s

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月 3日 (土)

JPOP名曲徒然草175: 「乙女の祈り」 by 真野恵里菜

今日は午後1時から「科捜研」のバックナンバー、午後9時から「検事の本懐」と長いTVドラマを2本も見てしまいました。なんとどちらにも真野恵里菜が出演していました。彼女がバリバリのアイドルだった頃は私は全く知らなくて、あとで調べてみてはじめて気がついたという経緯があって、CDは持っていません。

私は真野恵里菜は超B級女優と思っています。その心は、ユーモアとかペーソス、複雑な表情には欠けますが、一本調子の役をやると何のてらいも無く、気持ちが良いくらいストレートにやり抜くという特技を持っているからです。

アイドル時代の曲は昭和時代の面影があって、ちょっと懐かしい感じがします。まあ作詞・作曲がその種の方々なので・・・。

真野恵里菜 「乙女の祈り」 作詞:三浦徳子 作曲:KAN

https://www.youtube.com/watch?v=TVBkEWWnN0Q

http://www.dailymotion.com/video/x8gf6l_%E7%9C%9F%E9%87%8E%E6%81%B5%E9%87%8C%E8%8F%9C-%E4%B9%99%E5%A5%B3%E3%81%AE%E7%A5%88%E3%82%8A-dohhh-up_lifestyle

「NEXT MY SELF」
https://www.youtube.com/watch?v=FrvNPvD6epc

「はじめての経験」
https://www.youtube.com/watch?v=I_gnRUWpL2s

「お願いだから・・・」
https://www.youtube.com/watch?v=G0pZo3E0I98

「春の嵐」
https://www.youtube.com/watch?v=ClJJdbXwHLw

「My Days for You」 このMVをみていると、まわりが意識して昭和ノスタルジアをめざしていると感じられます
https://www.youtube.com/watch?v=NYzZz4CwfZQ

「黄昏交差点」
https://www.youtube.com/watch?v=uCXCtMhEoxk

「Song for the DATE」
https://www.youtube.com/watch?v=kZYpUZ1IUlk

何やってんねん
https://www.youtube.com/watch?v=wnE56bXUpYw

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月 2日 (金)

連合がついに自民党と連携

Minshinto_logo以前に連合は自民党を支持すべきだと書きましたが、
http://morph.way-nifty.com/grey/2016/10/post-8bc6.html

そのようになりそうです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161130/k10010790081000.html

これは当然の成り行きで、連合組合員689万人がしらずしらずのうちにこの国のエリートになってしまったからです。非正規労働者1989万人と格差ができて、同じ船に乗れなくなってしまうほどになりました。

民進党は非正規労働者と農林漁業者、国内で事業をやりたいと思う企業、TPP・TiSAに反対する理念を持つ人々、奨学金で学ぶ学生、年金がわずかな老人、障害者、母子家庭、思想統制と軍国主義に反対する人々、レイシズムに反対する人々 etc. に支持される政党になるべきです。連合の離反は民進党が主義主張を明確にするためにはむしろ好機です。どっちつかずの政策では、支持者がいなくなります。

最近感じるのは、前原誠司氏が新自由主義をあきらめたように思われることです。先進国全体がアンチグローバリズムあるいはブロック経済体制に移行していく中で、さすがに自由貿易推進一辺倒で行くのはピエロのようだということがわかったのではないでしょうか。喜ばしいことです。

新興国でもさまざまな工業製品が生産されるようになった今、国別で競争すれば賃金の高い先進国が敗北するのは目に見えているので、結局先進国の企業はグローバル企業となって生産拠点を新興国に移転し、関係者だけが利潤にありつこうという作戦に出ますが、その結果は、「関係者」と「部外者」という階層分化が生まれ、米国ではついに「部外者」の革命が成功しました(トランプが彼らの期待に応えるかどうかは、しばらくみていく必要がありますが)。

トランプは早速個別企業に介入して、生産拠点の海外移転を阻止しました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161202-00000041-asahi-int

日本にもこれから求められるのは、日本人が必要とする最低限の物資は、可能な限り国内で生産できるようにすることです。それが当面困難なら、物資を食糧に置き換えてもかまいません。一見不可能なようでも国家がそういう方針で歩めば、エネルギー問題も含めてその方向に行けると思います。海外に拠点を移転するのは悪者というムードをつくれば、意外にやりにくくなると思いますね。

私が何気なく買った身の回りのものをよく調べてみると、Tシャツはバングラ、靴はミャンマー、パジャマはベトナムのグンゼ、ズボンと上着は中国、鞄はイタリア(ブランドはそうだけど多分中国製)、家電の一部は中国、パソコンは台湾、今日買ったナスの漬け物のナスはタイ、トマトはニュージランド、ですが、そんなのがいつの間にか当たり前になっているのはおかしくありませんか? このような物資は昭和時代までは日本製が当たり前でしたし、日本には農業に必要な水と、マグマというエネルギー源があります(一億人が死滅するほどの http://indeep.jp/caldera-eruptions-could-be-soon-in-somewhere-include-japan/ )。排他的経済水域の境界線付近で、中国は原油を採掘して吸い取っていますが、日本は掘っていません。

鉄材も船も航空機も木材も、国内で使う分も生産できないというのはおかしくありませんか? 前原誠司氏にはこのあたりのことまで考えて欲しいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月30日 (水)

やぶにらみ生物論49: DNA修復1

DNAはヌクレオチドがフォスフォジエステル結合を介して連結されていますが(図1)、このヌクレオチド同士の結合は化学的には非常に安定で、加熱・酸・アルカリなどの条件でも壊れません。ジフェニルアミン法でのDNAの化学的定量の際には過塩素酸の存在下でボイルして分解・染色します(1)。

A_7

しかし生体内にはDNAを切断・分解する酵素が存在するので安泰とは言えません。また有機塩基は糖鎖やリン酸と比べると化学的に不安定で、加水分解でアミノ基がアンモニアとなってはずれてしまったり、塩基全体が糖からはずれてしまったり、アルキル化・酸化によって構造が変わったりします。これらの化学反応は酵素がなくても進行します。またDNAを合成する際に、間違った塩基(GCまたはATというペアを形成しない)が取り込まれてしまうこともあります。

細胞が本来維持している環境の中でのエラーやダメージ以外にも、外界の放射線や紫外線によって発生するダメージも深刻です。生物は太古の昔から、このようなさまざまな要因によるDNAの損傷を修復するべく知恵をしぼってきました。もちろんDNAの変異が進化をもたらしたことは事実ですが、毎日起きているDNAの損傷は桁違いで、ウィキペディアによると「DNAの損傷は、細胞内における正常な代謝の過程でも1細胞につき1日あたり 50,000~500,000 回の頻度で発生する」(2)となっています。

たった1ヶ所の変異によって、その部分の遺伝子情報によって作られている蛋白質の機能がゼロになったり、発がんの原因になったりすることもあります。ですから生物は様々なDNAの救急システム=DNA損傷修復の機能を持っているわけですが、それ以外にも私たちの体を見てみると、生きている細胞が露出しているのは乳頭くらいで、あとは皮膚表層の死細胞が紫外線から生きている細胞を保護しています。またヒト以外の動物では皮膚に加えて毛皮や甲冑で保護している場合が多くみかけられます。

生物がまだ水中で生活していた頃は、水によって放射線や紫外線が遮蔽されるので、内因的な損傷だけを修復すればよかったのですが、陸に上がったとたんに外界から激しい損傷をうけることになるので、浅瀬で暮らしている時代に十分な準備をしておかないと、上陸は不可能だったでしょう。これは陸地を歩ける足を準備するのと同じくらい重要な段取りだったと思われます。

さて皆さんは昨年(2015年度)のノーベル化学賞を、どんな人が受賞したか覚えているでしょうか? リンダール(1938~)・モドリッチ(1946~)・サンジャール(1946~)の3人です(図2)。

A_13

彼らは皆それぞれ別の様式のDNA修復に関する研究で受賞しました(3)。彼らが発見した3種類のDNA修復は、大腸菌(原核生物)もヒト(真核生物)も、関与する因子の名前こそ違いますが、様式は基本的に同じで、おそらく10億年以上保存されてきたメカニズムだと思われます。生物は深海の熱水噴出口周辺で生まれたと思われますが、細菌はかなり早くから浅い海や地上で生きていたに違いありません。ですから彼らは優秀なDNA修復機構を太古の時代から持っていて、その後長い間海中で生活することになった真核生物も、彼らの業績を引き継いでいたということになります。ですからおそらく現在紫外線や放射線による障害を修復するメカニズムとして復活した機構も、進化の途中では別の目的で使われていた時代もあったのでしょう。

ここではノーベル賞を受賞した3人の科学者達の業績をたどってDNA修復の機構をみていきましょう。まずトマス・リンダールは塩基除去修復(base excision repair)という様式を発見しました(4)。例えばグアニン(G)が酸化されて8-オキソグアニン(G*)に化学変化したとします(図3)。

3a_2

まずこの異常な部位にグリコシラーゼがやってきて、異常な塩基である8-オキソグアニンと糖の結合を切断して、8-オキソグアニンを遊離させます。そうするとDNAに塩基のない空白部分(APサイト、apurinic apyrimidinic site)ができます(図4)。この状態を認識するAPエンドヌクレアーゼというDNA分解酵素がやってきて、AP部位のDNAを切断します(図4)。

DNAを切断する酵素を大きく分けると、一番端から順次内部に切っていく(鎖を短くしていく)酵素群をエキソヌクレアーゼ(exonuclease)と、鎖の内部を切断する酵素群(APエンドヌクレアーゼ AP endonuclease のように特定の部位だけ切断するものから、非特異的に滅多切りするものまでいろいろあります)があります。前者のエキソヌクレアーゼがAPエンドヌクレアーゼで切断されたDNAの断端をみつけて、ひとつヌクレオチドを切り離します(図4)。このエキソヌクレアーゼはヌクレオチドひとつ分だけしか切りません。

A_9

ヌクレオチドが切り離されると、専門のDNAポリメラーゼ(真核生物だとDNAポリメラーゼベータ)がやってきて、鋳型に対応するヌクレオチドをひとつ 3'OH に結合させます。例によってこれを 5'P と結合させることはできないので、DNAリガーゼがやってきて結合し、元のDNAへの修復が完成します(図4)。

次はアシス・サンジャールですが、彼はヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair)のメカニズムを解明しました(5、6)。彼はトルコでの裕福な医師生活を捨てて米国で勉強をやり直し、テクニシャンからはじめて、朝9時から深夜3時まで働くというハードワークで成功した人物です。

ヌクレオチド除去修復は、主にDNAが紫外線によって損傷を受けた場合に発動します。紫外線がDNAに照射されると、DNAの塩基配列上でチミンが二つ並んでいるところで、チミンダイマーが形成されます(図5)。

A_10


チミンダイマーが形成されると、周辺のDNAにひずみが発生します。これをUvrA+UvrBの複合蛋白質が認識し、ATPのエネルギーを使ってチミンダイマー周辺のDNAを変形させて塩基同士の結合をひきはがします(図6-2)。するとそこにUvrCがやってきて、チミンダイマーの両側でDNAを切断します(図6-3)。

切断されるのはチミンダイマーの隣接部位ではなく、多少の余裕をみて数ヌクレオチド離れた場所で切断されます。チミンダイマーを含む単鎖DNAは遊離し、DNAにギャップが形成されます(図6-4)。この比較的広いギャップは、ヘリケースによってDNAポリメラーゼがアクセスできるように立体構造が整形され、真核生物の場合DNAポリメラーゼイプシロン(リーディング鎖の複製を行なう酵素)によってDNA合成が行われ埋められます(図6-5)。最後にDNAリガーゼによってDNAの端部が連結されて修復が完了します(図6-6)。

A_11


チミンダイマーの除去がうまく行われない場合、色素性乾皮症(xeroderma pigmuntosum)という生命に関わる重要な病気が発生することがあります。この病気は遺伝性で、患者さんは太陽に当たると癌が発生する危険性が高いので、一生暗い部屋で、外出するときは皮膚をすべて被うという気の毒な生活をしなければなりません。

最後はモドリッチですが、その前に一つ述べておかなければならないのは、すべての生物がDNAの複製に用いているDNAポリメラーゼは種類も多くありますが、すべて100%正確にG・C、A・Tのルール通りのDNA合成が可能かというとそうではありません。確率は低いですがエラーが発生して、例えば図7のようにGの対面が誤ってTになったとします。このエラーを放置すると、もう一度細胞分裂が起こった場合、Tの対面はAになって、ずっと先の世代まで間違ったDNAが引き継がれることになります。このようなエラーの修復法をモドリッチが解明しました(7、8)。ミスマッチ修復法と呼ばれています。

A_12


ミスマッチが発生した場合、図7-1のようにMutSαというタンパク質がその位置を検出し、結合するとともにATPを使って構造変化を起こしてMutLαと結合します(図7-2)。MutLαはDNAに断点をいれる酵素(エンドヌクレアーゼ)で、ミスマッチの両側にNick(断点)をつくります(図7-3)。

次にExo1という断点から5→3の方向に順次DNAを分解していく酵素(エキソヌクレアーゼ)が、もうひとつの断点までDNAを分解しギャップをつくります(図7-4)。真核生物の場合このギャップは主にDNAポリメラーゼデルタがDNA合成を行うことによって埋められます(図7-5)。そして最後はDNAリガーゼが 3'OH と 5'P を連結して修復は完了します。

以上3種類のDNA修復法について述べましたが、DNAの修復法は他にもあるので次回も続けます。

参照:

1)http://www.sci.keio.ac.jp/eduproject/practice/biology/detail.php?eid=00012

2)https://ja.wikipedia.org/wiki/DNA%E4%BF%AE%E5%BE%A9

3)DNA repair – providing chemical stability for life. THE ROYAL SWEDISH ACADEMY OF SCIENCES, 2015
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2015/popular-chemistryprize2015.pdf

4)Tomas Lindahl, Instability and decay of the primary structure of DNA. Nature vol.362, pp.709-715 (1993)

5)http://www.newsobserver.com/news/local/education/article51568735.html

6)Sancar, A. and Rupp, W. D., A Novel Repair Enzyme: UVRABC Excision Nuclease of Escherichia coli
Cuts a DNA Strand on Both Sides of the Damaged Region, Cell vol. 33, pp. 249–260 (1983)

7)Ravi R. Iyer, Anna Pluciennik, Vickers Burdett, and Paul L. Modrich, DNA Mismatch Repair: Functions and Mechanisms. Chem. Rev., vol. 106,  pp. 302–323 (2006)
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/cr0404794

8)Lahue, R. S, Au, K. G. and Modrich, P., DNA Mismatch Correction in a Defined System, Science, vol. 245, pp. 160–164 (1989)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月29日 (火)

2016~2017リーガエスパニョーラ第13節: ドローが信じられないほど押し込まれたバルサ

A1180_006359鬼門のアノエタでソシエダとの対戦。一応バルサも前の三人(ネイマール・スアレス・メッシ)が揃いました。中盤はアンドレ=ゴメス・ラキティッチ・ブスケツ、DF:アルバ・マスチェラーノ・ピケ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。ソシエダは5位で好調というより、それだけの実力がある選手を集めました。FW:オヤルサバル・ジョゼ・ベラ、この3人結構強力です。ミドルシュートのオヤルサバル、突破力のベラ、ラス・パルマスで9ゴールのジョゼ。MF:スルトゥサ・イジャラメンディ・ブリエトはみんなベテランのクセ者。DF:ユーリ・イニゴ・ナヴァス・マルティネス、GK:ルジ。

バルサはポゼッションができません。たまに球を持ってもパスカットされることが多くて、逆襲を食って攻められっぱなしです。15分のクロスからのブリエトのヘディングシュートはテア=シュテーゲンが止めました。19分にはベラに抜け出されましたが、シュートミスで助かりました。31にもベラにゴール前に進入されましたが、マスチェラーノがギリギリで阻止。まずいことに39分、ピケがセーヴしたときに足を痛めて、2~3分で出てきたのですが厳しくなりました。しかし何とか粘ってスコアレスでハーフタイム。

後半バルサはラキティッチをデニス=スアレスに代えてきました。これはクラシコに備えてと言う意味もあると思います。ピケはサポーターを靴底まで巻いて足を保護しているのが痛々しい感じで心配していたら、8分またベラにシュートを打たれてGKがはじいたところをジョゼに頭でたたかれて失点。

しかし腐ってもバルサと言おうか、14分ネイマールが左を突破し、メッシに戻してゴール。なんとか追いつきましたが、その後もソシエダ有利な展開でバルサはほとんどいいところなしで終了しました。これでエンパテというのは非常にラッキーでしたが、レアルマドリーとの差は6ポイントになってしまいました。

この不調のなかで、どうしても負けられないクラシコになってしまいました。イニエスタがいないというのも問題ですが、それよりアルダとウムティティが使えないのが非常に痛い感じがします。全体的に疲労感があって、ここ一番のアジリティが足りません。ウムティティとイニエスタはクラシコに間に合いそうらしいので、パエリアでもたらふく食べてなんとか頑張って欲しい。

https://www.youtube.com/watch?v=s3zbPzmgkiA

https://www.youtube.com/watch?v=xw-i7Bzwjzw

https://www.youtube.com/watch?v=X4PfNGqVhZA

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月28日 (月)

都響-大野 マーラー交響曲第4番@東京芸術劇場2016年11月27日

Imga雨模様ですが、そんなに寒くないのは歓迎です。都響の久しぶりのマーラーということで、池袋芸劇は大盛況でした。本日の指揮は大野さん、コンマスは矢部ちゃん、サイドは四方さんです。

天羽(あもう)さんはモスグリーンの渋いドレスで登場しましたが、仏様のような容姿の方です。リーフレットの写真からの変貌がみられましたが、美しいことには変わりはありません。

最初はベルクのアルテンベルク歌曲集。これはマーラーがはじめた管弦楽伴奏歌曲集の衣鉢を継いだものですが、マーラーのような旋律を基盤とした音楽ではなく、自然の音のシミュレーションや多彩な楽器の音響で心理描写や歌詞の雰囲気を醸成することを目的としています。この点ではベルクは天才です。最初の数秒で引き込まれてしまいます。ただCDを買ってまた聴いてみようかという観点から言うと微妙かな?

https://www.youtube.com/watch?v=FQsHjCaLgog

ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲もエマールの切れ味良いピアノは魅力ですが、そんなに好きな曲じゃないので、ただ座ってボーッと聴いていただけです。

休憩後はお目当てのマーラー交響曲第4番。やはり曲の面白さが前半とは桁違いです。開始前に矢部ちゃんが隣の四方さんに早業でポケットから多分薬をとりだして渡すと、四方さんも早業で飲み込みました。すごいコンビネーションです。メッシ→スアレス→ゴール。矢部ちゃん単独ではよくみかけますが、どうして楽屋でなくステージで服用するのかが謎です。

マエストロ大野の趣味でしょうか、非常に繊細で透明度の高い演奏でした。愕然としたところもありましたが、第3楽章は特にマーラーの音楽を優秀な解剖学者のように細部まできれいに露出してくれたような演奏で、一風変わっているとはいえ、それなりに堪能できました。

突然盛り上がる部分で、天羽さんがお色直しして白のドレスで現れました。やはり天使は白か。低音がよく聞こえませんでしたが、おちゃめな天使という役割の歌をその通りに歌ってくれました。声質がぴったりですし、ライヴではルックス(かわいい)も重要な要素です。マイクが林立していたので、レコーディングモードでした。CDが発売されるのが楽しみです。

ウィキペディアを見て驚いたのは、この曲を最初にレコードに録音したのは、近衛秀麿指揮新交響楽団(ソリスト北澤榮子)で1930年のことだったそうです。マーラーも日本とは縁があるんですね。しかもこのSP盤は現在CDに復刻されて販売されています。

こちら

マーラー交響曲第4番(このオケはホルンが上手)
https://www.youtube.com/watch?v=Ividyw_WPv4

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月26日 (土)

サラとミーナ180: お邪魔虫

サラがゆっくり休んでいます。

11


しかし、お邪魔虫ミーナが接近

22


こうなってしまいました

33


「隣の芝生は青い」というのは人も猫も、いや人もミーナも同じか?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月25日 (金)

年金制度の問題

A1840_000022年金制度改革が話題になっていますが、1番の問題点は、自民党政権が数十年間やってきた制度が、子供が減らないということを前提としてきたということです。

ならば自民党はどうして子供が減らないような効果がある政策を実行してこなかったのでしょうか? そこが問題なのですよ。

だから年金が少なすぎると言っている老人にも言いたいのですが、「違ってたらごめんなさい、そういう不作為を続けてきた政党に、あなたはずっと投票したきたのではありませんか?」

事ここに至ってはよほどドラスティックな政策をとらないとダメでしょう。たとえば3人目の子供が出来た家庭には、300万円くらいの報奨金を支給するとかね。若い世代の移民受け入れを促進することも考えなければなりません。

それができないのなら、子供が親世代を養うという現行の制度をやめて、スウェーデンのような制度(*)に変更すべきでしょう。

こちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月24日 (木)

MTT-サンフランシスコ交響楽団@NHKホール2016年11月22日

Imgmttsanfあまり外国のオケは聴きに行かない方なのですが、昨年のラハティ交響楽団以来のサンフランシスコ交響楽団を聴きにNHKホールまで行ってきました。渋谷の2番バス乗り場からお召しバスに乗って、もう何年ぶりか覚えていないくらい久しぶりのNHKホールです。巨大なホールがほぼ満員の大盛況でした。

前半はユジャワンがソリストでショパンのピアノ協奏曲第2番。指揮者はMTTの愛称で知られるマイケル・ティルソン・トーマスです。

ユジャワンはセクシーな舞台衣装で有名ですが、今回は乳房が半分見えているようなイヴニングドレスで悩殺。ピアノも最近の進境は著しく、自由自在なニュアンスで素晴らしいショパンを聴かせてくれました。イングリット・フリッターにちょっと芸風が似てきましたかね。オケの方は、「ユジャさん、どうぞお好きにやって」という感じでした。

ユジャワンってどんな人?
https://www.youtube.com/watch?v=gGHswmPxLQY
https://www.youtube.com/watch?v=pn_DKNeUsZ4

ソリストアンコールもやってくれました。
シューベルト(リスト編) :糸を紡ぐグレートヒェン

後半はブルックナーの交響曲第7番。CDで最近聴いたのはシモーネ・ヤング指揮ハンブルク・フィルハーモニカーの演奏でした、これはすみずみまで神経が行き届いた怜悧で繊細な演奏で、ちょっと驚かされましたが、このMTT-サンフランシスコ交響楽団の演奏も特異な印象を受けました。

