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2022年1月27日 (木)

続・生物学茶話170: ナメクジウオ

ナメクジウオを見たことがある人は少ないでしょう。私も生きているナメクジウオを見た記憶はありません。浅海の海底にいるようで、長さ数センチくらいの一見原始的な魚類のような生物です。日本近海には4種が存在することが知られていますが、浅い海の砂地が減少するにつれて、希少な生物になってしまいました。このうち21世紀になってから発見されたゲイコツナメクジウオはちょっと変わっていて、鯨の死体の骨やその周辺に住み着いている生物です。ただ鯨が出現する以前の白亜紀からいたそうです(1-3)。ただその時代にも海洋で生活する巨大生物は魚竜など数多くいたので、屍体には事欠かなかったのでしょう。

ナメクジウオはナメクジでも魚でもなく頭索動物(Cephalochordata)という分類になっていて、私たちと同じ脊索動物門のひとつの亜門を構成しています(1)。英語では専門的な論文でも Amphioxus または Lancelet という言葉もよく使われるので、情報を検索するときには要注意です。図170-1で示したように、脊索動物門は頭索動物・尾索動物・脊椎動物の3つの亜門で構成されていますが、この中では頭索動物が最も古いタイプの脊索動物の特徴を保持した生きた化石のような生物であることが、21世紀になってから行われたゲノムの解析によって明らかになりました(4、5)。頭索動物の祖先と脊椎動物・尾索動物の祖先が分岐したのは6億5千万年~7億年前とされています(6)。

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図170-1 後口動物(Deuterostomia)の系統樹

ナメクジウオの形態を図170-2に示しました。Aのように脊索が体の最前部から最後部まできれいに伸びていて、その背部に神経索があります。神経索の前端は脊索の前端より後ろの位置にあります。体の前の方には脊索動物の特徴である鰓裂があります。背びれ、腹びれ、尾びれは存在して、鰭条も存在し、ひれを使ってしっかり泳げます。

いろいろ写真なども見ましたが、このウィキペディアのイラスト以外に神経索がふくらんだ部分がある証拠は確認できませんでした。脳は一応ないことになっていますが、ウィキペディアのイラスト(図170-2B①、1)では脳室(脳胞という場合が多いようです)というキャプションがついています。もやもやとした曖昧な部分です。ホランドによるとHox-1やHox-3という脊椎動物の脳を形成する遺伝子の発現は、ナメクジウオでは脳胞よりずっと後ろにみられるそうです(7)。脊椎動物であるヌタウナギも脊椎はほぼなくて、ナメクジウオと似たような脊索・神経索を持ちますが、それは進化の過程で喪失したからのようです(8)。

ナメクジウオは粘液を分泌するハチェック小窩という外分泌器官を持っていて、ここから粘液を出して吸い込んだ海水中の食べ物を吸着するようです(9)。ヌタウナギも大量の粘液を出すので、このあたりは繋がっているのかもしれません。

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図170-2 ナメクジウオの形態

図Cのキャプション: A: Buccal cirri, B: Wheel organ, C: Velum, D: Rostrum, E: Notochord extending beyond nerve cord, F: Nerve cord, G: Hatschek's pit, H: Fin rays, I: Gill bar, J: Buccal cavity (vestibule).

生きたナメクジウオを飼育している水族館はないかとグーグルで検索すると、小名浜にあるアクアマリンふくしまのサイトがでてきました(10)。研究者でもなかなか飼育が難しい生物を、よくまあ飼育できたものと思います。幼生のうちはプランクトンとして浮遊生活をしますが、成体は図170-3Aのように海底の砂に潜って、浮遊するプランクトンを栄養源にしているようです(11)。チンアナゴを思い浮かべますが、チンアナゴはれっきとした魚類でちゃんと眼で餌を確認して食べることができます。ナメクジウオは光は感知できるようですが、発達した眼を持っているわけではないのでそんな芸当は無理で、海水ごと飲み込んで粘液でトラップできたプランクトンを食べているようです。

ナメクジウオは図170-3BのようにGFPを使って発光することができます。発光することでどんなメリットがあるのかはよくわかりませんが、この図のように砂から外に出ている頭部が発光する種が多いようなので、採餌や繁殖に有用であることが想像されます。ナメクジウオの緑色蛍光タンパク質については文献がありますが未読です(12)。

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図170-3 ナメクジウオの生態と発光

大野乾は脊椎動物が進化する過程で2~3回の全ゲノム重複が発生したという説を今から50年以上も前に発表しましたが(13)、同じ遺伝子が複数できると片方はなくてもいいわけですから、多くの場合変異を重ねて追跡できなくなってしまうので、なかなか証明することができませんでした。しかしそれでもその証拠が残された部分が少づつ明らかになってきて、21世紀には誰もが大野説を信じるようになりました。脊椎動物の場合左右相称動物の基本形ができて、さらに頭索動物と分岐した後、4億5千万年前から5億年前あたりの時代に2回の全ゲノム重複があって現在に至るとされています(14、15)。

ウィキペディアのHox遺伝子 の項目を見ると、この遺伝子が全ゲノム重複の過程を見るのに適した遺伝子であることがわかります(16、図170-4)。Hox遺伝子は生物が頭、胸、腹、尾などの構造を形成する上で基本的な区別をつくるための基幹的遺伝子です。図170-4を見ると、ナメクジウオ(頭索動物)のHox遺伝子は15個存在し、そのほとんどが2回全ゲノム重複後のマウスやヒトでもそれらの順列も含めて保存されていることがわかります。9~12は半分の2つの遺伝子に集約されていますが、他はすべて保存されいます。つまりナメクジウオと私たちは体の作り方が基本的に同じタイプだということでしょう。

一方で脊椎動物とより近縁であることがわかっている尾索動物(ホヤなど)では変異によって失われた遺伝子が多いことがわかっています(17)。これは尾索動物が脊椎動物とはあまりにも異なる生活様式を選択し、ボディープランも大きく変化したためと思われます。ショウジョウバエは前口動物であり、ナメクジウオや私たち後口動物とは系統樹の根元から分かれた生物ですが、それでもHox遺伝子の並びはかなり類似しています。このことは前口動物と後口動物が分岐する前のウルバイラテリア(始原的左右相称動物)の時代からこの遺伝子群が存在していることを示す証拠と考えられます(17)。

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図170-4 Hox遺伝子群の並び方の比較

全ゲノム重複を示唆するもうひとつの例はWnt遺伝子群です(18)。これらの遺伝子も生物が体の各部分を形成する上で極めて重要な根幹遺伝子群であり、生物がどのように進化するにしても失われてはならないものです。ですからゲノムが4倍化して3つがつぶれても、図170-5のように、どこかにひとつは残っていないといけません。そして分岐してから数億年経過しても、遺伝子の順列に痕跡が残っているもうひとつの例が図170-5です。

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図170-5 Wnt遺伝子群と全ゲノム重複

 

参照

1)ウィキペディア:頭索動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

2)ウィキペディア:ゲイコツナメクジウオ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%84%E3%83%8A%E3%83%A1%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%82%AA

3)Nishikawa, T., A new deep-water lancelet (Cephalochordata) from off Cape Nomamisaki, SW Japan, with a proposal of the revised system recovering the genus Asymmetron., Zool. Sci. vol.21 (11): pp.1131-1136. (2004) doi:10.2108/zsj.21.1131.

4)京都大学広報資料 ナメクジウオゲノム解読の成功により脊椎動物の起源が明らかに
https://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/2008/news6/080612_1.htm

5)Nicholas H. Putnam et al., The amphioxus genome and the evolution of the chordate karyotype., Nature vol.453, pp.1064-1071 (2008)
https://www.nature.com/articles/nature06967

6)Wikipedia: Cephalochordata
https://en.wikipedia.org/wiki/Cephalochordate

7)Kidoch 遺伝子で脳の進化を探る-形の進化とゲノムの変化―ナメクジウオが教えてくれること
デンジソウ(2014)
http://denjiso.net/?p=12150

8)理化学研究所 プレスリリース 背骨を持たない脊椎動物「ヌタウナギ」に背骨の痕跡を発見-脊椎骨の形成メカニズムの進化について新しい仮説を提唱- (2011)
https://www.riken.jp/press/2011/20110629/index.html

9)Wikipedia: Hatschek's pit
https://en.wikipedia.org/wiki/Hatschek%27s_pit

10)アクアマリンふくしま
https://www.aquamarine.or.jp/exhibitions/evolution/

11)Archetron: Lancelet
https://alchetron.com/Lancelet

12)窪川かおる・村上明男 ナメクジウオの緑色蛍光タンパク質「細胞工学」vol.28, no.1, pp.70-75 (2009)

13)ウィキペディア:大野乾(おおのすすむ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%87%8E%E4%B9%BE

14)沖縄科学技術大学院大学HP 古生代における種間交雑:脊椎動物における全ゲノム重複の真実が明らかに (2020)https://www.oist.jp/ja/news-center/press-releases/35053

15)Paramvir Dehal, Jeffrey L. Boore, Two Rounds of Whole Genome Duplication in the Ancestral Vertebrate, PLoS. Biol., Vol.3,  Issue 10, e314 (2005) DOI: 10.1371/journal.pbio.003031
https://www.researchgate.net/publication/7631541

16)Wikipedia: Hox gene
https://en.wikipedia.org/wiki/Hox_gene

17)Derek Lemons and William McGinnis, Genomic Evolution of Hox Gene Clusters., Science vol.313, pp.1918-1922 (2006) DOI: 10.1126/science.1132040
https://www.science.org/doi/10.1126/science.1132040

18)京都大学他 プレスリリース 国際チームがナメクジウオゲノムの解読に成功 - 脊椎動物の起源が明らかに - (2008)
https://www.nii.ac.jp/kouhou/NIIPress08_07-1.pdf

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2022年1月26日 (水)

悪魔のループ~忘却の記憶

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脳の働きというのは普通は意識するはずもなく自然に利用しているわけですが、時々強く意識させられることがあります。それは脳が「忘れる」という行為を記憶する場合です。

イオンの駐車場にはいるときには駐車券を受け取って、それをレジで電子スタンプをしなければいけないのですが、毎回駐車券を車に置き忘れるのです。そして何百メートルか歩いて取りに戻ります。この悪魔のループが脳に刻印されていて、抜け出すのに3年くらいかかりました。車のエンジンを止めて、外に出てキーをかけてという行為は絶対に忘れないのに、駐車券を持参するという行為だけを忘れるのです。いやこれは忘れるんじゃなくて、忘れるという行為のパターンが、まるでトカチェフを行う鉄棒選手の行為のように、しっかりと脳に記憶されているからだと思います。

うちの猫たちも歳をとってドライフードだと痩せてしまうので、ウェットフードに変えたのですが、ウェットフードは出して10分も経つと食べなくなります。新鮮さに敏感なんですね。なので食事の時間を決めて、決まった時間に出すことにしています。こうしてから朝は猫の「朝ご飯要求」のさわぎで目を覚ますようになりました。起きて着替えて老眼鏡かけて食事を与えに行くというのが正しいシーケンスなのですが、ここで毎日「老眼鏡かけて」という行為を忘れるんですね。ドアから2メートルくらい歩いたときに思い出して戻ります。この一連の行為のセットが脳にばっちりと記憶されているんですね。この悪魔のループからはまだ抜け出せていません。

忘れるという行為は決して意識してはできないことで、パッシブに回路を使わないことによって信号が伝達しにくくなるというのはわかりやすいパターンなのですが、悪魔のループはこれでは説明できません。もっと意識が関与できない部分で制御されているのでしょう。

(写真はウィキペディアより)

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2022年1月24日 (月)

国立国会図書館の怪

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国立国会図書館のデジタルコレクションが個人のPCから閲覧できない状態になっています。図書館まで行って、図書館の端末からでないと閲覧できないのです。いったいなんのためのデジタルコレクションなのかわからなくなっているわけですが、どのくらい図書館が出版社にお金を支払うかという交渉が成立していないことによるのでしょう。交渉中に見切り発車してしまって問題をこじらせた可能性があります。

しかし「生物学茶話@渋めのダージリンはいかが」は私が執筆・編集・出版した本であり、上のような問題が発生するわけがないのです。これを閲覧不可の状態にするのは納得がいかないから改善すべきだと主張しましたが 「ご意見は承りました。しかし現状では一括処理となっていて個別の要望はうけいれられない」 ということだそうです。唖然とするしかありません。

というわけで、実際にはまるで笑い話のような状況になっています。

国立国会図書館サーチで検索する

検索の結果が出たら書名をクリックする

掲載誌情報のリンクをクリックする

私のサイトに繋がる(つまりここ)

トップページのアネックスのご案内からPDFにたどりつく

これじゃ

国会図書館=道草版のグーグル???

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2022年1月23日 (日)

サラとミーナ261: 珍しくミーナにサービスするサラ

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珍しくミーナにサービスするサラ。頭を後ろから舐めてます。ミーナがサラを舐めるときは非常にしつこいので、サラはわりと嫌がって逃げることが多いのですが、最近は歳をとったせいかなすがままにしていることもあります。そればかりか、このように逆にミーナを舐めてあげることもあります。

ミーナはすっかり筋肉も脂肪も落ちて老境ですが、食欲は旺盛ですし元気がなくなった感じはありません。

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2022年1月20日 (木)

マエストロ大野のわすれもの

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コロナ禍でオーケストラは大変で同情します。都響もついに22日(土)のプロムナードコンサートがマエストロ大友のコロナ感染で中止となりました。リハーサルの前にわかったのかどうか心配になりますね。

一方で来年度のシーズンシートの予約がようやくスタートしました。リーフレットが送られてきましたが、今回は音楽監督の大野さんが直々に曲目や指揮者の紹介をしています。すべての指揮者の名前が書かれているはずなのですが、ひとりだけ名前が脱落している人がいます。その人の名はベン・グラスバーグ。なんと気の毒な・・・。2023年の3月5日に登場してペトルーシュカなど演奏します。絶対聴きに行きますので許してね。

 

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2022年1月19日 (水)

ホタルとクラゲから発展した科学

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マーク・ジマーの「光る遺伝子」という本を買いました。文章を読めばだいたいどんな人かはわかります。彼は天才にありがちな、思考があっちこっちに飛び回って、凡人がついていくのが大変というタイプの人です。個々の事実をひとつひとつじっくり検証していくということはしないので、細かいことにはあまりこだわらない方が良いと思います。

それでもちょっと気になるのは、「ホタルは日本では18世紀から詩歌に詠まれている」という記述で、そんなバカなことはないだろうと思って調べてみると、意外にも万葉集でホタルを歌った歌はひとつだけだそうです。

歌人・朝倉冴希の風花DIARY ~花と短歌のblog~
【万葉集】「蛍」を詠んだ唯一の長歌
https://dasaan.xsrv.jp/archives/15439

万葉集の時代には夜外を歩くのはあまりにも危険だったし、その様な習慣もなかったからと思われます。平安時代になると「夜這い」が習慣になって、夜も普通に人が出歩くようになり、ホタルもポピュラーになったのでしょう。源氏物語には光源氏が女性の姿を際立たせるためにホタルを放ったという話が出てきます。和歌も数多く、ひとつだけ選ぶと。

物思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る
和泉式部

ところでサイエンスの観点からちょっと面白いと思ったのは、1753年にマサチューセッツ州知事のジェームス・ボードンという人が、燐光を発する海水を布で漉すと光らなくなると手紙をベンジャミン・フランクリンに書いて、それでフランクリンは海水の発光は電気現象だという自説をひっこめて生物発光説に転換したという話です。

驚いたのは私が最も尊敬する科学者のひとりであるラッザロ・スパランツァーニがクラゲの発光について重要な記述をしていることでした。スパランツァーニは自分を実験動物にしてさまざまな実験を行った、18世紀の狂気の科学者として有名な人です。
http://morph.way-nifty.com/grey/2017/02/post-b151.html

彼は死んだクラゲが雨に当たると発光する、牛乳を垂らすとものすごく明るく発光すると記しているそうです。これはおそらくカルシウムのせいでしょう。

このあとは現代科学のお話になりますが、逸話満載で光生物学に関心がある向きにとってはとても面白い本だと思います。

 

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2022年1月15日 (土)

続・生物学茶話169: GFPの発見からコンフェティマウスへ

光センサ-を持つ細菌や発光する細菌は数多く存在するので、カンブリア紀以前にも生物は光を利用してさまざまなことをやっていたと思われますが、カンブリア紀に眼を持つ真核生物が出現したことで、生物による光の利用は大きくステップアップしました。暗い場所でまわりを見る、エサをおびき寄せる、捕食者の目をくらませて逃げる、捕食者が下にいるとき自分の陰影をつくらないようにする、繁殖のためのコミュニケーションに使うなどその用途は様々です(1)。現在でもすべての深海魚の60~80%は生物発光を行なうと言われています。

遺伝子発現の研究に汎用されてきた緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein = GFP)の父である下村脩博士は米国の研究者ですが、生まれも育ちも日本で、16才の時には諫早市で原爆を被爆しています。ウィキペディアによると長崎大学薬学部を卒業後、武田薬品の入社試験に落ち、名古屋大学の江上不二夫のところに留学しようとしたところ、手違いで平田義正の研究室に所属することになり、そこでウミホタルのルシフェリンの結晶化と構造決定に成功して未来が開かれることになりました。何が幸いするかわかりません(2-4)。

1960年にはプリンストン大学の招きで渡米し、いったん日本に戻るも発光現象の研究に専念したいという思いがあって1965年に再渡米し、プリンストン大学に職を得て主にシアトルとバンクーバーの中間くらいにあるフライデーハーバー実験所でオワンクラゲの発光物質の研究を行いました。日本のオワンクラゲと米国のオワンクラゲが同じ種類であるかどうかは、驚くべきことにまだわかっていないそうです(5)。図169-1に下村先生と発光するオワンクラゲを示しました。美しい生物ですが、他のクラゲや魚を一飲みする採餌様式の肉食動物だそうです。チャルフィーとツェンは下村と同時に2008年のノーベル化学賞を受賞した人々です。

幸いにして当時は実験所が面した海面を埋め尽くすくらいのオワンクラゲがいたので、下村らは1万匹のクラゲを採集して、そこから発光タンパク質を5mg精製することができたそうです(6)。現在はオワンクラゲの数が非常に少なくなって、とても当時のような研究はできないとのこと(6)。

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図169-1 2008年ノーバル化学賞受賞者と発光するオワンクラゲ

下村らが解明したオワンクラゲの発光メカニズムの概要を図169-2に示しました。アポイクオリンは分子量22,514ダルトンの小型のタンパク質で、セレンテラジンという発光基質前駆体と結合しますが、カルシウムイオンの存在下でセレンテラジンはセレンテラミドに変化し青色発光を行います(図169-3)。このアポイクオリンとセレンテラミド複合体が解離する反応とGFPが活性化される反応が共役していてGFPが励起状態となり、それが基底状態にもどるときに緑色の発光が行われます(7-9、図169-2)。その色は図169-1のように実に美しいものです。

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図169-2 オワンクラゲ発光の原理

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図169-3 セレンテラミドを生成する反応

セレンテラミドと解離したアポイクオリンは再びセレンテラジンと結合してイクオリンとなり、次の発光の準備をします。一方GFPは7つのβシートをもつバレル構造のタンパク質ですが、中心部にひとつのαヘリックスが存在し、この Ser65-Tyr66-Gly67 の3つのアミノ酸が図169-4のような反応を行ない灰緑色の発色団を自己形成します。この発色団はセレンテラミドが発光する近紫外光を吸収して、508~509nmの緑色可視光を発光します(10、11)。

発色団を別途合成しなくても、タンパク質自身が発光物質をつくるというのがGFPの特徴で、このことはGFPの遺伝子があればそれを発現させて外から近紫外光を当てれば発光するという、実験者にとっては特段に便利なツールになりそうなことが後にわかりました。GFP発見当初はタンパク質自身が自動的に発色団をつくるなどということは信じられていませんでした。

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図169-4 GFPタンパク質と発色団

プラシャーらはGFP遺伝子のクローニングを行ないましたが(12)、それを使ってチャルフィーらがクラゲ以外の生物で発光させようとしましたがうまく行きませんでした。多くの人はそらみたことかと思ったのでしょうが、しかし遺伝子末端の配列を除去するという簡単な処理によって、大腸菌や線虫で発光させることが可能になりました(13)。この論文は1万回近く引用されてクラシックとなっています。

GFPマウスは図169-5の様な手順で作成しますが、たとえばCAGプロモーターの下流にGFP遺伝子を移入したマウスは、ほとんどの細胞でGFPが合成され、紫外線を当てると全身が緑色のマウスとなります。このようなマウスは市販されています(14)。このマウスの細胞を通常のマウスに移植すると、移植された細胞だけが光ることによって容易に識別できます。これは核の形態で判別していたウズラ-ニワトリの移植系とくらべると、格段に便利で確実な識別法です。

特定のタンパク質を光らせたい場合は、その遺伝子の前か後にGFPの遺伝子を挿入してハイブリッドタンパク質を作らせるようにします(図169-5)。ハイブリッドにした場合、元の機能が減弱されたり改変されたりすることが考えられますが、意外にも大きな変化なく機能する場合が多いようです。C末につけてダメならN末につけるとかの選択は可能です。C末やN末は通常タンパク質の表層に出ていますが、内部にある場合GFPをつけると構造が破壊されるおそれがあるので注意が必要です。これによって任意のタンパク質の発現が紫外線を照射するだけで判定できることになりました。タンパク質の細胞内局在も容易に判定できます(15)

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図169-5 タンパク質を光らせて検出する

もうひとりのノーベル賞受賞者ロジャー・ツェンは中国系米国人ですが、子供の頃喘息を患いあまり外に出られなかったので、父親の援助で地下室や裏庭でひとりで化学実験をやっていたそうです。その頃の実験台の写真がノーベル賞関係のサイトに出ています(14)。彼はカルシウム指示薬などの開発で著名な業績を残した人ですが、GFPにも関心を持ってGFPタンパク質の構造・機能を解明し、異なる色を発色する変異体を作成してマルチカラーイメージングを可能にしました(9、16、図169-6)。

さまざまなタンパク質に別の色をつけて、細胞による発現の差を調べることもできるようになりました。脳の様々な細胞を識別することも行なわれています。この発色をブレインボーとは都合の良い語呂合わせです(17、18、図169-6)。

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図169-6 ブレインボー

コンフェティマウス(色紙マウス)については、たとえばCAGGという強力なプロモーターの下流に、蛍光タンパク質遺伝子とloxPのサイトを図169-7のように配置しておき、ある時点でCreを発動させると、loxPのコアが同じ向きの配列に挟まれたネオマイシンレジスタントの領域は削除され、コアが反対向きの配列ではさまれた領域はある確率で組換えが起こって4種類の蛍光タンパク質遺伝子の配列が出現します(19、図169-7)。字が逆さになっているのは逆向きの配列を意味します。逆向き配列の遺伝子は組換えが起こらない限り発現しません。プロモーターに一番近い遺伝子が発現するので4色の細胞ができて、細胞分裂するとそれぞれ同じ色が発現します。これによって細胞系列の解析が可能となります(図169-6)。

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図169-7 コンフェティマウス

 

参照

1)あくと 深海ゼミ 深海生物(深海魚)が発光するのはなぜ?面白い理由を解説
https://deep-sea-creatures.com/hakko1

2)ウィキペディア:下村脩
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E6%9D%91%E8%84%A9

3)Nagoya Repository: 海ホタルルシフェリンの構造
https://nagoya.repo.nii.ac.jp/records/9204

4)下村脩 発光生物研究40年 長崎大学薬学部同窓会報第35号 (1995)
http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/dousou/news/070106/no35_shimomura.pdf

5)ウィキペディア:オワンクラゲ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B2

6)Nagoya University Cheers! 名古屋大学特別教授 下村脩 博士
https://jukensei.jimu.nagoya-u.ac.jp/bigname/20130301.html

7)Shimomura O, Johnson, F.H., Saiga, Y., Extraction, purification and properties of aequorin, a bioluminescent protein from the luminous hydromedusan, Aequorea.,
J Cell Comp Physiol., vol.59: pp.223-39.(1962) doi: 10.1002/jcp.1030590302.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/13911999/

8)Osamu Shimomura, BIOLUMINESCENCE Chemical Principles and Methods Revised Edition, World Scientific, Pub Co Inc., (2012)

9)宮脇敦史 GFP研究の歴史を紐解く 〜下村,Chalfie,Tsien 博士の偉業〜
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/35/sc35-1.pdf

10)Chem-Station, 緑色蛍光タンパク Green Fluorescent Protein (GFP)
https://www.chem-station.com/molecule/naturalmol/2009/01/green_fluorescent_protein_gfp.html

11)Wikipedia: Green fluorescent protein
https://en.wikipedia.org/wiki/Green_fluorescent_protein

12)D.C. Prasher, V.K. Eckenrode, W.W. Ward, F.G. Prendergast, M.J.Cormier, Primary structure of the Aequorea victoria green-fluorescent protein., Gene vol.111, pp.229-233 (1992) doi: 10.1016/0378-1119(92)90691-h.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1347277/

13)M.Chalfie, Y.Tu, G.Euskirchen, W.W.Ward, D.C. Prascher, Green Fluorescent Protein as a Marker for Gene Expression., Science vol.263, pp.802-805 (1994) DOI: 10.1126/science.8303295
https://www.science.org/doi/10.1126/science.8303295

14)日本SLC株式会社 遺伝子改変動物 トランスジェニックマウス(GFP)
http://jslc.co.jp/animals/mouse.php

15)齋藤尚亮 神戸大学 バイオシグナル研究センター GFP(Green fluorescent protein) が科学者に与えた光
http://www.sci.kobe-u.ac.jp/old/seminar/pdf/2009_saito.pdf

16)The Nobel Prize., Roger Y. Tsien
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2008/tsien/facts/

17)九州大学附属図書館 線虫 C. elegans ~約1ミリのモデル生物で切り拓く生命科学~: マーカーとしてのGFP(緑色蛍光タンパク質)の応用
https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/ModelOrg_Celegans/gfp

18)Brainbow : Livet, J., Weissman, T. A., Kang, H., Draft, R. W., Lu, J., Bennis, R. A., Sanes, J. R., & Lichtman, J. W., Transgenic strategies for combinatorial expression of fluorescent proteins in the nervous system. Nature, vol.450(7166), pp.56-62. (2007)
https://doi.org/10.1038/nature06293

19)Hugo J. Snippert, Laurens G. van der Flier, Toshiro Sato, Johan H. van Es, Maaike van den Born, Carla Kroon-Veenboer, Nick Barker, Allon M. Klein, Jacco van Rheenen, Benjamin D. Simons, and Hans Clevers, Intestinal Crypt Homeostasis Results from Neutral Competition between Symmetrically Dividing Lgr5 Stem Cells., Cell vol.143, pp.134–144, (2010) DOI 10.1016/j.cell.2010.09.016

 

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2022年1月13日 (木)

新型コロナ感染症の起源について

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新型コロナウィルスの感染がどこからはじまったかの議論はあまりこまかく報道されていませんが、私は2020年2月17日中央日報日本語版の記事に注目しています。

https://s.japanese.joins.com/JArticle/262641?sectcode=A00&servcode=A00

この記事によると「武漢疾病予防管理センターは2017年と2019年、実験用に多くのコウモリを捕まえた。2017年には湖北省・浙江省などで約600匹のコウモリを捕まえたが、この中には重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを持つキクガシラコウモリも含まれていた。当時、同センターの研究員は、勤務中にコウモリに噛まれたり尿をかけられたりしたと話した。」と記してあります。

武漢疾病予防管理センターはよく感染源として指摘されている武漢ウィルス研究所とは全く別もので、建物は最初に感染が勃発した華南水産市場から280メートルの距離にあるそうです。ウィルス研究所は12kmも離れた場所にあります。常識的には疾病予防管理センターが発生源の可能性が高いと思われます。

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2022年1月11日 (火)

サラとミーナ260:阪神タイガースのふわふわシートがお気に入り

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阪神タイガースFCのふわふわシートがお気に入りのサラとミーナ。うちの猫たちは連んでいないので(ミーナは連みたいのですが、サラが拒否します)、2ショットを撮るのはなかなか難しいのですが、シートのおかげで集まってくれました。

猫は人間が感染するSARS-CoV-2とは異なる Feline coronavirus: FCoVというコロナウィルスに感染します。これは病原性が低いので問題外なのですが、たまに体内で突然変異して猫伝染性腹膜炎ウイルスという病原性の高い変異体が発生することがあるようです。そうなると大変ですが、それはそれとして、おそらくコロナウィルスには多くの個体が感染して免疫を持っているので、ヒトのコロナウィルスが感染しても発病しないようです。

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2022年1月10日 (月)

日本のシナリオ

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別に経済学者じゃなくても、このままいくと日本はどうなるか見えてきました。

コロナのばらまきで世界中でインフレが進む。

米国もEUも金利を上げざるを得なくなる。

日本は金利を上げたくても上げられない。
(上げると国債の利払いで国家破産する)

投資資金は金利の高い海外に逃避して日本は干上がる。

日本にいると資金不足になるので、企業は海外に移転する。

日本に残るのは日用雑貨などの中小企業だけになるが、
RCEPによる海外製品の流入で経営困難になる。

このような事態になっても政府は資金や企業の海外逃避を
禁止する方策はとらないし、輸入を禁止する方策もとらない。

日本国民は極貧に転落する。

こうならないためには、投資家や企業経営者から袋だたきにあっても早めに金融鎖国を断行する政策が必要ですが、そんなことをできる政党があるでしょうか?

ならば焼け野原になった日本を再生する方法はひとつしかありません。世界の最貧国から移民を集めて「安かろう悪かろう?」の製品を製造して輸出するしかないでしょう。もしも政府が金融鎖国をやらないのなら、今から最貧国からの再生ストラテジーを考えておいた方がいいと思いますよ。

 

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2022年1月 8日 (土)

出入国管理事務所(入管)は何をやっているのだろう?

参議院議員 石川大我氏のツイートより

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中国政府によるウィグル人の迫害はゆゆしき問題ですが、それを批判する前に、わが国の政府は足下の人権侵害問題を解決すべきでしょう。

志葉玲 車椅子の病人に集団暴行、1時間半―入管「コメントは差し控える」
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20211129-00270226

入管施設でコロナ感染、職員による制圧でケガも…スリランカ男性、危機的な健康状態か
https://news.yahoo.co.jp/articles/7c0363c38ce03c2937d3d0e75e8dc901195b684a

Pinkydragon ~ SYI (収容者友人有志一同: Immigration Detainee's Friends) Blog ~
https://pinkydra.exblog.jp/

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2022年1月 6日 (木)

続・生物学茶話168:Cre/loxP システム

最近は幹細胞からの分化をトレースするのに R26R-Confetti mouse というツールが用いられる場合が多いようです。これはCre/loxPシステムの応用技術ですが、今回は少し寄り道してこの系統の技術のルーツをたどってみようと思います。

Cre/loxPシステムはもともと人間が開発したのではなく、P1というバクテリオファージが保有しているシステムです。P1ファージを発見したのはサルバドール・ルリア研のジュゼッペ・ベルターニで、1951年という昔の話です(1)。様々な菌に感染できるファージだということがわかっています(2)。P1は高い効率で形質導入を行う能力を持っていることがルリア研であきらかになり、有用なベクターとして重宝されました。

ファージはホストに感染すると、すぐに増殖して溶菌し外に出てくる場合と、ホストのゲノムに組み込まれてその一部として行動する場合(溶原化)があります(3)。しかしP1の場合、ファージ内部ではリニアであるゲノムが、感染してホストに注入されるとすぐ環状化し、その後増殖してホストから出る場合と、プラスミド化してホストに住み着いてしまう場合があることがわかりました(4、5、図168-1)。

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図168-1 溶原化するファージとプラスミド化するファージ

P1がみつかった頃、学界ではまだ溶原化という概念が認められておらず、1949年頃には細菌学の教科書で有名なノーベル賞受賞者であるルウォフも「溶原化などという研究者は異教徒である」などと考えていたようです(6)。そんな時代ですから、研究室にやってきたベルターニが溶原性の研究をやりたいと言っても、ボスのルリアは良い顔をしなかったようですが、結局はやっていいということになって、レーダーバーグからラムダファージの溶原化株を入手しました。しかしまだ正式な論文を出版していなかったレーダーバーグがあせってデータを催促してくるのに嫌気がさして、ベルターニはラムダの研究を放棄して別の方向に進むことにしました(7)。P1はもともと赤痢菌で増殖するファージでしたが、ベルターニが大腸菌で増殖するミュータントを分離して、その後の実験は大腸菌を使って行われました(7)。P1が注目されるようになったのはレノックスが、このファージが特段に形質導入を容易に行う能力を持っていることを発見したことによります(8)。その後P1は遺伝子を運搬するベクターとして実験で汎用され、分子生物学者なら誰でも知っているようなツールとなりました。現在でも理研が配布しています(9)。

ナット・スターンバーグはニューヨークのブルックリン出身の分子生物学者でしたが、ポストドクとして仕事をするために1970年にパリのCNRSにやってきました。しかしそこでλファージの仕事をしているうちに期限が来て、NIHにポストを得て帰米することになりました。CNRSにいたマイケル・ヤーモリンスキーはスタンバーグの優秀さを知っていたので、1976年に彼がメリーランドのNCIに研究室を移転したときにスタンバーグをスタッフに呼んで、P1ファージの研究をやってもらうことにしました(7)。スターンバーグは数年のうちにP1ファージはそのゲノムDNA上に lox P というサイトがあり、Cre という酵素がそれを利用して遺伝子組み換えを行うことを報告しました(10)。もし任意の遺伝子を含む環状ベクターを作成し、その一部に lox P サイトを入れておけば、図168-2のように組み換えがおこって、その遺伝子をゲノムに組み込むことが可能です。またゲノムDNA上にloxPサイトが2ヵ所あると、逆反応によってそれらにはさまれた遺伝子を削除することもできます。

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図168-2 Creリコンビナーゼによる遺伝子の組み換えと切り出し

loxPにはさまれた遺伝子を削除(ノックアウト)できるというのは遺伝子工学の手法として有用でしたが、遺伝子は必要であるからこそ代々受け継がれてくるわけで、ノックアウトすれば当然不都合が発生するはずです。特に日常的に必要とされるタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすると、胚または胎仔のうちに死亡して生まれてさえこないということになります。それでは遺伝子の機能解析ができません。

そこで外部からなんらかのシグナルを送らない限り遺伝子の喪失がおこらないような生物が、ブライアン・ザウアーやピエール・シャンボンらによって考案されました(11、12、図168-3)。ブライアン・ザウアーという人はもともと天文学者になりたかったそうですが、ウィスコンシン大学の数学科を卒業してから縁あってデュポン社の研究所で仕事をするようになり、そこで同僚がバクテリオファージのCre/loxPシステムを研究していたので、それを真核生物の研究に役立てる方法はないかと考えるうちに、遺伝子ノックアウトに使えるのではないかと思いついたそうです(13)。ザウアーらの機転によって、スターンバーグの辺境的研究が一気に生物学の中心に躍り出ることになりました。

標的遺伝子と相同組み換えを行なうDNAの両端にloxP配列を入れておくと、そのDNAが標的遺伝子と同じ機能を持つとしても、Creが作用すればloxPにはさまれた部分は環状化してゲノムから切り離され、遺伝子機能は失われます。ここでCreを核内に侵入させる方法を考えます。あるシグナルがあると核内に移行するタンパク質があれば使えるかもしれません。たとえばエストロジェン受容体にCreを結合し、タモキシフェンを作用させるとエストロジェン受容体はCreと共に核内に移行します。そうするとCreはloxPと反応して標的DNAを切り出し無効化させることができます。すなわちタモキシフェンの投与によって、随時遺伝子をノックアウトできるのです(14、図168-3)。

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図168-3 Creリコンビナーゼによる標的遺伝子のノックアウト

マウスを使ったCre/loxP 研究システムは非常に便利なもので、タモキシフェンで任意の時期に遺伝子ノックアウトができるほか、例えば筋肉だけで発現するプロモーターをCre遺伝子の上流に挿入したCreマウスと、標的遺伝子をloxP ではさみその下流にレポーター遺伝子をつけたloxP マウスを作成し、交配すると筋肉ではCreが働いてゲノムから標的遺伝子が削除され(その他の組織では削除されない)、レポーター遺伝子が発現するというマウスが獲られます。これによって標的遺伝子の機能についての知見が得られるわけです(15、図168-4)。このほか出生後にはじめて発現するプロモーターを使えば、ノックアウトによって胎児致死をおこすような遺伝子の機能についても研究が可能です。

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図168-4 コンディショナルノックアウト

ゴッセンとビュジャールはさらに標的遺伝子の発現を可逆的にON/OFFできるような研究システムを開発しました(Tet on/off システム、16、17、図168-5)。大腸菌には抗生物質であるテトラサイクリンに耐性を獲得するためのオペロンが存在します。このオペロンにはTetリプレッサー(TetR)とTetオペレーター(TetO)が含まれます。TetR(実際には効率を上げるためTetRとVP16ADの融合タンパク質=tTA=tetracycline transactivator を用います)はテトラサイクリン(実際には効率を上げるため誘導体であるドキシサイクリン=doxを用います)がない状態ではTetO配列に結合しますが、テトラサイクリンが結合している状態ではTetOに結合できません。

ここで非常に巧妙な技となりますが、TetRのアミノ酸配列を一部改変して作成した reverse TetR(rTetR)とVP16ADとの融合タンパク質(rTA=reverse tetracycline transactivator)は逆にテトラサイクリンと結合するとTetO配列に結合し、下流のプロモーターを活性化します。図168-5に示すように、標的遺伝子(図ではGeneA)の上流のプロモーターにはTetO配列をリピートさせたTRE配列(Tetracycline response element)を入れておき、tTAやrTAにレスポンスするようにしておきます。こうしておくとdox(テトラサイクリンの代替分子)の存在下ではGeneAが発現し、非存在下では発現しません(図168-5)。

一方tTAのシステムでは、dox非存在下ではGeneAの転写が行われますが、doxを投与すると転写は止まり非発現となります。これらの反応はオールオアナッシングではなくdoxの濃度に依存して進行するので、強弱の調節も可能なのが優れた点でもあります(16、17)。

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図168-5 Tet on/off システム

これらの技術は脳神経系における遺伝子の機能解析にも非常に有用なものであり、このサイトでもまたでてくることになると思います。なお遺伝子ノックアウト・ノックアウトマウスの作成については(18)をご覧ください。

溶原化するファージではなく、プラスミドとなるファージが効率の良い組み換えシステムをもっているというのは興味深いものがあります。細菌が環境に適応するためには、頻繁にゲノムに新しい遺伝子を組み込むことが一見有利なようにも思えますが、実際にはそれはむしろ有害であり、プラスミドとして保有する方が安全であることを示しているように思われます。

Confetti mouse とは、どのような遺伝子が発現されているかによってレポーター遺伝子が発現する色が異なるマウスのことを言います。次回に言及する予定です。

参照

1)Bertani, G.,  Studies on lysogenesis. I. The mode of phage liberation by lysogenic Escherichia coli. J. Bacteriol. vol.62 (3), pp.293–300 (1951)

2)Lobocka, M.B., et al.,  Genome of bacteriophage P1. J. Bacteriol. vol.186 (21), pp.7032–7068 (2004).