ヤングよりもさらに女性的な演奏で、実にやわらかく暖かみがあって、それでいてダイナミック。金管は特に素晴らしい迫力でした。宗教的な雰囲気や、ヤング-ハンブルクの演奏で感じられた寂寥感はありませんが、聴衆をハグしてくれるような親密さが感じられる希有の演奏会だったと思います。不思議な体験でした。MTTは1995年からサンフランシスコ交響楽団の音楽監督をやっているそうで、今年で21年目になります。しかしつきあいが長いからといってでてくるものではない指揮者とオーケストラの親密さが、演奏ひいては聴衆のメンタルにも何らかの精神的影響を与えるということを感じました。

終演後外に出ると公園通りは電飾されていました。「青の洞窟SHIBUYA」というそうです。

Img_1606

12月11日(日)午後9時からEテレ「クラシック音楽館」で放映するそうで、これは要チェックです。

MTT-サンフランシスコ交響楽団のマーラー「リサレクション」
https://www.youtube.com/watch?v=nBNhR4UhNVE

MTTらの第9解説
https://www.youtube.com/watch?v=krCiR04u8Ig
https://www.youtube.com/watch?v=783P6CVkszc

マイケル・ティルソン・トーマス: 音楽と感情の奏でる歴史
https://www.youtube.com/watch?v=FD5ZKi-moMU


| | コメント (2) | トラックバック (0)

2016年11月23日 (水)

やぶにらみ生物論48: 岡崎フラグメント

Okazakireiji_3岡崎令治氏(1930~1975、図1)は20世紀の分子生物学の爆発的進歩に、戦後間もない日本(名古屋大学)で、日本人として最大の貢献を果たした科学者だと思います。広島に原爆が落とされたときに爆心地近傍で被曝されたとのことで、白血病で若くして亡くなったのは残念至極です。

奥様の恒子氏も科学者かつ共同研究者で、「岡崎フラグメントと私」という一文を生命誌ジャーナルに寄稿されています(1)。発見時の状況や苦労した点などを含めて記述されているので、DNAの複製に興味のある方は一読をお勧めします。もう少しアカデミックな記載としては、やはり岡崎恒子氏の「不連続複製機構を紡いだ日々」(2)という文献が、いまは亡き「蛋白質・核酸・酵素」という雑誌のバックナンバーに残されています。

生物は(ウィルスも生物だとすれば)一部のウィルスを除いて、すべて図2のようなレプリケーションフォークを作ってDNAを複製します。ラジオオートグラフィーなどで巨視的に見れば、DNAはY型のレプリケーションフォークを形成しつつ、両鎖が同時に複製されるようにみえるわけです。

そこで図2Aのように複製が行われるのであれば簡単なのですが、ひとつ問題があって、プライマーの 5'P 末端側からDNAを伸ばしていくDNAポリメラーゼがさっぱりみつからないのです。DNAポリメラーゼはどうも 3'OH からしかDNA合成を行えないとしか考えられません。

そこで岡崎らは図2Bのような複製様式を考えて(当時はプライマーの存在はわかっていなかったので、緑の線は後の知識を加えて描いたものです)、1966年に放射性チミジンが1000~2000ヌクレオチドの短いDNAの鎖(後に岡崎フラグメントと呼ばれることになる)に取り込まれることを発表しました(3)。つまり微視的にみれば、片側の鎖は逆方向に短い鎖として複製され、あとでつながるという方式です。

Photo_5

しかし複製中のDNAを集めて単鎖に変性させると、多量のプライマーや岡崎フラグメントが採取できるかというと、そういうわけにはいきません。プライマーはどんどん分解され、DNAはどんどん接続されるので、無傷のプライマーや岡崎フラグメントは本当にわずかな量がわずかな時間にだけ存在するのです。

ここで救いの神となったのはDNAを接続する酵素であるDNAリガーゼの発見者である C. C. Richardson で、岡崎研にリガーゼが温度感受性となっているT4ファージの株をプレゼントしてくれたのです。その株で実験してみると、予想通りリガーゼが働かない高温条件だと、じゃんじゃん岡崎フラグメントが発生し、温度を下げるとそれらはつながることが証明されました(4)。岡崎らはさらに両鎖とも 5'→3' 方向に鎖の伸長が進むことを示しました(5)。

あとひとつ解決しなければならないことは、最初に不連続複製のモデルを提出した頃にはわかっていなかったプライマーの問題なのですが、ここにいきつくまでに令治氏は他界し、恒子氏率いるグループにに課題は残されました。

1979年に至ってようやく恒子氏のグループはプライマーRNAの構造を解明し(6)、図3のようなDNA不連続複製の全貌が明らかとなりました。すなわちリーディング鎖ではDNAの複製は連続的に行われ、ラギング鎖では逐次プライマーと岡崎フラグメント(a, b, c 等)が形成される逆方向の不連続複製が行われるということになりました。

Photo_6

DNAの2本の鎖はそれぞれ別の様式で複製されるため、3’末端から複製される鎖はリーディング鎖、5’末端から複製される鎖はラギング鎖と名付けられました。ラギング鎖においては、リーディング鎖とはことなり、逆方向から岡崎フラグメント(a, b , c) をつくりながら不連続に複製が行われます。逆方向とは言っても、鋳型(テンプレート)が逆方向なわけで、DNAを合成する方向としてはどちらも 3'OH を起点として5→3方向に進んでいるのです。

図3の状態からさらにプライマー(緑)を取り去り、できたギャップを埋め、DNA鎖を接続するという作業が必要になります。これは概略図4のように行われます。図4におけるDNAの塩基配列は説明のために記載した任意のものであり、実際の配列とは関係ありません。

Photo_7


1.岡崎フラグメント(矢印青)がDNAポリメラーゼによって伸長されるとプライマー(緑)の 5'P 側とぶつかります。DNAポリメラーゼは伸長DNA端の 3'OH とこの P を結合させることはできないので、ニック(切れ目)を生じたままそこで反応を停止します。

2.RNase HなどによってプライマーRNAが分解されますが、RNase Hはリボースとリボースの結合しか切れないので、リボースとデオキシリボースが結合している最後の1ヌクレオチド(緑のドット)は処理できません。

3.最後の1ヌクレオチドは 5'P 側からリボースとデオキシリボースの結合を切るヌクレアーゼが作用して、もとプライマーがあった部分が完全なギャップとなります。

4.このギャップはDNAポリメラーゼによって埋められますが(哺乳類の場合DNAポリメラーゼデルタ)、DNAポリメラーゼは 3'OH を認識してそこにヌクレオチドをくっつけていく酵素なので、赤矢印右端の 3'OH を既存の 5'P と接続することはできません。したがってニックができることになります。

5.このニックはDNAリガーゼ(英語ではライゲース)によって接続され、岡崎フラグメントは解消されて、ラギング鎖の新生DNAは連結されます。

6.そしてプライメースによってプライマーがつくられ、そこからDNAが合成され、1のステップにもどります。この1~6のステップを繰り返すことによって、ラギング鎖のDNA複製が行われます。

私はこの記事を書いていて、これまで岡崎令治氏は早逝されたのでノーベル賞を受賞できなかったと思っていたのですが、いろいろ難癖をつけられた岡崎フラグメントをさまざまな実験で世に認めさせた功績から言えば、岡崎恒子氏の貢献が大きいと思いました。すなわち岡崎恒子氏(および発見論文のファーストオーサーである坂部貴和子氏)こそ受賞すべき人なのではないでしょうか。

そしてもうひとつここでふれておきたいことがあります。DNAリガーゼは1967年に  Bernard Weiss と Charles Clifton Richardson によって発見された、DNAの断点(ニック)を接続したり、DNA同士を連結させる酵素です。 リチャードソンは現在もハーバード大学に研究室を構えているようですが、ワイスの消息は追跡できませんでした。リタイアしたのかもしれません。米国版も含めてウィキペディアへの記載もありませんでした。DNAを合成する酵素、DNAを切断する酵素については数人がノーベル賞を受賞していますが、遺伝子工学で頻繁に用いられるDNAを結合させる酵素=DNAリガーゼについては候補にもあがらないというのは不可解です。

参照:

1)「岡崎フラグメントと私」岡崎恒子、生命誌ジャーナル vol.9、no.3、pp.24-29 (2001)
http://brh.co.jp/s_library/interview/32/

2)「不連続複製機構を紡いだ日々」岡崎恒子、蛋白質核酸酵素 vol.48, no.6, pp.718-726 (2003)
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=2003&number=4806&file=usD0LKftXwfjSwF9ietppw==

3)K.Sakabe and R. Okazaki, A unique property of the replicating region of chromosomal DNA. Biochim Biophys Acta. vol.129, pp.651-654 (1966)

4)R Okazaki, T Okazaki, K Sakabe, K Sugimoto, and A Sugino, Mechanism of DNA chain growth. I. Possible discontinuity and unusual secondary structure of newly synthesized chains. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.59, pp.598-605 (1968)

5)T. Okazaki and R. Okazaki, Mechanism of DNA chain growth, IV. Direction of synthesis of T4 short DNA chains as revealed by exonuleolytic degradation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.64, pp.1242-1248 (1969)

6)T. Okazaki et al., Structure and Metabolism of the RNA Primer in the Discontinuous Replication of Prokaryotic DNA. Cold Spring Harb Symp

7)B Weiss and C C Richardson, Enzymatic breakage and joining of deoxyribonucleic acid, I. Repair of single-strand breaks in DNA by an enzyme system from Escherichia coli infected with T4 bacteriophage. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.57, pp.1021–1028 (1967)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月21日 (月)

礼節などどうでもよい国

Img_1592

秋も深まり、冬の入り口の季節になりました。近所のケヤキも盛大に落葉しています。

今日はトランプの話題です。晋三はさっそく面会したそうですが、これが物議をかもしています。

(佐藤優談) トランプ会談は官邸の勇み足で、外務省の不作為でもあった。オバマというれっきとした元首がいるのに、それをすっ飛ばして次期元首に会うということは、外交儀礼上きわめて異常なこと。

オバマにはまだ権限があるんだから、ぎりぎりまで権限のある人物を大切にする。広島にも来てくれたんでしょう? それが外交における友好国の礼儀でもある。就任前の大統領と他国の元首が会談するということは「初めての出来事」と言われているのは、これまでにそれほど非礼な国家元首は現れなかったからだ。せめてペルーのAPECに先に行ってオバマと会ってから、帰りにトランプと会えば申しわけが立ったはずだ。

(管理人) 選挙期間中にトランプには会わずに、ヒラリー・クリントンにだけ会ってきたのも晋三の真骨頂。トランプに会えないのなら渡米はとりやめるべきだったでしょう。

ソース http://www.asyura2.com/16/senkyo216/msg/273.html

今回の会談は首相官邸側が独断で決定し、外務省が何らかの理由で異議を唱える事が出来なかったとも言及していました。外務省は大統領選挙で「ヒラリー・クリントンが勝つ」と繰り返し強調していたことから、それが原因で首相官邸に何も言えない状態になっていると見られています。

ソース http://saigaijyouhou.com/blog-entry-14297.html

安倍首相ペルーで赤っ恥…オバマ米大統領と会談できず。
オバマ大統領がいつも以上に冷淡なのは当然で、色物扱いしてきたトランプ氏の次期大統領就任が決まると、安倍首相は大慌てで会談をセッティング。「APECまでの給油地だから」という理由で、ニューヨークに勇んで駆け付けたのだ。それもオバマが欧州歴訪で外遊中という、まるで間男のようなタイミングだった。

ソース http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/194340

(管理人) なんでこんなのが総理をやっているかというと、マスコミの先導によって(晋三ははじめてトランプと会談した首脳などとほめまくる)、日本人が礼儀なんてどうでも良い民族に劣化したからです。

東京新聞の長谷川論説委員が、「TPPに反対のトランプが当選したのに、支持しない日本の左翼はおかしな連中だ」などとコラムに書いていますが、トランプは軍国主義者・レイシストで銃規制反対、副大統領候補ペンスは進化論反対、同性愛者は治療、こんな政権を支持できるわけないでしょう。彼はそんなことは百も承知で、左翼はバカというムードを醸し出すためだけに、意味のない文章を新聞のコラムに書いているのです。東京新聞は保険で晋三のお友達を飼っているのでしょうが、こんなコラムは新聞の品格を破壊してしまうので、考えた方がいいと思いますよ。

トランプ政権
http://www.afpbb.com/articles/-/3108518

| | コメント (0) | トラックバック (0)

リーガ・エスパニョーラ2016~2017第12節: 人海戦術の守備を崩せずバルサ痛恨のエンパテ

Braugranaカンプノウでマラガとの対戦です。ルイス=スアレスがカード累積、メッシは体調不良でベンチにもはいれず。ということでFW:ネイマール・パコ・アルダです。MF:ラフィーニャ・デニス=スアレス・ブスケツ、DF:ディニュ・マスチェラーノ(銀髪化)・ピケ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。

マラガはワントップが今年バルサから移籍したばかりのサンドロで541です。GKは日本でもおなじみのカメルーンのカメニ。まだ現役しかもトップリーグでやっているのには驚きます。

ものすごく綺麗な541で統制がとれていますが、極端に守備的で、バルサが球を持つと、サンドロまでハーフラインより後退して守備するという作戦です。メッシとルイス=スアレスを欠いて5バックを突破するというのは骨が折れます。

アルダとセルジの右サイドはなかなかコンビネーションが良くて、ワンツーなどで突破してクロスを供給するところまではいくのですが、中央はがっちり固められているので、なかなかシュートまではいけません。ネイマールも個人技で突破しようとするのですが、いかんせんひとりではどうにもなりません。ディニュとのコンビネーションもいまいち手探り状態です。パコが抑えられているので、ミドルシュートしかチャンスがない感じで、これもふかしたりカメ二に止められたりで成果なし。もたもたしているうちにハーフタイムです。

後半はファン・カルロスにGKまで抜かれて危ない場面がありましたが,シュートがずれてセーフ。バルサはアルバとアンドレ=ゴメスを投入。マラガは23分ディエゴ・ジョレンテがネイマールへの危険なチャージで退場。時間も無いことですし、バルサはラキティッチも投入で、どんどんゴール前に放り込む作戦に変更しました。これはまれにみる異常事態です。ここでマチューがベンチにもいないことは痛かったですが、まさか放り込みのサッカーになるとは監督も予想できなかったか?

アディショナルタイムにネイマール渾身のヘディングで決まったかと思ったのですが、ここでカメニ爺がスーパーセーブとは(直後に足痛めてましたが)! 鉄壁の541+カメニを崩せずバルサ涙のエンパテ。レアル・マドリーの後姿が遠くなりました。

こういう試合では、特に前半ネイマールが持ったときに、ラフィーニャとデニス=スアレスがもっと突入の動きをみせるべきだったと思いますね。本日の反省点です。次は問題のアノエタで、艱難辛苦のバルサです。

https://www.youtube.com/watch?v=caKLuxgZ-uU

https://www.youtube.com/watch?v=AJ0H00b6ZXA

https://www.youtube.com/watch?v=O-0H04Cs0qc

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月20日 (日)

大野都響-ペレアスとメリザンド@サントリーホール2016年11月19日

Img_1596aまたインフルエンザの季節がやってきました。一気にマスクをしている人が増えた感じです。

銀座線が一部運転中止でしたが、溜池山王までは走っていてラッキーでした。いつもどおりサントリーホールに到着。本日もチケット完売で、最近の都響人気はすごいものがあります。これに慢心しなければいいのですが。

カラヤン広場に着くと不思議な雰囲気のクリスマスツリーと祭壇風のイルミネーションが輝いていました(写真)。ペレアスとメリザンドの墓なのでしょうか?

メーテルリンクの「ペレアスとメリザンド」は読んだことがありませんが、あらすじ的には一人の女を兄弟で争うという家庭内悲劇のような話なのに、今日の2人以外にもドビュッシーなど多くの作曲家の興味をひいたというのは不思議です。

本日の指揮者は大野さん、コンマスは四方さん、サイドは矢部ちゃんの最強シフト。最初の曲フォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」はフォーレにしては重厚な作品で、なかなかの名曲でした。ただシシリエンヌはあっさり通り過ぎてしまったような感じでした。もう少し高雅な雰囲気をじっくりと楽しませて欲しかったという気がします。

引き続いて、庄司紗矢香さん(Vn)をソリストに迎えて、デュティユのヴァイオリン協奏曲「夢の樹」。庄司紗矢香さんはインドネシア風の赤系のロングドレスでびっくりしました。この曲はさまざまに変化する音響の楽しさを感じさせてくれる曲です。ソロヴァイオリンですら、音響で曲に参加している感じです。

ツィンバロムという楽器もはじめてみました。鉄琴・木琴ほど自己主張せず、控えめにスパイスを与えてくれます。こんな滅多にお目にかかれない楽器を製作している会社がまだ世界には4社もあるというのは、クラシック音楽の世界も奥が深いです。

Img_1600a

休憩後はシェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」。まれにみる大編成で、エキストラも大勢参加していました。ホルン8本にトランペット4本、トロンボーン5本です。この曲はワグナー風の音響で、しかも部分的には聴き所満載で、特に南方さんのイングリッシュホルンをたっぷり聴けたのはよかったのですが、全体的にはのべつ幕なしに金管が鳴っている暑苦しい曲で感動を妨げられます。私が作曲家だったら改訂したくなりますね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月18日 (金)

やぶにらみ生物論47: DNA複製機構

「DNAの半保存的複製」のところで、1956年にアーサー・コーンバーグがDNAの複製に関わる酵素DNAポリメラーゼを発見したことを述べました。世紀の大発見で、早くも1959年には彼にノーベル賞が授与されたくらいです。ところがそれから10年も経った1969年、DNAポリメラーゼ活性を失った大腸菌の変異株を分離したという驚天動地の報告が Nature 誌に発表されました(1)。これはアーサー・コーンバーグの酵素がなくても大腸菌は増殖できることを意味します。大ピンチに陥ったアーサー・コーンバーグでしたが、その後始末は息子のトーマス・コーンバーグ(1948~)や、共同研究者のマルコム・ゲフター、広田幸敬(1930~1986) らによって迅速に行われました。

ゲフターとトーマス・コーンバーグはすぐに、大腸菌抽出液中にアーサーが発見した酵素( pol I ) 以外に2種類のDNA合成酵素があることを発見し、それらを精製して pol II, pol III と命名しました。当時広田はDNA合成に関する温度感受性変異株を多数分離しており、ゲフターとトーマスは広田との共同研究によって、それらの温度感受性変異株と pol I のダブルミュータントを解析しました。そうすると pol II はどの株でも正常でしたが、ある株で pol III が強い温度感受性を示しました。この株では pol III が高温によって変性してしまたために、DNAが複製できなくなったのです(2)。このことは pol III がDNA複製を担う酵素であることを強く示唆しましたが、この酵素単独では複製能力が低く、DNAの複製はそんなに簡単にいくものではない、すなわち未知因子がかかわっていることも示唆されました。

閑話休題、トーマス・コーンバーグはチェリストでもあり、著名なピアニストのエマニュエル・アックスとベートーヴェンのチェロソナタを見事に演奏している様子が YouTube にアップされています(3)。広田幸敬先生の講義は聴いたことがあります。気さくで親しみやすい方との印象でした。「大腸菌の性因子に関する研究が、ちょっとした差でジャコブの手柄になって非常に残念だった」というようなことを話されていたことを記憶しています。若くして亡くなられたのは誠に残念でした。

さて、ではDNA複製にどんな因子がかかわっているのでしょうか? この後アーサー・コーンバーグ研究室のすさまじい逆襲がはじまりました。多くの有能な若手研究者や学生を集めて、毎月複数の論文が出版されるほどの精力的な研究が進められました。しかもジェラルド・ハーウィッツの研究室も小うるさく参戦してきました。

彼らはまず試験管内無細胞系のDNA合成システムを完成させました。温度感受性変異株は高温下ではこのシステムでも当然DNA合成はできません。これに正常株の抽出液を加えるとDNA合成は回復します。そこで正常株の抽出液をクロマトグラフィーなどによって幾つかの画分に分け、どの画分を加えると回復するか調べます(相補性テスト)。これを繰り返すことによって画分に含まれる成分は減少し、最終的にある精製された1種のタンパク質を加えると回復するということが判明します。別の株で同様な操作を行うと、また別種のDNA合成にかかわるタンパク質が精製されます。このような相補性テストで精製されたタンパク質はそれぞれ DnaX (X は任意のアルファベット)という名前が付けられ、それぞれの機能が解明されていきました。

なぜそんなに多くの因子が必要かということを考える上で、とりあえずDNAポリメラーゼができることを図1に示します。DNAポリメラーゼは2重鎖と1重鎖の両方をの部分を持つDNAにしかアクセスできません。しかも1重鎖(プライマー)の 3'OH が端でない方に露出している必要があります。プライマーの3'OH末端、 鋳型DNA、そしてデオキシヌクレオシド3リン酸が存在したとき、DNAポリメラーゼはデオキシヌクレオシド3リン酸からピロリン酸を切り離し、鋳型DNAに適合したデオキシヌクレオシド1リン酸の5'Pを3'OH末端に結合させて、DNAの鎖長をのばすことができます。これ以外のことはできません。鎖長を連続的に延長させるためには、もちろん dATP、dTTP、dGTP、dCTP の4種のデオキシヌクレオシド3リン酸が必要です。

Photo_7


ですから2重鎖だけのDNAや1重鎖だけのDNAがあってもこの酵素はDNA合成はできません。実際細胞内にはそのようなDNAがまま存在するので(たとえば紫外線でDNAが切れた場合とか、ウィルスが感染した場合とか)、意味のない、あるいは有害なDNAをどんどん増やさないために、DNAポリメラーゼの機能が厳しく制約されていることには生理的意義があります。ただDNAの損傷修復に用いられるDNAポリメラーゼの中には、そのような制約を受けないものもあるようです。

図1ではDNAになっていますが、プライマーは通常RNAです。ですからプライマーをつくるプライメースはRNAポリメラーゼの1種です。RNAポリメラーゼは一般的にプライマーを必要としない酵素です。