3)Wikipedia: Lysogenic cycle
https://en.wikipedia.org/wiki/Lysogenic_cycle

4)Ikeda, H., Tomizawa, J., Prophage P1, and extrachromosomal replication unit. Cold
Spring Harbor Symp. Quant. Biol. vol.33, pp.791–798 (1968)

5)Wikipedia: P1 phage
https://en.wikipedia.org/wiki/P1_phage

6)Lwoff A. Nobel Lecture: Interaction Among Virus, Cell, and Organism. Stockholm: Nobel Media AB.
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1965/lwoff-lecture.html

7)Michael Yarmolinsky1 and Ronald Hoess, The Legacy of Nat Sternberg:
The Genesis of Cre-lox Technology., Annu. Rev. Virol., vol.2: pp.25–40 (2015)
doi:10.1146/annurev-virology-100114-054930
https://www.annualreviews.org/doi/pdf/10.1146/annurev-virology-100114-054930

8)Lennox ES., Transduction of linked genetic characters of the host by bacteriophage P1. Virology vol.1:pp.190–206 (1955)

9)理研 遺伝子材料開発室
https://dna.brc.riken.jp/ja/resource

10)Sternberg, N. and Hamilton, D., Bacteriophage P1 site-specific recombination: I. Recombination between loxP sites. J. Mol.Biol. 150:467-486 (1981)
doi: 10.1016/0022-2836(81)90375-2.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0022283681903752

11)Sauer, B. "Functional expression of the Cre-Lox site-specific recombination system in the yeast Saccharomyces cerevisiae". Mol Cell Biol. vol. 7 (6): pp. 2087–2096. (1987)
doi:10.1128/mcb.7.6.2087. PMC 365329 Freely accessible. PMID 3037344.

12)Sauer, B.; Henderson, N., "Site-specific DNA recombination in mammalian cells by the Cre recombinase of bacteriophage P1". Proc. Natl. Acad. Sci. USA. vol.85 (14): pp. 5166–5170. (1988)
doi:10.1073/pnas.85.14.5166. PMC 281709 Freely accessible. PMID

13)Biography 41: Brian Sauer (1949 - ) DNA learning center, Cold Spring Harbor Laboratory.,
https://dnalc.cshl.edu/view/16868-Biography-41-Brian-Sauer-1949-.html

14)D Metzger, J Clifford, H Chiba, P Chambon., Conditional site-specific recombination in mammalian cells using a ligand-dependent chimeric Cre recombinase. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., vol. 92(15); pp. 6991-6995 (1995)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7624356/

15)えいこラボ 研究室では教えてくれない?!Cre-loxPシステムってなに?
https://eiko-lab.com/2021/05/02/what_is_cre-loxp/

16)Gossen, M., & Bujard, H., Tight control of gene expression in mammalian cells by tetracycline-responsive promoters. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, vol.89(12), pp.5547-5551. (1992)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1319065/

17)脳科学辞典:Tet on/offシステム
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/Tet_on/off%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

18)やぶにらみ生物論94: ノックアウトマウス
http://morph.way-nifty.com/grey/2017/11/post-7c02.html

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2022年1月 4日 (火)

国がめちゃくちゃになる恐れがあっても国際航空便と米軍基地への航空機飛来を中止できないとは!

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オミクロン株でせっかくおさまっていたコロナ騒ぎが再燃しそうになってきました。本当にうざすぎます。これは国際空港と米軍基地を閉鎖すれば回避できたと思いますが、国がめちゃくちゃになる恐れがあっても、この2つの規制をどうしてもできないというのはなぜなんだろうと考えさせられます。港湾を閉鎖するわけにはいきませんが、ここから出入りする人々を検査・隔離することは可能でしょう。

RCEPでいよいよ中国との自由貿易がはじまりましたが、たとえトータルで大きな入超にはならないとしても、日用雑貨、衣料、家電などは多くを中国に依存することになり、日本の文化が崩壊することになりそうです。日本は30年前に「閉じた帝国」を模索するべきだったのですが(私的には日本ーロシア-オーストラリア中心)、今となっては中国とうまくやっていくしかないようです。ただ例えば中国でオミクロン株が欧米並みに蔓延したら、またまたマスク、医療器具などがはいってこなくなってパニックになりそうです。生活関連物資を大きく中国に依存するのはまずいですねえ。とはいえ米国はいずれウザいだけの国になりそうで頼りにはなりません。米国の日用雑貨なんて買いたくないですし。

 

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2022年1月 3日 (月)

初詣

初詣は近隣の阿夫利神社に行くことにしています。阿夫利神社と言えば大山阿夫利神社が有名ですが、ここもそこそこ名前が知られるようになりました。

石尊 阿夫利神社(印西市)へ 不思議な青い石伝説
https://www.wholenotism.com/blog/2018/07/afuri-shrine.html

Fig2  

今年は混雑を避けて3日に参詣することにしたので待ち時間はゼロでした。元日に行くと50メートルくらいは並びます。ただそのせいか、お正月に駐車場で車をこすられ、逃げられました。

私は家族、猫、友人の健康をお祈りしました。

Fig3

3日でも破魔矢、御札、おみくじなどはやっていて、テントの下では食べ物も振る舞われます。

Fig4

ここは脇にあるお稲荷様。少し山を登ったところには奥社があります。

Fig5

ここのご本尊は銚子の海底にあった石とのことで、何も人の手が加えられていないのがいいじゃないですか。

Fig6

昨年は新型コロナウィルスが猖獗を極めたことで、破魔矢はありませんでした。今年は弓付きの豪華な破魔矢でした。Covid-19の沈静化をお祈りしたいところです。

 

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2022年1月 1日 (土)

明けましておめでとうございます

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サラとミーナは17才になりました。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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2021年12月29日 (水)

2021 私の紅白歌合戦

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1M. The Beach Boys - Surfer Girl
https://www.youtube.com/watch?v=hu-bXvuPm7c

ブライアン・ウィルソンは社会不適合で閉じこもり、ドラッグや酒に溺れてしまいました。しかし奇跡的に復活して2012年にビーチボーイズを再結成し現在に至っています。ペットボトルを持って唄うビーチボーイズ(置けよ!)。

1F.The SURF GIRLS - I CAN HEAR MUSIC a Beach Boys TRIBUTE
https://www.youtube.com/watch?v=Lq1Ip1PxJIE

ビーチボーイズのトリビュート。こういうきれいな英語を聞いていると気持ちいい。

2M.少年隊 仮面舞踏会
https://www.youtube.com/watch?v=87Ns9QIcRSA

バブルの時代にはこんなテレビ番組がありました。

2F.シモンズ 恋人もいないのに
https://www.youtube.com/watch?v=nGyw1PZAFRk

50年前J-POPの創生期に活躍したデュオ。作詞:落合武司、作曲:西岡たかし

予備:https://www.youtube.com/watch?v=pPGvI6unbSI

3M.DISH// (北村匠海) - 猫 / THE FIRST TAKE
https://www.youtube.com/watch?v=gsT6eKsnT0M

あいみょんの曲だけど、きっちりはまってる。

3F.まきちゃんぐ 愛が消えないように
https://www.youtube.com/watch?v=-PJlrmWwOiw

こんな時代があったのだという記念碑になるのかな。

4M.Tom Waits & Crystal Gayle Take Me Home
https://www.youtube.com/watch?v=2sglrbx6rVo

こんなストレートなラヴソングはなかなかありません

4F.洸美-hiromi- 初恋(村下孝蔵)
https://www.youtube.com/watch?v=PpvD4EN7oho

洸美にカバーされて、村下さんも草葉の陰で喜んでいることでしょう。

5M.back number - 水平線
https://www.youtube.com/watch?v=iqEr3P78fz8

これも新型コロナが生み出した作品

5F.西島三重子 リルケの詩集
https://www.youtube.com/watch?v=fPtQMS7BIbE

今年71才でライヴを成功させました(@ラドンナ原宿)。
若い人にもこういう音楽があることを知って欲しい。

6M.秋川雅史 五月のバラ
https://www.youtube.com/watch?v=LsNbsO50jYE

これだけ気持ちよく歌われると、聴いている方も気分爽快になります。

6F.M'size  やさしさに包まれたなら
https://www.youtube.com/watch?v=C2ldDYn5wlk

プロでやって欲しい素晴らしい美声

7M.ライオネル・リッチー - エンドレス・ラヴ with Crystal Kay
https://www.youtube.com/watch?v=R4rFHvVSMUs

ケイの母親がシンシアだと聞いてぶっ飛びました。それはそうと、クリスタル・ケイってひょとして4Mのクリスタル・ゲイルと関係あるのかな?

7F.Oncemores(シオン) I Need To Be In Love
https://www.youtube.com/watch?v=50ovGUYfACQ

カーペンターズのコピーじゃ世界一かも。

8M.矢沢永吉  時間よ止まれ
https://www.youtube.com/watch?v=1U7aQhPbpUQ

このバージョンが好き。

8F.熊木杏里 夢のある喫茶店
https://www.youtube.com/watch?v=EVcXYt6Kx-M

金のある話より夢のある話をしよう。

9M.ドリアン・ロロブリジーダ 誕生 (中島みゆき)
https://www.youtube.com/watch?v=EmzmNjUQGBI

中島みゆきもびっくり。

9F.伽藍琳 (りん・がらん)  愛から遠く離れて(中島みゆき)
https://www.youtube.com/watch?v=OwmEBrrF-6U

本業はプロデューサーだそうです 美しい日本語。


10M.村田和人&竹内まりや Summer Vacation
https://www.youtube.com/watch?v=LuVkXO73QpA

夏の曲ですが、村田和人もあの世で聴いているだろうか

10F.遥海  記憶の海
https://www.youtube.com/watch?v=Tdkf-_FGK5U

ようやくメジャー世界で仕事ができるようになりました。

11M. Bryn Terfel ブルイン・テルヴェル「夕星の歌」
https://www.youtube.com/watch?v=RRu-aRFEsAc

ウェールズの農家出身の名歌手。歌詞と翻訳は下にあり。

11F.Elīna Garanča エリーナ・ガランチャ- "Una voce poco fa"「今の歌声は」
https://www.youtube.com/watch?v=S7OyQf90WNc

私感では世界で一番声の美しい人。歌詞と翻訳は下にあり。

12M. 大瀧詠一 恋するカレン 完全再現プロジェクト
https://www.youtube.com/watch?v=Kqx3Fc77qoY

趣味もここまで来れば立派な芸術。

12F.竹内まりや シンクロニシティ(素敵な偶然)
https://www.youtube.com/watch?v=lI-YY_RtTNM

バンドメンバーもみんな楽しそう。

13M.RADWIMPS 愛にできることはまだあるかい
https://www.youtube.com/watch?v=EQ94zflNqn4

今の時代の空気にぴったり。ただ次世代のミュージシャンにあまりにも強い影響を与えすぎたという罪はある。

13F.青葉市子/マヒトゥ・ザ・ピーポー 海辺の葬列
https://www.youtube.com/watch?v=rh_IsgFI_mc

予言者の音楽。

14M.新井満  千の風になって
https://www.youtube.com/watch?v=Lt43pjM80Hc

ご冥福をお祈りいたします。

14F.中森明菜 わたしは風
https://www.youtube.com/watch?v=fi25Q-PtVdk

魂をもっていかれる。

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(ラスト) 西島三重子 千登勢橋
https://www.youtube.com/watch?v=0TYECCELT6c

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Extra 1: 夕星の歌 O du mein holder Abendstern

O du mein holder Abendstern
Wie Todes-ahnung Dämm'rung deckt die Lande
umhüllt das Thal mit schwälzlichem Gewande,
der Seele,die nach jenen Höh'n verlangt,
vor ihrem Flug durch Nacht und Grausen bangt.

死の予感のように 夕闇が地を覆い
黒い衣で 谷をかぶせる
かの嘲弄をむさぼる魂は
夜陰と恐怖の飛行を恐れている

Da scheinest du, o lieblichster der Sterne,
dein sanftes Licht entsendest du der Ferne,
die nächt'ge Dämm'rung theilt dein lieber Strahl,
und freudlich zeigst du den Weg aus dem Thal  

この時、お前は現れる おお最愛の星よ
お前の柔らかな光を お前は遠くから送り
その輝きは夜の薄闇を照らし
森からの道をやさしく示す

O du mein holder Abendstern,
wohl grüßt’ich immer dich so gern
vom Herzen,das sie nie verrieth,grüße sie ,
wenn sie vorbei dir zieht,
Wenn sie entschwebt dem Thal der Erden,
ein sel'ger Engel dort zu werden.  

ああ わがやさしの夕星よ
お前に私はいつも快く心より挨拶を送った
彼女を裏切らぬ心からの挨拶を送れ!
彼女がおまえの下を通るとき
彼女が地上の谷より姿を消すまで
天国の天使となるべく


Extra 2: Una voce poco fa (今の歌声は)

Una voce poco fà
qui nel cor mi risuonò
Il mio cor ferito è già
e Lindor fu che il piagò.

今の歌声は
心の中に響きわたり
私の心は
リンドーロに射抜かれた

Si, Lindoro mio sarà,
Lo giurai,la vincerò.
Il tutto ricuserà,
io l'ingegno aguzzerò
Alla fin s'accheterà
e contenta io resterò...
Si, Lindoro mio sarà
lo giurai, la vincerò

そうよ リンドーロはわたしのもの
必ず手に入れてみせる
バルトロが許さないけど
知恵を絞ってうまくやってみせる
そうよ リンドーロはわたしのもの
必ず手に入れてみせる

Io sono docile, son rispettosa.
sono ubbediente, dolce, amorosa,
mi lascio reggere, mi fo guidar.

私は素直で礼儀正しい
従順で優しい 愛情も深い
言われるがままに尽くしてみせる

Ma se mi toccano dov'è il mio debole,
Sarò una vipera,
e cento trappole prima di cedere
farò giocar

けどもし弱みに付け込まれたら
私は毒蛇になって 敵が降参するまで
たくさんの罠で懲らしめてやるわ


Extra 3 : Funeral Procession at the Seashore (海辺の葬列)
Lyrics- Ichiko Aoba (青葉市子)
https://www.youtube.com/watch?v=I7QMYpvDh90

The song of the city vanished into the sea
A huge dragon swallowed it in a single gulp
On the beach, where birds gripped fish
People dried off, one after another

Our eyes met before you went to sleep
Your dreams, driving into the ceiling with your nails
I hear the sound of you swimming through the storm
Outside our tiny little home

The person from the village where I sold my soul
Is swaying back and forth in what used to be a flower garden

Someone who sang of the wind
Was wrapped in bird down
And then carried off into the distance

 



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2021年12月28日 (火)

良いお年をお迎えくださいませ

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今年もようやく終わります。オリンピックなんてあったのかというくらい自粛に明け暮れた年でした。きょうは7つくらい用があって、あちこちうろうろしてようやくミッションコンプリート。安ワインを飲みながらディスプレイに向かっています。

今年の1番の思い出は、なんと言っても「まきちゃんぐライブ@5月23日下北沢コムカフェ音倉」です。新型コロナのせいで私がしばらくライブに行ってなかったこともありますが、立って歌うまきちゃんの凄さに圧倒されました。はらかなこさんのサポートも素晴らしかったと思います。このあとまた蔓延したので、ちょうど谷間だったのも良かったですね。まさに一期一会の経験でした。

http://morph.way-nifty.com/grey/2021/05/post-bd9959.html

2番目は6月1日の小泉-都響のフォーレ「レクィエム」@サントリーホールです。多分新型コロナがなければこんな静謐な幸福感に包まれることはなかったと思います。これも谷間でしたね。

http://morph.way-nifty.com/grey/2021/06/post-a7e9ca.html

3番目はY夫妻とご一緒したベートーヴェンの第9交響曲です。普通だったら会員席でとてもとれないような席のチケットが、新型コロナのおかげで解放されていてとれたので、都響のすばらしさをあらためて感じました。Y夫妻にも久しぶりでお会いできてよかったです。

現在 Cre-loxP の歴史を探訪していますが、ひっかかるところがあってとても今年中にアップできそうにありません。恒例の「私の紅白歌合戦」は年内にアップするつもりで準備しています。では、皆様が良いお年をお迎えになるよう祈念しております。

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2021年12月25日 (土)

大野都響-ベートーヴェン交響曲第9番@東京芸術劇場2022/12/24

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友人と共に都響が演奏するベートーヴェン第9交響曲を聴きに池袋へ。芸劇前のイルミネーションは素晴らしく、カラヤン広場とは大違いです。昨年はコロナで第9を聴けなかったので、ひとしおです。コンマスはボス矢部でサイドはゆづきです。

指揮は本来は準・メルクルさんでしたが、コロナの関係で大野音楽監督が代役です。ショスタコーヴィチの第5交響曲は、彼流のすっきりと整理された解剖術が完全にはまっていましたが、第9も2楽章までは全く違和感はありませんでした。しかし第3楽章は美しいことは美しいのですが、なぜかはまれませんでしたね。ふわふわとした優しい感じが無いんですよ。音楽がきびきびと進行しすぎるせいかな。と思っていたら急激にテンポが落ちたりして違和感がありました。

第3楽章が終わったところでいったん切って、ソリストと合唱団の入場。この方式は良いと思いました。ソリストの方々はオーケストラの後ろに立つスタイルでしたが、皆さんすごい声で圧倒されます。特にソプラノの小林さんの声は圧巻でした。こんな人が居るのなら、日本人でどんなオペラだってちゃんとできると思いました。

合唱団は二期会でしたが、力で押しまくる感じで柔らかさに欠けたように思いました。大野監督はこれでいいと思っているのでしょうかね?