図1から想像できるように、DNAの複製は DnaX タンパク質群やさまざまな酵素などのお膳立てや後始末があって、はじめて可能になるわけです。コーンバーグらが研究を続けていくと、pol III 以外の多くの種類のタンパク質や酵素がDNA合成にかかわっていることがわかってきました。DNAポリメラーゼIII (pol III) 自体も、現在では多くのタンパク質が結合したDNAポリメラーゼⅢホロ酵素のかたちで、DNA複製を実行することがわかっています(図2 ウィキペディアより)。図2で pol III (コア酵素)は α と表示されています。

800pxdna_polymerase__2

DNAは通常2重らせん構造をとっているので、上記したようにDNAポリメラーゼがアクセスすることは不可能です。ですからまずDNAの鎖をほどいて1本鎖の塩基側を露出させ、かつ酵素がアクセスするに十分なスペースをつくらなければいけません。

DNAはある決まった位置から複製が開始されます。開始位置領域には oriC という名前がつけられ、そこに大腸菌の場合8つの DnaA タンパク質の結合部位(TTATCCACAなど)が存在し、ここに DnaA が結合することによって、周辺に存在するATリッチな部分の2重ラセンをほどき、DnaB と DnaC がアクセスできるようにします。DnaB (helicase) と DnaC は協力してDNAの単鎖構造を安定化させ、DNA複製のお膳立てをします(参照5、図3)。

Photo_8

こうして作られたアクセス可能な部位にDNA複製酵素がやってきて、すぐに複製を開始するかというと、そのような生物は見つかっていなくて、ほとんどの生物ではまずプライマーという短いRNA(生物によってはDNA)が作成され、そこを起点としてようやくDNA複製が開始されます(図1)。

大腸菌の場合、まず塩基の数にして11±1のRNAフラグメント(プライマー)がプライメース(primase)という1種のRNAポリメラーゼによって作成され、その3’末からDNA複製がはじまります。

プライマーのRNAフラグメントは後に別の酵素によって取り除かれます。この別の酵素というのが RNase H やアーサー・コーンバーグが発見したDNAポリメラーゼ I(pol I)だとされています。このときには pol I はRNAを分解する酵素としても働くという2面性を持った特異な酵素です。そうして取り除かれたあとの空白をDNAで埋め戻し、最後に残された5'Pと3'OHの断点をDNAリガーゼ(DNA ligase)で接続してようやくDNA複製は完了します(5)。DNAの合成はDNA複製のときだけではなく、DNAがダメージをうけたときにも行われます。アーサー・コーンバーグの酵素はそのような際にはDNAポリメラーゼとしても作用します。

大腸菌の場合ゲノムはサーキュラーで複製開始点はひとつですが(図3)、真核生物ではゲノムはリニアで多数の複製開始点があります(図4)。酵母で複製開始点を同定したデータをみますと、一定間隔であるわけでもないし、いっせいに複製が開始されるわけでもないようです(6)。DNA複製が行われている部分のことを replication bubble とか replication eye などと呼ぶことがあります。

Photo_9

参照:

1)Paul de Lucia, John Cairns, Isolation of an E.Coli strain with a mutation affecting DNA polymerase. Nature vol.224, pp.1164-1166 (1969)

2)Malcolm L. Gefter, Yukinori Hirota, Thomas Kornberg, James A. Wechsler, and C. Barnoux. Analysis of DNA Polymerases II and III in Mutants of Escherichia coli Thermosensitive for DNA Synthesis. Proc Natl Acad Sci U S A. vol.68, pp.3150-3153 (1971)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC389610/

3)https://www.youtube.com/watch?v=81rk7_I4-zY

4)http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/replicat.htm

5)Molecular Biology of the Gene. 7th edn., J.D.Watson et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2008)

6)大阪大学大学院升方研究室 研究紹介
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/masukata/research/index.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月16日 (水)

ハチャトゥリアン・コレクション

Armenianstamps284アラム・ハチャトゥリアンはトビリシ生まれのアルメリア人で、クラシック音楽・映画音楽の作曲家であり、指揮者としても有名な方だったようです。アルメリアでは写真のような切手になっています。

1963年に来日して京都市交響楽団、読売日本交響楽団を指揮したそうです。学生時代に吹奏楽やバレエをやっていた方にはおなじみさんのようですが(http://kukikei.sakura.ne.jp/khachaturian.html)、私などは剣の舞以外あまり知らない作曲家でした。

少し YouTube で探してみると、結構いけます。

----------------------------------------------

スパルタクスとフリギアのアダージョ:

https://www.youtube.com/watch?v=wXsDsLHasWo
サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

https://www.youtube.com/watch?v=rPxVN0VMWqI
https://www.youtube.com/watch?v=sadaXPkz1gc
バレエパフォーマンス

https://www.youtube.com/watch?v=lHkwAM50MXU
ピアノバージョン
Karine Poghosyan performs "ADAGIO" by Aram Khachaturian
Arranged for solo piano by Matthew Cameron

https://www.youtube.com/watch?v=tWNrqsrd2PI
(個人的にこれが一番好きかも)

----------------------------------------------

ガイーヌ 剣の舞:

https://www.youtube.com/watch?v=mUQHGpxrz-8
サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

https://www.youtube.com/watch?v=IMczfLNoGYQ
conductor: Maxim Eshkenazy, Classic FM Orchestra, Bulgaria Hall

----------------------------------------------

ガイーヌ レズギンカ:

https://www.youtube.com/watch?v=cECWCDhBHKE
1991年フェドセーエフ&モスクワ放送交響楽団
(すごすぎる)

https://www.youtube.com/watch?v=lgLO1YtUejw
Russian Bolshoi Symphony Orchestra
Tomomi Nishimoto, conductor

https://www.youtube.com/watch?v=xYZoeVVqLsA
Saint Petersburg Youth Symphony Orchestra
Conductor - Migran Agadzhanyan

https://www.youtube.com/watch?v=6Dt9TqAH4k4
バレエパフォーマンス

----------------------------------------------

仮面舞踏会 ワルツ:

https://www.youtube.com/watch?v=dLENHBw48DA
Moscow Chamber Orchestra, conducted by Constantine Orbelia

https://www.youtube.com/watch?v=fPp3Qh-GRqs
London Symphony Orchestra, Stanley Black

----------------------------------------------

ガイーヌ 子守歌:

https://www.youtube.com/watch?v=L5CgvuglItk
St. Petersburg State Symphony Orchestra

----------------------------------------------

Poem and Toccata (詩曲とトッカータ):

https://www.youtube.com/watch?v=7cxhFBqZhTo
Tanya Gabrielian, piano

----------------------------------------------

ヴァイオリン協奏曲:

https://www.youtube.com/watch?v=rixdcNMGwWQ
Eva Sulic (Vn)
Zagreb Philharmonic orchestra

https://www.youtube.com/watch?v=rXjZAwZoj1g
Amaury Coeytaux (vl). Spanish Radio and Television Orchestra - Michael Francis (cond.)

----------------------------------------------

Trio for piano, clarinet and violin:

https://www.youtube.com/watch?v=zjaMI8WbVAI
Narek Arutyunian, clarinet
Ida Kavafian, violin
Sahan Arzruni, piano

https://www.youtube.com/watch?v=kKXljsqWz2M
Maxim Lando-piano, Vadim Lando-clarinet, Hovhannes Mokatsian-violin

----------------------------------------------

チェロ協奏曲

https://www.youtube.com/watch?v=D13ChZq5NRE
3rd Polish Nationwide Music Schools' Symphonic Orchestras Competition
Aneta Stefa?ska - cello
Marta Kluczynska - conductor

https://www.youtube.com/watch?v=5C0S-IUEhAQ
Aram Khachaturian. Cello Concerto-Rhapsody
Mstislav Rostropovich-cello
State Orchestra of the USSR
アラム・ハチャトゥリアン本人指揮

----------------------------------------------

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月15日 (火)

World Cup アジア最終予選 日本代表

A0011_000149日本代表 勝利おめでとうございます。
中盤の守備でサウジを圧倒しましたね。

しかしあのPKはひどい。レフェリーのレベルが低すぎます。全然ハンドじゃないでしょう。昔からアジアのレフェリーのレベルは問題にされていますが、改善はまだまだ遠いようです。

それを考えると日本代表にもまだまだ問題はありますね。一度親善試合か練習試合で5バックをやって、きっちりラインコントロールをする練習をやった方がいいかもしれません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月14日 (月)

やぶにらみ生物論46: リボソーム

mRNA、tRNA、リボソームなどは生命現象を維持するために必須のアイテムであり、細菌からヒトまですべての生物が持っているものです。これらを使ってタンパク質合成を行うというやり方をはずれた生物は1種もみつかっていないので、地球上の生命体はすべて同じルーツという考え方には説得力があります。

リボソームの話に入る前に、生化学者にとっては今でも大切な細胞分画法についてお話します。真核生物の細胞内には核・ミトコンドリア・葉緑体・ミクロソーム・リボソーム・リソソーム・細胞骨格など不溶性の構造体が数多く含まれます。

Douncehomogenizerwhe_2細胞をまずホモジェナイザー(図1、Wheaton 社のサイトより)を使って壊します。図1のホモジェナイザーは先端のテフロン部分が円柱状になっており、ダウンス型といいますが、その他先端のテフロンがボール状のポッター型もあります。

ガラス容器のなかに細胞懸濁液を入れ、ステンレス棒をテフロンブロックに埋め込んだベスルを、回転させたり上下にピストン運動させたりして細胞を壊します。

ガラス容器とテフロンの間にわずかな隙間があり、細胞のサイズや堅さに応じて、その隙間の幅を変えて使います。ガラスとテフロンの膨張率は異なるので、通常4℃で隙間の幅は設定されています。

ホモジェナイザーで作成した細胞破壊液を遠心機にかけて、沈殿と上清にわけ、上清をさらに強い遠心力を使って沈殿と上清にわけるというやりかたで、さまざまな細胞内構造体を段階的に分離するのが細胞分画法で、アルバート・クロード(1899~1983)が創始した方法です(図2、参照1)。

Photo_2

遠心力の強さ(+遠心時間の長さ)によって、沈殿してくる細胞内構造体は変わります。上記の方法では、段階的に遠心力を強めて異なる細胞内構造体を採取できるようにしています。

3georgepaladero0331_2リボソームは細胞分画法で得たミクロソーム画分にあります。

ジョージ・パレード(1912~2008)は1955年に出版した論文で、電子顕微鏡を用いてリボソームを観察し、それがミクロソーム(エンドプラズミック・レティキュラム=ER)に結合していることを報告しました(2)。

パレードはルーマニア人ですが、米国ロックフェラー研究所のアルバート・クロード研究室のポストドクとなり、クロードが開発した「生物を電子顕微鏡で観察する手法」を発展させました。母国では現在でも切手になっています(図3)。

アルバート・クロードとジョージ・パレードの師弟2人は、リソソームの発見者であるクリスチャン・ド・デューブと共に1974年度のノーベル医学生理学賞を受賞しました。

リボソームはタンパク質を製造する工場であり、巨大なRNAと多数のタンパク質の集合体です。直径が20~30nmくらいあるので、容易に電子顕微鏡で粒子として見ることができます(2)。

リボソームは分子としては非常に巨大で、例えば真核生物では分子量420万というような値になるので、種類の違いやサブユニットの区別のためには通常沈降係数で表記されます。

沈降係数S=Vt(沈降速度)/負荷された加速度、つまり遠心力を強くかけたときに沈降速度がどの程度増加するかという単位がS(スヴェドベリ)ということになります。細菌と真核生物のリボソームはいずれも鏡餅のように2つの分子集合体からなりますが、サイズや構造は微妙に異なっています(図4)。

Photo_3

例えば真核生物の60Sサブユニットは5.8S、5S、28Sの3種類のリボソームRNAと49種類のタンパク質で構成されています。他のサブユニットもすべてリボソームRNAとタンパク質の複合体です。

ウィキペディアにでている立体構造の図などを見るとわかるように(3)、リボソームはリボソームRNA(rRNA)で構成された骨格に、さまざまなタンパク質が結合した複合体で、そのタンパク質の種類の多さからみても非常に複雑なメカニズムで稼働していることが想像されます。

しかもタンパク質合成にかかわっているタンパク質はリボソームを構成しているもののみではなく、フリーのものもあります。分子生物学の教科書「Molecular Biology of the Gene」 Cold Spring Harbor Press 」でも、リボソームにおけるタンパク質合成のメカニズムについて数十ページを費やしているくらい複雑で、ここですべて説明するのは無謀です。詳しく勉強したい方は上記の教科書を読むか、無料の論文なら参照(4)を推奨します。

キーポイントだけ述べますと、リボソームはmRNAをトラップするとともに、tRNAをトラップする2つのサイトがあります(図5)。

Photo_4

Pサイトにはポリペプチドを結合した tRNA がつながれています(5図左)。Aサイトにはアミノ酸をひとつ持った tRNA がやってきて、Pサイトのポリペプチドの根元にあるCOOを攻撃して、ここにペプチド結合(CONH)を作ります(5図左)。

その結果ポリペプチドはAサイトの tRNA に移行し、Pサイトの tRNA はフリーになってリボソームから離れます(5図右)。すなわちポリペプチドの長さは1アミノ酸分だけ長くなります。そしてこの延長されたポリペプチドを持ったAサイトの tRNA はPサイトに移行し、mRNAも1コドン分移動します。そしてまたAサイトに新たな tRNA がトラップされます(図5)。

この反応をアニメ化したものがウィキペディア「リボソーム」の項目の最後にあります(5)。ちょっとコマ送りが早いですが、よくみるとポリペプチドの合成の様子をわかりやすく表現しています。

参照:

1)Albert Claude, THE CONSTITUTION OF PROTOPLASM. Science vol.97, pp.451-456 (1943)
https://www.ganino.com/games/Science/science%20magazine%201940-1957/root/data/Science_1940-1957/pdf/1943_v097_n2525/p2525_0451.pdf

2)George E. Palade, SMALL PARTICULATE COMPONENT OF THE CYTOPLASM. J.Biophysc. and Biochem. Cytol. vol.1, pp.59-68 (1955)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2223592/pdf/59.pdf

3)https://en.wikipedia.org/wiki/Ribosome

4)Dmitri Graifer and Galina Karpova, Interaction of tRNA with Eukaryotic Ribosome. Int J Mol Sci. vol.16 pp.7173?7194 (2015)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4425011/

5)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%9C%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%A0

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月13日 (日)

高齢者の自動車事故 とっておきの対策

A1180_011025高齢者の運転による事故の多発が問題になっています。

これからどんどん高齢者の絶対数が増加するわけですから、高齢者の事故が多くなるのは当たり前ですが、だから対策しなくてよいというわけにはいきません。

認知症はもうどうしようもないので、免許更新時にチェックするしかないのでしょうが、それ以外の判断・運動機能の低下によるものにはひとつ対策があります。

それは左足でブレーキ、右足でアクセルを踏むように訓練することです。これでかなり踏み間違いは防げると思いますし、間違ったときの修正も容易です。最悪パニックになってどっちがブレーキだろうという状態になっても、思い切り両方踏み込めば車は動きません。

駐車場や人通りの多い道を走行するときは、左足をブレーキの上に置いたままで運転すると、衝突の危機に素早く対応できます。私はそうしています。

ところが自動車教習所ではこのような運転法は教えませんし、車の足下のアレンジメントがこのような運転に適した形になっていません。無理に内股姿勢をとらないと、左足ブレーキ、右足アクセルで運転できません。この点をメーカーと教習所が改めれば、かなり踏み間違いの事故は少なくなると思います。

近未来には生体認証で、一定以上接近すると自動的にブレーキが作動するようになるのでしょうが、それまで何もしないというわけにはいかないでしょうからね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月12日 (土)

サラとミーナ179: なめる

Aa

私にはネコがなめるという行為がどういう意味なのかよくわかりません。どうも愛情表現だけでは説明できない感じがします。

うちの2匹はどうも相手にどいてもらいたいときになめるとしか思えない場合があります。猛烈になめて「ああ面倒くさい」と思った方が負けでどきます。

なめあいはどうもサラは苦手のようです。右の写真では舌がみえていて、空振りしたところです。

サラもミーナも私をなめてくれることがありますが、2~3回なめると、ちょっと違ったなという感じで、そそくさと去って行きます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月11日 (金)

やぶにらみ生物論45: トランスファーRNA(tRNA)

DNAが遺伝情報の本体で、それが mRNA として読み取られるというところまでとりあえずきました。では mRNA が持っている情報は、どのようにタンパク質とつながっているのでしょうか。タンパク質はアミノ酸が連結したものなので、合成されるときにどのような順にアミノ酸が連結されるのかが重要です。

この mRNA が持っている順番の情報を、どうやってアミノ酸が連結する順番として反映するのかというのが難題で、これを解決するために生物はトランスファーRNA (tRNA)というギミックを生み出しました。DNAからmRNAをつくるプロセスを転写(transcription)、mRNAからタンパク質をつくるプロセスを翻訳(translation)といいます。翻訳のプロセスを遂行するための2つの重要なツールが tRNA とリボソームです。

Paulzamecnik1966_3特定のアミノ酸と結合し、タンパク質合成工場であるリボソームまでアミノ酸を運んで、mRNA に指定された順にリボソームに送り込む物質が存在しなければ翻訳を行うことはできません。

ポール・ザメクニック(Paul Zamecnik 1912~2009、 図1)らは、ラットの肝臓を使って、細胞破壊液中でタンパク質合成が行われる実験系を開発し、ATPの存在下で、各アミノ酸と結合する可溶性のRNAが存在することを証明しました(1)。この可溶性RNAが現在トランスファーRNA(tRNA)として知られているものです。

このような重要な発見であるにもかかわらず、mRNAの場合と同様、tRNA の発見者にもノーベル賞は授与されませんでした。少なくとも、この研究の中心となったポール・ザメクニックには授与されるべきだったと思うのは私だけではありません(2)。

とはいえ tRNA の構造を解明したロバート・ホリー(図2)には1968年にノーベル賞が授与されています。ロバート・ホリーらが研究を始めた頃には、すでにザメクニックらによって、各アミノ酸は tRNA 末端のアデノシンに結合することがわかっていたので、構造が異なる tRNA がアミノ酸の種類だけ存在すると想像できました。つまりアラニンにはアラニン専用の tRNA、リジンにはリジン専用の tRNA 等々というわけです。

Robert_holley_2ホリーのグループはクレイグの向流分配法(3)を4年がかりで最適化することによって、さまざまな tRNA を分離することに成功しました。彼らは特にうまく分離できたアラニン-tRNAをまず分析しました。140kgのパン酵母から1gの精製されたアラニン-tRNAを得るのに3年を要しました。1961年には、この tRNA は約80個のヌクレオチドが連結した単鎖であることがわかりました(4)。ホリーらの仕事は、本格的な構造決定作業の前に、7年もの準備作業を要したわけで、その間の予算を維持するのが大変だったことでしょう。

彼らは精製したアラニン-tRNAをRNA分解酵素で切断してフラグメントをつくり、カラムクロマトグラフィーで各フラグメントを分離して、それぞれの構造を決定しました。そしてついに1965年にアラニン-tRNAの全構造を解明しました(5、図3)。

すでに発表されていたRNAの2次構造に関する FRESCO-ALBERTS-DOTY モデルを参考にアラニン-tRNAの2次構造を描くと、美しいクローバーリーフ状の構造になりました。そしてその中央の葉の先端の3つの塩基がmRNAに対応することもわかりました。この3つの塩基はmRNAが指定するコドンの裏側の配列であり、アンチコドンと呼びます。その他のアミノ酸に対応する tRNA の構造も、その後次々と同様な方法で解明されました。

Photo_6

以前にDNAは2重らせん構造をとるのに対して、RNAは基本的に単鎖と書きましたが、短い2重鎖をつくることは可能で、特に tRNA の場合には顕著です。これによって tRNA は複雑な構造をとることが可能です。トランスファーRNAの一般的な構造を図4に示します。上方にアミノ酸の結合部位があります。下方の赤の部分のアンチコドンに対応したアミノ酸が結合します。おおざっぱには、2重鎖構造をとっている4本の幹と、単鎖の3つのループ、そして短い枝のような部分(ガンマ)からできています。

Photo_7

左側にDループ、右側にT(またはTΨC=TプサイC)ループがあり、これらの構造の違いによって別々の酵素がそれぞれの tRNA にアクセスし、適切なアミノ酸を結合させることができます。下方のAループ(アンチコドンアーム)にはアンチコドン領域があり、ここで mRNA のコドンを認識します。ここでもう一度コドンのリストを見て下さい(図5)。

Mainqimg8a46170563d_2

DNA・mRNAは3つの塩基でアミノ酸を指定しており、4x4x4=64種類のアミノ酸に対応できますが、アミノ酸は20種類ほどしかなく、複数のコドンがひとつのアミノ酸に対応するようにせざるを得ません。たとえばフェニルアラニン(Phe)の場合、UUUとUUCが対応します。ロイシン(Leu)の場合、CUU・CUC・CUA・CUG の4つのコドンが対応します。なかにはメチオニン(Met)やトリプトファン(Trp)のように、対応するコドンがひとつしかないものもあります。

全体をみていくと、最初の2つの塩基は各アミノ酸に特異的であり、3つめはしばりがゆるくなっていることがわかります。コドンのなかにはアミノ酸を指定しないものが3つあり(UAA・UAG・UGA)、これらはここでタンパク質合成を停止せよというシグナルのストップコドンです。

図6はAループの先端のアンチコドン領域を示したものです。アンチコドンを形成する3つの塩基のうち2つは厳密なワトソン・クリック型の対応(AU・GC)なのですが、残りのひとつ(アンチコドン側からいえば1番目の塩基)はルーズになっており、たとえばイノシン(I)はA・U・G・Cのどれとも塩基対を形成できるので、GUA・GUU・GUG・GUCのコドンに対して、アンチコドンはIACの1種類で対応し、バリンが指定されます。

このように生物はイノシンを用いるなどの巧妙な方法で厳密なワトソン・クリック型の塩基対を回避し、64種(ストップコドンを除けば61種)のコドンで20種のアミノ酸を指定するという難題を解決しているのです。

Photo_8

酵母のフェニルアラニン tRNAの塩基配列をウィキペディアからお借りしました(図7)。tRNAはmRNAのようにA・U・G・Cだけからできているわけではなく、その他のいろいろな塩基を含んでいます。mはメチル化されていることを示します。Ψはシュードウリジンで、ウリジンとは構造が異なります(図8)。たとえばフェニルアラニン tRNAはバリン tRNAと間違えられると困るので、酵素が認識しやすいようにさまざまな修飾がほどこされていると考えられます。