オケはいつも通り頑張っていました。特に久一さんのティンパニは見ているだけでも美しい芸です。私は思ったのですが、柳原はパユや甲斐をめざすのではなく、鷹栖家の執事(爺や)~ 都響の執事 の様な感じでいると収まりが良いのではないでしょうか。鷹栖と柳原、この2人は都響のコアです。

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2021年12月23日 (木)

PCの乾燥 危機回避

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突然PCがキーボードに反応しなくなりました。モニターに画面キーボードを出して入力すると正常に動作します。しかしなにしろスタートのパスワードも入力できないので非常に困りました。強制終了して再起動しても直りません。

PCにつながっているすべてのコードをはずして放電してみたら という話を聞いて半信半疑でしたがそのとおりの状態にして、30分くらい放置して再起動すると、なんと正常にキーボードが使えるようになりました。

空気が乾燥していることが、PCにとっては非常に危険であることを思い知りました。さて、これからどうしたものか? とりあえず食器に水を入れて近くに置くと、1秒もしないうちにミーナが来て飲み始めました。

 

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2021年12月21日 (火)

大野-都響 ショスタコーヴィチ交響曲第5番@サントリーホール2021/12/20

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コロナの合間の平和なひとときに都響のタコ5。これはマエストロ大野の18番で、寒くても出かけるしかありません。サントリーホール前のカラヤン広場はまるでデッドスペースで、クリスマスデコレーションも皆無の寂しいたたずまいでした。

ソリストが達人阪田で、そのせいもあってかほぼ満席の盛況。広場の寂しさと対照的に、久しぶりの賑わいです。座席の制限も設けていませんでした。阪田さんーマエストロ大野ー都響は肝胆相照らすというか、息がぴったり合っていて素晴らしいラフマニノフでした。これだけお客さんが入ると、演奏者も気合いが入りますよね。

ソリスト・アンコール  ニールセン:『楽しいクリスマス』の夢

本日のコンミスは四方さん。サイドはマキロンです。マキロンはダイエットに成功したようです。ただ譜めくりを忘れてコンミスにやらせるとか、ボケぶりは相変わらずです。

お目当てのタコ5は期待通り会心の演奏で、テンション爆上げでした。フルートの柳原氏も今日はなかなか落ち着いてニュアンス豊かな演奏で楽しませてくれました。この曲でいつも思うのですが、第3楽章のシロホンは心臓止まりそうで奏者になりたくないです。ついでですが、マエストロ大野もミスった奏者を最初に立たせるという嫌みはやめてほしい。ともあれ四方さんをはじめ、みんなものすごく頑張った素晴らしい演奏会でした。どうも有難う。

ところで1月の定期演奏会はまだ詳細が決まらず、チケットも販売していません。ソリスト・指揮者が来日できないのは確定的なので、代役さがしが難航しているものと思われます。はらはらです。

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2021年12月20日 (月)

国立国会図書館の怪

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↑ クリックして拡大して見てください

私は国会図書館に「生物学茶話@渋めのダージリンはいかが」という本を献本していますが、これはもともとデジタル本なので国会図書館のデジタルコレクションに収蔵されていて、インターネットで自由に閲覧できるはずなのです。

しかし自分でアクセスしてみて腰を抜かしました。なんと上図のようにアクセスできなくなっているのです。あわてて電話してみて、さらに驚くべき事態になっていることがわかりました。国会図書館のすべてのデジタルコレクションにインターネットからアクセスできなくなっていて、図書館に行かないと閲覧できないようになっているんだそうです。

ええーっ! それじゃ紙本と同じじゃない? 冗談でしょ・・・。

いや本当で、しかもこの事態を解決できるめどはたっていないそうです。少なくとも私の本に関しては著作権問題はあり得ません。執筆も編集も出版も私ひとりでやったので、私がフリーで閲覧できますと言っているのですから、著作権問題が発生するわけがないのです。

デジタル庁はなんのためにあるのでしょうか? デジタル化の根幹というより国家の根幹がこんな調子では、この国の政治家は遊んでいるようなものでしょう。牧島かれんよ なんとかしてちょうだい。

ただ絶対見れないかというと、そうでもなくて国会図書館のHP

https://www.ndl.go.jp/

にアクセスし、検索ボックスに 生物学茶話 などと打ち込むと本の名前が表示されて、右端に デジタル というボックスが現れるので、そこをクリックすると上のような画面が出ます。そこで赤矢印で示した部分をクリックすると読めます。または左上の詳細レコード表示からもアクセスに至れます。

もうひとつ問題なのは、国会図書館のHPからは検索できるのですが、デジタルコレクションに移動すると検索ボックスに入力しても、検索にかからなくなります。これはデータの受け渡しがきちんとできていないからだと思われ、デジタルコレクションの管理がそもそもできていない証拠でしょう。かけ声だけは威勢がいいが、予算も人員も根回しも足りなくて実際はグダグダという最近のこの国によくある事態なのかな(orz.....)。

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2021年12月19日 (日)

新型コロナウィルスの形態

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国立感染症研究所で撮影されたSARS-CoV-2 B.1.1.529(オミクロン)系統の電子顕微鏡写真です。実に素晴らしい写真です。

これをみるとわかるように、新型コロナウィルスの外殻はブロッコリーのようにびっしりスパイクで覆われていて、抗体が接触できるのはスパイクの頭だけです。ですからこの部分にアミノ酸の変異があると、むしろ認識する方がおかしいのです。認識できたとすると、その抗体は特異性が低い不出来な抗体だということになります。

ですから何度もワクチンを打って大量に抗体を作り出す中で、その特異性の低い抗体がいくばくか効果を発揮してくれないかなと期待するのはちょっと無茶な話です。この頭の部分のアミノ酸配列にきちんと対応した新型ワクチンが一日も早く世に出て欲しいと思います。

この頭の部分の短いペプチドをワクチンとして投与するとよさそうですが、ひょっとするとそのペプチドが非常に効率よくACEII受容体に結合して、強い毒性を発揮するというリスクがあるかもしれません。むしろこの部分を認識する抗体試薬に期待すべきでしょうか? それともこのウィルスが持っている酵素の特異的阻害剤に期待すべきでしょうか? 

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2021年12月18日 (土)

第3の敗戦

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Times の World University Ranking を見てみました。まだ終わってませんが2021年版もありました。
こちら

1位はオックスフォード大学、6位はケンブリッジ大学、他のベストテンはすべて米国の大学でした。ではアジアではどうでしょうか?

20位 精華大学(中国)
23位 北京大学(中国)
25位 シンガポール大学(シンガポール)
36位 東京大学(日本)
39位 香港大学(中国)
47位 南洋理工大学(シンガポール)
54位 京都大学(日本)
56位 香港中国大学(中国)
56位 香港理工大学(中国)
60位 ソウル大学(韓国)
70位 復旦大学(中国)
87位 中国科学技術大学(中国)
94位 浙江大学(中国)
96位 KAIST(韓国)
97位 台湾大学(台湾)

中国の精華大学と北京大学は東京大学よりランキングが上位です。しかも中国はベスト100に8校もはいっていますが、日本は2校だけです。シンガポールと2位を争ってやや劣勢というところでしょうか。オセアニアまで含めるとオーストラリアは日本やシンガポールより断然上位にランクされます。

さらに残念なことに、日本の大学は200位以内にも東大・京大以外はランクインしていません。この2校以外の大学は奈落の底に転落してしまいました。もう学術・高等教育の世界では日本は完全に3流国家に転落したと考えて良いでしょう。情けないとしか言いようがありません。このような事態を招いた根源は、すべての国立大学を半民営化した小泉-竹中政権の愚策と、それを引き継いだ政権の見識のなさに起因するものです。

これは太平洋戦争、1990年代からの経済敗戦、に継ぐ第3の敗戦と言えるでしょう。

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2021年12月15日 (水)

心筋・心膜炎

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私はファイザーのワクチンを接種して以来チェストペインに悩まされていますが、医者にかかるほどひどくはないので辛抱しています。CDCもワクチンの副反応で、2021年に約1万7千例の心筋・心膜炎が発生したことを認めています。

心膜炎とはウィキペディアによれば図のような2重構造の心膜が炎症を起こして膨らんでいる状態のようです。心筋炎はまさしく心臓の筋肉そのものの炎症です。

データは Open VAERS のサイトに出ています。

https://openvaers.com/covid-data/myo-pericarditis

インフルエンザワクチンのデータと比較していますが、比較にならないくらい圧倒的に新型コロナワクチンによる心筋・心膜炎が多いことがわかります。

若い人は1回目より、2回目の接種後に発症する場合が多いようです。3回目にどうなるかはまだ神のみぞ知るですが。ともかく余計な患者発生やワクチン接種を避けるためにも、海外からの不急の正月帰省は延期して欲しいと思います。

昨日の報道ステーションに少し感動したのは、テレ朝が武漢に日本語をきちんと話せる中国人のエージェントを確保していて、的確なニュースを流していたことです。彼が武漢では新型コロナの蔓延はみられないが、近隣では発生しているところがあると伝えたのは重要なニュースです。大越氏が仕切るようになってから、視聴者を善導しようという姿勢が希薄になってきたのは歓迎しますし、なるべく報道に徹した姿勢を期待したい。

 

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2021年12月14日 (火)

続・生物学茶話167: C.エレガンスの神経細胞

神経堤細胞というのは、まず大工と左官によって作られた家に、後で入ってきた内装業者が人が住めるようにセットアップするという感じなのでしょう。神経板と予定皮膚外胚葉の間の領域が盛り上がるという意味での神経堤は脊椎動物独自のものですが、同じようなはたらきをする細胞は左右相称動物のはじまり(ウルバイラテリア)から存在したのでしょうか? バイラテリア一族のいわば分家である後口動物ではなく、本家の前口動物は神経堤細胞に類似した細胞を保持しているのでしょうか?

3年前に75才で亡くなったジョン・サルストンという人がいます。彼は線形動物門に属する体長約1mmの生物 Caenorhabditis elegans (通称C.エレガンス)が、ひとつの細胞から細胞数≒959個の雌雄同体または細胞数≒933個の雄ができるまでの全細胞系列をとてつもない執念で完全に明らかにして、2002年にノーベル生理学医学賞を受賞しました(1-3)。私はこれはワトソンとクリックのDNA構造解明にも匹敵する偉業だと思います。

この生物の神経細胞は302個しかなく(とは言ってもすべての体細胞の約3分の1が神経細胞!)、ひとつひとつの神経細胞がどのような役割を果たしているかについての実験研究が可能です(3)。C.エレガンスはたったこれだけの数の神経細胞で餌を探し、食べて排泄し、化学物質や温度を感知し、物理刺激を回避し、生殖し、記憶や学習を行ない、激しい運動を行なうことができます。

彼らは前口動物であり、私たち後口動物とは5億年以上前に分岐した生物です。彼らも神経堤細胞のように、適切な場所に移動しながら神経細胞としての増殖や分化を行なうタイプの細胞を保持しています。QRとQLという神経芽細胞は、右側と左側にそれぞれ6個づつ並んでいるシーム細胞列V1~V6のV4とV5の間という特定の位置に左右対称的に配置されていますが、QRは虫の成長にともない体の前方に移動し、QLは体の後方に移動します。QRとQLは移動先でそれぞれ神経細胞に分化します(4、図167-1)。いずれもひ孫世代ができるまで細胞分裂を行いますが、プログラム細胞死する細胞があるので、結局神経細胞として機能するのはそれぞれ3つで、そのうち2つは感覚ニューロン、ひとつは介在ニューロンとして機能します(4、図167-1)。

ウルバイラテリアはおそらく海底を這うために左右相称構造になったと思われますが、消化管や生殖器はひとつで良いわけですし、すべて左右相称の構造である必要はありません。非左右相称的な進化による分化、あるいはウルバイラテリア以前の伝統を引き継いだ分化が行われた可能性があり、QR・QLもおそらくそのような例と思われます。私たちも消化管や心臓はひとつです。

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図167-1 C.エレガンスの神経芽細胞QR・QL

移動する細胞はまず隣接する細胞との接着を解除し、アメーバのような仮足をつくらなければいけません。このようなスイッチを入れるのは多くの生物では Rho family GTPase であり、Cエレガンスでも UNC73(これは脊椎動物の Trio のホモログです)というグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)が機能しています(5、6)。これによってGタンパク質が活性化されます。また PIX-1 という因子も同様な役割を果たしています(7、図167-2)。これらが起点となって細胞骨格の再編成が行われ、ラメリポディアのような移動装置が出現して移動の準備が行われます(7)。PIX-1 の機能を発見したダイヤーさんはその後多くの論文を発表していますが、多くはヒトの病気などに関するもので、C.エレガンスの研究はほとんど進展がないようです。C.エレガンスの研究にはサポートがないためと想像されますが、残念なことです。

仮足を細胞全体に出すと方向が定まらなくなるので、前または後ろに動くには一方だけに出す必要があります。このメカニズムはまだ不明な点があるようでが、最近のラングとルントクイストの論文に寄れば DPY-17 および SQT-3 というある種のコラーゲン分子が細胞が後方に動くために重要な働きをしているそうです(8)。

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図167-2 細胞骨格の再編成

コルスワゲンらはCエレガンスのQR・QLはそれぞれ移動を始めた後、特定の位置で第1回目の細胞分裂を行うことに着目しました。もしこの細胞分裂が正常な位置よりスタート地点に近ければ、移動になんらかの不具合があるという仮説のもとに、さまざまな突然変異体の解析を行いました。そうすると図167-3のような突然変異体が細胞移動に不具合を発生していることがわかりました。特にQRでは mig-21 と dpy 、QLでは cdh-4 が致命的な欠陥をもたらしました(9)。

mig-21 はロシアの戦闘機のような名前ですが、それとは関係なく wnt-signal のモディファイアーとして機能する膜貫通タンパク質であることがわかっています。dpy はC-マンノシルトランスフェラーゼで、ホモログであるヒトの dpy19L1 は精子の機能不全をもたらすので、やはり細胞運動に関与しているのでしょう。cdh-4 はヒトでは 非クラシック Fat カドヘリンとして知られているタンパク質で、ユニバーサルな細胞接着因子のひとつですが(10)、なぜこのミュータントが移動できないかは謎です。

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図167-3 細胞の移動にかかわる因子

ケニオンらも早くからCエレガンスの突然変異体の解析などから UNC-40/DCC, UNC-73/Trio and DPY-19 などが左右非相称の要因であるとの報告をしており(11)、mig-21も含めてこれらが Wntシグナリングにどうレスポンスするかを決めているとしています(12)。どうレスポンスするかは細胞によっていろいろバラエティーがあるにしても、最初のシグナルはWntがもたらすようです。QLの場合WntシグナルとしてEGL-20が最も重要なようです。図167-4にその体の後方での発現が記してあります。これによってキャノニカルパスウェイが起動し、最終的には mab-5 が移動のスイッチになるようです(4)。QRについてははっきりしていないようですが、ミドルスクープらはCWN-1、2、EGL-20のレベルが低いことによるシグナルが重要であるとしています(4)。MOM-2とLIN-44はQR・QLの移動のメカニズムには関与していないようです(4、図167-4)。

ケニオンさんはその後C.エレガンスの長生きミュータントを発見し、そちらの方面に精力を傾注しているようです(13)。いつかここでもとりあげられればいいなと思います。

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図167-4 各種Wntシグナルが発現する位置

C.エレガンスの特定の神経細胞に分化するわずかな数の神経芽細胞の移動に関しても、分子レベルのメカニズムの解明にてこずるわけですから、さまざまな種類の細胞に分化する脊椎動物の神経堤細胞の解明にはまだまだ時間がかかりそうです。ただ初期発生が終わった後、細胞が個々に移動して分化するというメカニズムは、おそらくウルバイラテリア誕生以前から存在し、現存する生物たちもさまざまに修飾した上でその伝統的メカニズムを利用しているのだろうとは推測できるでしょう。節足動物や環形動物でもそれを示唆するデータが報告されています(14)。

C.エレガンスのQR・QL細胞に関する研究からもうひとつわかることは、これらの細胞が最初から運命を決定されているわけではないということです。これらの子孫の細胞はあるものはプログラム細胞死しますし、感覚ニューロンになるものもあれば、介在ニューロンになるものもあります。それらは子孫細胞において、それらが置かれている環境の影響によって決定されるものと思われます。

参照

1)J.E.Sulston, E.Schierenberg, J.G.White, J.N.Thomson, The embryonic cell lineage of the nematode Caenorhabditis elegans., Develop. Biol., vol.100, pp.64-119 (1983), https://doi.org/10.1016/0012-1606(83)90201-4
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0012160683902014?via%3Dihub

2)Wikipedia: John Sulston
https://en.wikipedia.org/wiki/John_Sulston

3)ウィキペディア:カエノラブディティス・エレガンス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%A8%E3%83%8E%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%82%B9

4)Teije C. Middelkoop and Hendrik C. Korswagen, Development and migration of the C.
elegans Q neuroblasts and their descendants., Worm Book edited by Joel H. Rothman and Andrew Singson, (2014) doi/10.1895/wormbook.1.173.1
http://www.wormbook.org/chapters/www_qneuroblasts/qneuroblasts.html

5)Robert Steven, Lijia Zhang, Joseph Culotti, Tony Pawson, The UNC-73/Trio RhoGEF-2 domain is required in separate isoforms for the regulation of pharynx pumping and normal neurotransmission in C. elegans., Genes Dev, vol.19(17): pp.2016-2029 (2005)
doi: 10.1101/gad.1319905.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16140983/

6)Shuang Hu, Tony Pawson, Robert M Steven, UNC-73/trio RhoGEF-2 activity modulates Caenorhabditis elegans motility through changes in neurotransmitter signaling upstream of the GSA-1/Galphas pathway., Genetics, vol.189(1):pp.137-151 (2011) doi:10.1534/genetics.111.131227.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21750262/

7)Jamie O. Dyer, Rafael S. Demarco and Erik A. Lundquist, Distinct roles of Rac GTPases and the UNC-73/Trio and PIX-1 Rac GTP exchange factors in neuroblast protrusion and migration in C. elegans., Small GTPases vol.1: no.1, pp.44-61 (2010)
DOI: 10.4161/sgtp.1.1.12991
https://www.researchgate.net/publication/51231563

8)Angelica E Lang, Erik A Lundquist, The Collagens DPY-17 and SQT-3 Direct Anterior-Posterior Migration of the Q Neuroblasts in C. elegans.,
J Dev Biol, vol.9, no.1, pp.7-21 (2021) DOI: 10.3390/jdb9010007
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8006237/

9)Annabel Ebbing, Teije C. Middelkoop, Marco C. Betist, Eduard Bodewes and Hendrik C. Korswagen, Partially overlapping guidance pathways focus the activity of UNC-40/DCC along the anteroposterior axis of polarizing neuroblasts. Development vol.146, dev180059. (2019) doi:10.1242/dev.180059
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31488562/

10)Seth Blair, Helen McNeill, Big roles for Fat cadherins., Curr Opin Cell Biol, vol.51 pp.73-80 (2018) doi: 10.1016/j.ceb.2017.11.006.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29258012/

11)L Honigberg, C Kenyon, Establishment of left/right asymmetry in neuroblast migration by UNC-40/DCC, UNC-73/Trio and DPY-19 proteins in C. elegans, Development vol.127, no.21, pp.4655-4668 (2000) PMID: 11023868
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11023868/

12)Teije C. Middelkoop, Lisa Williams, Pei-Tzu Yang, Jeroen Luchtenberg, Marco C Betist, Ni Ji, Alexander van Oudenaarden, Cynthia Kenyon, Hendrik C Korswagen, The thrombospondin repeat containing protein MIG-21 controls a left-right asymmetric Wnt signaling response in migrating C. elegans neuroblasts.,
Dev Biol vol.361, no.2, pp.338-348 (2012) doi: 10.1016/j.ydbio.2011.10.029.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22074987/

13)Cynthia Kenyon, The first long-lived mutants: discovery of the insulin/IGF-1 pathway for ageing., Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci, vol.366 pp.9-16 (2011)
DOI: 10.1098/rstb.2010.0276
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21115525/

14)Yongbin Li et al., Conserved gene regulatory module specifies lateral neural borders across bilaterians., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.114, E6352–E6360 (2017) 







 

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2021年12月11日 (土)

「製薬業界の闇」 by ピーター・ロスト

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ファルマシアという会社はあまり一般には知られていないかもしれませんが、スウェーデンの製薬会社でさまざまな医薬品を販売していたほか、研究用の試薬についてもメジャーなメーカーだったので、20世紀の医学・生物学研究者にはなじみ深い会社です。2003年にファイザーに買収されましたが、この本の著者ピーター・ロストはそのときファルマシアで管理職をやっていた人です。

ファイザーはバイアグラなどでお馴染みの米国の会社ですが、世界でもトップクラスの製薬会社です。現在も新型コロナウィルスと戦う最前線の会社です。

そんな会社に買収されて、ファルマシアは「よかったね」というわけではなく、そこには非情な解雇という地獄が待っていたのです。ピーター・ロストはその解雇を担当することになりました。どうすればうまく解雇できるかという綿密な研修を受けて、それを実行することになったのですが、一番の問題は解雇された職員が次の就職先を探すために最も必要なこと、すなわち上司が推薦状を書くことを禁止されたことです。このようなひどい仕打ちに激怒したロストは会社と戦うことにしました。

これはロストと会社の血みどろの戦いの記録です。この本を読めばファイザーがとんでもないブラック企業であることがわかります。

ロストの言葉です「現在の米国は”強欲”の上に成り立っている。・・・強欲とは、ファイザーの最高経営責任者のような連中をいうのだ」

The Whistleblower by Peter Rost
Soft Skull Press, New York (2006)
日本語版監訳 斉藤武郎
東洋経済新聞社刊(2009)

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2021年12月 8日 (水)

サラとミーナ259:満足した?

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かつおぶしはもうあきて食べないのかな、と思っていたら突然むしゃむしゃ食べることもあります。猫は普通食事するとすぐにその場を立ち去る習性があるみたいですが、その場で寝てしまうというのは珍しい光景です。多分他の動物が集まってくるのが嫌なのでしょうが、うちではそういうのはいないからね。

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2021年12月 4日 (土)

続・生物学茶話166:神経堤

神経堤という胚にできてくる土手のような構造は、脊椎動物の発生研究者にとってはとても目立つものです。ただそれは短い期間で消滅するので、20世紀の中頃まではあまり重視はされていませんでした。19世紀に活躍したスイスの解剖学者ヴィルヘルム・ヒスはミクロトームを発明したことで有名ですが、ニワトリが発生するときの切片を詳しく観察する中から、原条周辺の外胚葉が落ち込んで神経管をつくる細胞群、残って表皮となる細胞群のほかに、その中間に位置する部分で神経管の背側表皮の下に埋め込まれる細胞群が存在することを報告しました。そしてその3つめの細胞群を zwischenstrang と名付けました(1、図166-1)。この言葉は脳科学辞典では間索と訳していますが(2)、まさしく神経堤のことです。ヒスの本はドイツ語の長大なものですが、フリーで読めます(1)。私はもちろん読んでおりませんが、多数の図版が収録されていて、それを眺めるくらいはしました。

ヒスはまた zwischenstrang に含まれる細胞が骨髄神経節が発生する位置に移動することから、ganglionic crest という造語も行いました。ヒスは ganglionic crest が脊髄神経節をつくると信じていましたが、それは当時の発生学者には認められず、彼の説が認められるには半世紀の歳月を要しました。

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図166-1 神経堤を発見したヴィルヘルム・ヒス

神経堤の研究史に、次に大きな足跡を残したのはジュリア・プラットです(3、図166-2)。彼女は19世紀の当時としては大変珍しい女性の発生学者だったせいか、なかなか良いポストに就けず米国や欧州を転々として、博士号を得たのも40才を過ぎてからでした。しかし彼女が1890年代に次々と発表した論文は、この分野では古典とも言えるものです。なかでも外胚葉である神経堤が骨や軟骨を形成するという報告は革新的でしたが、当時の発生学者には全く認められませんでした。骨や軟骨は中胚葉からつくられるというのが当時の常識でした。ヒスと同様、彼女の学説も認められるまでに長い年月を要しました。

彼女は結局満足できるポジションを獲得できなかったので、カリフォルニアの地方都市(Pacific Grove)の市長になって、ラッコの保護に力を尽くしました(当時は毛皮をとるために乱獲されがちでした)。現在でもカリフォルニアの海岸でラッコを見ることができるのは、彼女の尽力があってのことだとされています(4)。

20世紀の前半には生体染色法を使って神経堤の細胞を染色し、その動態をさぐるという研究が行われました(5-6)。これによって完全な証明にはならないものの、プラット説はかなり信用度を増すことになりました。またレイヴンはサンショウウオとイモリを使った移植実験で神経堤細胞が感覚神経をつくることを証明しようと試みました(7)。これらの実験は示唆に富んだものではありましたが、細胞の識別がクリアではなかったので、まだ隔靴掻痒感は残りました。そんな中でラ・ドゥアランは日本のウズラの細胞が非常に識別しやすい特徴を持っていることを発見し(8、図166-2)、ニワトリ胚にウズラの組織を移植すれば(またはその逆)その移植片の発生運命がはっきとたどれると考えました(9、図166-2)。図166-2にみられるように、ウズラの細胞では染色体が核小体のまわりに集中して大きな塊になって見えるので、一目瞭然でニワトリの細胞と識別できるのです(8、10)。

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図166-2 神経堤細胞の行く先をさぐる

神経管は図166-3のように外胚葉の神経板が胚の内部に落ち込むことによって形成されます。このとき神経堤の細胞は一部が神経管にとりこまれ、一部は閉じられた予定皮膚の外胚葉と神経管の間のスペースに取り残されます。取り残された細胞(MNCC = migratory neural crest cells)はすぐに移動をはじめ、神経管最上部の細胞(pMNCC = premigratory neural crest cells)もそれに続いて移動します(11、図166-3)。

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図166-3 神経管形成前後の神経堤細胞

胚内部に落ち込む際に、神経堤細胞はその性質を大きく変化させます。上皮細胞の特徴である1)外側と内側で異なるタンパク質を配置し極性をつくる、2)細胞同士を側面で結合させてシートを形成する、などの性質を失い極性をもたずフリーに動く間葉系細胞(胚に特有の未分化細胞)に変化します。これを Epithelial–mesenchymal transition (EMT 上皮間葉転換)といいます。この際にEカドヘリンとギャップジャンクションの喪失が大きな役割を果たすとされています(12、図166-4)。EMTは正常な発生や分化の場面だけで行われれば良いのですが、癌の転移の際にも似たようなメカニズムが発動するといわれています(12)。

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図166-4 上皮間葉転換

ラ・ドゥアランらの手法などを使って、現在では神経堤の細胞が様々な組織を形成することが明らかになっていて、それが脊椎動物の大きな特徴であることがわかりました(11)。神経管は頭から下半身まであるので、神経堤も同じ長さです。図166-5は上半身についてですが、神経堤の細胞はまず咽頭弓を形成し、そこから脳の一部、眼、顔面の骨、角膜、歯、アゴ、聴覚用の骨、神経、血管、舌骨、甲状腺、副甲状腺などを形成することが示してあります(13)。これらは中胚葉由来の細胞と共同してつくられることもあります。

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図166-5 頭部周辺と神経堤細胞

図166-6はある血管がドナーの神経堤由来細胞とホストの中胚葉由来細胞とのキメラで構成されていることを示しています(10、14)。このことは血管が外胚葉性の神経堤細胞と中胚葉性の細胞との共同作業で形成されることを意味しています。

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図166-6 キメラ血管壁 (10)

神経堤細胞がどのような細胞に分化し、組織を形成するかをまとめたのが図166-7です(脳科学辞典の神経堤からお借りした図版、15)。特に神経系の構成を進化上リニューアルすることに大きく貢献していることがわかります。これによって脊椎動物はウルバイラテリア以来の動物の枠組みを乗り越えた形態形成を行うことができました。

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図166-7 神経堤細胞の分化・予定運命のまとめ

参照

1)Wilhelm His, Untersuchungen uber die erste Anlage des Wirbeltierleibes. Die erste Entwicklung des Huhnchens im Ei., Leipzig: F. C. W. Vogel 1868.
https://archive.org/details/untersuchungen1868hisw/page/n5/mode/2up

2)脳科学辞典:神経堤
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%A0%A4

3)Julia B. Platt. Ectodermic Origin of the Cartilages of the Head., Anat. Anz., VIII. vol.8, pp.506-509 (1893)
See also: J. S. KINGSLEY., The origin of the vertebrate skeleton., The American Naruralist vol.XXVIII p.332 (1894)
https://www.journals.uchicago.edu/doi/pdf/10.1086/275985

4)Wikipedia: Julia Platt
https://en.wikipedia.org/wiki/Julia_Platt

5)Detwiler, S.R., Application of vital dyes to the study of sheat cell origin. Proc. Soc. Exp. Biol. Med. vol.37, pp.380–382 (1937)
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3181/00379727-37-9579P?journalCode=ebma

6)Hörstadius, S., The Neural Crest., Oxford University Press, Geoffrey Cumberlege (1950)
https://www.amazon.com/Neural-Crest-Sven-HORSTADIUS/dp/B000K717LE

7)Raven, C.P., Experiments on the origin of the sheat cells and sympathetic
neuroblasts in Amphibia. J. Comp. Neurol. vol.67, no.2 pp.221–240. (1936)
https://www.deepdyve.com/lp/wiley/experiments-on-the-origin-of-the-sheath-cells-and-sympathetic-MomfRSwyoQ

8)Le Douarin, N., Details of the interphase nucleus in Japanese quail (Coturnix
coturnix japonica). Bull. Biol. Fr. Belg. vol.103, pp.435–452.(1969)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/4191116/

9)Le Douarin, N., A biological cell labeling technique and its use in experimental
embryology. Dev. Biol. vol.30, pp.217–222. (1973)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/4121410/

10)Domenico Ribatti, Nicole Le Douarin and the use of quail-chick chimeras to study the developmental fate of neural crest and hematopoietic cells., Mechanisms of Development, vol.158, 103557 (2019)
https://doi.org/10.1016/j.mod.2019.103557

11)Joshua R. York and David W. McCauley, The origin and evolution of vertebrate neural crest cells., Open Biol., vol.10, issue 1, 190285 (2020) https://doi.org/10.1098/rsob.190285
https://royalsocietypublishing.org/doi/pdf/10.1098/rsob.190285

12)Wikipedia: Epithelial–mesenchymal transition
https://en.wikipedia.org/wiki/Epithelial%E2%80%93mesenchymal_transition

13)File: Cranial Neural Crest Cells - migration.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cranial_Neural_Crest_Cells_-_migration.jpg

14)Roncali, L., Virgintino, L., Coltey, P., Bertossi, M., Errede, M., Ribatti, D., Nico, P.,Mancini, L., Sorino, S., Riva, A., Morphological aspects of the vascularizazion in intraventricular neural transplants. Anat. Embryol. vol.193, pp.191–203. (1996)

15)脳科学辞典:神経堤
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%A0%A4

 

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2021年12月 3日 (金)

ボルケーノ・パーク(天火 Sky Fire)

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WOWOWで中国のパニック大作映画「天火(Sky Fire)」邦題ボルケーノ・パークを見ました。スケールの大きいハリウッドも顔負けの映画っていうより、ハリウッド映画の伝統をきっちり受け継いだ映画のように思いました。内容は火山島にあるリゾートが噴火でパニックになるというお話です。

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グラフィックがすごいですし、この画像の主演女優ハンナ・クインリヴァン 昆凌 Kun Ling = 本名:武誼蓁 (ウー・イージェン)の存在感も素晴らしいものがあります。ただアクションとグラフィックに力点を置いたために、人間関係にいまいち深みを与えられなかったという点で超B級映画との批判もあり得ます。もともとハリウッド映画がそうだといえばそうなのですけどね。U-Next などで見られます。
https://video.unext.jp/title/SID0054443

参照

https://eiga.com/movie/93793/

https://movies.yahoo.co.jp/movie/374054/

(画像はウィキペディアより)

 

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2021年12月 1日 (水)

新型コロナワクチンの毒性 新知見

ファイザーやモデルナの改造mRNAワクチンは、そのままでは細胞に入らないので、脂質ナノ粒子の膜に包んで投与します。そうするとmRNAがうまく細胞内にとりこまれます。

フィラデルフィアのトーマス・ジェファーソン大学のグループが驚愕の発表をしました。その内容はmRNAワクチンの毒性は、mRNAよりむしろそれを包んでいる脂質ナノ粒子によるものだというものです。これは盲点をつかれました。しかしおそらくメーカーはこのことには最初から気づいていたのではないでしょうか?

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参照

Sonia Ndeupen, Zhen Qin, Sonya Jacobsen, Aurelie Bouteau, Henri Estanbouli, and Botond Z. Igyarto
The mRNA-LNP platform’s lipid nanoparticle component used in preclinical vaccine studies is highly inflammatory
iScience. 2021 Nov 20 : 103479.
doi: 10.1016/j.isci.2021.103479

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8604799/

 

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2021年11月30日 (火)

オミクロン株の流入

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日本の検疫は基本抗原検査でやっているそうです。抗原検査というのは、その抗原と特異的に結合する抗体を使って抗原を検出するという方法ですが、この方法の特異性とか検出感度は使用する抗体に依存します。ですから一概に精度が高いとか低いとかは言えません。

私たちにウィルスが感染すると、そのウィルスが持っている様々なタンパク質に対する抗体ができて中和しようとします。このときできた多種類の抗体のことをポリクローナル抗体といいます。ウィルスをウサギに投与して、ウサギの血液を採取するとポリクローナル抗体を集めることができますが、このような抗体は投与したウサギによって質・量ともさまざまなものができるため品質がバラバラとなりますし、もちろん精製しないと使えません。大量生産にも向いていません。実は単一のタンパク質を動物に投与しても、抗体は複数の種類ができてしまいます。

これに対してモノクローナル抗体は試験管内で作ることができる均一な抗体で、抗原検査は通常このモノクローナル抗体を使って行われます。新型コロナウィルスの場合、何を抗原とするモノクローナル抗体を作成するかというと、ヌクレオキャプシドという遺伝物質の保護構造を形成するタンパク質(コアタンパク質)を抗原とする場合が多いようです。このタンパク質はひとつのウィルスに含まれる量が多いからなのでしょう。

ですから抗原検査の精度については、ある株のウィルスのコアタンパク質に対して作られた抗体を使うと、その株の検出には高い精度で対応できるわけです。しかしたとえばデルタ株のコアタンパク質に対する抗体を使って、他の株を検出しようとすると、その精度はその株のコアタンパク質がどのくらいデルタ株と異なるか(変異しているか)によります。

したがって貧乏でせっかちなためPCR検査がままならないわが国の空港や港湾では、オミクロン株の検出がままならず流入を阻止できない可能性が高いのです。ですから岸田総理が外国人の全面入国禁止措置を行ったのはやむを得ないといえます。もう一つ重要なことは邦人の帰国の際に抗原検査ではなく必ずPCR検査と隔離を行うことです。これによってオミクロン株の流入を理論上は完全に防げますが、多分PCR検査用のプローブ(オミクロン株のRNAに相補的な配列を持つDNA)が間に合わなかった可能性が強いので、すでに国内に流入しているかもしれません。それがないように祈りたいです。

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2021年11月27日 (土)

南アフリカの新型コロナウィルス(オミクロン)

新型コロナウィルスの正式名称は SARS-CoV-2 で、2002年に流行したSARSのウィルスは SARS-CoV なので親戚に当たります。2013年に流行した MERS-CoV も親戚筋です。これらのウィルスが持つ酵素や構造タンパク質はゲノムDNAの配列が90%以上一致していて(1)、タンパク質レベルではほぼ同じだと思われます。その主要なものは増殖のための酵素、タンパク質分解酵素、ホストの正常な蛋白合成を妨げる因子、スパイクタンパク質、外殻構造タンパク質、遺伝物質を覆って保護するタンパク質などです。

SARS と MARS の違いはスパイクタンパク質が結合するホストのタンパク質が異なることで、前者は angiotensin-converting enzyme 2 受容体、後者は dipeptidyl peptidase 4 受容体にとりついて細胞内に侵入します。このあたりのメカニズムがそれぞれ異なることは予想されます。

最近南アフリカで発生し蔓延している新型コロナウィルスの B.1.1.529 という変異株(オミクロンと命名されたようです)が話題になっています。Christina Pagel 博士が発表した下図(2)のピンクの部分がスパイクタンパク質をコードするゲノム領域です。今回発生した変異体は、この図で数えると33ヵ所の変異が認められます。スパイクタンパク質にも多数の変異が見られます。これだけ変異が見られるにもかかわらず感染する能力が失われていないのが驚異的です。これだけ変異していると、ワクチンや抗体治療薬も全く役に立たない可能性が大です。まあmRNAワクチンはシーケンスを変えればよいだけなので、変異ウィルスに対応した新しいものがそのうち出てくるでしょうが。

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私はワクチンを接種した翌々日から左胸に違和感が発生し、数ヶ月経った今でもその押されるような嫌な気分の違和感はなくなりません。ファイザーやモデルナの分解困難なように改造されたmRNAは、不活化はされても完全に体内からなくなりはしないと思います。数ヶ月経っても違和感がなくならないのはmRNAが造ったスパイクタンパク質のせいではなく、処理できないmRNAの部分分解産物が抗原となって免疫反応を引き起こしているのではないかと疑っています。

それはさておき、このオミクロンの日本侵入だけは勘弁して欲しい。

1)Ahmad Abu Turab Naqvi et al., Insights into SARS-CoV-2 genome, structure, evolution, pathogenesis and therapies: Structural genomics approach., Biochim Biophys Acta Mol Basis Dis. 2020 Oct 1; 1866(10): 165878.Published online 2020 Jun 13. doi: 10.1016/j.bbadis.2020.165878
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7293463/

2)Threader: Prof.Christina Pagel
https://threader.app/thread/1463885539619311616



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2021年11月25日 (木)

続・生物学茶話165:脊索の起源をめぐって

ノトコード(脊索)の存在をはじめて記載したのはエストニア生まれの生物学者フォン・ベーアだとされています(1、2、図165-1)。これは1828年のことで、彼の記載はニワトリについてのものですが、すぐに他の脊椎動物についても同様な組織がみつかって、1836年にはナメクジウオについても報告されているそうです(2、3)。私は入手していませんが、このYarellの本は復刻されて販売されています(3)。フォン・ベーアの本も(図165-1)ドイツ語の大著なので、私はとりついておりません。ドイツ語がわかる方はウェブでフリーで読めます(1)。