620pxtrnaphe_yeast__2


Graphic1_large_2

tRNAの 3'OH側の端は必ずCCAという塩基配列になっています(図7)。この一番端のAがついているリボースにアミノ酸が結合するわけです。ここにアミノ酸を結合させるためには、まずアミノ酸をアミノアシルAMPにしなければなりません。すなわちアミノ酸 NH2-R-COOH を NH2-R-CO-AMPという形にしなければなりません(アシル化とはR-COをくっつけること この場合Rはアミノ酸の種類の数だけ存在)。この形になると以下の反応が可能となります。

NH2-R-CO-AMP+tRNA → NH2-R-CO-tRNA+AMP 
(アミノ酸-AMP + tRNA = アミノ酸-tRNA + AMP)

この反応を触媒する酵素は、最低でもアミノ酸の種類の数だけ(20種類以上)存在し、例えばアラニンtRNAには必ずアラニンを結合させるようになっています。この酵素はアミノアシルtRNA合成酵素と呼ばれますが、核酸の持っている情報を使ってタンパク質を合成するというのはすべての生物がやっていることなので、どの生物でも各アミノ酸に対応して最低20種類はもっていなくてはいけません。これは無生物から生物が誕生する上で大きな壁で、ここを突破してはじめて生物なるものが登場し得たわけです。

こうしてできたアミノ酸-tRNAがタンパク質製造工場であるリボソームに運ばれて、タンパク質が合成されます。その状況はウィキペディアでうまく表現されていたので、図9にコピペしておきます。リボソームについてはあらためて述べますが、とりあえずtRNA(図ではTRNAと表記されています)がアミノ酸を運んできて、mRNAの指示通りの順にリボソーム内でアミノ酸を結合させ、アミノ酸を手放したtRNAはまたリボソームから去って行くというメカニズムだと理解できます。

Peptide_syn_2

tRNAの3D立体構造については、例えば文献6などに美しいイラストが掲載されています。

 

参照:

1)Mahlon B. Hoagland, Mary Louise, Stephenson, Jesse F. Scott, Liselotte I. Hecht, and Paul C. Zamecnik., A SOLUBLE RIBONUCLEIC ACID INTERMEDIATE IN PROTEIN SYNTHESIS., J. Biol. Chem. vol.231, pp.241-257 (1958)

2)Thomas H. Maugh II, Dr.Paul Zamecnik dies at 96; scientist made two major discoveries.
http://www.latimes.com/nation/la-me-paul-zamecnik19-2009nov19-story.html

3)https://wikimatome.org/wiki/%E5%90%91%E6%B5%81%E5%88%86%E9%85%8D

4)Holley R.W., Apgar J., Merrill S.H., Zubkoff P.L. Nucleotide and oligonucleotide compositions of the alanine-, valine-, and tyrosine-acceptor soluble ribonucleic acids of yeast. J. Am. Chem. Soc., vol.83:pp.4861~4862 (1961)
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja01484a040)

5)HOLLEY RW, APGAR J, EVERETT GA, MADISON JT, MARQUISEE
M, MERRILL SH, PENSWICK JR, ZAMIR A. STRUCTURE OF A RIBONUCLEIC ACID. Science, vol.147, pp.1462-1465 (1965)

6)Masahiro Naganuma, Shun-ichi Sekine, Yeeting Esther Chong, Min Guo, Xiang-Lei Yang, Howard Gamper, Ya-Ming Hou, Paul Schimmel, and Shigeyuki Yokoyama. "The selective tRNA aminoacylation mechanism based on a single G・U pair". Nature, 2014, doi:10.1038/nature13440
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140623_1/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 9日 (水)

トランプ勝利

Flag_of_the_united_states_svgTPPは明らかにグローバル企業のはしゃぎすぎでした。グローバル企業が世界を支配しようとしたからです。この企みはぎりぎりでトランプと彼に投票した米国市民によって幻となりました。これは是とすべきでしょう。

トランプが1番心配しているのは米国が赤字企業(貿易赤字+財政赤字)であることで、これを黒字化するためにかなり過激なこともやってきそうです。そのなかには外国企業への課税強化や、米軍の海外からの引き揚げも含まれるでしょう。

これから世界はブロック経済に移行していくのでしょうが、日本も東南アジアやオセアニアのブロック経済に参加させてもらえるよう努力すべきでしょう。中国やロシアとの関係も改善・発展させるべきでしょう。しかしあまりそういうことには期待しないで、自国の経済は自国で支えるような政策を行うことが肝要です。ともかく食糧とエネルギーの50%自給からはじめるべきでしょう。

警戒しなければならないのは、中国の脅威をあおって軍需産業が活気づくことです。軍需は天井がないので国家を滅亡させます。トランプが勝つとみた瞬間から日本の軍需産業の株が買われているようです。投資家と盗賊のお金に対する嗅覚はすごいものがあります。もともと石原が尖閣募金などをはじめて「話題」を盛り上げたのは、日米の軍需産業を活性化するためとの説もあるぐらいですからね(1~5)。私もそうじゃないかと思います。

晋三はオバマには心底嫌われていたようですが、トランプとは馬が合いそうです(お互いアレですからね)。ロシアとの平和条約はその気になればうまくいくかもしれません。これだけさっさとすませて政権交代してくれればいいのですが、晋三一味はしぶといですから困ったものです。

1)http://loveishigaki.jp/archive/FBposting/FBposting20160607.pdf
2)http://blogos.com/article/174578/
3)https://twitter.com/Grid_rockzero/status/796196444285767680/photo/1
4)http://blog.goo.ne.jp/youteifan6/e/6169749ab9dbfcca669a6c63c2c8182b
5)http://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/ad3aa871463e863ddec5e2d00fc74e7f

| | コメント (0) | トラックバック (0)

日本はどうなってしまうのか?

1024pxfukushima_i_by_digital_globeアーニー・ガンダーセン氏の試算によると、福島第一原子力発電所の事故処理には100年、総費用にして5000億ドル(約60兆円)の費用がかかるそうです(1)。

(写真はウィキペディアより)

そもそも原発を基幹エネルギーにしようとしたのが間違いですが、せっかくの台地をわざわざ掘ってつくったのも間違い、予備電源を海岸に置いたのも間違い、安全装置のテストを怠ったのも間違い、津波の高さを歴史に学ばなかったのも間違い、ウェスチングハウスなんてポンコツ会社を買収したのも間違い、爆発や甲状腺癌を隠蔽しようとしたのも間違い、小出裕章をバカにしていた学会も間違い、菅直人を悪者にしようとしたのも間違い、凍結遮水壁で地下水を処理しようとしたのも間違い、アンダーコントロールも間違い(これはウソか)、発展途上国に原発を売ろうとするのも間違い、減価償却するまでまだまた原発を使おうとするのも間違い、なので30年・11兆で廃炉できるという政府の見積もりも間違いなのでしょう。

これだけの間違いがあっても、誰も責任はとらないのが日本です。

ガンダーセンの言葉: 「福島第一原発で生じるダンプで数百万台分に相当する核廃棄物は最終的には日本のどこかに最終処分場を構築して保管する必要がある。」 をきくと絶望的になります。私は宇宙エレベーターをつくらないと処理できないように思います。

余談ですが、姶良カルデラに大量のマグマが蓄積されつつあるそうです(2)。この周辺で地熱発電ができないものかと思います。まずマグマの位置の測定です(3)。

1)
http://business.newsln.jp/news/201507240319500000.html

2)http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/160913_2/01.pdf

3)
https://www2.kek.jp/ja/newskek/2002/novdec/muon.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 7日 (月)

リーガ2016~2017第11節: 前半セビージャに圧倒されるも、後半盛り返してバルサ勝利

Braugranaペップ指揮のマンチェスター・シティにボロ負けしたバルサですが、すぐにサンチェス・ピスファンでセビージャとの対戦です。今年のセビージャはメンバーを一新して優勝を争うようなル強豪チームになりました。スタメンのヴィエット、サラビア、ナスリ、バスケスなどは皆今年移籍してきた選手たちで(そしてベンチの清武も)、昨年移籍のエンゾンジ中心に躍動しています。

バルサのスタメンはFW:ネイマール・ルイス=スアレス・メッシ、MF:デニス=スアレス・ラキティッチ・ブスケツ、DF:ディニュ・ウムティティ・マスチェラーノ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。アルダは出てきた途端にまたケガで出られません。イニエスタは重傷です。中盤に問題が発生するとバルサらしいサッカーはできません。

前半バルサは、ポゼッションでも完敗するほどセビージャのペースでのゲームを強いられました。中盤でのセビージャのプレスが鋭く、球を持てません。15分にはカウンターで、セルジがビトーロへのパスを止められず抜かれてGKと1:1となり。ビトーロにあっさり決められてしまいました。28分にはゴール正面でサラビアが受けて、1:1となり、これはダメかと思った瞬間に、なぜかサラビアがシュートを打たずバックパスというウソのようなプレイで、バルサは命拾いです。

バルサはようやく43分、ネイマールがうまくゴール前で時間を使って、やっと前に出てきたメッシにもどしてゴール。狭いところをよく通しました。なんとか1:1としてハーフタイム。

宮沢ミシェルは非常に有能な解説者で、何より明るくてサッカーの楽しさが伝わってくるのがいいですね。松木のようにハチャメチャじゃないですし。

後半は前半動きすぎたセビージャに疲労がみえてバルサペース。9分のメッシのシュートはリコに止められましたが、16分メッシが中央突破し、右でフリーのスアレスにパス。スアレスが決めて1:2となりました。

29分にCKからエンゾンジにヘッドで決められそうになりましたが、わずかにはずれて助かりました。後半ナスリがバテて、さあ清武の出番かなと思いましたが、交代は巨漢のイボーラでした。リードされていたので、まあ一発ヘディングに期待したのでしょう、残念です。

1:2で勝ちましたが、メッシがファウルで靴が脱げて、ひもを結んでいると遅延行為でカードをもらったり、もっとひどかったのはスアレスが後ろから抱きつかれて、もそもそしてるとカードがでたり(えっ、どうして???)、どういうジャッジなのかあきれてしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=N-_ghrbkkwk

https://www.youtube.com/watch?v=GuY51RhLsFI

https://www.youtube.com/watch?v=MgqFREcg72U

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 6日 (日)

やぶにらみ生物論44: メッセンジャーRNA(mRNA)

1aa1956年にエリオット・ヴォルキンとローレンス・アストラハン(Elliot Volkin and Lawrence Astrachan)は興味深い実験を行いました。

彼らによると、T2ファージを大腸菌に感染させたときに放射性のリンをとりこませて、その後RNAを分析すると、大部分のRNAには取り込まれないが、一部のRNAには顕著に取り込まれるという結果になりました(1)。

その後彼らは研究を進めて、このリン酸をとりこんだRNAの寿命は極めて短く、かつファージのDNAと極めて塩基組成が似ていることを確認しました。

野村眞康らはこのRNAがタンパク質製造工場の一部であるリボソームRNAやアミノ酸を運ぶトランスファーRNAとはサイズが異なり、マグネシウム濃度が高い場合はリボソームに結合しているが、マグネシウム濃度が低い場合は解離することを発見しました(2)。

シドニー・ブレナー(1927~)とフランソワ・ジャコブ( 1920~2013)(図1)らは大腸菌を15Nと13Cの重い元素からなる培地で培養し、ファージに感染させてすぐ、14Nと12Cの軽い元素からなる培地に移しました。そうして作られたRNAを超遠心分析装置で調べました。そうすると半減期が16分で、軽い元素からなる新種のRNAが合成され、これは重い元素からなる安定なRNAが含まれるリボソームに結合することがわかりました。これこそがメッセンジャーRNA(mRNA)だったわけです(3)。

共同研究者のメセルソンはこの実験を行うために13Cのガスをロシア(当時はソ連)からシビアな交渉を経て取り寄せ、炭酸ガスに変換したあと藻類に吸収させて、光合成によって大腸菌の培地に入れる素材を作ったそうです(4)。

この実験で、メッセンジャーRNAの存在を証明したことは非常に重要な研究だと思いますが、なぜかブレナーとジャコブは別件でノーベル賞を受賞し、メセルソンに至っては、すでに述べたメセルソン-スタールの実験でDNAの半保存的複製を証明したばかりか、メッセンジャーRNAの存在を証明したのにノーベル賞をもらえなかったという気の毒な運命でした。

DNAに含まれる有機塩基A・G・C・Tは、T・C・G・Aという新たなDNAの鋳型になりますが、同時にU・C・G・AというmRNAの鋳型にもなり得ます。チミンとウラシルは5の位置にメチル基がついているかついていないかだけの違いです(図2)。

2aa


DNAとmRNAにはもうひとつ違いがあって、それは前者の骨格となる糖はデオキシリボースであり、後者はリボースであるということです。2の位置がHかOHかという違いです(図3 青丸がDNAに含まれるデオキシリボース2の位置のH、赤丸がmRNAに含まれるリボース2の位置のOH)。ウラシルはチミンより不安定、リボースはデオキシリボースより不安定という化学的特性があります。

DNAが世代にわたって安定であるべきなのに対して、mRNAはDNAからその時に必要な情報を読み取るためのツールなわけですから、用が済めばすみやかに消滅することが望ましいのです。

シトシンはときどきウラシルに変わってしまうことがあって、もしDNAの成分にウラシルがもともと含まれているとすると、DNAを修復するシステムがシトシンから変わったウラシルなのか、もとからあるウラシルなのか判別できず困ってしまいます。DNAにはウラシルがないと決まっていれば、問答無用にウラシルを除去してシトシンに変えれば良いのですから、それは可能です。このこともウラシルがDNAに含まれないことの理由と考えられます。

3aa


DNAは特別な場合を除いて二重らせん構造をとっていますが、mRNAは上記のような構造上の違いで通常一重鎖となっています。mRNAが二重鎖になってしまうとリボソームに結合してタンパク質を合成することができなくなるので、一重鎖であることは重要です。

DNA → mRNA →  (リボソーム&トランスファーRNAと連携作業) → タンパク質

という基本的な情報の流れについての図式を描くことができます。後に詳述しますが、リボソームはタンパク質合成工場、トランスファーRNA(tRNA)はアミノ酸を運ぶ運搬体、mRNAはDNAからの情報の運搬体と、とりあえず理解しておいてください。

DNAがDNAポリメラーゼという酵素によって複製されるように、mRNAはRNAポリメラーゼという酵素によってDNAから読み取られます。このことを転写(トランスクリプション)といいます。その状況を図4に示しました。

DNAの二重らせんの一部がほどけて、そこからmRNAのリボンが伸びてくるというイメージです。伸びたmRNAのリボンはリボソームと結合してタンパク質合成に利用されます。細菌の場合はそうなのですが、真核生物の場合、mRNAは核で加工された後、細胞質に送り出され、細胞質でリボソームと結合してタンパク質合成を行います。


4aa


図4は見てきたような話なのですが、1970年になって本当にそのような画像が電子顕微鏡によってキャッチされました(参照5、図5)。DNAの電子顕微鏡写真は特殊な方法によって撮影されますが、開発した Miller Jr らの業績は素晴らしいと思います。

5aa


これはまた後に出てきますが、DNAのすべてが遺伝子の情報で隙間無く満たされているわけではありません。実際には 中間部分-遺伝子-中間部分ー遺伝子という構造になっています。mRNAは遺伝子の部分にしか対応していないので、DNAのすべての部分に対応した mRNAが存在するわけではありません。しかし中間部分には遺伝子の発現を制御する領域などが含まれており、重要な部分も存在します。

参照:

1)Volkin E and Astrachan L. Intracellular distribution of labeled ribonucleic acid after phage infection of Escherichia coli. Virology Volume 2, Issue 4, pp. 433-437 (1956)

2)Nomura M., Hall B.D. and Spiegelman S. Characterization of RNA synthesized in Escherichia coli after bacteriophage T2 infection.Journal of Molecular Biology vol.2(5), pp.306-326 (1960)

3)Brenner, S., Jacob, F., & Meselson, M. An Unstable Intermediate Carrying Information from Genes to Ribosomes for Protein Synthesis. Nature 190, pp.576-581 (1961).

4)http://sickpapes.tumblr.com/post/51016848003/brenner-s-jacob-f-and-meselson-m-1961-an

5)O. L. Miller Jr., Barbara A. Hamkalo, C. A. Thomas Jr., Visualization of Bacterial Genes in Action. Science, Vol. 169, Issue 3943, pp. 392-395 (1970)
http://science.sciencemag.org/content/169/3943/392.full.pdf+html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 3日 (木)

小泉-都響 チャイコフスキー「交響曲第4番」@サントリーホール2016年11月3日

Imga

今日は思ったより寒くないし、お天気も素晴らしく、休日のマチネとしてベストの日よりです。9月20日以来のサントリーホール。本日の指揮者はマエストロ小泉、コンミスは四方さん、サイドはゆづき。今までに聴いたことがない、多分新曲のファンファーレで入場。

チケット完売だそうです。

Imgbjpg


最初はリストの「レ・プレリュード」。二曲目は今をときめくソリスト反田恭平氏で、リストの「ピアノ協奏曲第1番」。すごいとしか言いようがありません。

反田恭平のピアノ

リスト「水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ」
https://www.youtube.com/watch?v=snJZgFYKBvE

ビゼー(ホロヴィッツ編):「カルメン幻想曲 」
https://www.youtube.com/watch?v=eLaXJyVYdzI

休憩後はチャイコフスキーの交響曲第4番。今日はマエストロ小泉の都響デビュー40周年ということで、かなり気合いも入っていたようです。いつものように文句なしなのですが、彼の音楽には何か足りないものがあるように思うのです。もう何年もそのことを考えているのですが、最近思うのは、彼は「負のエネルギー」に欠けているのではないのでしょうか? だから病的な曲想には弱いのかも知れません。

例えばベートーヴェンは自殺を覚悟して遺書まで書きましたし、家族とは不仲で、自分の家庭には恵まれず、難聴にもなり、晩年にはホームレスと間違えられて逮捕されたこともあるそうで、あまりにもマエストロ小泉の人生とは異なります。今日の作曲家について言えば、リストは生涯大勢の女に囲まれて過ごしたプレイボーイで、音楽も演奏効果をメインに考えた人ですし、チャイコフスキーは男(しかも今で言えば淫行趣味)にしか恋愛感情を抱けない人でした。

オットー・クレンペラーのベートーヴェン交響曲第7番
https://www.youtube.com/watch?v=Q1ei6vuISqk

演奏会が終わって外に出ると、都響からのプレゼントを手渡されました(写真)。どうも有難うございます。今後ともよろしくお願い申しあげます。また楽団のご発展をお祈りしております。

Imgc

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 2日 (水)

トランプが大統領になればTPPもガラガラポン

A0960_007674たまき氏のブログ(1)には「安倍総理は、私が交渉過程に関する黒塗りの資料を批判した際、『交渉結果がすべてだから交渉過程は公開しない。協定文を見て議論してくれ。』と言ったが、文章にしていない約束(undocumented commitments)があるなら、協定文だけを見て議論しても本質的な議論はできない。」という一文がありますが、実際米国からの米の輸入枠は7万トンではなく、追加秘密枠の4万8千トンがあるそうです(2)。

まあそういう個別の問題は無数にあるのでしょうが、元米国財務長官補佐のポール・クレイグ・ロバーツが言っているように(3)「TPPの唯一の目的は、グローバル企業に、彼らが事業を行う国の法律からの免責を与えることだ。」なので、トランプが大統領選挙に勝って、とりあえずTPPがつぶれることは、日本国民にとって最後のチャンスかもしれません。

米国の言うとおりの政治・経済政策をやっていればよかった今までとはことなり、日本は独立のチャンスを与えられるかもしれません。トランプが大統領になれば、われわれは中国・ロシアとの関係を改善しなければ、日本は国家としての存在が危ういということを自覚できるかもしれません。しかしこのような強大な周辺国家と渡り合えそうなのが小沢一郎という老人しか思い当たらないのが寂しいところです。結局野田聖子や森ゆうこのようなウーマンパワーに期待するしかないのでしょうか。枝野が幹事長を続けられなかったのは残念ですが、彼も今は少し休んでおいた方がよいかもしれません。

1)http://ameblo.jp/tamakiyuichiro/entry-12162083645.html
2)http://blogos.com/article/176190/
3)http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/tpp-43d1.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

やぶにらみ生物論43: DNAの半保存的複製

ワトソン-クリック式DNAモデルをもう一度別の観点で図1(ウィキペディアより 以下同)に示します。中央にATおよびGCの塩基対があり、両側にデオキシリボースがリン酸で連結された鎖(バックボーン)があります。この鎖の端の構造をみると、左側の鎖の上端はデオキシリボースの5の位置にリン酸がつながった形で終了し、右側の鎖の上端はデオキシリボースの3の位置に結合したOHで終了しています。そして下端は左鎖は3ーOH、右鎖は5ーリン酸で終了しています。つまり鎖には方向性があり、両鎖の向きは逆になっています。

Dna_chemical_structur


5-リン酸で終わっている方を5’エンド(5プライムエンド)、3-OHで終わっている方を3’エンド(3プライムエンド)といいます。DNAは二重らせんの立体構造をとっていますが(図2)、しめ縄とは少し違って、ひと巻きごとに太い溝(major groove)と細い溝(minor groove)が交互に出現します。つまり二回り分がユニットとなって積み重なったような構造になっています。

Photo_2


必ずA-T、G-Cのペアで構成されているということは、遺伝にとっては好都合です。Aの相方Tが細胞分裂で失われても、また相方Tを見つければ元の遺伝情報が保存されることが期待できます。

800pxarthur_kornbergDNAを合成する酵素は1956年にアーサー・コーンバーグ(1918~2007 図3)によって発見されました(3)。この酵素は

ヌクレオシド3リン酸+DNA(n) → ピロリン酸+DNA(n+1)  n:鎖の長さ

という反応を触媒します。DNAの末端にある3’OHがヌクレオシド3リン酸にアタックしてピロリン酸を解離させ、残ったヌクレオシド1リン酸を3’OHに結合させるわけです。これによってDNAの鎖は1ヌクレオチド分だけ長くなり、繰り返しによってさらに長い鎖をつくることができます。この酵素の発見によってコーンバーグは1959年度のノーベル医学・生理学賞を授与されました。酵素の名前は DNA polymerase ということになりました。