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図165-1 フォン・ベーアによる脊索の発見

その後ノトコードの研究に深く関わったのはアレクサンダー・コヴァレフスキーというロシアの発生生物学者で、彼はナメクジウオのノトコードの発生や性質について詳しく研究し、ノトコード研究の父とも言える人です(4)。彼の名が知れ渡ったのは、ホヤの幼生がノトコードを持っていることを報告したからです(5、6、図165-2)。フォン・ベーアはホヤは軟体動物だとしていましたし、一般的にもそう認識されていたので、脊椎動物と近縁であることがわかったときには、すべての研究者が驚いたことでしょう(2)。ホヤは成体になるとノトコードを消失させます(図165-2)。これは脊椎動物と同じです。

図165-2の赤丸1がノトコード、紺丸2が神経索です。しかし成体ホヤではどちらも記載されていません。ホヤの場合成体ではノトコードは消失しますが、なんと中枢神経系の細胞も成体になるときにいったんほとんど死滅してしまいます。その後グリア細胞によってニューロンが新生し中枢神経系が再構築されるようです(7)。再生された成体の中枢神経系は幼生の中枢神経系のような目立つ構造ではないので、このウィキペディアの図では描かれていないのでしょう。

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図165-2 コヴァレフスキーの研究

ノトコードの起源については大きく分けて2つの仮説があります。ひとつは脊索動物が独自に獲得した固有の構造であるという考え方、もうひとつは環形動物などのアクソコードと相同であり、ウルバイラテリアン(最初に左右相称性を獲得した動物)の時代から存在しているという考え方です(8)。どちらが正しいかというのはなかなか難しい問題です。というのはカンブリア紀(5億4100万年前~4億8500万年前)にすでに脊索動物が存在し、ミロクンミンギアのようにすでに脊椎をもっていたと思われるような動物までが存在していたことが化石から示唆されているからです(9、10、図165-3)。

カンブリア紀に生きていた Vetulicolia という生物については前口動物(Protostomia)か後口動物(Deuterostomia)かという論争がありましたが、García-Bellido らによってノトコードをもつと思われる個体の化石が報告され、後口動物であることが強く示唆されました(11、図165-3)。これによってカンブリア紀前期にはすでに立派なノトコードを持つ生物が存在していて、ノトコードの起源はおそらくエディアカラ紀以前ということになりました。このことは化石から解決を求めることが極めて困難であることを意味します。

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図165-3 カンブリア紀の脊索動物 ヴェトゥリコリアは脊索をもっていた
ウィキペディアと参照文献(11)より

Sui らの総説に後口動物のノトコードと前口動物のエクソコードを比較した断面図があったので、図165-4として示しました(8、165-5と共に非商用利用が引用を条件に許可されています)。アクソコードは環形動物におけるノトコードのホモログとしてラウリらが名付けた構造です(12)。アレントらはこの正中線に沿って、まだ内胚葉とはっきり区別できない中胚葉から形成される構造アクソコードは、ほとんどの環形動物に存在し、また他の前口動物にも認められるノトコードのホモログであり、始原的左右相称動物であるウルバイラテリアの時代から存在する基本構造であると主張しています(12,13)。

脊椎動物(ゼブラフィッシュ)と尾索動物(ホヤ)では、成体になるとノトコードは失われるので、幼生の図です。頭索動物(ナメクジウオ)と、ここでは唯一の前口動物(環形動物)ではそれぞれノトコード・アクソコードは成体にもみられます。ただし脊索動物では背腹軸が逆転している(ジョフロワ説)とされているので、背腹(上下)の位置関係は異なります。A-Cでは上(背)から予定表皮・神経管・ノトコードとなりますが、Dではアクソコード・神経管・予定表皮の順になっています。あとノトコードはシングルなのに、アクソコードはダブルという違いもあります(図165-4)。

環形動物のアクソコードは基本的に筋肉です。頭索動物ナメクジウオのノトコードはやはり筋肉ですが、尾索動物ホヤや脊索動物ゼブラフィッシュではかなり液体の部分が増えて、構造が著しく変化しています(8)。これはおそらくこれらの動物では成体ではこの組織そのものは消失するので、後継の組織にバトンタッチすれば良いからでしょう。神経または神経+骨髄を誘導すればノトコードの組織としての役割は終わり、パワーユニットとしてのノトコードは不要なのです。

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図165-4 ノトコード・アクソコードと中枢神経の位置

ノトコードとアクソコードで発現している主要な転写因子を並べたのが図165-5です(8)。発生初期の中胚葉で発現している因子とはガラッと変わっていることがわかります。特筆すべきはノトコードとアクソコードで発現している因子がほとんど同じだということで、これは両者がホモローガスであることを強く示唆しています。特に Brachyury (ブラキウリ、ブラチュリーなど発音が定まっていないようです)というノトコードの形成に最も重要な因子がアクソコードでも発現していることは重要です。唯一 Not という因子がノトコード特異的に発現していますが、これを命名した人は頭がおかしいのではないかと疑います。こんな名前をつけたら検索すらできないじゃありませんか? というわけでこれはパスします。

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図165-5 ノトコードとアクソコードに発現する転写因子の比較

 

参照

1)von Baer KE. Uber Entwickelungsgeschichte der Thiere, Beobachtung und Reflexion. Part 1. Konigsberg: Borntrager; (1828)
https://www.biodiversitylibrary.org/item/28306#page/16/mode/1up

2)Giovanni Annona, Nicholas D. Holland and Salvatore D’Aniello, Evolution of the notochord., EvoDevo vol.6: no.30 (2015)
DOI 10.1186/s13227-015-0025-3

3)Yarrell W. A history of British fishes, vol. 2. 1st ed. London: Van Voorst;
1836.
https://www.amazon.co.jp/History-British-Fishes-2/dp/1179686616

4)Kowalevsky A. Weitere Studien uber die Entwickelungsgeschichte
des Amphioxus lanceolatus, nebst einem Beitrage zur Homologie
des Nervensystems der Wurmer und Wierbelthiere. Arch Mik Anat.
1877;13:181-204.

5)Kowalevsky A. Entwickelungsgeschichte der einfachen Ascidien. Mem
Acad Imp Sci St-Petersbourg (Ser VII). 1866;10(number 15):1-19.

6)Wikipedia: Alexander Kowalewsky
https://en.wikipedia.org/wiki/Alexander_Kovalevsky

7)Takeo Horie, Ryoko Shinki, Yosuke Ogura, Takehiro G. Kusakabe, Nori Satoh, Yasunori Sasakura, Ependymal cells of chordate larvae are stem-like cells that form the adult nervous system., Nature, vol.469, pp.525-528 (2011) DOI: 10.1038/nature09631
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21196932/
https://www.shimoda.tsukuba.ac.jp/~sasakura/research_CNS_reconstruction.html

8)Zihao Sui, Zhihan Zhao and Bo Dong, Origin of the Chordate Notochord., Diversity, vol.13, 462. (2021) https://doi.org/10.3390/d13100462

9)ウィキペディア:ミロクンミンギア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AD%E3%82%AF%E3%83%B3%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%82%A2

10)Wikipedia: Vetulicolia
https://en.wikipedia.org/wiki/Vetulicolia

11)Diego C García-Bellido, Michael S Y Lee, Gregory D Edgecombe, James B Jago, James G Gehling and John R Paterson, A new vetulicolian from Australia and its bearing on the chordate affinities of an enigmatic Cambrian group., BMC Evolutionary Biology vol.14:214 (2014) DOI:10.1186/s12862-014-0214-z
https://www.researchgate.net/publication/266566755_A_new_vetulicolian_from_Australia_and_its_bearing_on_the_chordate_affinities_of_an_enigmatic_Cambrian_group

12)Lauri A, Brunet T, Handberg-Thorsager M, Fischer AHL, Simakov O, Steinmetz
PRH, Tomer J, Keller PJ, Arendt D. Development of the annelid axochord: insights into notochord evolution. Science. vol.345: pp.1365–1368.(2014) DOI:10.1126/science.1253396
https://www.researchgate.net/publication/265606919_Development_of_the_Annelid_Axochord_Insights_into_notochord_evolution

13)Thibaut Brunet, Antonella Lauri and Detlev Arendt, Did the notochord evolve from an
ancient axial muscle? The axochord hypothesis., Bioessays vol.37: pp.836–850 (2015) DOI:10.1002/bies.201500027
https://www.researchgate.net/publication/280124751_Did_the_notochord_evolve_from_an_ancient_axial_muscle_The_axochord_hypothesis

 

 

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2021年11月23日 (火)

サラとミーナ258:納まるべきところに

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とても珍しく、サラとミーナがこちらが用意してここで寝て欲しいという場所で寝ています。

最近は値上がりしたり量が減ったりする商品が多いですが、猫砂も結構値上がりしています。トフカスサンドもなかなか安いものは手に入りにくくなっています。アマゾンよりペットショップが安いので、重い砂をかかえてかえることが多くなりました。

休日の100円ショップのこみ方もひどいです。レジの列が数十メートルにもなります。日本は国債を大量に発行しているので、金利を上げられません。上げると国家が借金返済で破滅します。でどうなるかというと円安です。これで生活が苦しくなります。

日本の企業の国家支配が進んでいますが、ついに新生銀行の買収防衛に対して国家が反対するという事態になりました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211123/k10013358231000.html

台湾の半導体工場を政府が日本に誘致するというのも、日本が国家社会主義に踏み出したという証拠です。
私はそれに反対しているわけではなく、むしろ遅きに失していると思っています。

ただそうやって国家ぐるみで産業をささえようとしても、結局中国や米国にかなうわけはなく、水野和夫流に世界資本支配と世界自由貿易戦争を拒否した「閉ざされた国家連合」で生存を計るのがベターだと思います。国家連合内で自給自足すれば、過度な競争による賃金の抑制や負け組の破滅が避けられます。

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2021年11月21日 (日)

チャビ・エルナンデスの帰還

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チャビ・エルナンデスがバルサの監督として帰還しました。スペインサッカー協会のルールでメッシをかかえられなくなったバルサ。故障者が続出する上に補強もままならなくなり、衰退の一途をたどりそうでしたが、チャビが奇跡の再建をなしとげられるかどうか?

今日の試合はエスパニョールが前半ドン引きだったので変化はよくわかりませんが、サイドを突破してからマイナスのパスを中央にもどすという場面が多かったように思いました。PKはご祝儀みたいなものでした。後半はピンチの連続で、よくまあ勝てたものだと思います。ちょっと目を引いたのが、後半右エストレーモで登場したアブデ(アブデサマド・エザルゾウリ)という選手で、ドリブル突破もできるし、クロスも割と正確という・・・なかなかいいじゃないの! 使うべし。
https://www.fcbarcelona.jp/ja/news/2317861/

土曜日にチャンピオンズリーグのライプツィッヒ vs パリの試合を覗いてみましたが、ライプツィッヒのスタジアムは人数制限なしでほとんどマスクしている人はいません。おまけに大騒ぎでチームを応援。これじゃあいくらワクチンパスポートがあっても、感染爆発が起きるのは当たり前です。いいかげんでワクチン至上主義はダメだということを理解して欲しい。私はドイツという国はかなりリスペクトしていたのですが、こんなにバカな人が多くてはどうしようもありませんね。

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From Worldometer

これにくらべるとカンプノウは7万人入場したそうですが、かなりの人がマスクをしていました。でもしていない人もそこそこいたので、ドイツほどではないにしても、感染再拡大しそうな悪い予感がしました。

(チャビの写真はウィキペディアより)

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2021年11月19日 (金)

続・生物学茶話164:脊索(ノトコード)

クラゲなどの一部を除き多くの動物には口と肛門があり、それをつなぐパイプ(消化管)を持っています。ともかく捕食して排泄しないと動物は生きていけません。卵はひとつの細胞ですが、それがランダムに分裂を繰り返すと大きな球ができるだけなので、なんらかの方法で形態形成を行う必要があります。すなわち、あるタイミングで胚という細胞塊に「消化管というひとつのパイプを貫通させる」というトンネルを作成する作業が必要です。

カエルの卵がよくモデルとして利用されます。穴掘りのきっかけを作るのがボトル細胞という細胞群で、この細胞は外界と接する外側にアクチンとミオシンによる筋肉と同様な収縮システムを持っており、この作用によって細胞の外側だけ収縮させて原口というくぼみをつくります(1、図164-1)。このようなくぼみができない状態で、左右から力が加われば図164-1Aのように、胚に土手のような構造ができるはずです。紙のシートで試してみればわかります。ですから少しでもくぼみができることは生物が形態を形成する上で非常に重要です。

原口は外から見るとくぼみ(割れ目)ですが、内から見るとこれは土手です。最外層の内側で増殖する細胞はこの土手によって行く手を防がれ方向転換して内部へとなだれ込みます(図164-1)。この細胞の動きにともなって割れ目は深く進展し、外側の細胞も巻き込んで原腸が形成されていきます。この割れ目から内部に落ち込んだ細胞が中胚葉を形成し、消化作業を行う本物の腸は内胚葉細胞によって完成されます。最初にくぼみを作るボトル細胞は、それが形態形成を主役として実行するわけではなくて、ひとつのきっかけをつくるという意義を持つものです。原腸形成前後のプロセスは昔からどんな発生学の教科書にも書いてあることですが、そのメカニズムは非常に複雑でいまだに不明な点が多く解明が待たれます(2、3)。

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図164-1 原腸陥入 Findings by Lee and Harland

カエルの卵の原口は大きく湾曲していますが、脊椎動物の原口はストレートな形状になっていて、原始線条または原条とよばれ、カエルの場合と同様に細胞がここから内部に落ち込んで中胚葉が形成されます(4、図164-2)。もともとはカエルの原口に相当すると思われる部位は鳥類ではヘンゼン結節、哺乳類ではノードとよばれています。内部に落ち込んだ細胞によって中胚葉が形成されます。

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図164-2 脊椎動物の原条形成

脊索動物門の生物は他の門の生物と異なり、落ち込んだ中胚葉細胞によって脊索(ノトコード)を形成します(5、6、図164-3)。脊索はコラーゲン線維に包まれた棒状の構造物で、中の細胞は糖タンパク質を豊富に含みます(7)。始原的左右相称動物では、この左右に筋肉を付着させて迅速な移動を行うために有用だったと思われますが、現生の脊索動物では中枢神経系を誘導したり、脊椎を構築してその一部となるなど新たな機能が追加されることになりました。脊索は図164-3のように外胚葉の一部をくびれさせて神経索を誘導したり、その際に第4の胚葉といわれる神経堤(neural crest)が出現させたりします。神経堤は将来各種末梢神経系の神経細胞や、シュワン細胞・メラニン細胞(メラノサイト・皮膚の色素細胞)・副腎髄質などのクロム親和性細胞、心臓の平滑筋・顔面の骨や軟骨・角膜や虹彩の実質・歯髄など、後に多様な細胞種に分化することになります(8)。

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図164-3 脊索と神経索

ノトコードによる神経誘導にはソニックヘッジホッグタンパク質(Shh) が重要な役割を果たしていると思われますが、チェンバレンらはこれを証明するために、Shh の遺伝子にGFP(緑色蛍光タンパク質)の遺伝子を組み込みました(9、図164-4)。プロセッシングによってC側が切り取られたときに、C側に代わってコレステロール化される位置に組み込んだので受容体は Shh と認識してくれるようです。組み込まれたGFPによって Shh を緑色に光らせると、図164-4DとEのように、ノトコードからフロアプレートあたりに、胎生8.5日目から9.5日目にかけて光る部分が広がっていることがわかります。

しかし実際は一筋縄ではいきません。Shh-GFP 遺伝子のmRNAを調べたところ、ノトコードだけではなく、神経管のフロアプレートにも検出されたのです(図164-4AB)。このような現象は Gli2をホモで欠損しているミュータントではおこりません(図164C)。したがっておそらくノトコードからの Shh の情報を受けて、Gli2 などの作用でフロアプレートの一部の細胞が Shh を合成し始めたと思われます。このことは単純にノトコードがリガンドを使って神経を誘導するというニュアンスとは少し違って、予定神経領域が自ら神経への誘導を行っていることを示唆しています。

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図164-4 ソニックヘッジホッグの発現

外胚葉にはBMPの分子群がもともとあって神経への変化を妨げているのですが、ノトコードはここから落ち込んだ細胞のBMPの作用を妨げて神経への分化を誘導します。脳科学辞典の神経誘導の項目を見ると Noggin/Chordin/Follistatin はBMPリガンドに結合して無効化することによって神経誘導を行うと記載しています(10、図164-5)。マイヤーズとケスラーによると、 Shh の他 Noggin、Chordal、そしてBMPと同じTGF-βスーパーファミリ-に属する Nodal がノトコード側の因子としてアンチBMPとして機能しているようです(11)。これらによってそのままだと表皮になってしまうはずの外胚葉が神経組織に誘導されます。

脊椎動物の場合、神経管が誘導されるとそれで終わりではなく、神経管および周囲の組織を巻き込んでさらに複雑な脊椎や運動神経・感覚神経などを制作することになるので、その準備を始めなければいけません。ルーフプレート由来のGDFやWNTはその準備作業を行うようです。マイヤーズとケスラーは神経管内におけるさまざまな領域分化について言及しています(11)。

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図164-5 BMPの作用を抑制する

神経管や周辺組織が脊椎などを造るステージに入ったときに、円口類を除く脊椎動物ではノトコード(脊索)が消失します。ハーフェやリスバッドはノトコードという構造は解体されても、その細胞は髄核の中で生き延びると主張しています(12、13、図164-6)。確かに Shh は椎間板の内部にある髄核に発現しています(図164-6)。詳細なエヴィデンスを知りたい方は原著をご覧ください。ハーフェの論文の筆頭著者であるチョイさんのよい画像はみつからなかったので掲載できませんでした。

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図164-6 脊索の運命について

椎間板は内部の髄核とそれを取り囲む線維輪からなり、脊椎のクッションとなって体重をささえている重要な組織です(14)。

参照

1)Lee, J.; Harland, R. M., Actomyosin contractility and microtubules drive apical constriction in Xenopus bottle cells". Devel. Biol. vol.311, pp.40-52. (2007)  doi:10.1016/j.ydbio.2007.08.010. PMC 2744900 Freely accessible. PMID
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012160607012559?via%3Dihub

2)Huang Y, Winklbauer R., Cell migration in the Xenopus gastrula. Wiley Interdiscip Rev Dev Biol., vol.7(6): e325. doi: 10.1002/wdev.325. (2018)
https://www.researchgate.net/publication/326017419_Cell_migration_in_the_Xenopus_gastrula

3)福井彰雅 原腸陥入運動とケモカインシグナル 生物物理 vol.48(1),pp.23-29(2008)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/48/1/48_1_023/_pdf

4)S. Chernoivanenkoa, An. A. Minina, and A. A. Mininb, Role of Vimentin in Cell Migration., Russian J. Develop. Biol., Vol.44, No.3, pp.144–157 (2013)
https://www.researchgate.net/publication/257852243_Role_of_vimentin_in_cell_migration