ワトソン・クリックが受賞したのは1962年ですから、アーサー・コーンバーグの場合異常に早く受賞したことがわかります。ただコーンバーグの発見した酵素は、大腸菌のゲノムを複製する機能を持つ酵素ではなく、DNAに発生したエラーを修復する酵素だったのです。ゲノムを複製するメインの酵素は1972年になってから、次男のトーマス・コーンバーグによって発見されました(4)。本来なら親子でノーベル賞をもらうべきだったかもしれません。ちなみに長男のロジャー・コーンバーグは RNA polymerase の研究でノーベル化学賞を受賞しています。DNAの複製については別稿で詳述します。ここではメセルソンとスタールの歴史的な実験についてだけふれておきます。

A-T、G-C塩基対の構造をもう一度みてみると(図4)、NとNまたはNとOとの間に水素原子がはさまれています。このような化学結合を水素結合といいます。この化学結合をはがすために必要なエネルギーは、N-H・・・Oの場合8KJ/モル、N-H・・・Nの場合13KJ/モルで(1)、共有結合の場合と比べて1~2桁くらい小さなエネルギーでひきはがせる弱い結合です。例えば水分子のHとOをはがすには、463KJ/モルのエネルギーが必要です(2)。

Photo_3


弱い力で二本の鎖が結合しているのなら、何かジッパーのような機構でDNAの二重らせんがはがされて一重となり、そこからまた相方のらせんが合成されて二重になることが証明されれば、非常に都合良く遺伝情報の複製が説明できます。このアイデアはロマンティックですが証明されなければなりません。

DNAの複製の様式には3つの可能性が考えられます(図5)。ひとつは分散型。両方の鎖に親由来の素材と新しい素材が併存する二重らせんが2本形成されることになります(図5A)。半保存的複製では、すべて親由来の素材でできている単鎖とすべて新しい素材でできている単鎖がまきついてできた二重らせんが2本形成されることになります(図5B)。最後に保存的複製では、両鎖とも親由来のものと、両鎖とも新素材のものとの2重らせんが形成されます(図5C)。

Photo_4


メセルソン(1930~)とスタール(1929~)は大腸菌をN15(重い窒素)の培地とN14(普通の窒素)の培地でそれぞれ培養します(図6、参照5)。それぞれのフラスコから大腸菌を集めDNAの重さを遠心分離で測定すると、N15の培地で育てた場合は茶色で、N14の培地で育てた場合はオレンジ色で表してありますが、当然N15の場合の方が重くて下に沈みます。N14の場合は軽いので上の方の画分に浮いています。

N15の培地で育てた大腸菌を、N14の培地に移して、20分で1回細胞分裂を行うような条件で培養します。20分経過した大腸菌のDNAを分析すると、茶色の位置とオレンジの位置の中間の重さ(密度=densityで測定)の位置(赤)にひとつのバンドが現れました。この結果、親由来のDNAのみでできている茶色のバンドがないことが判ったので、保存的複製ではあり得ません。

491pxmeselsonstahl_


次に40分経過してからDNAを分析すると、中間の位置のもの(赤)が50%、軽い位置のもの(オレンジ)が50%になりました。分散型の複製なら、すべてのDNAは同じ重さ(密度)のはずなので、このように2本のバンドができることはあり得ません。

半保存的複製と考えると、図7一番右側に示すように、2回細胞分裂が起こった場合、親由来素材と新素材が1:1の二重鎖が2本と、新素材のみの二重鎖が2本できるので、実験の結果をうまく説明できます。

分散型複製あるいは保存的複製では、図7に示すようにこのような実験結果にはなりません。前者ではどんな場合もバンドは1本、後者では20分では重(茶)1:軽(オレンジ)1、40分では重1:軽3となり、中間の重さのもの(赤バンド)はできません(図7)。

Photo_5


このような結果から、メセルソンとスタールはDNAの複製は半保存的に行なわれると結論しました。そしてジッパーの役割はDNAポリメラーゼ( DNA polymerase )が果たすということになりますが、実際のメカニズムはDNAポリメラーゼ以外にも多くの因子が関与していて、これについてはいずれ稿を改めて述べます。

メセルソンとスタールの実験結果は、DNAの構造が相補的な二重らせんであることとよく符合します。細胞が分裂するときには、DNAの2本鎖が1本鎖にわかれ、それぞれが相方のDNAの鋳型になることによって、遺伝情報の複製が行われると考えると、細胞増殖や遺伝という現象がうまく説明できます。

つまり半保存的複製というやり方によって、生命は自分のコピーをつくることができるのです。大腸菌は何度細胞分裂しても大腸菌です。ヒトも体の細胞のDNAは基本的に同じであり、ですからDNA鑑定が可能なのです。ただヒトのような多細胞生物は、細胞によってDNAという情報集積所からそれぞれ一部の情報だけ読み取っているので、肝臓とか皮膚とか骨とかさまざまな種類の細胞があり得ます。

参照

1)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E7%B5%90%E5%90%88

2)http://mh.rgr.jp/memo/mq0110.htm

3)Arthur Kornberg. The biologic synthesis of deoxyribonucleic acid, Nobel Lecture, December 11, (1959)
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1959/kornberg-lecture.pdf

4) Kornberg T, Gefter ML. Deoxyribonucleic acid synthesis in cell-free extracts. IV. Purification and catalytic properties of deoxyribonucleic acid polymerase III.,  J. Biol. Chem. vol. 247 (17): pp.5369-5375 (1972)

5)Matthew Meselson & F. W. Stahl. "The Replication of DNA in Escherichia coli",Proc Natl Acad Sci USA,Vol.44,p.671-682 (1958)
https://en.wikipedia.org/wiki/Meselson%E2%80%93Stahl_experiment

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 1日 (火)

サラとミーナ178: 冬の準備

サラは軽微ですが慢性の鼻炎があり、冬になるとグズグズになることもあります。それはサラが閉所恐怖症であることも関係していて、ミーナは寒くなるとふとんに潜り込んだりしますが、サラにはそれができません。こたつには入れるのですが、まだそれには季節が早いので、せいぜいバスケットの中にはいりこむくらいです。

Imga


写真撮影に気がついたサラ

Imgb


ミーナは風邪をひいたことは一度もありません

Imgc


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月30日 (日)

リーガ2016~2017第10節: よかったのは結果だけ

Braugrana勝ったとはいうものの、メスタージャでひどい目にあったバルサですが、今日は最下位のグラナダとの対戦で、体勢をたてなおすことができるでしょうか? メスタージャでの一件は、リーガ会長とバルサとの対決にまで発展して、後をひいているようです。故障者多数の上、ブスケツを休ませたバルサはマルロン・アラニャ・ニリのカンテラ選手達をベンチに入れました。

FW:ネイマール・スアレス・メッシ、MF:ラフィーニャ・デニス=スアレス・ラキティッチ、DF:ディニュ・ウムティティ・マスチェラーノ・セルジ、テア=シュテーゲン。相手がグラナダということで、両SBは上がりっぱなし、ラキもDFラインに入らず、2バックです。

グラナダはウクライナ人のクラヴェツの1トップで、541で厳しく守ります。2バックには寄せてきませんが、ラキに球が入ると厳しく寄せてきます。5人のDFの規律統制もとれていて、なかなかバルサも突破できません。バルサの3トップ、ネイマール・スアレス・メッシは最近プレイの精度が落ちています。シュートがGKの正面に行きますし、トラップも長かったり、パスもずれたりで、攻めてはいるんですが一発がきまりません。

結局0:0のままハーフタイム。カンテラーノを出すどころではありません。グラナダの戦い方をみて、後半はラキを左DFとして3バックでカウンターに備え、ディニュとセルジを攻撃専念としました。DF中央はウムティティ、右はマスチェラーノです。WOWOWでは中盤に人が多すぎたので少しスペースを作ったと言っていました。都並の言うことはわかりますが、なぜあんな小声でぼそぼそしゃべるのでしょうかね。何を言っているのか聞こえませんよ。

後半開始早々、メッシが持ち込み、ネイマールのシュートがポストで跳ね返されるところを、ラフィーニャがバイシクルで決めてくれました。このあとボガに左サイドを抜かれて、非常に危ない場面もありましたが、何とか助かり、1:0でバルサが逃げ切りました。全く低調な試合でした。

https://www.youtube.com/watch?v=jewrSXAtitg
https://www.youtube.com/watch?v=eLjm1seGRLQ
https://www.youtube.com/watch?v=XzLn2A7eJI4


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月29日 (土)

やぶにらみ生物論42: 二重らせん

アーウィン・シャルガフ(1905年~2002年 図1)は現在のウクライナで生まれたユダヤ人です。ベルリン大学で研究をしていましたが、ナチの台頭でフランスに逃れ、さらにニューヨークのコロンビア大学に職を得て、40年間勤めました。

シャルガフはもともと核酸の研究者ではありませんでしたが、1944年に発表されたエイヴリーの論文の結論「遺伝物質はDNAである」(やぶにらみ生物論41に詳述)に「筆舌に尽くしがたい衝撃」を受け、それまでやっていた研究を全部やめて核酸の研究にのめりこんでいきました(1)。

発表された当初、多くの研究者がエイヴリーの論文に衝撃を受けたというわけではなく、シャルガフによればほとんどの科学者が関心を持たなかったそうです。それは彼の言葉によれば「みな権力の回廊で自らのコマ廻しに忙しすぎたので見逃してしまったから」ということになりますが(1)、当時の知識では、DNAの種特異性がわかっていなかったので、あまり重要なことではないとみんな注目しなかったのでしょう。

180pxerwin_chargシャルガフにとって幸運だったのは、ちょうど1944年にペーパー・クロマトグラフィーという分析技術が報告され、DNAに含まれる4種の有機塩基をきれいに分離することができるようになった上に、同時期に紫外線分光光度計が売り出され、各塩基の検出も簡単にできるようになったことです。

シャルガフと共同研究者達はこれらの先進的な技術を使って、様々な生物のアデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・チミン(T)の量を測定し、それらの比率が生物の組織・器官では同じですが、種によって様々に異なることを示しました(図2)。

これは当時主流であったエイヴリーのテトラヌクレオチド仮説の理論には相反するものでした。しかし彼はさらに研究を進めて1950年に、

A=T、G=C、しかし A=G=C=Tではない

という驚くべき法則を発表しました(2)。

Photo


生物種によってA・G・C・Tの割合はまちまちですが、AとTの比率およびGとCの比率は極めて1に近いということがわかりました。シャルガフもこのことを論文に書くのは怖くて、結局校正の段階で追加して発表したそうです。

この発表は主にDNAの構造をX線解析によって研究していた人々の注目を集め、実際英国のウィルキンスをはじめ何人かの研究者にDNAのサンプルを譲渡したそうです(1)。

シャルガフは1952年に英国のケンブリッジ大学に行って、ジェームス・ワトソン(1928年~)とフランシス・クリック(1914~2004)(図3 ウィキペディアより)にこの法則について説明したそうですが、その時の詳しいいきさつは文献(1)に詳述してあります。ワトソンの著書にもこのことは書いてあって、シャルガフの法則はDNAの分子モデルを考える際に大いに参考になったと思われます。

シャルガフはこの時に二人かららせん構造についての話しを聞いていたのですが、彼はDNAの特異性に関してはトポロジーが重要だとは思っていたものの、らせん構造については余り興味を持たなかったようです。

シャルガフはAとT、およびCとGが構造的に隣接しているという考え方を以前にしていたことがあるが、それは廃棄したとこの会談で述べたことを記してします(1)。その廃棄した理由が、本の説明(1)では私にはよくわかりませんでした。ワトソンとクリックも廃棄する十分な理由はないと考えたと思います。

Photo_2

結局この会談はシャルガフが、ワトソンとクリックはふたりとも化学のど素人だと判定した段階でうまくいかず、気まずく終わったようです。シャルガフのもっと重要な用はパリでの国際会議で、そこではハーシーとチェイスがDNAが遺伝物質であるという決定的な証拠を示し(詳細はやぶにならみ生物論41に記述)、いよいよDNAが分子生物学の主戦場となることは明らかになりました。

その頃英国ではDNAの構造研究の中心は、ワトソンとクリックがいたケンブリッジ大学ではなく、ロンドン大学のモーリス・ウィルキンス(1914~2004)の研究室でした。そこでは若手研究者だったロザリンド・フランクリン(1928~1950)とボスのウィルキンスが激しく仲違いをして、プロジェクトがうまくいっていませんでした。

その間隙を縫ってワトソンとクリックはDNAの3重らせんモデルを考案し、フランクリンに見てもらったのですが、リン酸がらせんの内側にあると水分子を置くスペースがなくなると即座に否定され、彼女におもちゃを使って遊んでいるバカ者共という印象を与えてしまったのです。これでふたりはDNAの研究から手を引かされるという羽目に陥りました(3)。

しかし二人にとって、ここで思わぬ幸運が舞い込んできました。それは1953年に当時生体物質の構造化学では第一人者であるライナス・ポーリング(1901年~1994年)が、二人が考案したものに近い間違った3重らせん構造のモデルを提出したことでした。しかも彼のモデルではリン酸基がイオン化しておらず、それじゃあ核酸は酸じゃないのかというおまけまでついていて、これでワトソンとクリックは俄然勢いづきました。

彼らはロンドン大学のグループにもう一度らせん構造を考えてみようと説得に行き、ウィルキンスにフランクリンの学生であるゴスリングのX線回折写真を見せてもらうことに成功しました。それはまさしくらせん構造を示す回折像だったのです(3)。ところがこれはフランクリンの許可を得ていなかったため、後に問題になりました。

ウィルキンスに写真をみせる権限があったことはわかりますが、フェアーなやり方とは言えません。またフランクリンが書いた非公開の年次レポートを、閲覧する権限のあるペルーツが部下のクリックに渡したとされており(4)、これもさらにフェアーとは言えません。ただこのようなことは研究の世界では日常茶飯事であることもまた事実です。

ワトソンはアデニンとチミン、グアニンとシトシンがそれぞれペアで存在するために可能な構造を示し(図4)、それを見たクリックは鎖が逆向きの2重らせんの構造をすぐに思いついたそうです(図5)。このモデルは直ちに Nature 誌に投稿され、受理されました(5)。

ワトソン・クリック・ウィルキンスは、「核酸の分子構造および生体における情報伝達に対するその意義の発見」に対して、1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ロザリンド・フランクリンは1958年に37才の若さで亡くなっていたので、受賞対象にはなりませんでした。

Photo_4

Photo_5
ワトソンとクリックにしてみれば、フランクリンは執拗にDNAのモデル構築に反対して、まるで自分たちの仕事が妨害されたように見えたでしょうし、フランクリンにしてみれば荒唐無稽なモデルをもてあそんでいる彼らとまともにつきあう必要はないと考えたというのもうなづけます。ただフランクリンの写真を見なければ正しい分子モデルはできなかったはずで、DNAの二重らせんモデルはこの3人に等しく栄誉が与えられるべきだったと思います。

ロザリンド・フランクリンの業績については友人のアンネ・セイヤーが1975年に本を出版しており(6、図6)、最近ではきちんと評価されています。また最初に鮮明なDNAのX線回折写真を撮影したレイモンド・ゴスリング(1926~2015)は、当時博士課程の学生だったので蚊帳の外になってしまいましたが、その後も素晴らしい写真を撮影して、大いにDNAの分子モデルの作成に貢献しており、本当は彼もノーベル賞をもらうべきだったのかもしれません。

Photo_6


参照:

1) 「ヘラクレイトスの火 (Heraclitean Fire)」 アーウィン・シャルガフ著 村上陽一郎訳 岩波書店 (1990)

2) Chargaff, Erwin; Chemical specificitiy of nucleic acids and mechanism of their enzymatic degradation. Experientia vol.6, pp.201-209 (1950)

3) DNA: The secret of Life. James D. Watson and Andrew Berry, Arrow Books, 2004.  邦訳:青木薫 講談社刊

4) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B6%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3

5) J.D. Watson and F.H.C. Crick: Molecular structure of deoxypentose ribonucleic acids. Nature vol.171, pp.737-738 (1953)
http://www.nature.com/nature/dna50/watsoncrick.pdf

6) Rosalind Franklin and DNA, written by Anne Sayre, W.W. Norton New York and London (1975)







| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月27日 (木)

2020東京オリンピック-問題多すぎです

A0027_000624だいたいごく一部のアマチュアが楽しんでやっている競技に、税金を含む莫大な資金を投入すること自体が理解できません。オリンピックは既存の施設でやれば良いのですよ。私の個人的意見ですが、旅費と宿泊費以外は支出する必要もないと思います。選手は国家が養成しなくていいんですよ。国威発揚をしたい国には勝手にやらせておけばいいのです。

どうして莫大なお金をかけてボート競技場とか有明アリーナとか建設するのか、狂気の沙汰としか思えません。同じお金を投入するなら、国民の多くがプレーしている、あるいは興味がある、野球場・サッカー専用スタジアム・ゴルフ場・つりぼり・マラソンコースなどを整備するならまだ話はわかりますよ。それでも多くの国民が貧困に苦しんでいる中での支出には疑問がわきますがね。

国立病院や国立大学をリストラし、奨学金も卒業後返せと言っているような国が、オリンピックで大盤振る舞いとはおかしな話です。

小池都知事は当初は意外によくやっていると思いましたが、ここにきてしぼんでしまいそうです。IOCーJOCの壁を乗り越えないとどうしようもないと思いますが、まああと少しはみてみましょう。

IOCもこれからは、開催都市にすでにある施設、あるいはその改良工事だけでオリンピックを行うように、考え方を変えた方が良いと思います。ボート協会なんて、選手の多くが埼玉でやって欲しいと言っているのに、強引に海でやれと怒鳴り散らすならずものの集団ですから、無視していいですね。

「小池都知事は「闇の五輪3施設」にメスを入れられるのか?」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49820

「東京五輪の運営費、2兆円過小に間違っていたと判明…すぐ壊す仮設施設に3千億税金投入」
http://biz-journal.jp/2016/08/post_16153.html

「群を抜く新国立競技場の建設費2500億円 費用の膨張はロンドン五輪でも問題に」
http://newsphere.jp/national/20150626-2/

「世界一カネのかからない」はずだった東京オリンピック費用が予定の6倍の1.8兆円」
http://buzzap.jp/news/20151219-tokyo-olympic-2trillion-yen/

「東京五輪、建物はほとんど「プレハブ化」せよ」
http://toyokeizai.net/articles/-/141039

「驚愕の東京五輪費用報告」
http://carp-to-sonzai.blogspot.jp/2016/09/blog-post_30.html

「過去と比べて何故高い?東京五輪新国立競技場建設費が高い5つの理由」
http://world-news.beauty-box.tokyo/entry/2015/09/13/193000

「オリンピックにはいくらかけられるのか」
http://blogos.com/article/150941/

「東京五輪の運営費、2兆円過小に間違っていたと判明」
http://hayabusa8.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1470474108/

「東京オリンピック」って、果たしてやる価値あるんでしょうか。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11120531136?__ysp=44Gp44GG44GX44Gm44Kq44Oq44Oz44OU44OD44Kv44Gr6I6r5aSn44Gq44GK6YeR44KS5L2%2F44GG44Gu44GL

「国立病院・療養所の再編成等について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/bukyoku/kenkou/1-5.html

リオデジャネイロ・オリンピックと東京オリンピックの誘致: 買収疑惑に対する捜査」

http://d.hatena.ne.jp/mouf-jp/20160612/1465747399


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月26日 (水)

やぶにらみ生物論41: 遺伝情報を担う物質は何か?

フレデリック・グリフィス(1879年 - 1941年)は第一次世界大戦中に設立された英国保健衛生省の病理学研究室で研究を行いました。彼の仕事は多くの患者から肺炎菌を集めて培養し、分類を行うことでした。

この仕事を進めているうちに、グリフィスは菌の種類・株によってホストの免疫機構に対する耐性が大きく異なることに気がつきました。細菌のなかには細胞壁(セルウォール)の外側に莢膜(カプセル)というオーバーコートをかぶっているものがあり、これらの菌は感染した際に、ホストの免疫機構によって排除されにくいのです。この理由としてカプセルの主成分である多糖類がタンパク質に比べて抗体との反応が弱いということがあげられますが、その他にもカプセルをもつ細菌は、白血球やマクロファージに食べられにくいという性質があります。後者の理由は正確にはいまでもわかっていないようです。

カプセルを持つ菌はヒス染色(ゲンチャナバイオレットという色素で染色する方法)という方法で識別できます。カプセルを持っている場合、菌体は強く紫色に染色され、そのまわりでピンク色で囲まれているような感じに染色されます(1)。

肺炎菌のR株(図1青)はカプセルを持たず病原性がありませんが、S株(図1赤)はカプセルを持っており病原性があります。S株は熱処理によって病原性を失いますが、この熱処理したS株と非病原性のR株を同時にマウスに投与すると、意外にも病原性が復活してマウスは死亡しました。グリフィスは死んだS株の形質転換因子(transforming principle) がR株の形質を転換し(transform)、病原性を与えたと説明しました(2)。この形質転換因子こそDNAだということが後にわかるのですが、当時は全くわかりませんでした。

A_2

A_3形質転換のメカニズムを解明しないまま、グリフィスはナチス・ドイツによる1841年のロンドン・ブリッツ(ロンドン大空襲)によって不慮の死をとげてしまいました。

彼が実験室で爆撃を受けたという説がありますが、研究によって、自宅に居たときの空爆で死亡したということになったそうです。

1941年のランセット5月3日号には obituary (=死亡記事、参照3)が掲載されています。それによるとグリフィス(図2)は犬の散歩が趣味の、大変慎重な人で、一生涯 「Almighty God is in no hurry - why should I be?」 という主義を貫いたそうです。同じページに、彼の同僚で著名な細菌学者のウィリアム・スコットも空爆で死亡したという記事が掲載されています。

A_4グリフィスが残した課題はオズワルド・エイヴリー(1877年 - 1955年、図3)によって引き継がれました。

彼はグリフィスが言う形質転換の原因は細菌がまわりの環境から遺伝物質をとりこむことができるからだと考えました。

そこでS菌の細胞を破壊し、内容物をタンパク質分解酵素で処理してR菌の培養液に加えました。するとこの処理が無効だったことがわかり、タンパク質は形質転換に関与していないことが示唆されました。

ところがDNA分解酵素で処理すると、R菌は形質転換を起こさなかったのです。これはDNAが形質転換に関与していることを強く示唆しました(4)。

この論文が発表されたのは1944年ですからエイヴリーはすでに67才でした。しかも太平洋戦争の真っ最中です。日本ではほとんどの学術雑誌が休刊していましたが、米国では発行されていて、しかもこのような重要な基礎研究の論文が発表されていたということです。私はこれは国力の違いもありますが、さらに文化の違いもあると思います。基礎科学の振興が民族・国家さらには人類にとって決定的に重要だということは、現在の日本人にも浸透していないと思います。

ハーシーとチェイス(図4 左:アルフレッド・ハーシー 1908年 - 1997年、右:マーサ・チェイス1927年 - 2003年)は大腸菌に感染するT2ファージ(ある種のウィルス)を使って実験しました。このときチェイスはまだ博士号を取得していませんでしたが、共同研究者の扱いになっています。T2ファージはタンパク質とDNAだけからなっており、大腸菌に感染すると菌内で増殖して、菌細胞を破壊して外界に出て、また大腸菌に感染するというライフサイクルを行います。ですから子孫をつくるための情報はタンパク質かDNAのどちらかが持っているはずです。

A_5

そこで彼らはまずシャーレAの培地に放射性のリン(P32を含むオルトリン酸)を加え、もうひとつのシャーレBには放射性の硫黄(S35を含む硫酸マグネシウム)を加えてT2ファージと大腸菌を培養します。それらからP32を含むファージとS35を含むファージを分離します。

DNAは硫黄を含まず、ファージのタンパク質はリンを含まないので、シャーレAから分離したファージはDNAが放射性Pを含み、シャーレBから分離したファージはタンパク質が放射性Sを含んでいます。それぞれを大腸菌に加えて感染させます(図5)。

ファージは細菌にくっついて自らの遺伝物質を細菌に注入します(図5の1)。


A_6

感染したタイミングを見計らって、培養液をブレンダーに入れて激しく攪拌し(図5の2)、ファージを菌体から引きはがします。次に遠心分離法によってファージと菌体を分離します(図5の3)。上清がファージで沈殿が菌体というかたちで分離できます。

そして沈殿から回収された菌体に含まれる放射性物質を検査するとそれはP32で、S35は含まれていませんでした。すなわち遺伝情報の担い手はDNAであり、タンパク質ではないことが示されました(図5の4、参照 5)。この研究はエイヴリーが提唱していた<<DNAが遺伝情報の担い手である>>という説を強くサポートするものであり、この研究などによってハーシーは1969年にノーベル医学生理学賞を授与されています。一方チェイスは離婚や痴呆症のため後半生はよい人生を送ることができなかったようです。

ウィルスによって被害を受けるのは細菌だけではなく、哺乳動物なども被害を受けるわけですが、哺乳動物に感染するウィルスはT2ファージのようにDNAを細胞に注入するというような方法ではなく、細胞に吸着したあと、そのまま細胞に食べられるというような形で取り込まれるとか、ウィルスの外殻と細胞膜が融合して、中身が細胞内にはき出されるとかさまざまな形で細胞に侵入します。メカニズムの詳細は現代医学においても重要な研究課題です。

参照:

1) http://www.mutokagaku.com/products/reagent/bacterialstain/hisstain/

2) Frederick Griffith, THE SIGNIFICANCE OF PNEUMOCOCCAL TYPES. Journal of Hygiene, vol.XXVII, pp.113-157, (1928)
  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2167760/

3) Obituary, The Lancet vol.237, no.6140, pp.588-589, (1941)   http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673600951742

4) Oswald T. Avery, Colin M. MacLeod, and Maclyn McCarty, STUDIES ON THE CHEMICAL NATURE OF THE SUBSTANCE INDUCING TRANSFORMATION OF PNEUMOCOCCAL TYPES. Journal of Experimental Medicine vol.79, no.2, pp.137-158, (1944)   https://profiles.nlm.nih.gov/CC/A/A/B/Y/_/ccaaby.pdf

5) A. D. HERSHEY AND MARTHA CHASE:INDEPENDENT FUNCTIONS OF VIRAL PROTEIN AND NUCLEIC ACID IN GROWTH OF BACTERIOPHAGE. The Journal of General Physiology vol.36, pp.39-56 (1952)
http://jgp.rupress.org/content/jgp/36/1/39.full.pdf










| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月25日 (火)

民進党に望むこと

Minshinto_logo民進党は党内対立がこのままの状態では選挙なんて戦えるわけがありません。
http://tanakaryusaku.jp/

総務省統計局の集計によると、日本の非正規労働者は1989万人だそうで、これは連合組合員689万人よりはるかに多い数です。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/

<<民進党は連合べったりではなく、非正規労働者をサポートする政党になるべきです>>。連合も利害関係が一致する自民党を支持するのが自然ではないかと思います。賃上げをやれと言っているのは晋三ですよ。民進党はこのままでは野党共闘は実現せず、次の総選挙で壊滅的な打撃を受けます。新潟知事選挙で明らかなように、すくなくとも地方では連合と決別した方が、公約がシンプルになってわかりやすく、選挙に勝てます。大都会でも前回より後退することはないと思います。

公約としては、総花的にしないで:

「TPPとTiSAを認めない」
「食糧自給率を50%以上にする」
「原発を数年以内に廃止する」
「停戦協定が破綻している場所にはPKO部隊を出さない」
「年金で株を買わない」
「待機児童をゼロにする」
「非正規労働者の労働組合を支援する」
「共同体社会の発展をめざす」

あたりでいいのではないでしょうか。

註:私は個人的には駆けつけ警護は必要だし、PKO部隊には十分な武器を持たせるべきだと思いますが、それは停戦協定がちゃんと成立しているにもかかわらず、突発的で予想外の事態が発生する場合に備えての話で、南スーダンのように内戦が勃発しているところに派遣するなんてとんでもないことです。だいたい当事者のトップが「停戦協定は破綻している」と言っているじゃありませんか。

個人的には誰かと同じようにアメリカさよなら、中国・ロシアこんにちわでいきたいところですが、それは公約にはふさわしくありません。ただ経済を発展させようとすれば、中国・ロシアとの関係を好転させて、経済交流を拡大させることが必須だと思いますけどね。今の米国の状況をみれば、これ以上米国に経済進出するのは無理だと思います。また日本人は弱者救済には極めて冷たい気質なので、弱者救済はあまり言わない方がいいと思いますね(政策としてやるべきだと思いますが)。

野田佳彦という男は政治家なのに世の中・時代の変化を感じていない、旧社会にどっぷりひたっているガチ昭和人間です。新潟に投票前日とはいえ、野党候補のサポートにはいった蓮舫の方が機を見るに敏なところがあります。野田は結果的に自分が晋三の独裁を蔭でサポートしている存在であることを自覚し、かつ国民が晋三への明確な対立軸をどのような政党に求めているかを深刻に考えるべきです。

民進党は・・・非正規労働者、ブラック企業の社員、農民、失業者、苦学生、病人、身体障害者、年金では生きられない年寄り、離婚して最低生活の母子、路上でライヴをやっているシンガー、ピペット奴隷とよばれている研究者、給料では生活できないオケマン、奨学金返却で破産しそうな若者・・・の味方であるべきです。ですから枝野か赤松あたりを幹事長にして、蓮舫の好きなようにやらせてみてはどうでしょう。

最後の最後の話ですが、どうしても野田が態度を改めないのなら、他の野党との共闘をめざし、連合と決別できる党員が脱党して新政党をつくるべきです。連合に頼っていてはもう永久に与党にはなれません。まあ自民党と連立政権でもつくるなら別ですが(笑・・・?)。

余談: 民進党のロゴは評判悪いようですが、私はすぐシャガールの絵を思い浮かべました。彼の絵にはよくこんな感じで人が空にうかんでいます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月24日 (月)

リーガ2016~2017第9節: ゴロツキ大集結のメスタージャで辛勝

Braugranaメスタージャでバレンシアとの対戦ですが、私はマドリーよりもこのチームが嫌です。ペジェグリーノのときに一瞬紳士的なプレイのチームになったのですが、だいたいは相手チームの選手がケガをしても仕方がないようなラフプレーが当たり前という伝統があります。多分若い頃のエメリがそういうチームにしたのでしょう。またマスコミが厳しいサッカーということで持ち上げて助長したのでしょう。WOWOWも例外ではありません。だいたい反則を礼賛するようなスポーツがサッカー以外にあるでしょうか? 今日も開始早々イニエスタが膝にアタックされて負傷退場させられました(全治6~8週の重傷)。

もちろんレフェリーにも問題があります。今日のレフェリーはおかしな判定が多かったと思います。最初のバルサの得点はメッシのシュートでしたが、オフサイドの位置にいたスアレスが飛び上がってシュートにあたらないよう避けたのです。これは普通プレーに参加したとみなされ、得点にならないはずです。これを得点にするのはレフェリーの哲学として、まあ容認しても良いのですが、カードをどんなときに出すのかについてバラバラなのはいただけません。ブスケツなど、エリア外しかもかなり離れた位置で、ほんの一瞬相手のシャツをつかんだだけでイエローカードをもらいましたが、これ自体は素晴らしいジャッジです。ただそれなら、シャツをつかんだらかならず即カードを出すというようなジャッジをして欲しいと思います。

前置きが長くなりましたが、バルサはFW:ネイマール・スアレス・メッシ、MF:イニエスタ・アンドレ=ゴメス・ブスケツ、DF:ディニュ・ウムティティ・マスチェラーノ・セルジ、GK:テア=シュテーゲン。上記のようにイニエスタがすぐに退場になったので、代わりにラキティッチがはいりました。最初は442でスタートしましたが、先制点が入るとブスケツが下がって3バックに変更しました。バルサの場合4バックだと、すぐに2バックになりがちなので、3バック固定の方が守備的なのです。ただしブスケツが下がるときと、どちらかのSBが上がらないようにするという二種類のやり方があります。

バレンシアは1トップがロドリゴで4231。かなり前線から押さえにきますが、球が自陣にはいるとすぐに44の2列がきちんと整列してがっちり守備です。マンガラ・ガライのCBはかなり優秀とみました。前線では右のカンセロが素晴らしく、26分に右を突破されてクロスを供給されましたが、わずかにロドリゴが間に合わず助かりました。あとGKにあのジエコ・アウヴェスがいます。36分そして38分スアレスのはいりそうなシュートを止められてしまいました。テア=シュテーゲンも負けじとナニとパレホのシュートを止めました。バレンシアはガヤが負傷退場し、アブデヌールに交代。47分にはネイマールのオーバーヘッドもはずれました。これでハーフタイム。

後半5分、ラキティッチがGKと1:1のシュートを外してからツキがバルサから離れていきました。8分右サイドを押し込まれたときにバルサの3バックがラインを下げたのですが、このときMFとの距離が開きすぎて、がら空きのところから後半モントーヤと交代して出場したムニルにやられました。ただし私が見た限りでは、ムニルにパスしたパレホがオフサイドの位置で球をもらったように思いました。WOWOWでは「これは疑惑のゴールじゃないですね」などとしたり顔で言っていましたが、これも疑惑のゴールですよ(笑)。さらに11分、ナニの浮き球のパスにロドリゴが反応してゴール。逆転くらいました。

バルサも必死です。17分、ラキティッチのヘディングをGKはじいたところをスアレスがゴールし同点。バレンシアも必死の守備で、エンパテやむなしとがっかりしていたところ、アディショナルタイムになんとスアレスが倒されてPK。バレンシアもドジを踏んでくれました。
メッシがきわどく決めてなんとか2:3で勝ちました。やれやれです。

最後にネイマールがスタンドから飛んできたものに頭をやられました。無事ならいいですが。メスタージャのガラの悪さは相変わらずです。ゴロツキ大集結のスタジアムですが、絶対犯人を逮捕して欲しい。

バルサの故障者は多く、大ピンチです。

MF アルダ 10/21、左ヒジの打撲。経過次第。
MF イニエスタ 10/22、右ヒザ靭帯一部断裂。全治6-8週間。
MF ラフィーニャ 10/21、左肋骨の打撲。経過次第。 
DF ピケ 10/19、右足首の捻挫。全治3週間。
DF アルバ 10/19、左大腿二頭筋の肉離れ。全治2週間。
GK シレセン 10/08、右ヒザ靭帯を捻挫。全治3週間。
(ブラウグラナの故障者情報です)

https://www.youtube.com/watch?v=pNx0ee2-hws

https://www.youtube.com/watch?v=3HPqtVLSa_E

https://www.youtube.com/watch?v=S1FlZiokxJ4

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月22日 (土)

JPOP名曲徒然草174: 「最高の片想い」 by タイナカ彩智

Imgaタイナカ彩智さんは加古川生まれ(1986年)で神戸育ち。すでにオリジナルアルバムを7枚出版しているそうですが、この「最高の片想い」はデビューアルバム「Dear...」(GNCX-1002、geneon)に収録されています。デビューの年、2006年に3曲目のシングルCDとしてカットされました。

スローバラードが素晴らしい、息の長いシンガーソングライターです。タイナカ(田井中)は本名だそうです。

2016年10月26日(もうすぐ)にニューアルバム「「蒼い背中 (あおいせなか)」 を発売予定だそうです。楽しみですね。

「最高の片想い」 作詞・作曲 タイナカ・サチ
https://www.youtube.com/watch?v=V28GJtf9vZI
https://www.youtube.com/watch?v=b1925VG7Dqc
https://www.youtube.com/watch?v=064WH4MVAno

「sakana」
https://www.youtube.com/watch?v=18Vxc_nhX-4

「灯」
https://www.youtube.com/watch?v=SZP-7VZcm0U

「愛しい人へ」
https://www.youtube.com/watch?v=9i57xtP7Cnk
https://www.youtube.com/watch?v=VJ2uj-eCBwE

「一番星」
https://www.youtube.com/watch?v=Sr4QIbAbBFI

「FlowerDance」
https://www.youtube.com/watch?v=EX05_QikX6o

「innocent」
https://www.youtube.com/watch?v=VM0gNktiwjM

「tomori」
https://www.youtube.com/watch?v=OwITeQlXEHo

HP:http://tainakasachi.net/
ブログ:http://ameblo.jp/tainakasachi/
Twitter:https://twitter.com/tainakasachi

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月21日 (金)

やぶにらみ生物論40: 核酸構造解析のはじまり

Photo_2アルブレヒト・コッセル(図1)はミーシャーが生化学・生理学を学んだホッペ=ザイラーの研究室、といってもチュービンゲンではなくてストラスブール(現在はフランス)にあった研究室で1877年から1881年まで助手をしていました。

当時ホッペ=ザイラーはミーシャーが発見した奇妙な酸性物質ヌクレイン(後に核酸と呼ばれる)に関心を寄せていて、コッセルも巻き込まれることになりました。その後ベルリン大学、大学、マールブルク大学、ハイデルベルク大学で教鞭をとりながら研究を進めました。

19世紀末から20世紀初めにかけてコッセルは、化学の手法のみによって、エミール・フィッシャーをはじめとする多くの研究者の協力を得て、核酸(DNA)が4種類の成分、アデニン・グアニン・シトシン・チミンと糖を含むことを証明しました(図2)。

現在では低分子物質の化学構造は分析機器によって簡単に判るわけですが、当時は大変な作業で、いろいろと紆余曲折を経てようやく構造決定にこぎつけました。アデニン・グアニン・シトシン・チミンはまとめて核塩基と呼ばれます。

Photo_3

コッセルはこの業績によって1910年にノーベル賞を受賞しています。受賞講演の中で彼は、「核酸などの生体分子はビルディング・ブロックにたとえられる部品(ある種の原子のグループ)の集合体で構成されており、部品の段階で体内に吸収されて、体内で計画に基づいて生体分子が形成される」という考え方を述べています(1)。これは非常に先進的な考え方であり、コッセルのセンスの良さを感じます。

もうひとつの核の塩基ウラシルは、1900年にアルベルト・アスコーリによって酵母の核酸から発見されました。現在ではウラシルはDNAにはほとんど含まれず、もうひとつの核酸であるRNAの成分であることが知られています。現代的表現の構造式を図3に示します。

Photo_4

コッセルは核酸には糖が含まれることを見いだしましたが、糖と核塩基との関係、さらにミーシャーが核酸の成分としているリン酸との関係は明らかではありませんでした。これらの構造的関係を明らかにしたのがフィーバス・レヴィン(図4)です。

レヴィンは1905年にニューヨークのロックフェラー医学研究所の研究室長に抜擢され、ずっとそこで研究を続けました。当時この研究所には野口英世も在籍していました。

Photo_5レヴィンは1909年に核酸に含まれている糖がリボース(D-ribose)であるとし、1929年にはこれがデオキシリボース(2-deoxy-D-ribose)であると修正しました。

現在ではDNAの成分がデオキシリボース、RNAの成分がリボースであることが判っています。ここにいたってようやく ミーシャーのリン酸、コッセルの有機塩基、レヴィンのデオキシリボースというDNAのすべての構成要素が出そろったわけです。

レヴィンのもうひとつの大きな業績は糖・核塩基・リン酸の構造的関係を明らかにしたことです。

図5で示されるように、リン酸-デオキシリボース-塩基が化学結合し、核酸の基本的な構成ユニットとなっていることをレヴィンは解明しました。このユニットはヌクレオチド(nucleotide)と命名されました。

Photo_6

ここまではよかったのですが、レヴィンはこの構成ユニットがどのように連結されているかについて、テトラヌクレオチド仮説という誤った仮説を発表し、大きな混乱をもたらしました。彼の仮説によると、アデニン-糖-リン酸、グアニン-糖-リン酸、シトシン-糖-リン酸、チミン-糖-リン酸という4つのユニットが図6のように連結されて核酸を構成していることになります。レヴィンの業績については文献(2)にまとめられています。

Photo_8

テトラヌクレオチド仮説に対する決定的な反論はスウェーデンの科学者、スヴェドヴェリ(Theodor Svedverg 1884-1971、参照3)によって行われました。スヴェドヴェリは超遠心機を開発し、分子の沈降速度からその分子の大きさを計測しました。それによれば、DNAはテトラヌクレオチドのような分子とは比較にならないくらい巨大な分子であることがわかりました。

このほかもしレヴィンの説が正しければ、アデニン・グアニン・シトシン・チミンは常に1:1:1:1で存在しなければなりませんが、測定が精密になればなるほどそうではないことが明らかになってきました。こうして謎が深まる一方の状況で、レヴィンは1940年に亡くなってしまい、世界は第二次世界大戦に突入します。

最後にヌクレオチド関連物質の命名法について述べておきましょう(図7)。

5炭糖(炭素原子5個を含む糖、時計回りにそれぞれの炭素原子に1~5の番号がつけられています)のデオキシリボースまたはリボースは、炭素原子4個と酸素原子1個からなる複素環にもう一つ炭素原子(5番)が結合した形になっています。1の位置の炭素が有機塩基(ここでは adenine だとします)の窒素と結合してC-N結合でつながっています。このデオキシリボース(またはリボース)と有機塩基が結合した分子をヌクレオシド(nucleoside, ヌクレオサイド)と呼びます。

ヌクレオシドの5炭糖の5の位置の炭素にリン酸が結合した分子をヌクレオチド(nucleotide, ヌクレオタイド)と呼びます。ヌクレオチドにはリン酸が1個または2個または3個結合する場合があり(図7)、区別が必要な場合はそれぞれ、ヌクレオシド1リン酸、ヌクレオシド2リン酸、ヌクレオシド3リン酸と呼びます。

A


ヌクレオシドには塩基として、アデニン、グアニン、チミン、シトシンが結合している分子があり、糖の2の位置がHだった場合、それぞれデオキシアデノシン、デオキシグアノシン、(デオキシ)チミジン、デオキシシチジンと呼びます。糖の2の位置がOHだった場合は、それぞれアデノシン、グアノシン、RNAの場合にはチミンでなくウラシルが結合していて、この場合ウリジンと呼びます、そしてシチジンです。チミジンの場合、ウリジンと判別が容易なので、頭にデオキシをつけないことがあります。

5炭糖の2の位置の炭素にHが結合する場合の糖の名称はデオキシリボース、OHが結合する場合リボースです。DNAの構成要素はデオキシリボースです。アデニンとグアニンをまとめてプリン、チミンとシトシンとウラシルをまとめてピリミジンと呼ぶことがあります。

次にヌクレオチドですが、例えば図7のようにアデノシンに3つのリン酸が結合している場合で糖がリボースの場合、アデノシン3リン酸(ATP=adenosine triphosphate)と呼びます。2つのリン酸が結合している場合はアデノシン2リン酸(ADP=adenosine diphosphate)、ひとつだとアデノシン1リン酸(AMP=adenosine monophosphate) ということになります。これらの物質の名前は、生化学を学ぶときには嫌と言うほど頻繁に登場します。

糖がデオキシリボースの場合、例えばアデノシン3リン酸はデオキシアデノシン3リン酸ということになり、dATPと表記します。2リン酸の場合dADP、1リン酸の場合dAMPです。

参照:

1)アルブレヒト・コッセルのノーベル賞受賞講演
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1910/kossel-lecture.html

2)レヴィンの業績:PHOEBUS AARON THEODOR LEVENE 1869-1940、Proc NAS USA XXIII  pp.75-126 (1943)
http://www.nasonline.org/publications/biographical-memoirs/memoir-pdfs/levene-phoebus-a.pdf

3)https://en.wikipedia.org/wiki/Svedberg













| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月18日 (火)

上野動物園のフォッサ 再び & 都響ティータイムコンサート

フォッサに会いに上野動物園に行ってきました。平日ですが、動物園は大盛況です。やはり外国人に来てもらうというのが、日本を賑やかにするには必要ですね。最近は中国人より、欧州やアメリカ大陸の人が多いような気がします。

フォッサというのはマダガスカルの動物で、犬と猫の共通の祖先に近いと言われています。相変わらずメスは展示していません。しかし天気が良かったせいか、オスは表のスペースに出てきてウロウロしていました。この写真はちょっと怖い。中型の犬くらいのサイズですが、マダガスカルでは百獣の王だそうです。

Aimg_1540

閉じられているドアの向こうにメスがいると思われ、オスはぐるぐる回ってはドアの前に立ち止まって「ドアよ開け」と念じているようです。

Bimg_1555

確かに犬のようでもあり、猫のようでもあります。

非常に細かいメッシュの檻の中で飼われていますが、これは手を突っ込んで噛みつかれたりしないように配慮されているのでしょうが、写真を撮影するには障害になります。不鮮明な写真ばかりでストレスがたまりました。

非常に神経質な動物らしく、動物園もなるべく見物人がこないよう、地図に名前を書かないとか、最辺境で飼育するとか、かなり配慮しているようです。それでもこの動物のサポーターになっている人がひとりいらっしゃるようで、お名前が動物園の入り口近くに張り出してありました。

今日は12時に東京文化会館のロビーに行きました。1時から都響メンバーによる無料のコンサートがあるというので行ってみたのですが、はやくも30人くらい並んでいて、開場がせまるとドアの外まで列がつづくという大盛況でした。用意したパイプ椅子では全然間に合わず、階段に座っている人が大勢いました。

Cimg

モーツァルトのディベルティメントは、とても上品かつチャーミングな演奏で本当に感動しました。「アメリカ」もぴったり息の合った演奏で、かつ出過ぎず引っ込みすぎずのバランスが素晴らしいと思いました。唯一第2楽章のヴァイオリンのピチカートは全然聞こえませんでしたけどね。

本日都響の来シーズンラインアップが発表されました。再来年の3月までのスケジュールなので、早々と思われるかもしれませんが、他のオケと比べて都響は遅い方です。スペシャルでインバルが「大地の歌」を振る以外、マーラーのシンフォニーが全くないのには唖然。国塩はファンに<<喧嘩を売っている>>のかと思いました。

指揮者がみんななじみの人たちばかりなので、国塩・大野が面倒なこと(仕事が増える)は避けたくさいという気もします。でもエヴァ・オリカイネン、フランソワ=グザヴィエ・ロトは起用しないのね・・・残念。シモーネ・ヤングやMTTを呼ぶ気はないのでしょうか?