5)Wikipedia: Neural plate
https://en.wikipedia.org/wiki/Neural_plate

6)Derek L. Stemple, Structure and function of the notochord: an essential organ for chordate development., Development vol.132, pp.2503-2512 (2005) doi:10.1242/dev.01812
file:///C:/Users/morph/AppData/Local/Temp/structure-and-function-of-the-notochord-an-essential-organ-for-chordate-development.pdf

7)Wikipedia: Notochord
https://en.wikipedia.org/wiki/Notochord

8)脳科学辞典:神経堤
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%A0%A4

9)Chester E. Chamberlain, Juhee Jeong, Chaoshe Guo, Benjamin L. Allen, Andrew P. McMahon, Notochord-derived Shh concentrates in close association with the apically positioned basal body in neural target cells and forms a dynamic gradient during neural patterning.,
Development vol.135 (6): pp.1097–1106. (2008) https://doi.org/10.1242/dev.013086
https://journals.biologists.com/dev/article/135/6/1097/65055/Notochord-derived-Shh-concentrates-in-close

10)脳科学辞典:神経誘導
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E8%AA%98%E5%B0%8E

11)Emily A. Meyers and John A. Kessler, TGF-b Family Signaling in Neural and
Neuronal Differentiation, Development, and Function., Cold Spring Harb Perspect Biol ; vol.9, no.8 a022244 (2017) doi: 10.1101/cshperspect.a022244.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28130363/

12)Choi KS, Cohn MJ, Harfe BD,Identification of nucleus pulposus precursor cells and notochordal remnants in the mouse: implications for disk degeneration and chordoma formation. Dev Dyn., vol.237(12): pp.3953–3958. (2008) doi:10.1002/dvdy.21805
https://anatomypubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/dvdy.21805

13)Makarand V. Risbud, Thomas P. Schaer, and Irving M. Shapiro, Towards an understanding of the role of notochodal cells in the adult intervertebral disc: from discord to accord. Dev Dyn., vol.239(8): pp.2141–2148.(2010) doi:10.1002/dvdy.22350
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3634351/

14)腰痛|症状や原因: 椎間板の役割
https://www.lumbago-guide.com/intervertebral-disc.html

 

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2021年11月16日 (火)

J-POP名曲徒然草217:愛が消えないように by まきちゃんぐ

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新型コロナ感染症の蔓延は、特に零細な飲食業界や音楽業界に大きな影響を及ぼしました。まきちゃんぐは苦しい生活を余儀なくされたすべての人々のために渾身の1曲を制作し、歌いました。

マスクはまだはずせませんが、蔓延はようやく収束してきました。この異常な苦難の日々を乗り越え、再び思い切り空気が吸える日を迎えたいものです。

愛が消えないように (作詞・作曲・歌唱 まきちゃんぐ)
https://www.youtube.com/watch?v=-PJlrmWwOiw

 

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2021年11月14日 (日)

ノロジャーニー2022

Imgnoro

来年用のダイアリーを購入しました。毎年今年で最後かなと思いつつ購入していた「Norojourney」ですが、ノロ20才にしてまだ健在で、きちんとお仕事をこなしていました。

今年は新型コロナ蔓延で、さすがに海外旅行は無理だったそうで、過去写真や自宅(八ヶ岳)近傍の写真で作成したようです。困難な作業だったことが忍ばれます。

NOROJOURNEY 2022 主役:黒猫ノロ 制作:平松謙三 発行:グリーティングライフ

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2021年11月11日 (木)

ALBA SQ@J:COM浦安音楽ホール 2021/11/11

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今日は月と土星と木星が接近して二等辺三角形をつくるという天文ファンにとっては楽しい日だそうです。たしかに面白い光景でした。

11月いっぱい都響は新国立劇場に張り付いて「マイスタージンガー」をやるそうで、演奏会はありません。私はまあそういうところに出入りする身分ではないので、浦安のJ:COM浦安音楽ホールにでかけました。駅から近くて便利な場所にあります。SQの演奏にはベストのサイズだと思いました。音響も素晴らしいです。中2階のような席があって、ここはなかなか得がたい心地よさです。

弦楽四重奏の演奏会に行く機会は数年に一度くらいしかないので、聴いたことがない曲が多いのですが、今日はメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番が素晴らしい名曲であることを発見できました。アルバSQのおかげです。

都響の小関さんしか私は存じ上げないメンバーでしたが、皆さん素晴らしいプレイヤーで感動しました。このSQはじめての演奏会のようで、ある方がオーケストラの癖(皆さんオケメン)で楽譜を持たずに出てきたのには爆笑しました。

小関さんはピューマみたいに躍動し縦横無尽に演奏していました。このメンデルスゾーンのようなハイエナジーの曲は合っているようです。

 

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サラとミーナ257:介護食

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ミーナはすっかり高齢猫になってしまって、脚の筋肉やアゴの筋肉が弱ってきました。うちに来てから14年くらいはロイヤルカナンのカリカリ1本でやってきたのですが、ここ2年くらいはやわらかい介護食になっています。介護食になってから、いつも同じエサでいいかというとそうではなくて、すぐ飽きてしまうのでとっかえひっかえになっています。それでも一応お気に入りなのがこれ。

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北里大学に感謝です。

よぼよぼになったといっても、それは体だけでメンタルは全くガキのままなのがミーナの特徴です。足がよれよれなのにおもちゃのネズミをはじきながら廊下を全力疾走します。今は体重3キロですが、7キロあったころの若かりしミーナ。サラはずっと体重4キロ弱でよいレファレンスになっています。サラはメンタル的にはすっかり怠惰になりましたが、体の衰弱はみられません。

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2021年11月 9日 (火)

続・生物学茶話163:ヘッジホッグ

ひとつの細胞=卵から、ありとあらゆる体の細胞が正しいタイミング、正しい位置に形成されるというのは生物学における最大の謎でしたが、初期発生におけるそのメカニズムの基本的な部分はエドワード・ルイス、エリック・ヴィーシャウス、クリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルトが中心となって、20世紀のうちに解明されました(1)。

彼らはショウジョウバエにランダムに変異を誘導し、形態が異常になった個体の遺伝子を調べることによって初期発生に関与する遺伝子を同定し、それらに機能や動作のヒエラルキーがあることを解明しました。もちろん彼ら以外にも多くの研究者達が貢献していますが、その結果を図163-1に示しました。先鞭をつけたルイスはトーマス・ハント・モーガンの弟子であるスターティヴァントの弟子であり、モーガンの孫弟子ということになります。ルイスは発生遺伝学以外にも、広島・長崎における原爆被害を調査するという仕事もやっており、放射線の影響に閾値はなくリニアであるという放射線生物学の基本的なセオリーを提唱しました(2)。

エリック・ヴィーシャウスとクリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルトはハイデルベルクで共同で研究室を立ち上げ、約2万のショウジョウバエ変異種を分離して、そのなかから初期発生に関与する遺伝子のミュータント120をみつけ、さらにその中から分節形成に関与する15の遺伝子を同定しました(3、図163-1)。彼らはルイスと共に、1995年度のノーベル生理学医学賞を受賞しました。

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図163-1 形態形成遺伝子とその発見者達

ルイスが使った実験動物はショウジョウバエでした。発生学の研究はウニ・カエル・ニワトリ・マウスなどが中心だったので、当初ルイスの仕事は軽視されていたようなのですが(2)、生物にとって基本的な遺伝子であればあるほど共通性は高く、ひとつの種で同定されればその相補性配列を使って遺伝子の海から類似遺伝子を釣り上げることができますし、全ゲノム配列が解明されれば、コンピュータでこの操作を行うこともできます。ルイスの仕事は彼が高齢になった頃には非常に注目されることになりました。

ニュスライン=フォルハルトとヴィーシャウスはショウジョウバエ幼虫の表面の剛毛が正しい位置に配置されず、体表全体にはえてきてハリネズミのようになってしまう変異体をみつけ、それにヘッジホッグ(ハリネズミ)という名前をつけました(3)。これと相同な遺伝子は脊椎動物でもみつかりました(4)。類似した遺伝子を哺乳類で探すと、ショウジョウバエではこの種の遺伝子がひとつしかないのに3つみつかりました。哺乳類ではデザート・ヘッジホッグ(dhh)、インディアン・ヘッジホッグ(ihh)、ソニック・ヘッジホッグ(shh)の3種類のヘッジホッグがそれぞれ別の遺伝子にコードされています(5)。インガムとマクマホンは様々な生物で、hhがどのように変化してきたかを調査しました(6)。その結果が図163-2です。脊椎動物以前では1系統、以降では3系統となっていることがわかります。ゼブラフィッシュはdhhの系統を失った代わりに、他の2系統のバラエティーを増やしました(図163-2)。

哺乳類ではshhを中枢神経系誘導や四肢の発生など非常に重要なプロセスで利用していますが、ショウジョウバエのヘッジホッグと最も類似しているのはdhhだそうです(5)。ヘッジホッグと類縁のタンパク質は扁形動物(7)や刺胞動物(8)にも報告されていますが、襟鞭毛虫にもその萌芽が見られる(9)ということで、メタゾアを越えたユニバーサリティーと悠久の歴史を持つファミリーだとされています。なんと細菌まで遡れるという報告もあります(10、11)。

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図163-2 ヘッジホッグ遺伝子進化の系譜

ヘッジホッグシグナルの伝達経路はロハジやジョンらの研究によって大筋が明らかになりました(12-14、図163-3)。ヘッジホッグ分泌細胞によって合成されたヘッジホッグはペプチダーゼドメインを持っていて、自己切断によってシグナルドメインが切り離されます(14)。シグナルドメインのN末をパルミトイル化、C末をコレステロール化してリガンドとしての形をととのえ、膜タンパク質の Dispatched によって細胞外に放出されます。

ヘッジホッグリガンドは標的細胞の膜12回貫通タンパク質である Patched 受容体に結合し、この受容体による Smoothened (SMO、膜7回貫通タンパク質) の抑制がはずれてSMOが活性化し、その結果転写因子 Ci/Gli が分解を免れ、完全な形で機能して標的細胞の転写を活性化するというメカニズムが報告されています(5、12-15)。Patched による抑制が外れるとSMOはダイマー化するようです(15)。SMOはGタンパク質共役受容体(GPCR)なので、これだけではなく、より複雑なかかわりをしていることが予想されます(16)。ソニックヘッジホッグ(shh)は中枢神経の誘導のみならず、脳神経系においてさまざまな働きをしています(17)。

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図163-3 ヘッジホッグシグナルのメカニズム

ヘッジホッグリガンドが形成されるまでのプロセスはほぼ解明されています。図163-4にソニックヘッジホッグの前駆体がリガンドになるまでの概要とパルミトイル化の反応、図163-5に自己切断とコレステロール化の反応について示しました。

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図163-4 ヘッジホッグタンパク質のプロセッシング、N末の修飾

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図163-5 ヘッジホッグタンパク質のプロセッシング、C末の修飾

ヘッジホッグ前駆体はまずシグナルペプチダーゼによってN末側の一部が削られ、さらに前駆体自身のC末ドメインによってセルフプロセッシングが図163-4のように行われ、C末側が切り離されると共に、新しいC末にコレステロールが付加されます。N末側はヘッジホッグアセチルトランスフェラーゼによってパルミトイル化されます(図163-5)。このようなプロセスを経てリガンドとして成熟します(14、18)。

ソニックヘッジホッグとは奇妙な名前です。セガメガドライブのゲームに Sonic the hedgehog というのがあるらしいですが、この因子の研究者である Robert Riddle が好きだったようで、そう名付けたようです(19、20)。デザートヘッジホッグとインディアンヘッジホッグは、そのような名前のハリネズミが実際に存在していて、そこから命名されました。 ソニックヘッジホッグの場合KOマウスは胎生9.5日で死亡しますが、デザートヘッジホッグのKOマウスは生き残ります。ただし生殖器や精子の形成がうまくいかないようです。またインディアンヘッジホッグのKOマウスは約半数が出産時まで生き残りますが、その後呼吸器官の欠陥のためにすべて死亡します(21)。

ウィキペディアのヘッジホッグの写真がとても可愛いので、図163-6にコピペしました。

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図163-6 3種のヘッジホッグ 名前の由来

ハリネズミはセンザンコウなどと違って、毛がすべて別物に置き換わったのではなく、針以外の普通の毛も持っています。体毛以外に感覚毛(ひげ)も見えます。この写真ではデザートヘッジホッグは白ひげで、インディアンヘッジホッグは黒ひげです。余談ですが、ニシナサチコ著「ハリネズミ・トントが教えてくれたこと」(KKベストセラーズ)を読むと、ハリネズミがどんな動物かよくわかります。

 

参照

1)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1995 NobelPrize.org.
9 October 1995 Press Release
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1995/summary/

2)Wikipedia:Edward B. Lewis
https://simple.wikipedia.org/wiki/Edward_B._Lewis
https://en.wikipedia.org/wiki/Edward_B._Lewis

3)Christiane Niisslein-Volhard & Eric Wieschaus, Mutations affecting segment number and polarity in Drosophila., Nature vol.287 pp.795-801, (1980)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6776413/
http://dosequis.colorado.edu/Courses/MethodsLogic/papers/NussleinVolhardWieschaus1980.pdf
http://dosequis.colorado.edu/Courses/MethodsLogic/Docs/VolhardWieschaus.pdf

4)Krauss, S., Concordet, J.P., & Ingham, P.W. (1993).
A functionally conserved homolog of the Drosophila segment polarity gene hh is expressed in tissues with polarizing activity in zebrafish embryos. Cell, 75(7), 1431-44.

5)ウィキペディア:ヘッジホッグシグナル伝達経路
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9B%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%AB%E4%BC%9D%E9%81%94%E7%B5%8C%E8%B7%AF

6)Philip W. Ingham, and Andrew P. McMahon, Hedgehog signaling in animal development: paradigms and principles., Genes & Dev., vol.15: pp.3059-3087 (2001) doi: 10.1101/gad.938601
http://genesdev.cshlp.org/content/15/23/3059.long

7)Shigenobu Yazawa, Yoshihiko Umesono, Tetsutaro Hayashi, Hiroshi Tarui, and Kiyokazu Agata, Planarian Hedgehog/Patched establishes anterior–posterior polarity by regulating Wnt signaling., Proc Natl Acad Sci USA, vol.106 no.52 pp.22329 –22334 (2009)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2799762/

8)David Q. Matus, Craig Magie, Kevin Pang, Mark Q Martindale, and Gerald H. Thomsen, The Hedgehog gene family of the cnidarian, Nematostella vectensis, and implications for understanding metazoan Hedgehog pathway evolution., Dev Biol, vol.313(2): pp.501–518 (2008)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2288667/

9) Philip W. Ingham, Yoshiro Nakano, and Claudia Seger, Mechanisms and functions of Hedgehog signalling across the metazoa., Nature Reviews, Genetics, vol.12, pp.393-406 (2011)
https://www.academia.edu/13366145/Mechanisms_and_functions_of_Hedgehog_signalling_across_the_metazoa

10)Hausmann G, von Mering C, Basler K., The Hedgehog Signaling Pathway: Where Did It Come From? PLoS Biol 7(6): e1000146.
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.1000146

11)Henk Roelink, Sonic Hedgehog Is a Member of the Hh/DD-Peptidase Family That Spans the Eukaryotic and Bacterial Domains of Life., J. Dev. Biol. vol.6, pp.12-23. (2018) doi:10.3390/jdb6020012

12)Rajat Rohatgi and Matthew P Scott., Patching the gaps in Hedgehog signalling.,
Nat Cell Biol vol.9(9): pp.1005-1009. (2007) doi: 10.1038/ncb435.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17762891/

13)Rajat Rohatgi, Ljiljana Milenkovic, Ryan B Corcoran, Matthew P Scott., Hedgehog signal transduction by Smoothened: pharmacologic evidence for a 2-step activation process.,
Proc Natl Acad Sci USA vol.106(9): pp.3196-3201.(2009) doi: 10.1073/pnas.0813373106.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19218434/

14)Juhee Jeong, Andrew P. McMahon, Cholesterol modification of Hedgehog family proteins., J Clin Invest. 2002;110(5):591-596. https://doi.org/10.1172/JCI16506.
https://www.jci.org/articles/view/16506/figure/1

15)Jie Zhang, Zulong Liu and Jianhang Jia., Mechanisms of Smoothened Regulation in Hedgehog Signaling., Cells, vol.10, 2138. (2021)
https://doi.org/10.3390/cells10082138

16)A. H. Polizio, P. Chinchilla, X. Chen, D. R. Manning, N. A. Riobo, Sonic Hedgehog Activates the GTPases Rac1 and RhoA in a Gli-Independent Manner Through Coupling of Smoothened to Gi Proteins. Sci. Signal., vol.4, pt7 (2011) DOI: 10.1126/scisignal.2002396
https://europepmc.org/article/PMC/5811764

17)脳科学辞典:ソニック・ヘッジホッグ
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9B%E3%83%83%E3%82%B0

18)John A. Buglino and Marilyn D. Resh, Palmitoylation of Hedgehog Proteins., Vitam Horm. vol.88: pp.229–252. (2012) doi: 10.1016/B978-0-12-394622-5.00010-9
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4214369/

19)Wikipedia: Sonic hedgehog
https://en.wikipedia.org/wiki/Sonic_hedgehog

20)Sonic games
https://www.allsonicgames.net/
https://www.allsonicgames.net/sonic-the-hedgehog.php

21)Noriaki Sasai, Michinori Toriyama and Toru Kondo, Hedgehog Signal and Genetic
Disorders., frontiers in Genetics., Volume 10, Article 1103 (2019)
doi: 10.3389/fgene.2019.01103

 

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2021年11月 6日 (土)

西島三重子@ラドンナ原宿 2021/11/05

二年ぶりのライブです。今コロナ感染の谷間なのでチャンスです。原宿は人混みでしたが、最盛期に比べると7割くらいかなとは感じました。いつも満席のエグズンシングズにも空席がありました。さすがにコロナの後遺症はまだあって、ラドンナもいつもに比べると少なめの人数で、配信もやっていました。

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ラドンナのエントランス(地下へ降りていく階段)は実に素晴らしい雰囲気です。

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西島さん本人撮影のはがきを頂きました。猫フェチのみーちゃんだけあって、めずらしい構図です。

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本人もほとんど全曲ギターを弾いていましたが、サポートは平野融さん(G)。「青春のシュプレヒコール」からはじまってかなりたくさん歌いました。セトリはアップ不能ですが、配信ではリストが出ているそうです。

https://www.facebook.com/mieko.nishijima

個人的には「陽ざかりの午後」、「Imagination Canvas」(「筆を」の歌詞が脱落 びっくり)、「泣かないわ」などがフェイバリット。昭和の至宝と呼ぶにふさわしい楽曲です。

 

 

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2021年11月 3日 (水)

新型コロナ感染症への対応 ワースト10

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(厚生労働省資料の一部をグラフ化したもの)

新型コロナ感染症に対する対応は、維新治世の大阪府がダントツワーストです。

しかし大阪は総選挙で維新が完全制覇しました。

 

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2021年11月 2日 (火)

マスコミ各社はなぜこんなおかしなことが起こったか調査すべきです

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マスコミ各社 出口調査の結果

日テレ(NNN) 自民 238 立民 114
テレ朝(ANN) 自民 243 立民 113
TBS(JNN)  自民 239 立民 115
テレ東(TXN) 自民 240 立民 110
フジ(FNN)  自民 230 立民 130
NHK  自民 212~253 立民 99~141

集計結果  自民 261 立民 96

もしこの調査の精度が一般に悪くてはずしても当たり前なら、どれもが自民を少なめに、立民を多めにみつもるはずはなく、ランダムにはずれるはずです。みんな同じ方向にはずれるというのはあり得ないおかしな話です。

右翼系のフジテレビが一番外しているので、自民支持者がマスコミを忌避して非協力だったという解釈はあてはまりません。彼らはフジテレビには協力的なはずなので、フジ系が自民を低くみつもってしまうということはあり得ません。

NHKは批判を恐れて非常に広い変動幅をとっていますが、そんなだだ広の範囲にも結果はひっかかっていません。これをどう説明するのでしょうか?