インバルが80歳越えて「レニングラード」、大野のトゥーランガリラと天地創造、フルシャのブラームス・チクルス、ソリストはイヴラギモヴァに期待。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月17日 (月)

やぶにらみ生物論39: DNAの発見

Friedrich_miescher_2フリードリッヒ・ミーシャー(1844-1895 図1)の父親はスイスのバーゼル医科大学解剖学・生理学の教授でした。ミーシャーは父の跡を継いでバーゼル医科大学を卒業し、耳鼻科の医師になるトレーニングをはじめましたが、子供の頃からの難聴のせいで診察はうまくいきませんでした。

また彼自身はもともとそんなに医師への興味はなく、むしろ生命現象の科学的解明に強い関心を抱いていたので、ドイツのチュービンゲン大学ホッペ=ザイラー教授の下で1868年から生理学の研究をはじめました。

ミーシャーは畑違いなので勉強していなかったと思いますが、1866年にはメンデルが遺伝の法則を発表しており、また同じ年にエルンスト・ヘッケルは遺伝情報が核にあるという説を発表していました。後者はおそらくミーシャーも知っていたと思われます。

ミーシャーは当初から生命現象を化学によって解明しようという目的で、生化学の創始者であるホッペ=ザイラーを師に選んだのです。ホッペ=ザイラーの研究室は中世からあるチュービンゲン城を改装した場所にあり、図2はミーシャーの研究室の有名な写真です(ウィキペディアより)。この部屋は中世には厨房として使われていたそうです。

Schloss_chemisches_labo

ミーシャーはまず細胞の化学組成を解明しようと考えました。選んだ細胞はシンプルな球形で、遊離細胞であるリンパ球です(図3)。最初はリンパ球を実験動物のリンパ節やヒトの血液から採取しようとしましたが、採取できる量が少なすぎたため、ホッペ=ザイラーの助言に従って、患者の膿(うみ)から採取することにしました。当時は消毒もいいかげんで、負傷者や手術した患者の包帯から大量の膿がとれたので、実験は軌道に乗りました。

膿というのは、若い人の中には見たことがない人もいるかもしれませんが、生体防御反応のひとつで、細菌を殺すために出動した白血球やリンパ球およびそれらの崩壊産物が主成分です。

800pxlymphocyte2

ミーシャーの実験プロトコルは次のようなものでした。

1: 当時核の未知タンパク質が遺伝物質ではないかというヘッケルらの考えがあったので、ミーシャーはまずこのアイデアが正しいかどうか検討することを目的として、核と細胞質の分離を試みました。

試行錯誤の結果、ブタの胃の抽出物に含まれるペプシンというタンパク質分解酵素を含む液に、膿の細胞を数時間浸しておくと、細胞が溶けて核が分離できることがわかりました。ペプシンはあの細胞説で有名なテオドール・シュワンが1836年に発見していました。

2: こうして得られた核を弱いアルカリで処理し、抽出した物質の溶液に酸を加えると、未知物質の沈殿が生じることを見つけました。同じような物は肝臓、睾丸、酵母、鳥の赤血球からも抽出可能でした(哺乳類の赤血球には核がない)。ミーシャーはこの物質が、それまで知られていたどのタンパク質とも異なることを確かめ、ヌクレインと命名して1869年に学会で発表しました(論文出版は1871年(1))。

このヌクレインが、現在の知識に照らせばまさしくDNAだったわけです。論文(1)はホッペ=ザイラーが出版する雑誌に投稿されましたが、ホッペ=ザイラーは1年間かけて、自分ですべて追試した上で掲載を許可しました。当時としてはリン酸が多量に含まれていたり、強い酸性だったりすることが、なかなか信じてもらえなかったわけです。そのくらい異常で重要な意味のありそうな論文だと、ホッペ=ザイラーも感じていたと思われます。

3: ミーシャーはヌクレインの元素分析を行ない、通常タンパク質が含む炭素、水素、酸素、窒素以外にリンを含むことを明らかにしました。ミーシャーはヌクレインの成分に多量のリン酸が含まれることから、ひょっとするとこれはタンパク質ではないかもしれないとは考えていたようです。

その後ミーシャーはバーゼル医科大学の生理学の教授となってヌクレインの研究を続けましたが、講義は苦手で研究環境としてはあまり良くなかったようです。さらに彼のヌクレインのサンプルは単に普通のタンパク質に無機リンが混入しただけだろう、という批判にはっきり答えられなかったため、しだいに忘れられそうになっていました。しかしそれでもミーシャーはこつこつとヌクレインの精製法の改良を続け、材料として理想的な鮭の精子から、かなり純粋な段階にまで精製することに成功しました。

細胞の染色法やミトコンドリアの発見で知られているリヒャルト・アルトマンは、タンパク質をほとんど含まない画分にヌクレインが存在することを確かめ、ヌクレインを核酸 (nucleic acid) と改名することを提唱し、この物質がタンパク質とは異なることをアピールしました。残念ながらこのアルトマンの論文はみつかりませんでした。ヌクレイン=核酸の精製法の進展はミーシャーの死後、シュミーデベルクによって論文にまとめられています(2)。

彼らは核酸をバラエティーのない固定した構造の物質と考えていたので、大きなバラエティーが必要な遺伝子の担い手としては不適切だと考えざるを得ませんでした。しかしいろいろな時代的制約などによる限界がありましたが、もちろんミーシャーやアルトマンと共同研究者達こそがDNAの発見者であり、彼らの萌芽的研究から20世紀の輝かしい分子生物学の歴史が誕生したことに疑いの余地はありません。ミーシャーの業績は Ralf Dahm によってまとめられています(3)。

P_04717322ミーシャーにはヌクレインの精製以外にもうひとつの業績があります。それは鮭の精子からプロタミンを発見し、精製したことです(4)。

プロタミンは塩基性のタンパク質で、ヌクレインの酸性を中和する役割が考えられました。現在から見ても、核の基本的な構成要素であるヌクレオソームは核酸とヒストン(またはプロタミン)の複合体であり、重要な知見であると言えます。

鮭の精子から採取されたDNAは現在でもよく研究用に使用されます(図4)。精製されたDNAは白い繊維状のもので、使うときはピンセットで一部を引き裂いて使います。

スイスのバーゼルにはミーシャーの名を冠した ”Friedrich Miescher Institute for Biomedical Research” が1970年に設立され、現在も活発に活動しています(5)。またチュービンゲンのマックス・プランク研究所には Laboratory of Friedrich Miescher があります(6)。

参照:

1) Miescher F. Uber die chemische Zusammensetzung der Eiterzellen. Med.-Chem. Unters. 4, 441-460 (1871)

2) Schmiedeberg O., and Miescher F. Physiologisch-chemische Untersuchungen uber die Lachsmilch. Arch. Exp. Pathol. Pharm. 37, 100-155 (1896)

3) Ralf Darm, Friedrich Miescher and the discovery of DNA. Develop. Biol. 278, 274-288 (2005)

4) Miescher F. Das Protamin - Eine neue organische Basis aus den Samenfaden des Rheinlachses. Ber. Dtsch. Chem. Ges. 7, 376 (1874)

5) http://www.fmi.ch/

6) http://www.fml.tuebingen.mpg.de/





| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月16日 (日)

リーガ2016~2017 第8節: 4位転落のバルサ奮起

Braugranaテア・シュテーゲンの珍プレーで前節苦渋の敗戦となったバルサ。気を取り直して、ホームの対デポルティーボ・ラ・コルーニャ戦に再出発しなければなりません。カンプ・ノウは早い時間の試合ということもあって8万8千人以上の大盛況です。

しかしこんな時にジョルディ・アルバとセルジ・ロベルトの両SBが負傷欠場ということで、普通ならディニュとビダルでいくところでしょうが、おそらくビダルは対談したときに何かルーチョの逆鱗に触れるようなことを言って、「何が何でも使わない」という立場に追いやられたのだと思います。その証拠に、こんなSBひでりのゲームでもベンチにも入れてもらえません。

苦肉の策ということもありますが、バルサは今回は非常に考えた3バックで試合に臨みました。マチュー・ピケ・マスチェラーノの3バックですが、中盤の左ディニュ、右アルダにいつものSBの機能をもたせて、常時エストレーモ(左ネイマール、右ラフィーニャ)の外に上がらせるようにしました。3バックは行けるときには中央で押し上げるという作戦です。

FWはネイマール・スアレス・ラフィーニャの南米トリオです。ラキティッチとブスケツは、このフォーメーションではダブルボランチ的な位置づけだと思います。3バックの両サイドが上がることはまずないので、ブスケツが臨時にセンターバックにはいる義務がなくなり、前でプレイする機会を増やせます。幸いにしてデポルは442で(放送では433とか言ってましたが、どうみても442)、3バックでやるには有難い布陣です。アンドネさえ抑えておけば大丈夫です。バルサは主に右ライン際のアルダを起点として、クロスで攻撃する作戦です。デポルの守備的なサッカーの御陰でバルサペースで球をまわせるのも有難い。

21分、ラフィーニャが右サイドからスアレスとのワンツーですり抜けて、シュートがゴールマウスに突き刺さりました。2点目はFKをピケが頭で合わせ(このとき10cmくらいオフサイドだったかもしれません)、GKが跳ね返したところをラフィーニャが押し込みました。

3点目は芸術的なゴールでした。ネイマールからスアレスにスルーパスが出るとみせて、一瞬スアレスが止まって後ろに下がり、そこにネイマールから時間差攻撃のパスが出てゴール。ネイマールとスアレスの素晴らしいコンビネーションプレイでした。

後半はメッシも登場。早速ネイマールのノールックパスに反応してゴール。躍動するバルサです。テア・シュテーゲンも今日は珍プレーはなく、めでたしめでたしでした。ひとつだけ心配なのは、パコ・アルカセルが打てども打てどもはずしたり、GKに止められたりでゴールがないことで、本人も相当へこんでいることです。バーモ パコ。

https://www.youtube.com/watch?v=njFq4Iv7tq0

https://www.youtube.com/watch?v=24H-CUEjz6o

https://www.youtube.com/watch?v=qZtwM8dQA3s


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月15日 (土)

都響-下野竜也 チャイコフスキー「交響曲第5番」@東京芸術劇場2016年10月15日

Img池袋はバイトしたこともないし、学校・仕事・ねぐらとも関係なかった街ですが、多少の懐かしさもあります。

昔北口に「京」という美味しいお好み焼き屋があって、時々来ていました。今はもうありません。ジュンク堂はまだあるようですね。

サンシャイン方面に行く途中にあるカメラの「さくらや」の地下に、よく超軟調の印画紙(電子顕微鏡用に使った)を買いに行きました。そのさくらやも今はありません。はじめて芸者さんの芸をみせてもらったのも池袋北口の料亭。もう芸者さんなんて池袋にはいないのでしょうね。諸行無常です。

そんななかで、芸劇と都響がまだ存在するのは有難いことです。本日の指揮者は下野竜也氏、コンミスは四方さん、サイドはゆづき。

前半のペンデレツキの「シャコンヌ」は都響の弦の美しい響きが心地よい曲。しかし次の武満の曲「ア・ストリング・アラウンド・オータム」はよくわかりません。ひとつのメロディーをこねくり回しているような感じで退屈です。まわりでも2~3割の人は寝ていました。これで秋を感じよと言われても無理難題ですね。私が起きていたのは、鈴木さん(Vla)の演奏が気持ち良かったからです。

DVDを作成するらしく、マイク林立の上に、あちこちでビデオカメラが動いていました。指揮台も2段重ねで見栄え良くしていたようです。インバル以外のものはなかなか発売されないのが難ですが・・・。

後半のチャイコフスキー交響曲第5番は下野さんにぴったりの曲かな。彼はメリハリつける方だと思いますが、常に下品にならない程度でとどめるというのが流儀。危険な香りとか鳥肌立つような進行とかは無縁なタイプだと思います。西條さん(ホルン)のソロも深みのある演奏でしたし、終楽章の盛り上がりも素晴らしく、チャイコフスキーの音楽を堪能できました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月14日 (金)

棋士と将棋ソフト そして嫌な感じ

A1180_008696将棋の三浦九段が公式戦の出場停止になりました。対局の途中に将棋ソフトをみたのではないかという疑いですが、もし確証がないのにこのような処分がなされたのならおかしな話です。単にボディチェックをしてスマホを預かれば良いだけの話だと思いますが? 
http://www.asahi.com/articles/ASJBD6GMGJBDUCVL02R.html

まあそれはそれとして、この話に気持ち悪い思いがした人は多いのではないでしょうか。バレーボールなどではコンピュータを見ながら選手に指示を出していますし、サッカーも選手の動きをコンピュータで徹底的に分析して、作戦の指示を出しています。将棋や囲碁ほどダイレクトではないですが、もしコンピュータに相談するのがいけないのなら、これも灰色でしょう。

日銀・民間銀行・保険会社などもコンピュータを駆使して政策や投資を決めていると思われますし、そのうち警察・軍隊・裁判所などもコンピュータに相談して逮捕・釈放・攻撃・守備・有罪・無罪などをきめることになるでしょう。飛行機の操縦も自動化されていますし、車の運転もそのうち自動化されるでしょう。家事や介護もロボットにおまかせになろうかと言う時代に、テーブルゲームだけコンピュータ禁止というのは奇妙な感じがします。

その奇妙な感じというのは、「もう人間なんて存在が無意味なのではないか」という疑念がわいてくるからです。テーブルゲームも人間が対戦するのは2軍戦で、1軍戦はコンピュータソフト同士の対戦というのが今や本当のところでしょう。何でもコンピュータの方が上手にできるのなら、人間は不用なのでしょうか? 

それでおおいに結構。人間は適者生存の法則に従って次第に滅び、人工知能に進化していくというダーウィニズムを受け入れるなら問題ありません。 しかし、それが嫌なら人工知能は厳しく規制することが必要です。

私の意見を言わせてもらえば、人間の記憶の管理という作業には、大いに人工知能に頼るべきだと思いますが、その他の分野においては、人間の知能に勝る人工知能は厳しく規制すべきだと思います。

人間の記憶の管理というのは、今までは書籍・辞書・写真・ビデオ・CD、そしてこのブログもその役割を果たしていると思いますが、これらを人工知能で整理していつでもとりだせるようにしてもらえると有難いと思います。これは何か人間が行動や判断を行うときに 「どうすればいいか?」 と人工知能に相談するのとは、本質的に違うように思います。

人工知能の記憶整理機能を究極的に発達させれば、肉体が死んだあとも、墓の中で記憶の中に浮遊できるという楽しみが期待できるかもしれません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月12日 (水)

「政府はもう嘘をつけない」 by 堤未果

Img「政府はもう嘘をつけない」 堤未果著 角川新書 2016年刊

ヒラリー・クリントンの言葉:「私は御社(ゴールドマン・サックス)からの支援を決して忘れません。そしてどんな時も、あなたがたの要望を他の何より最優先させていただきます」

彼女がこのように考える企業は金融だけではなく、保険・軍需・医療・エネルギー・食糧・農薬など多岐にわたっています。これらの企業の莫大な政治献金で大統領の地位を得たとしたら、ヒラリーがどういう政策をとるかは明らかでしょう。

堤氏は第1章で米国の金権腐敗政治を指摘した後、第2章では転じて議論を日本の政治の独裁化にフォーカスしています。現在でも晋三周辺による政治の独裁下は顕著ですが、それは憲法改正によって完成します。堤氏が特に注目しているのは「緊急事態条項」で、これがフランスの非常事態宣言よりもかなりひどいものであると指摘しています。

さらに「テロとの戦い」というのを錦の御旗にしますと、この戦いは(テロ組織とは交渉しないので)事実上終わりがないわけですから、好きなだけ緊急事態を延長できるわけで、これでは憲法も法律もないも同然で、独裁政権の思いのままとなります。日本にはドイツのような憲法裁判所もないので、歯止めがききません。第2章では学資ローンの問題も指摘されています。このことは自衛隊員の確保と密接に関連しているというお話です。

第3章はまず軍需産業から。米国の投資家達はパリのテロで何を考えたかというと、軍需産業の株を死にものぐるいで買いあさるということです。「テロとの戦い」は儲かりすぎてやめられないというのが軍需産業と投資家の本音です。こう考えると誰がISISをサポートしているかも想像がつきます。ISISがだめになったら、別のテロ組織を支援するでしょう。まさしくマッチポンプ式経営術です。

ギリシャはIMFへの借金が返済できなくて破綻しましたが、その真相を私たちは知らされていませんでした。NATO加盟国のなかで、米国を除くとギリシャの軍事支出は第1位だということを日本のニュースは教えてくれません。ドイツやフランスはギリシャに大量の武器を売ってボロ儲けしていたのです。ギリシャが1300両の戦車をもっているなんてこの本ではじめて知りました。

これからは一般市民・農民 vs グローバル企業の戦いの時代です。TPPはもろんですが、さらに留意すべきは公共事業の民営化です。保険・病院・教育・上下水道などをグローバル企業にゆだねるための国際交渉がジュネーヴで秘密裏に行われており、もちろん日本も参加しているという驚愕の事実をこの本ではじめて知りました。この協定はTiSA ( Trade in Services Agreement) という名前で、2030年に調印予定だそうです。これを暴露したのはウィキリークスで、いまや頼りになる報道機関はウィキリークスだけというのは嘆かわしい事実です。このようなことが実現すると、貧乏人の生活はますます苦しくなり、グローバル企業はボロ儲けということになるのは明白です。TiSA が秘密裏の交渉の結果締結されても大丈夫なように、自民党は新憲法草案にこっそり条文を忍び込ませているようです。

私たちはこのままグローバル企業のなすがままになってしまうのでしょうか? それを拒否した国アイスランドのお話が第4章にあります。是非この本を購入して、この章を読んで欲しいと思いますね。日本の野党統一組織はアイスランドの制度をモデルにして、政権をめざすべきだと思います。その際新自由主義者でかつTPPやTiSAを支持する人々だけは統一組織から排除すべきです。

米国もトランプはスキャンダルでつぶされると思いますが、ヒラリーの後は必ずサンダースの考え方を引き継ぐ革命家が現れて、コンセプトの異なる政権が成立することを期待したいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月11日 (火)

富士通PC部門の身売り キーボードはどうなる

富士通のパソコン事業がレノボに売却されるそうです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ05IEW_V01C16A0000000/

これは私にとって iPod classic の廃止に続く大ショックです。なぜなら富士通のキーボードだけが、私に言わせれば、まともなキーアレンジメントだからです。レノボはおそらくこのキーボードを廃止し、すでに傘下になっているNECタイプに統一すると予想します。

1

日本語をキーボードで打つとき、英語とは全く異なる点があります、それは変換→確定を繰り返しながら漢字を入力しなければならないということです。これをスペース→エンターでやると、どうしてもエンターを小指で押さえるときに、右手がホームポジションからはずれてしまうのです。これが非常に不快なので、私はVJEスタイル(富士通スタイル)で、右手親指で変換キーをおして変換、左手親指で無変換キーを押して確定という手順でやっています(図の矢印、右で変換、左で確定)。これなら両手をホームポジション(赤丸)に置いたままで日本語入力ができます。

このようなやりかたは、スペースキーが幅広いタイプだと不可能です。富士通は伝統的にスペースキーが幅狭な製品が多く、日本語入力がやりやすいような設計になっています。これは偶然ではなく、わざわざ変換(XFER)・無変換(NFER)キーをスペースキーの手前(図の下側)に置いたキーボードを販売していたこともあるくらいです。デスクトップPCなら、そのタイプのキーボードを別に購入して使うという手もありますが、ノートパソコンだとちょっとその気にはなれません。

サンヨー・東芝は中国、シャープは台湾に家電部門などを売却して、日本企業の脆弱さが目立つ昨今ですが、これでTPPをやろうというのですからあきれます。まあそれはさておいて、日本語入力に配慮したノートパソコンをはたしてどこかのメーカーで販売してくれるのか、わずかな期待を持って注目しています。



| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月10日 (月)

都響-藤岡幸夫 ベートーヴェン「田園」@江戸川総合文化センター2016年10月10日

Img_1515江戸川総合文化センターで都響の演奏を聴いてきました。江戸川総合文化センターは新小岩からバスで3駅あるので、少し不便です。

ただ新小岩は総武線快速停車駅なので船橋から2駅目ということで、北総線→野田線→総武線の乗り継ぎですが、1時間と少しで着きました。

文化センターの建物は、清流をあしらったなかなか素晴らしい公園(写真)の中にありました。ホール自体はやや小ぶりなサイズで、シートの座り心地は良好です。満席ではなく、8分くらいの客席でした。今日は名演奏だったのでもったいない話です。都響主催でないと、やはりプロモーションが少し足りなくなってしまうのでしょうか。

本日の指揮者は藤岡幸夫さん、コンマスは山本さん。あれれ髪留めで髪くくってる!? あの部分モヒカンと言おうか部分弁髪と言おうかは、切らずに髪留めで処理するとはいったいどうするつもりなのでしょうか・・・。サイドはゆづき。