答えはひとつ、集計が不正に行われたと考えるしかありません。

 

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FCバルセロナは生き残れるのか?

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バルサは今最大の危機に瀕しています。なんとレギュラーメンバーのうち9人が病気やケガで試合に出られません。

欠場者リスト

FW:セルヒオ・アグエロ、アンス・ファティ、マルティン・ブライトバイテ、ウスマン・デンベレ

MF:フレンキー・デ・ヨング、セルジ・ロベルト、ペドリ

DF:ロナルド・アラウホ、ジェラール・ピケ

水曜日のディナモ・キエフ戦は、あり得ないメンバーで戦わなければなりません。
フォルサ・バルサ⚽

ニーチェはツァラトゥストラに次のような言葉を語らせています

「深い黄、熱い赤、わが趣味はそれを欲する-すべての色に血をまぜることを。自分の家を白く上塗りにするものは、その魂も白く上塗りしているに違いない」
(「ツァラトゥストラはかく語りき」 ニーチェ著 佐々木中訳 河出文庫より)

Senyera

カタルーニャの旗

 

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2021年10月30日 (土)

小泉ー都響 ドヴォルザーク交響曲第8番@サントリーホール 2021/10/30

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今日は快晴で寒すぎずコンサート日和です。さすがコンマスの山本さん。晴れ男ですねえ。指揮者は小泉さん。彼は大植さんの代役でチャイコフスキーの悲愴交響曲を振った頃から何かふっきれたようにすごい指揮をするようななったと思います。すごいと言っても逆にシンプルに徹しているようなベクトルだと感じます。それが団員のナーバスな雰囲気を一掃して血が通ったのかな?

サイドはゆづきさん。彼女のツイッターをみると弦のフォアシュピーラーが集まって打ち合わせをしている写真が掲載されています。こういう雰囲気が都響のよさを生み出しているんですね。
https://twitter.com/YUZUKI79403436/status/1454375358082400256

まだコロナは警戒していて、A・B・P席の最前列は空席、Sの両サイドも空けていたかのかもしれません。満席の半分くらいのお客でした。本日のソリストは若手のホープ佐藤さん。お馴染みのドボコンですが、落ち着いた演奏なのに巨匠風ではなく、隅々まで丁寧にやっていたように思いました。素晴らしいのひとことです。

後半のドヴォルザーク交響曲第8番は小泉さんの18番じゃないかな。都響も弦の厚みが感じられる素晴らしい響き。管も思う存分躍動していましたが、柳原はちょっとやりすぎ。寺本さんが退団して張り切っているのはわかりますが、フルートはやりすぎると簡単に全体のバランスが壊れるので、より軽やかで上品な演奏を期待します。

今日はカメラが複数台入って録画していました。おそらくMXテレビで放映されるのでしょう。それにふさわしい快演でした

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2021年10月29日 (金)

続・生物学茶話162:半索動物における神経誘導

半索動物というマイナーな門の生物がいます。これはギボシムシ類とフサカツギ類の2つのグループからなっています。私はギボシムシは三崎の臨海実験所で一度見せてもらったことがありますが(多分水族館でも見られると思います)、フサカツギは一度も見たことがありません。ギボシムシは特に珍しいわけではなく、泥の中を動き回り無選別にまるまる泥ごと飲み込んで、その中の有機物を栄養とするという生き方なので大量のうんちを海底に残すことになり、これであたりにいるかどうかがすぐわかります(1)。泥は栄養価が低いので消化管を長くした方が生存に有利であると思われ、中には体長2メートルを超えるものもあるようです(2)。図162-1の個体は体長が書いてありませんでしたが(ウィキメディアコモンズ)、体幹部が長くないので小さめの種類だと思います。体表の殺菌のためにブロモフェノールを排出するので、食用にはならないと思います。もうひとつのグループ、フサカツギは固着生活を選んだせいか、数ミリ程度の体長の目立たない生物です(3)。こちらは生物学者でも見たことのある人は少ないでしょう。私も見たことがありません。

後口動物はにぎやかな分類表の前口動物と比べると、比較にならないくらいこじんまりした分類表で門は3つしかありません(図162-1)。半索動物はそのうちのひとつです。私たちが所属する脊索動物門とウニやヒトデが所属する棘皮動物門が残りの2つです。ここで棘皮動物というのはあまりにも私たちと違いすぎる感じがします。彼らは5放射相称で、本来前口動物・後口動物の祖先である左右相称動物とはかけはなれた形態を持ち、前後の概念はなく、発達した脳や中枢神経系もありません(4)。しかしそれは特殊化や退化の結果であり、彼らも私たちと同じ後口動物であり、発生の途中までは私たちと似たようなボディープランを持っていたことは確かです(5、6)。生物の基本的な形態を決めるHox遺伝子群の並びが非常によく似ていることなどから、彼らは左右相称のギボシムシと近縁な生物であることが判明しています(6)。つまり棘皮動物はHox遺伝子をいじることなく、別の遺伝子による修飾的変異によって5放射相称という独自の体型を獲得しました。

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図162-1 ギボシムシの形態と分類学上の位置

(写真はウィキペディアより)

ギボシムシについて何か記事を書こうと思いついたのは後述の宮本教生博士の研究を知ってからで、それでまずギボシムシの中枢神経系を調べてみたら驚きました。なんとギボシムシは背側と腹側の両方に中枢神経系があるのです(7)。図162-2のように中枢神経系は前口動物では腹側にあり、後口動物では背側にあるというのがおきまりのボディープランであり、両側にあるというのはギボシムシだけでしょう。

クラゲのように海をただようとかヒドラのように固着する生活では、発達した中枢神経系は不要だったのですが、海底を歩くには運動器官の統合的な動作が必要となるため、中枢神経系が運動器官がある体の腹側に形成されたのは必然と言えます。前口動物から突然変異によって生まれた奇形であった後口動物は(これには後述のように疑問がありますが)、海底を歩くのではなく、積極的に泳ぐという魚類によって圧倒的な繁栄をなしとげましたが、中には別のやり方で生き延びたグループもいたわけです。

以前は半索動物は脊索動物と最も近い門とされていましたが、前述のように遺伝子の比較が進み、半索動物は棘皮動物と近縁であることがわかっています。ですからギボシムシの腹側神経が退化して脊索動物が生まれたわけではなく、脊索動物は前口動物の祖先のある者が背腹軸を逆転させて生まれたものであるというのが定説です(8)。ただそうは言っても、私は脊索動物の祖先が背腹両側に中枢神経系を持っていたということを完全に否定することはできないと思います。背腹逆転が起こったとして、そのミュータントが生き延びる可能性はほぼゼロでしょう。このようなドラスティックな変化をなしとげるためには中間的なステップが必要じゃないかというのは常識的な考えです。腹側神経系は前口動物と同様に中胚葉の軟組織に誘導されて存在し、それにプラスして何らかの方法で背側にも発達した神経系を持つようになったグループが複数出現したのではないでしょうか? 両側に発達した神経系があれば、背復逆転というようなドラスティックな変異が起きたとしても生き延びられる可能性は格段に高くなると思います。

ギボシムシは海底を移動する生物ですが、体中に生えている細かい突起を動かして移動します。泥の中を移動するので、上下(背腹)の概念はあまりなく、口がある方が下としていますが、彼らにしてみればどうでもよいことです。背腹両側に中枢神経があるので、消化管と中枢神経がクロスするのが前口動物、しないのが後口動物という定義はあてはまりません(図162-2)。彼らは運動器官を全身に持っていて、これらを協調して動作させないとうまく動けないので、背腹の両側に中枢神経があるのは合目的的です。

宮本らが発見したのは、ギボシムシの消化管の一部が分化した口盲管とそれに接続する襟背側消化管上皮(半索とよばれるもの)が発生において中枢神経を誘導するということです(7、9)。口盲管と襟背側消化管上皮の位置は図162-2に緑色で示しました。

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図162-2 中枢神経系と消化管の位置

前口動物・後口動物を問わず、中枢神経系の誘導は中胚葉の仕事ということになっていますが、ギボシムシでは内胚葉性の口盲管と襟背側消化管上皮が誘導するというまれなメカニズムが宮本らによって報告されています(7、9、図162-3)。しかもこれらの組織にはコラーゲン(ColA)やヘッジホッグ(hh)という脊索に特徴的な遺伝子発現がみられるそうです。そしてヘッジホッグによる誘導情報を受け取るためのパッチト(ptc)遺伝子の発現が襟神経索にみられるということで、これはまさしく脊索による中枢神経の誘導に匹敵する現象と言えます(7、9、図162-3)。

このことは脊索と半索(口盲管)が関連性の希薄な器官だとしても、脊索動物と半索動物のはるか昔の共通祖先が、中枢神経を誘導するための共通の遺伝子セットとメカニズムを持っていたということで、なかなか興味深い知見だと思います。

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図162-3 口盲管と消化管上皮による神経索の誘導

脊索動物では脊索という丈夫な結合組織系の構造が体の正中線に沿って頭部から尾部まで形成されます。これは脊索動物が進化の過程でいったん脚を捨てて、つまり海底を歩くという生き方を捨てて、泳いで移動するという行動様式を採用したことと深く関係があると思います。泳ぐためにはくねくねとした運動が必要で、丈夫な構造を中央正中線沿いにつくり、その左右に筋肉をつけて左右交互に収縮と弛緩を行うことによってそれは可能になります。そのためには左右の筋肉の協調が必要で、中枢神経による全身の筋肉の制御ができなくてはいけません。このような生き方を可能にするために、脊索が形成され、脊索によって中枢神経系が誘導されて全身の筋肉を制御できるような、いわゆる魚型の形態が完成されました。この形態をとる生物ははやくもカンブリア紀に出現しています(10、11)。

脊索動物の場合、図162-4に示されているように、中胚葉起源の脊索(notochord) はその背側の外胚葉を内側に陥入させ神経管を誘導します。陥入する部分の外胚葉を神経板といいます。陥入して神経管になる部分ととどまって表皮となる外胚葉の境界領域に神経堤 (neural crest) という特殊な領域が形成され、この部域は神経板が陥入するときに内部に巻き込まれますが神経管の一部とはならず別組織となります。この未分化な組織はその後分化してさまざまな組織を形成することになります。これについては別のセクションで述べたいと思います。

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図162-4 脊椎動物における神経管の誘導

脊索は体の中心となる頑丈な組織なのですが、脊椎動物では中枢神経を保護するための脊椎が形成されるという形態に進化が起こりました。脊椎は脊索よりさらに頑丈な組織なので、脊索は中枢神経を誘導した後は無用の長物となり退化します。ナメクジウオは典型的な脊索動物で、脊索は頭部から尾部まで体全体に伸びており、成体になっても退化せずに残ります(12、図162-5)。ナメクジウオ類は頭索動物と呼ばれますが、頭索というのは脊索が頭部にもあるという意味です。この点は脊椎動物も同じです。

ホヤは一部を除いて幼生にだけ脊索がみられます。ただし頭部には脊索がありません(13、図162-5)。この意味でホヤ類は尾索動物と呼ばれています。尾索動物は成体が固着生活をおくるように進化したため、脊索や脊椎などの頑丈な組織は不要となり、その他の構造も特殊化して脊椎動物とは似ても似つかぬ体型になりました。そのため一見して頭索動物の方が脊椎動物に近縁なように見えますが、遺伝子の研究などによって頭索動物より尾索動物の方が脊椎動物と近縁であることがわかりました(14)。頭索動物には神経堤が認められず、尾索動物は神経堤の発達が頭索動物と脊椎動物の中間的であるということも判明しています(15)。

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図162-5 頭索動物(成体)と尾索動物(幼生)の形態

画像はウィキペディアより。尾索動物の図の投稿者は Jon Houseman。

 

参照

1)ねっとで水族館 ワダツミギボシムシ Balanoglossus carnosus
http://www.aquamuseum.net/content/aquarium/nagamusi/gibosi-1.html

2)ウィキペディア:半索動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

3)並河洋 謎の動物 “フサカツギ” を求めて 国立科学博物館HP
https://www.kahaku.go.jp/research/researcher/my_research/zoology/namikawa/index_vol2.html

4)ウィキペディア:棘皮動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%98%E7%9A%AE%E5%8B%95%E7%89%A9

5)大平万里 食の研究所 昆虫よりもウニのほうがヒトに近い生物である理由
生物進化を食べる(第2話)棘皮動物篇 JBPRESS (2019)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56540?page=3

6)入江直樹・大森紹仁 左右対称から五放射の体を進化させた棘皮動物のゲノム解読
東京大学プレスリリース
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2020/6941/

7)宮本教生 海底に潜むムシから探る脊索動物の起源 生命誌ジャーナル 83巻 (2014)
https://www.brh.co.jp/publication/journal/083/research_1.html

8)生物学茶話@渋めのダージリンはいかが112: 背と腹
http://morph.way-nifty.com/lecture/2018/09/post-ec8a.html

9)Norio Miyamoto & Hiroshi Wada, Hemichordate neurulation and the originof the neural tube
, Nature communications (2013) DOI: 10.1038/ncomms3713

10)ウィキペディア:魚類
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%9A%E9%A1%9E

11)ウィキペディア:ミロクンミンギア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AD%E3%82%AF%E3%83%B3%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%82%A2

12)ウィキペディア:頭索動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

13)ウィキペディア:尾索動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

14)ウィキペディア:脊椎動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%8A%E6%A4%8E%E5%8B%95%E7%89%A9#%E8%84%8A%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%BE%B4

15)Joshua R. York and David W. McCauley, The origin and evolution of vertebrate
neural crest cells., Open Biology vol.10, 190285 (2020)
http://dx.doi.org/10.1098/rsob.190285

 



 

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2021年10月27日 (水)

J-POP名曲徒然草216: 「誕生」 by ドリアン・ロロブリジーダ

ドリアンさんは2006年デビューだそうですが、お名前は最近知りました。ウィキペディアを見ると、ものすごく詳しい活動履歴などが書いてあってびっくりしました。CDは発見できませんでしたが、すごい歌手だと思います。「誕生」は中島みゆきさんの作品ですが、みゆきさんもドリアンさんの歌唱を聴いたらきっと気持ちいいと思います。

使って良さそうな画像がみつからなかったので・・・

誕生(中島みゆき)
https://www.youtube.com/watch?v=EmzmNjUQGBI

夜行(中島みゆき)
https://www.youtube.com/watch?v=oYulhnCWOWs

for you (高橋真梨子)
https://www.youtube.com/watch?v=6wsP-5SDJo8

再会(金子由香利)
https://www.youtube.com/watch?v=NM2S49NwzUg

Never Enough (Loren Allred)
https://www.youtube.com/watch?v=dY7_Yv3UkcM

ここで腰が抜ける(実はこれだけは形態模写です それを知って正気に戻る)

そして素顔のドリアンさんは早稲田大学中退の美男子でした ↓↓

ファイト(中島みゆき)
https://www.youtube.com/watch?v=nVbvkS6B-Xg

 

 

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2021年10月23日 (土)

まきちゃんぐxつるうちはな 天才x天才 @三軒茶屋GFM2021/10/23

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自粛とか公演中止とかでずいぶんライヴもご無沙汰でした。

ちゃんぐさんも異常に気合いが入っているのがよくわかりました。

1.風が強い日の旗は美しい

2.2020

3.レディ・コイヌール

4.愛が消えないように

5.鋼の心

どの曲も素晴らしい弾き語りでした。

ここで10分の休憩

後半はシンガーソングライターのつるうちはなさんにピアノを弾いてもらうという贅沢なメニュー。

Tsu

狂乱のピアニスト つるうちはな?

なんやそれ?

ほら たらことかいくらとか・・・

・・・・・それ魚卵や

 

いやほんとにすごいピアニストで、腕もしゃべくりも超一流(さらに料理の腕も達者で社長でもある)

注意が散漫になってセトリ間違っているかもしれませんが

6.ノラ

7.夢だもの(中島みゆきの曲)

8.ジンジャエールで乾杯

9.ハレルヤ(つるうちはなの曲)

10.海月

ノラとハレルヤ(泣きそう)が特に圧巻でした。

では また楽しみにしています

(画像はまきちゃんぐ公式ツイッターより)

まきちゃんぐ「夢だもの」
https://www.youtube.com/watch?v=hgpeMBRxbdU

つるうちはな「一緒にいようよ」
https://www.youtube.com/watch?v=HSA_AxEK3CQ

 

 

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2021年10月21日 (木)

ショパンコンペティション2021の優勝者はブルース・シャオユー・リュー

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ショパンコンペティション2021の優勝者はブルース・シャオユー・リューという中国系カナダ国籍のピアニストに決定しました。ダン・タイ・ソンのお弟子さんだそうです。フランス生まれですが、ピアノの勉強はカナダでおこなった方だそうです。

BRUCE XIAOYU LIU(ブルース・シャオユー・リュー)
作為ではない身についた上品さ、高貴さ、が感じられるピアニストだと思いました。

https://www.asiamusicarts.com.tw/artists/xiaoyu-liu/

second round
https://www.youtube.com/watch?v=0ev9NzuZBlg

third round
https://www.youtube.com/watch?v=TQ0jPLuRGlk

final round
https://www.youtube.com/watch?v=UcOjKXIR8Iw

インスタグラム
https://www.instagram.com/bruceliupiano/

ファツィオーリのピアノはこれでまた人気が出るのでしょう。私は聴いたことがありませんが、豊洲シビックセンターにあるそうです。確かにスタインウェイやヤマハのピアノではこのような上品さは出せない感じがしました。

最終結果

第1位 Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada ブルース(シャオユー)リウ(カナダ)
第2位 Kyohei Sorita, Japan 反田恭平(日本)
第2位 Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia アレクサンダー・ガジェヴ(イタリア/スロベニア)
第3位 Martin Garcia Garcia, Spain マルティン・ガルシア・ガルシア(スペイン)
第4位 Aimi Kobayashi, Japan 小林愛実(日本)
第4位 Jakub Kuszlik, Poland ヤクブ・クーシュリック(ポーランド)
第5位 Leonora Armellini, Italy レオノーラ・アルメッリーニ(イタリア)
第6位 J J Jun Li Bui, Canada J J ジュン・リ・ブイ(カナダ)

追記: ショパンコンペティションについての報道ステーションの報道を今聴きました。なんと反田さんが2位になったことを報道し、インタビューもしていました。ところが小林さんについては完全無視でした。そして驚くべきことに1位の氏名すら報道しないのにはあきれました。

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