広田さんが客席の誰かと話してたり、南方さんを中心に木管奏者が談笑していたりと、辺境の演奏会とあってか皆さんリラックスしている雰囲気でした。それにしても横山和加子はピンヒールが似合いますね。

Imgaa前半はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ソリストは坪井夏美さん。なかなか可愛い方です(https://twitter.com/sacchiy0608/status/785408588864827392?lang=ja)。

紺にキラキラをあしらったコスチュームで登場です。

演奏はなかなかガッチリした本格派。坪井さんは若気の至りなどと言うところは全くなく、しっかりとこの名曲を聴かせてくれました。

都響と丁々発止もあり、カデンツァも落ち着いてたっぷり聴かせてくれましたし、充実した内容の演奏だったと思います。海千山千のソリスト界でもまれるのもいいけれど、こんな人が都響のコンマスをやってくれるといいなと思いました。

後半は藤岡さんの18番らしいベートーヴェンの「田園」交響曲。

都響は直近に調布で一度演奏した曲目ということもあってか、素晴らしいアンサンブルで指揮者とのコンビネーションもバッチリです。ひょっとすると、今まで聴いた「田園」のなかで1番かなと思いました。かなり前の方の席で聴いていたので、音量や弦の厚みもたっぷりで圧倒的でした。

アンコール: エルガー:夕べの歌 op.15, No.1

坪井夏美:

自己紹介
https://www.youtube.com/watch?v=ov402inzIcU

演奏1(本日と同じドレス)
https://www.youtube.com/watch?v=XFv9QbDS4ag

演奏2
https://www.youtube.com/watch?v=HIZXvzvxv6g

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 9日 (日)

やぶにらみ生物論38: ハエ部屋

メンデルの法則と染色体の挙動を結びつけたサットンの業績は大きかったわけですが、まだメンデルの言うエレメント=遺伝子が染色体上にあるという証明にはなっていません。染色体の上にあると考えるとメンデルの法則をうまく説明できるというレベルです。

サットン廃業のあとを受け継いで染色体説を発展させたのはトーマス・ハント・モーガンです。モーガンはもともと遺伝学者ではなく、発生生物学者でプラナリアなどの再生や発生を研究していました。プラナリアというとよく教科書に出てくる、頭を切れば頭が生えてくる、尾を切れば尾が生えてくるというあの生物です(図1)。モーガンは再生に必要な物質の勾配という概念を提出し、それは最近になって阿形らによって証明されました(1)。

Photo


Tsuda_umekoモーガンは若い頃ブラインマーカレッジという女子大学で教鞭を執っており、この頃の彼の学生の中には後に津田塾大学を創設する津田梅子(図2)もいて、彼女にはカエルの発生の研究をやらせていたそうです(2)。

発生生物学をやっていると、遺伝学者の考えていることが単純すぎるようにみえることは理解できます。というのは、たいして特徴のない受精卵から、さまざまな組織・器官が時間の経過と共にできてくることを観察していると、形質というものはどんどん動的に変化するもので、遺伝子で単純に規定される静的なものではないという考え方になりがちだからです。

しかし当時はメンデルの再発見で大騒ぎとなっており、彼がウィルソンに呼ばれて来たコロンビア大学にはサットンという減数分裂を目視した俊英の大学院生がいました。モーガンがメンデルの法則や染色体説の真偽に関心を抱いたのは当然でしょう。モーガンはまたド・フリースの突然変異説に傾倒し、ダーウィンの自然選択が成立するためには突然変異が重要な役割を果たすものと考えました。そして1907年頃から、それらの課題を研究するために最適な実験動物としてキイロショウジョウバエを選択しました。

キイロショウジョウバエ(図3)はいわゆるコバエの一種であり、体長2~3ミリで、乾燥酵母・オートミール・蔗糖などで手軽に飼育することができます(図4)。メスが10日で成熟して、一度に50個前後の卵を産むことができるというのが研究上の魅力です。モーガンはこれで飛躍的に研究が進むと期待したのでしょうが、最初の頃はまったくうまくいきませんでした。それは突然変異体を検出するのが非常に難しかったからです。何千何万という小さなハエを観察して変異を同定するのは骨が折れます。

Drosophila_mela

800pxdrosophil

しかし1910年になって彼の前に救世主が現れました。それは白眼の突然変異体(ミュータント)で、これを野生型のメス(赤眼)と交配させるとF1はすべて赤眼となりますが、F2のオスは50%の確率で白眼になることがわかりました(図5、参照3)。

Sexlinked_inh



この少し前にウィルソンとスティーヴンスはショウジョウバエのメスは2本(1対)のX染色体を持つが、オスはX染色体を1本しか持っていないことを観察していました。このことを考え合わせて、オスの1本のX染色体に変異が発生すると白眼になり、それはメンデルのいう劣性変異のため2本の性染色体を持つメスでは発現しないとするとうまく説明できます。すなわちこの白眼の変異は性染色体Xと挙動を共にすることがわかりました。

ショウジョウバエはヒトと同じくメスはXX、オスはXYという性染色体をもっていますが、オスが父親から引き継ぐY染色体には眼の色にかかわる遺伝子は存在しないので、この場合考慮しなくていいのです。

この研究結果によってモーガンは染色体説に強固な根拠を与えることになりました。モーガンの研究室にはスターティバント、ブリッジス、マラーなどの多くの優秀な学生が集結するようになり、人海戦術でショウジョウバエのミュータントを解析すると、次々と変異が見つかり(図6)、モーガン研究室はまさしく世界の遺伝学の中心となっていきました(4)。
Drosophila_gene

カルヴィン・ブリッッジスは突然変異体を探し出す特異な才能があり、1925年にカタログ記載された突然変異体365種類のうち240種類は彼が発見したものだそうです(5)。モーガンが最初の2~3年全く突然変異体を検出できなかったことを考えると、これは驚異的です。

そのほかにもブリッジスはいろいろと研究室発展の基盤となるような知見や技術を開発しました。ただ彼は知り合った女性すべてを口説くというドン・ジョバンニのような男で、ドン・ジョバンニはつきあった女性のカタログを従者につくらせていましたが、彼は自分でつくっていたそうです。そして寒い日にカブリオレでデートして心臓麻痺をおこし、若死にしてしまいました。

ショウジョウバエの染色体はわずか4対で、しかもそのうち1対は非常に小さなもので(図7の中央あたりにみえる)、わずかな遺伝子しか乗っていません(図7)。ですから2つの形質に着目したとき、それらが同じ遺伝子に乗っている確率はほぼ30%で、23対の染色体を持つヒトなどと比べると非常に高い確率です。すなわちメンデルの独立の法則が成立しない場合が非常に多いということです。

Photo_2

図8のようにAとbという形質が同じ染色体に乗っていれば、遺伝の際にまるで一つの形質のように行動を共にするはずなのですが、時にそれが分かれてしまうことがあります。このことについて、1909年にベルギーの生物学者ヤンセンスが、減数分裂で4つの染色体が集合した際に、それぞれの染色体の1部が交換されるということを発見していました。Aとbの形質の間で染色体がちぎれて、a、Bの相方と交換されるとAB、abという新しい連鎖が成立します。染色体の一部が交換されてできた新たな染色体を組み替え型染色体といいます(図8)。

Photo_4


ここでアルフレッド・スターティバントは考えました。染色体がランダムな位置でちぎれるとすると、染色体上で離れた位置にある遺伝子は別れやすく、近傍にある遺伝子は分かれにくいと想定されます。すなわち「組み換え型染色体ができる確率は遺伝子A、Bの染色体上の距離に比例する」という公式が成立します(図9)。ですから組み替え型染色体ができる確率を多くの遺伝子について調べれば、遺伝子地図の作成が可能であることに気がついたのです。

Photo_3


例えばAという形質とBという形質に注目したとき、両者が組み替えによって別れる確率が10%であるとします。そしてBとCは5%だとすると、さらにAとCについて検査してみると15%だった場合、A、B、C という形質は染色体上に図9に示されるような順と距離で配列されているということが推定されます。

組み替え確率の%を距離に置き換えて、センチモルガンという単位を使用します。染色体全体を100センチモルガンとして、多くの形質について上記のような検査を行うと、原理的には何百何千という遺伝子を染色体上に並べることができます。こうして染色体地図を製作することができます。これは遺伝子が染色体上にあるということの決定的な証明となりました。

ハーマン・マラーはX線照射によって突然変異が誘起されることを発見し、遺伝学・放射線医学生物学の進歩に大きな足跡を残しました。彼は筋金入りの共産主義者で、一時期レニングラード(現サンクトペテルブルク)に移住して、ソ連の科学アカデミーで活躍していたこともあるそうです。しかし彼の理想とは裏腹に、次第にソ連の遺伝学界はルイセンコに汚染され、彼を招いてくれたヴァヴィロフも獄死しました。

「ハエ部屋」と呼ばれていたモーガンの研究室からは、モーガン自身以外にも上述のマラーや後で登場するビードルというノーベル賞受賞者をはじめとして多くの遺伝学者が輩出し、スターティバントの弟子のデルブリュックやルイスもノーベル賞を受賞しました。

「非凡な農民:http://www.agr.ryukoku.ac.jp/teacher/nakamura_george_beadle/chapter5.html」 というサイトに興味深い記述があったので、最後に引用させてもらいました。

以下引用:
モルガンと彼の学生達が生み出す知的なエネルギーは物理的な環境の劣悪さをものともしなかった。コロンビア大学構内のシェルマホーン・ホールの6階に位置する彼らの仕事場は16 x 23 フィートの広さの一部屋で、そこには8つの机が所狭しとばかりに詰め込まれていた。コロンビア大学はまだ大きな居住用アパート群に囲まれてはおらず、実験室からは近くの牧草地で草を食むヤギの群れが見えた。訪問客は即座に部屋の汚さと乱雑な様子に気づいて驚くのだった。中でハエが飛び回るガーゼで蓋をしたガラス瓶が紙切れや終了した実験から出た屑ゴミで溢れた机と棚の空間を奪い合っていた。ハエ・グループの神秘的雰囲気の一部は、ハエを収めるミルク瓶が近くの家々の玄関先から収穫されたものではないかという疑いから来ていた。ハエは割り当てられたミルク瓶に閉じ込められてはいたが、あらゆる隙間と割れ目に潜むゴキブリがハエの餌や他の食物の残り滓の上を自由に這いずり回っていた。もちろんネズミが部屋の汚物置き場に集まった残り物の中から食物を探して運動会をしているような有様だった。部屋には酵母と腐りかけたバナナの匂いが漂っていた。時折、建物の友人や同僚達が壁を飾るバナナの茎をもらいにやって来たりした。
:引用終了

図の多くはウィキペディアから借用させていただきました。

参照:

1)http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013/130725_1.htm
The molecular logic for planarian regeneration along the anterior-posterior axis. Umezono et al. Nature 500, 73-76 (2013)

2)http://argmyntbk.exblog.jp/9395215

3)https://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Hunt_Morgan

4)「細胞学の歴史 生命化学を拓いた人々」 Arthur Hughes 著 西村顕治訳 八坂書房 1999年刊

5)http://www.agr.ryukoku.ac.jp/teacher/nakamura_george_beadle/chapter5.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 7日 (金)

Raferio: 「雨音はショパンの調べ」

Hqdefault9月は野菜の値段が高騰するほど雨が多かった今年ですが、ようやく晴れっぽくなりそうです。

こんなときに、東芝は野菜の室内栽培工場を放棄するとは・・・。

雨の日にしっとり聴こうと思ったら、意外にテンションが上がる Raferio さんの演奏。

演奏もそうだけど、ビジュアル的にもひきこまれます。

https://www.youtube.com/watch?v=C4rN90OYDqs&spfreload=10

ケラ
https://www.youtube.com/watch?v=UqgSx6JHCOM

Gazebo
https://www.youtube.com/watch?v=61AoMeNd8KY
https://www.youtube.com/watch?v=eDiPsdpIjGQ
https://www.youtube.com/watch?v=7v3MA7obylU

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 5日 (水)

やぶにらみ生物論37: 染色体説

Birthofthドイツの生物学者シュライデンとシュワンが細胞説(生物の体は一般に細胞から成り立っている)を発表したのは1838・1839年ですが、1832年にベルギーの生物学者デュモルティエが細胞分裂を報告しているにもかかわらず、シュライデンとシュワンは細胞の増殖については正しい理論に到達しませんでした(1)。

ドイツの病理学者ルドルフ・フィルヒョウが「すべての細胞は細胞から生じる」という理論を提唱したのは1958年であり、メンデルが1860年代に遺伝の法則を発表する直前でした。その頃にはまだフィルヒョウの考え方が一般に認められていたわけではないようです。

ドイツの生物学者テオドール・ボヴェリはウニの発生の研究から、正常な胚発生のためには分裂した細胞それぞれにすべての染色体が存在することが必要であることを示しました。また染色体が異常になることが「がん」の原因であるという学説を提唱しました(2)。すなわち生物の形質には染色体が大きな影響を与えることを示唆したわけです。

細胞説誕生に関する詳細は文献(3、表紙は図1)に詳しい記述があると思われます(私は未読)。

Suttonメンデル再発見直前の1898年、ウォルター・サットン(図2)はカンザス大学の細胞学者クラレンス・E・マクラングの学生として染色体研究を始めました。

1900年からはマクラングの勧めでニューヨークのコロンビア大学に移り、細胞学の大家であるエドマンド・B・ウィルソンの元で博士課程の大学院生として研究を行いました。

Photoマクラングはバッタ Brachystola magna (図3)において性染色体を発見し、その研究を行っていました。このバッタは染色体が大きく、観察しやすいという細胞学研究上の利点がありました。

サットンはこの昆虫のオスの精子形成では、生殖細胞に特異的な細胞分裂=減数分裂の過程にある染色体が大きくはっきりと観察できることを見いだし、その観察を行いました。

彼はこの研究をウィルソンの研究室で発展させ、減数分裂における染色体の挙動はメンデルの法則に従うとする「染色体説」を提唱しました (4,5)。

もしメンデルの言うエレメントを母親からひとつ、父親からひとつ受け継ぐとすると、F1のもつエレメントは2つです。そうするとF2は4つ、F3は8つのエレメントをもつことになり、もしエレメントに物理的実体があるとするとすぐに膨大な数になって理論は破綻します。親が持つエレメントの数を常に同じ数にするためには、生殖細胞(動物の場合は精子と卵子)のエレメント数は親の半分でなければいけません。

サットンは精子形成過程において、この減数がおこなわれているのではないかと考え、顕微鏡で熱心に観察しました。皆さんも中高時代にムラサキツユクサ(図4)などで観察したことがあると思います。

Photo_2

この結果図5のように精子の染色体の数は体細胞の半分で、これは精子形成過程で減数分裂という特殊な細胞分裂が行われることを示しています。親細胞と同じ娘細胞が2個できる通常の体細胞分裂と違って、減数分裂では染色体の数が半分の娘細胞が4個できることがわかりました。

このことからサットンは体細胞はメンデルの言うエレメント=染色体を2セットずつ持っており、精子は1セットづつ持っていると考えると、それまで概念的な理論であったメンデルの法則が染色体という実体をともなってうまく説明できると考えました。簡単に言えばこれがサットンの「染色体説」です。サットン自身の記述を引用しておきましょう(4より)。
--------------------
I may finally call attention to the probability that the association of paternal and maternal chromosomes in pairs and their subsequent separation during the reducing division as indicated above may constitute the physical basis of the Mendelian law of heredity.
--------------------

Photo_4


きちんと述べると次のようになります。

1.メンデルの言うところの”要素=エレメント”は卵や精子(花粉)のような配偶子を通じて次世代に伝達される。卵と精子には均等に要素が含まれる。

2.細胞核の構成成分のうち、染色体は細胞分裂のとき娘細胞に均等に分配される。”要素”は卵と精子が均等にもっているはずなのに、卵の細胞質は巨大で、精子の細胞質は非常に乏しいことから、細胞質ではなく核(染色体)に要素が含まれると考えられる。

3.染色体は核の中で、メンデルの考えた”要素”という考え方に沿ったかたちで、対になって存在する(相同染色体) → ”要素”は染色体の上に乗っていることが示唆される。

4.卵や精子がつくられるときは、通常対になっているはずの染色体が分離し、そのうちの一つづつがランダムに選ばれて卵や精子に受け継がれる。たとえば体細胞がAaBbCcという要素をもっているとすると、卵や精子は、ABC, ABc, AbC, Abc, aBC, aBc, abC, abc の2の3乗通りの種類が考えられる。人の場合だと23組なので2の23乗通りの卵と精子が存在する。

5.染色体の数に比べて要素の数は非常に多いので、ひとつの染色体に多数の要素が相乗りしており、これらの相乗りしている要素についてはメンデルの独立の法則は成立しないと予測できる。

これは大発見であり、サットンは生物学を担う次代のホープと期待されました。しかし生来の熱血漢である彼は、あまり薄暗い実験室で顕微鏡を覗いてばかりというような生活は、自分の性格や生きていくポリシーと合わないと考えたのでしょう。大学院時代に歴史的論文を2編発表した後、研究をやめてカンザスにもどり外科医に転業します。そして第一次世界大戦のときにはヨーロッパに渡り、フランスで兵士の治療にあたっています。サットンの面目躍如というところです。

デンマークの遺伝学者ウィルヘルム・ヨハンセンは1909年にメンデルの「エレメント」を遺伝子(gene) と呼ぶよう提唱しました。そして形質という漠然とした概念をはっきりと「遺伝子型 genotype」と「表現型 phenotype」にわけて定義しました。

ヨーロッパから帰還してまもなく、サットンは虫垂炎にかかってしまいます。そしてこの手術が失敗に終わり、わずか39年の生涯を終えることになりました。もう少し生きていれば、間違いなく1901年からはじまったノーベル賞を受賞していたと思われるので、誠に残念な悲劇でした。彼の遺骸はサットン家の立派な霊廟に眠っています。

減数分裂について、より詳しい知識や顕微鏡写真に興味がある方はサイト(6~8)を参照されることをお勧めします。

参照:

1) 細胞説:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%AA%AC

2) ボヴェリ:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2247478/

3) 「The birth of the cell」 by Henry Harris, Yale University Press, 1999
https://www.amazon.com/Birth-Cell-Professor-Henry-Harris/dp/0300073844/ref=mt_hardcover?_encoding=UTF8&me=#reader_0300073844

4) W. S. Sutton. "On the morphology of the choromosome group in Brachystola magna" Biological Bulletin, 4:24-39, 1902.
公開されています--- http://dev.esp.org/foundations/genetics/classical/wss-02.pdf

5) W. S. Sutton. "Chromosomes in heredity" Biological Bulletin, 4:231-251, 1903.

6) 細胞分裂と細胞周期 http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbook/celldiv.htm

7) ムラサキツユクサを使った減数分裂の観察 http://www.aichi-c.ed.jp/contents/rika/koutou/seibutu/se22/gensuubunretu/gensuubunretu.html

8) 走査型電子顕微鏡による減数分裂の観察: 鈴木晶子、高橋正道 香川生物(Kagawa Seibutsu)(19):53-58,1992.   閲覧できます→AN00038146_19_53.pdf




| | コメント (0) | トラックバック (0)

土砂降りの基礎研究

A0960_002811大隅先生のノーベル賞受賞は遅きに失したくらいで当然だと思いますが、意外に思ったのはインタビューで基礎研究の危機について話されたことで、実際現在はかなり危機的な状況なのだと思います。

文部科学省が行ったアンケートによると「個人研究費はここ10年減額され続け、今では6割以上の研究者が年間50万円以下の研究費で研究活動を続けている」という結果が出ています。

50万円以下というと、まず純系マウスなどを使った研究はできないですね。まあその辺で実験用の動植物を拾ってきて何かやってみようというレベルであり、アマチュアと大して変わりません。

研究者の立場に立てば生活がかかっているので、だからどうしようもないというわけにはいきません。たいてい有限期間の非正規労働者なので、なにもやらなければ雇い止めで廃業です。

なんとか短い期間で成果が上がる企業との共同研究などのプロジェクトに入れてもらって、論文をかせぐしかありませんが、そういう仕事ばかり蔓延してくると、大隅先生のように誰もやっていない分野の研究に取り組むなどということはできません。研究のレベルは低下するばかりです。

いくら大隅先生達が声を上げても、国家のコンセプトが逆方向に進んでいるのですから、すなわち政治のコアの問題なので、別のコンセプトを持った政権に交代しなければ、現在の状況はますます悪化するばかりです。ところが困ったことに、私は民進党や共産党が別のコンセプトをもっているかというと疑いを持っています。彼らもおそらく短い期間で金になる研究だけを重視する可能性が高いのではないでしょうか。

研究者というのは、最低博士号を持っていないといけないので、最短で27歳まで賃金収入がありません。その後もいわゆるポストドクという非正規労働者をやって、才能と運があればパーマネントポストにつける可能性がありますが、40歳まで非正規でそのまま雇い止め、就職先は無しという可能性もあります。大学・大学院時代に奨学金をもらっていると返済しなければいけません。こうなると退職金なし、借金有り、年金も最低レベルになってしまい、生活困窮者になってしまうことでしょう。22歳で企業や官庁に就職した人々に比べると天と地の違いです。

ノーベル賞の内容について
http://mainichi.jp/articles/20161004/ddm/001/040/160000c

研究者の貧困問題について
http://www.data-max.co.jp/281004_dm1771/
http://hinkonken.org/?author=1&paged=2
https://www.jst.go.jp/crds/sympo/20131203/pdf/20131203_10th_crds06.pdf

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 4日 (火)

サラとミーナ177: ソファを占拠するサラ

Img_1507bサラは閉所恐怖症で、オープンスペースで眠ることが多いネコです。割と珍しいのではないでしょうか? 

ミーナは本格的に熟睡するときは、むしろシーツの下とか、ペットハウスとか、こたつとか、暗くて閉鎖的な場所で人が見えない場所を好みます。これは哺乳類の本来のあり方だと思います。

サラの最近のお気に入りはソファの上で、私が座っていてもどけと騒いで占拠します。一番ナーバスで怖がりなのに、一番大胆でもあるという不思議なネコです。

Img_1509aどうしても占拠できなかったときは、背もたれの上に陣取ります。ここもそんなに嫌いじゃないみたいです。




| | コメント (0) | トラックバック (0)

«リーガ2016~2017第7節: GKミス連発では敗戦もやむなし